【文献】
3GPP; TSGRAN,Study on New Radio Access Techonology; Radio Interface Protocol Aspects,3GPP TR 38.804,2017年03月 日,V 14.0.0,第27-29,55,56頁
【文献】
Ericsson,Inactive state in LTE,3GPP TSG-RAN WG2 #97bis R2-1702560,2017年04月03日,Section 3
【文献】
Ericsson,Security solution for Infrequent Small Data[online],3GPP TSG SA WG3 #85 S3-161869,2016年11月07日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照しつつ、無線通信システム、及び、無線通信システムで利用される無線端末、基地局及び無線通信方法について説明する。この無線通信システムは、Resume機能に対応する。そして無線端末がRRC Inactive stateとなったまま、アップリンクのデータを送信する際に、無線端末は、Resume IDを用いてアップリンクのデータをスクランブルまたは拡散する。そして無線端末は、スクランブルされ、または拡散されたアップリンクのデータを基地局へ送信する。これにより、無線端末がRRC Inactive stateとなったまま、アップリンクのデータを送信する際の送信タイミング及び無線リソースの事前通知を省略することが可能となる。結果として、制御情報の通信量の増加が抑制される。さらに、基地局でのアップリンクの信号の衝突の発生が抑制される。
【0018】
なお、回線設定情報には、例えば、Authentication、Security及びContext関連の情報のうちの少なくとも一つが含まれる。Authenticationに関する情報は、例えば、無線端末のSIM情報の認可に関する情報を含む。また、Securityに関する情報は、例えば、無線端末に関するデータ通信で用いられる暗号化設定に関する情報を含む。そしてContextに関する情報は、例えば、Quality of Service(QoS)設定(またはQuality Class Indicator(QCI)設定)、ベアラ設定またはフロー設定に関する情報を含む。
【0019】
なお、本明細書において、Node B、 eNode B、gNode Bまたはアクセスポイントなどは、基地局の一例である。さらに、移動局、移動端末またはUser Equipment(UE)は、無線端末の一例である。
【0020】
図1は、一つの実施形態による無線通信システムの概略構成図である。無線通信システム1は、基地局11と、無線端末12と、上位ノード13とを含む。そして基地局11と無線端末12とは、互いに無線通信により信号を伝送する。なお、無線通信システム1に含まれる基地局11の数は1台に限られず、無線通信システム1は、複数の基地局11を含んでもよい。同様に、無線通信システム1は、複数の無線端末12を含んでいてもよい。また、無線端末12は、移動端末であってもよく、あるいは、固定式の通信装置であってもよい。なお、上位ノードは、例えばLTEにおけるMMEMobility Management Entity(MME)、Serving Gate Way(SGW, S-GW)、PDN Gate Way(PGW, P-GW)などのコアネットワークを構成する装置などであり、LTEシステム等の特定のシステムに依存するものではない。
【0021】
基地局11は、無線端末12と上位ノード13間の通信を中継する。そのために、基地局11は、例えば、LTEシステムにおけるS1インターフェースといった、上位ノード13と基地局11間の通信について規定される所定の通信規格に従って上位ノード13と接続されている。また基地局11は、例えば、LTEシステムにおけるX2インターフェースといった、基地局同士の通信について規定される所定の通信規格に従って他の基地局と接続されていてもよい。なお、上記は一例であって、上位ノードと基地局間のインターフェースまたは基地局同士のインターフェースであれば、通信規格や名称に限定されるもではない。以下、同様である。
【0022】
基地局11は、1以上のセルを設定する。例えば、基地局11が設定した何れかのセルに無線端末12が在圏していると、無線端末12は基地局11と無線通信可能となる。そして基地局11は、無線通信可能な無線端末12との間で、ランダムアクセス手順など、無線回線を設定する手順及び上位回線を設定する手順を実行する。その後、基地局11は、無線端末12宛ての通信信号を、コアネットワークから上位ノード13を介して受け取って、ダウンリンクの無線信号として無線端末12へ送信する。また、基地局11は、無線端末12からアップリンクの無線信号を受け取り、受信した無線信号に含まれる、他の通信装置(図示せず)への通信信号を取り出して、上位ノード13へ抽出した通信信号を送信する。
【0023】
また、無線端末12がResume機能を使用可能なように、基地局11は、無線端末12に関する回線設定情報に、回線識別情報(例えば、Resume ID、以後Resume IDとして説明する)を付す。または、基地局11は、複数ある回線識別情報から端末に割り当てる回線識別情報を選択し、回線設定ごと(または無線端末ごと、あるいはサービスごと)に割り当てる(または制御)する。そして基地局11は、回線設定情報を、対応するResume IDとともに記憶する。さらに、基地局11は、無線端末12が基地局11との無線通信を継続している間、すなわち、無線端末12がRRC Connected stateとなっている間に、Resume ID(または回線識別情報)を無線端末12へ通知する。
その後、基地局11は、RRC Inactive stateとなっている無線端末12が通信を再開する場合に、無線端末12について割り当てられたResume IDで特定される回線設定情報を利用して、無線端末12と上位ノード13間の通信を中継する。
【0024】
無線端末12は、Resume機能を利用可能な無線端末であり、例えば、RRC Connected stateにおいて上位回線の設定が行われた後、RRC Inactive stateとなって通信を停止する。すなわち、無線端末12と基地局11との無線回線が切断されても、無線端末12に関する上位回線は維持された状態(または設定された状態)となる。また無線端末12についての回線設定情報及び又は回線識別情報は基地局11にて保持及び管理される。そして無線端末12は、一定の周期(例えば、数時間、数日、1ヶ月等)または特定のイベントが発生したときに、基地局11にて保持されている回線設定情報を利用して、無線回線を再接続して、他の通信装置(図示せず)との通信を再開する。そのために、無線端末12は、RRC Connected stateとなっている間に基地局11から通知されたResume ID(または回線識別情報)を記憶する。そして無線端末12は、RRC Inactive stateとなったまま、アップリンクのデータを送信する際に、Resume IDを用いてアップリンクのデータをスクランブルまたは拡散する。
【0025】
上位ノード13は、例えば、Serving Gateway(S-GW, SGW)、Mobility Management Entity(MME)及びPacket data network Gateway(P-GW, PGW)の少なくとも一つであり、コアネットワークと基地局11間の通信を中継する。さらに、上位ノード13は、無線端末12の位置登録及び基地局間のハンドオーバなどに関する制御、QoSに関する制御及び課金等に関する制御の少なくとも一つを実行する。また上位ノード13は、ベアラの確立あるいは削除といった、上位回線に関する制御を実行してもよい。
【0026】
以下、無線端末12がRRC Inactive stateとなったまま、Resume機能を用いて実行する無線通信処理の詳細について説明する。本実施形態では、無線通信システム1は、以下の2通りの通信手順の少なくとも一方を利用可能とする。
(1)通信手順1:
ランダムアクセス手順を省略し、無線端末12が基地局11に対して再接続を要求する際に、Resume IDを用いてスクランブルされ、または拡散されたアップリンクのデータを送信
(2)通信手順2:
簡素化されたランダムアクセス手順を実行した後に、無線端末12が基地局11に対して再接続を要求する際に、Resume IDを用いてスクランブルされ、または拡散されたアップリンクのデータを送信
【0027】
通信手順1は、例えば、比較的少ない量のデータを伝送するために利用される。または、通信手順1は、伝送されるパケットサイズが閾値よりも小さい場合の伝送に利用される。一方、通信手順2は、例えば、通信手順1で送信されるデータ量よりも多い量のデータを伝送する場合、または伝送されるパケットサイズが閾値よりも大きい場合の伝送に利用される。ただし、上記の各通信手順とデータ量の関係は一例にすぎず、例えば、通信手順2に従って、比較的少ない量のデータが伝送されてもよい。あるいは、提供されるサービスの種類または回線設定情報で指定されたQoSに応じて、通信手順1及び2のうち、使用される通信手順が選択されてもよい。
【0028】
図2は、通信手順1に従った、無線通信処理のシーケンス図である。なお、以下のシーケンス図では、無線端末12は、アップリンクのデータを、Resume IDを用いてスクランブルし、スクランブルされたデータを基地局11へ送信するものとする。なお、アップリンクのデータをResume IDを用いて拡散する場合も、以下に示されるシーケンスと同様のシーケンスにしたがって無線通信処理が実行されればよい。また、アップリンクのデータは、他の通信装置へ伝送される信号の一例である。
【0029】
基地局11と無線端末12は、例えば、ランダムアクセス手順に従って無線回線設定処理を実行する(ステップS101)。さらに、基地局11と無線端末12は、上位ノード13とともに、Context setupなどの上位回線設定を含む回線設定処理を実行する(ステップS102)。
【0030】
基地局11は、無線端末12についての回線設定情報にResume IDを割り当て、かつ、回線設定情報とともにResume IDを記憶する(ステップS103)。なお、基地局11は、無線端末ごとに異なるResume IDを割り当ててもよく、あるいは、同じサービスの提供を受ける無線端末ごとに異なるResume IDを割り当ててもよい。あるいはまた、基地局11は、無線端末12が在圏するセルごとに異なるResume IDを割り当ててもよい。そして基地局11は、Resume IDを無線端末12へ通知する(ステップS104)。その際、基地局11は、例えば、物理下り制御チャネル(Physical Downlink Control Channel, PDCCH)または物理下り共有チャネル(Physical Downlink Shared Channel, PDSCH)を介して、Resume IDを通知すればよい。無線端末12は、通知されたResume IDを記憶する。
【0031】
その後、無線端末12がRRC Connected stateからRRC Inactive stateへ遷移した後に、無線端末12がアップリンクのデータを送信する事態が生じると、無線端末12は、Resume IDを用いてデータをスクランブルする(ステップS105)。そして無線端末12は、スクランブルされたアップリンクのデータを含み、かつ、基地局11に対して再接続することを要求する再接続要求信号を生成し、再接続要求信号を基地局11へ送信する(ステップS106)。なお、無線端末12は、Resume IDを用いてスクランブルされたデータを再接続要求信号として基地局11へ送信してもよいし、再接続要求信号の代わりにResume IDを用いてスクランブルされたデータを基地局11に送信してもよい。
【0032】
基地局11は、受信した再接続要求信号に含まれる、スクランブルされたアップリンクのデータを、無線端末12に割り当てられたResume IDを用いてデスクランブル処理することにより復号する(ステップS107)。そして基地局11は、復号されたデータを上位ノード13(あるいは、他の基地局)へ送信する(ステップS108)。また基地局11は、アップリンクのデータを受信できたか否かを表す確認信号(ACKまたはNACK)を含み、かつ、再接続を許可する再接続許可信号を生成し、生成した再接続許可信号を無線端末12へ送信する(ステップS109)。なお、基地局11は、確認信号を再接続許可信号として端末12へ送信してもよいし、再接続許可信号の代わりに確認信号を無線端末12へ送信してもよい。そして基地局11及び無線端末12は無線通信処理を終了する。
【0033】
通信手順1によれば、複数の無線端末が同時に再接続要求信号を送信しても、基地局11は、無線端末ごとの再接続要求信号を復号できる。そのため、基地局11が無線端末12に対して事前に使用可能な無線リソースを割り当てたり、送信タイミングを通知したりしなくても、無線端末12はデータを送信できる。
【0034】
この場合、基地局11は、無線端末12が再接続要求信号を送信するタイミングを事前に知ることができない。そこで基地局11は、例えば、サブフレームごとに、基地局11が記憶しているResume IDのそれぞれについて、Resume IDを用いて受信した信号に対するデスクランブル処理を実行すればよい。これにより、受信した信号が何れかの無線端末からの、スクランブルされたデータを含む再接続要求信号である場合、基地局11は、スクランブルされたデータをデスクランブリング(または復号)できる。
【0035】
図3は、通信手順2に従った、無線通信処理のシーケンス図である。なお、以下のシーケンス図でも、無線端末12は、アップリンクのデータを、Resume IDを用いてスクランブルし、スクランブルされたデータを基地局11へ送信するものとする。なお、アップリンクのデータをResume IDを用いて拡散する場合も、以下に示されるシーケンスと同様のシーケンスにしたがって無線通信処理が実行されればよい。また、
図3に示されるシーケンスは、
図2に示されるシーケンスと比較して、ステップS115以降の処理が異なる。そこで以下では、ステップS115以降の処理について説明する。
【0036】
ステップS104の後、無線端末12がRRC Connected stateからRRC Inactive stateへ遷移した後に、無線端末12がアップリンクのデータを送信する事態が生じると、無線端末12は、RAプリアンブルを含むMessage 1を生成する。そして無線端末12は、基地局11からの報知情報で示された物理ランダムアクセス(Physical Random Access Channel, PRACH)用の無線リソースを使用して、Message 1を基地局11へ送信する(ステップS115)。基地局11は、RAプリアンブルを検出すると、RAプリアンブルに対する応答情報であるRAレスポンスをMessage 2として無線端末12へ送信する(ステップS116)。なお、RAレスポンスは、無線端末12がアップリンク信号を送信するタイミングを調整するためのTiming Advance(TA)情報を含む。無線端末12は、TA情報を参照して、基地局11と時間的に厳密な同期を確立する。そして無線端末12は、基地局11からのアップリンク(Up Link, UL) Scheduling Grantを受信する。UL Scheduling Grantには、無線端末12に割り当てられるアップリンクのリソースブロックを示す情報などが含まれる。
【0037】
無線端末12は、Resume IDを用いてアップリンクのデータをスクランブルする(ステップS117)。そして無線端末12は、スクランブルされたアップリンクのデータを含み、かつ、基地局11に対して再接続することを要求する再接続要求信号を生成する。そして無線端末12は、UL Scheduling Grantで指定されたリソースを用いて、生成した再接続要求信号を基地局11へ送信する(ステップS118)。
【0038】
基地局11は、受信した再接続要求信号に含まれる、スクランブルされたアップリンクのデータを、無線端末12に割り当てられたResume IDを用いてデスクランブル処理することにより復号する(ステップS119)。そして基地局11は、復号されたデータを上位ノード13(あるいは、他の基地局)へ送信する(ステップS120)。また基地局11は、アップリンクのデータを受信できたか否かを表す確認信号(ACKまたはNACK)を含み、かつ、再接続を許可する再接続許可信号を生成し、生成した再接続許可信号を無線端末12へ送信する(ステップS121)。そして基地局11及び無線端末12は無線通信処理を終了する。
【0039】
ランダムアクセス手順にしたがってアップリンクのデータが伝送される場合でも、複数の無線端末が同じRAプリアンブルを含むMessage1を基地局11へ送信することがある。このような場合、基地局11から伝送されるRAレスポンスを、複数の無線端末のそれぞれが、自局宛てのメッセージとして受信することがある。そのため、ステップS118にて、複数の無線端末が同じリソースを用いて再接続要求信号を送信する可能性がある。しかし、通信手順2では、アップリンクのデータがResume IDを用いてスクランブルされた上で伝送される。そこで、基地局11は、RAレスポンスの本来の宛先、すなわち、再接続を許可する無線端末に割り当てたResume IDを用いることで、受信したそれぞれの再接続要求信号のうち、再接続を許可する無線端末からの再接続要求信号に含まれるデータを復号できる。
【0040】
なお、通信手順2の変形例によれば、Resume IDごとに、使用可能なRAプリアンブルが予め一つまたは複数設定されてもよい。そして無線端末12は、ステップS115にて、自局に割り当てられたResume IDについて設定されたRAプリアンブルの中から使用するRAプリアンブルを選択し、選択したRAプリアンブルを含むMessage1を基地局11へ送信してもよい。
【0041】
この変形例によれば、複数の無線端末が同じRAプリアンブルを指定してランダムアクセス手順を実行する確率が低減される。
【0042】
通信手順2の他の変形例によれば、無線端末12は、RAプリアンブルも、Resume IDを用いてスクランブルまたは拡散してもよい。そして無線端末12は、ステップS115にて、スクランブルされ、または拡散されたRAプリアンブルを含むMessage 1を基地局11へ送信してもよい。なお、RAプリアンブルは、基地局11へ伝送される信号の一例である。
【0043】
この変形例によれば、複数の無線端末が同時にMessage 1を送信しても、基地局11は、各無線端末のRAプリアンブルを復号できる。
【0044】
また、通信手順2において、RAプリアンブルがResume IDを用いてスクランブルされ、または拡散されている場合には、基地局11は、RAプリアンブルを送信した無線端末12を特定できるとともに、無線端末12に割り当てられたResume IDも特定できる。そのため、無線端末12は、ステップS117における、アップリンクのデータのスクランブル処理または拡散処理を省略してもよい。そして無線端末12は、ステップS118にて、スクランブルされておらず、かつ、拡散されていないアップリンクのデータを含む再接続要求信号を基地局11へ送信してもよい。
【0045】
また、上記の各通信手順及び変形例において、無線端末12は、Resume IDを用いてスクランブル符号を生成し、生成したスクランブル符号を用いてアップリンクのデータまたはRAプリアンブルをスクランブルしてもよい。あるいは、無線端末12は、Resume IDを用いて拡散符号を生成し、生成した拡散符号を用いてアップリンクのデータまたはRAプリアンブルを拡散してもよい。
【0046】
データをスクランブルする場合、無線端末12は、例えば、3GPPにより策定された、LTEのTS36.211 V8.9.0のセクション6.7.1に規定されている方法にしたがってデータをスクランブルすればよい。すなわち、無線端末12は、スクランブルの対象となるデータを32bitのビット列ごとに分割し、分割したビット列ごとに、32bitのGold符号として作成されたスクランブル符号を加算して得られる値について2による剰余(modulo 2)を計算すればよい。そして無線端末12は、例えば、TS36.211 V8.9.0のセクション7.2に記載されている方法にしたがって、二つの31bitの疑似雑音(Pseudo Noise, PN)シーケンスPN(x
1)、PN(x
2)を組み合わせてGold符号を作成すればよい。その際、無線端末12は、PN(x
1)の初期値を、セクション7.2に記載されているとおり、x
1(0)=0、 x
1(n)=1 (n=1,2,...,30)とする。一方、無線端末12は、PN(x
2)の初期値を、2進数化されたResume ID(例えば、y
1y
2...y
m)とすればよい。
【0047】
また、データを拡散する場合、無線端末12は、Orthogonal Variable Spreading Factor(OVSF)符号を拡散符号として用いることで、データを拡散することができる。この場合、無線端末12は、例えば、送信するデータのビットごとに、OVSF符号のnビットを乗算して得られるビット列(例えば、データのi番目のビットb(i)に、OVSF符号のc(n*i+j)(j=0,1,...,n-1)ビットを乗じて得られるビット列)の2の剰余を算出する。なお、nは、拡散率であり、例えば、2以上の整数に設定される。OVSF符号は、例えば、3GPPにより策定された、W-CDMAの仕様であるTS25.213 V8.5.0のセクション4.3.1.1に記載されている。なお、無線端末12は、OVSF符号の代わりに、Gold符号を拡散符号として用いることで、データを拡散することができる。
【0048】
また、無線端末12は、送信するデータに対して、スクランブルと拡散の両方を実施してもよい。この場合には、無線端末12は、送信するデータを所定長(例えば、4bit)のビット列ごとに分割し、分割したビット列ごとに、所定長のスクランブル符号を用いてスクランブルした後に、所定の拡散率(例えば、4)の拡散符号を用いて拡散すればよい。
【0049】
また、無線端末12は、上記のようなGold符号またはOVSF符号の代わりに、例えば、Resume IDを初期値として生成されるPNシーケンスあるいはZadoff-Chuシーケンスを、スクランブル符号または拡散符号としてもよい。
【0050】
あるいは、上記の各通信手順及び変形例において、無線端末12は、Resume IDと無線端末12の識別番号の両方を用いてスクランブル符号を生成し、生成したスクランブル符号を用いてアップリンクのデータまたはRAプリアンブルをスクランブルしてもよい。あるいは、無線端末12は、Resume IDと無線端末12の識別番号の両方を用いて拡散符号を生成し、生成した拡散符号を用いてアップリンクのデータまたはRAプリアンブルを拡散してもよい。
【0051】
この場合、無線端末12の識別番号として、例えば、Cell-Radio Network Temporary Identifier(C-RNTI)、International Mobile Subscriber Identity(IMSY)、Temporary Mobile Subscriber Identity (TMSI)が用いられる。無線端末12の識別番号は、例えば、無線端末12が有するメモリに予め記憶されるか、あるいは、基地局11から無線端末12へ通知される。
【0052】
この場合も、無線端末12は、例えば、Gold符号、OVSF符号、PN符号あるいはZadoff-Chu符号などの少なくとも一つをスクランブル符号または拡散符号等として用いればよい。例えば、Gold符号をスクランブル符号または拡散符号として用いる場合、無線端末12は、上記と同様に、二つの31bitのPNシーケンスPN(x
1)、PN(x
2)を組み合わせてGold符号を作成すればよい。その際、無線端末12は、PN(x
1)の初期値を、セクション7.2に記載されているとおり、x
1(0)=0、 x
1(n)=1 (n=1,2,...,30)とする。一方、無線端末12は、PN(x
2)の初期値を、2進数化されたResume ID(例えば、y
1y
2...y
m)と2進数化された端末の識別番号(例えば、z
1z
2...z
k)とを結合して作成される結合値(y
1y
2...y
mz
1z
2...z
kあるいはz
1z
2...z
ky
1y
2...y
m)とすればよい。あるいは、無線端末12は、作成した結合値を初期値として生成されるOVSF符号、PN符号あるいはZadoff-Chu符号を、スクランブル符号または拡散符号としてもよい。
【0053】
このように、Resume IDと無線端末12の識別番号とを用いてスクランブル符号または拡散符号が作成されることで、サービスごとにResume IDが割り当てられている場合でも、無線端末12ごとに、スクランブル符号または拡散符号は一意となる。そのため、サービスごとにResume IDが割り当てられている場合でも、基地局11は、複数の無線端末12のそれぞれから送信されたアップリンクのデータまたはRAプリアンブルを復号できる。
【0054】
なお、基地局11も、無線端末12と同様の方法に従って作成したスクランブル符号または拡散符号を用いることで、無線端末12から受信した、スクランブルされ、または拡散されたRAプリアンブルまたはアップリンクのデータをデスクランブルまたは逆拡散できる。
【0055】
上記の実施形態、特に、通信手順1では、基地局11は、無線信号を受信可能なタイミングごとに、記憶している1以上のResume IDのうち、RRC Inactive stateとなっている無線端末に割り当てたResume IDごとに、デスクランブル処理または逆拡散処理を行う。したがって、基地局11が記憶するResume IDの数が増えるほど、デスクランブル処理または逆拡散処理に必要な計算リソースは増加する。
【0056】
そこで変形例によれば、Resume IDの取り得る値の範囲が、複数のサブ範囲に分割されてもよい。そしてサブ範囲ごとに、送信可能なタイミング(以下、単に送信可能タイミングまたは送信タイミングと呼ぶこともある)が設定されてもよい。例えば、サブ範囲ごとに、フレーム内の所定のサブフレームが、サブ範囲に対応する送信タイミングとして設定されてもよい。これにより、基地局11が同時にデスクランブル処理または逆拡散処理を実施するResume IDの数が少なくなるので、デスクランブル処理または逆拡散処理に必要な計算リソースが抑制される。
【0057】
なお、基地局11は、分割されたResume IDのサブ範囲及び/またはサブ範囲ごとの送信タイミングに関する制御情報を、無線端末12に対して報知(通知)してもよいし、回線識別情報と同様に端末に通知してもよい。 また、電話番号等を記憶するSIMカード(Subscriber Identity Module Card)などに、上記の分割されたResume IDのサブ範囲及び/またはサブ範囲ごとの送信タイミングに関する制御情報が記憶されてもよい。あるいは、無線端末12は、自装置の初期設定時にSIMカードから制御情報を読み出して無線端末12の記憶部に記憶させてもよい。
【0058】
なお、一定期間における送信可能なタイミングの数は、サブ範囲が異なっていても同じであってもよく、あるいは、サブ範囲ごとに互いに異なっていてもよい。例えば、サブ範囲ごとに優先度が設定され、優先度が高いサブ範囲ほど、送信可能なタイミングの数が多くなるように、各サブ範囲についての送信可能タイミングが設定されてもよい。その際、優先度は、例えば、サービスの種類、緊急性、またはQoS(特に、許容される遅延の程度)に基づいて設定されてもよい。例えば、緊急性が高いほど、あるいは、許容される遅延が小さいほど、優先度が高くなるように、優先度は設定されてもよい。
【0059】
例えば、サービスごとにResume IDが割り当てられているとする。この場合、緊急性が相対的に高いサービス(例えば、異常検知または故障発生の通知に利用されるサービス)に対応するサブ範囲については、フレーム中のアップリンクの送信に利用可能な全てのサブフレームが送信可能タイミングであってもよい。一方、緊急性が相対的に低いサービス(例えば、データ収集に利用されるサービス)に対応するサブ範囲については、1または複数のフレームのうちの何れかの所定のサブフレームが送信可能タイミングであってもよい。
【0060】
基地局11は、Resume IDを割り当てる際に、無線端末12に提供するサービスに応じて、サービスに対応するサブ範囲に含まれるResume IDを割り当てればよい。
【0061】
また、無線端末ごとにResume IDが割り当てられる場合も同様に、優先度が相対的に高い無線端末に対応するサブ範囲については、フレーム中のアップリンクの送信に利用可能な全てのサブフレームが送信可能タイミングであってもよい。一方、優先度が相対的に低い無線端末に対応するサブ範囲については、1または複数のフレームのうちの何れかの所定のサブフレームが送信可能タイミングであってもよい。
【0062】
基地局11は、Resume IDを割り当てる際に、無線端末12の優先度に応じて、優先度に対応するサブ範囲に含まれるResume IDを割り当てればよい。
【0063】
図4は、この変形例による、通信手順のさらに他の一例に従った、無線通信処理のシーケンス図である。なお、以下のシーケンス図では、無線端末12は、アップリンクのデータを、Resume IDを用いてスクランブルし、スクランブルされたデータを基地局11へ送信するものとする。なお、アップリンクのデータをResume IDを用いて拡散する場合も、以下に示されるシーケンスと同様のシーケンスにしたがって無線通信処理が実行されればよい。また、
図4に示されるシーケンスは、
図2に示されるシーケンスと比較して、ステップS101以前に、ステップS131及びステップS132の処理が行われる点で相違する。そこで以下では、ステップS131及びステップS132の処理について説明する。
【0064】
基地局11は、Resume IDの取り得る値の範囲を複数のサブ範囲に分割することで、複数のサブ範囲を設定する。そして基地局は、サブ範囲ごとに、そのサブ範囲についての送信タイミングを設定する(ステップS131)。そして基地局11は、報知チャネルを介して、各サブ範囲及び各サブ範囲についての送信タイミングを無線端末12へ報知(または通知)する(ステップS132)。ステップS132の後、基地局11及び無線端末12は、ステップS101以降の処理を実行する。
【0065】
なお、基地局11は、ステップS132の処理の代わりに、例えば、ステップS104にて、無線端末12に割り当てられたResume IDとともに、割り当てられたResume IDが属するサブ範囲について設定された送信タイミングを無線端末12へ通知してもよい。あるいは、基地局11は、ステップS104にて、無線端末12に割り当てられたResume IDとともに、各サブ範囲及び各サブ範囲についての送信タイミングを無線端末12へ通知してもよい。あるいはまた、基地局11は、ステップS104の前または後において、無線端末12に割り当てられたResume IDとは別個に、割り当てられたResume IDが属するサブ範囲について設定された送信タイミング、あるいは、各サブ範囲及び各サブ範囲についての送信タイミングを無線端末12へ通知してもよい。
【0066】
以下、上記の実施形態または変形例において用いられる基地局11及び無線端末12の詳細について説明する。
【0067】
図5は、基地局11の概略構成図である。基地局11は、アンテナ21と、無線処理部22と、有線インターフェース部23と、記憶部24と、制御部25とを有する。無線処理部22、記憶部24及び制御部25は、それぞれ別個の回路として形成される。あるいはこれらの各部は、各部に対応する回路が集積された一つまたは複数の集積回路として基地局11に実装されてもよい。
【0068】
アンテナ21は、無線処理部22を介して伝達されたダウンリンク信号を無線信号として送信する。またアンテナ21は、無線端末12からのアップリンク信号を含む無線信号を受信して電気信号に変換し、変換した電気信号をアップリンク信号として無線処理部22に伝達する。なお、アンテナ21は、送信用のアンテナと受信用のアンテナとを別個に有していてもよい。また、無線処理部22は、ダウンリンク信号を送信(通知)することから、無線送信部(無線通知部)の一例である。
【0069】
無線処理部22は、制御部25から受け取ったダウンリンク信号をアナログ化した後、制御部25により指定された無線周波数を持つ搬送波に重畳する。そして無線処理部22は、搬送波に重畳されたダウンリンク信号をハイパワーアンプ(図示せず)により所望のレベルに増幅し、増幅したダウンリンク信号をアンテナ21へ伝達する。
【0070】
また無線処理部22は、アンテナ21から受け取ったアップリンク信号を、低ノイズアンプ(図示せず)により増幅する。無線処理部22は、増幅されたアップリンク信号に、中間周波数を持つ周期信号を乗じることにより、増幅されたアップリンク信号の周波数を無線周波数からベースバンド周波数に変換する。そして無線処理部22は、ベースバンド周波数を持つアップリンク信号をアナログ/デジタル変換した後、制御部25へ渡す。なお、無線処理部22は、アップリンク信号を受信することから、無線受信部の一例である。
【0071】
有線インターフェース部23は、基地局11を、上位ノード13及び他の基地局と接続するための通信インターフェース回路を有する。そして有線インターフェース部23は、上位ノード13から受信した信号を、S1インターフェースに従って解析し、受信信号に含まれるダウンリンク信号及び制御信号を抽出する。さらに有線インターフェース部23は、他の基地局から受信した信号を、X2インターフェースに従って解析し、受信信号に含まれる制御信号を抽出する。そして有線インターフェース部23は、抽出したダウンリンク信号及び制御信号を制御部25に渡す。なお、有線インターフェース部23は、上位ノード13からの信号を受信することから、受信部の一例である。
【0072】
一方、有線インターフェース部23は、制御部25から受け取ったアップリンク信号をS1インターフェースに従った形式の信号に変換した上で上位ノード13へ出力する。また有線インターフェース部23は、他の基地局へ送信する制御信号を、X2インターフェースに従った形式に変換する。そして有線インターフェース部23は、制御信号を他の基地局へ出力(または送信あるいは通知)する。なお、有線インターフェース部23は、他の基地局へ制御信号を送信または通知することから、通知部(または送信部)の一例でもある。
【0073】
記憶部24は、例えば、書き換え不能な不揮発性半導体メモリと、書き換え可能な不揮発性半導体メモリまたは揮発性半導体メモリを有する。そして記憶部24は、無線端末12と通信するための各種の情報、基地局11が送信または受信する各種の情報、及び、基地局11で動作する各種のプログラムなどを記憶する。本実施形態では、記憶部24は、自局と接続されている無線端末12についてのResume機能に関する情報、すなわち、回線設定情報と、対応するResume IDとを記憶する。
【0074】
制御部25は、例えば、1個あるいは複数個のプロセッサ及び周辺回路を有する。そして制御部25は、ダウンリンク信号を、無線通信システム1が準拠する通信規格で採用される変調及び多重化方式に従って変調し、かつ多重化する。そして制御部25は、変調及び多重化されたダウンリンク信号を無線処理部22へ渡す。例えば、制御部25は、F-OFDMに従ってダウンリンク信号を変調し、多重化する。
【0075】
一方、制御部25は、無線処理部22から受け取ったアップリンク信号を、無線通信システム1が準拠する通信規格で採用される変調及び多重化方式に従って分離し、分離した受信信号をそれぞれ復調する。例えば、制御部25は、F-OFDMに従ってアップリンク信号を分離し、復調する。そして制御部25は、復調されたアップリンク信号を有線インターフェース部23に出力する。さらに制御部25は、復調されたアップリンク信号から、基地局11が参照する各種の信号、例えば、呼制御に関する制御情報、あるいは、無線端末12における通信品質測定情報などを取り出す。
【0076】
また制御部25は、送信電力制御及び呼制御など、無線通信を実行するための各種の処理を実行する。さらに、制御部25は、Resume機能に関する各種の処理を実行する。
【0077】
図6は、Resume機能に関する、制御部25の機能ブロック図である。制御部25は、割当部251と、復号部252と、再接続部253とを有する。制御部25が有するこれらの各部は、例えば、制御部25上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、制御部25が有するこれらの各部は、制御部25が有するプロセッサに組み込まれた専用の演算回路であってもよい。
【0078】
割当部251は、無線端末12について回線設定情報が設定されると、回線設定情報に対応するResume IDを割り当てる。そして割当部251は、回線設定情報とともに割り当てたResume IDを記憶部24に保存する。また割当部251は、割り当てたResume IDを含むダウンリンクの制御信号を生成する。そして割当部251は、ダウンリンクの制御信号を、無線端末12がRRC Connected stateとなっている間に、無線処理部22及びアンテナ21を介して無線端末12へ送信する。
【0079】
なお、上記のように、Resume IDは、無線端末12ごとに割り当てられてもよく、あるいは、無線端末12に提供されるサービスごとに割り当てられてもよい。無線端末12に提供されるサービスが複数ある場合、割当部251は、提供されるサービスごとに割り当てられた、複数のResume IDを含むダウンリンクの制御信号を生成し、制御信号を無線処理部22及びアンテナ21を介して無線端末12へ送信してもよい。さらに、Resume IDの値のサブ範囲ごとに送信可能タイミングが設定される場合には、割当部251は、サブ範囲ごとの送信可能タイミングを表す信号(または制御信号、制御情報)を生成してもよい。そして割当部251は、信号を、無線処理部22及びアンテナ21を介して、PDCCHまたはPDSCHにより、RRC Connected stateとなっている無線端末12へ送信してもよい。
【0080】
復号部252は、RRC Inactive stateとなっている無線端末12からアップリンク信号を受信する可能性があるタイミングごとに、記憶しているResume IDのそれぞれを用いて、受信した無線信号に対してデスクランブル処理または逆拡散処理を実行する。なお、Resume IDの値のサブ範囲ごとに送信可能タイミングが設定されている場合には、復号部252は、記憶しているResume IDのうち、タイミングに対応するサブ範囲に属するResume IDのみを用いてデスクランブル処理または逆拡散処理を実行してもよい。
【0081】
また、Resume IDを用いて生成されたスクランブル符号または拡散符号がデータのスクランブルまたは拡散に用いられる場合には、復号部252も、Resume IDごとに、Resume IDを用いてスクランブル符号または拡散符号を生成する。同様に、Resume IDと端末の識別情報の組み合わせを用いて生成されたスクランブル符号または拡散符号が用いられる場合、復号部252は、Resume IDと端末の識別情報の組み合わせごとに、Resume IDと端末の識別情報を用いてスクランブル符号または拡散符号を生成する。そして復号部252は、生成したスクランブル符号を用いてデスクランブル処理を実行し、あるいは、生成した拡散符号を用いて逆拡散処理を実行すればよい。
【0082】
なお、復号部252は、Resume IDが新たに割り当てられる度に、予めスクランブル符号または拡散符号を生成して、記憶部24に保存しておいてもよい。そして復号部252は、デスクランブル処理または逆拡散処理を実行する度に、記憶部24からスクランブル符号または拡散符号を読み出して用いればよい。これにより、復号部252は、デスクランブル処理または逆拡散処理を実行する度に、スクランブル符号または拡散符号を生成しなくてもよいので、演算量が削減される。
【0083】
復号部252は、デスクランブル処理または逆拡散処理を実行することで、RAプリアンブルまたはアップリンクのデータの復号に成功すると、復号されたRAプリアンブルまたはアップリンクのデータを再接続部253へ通知する。さらに、復号部252は、復号に成功したときに用いられたResume IDも再接続部253へ通知する。
【0084】
なお、復号部252は、例えば、デスクランブル処理または逆拡散処理を行うことで得られたデータに付加された誤り検出符号を用いて、誤り検出を行ったときに、検出された誤りが許容範囲内であれば、復号に成功したと判定する。なお、データに付加された誤り検出符号は、例えば、巡回冗長検査(Cyclic Redundancy Check, CRC)符号とすることができる。また、誤り検出符号の代わりに、誤り訂正符号がデータに付加されていてもよい。この場合、デスクランブル処理または逆拡散処理を行うことで得られたデータに付加された誤り訂正符号を用いて、誤り訂正を行ったときに、データの誤りが訂正できれば、復号部252は、復号に成功したと判定してもよい。
【0085】
再接続部253は、通信手順1にしたがって無線端末12が再接続される場合、アップリンクのデータの復号に成功したときに用いられたResume IDと対応する回線設定情報を特定する。そして再接続部253は、特定した回線設定情報にしたがって、有線インターフェース部23を介してアップリンクのデータを上位ノード13へ送信する。また、再接続部253は、再接続許可信号を生成し、再接続許可信号を無線処理部22及びアンテナ21を介して無線端末12へ送信する。
【0086】
また、再接続部253は、通信手順2にしたがって無線端末12が再接続される場合、RAプリアンブルまたはアップリンクのデータの復号に成功したときに用いられたResume IDと対応する回線設定情報を特定する。そして再接続部253は、特定した回線設定情報にしたがって、有線インターフェース部23を介してアップリンクのデータを上位ノード13へ送信する。さらに、再接続部253は、RAレスポンス及び再接続許可信号を生成し、RAレスポンス及び再接続許可信号を、通信手順2にしたがって無線処理部22及びアンテナ21を介して無線端末12へ送信する。
【0087】
図7は、制御部25により実行される、Resume機能を用いた無線通信処理の動作フローチャートである。
【0088】
復号部252は、RRC Inactive stateである無線端末12から無線信号を受信する可能性がある受信タイミングにおいて、記憶している各Resume IDを用いて、受信した無線信号に対してデスクランブル処理または逆拡散処理を実行する(ステップS201)。そして復号部252は、RAプリアンブルまたはアップリンクのデータの復号に成功したか否か判定する(ステップS202)。
【0089】
RAプリアンブル及びアップリンクのデータの何れも復号されない場合(ステップS202−No)、受信タイミングにおいて、基地局11は、RRC Inactive stateとなっている無線端末12からの無線信号を受信していない。そこで復号部252は、次の受信タイミングまで待機する(ステップS203)。その後、制御部25は、ステップS201以降の処理を実行する。
【0090】
一方、RAプリアンブルまたはアップリンクのデータが復号された場合(ステップS202−Yes)、復号部252は、復号されたRAプリアンブルまたはアップリンクのデータと、復号に成功したときに用いられたResume IDを再接続部253へ通知する。
【0091】
再接続部253は、復号に成功したときに用いられたResume IDに対応する回線設定情報を特定する(ステップS204)。そして再接続部253は、特定された回線設定情報にしたがって、復号されたアップリンクのデータを、有線インターフェース部23を介して上位ノード13へ送信する(ステップS205)。また再接続部253は、再接続許可信号などを無線処理部22及びアンテナ21を介して無線端末12へ送信する(ステップS206)。そして制御部25は、Resume機能を用いた無線通信処理を終了する。
【0092】
図8は、無線端末12の概略構成図である。無線端末12は、アンテナ31と、無線処理部32と、記憶部33と、制御部34とを有する。また無線処理部32は、無線送信部321と、無線受信部322とを有する。さらに、無線端末12は、タッチパネルといったユーザインターフェース(図示せず)、マイクロホン(図示せず)、スピーカ(図示せず)及びカメラ(図示せず)のうちの一つ以上を有していてもよい。さらにまた、無線端末12は、無線端末12の位置を測定するために、Global Positioning System(GPS)受信機(図示せず)を有していてもよい。また、無線処理部32、記憶部33及び制御部34は、それぞれ別個の回路として形成される。あるいはこれらの各部は、各部に対応する回路が集積された一つまたは複数の集積回路として無線端末12に実装されてもよい。さらに、無線送信部321と無線受信部322とは、それぞれ、別個の回路として無線端末12に実装されてもよく、あるいは、無線送信部321及び無線受信部322の機能を実現する一つの集積回路として無線端末12に実装されてもよい。
【0093】
アンテナ31は、無線処理部32の無線送信部321を介して伝達されたアップリンク信号を無線信号として送信する。またアンテナ31は、基地局11からの無線信号を受信して電気信号に変換してダウンリンク信号とし、ダウンリンク信号を無線処理部32の無線受信部322に伝達する。なお、アンテナ31は、送信用のアンテナと受信用のアンテナとを別個に有していてもよい。
【0094】
無線処理部32の無線送信部321は、制御部34から受け取ったアップリンク信号をアナログ化した後、制御部34により指定された無線周波数を持つ搬送波に重畳する。そして無線送信部321は、搬送波に重畳されたアップリンク信号をハイパワーアンプ(図示せず)により所望のレベルに増幅し、アップリンク信号をアンテナ31へ伝達する。
【0095】
また無線処理部32の無線受信部322は、アンテナ31から受け取ったダウンリンク信号を、低ノイズアンプ(図示せず)により増幅する。なお、受信するダウンリンク信号には、例えば、Resume IDといった回線識別情報、Resume IDのサブ範囲、Resume IDのサブ範囲について設定される送信タイミングを含む各種制御情報または無線端末12宛てのデータなどが含まれる。無線受信部322は、増幅されたダウンリンク信号に、中間周波数を持つ周期信号を乗じることにより、ダウンリンク信号の周波数を無線周波数からベースバンド周波数に変換する。そして無線受信部322は、ベースバンド周波数を持つダウンリンク信号をアナログ/デジタル変換した後、制御部34へ渡す。
【0096】
記憶部33は、例えば、書き換え不能な不揮発性半導体メモリと、書き換え可能な不揮発性半導体メモリまたは揮発性半導体メモリを有する。そして記憶部33は、基地局11と通信するための各種の情報、無線端末12が送信または受信する各種の情報、及び、無線端末12で動作する各種のプログラムなどを記憶する。さらに、記憶部33は、基地局11から通知されたResume ID及び無線端末12の識別番号を記憶する。さらにまた、記憶部33は、Resume IDの値のサブ範囲ごとの送信可能タイミングが通知されている場合には、サブ範囲ごとの送信可能タイミングを記憶する。
【0097】
制御部34は、例えば、1個あるいは複数個のプロセッサ及び周辺回路を有する。そして制御部34は、アップリンク信号に、CRC符号といった誤り検出符号あるいは誤り訂正符号を付加し、アップリンク信号を、無線通信システム1が準拠する通信規格で採用される変調及び多重化方式に従って変調し、かつ多重化する。そして制御部34は、変調及び多重化されたアップリンク信号を無線処理部32へ渡す。例えば、制御部34は、F-OFDMAに準じた多重化方式に従ってアップリンク信号を変調し、多重化する。
【0098】
一方、制御部34は、無線処理部32から受け取ったダウンリンク信号を、無線通信システム1が準拠する通信規格で採用される変調及び多重化方式に従って分離し、分離した受信信号をそれぞれ復調する。例えば、制御部34は、F-OFDMに従ってダウンリンク信号を分離し、復調する。そして制御部34は、復調された受信信号に含まれる各種の制御情報またはデータを取り出す。そして制御部34は、取り出された制御情報またはデータに応じた処理を実行する。例えば、制御部34は、ダウンリンク信号に音声信号が含まれる場合、スピーカを用いて音声信号を再生する。また制御部34は、ダウンリンク信号にビデオ信号が含まれる場合、タッチパネルを用いてビデオ信号を再生する。
【0099】
さらに制御部34は、接続要求処理など、基地局11との無線通信を実行するための各種の処理を実行する。さらに制御部34は、受信した無線信号の品質を測定する処理を実行してもよい。
【0100】
また制御部34は、Resume機能に関する処理、例えば、RRC Connected stateからRRC Inactive stateへの移行またはその逆といった処理、及び、無線端末12がRRC Inactive stateにある場合における、無線通信処理を実行する。さらに、制御部34は、基地局11から、Resume IDについて設定される少なくとも一つのサブ範囲及びサブ範囲ごとの送信タイミングを受信する場合には、受信した少なくとも一つのサブ範囲及びサブ範囲ごとの送信タイミングを記憶部33に保存する。
【0101】
図9は、Resume機能に関する制御部34の機能ブロック図である。制御部34は、符号化部341を有する。符号化部341は、例えば、制御部34が有するプロセッサ上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、符号化部341は、制御部34が有するプロセッサに組み込まれた専用の演算回路であってもよい。
【0102】
例えば、
図2に示される通信手順1に従う場合、符号化部341は、記憶部33に記憶されているResume IDを用いて、誤り検出符号または誤り訂正符号が付加されたアップリンクのデータをスクランブルまたは拡散する。その際、符号化部341は、Resume IDそのものをスクランブル符号または拡散符号として用いてもよく、あるいは、符号化部341は、Resume IDを用いてスクランブル符号または拡散符号を生成し、生成したスクランブル符号または拡散符号を用いてもよい。あるいはまた、符号化部341は、Resume IDと無線端末12の識別番号を用いてスクランブル符号または拡散符号を生成し、生成したスクランブル符号または拡散符号を用いてもよい。
【0103】
なお、無線端末12が複数のサービスの提供を受けており、複数のサービスのそれぞれごとにResume IDが通知されていることがある。このような場合、符号化部341は、送信しようとするアップリンクのデータに関連するサービスについて割り当てられたResume IDを、データをスクランブルまたは拡散するために用いればよい。
【0104】
制御部34は、スクランブルされ、または拡散されたデータを含む再接続要求信号を生成し、再接続要求信号を無線処理部32及びアンテナ31を介して基地局11へ送信する。なお、Resume IDのサブ範囲ごとの送信可能タイミングが通知されている場合には、制御部34は、スクランブルまたは拡散に用いたResume IDが属するサブ範囲に対応する送信可能タイミングにて、再接続要求信号を基地局11へ送信する。そして制御部34は、アンテナ31及び無線処理部32を介して基地局11から受信した再接続許可信号においてACKが含まれていると、データが伝送されたと判断する。
【0105】
また、
図3に示される通信手順2に従う場合、制御部34は、RAプリアンブルを含むランダムアクセス手順のMessage 1を生成し、Message 1を無線処理部32及びアンテナ31を介して基地局11へ送信する。その際、符号化部341は、RAプリアンブルも、記憶部33に記憶されているResume IDを用いてスクランブルまたは拡散してもよい。
【0106】
また、符号化部341は、Resume IDを用いてアップリンクのデータをスクランブルまたは拡散する。そして制御部34は、スクランブルまたは拡散されたデータを含む再接続要求信号を生成する。
【0107】
そして制御部34は、基地局11からRAレスポンスを受信すると、RAレスポンスに含まれるTA情報を用いて基地局11と同期を取り(または送信タイミングを調整し)、UL Scheduling Grantとで指示されたリソースを利用して再接続要求信号を送信する。この場合も、制御部34は、アンテナ31及び無線処理部32を介して基地局11から受信した再接続許可信号においてACKが含まれていると、データが伝送されたと判断すればよい。
【0108】
以上に説明してきたように、この無線通信システムでは、RRC Inactive stateとなっている無線端末がアップリンクの信号を送信する際、信号をResume IDを用いてスクランブルまたは拡散する。これにより、RRC Inactive stateとなっている複数の無線端末がアップリンクの信号を送信する場合でも、基地局において信号間の衝突が防止され、基地局は、個々の無線端末からのアップリンクの信号を識別できる。そのため、無線端末がアップリンクの信号を送信するよりも前に、基地局が無線端末に対して送信タイミング及び利用可能な無線リソースを通知しなくてもよい。また、無線端末は、アップリンクの信号を送信するよりも前に、基地局へ送信許可要求を送信しなくてもよく、かつ、滞留データ量を通知しなくてもよい。一方、基地局が無線端末へUL Scheduling Grantを含む送信許可を送信しなくても、無線端末は、アップリンクの信号を送信できる。したがって、この無線通信システムは、RRC Inactive stateとなっている無線端末がアップリンクの信号を送信する際の制御情報の通信量の増加を抑制できる。その結果として、この無線通信システムは、無線端末がアップリンクの信号を送信可能になるまでの時間を短縮することができる。
【0109】
ここに挙げられた全ての例及び特定の用語は、読者が、本発明及び当該技術の促進に対する本発明者により寄与された概念を理解することを助ける、教示的な目的において意図されたものであり、本発明の優位性及び劣等性を示すことに関する、本明細書の如何なる例の構成、そのような特定の挙げられた例及び条件に限定しないように解釈されるべきものである。本発明の実施形態は詳細に説明されているが、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。