特許第6940057号(P6940057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6940057比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6940057
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/54 20060101AFI20210909BHJP
【FI】
   C09C1/54
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-106403(P2020-106403)
(22)【出願日】2020年6月19日
(65)【公開番号】特開2021-1327(P2021-1327A)
(43)【公開日】2021年1月7日
【審査請求日】2020年6月19日
(31)【優先権主張番号】201910539720.8
(32)【優先日】2019年6月19日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520224546
【氏名又は名称】焦作市和▲興▼化学工▲業▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】▲賈▼水利
(72)【発明者】
【氏名】焦菊▲ラン▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼▲寧▼▲寧▼
【審査官】 青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第106543777(CN,A)
【文献】 特開平07−228796(JP,A)
【文献】 特開平06−345994(JP,A)
【文献】 特開2013−199641(JP,A)
【文献】 特表2009−503182(JP,A)
【文献】 特開2009−035598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/54
C01B 32/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先にアセチレンを導入し、アセチレンを燃焼させて1500〜1800℃の反応エリアを形成させ、さらに気態の炭化水素系原料を前記反応エリアに導入して熱分解反応を行い、熱分解反応の温度が1300〜1500℃下で安定した後、生成物を収集することを含み、
前記炭化水素系原料は、芳香族炭化水素又はオレフィンを含み、
前記アセチレンと前記炭化水素系原料との質量比は1:0.1〜1:0.4である
ことを特徴とする比表面積を収める導電カーボンブラックの生産方法。
【請求項2】
前記芳香族炭化水素は、トルエン及び/又はベンゼンを含み、
前記オレフィンは、エチレン、プロピレン及びブタジェンのうちの1種又は複数種を含むことを特徴とする請求項1に記載の比表面積を収める導電カーボンブラックの生産方法。
【請求項3】
前記アセチレンと前記炭化水素系原料との質量比が1:0.2〜1:0.4であることを特徴とする請求項1に記載の比表面積を収める導電カーボンブラックの生産方法。
【請求項4】
前記アセチレンと前記炭化水素系原料との質量比が1:0.2〜1:0.3であることを特徴とする請求項3に記載の比表面積を収める導電カーボンブラックの生産方法。
【請求項5】
アセチレンと気態の炭化水素系原料とを予め設定される混合方式で反応エリアに輸送し、混合されたアセチレンと気態の炭化水素系原料とを反応エリアにおいて熱分解反応させ、熱分解反応の温度が1300〜1500℃下で安定した後、生成物を収集することを含み、
前記予め設定される混合方式は、アセチレンが前記炭化水素系原料を覆う方式であり、
前記炭化水素系原料は、芳香族炭化水素又はオレフィンを含み、
アセチレンと前記炭化水素系原料との質量比は1:0.1〜1:0.4である
ことを特徴とする比表面積を収める導電カーボンブラックの生産方法。
【請求項6】
前記輸送が、第1端から第2端まで延在する材料輸送柱を有し、前記材料輸送柱が内層と外層とを備え、
内層により気態の炭化水素系原料を輸送する第1チャンバが形成され、前記第1チャンバが、前記第1端に設けられる第1材料入口と前記第2端に設けられる第1材料出口とを有し、
前記内層と前記外層との間にアセチレンガスを輸送する第2チャンバが形成され、前記第2チャンバが、前記第1端に設けられる第2材料入口と前記第2端に設けられる第2材料出口とを有する材料輸送設備を用いて行われる、請求項5に記載の比表面積を収める導電カーボンブラックの生産方法
【請求項7】
前記第1材料出口に第1ノズルが設けられ、前記第2材料出口に第2ノズルが設けられ、前記第1ノズルが、前記第1ノズルにより噴出される材料と前記第2ノズルにより噴出される材料とを均一に混合するように、その中心に対して外へ傾斜する
ことを特徴とする請求項6に記載の比表面積を収める導電カーボンブラックの生産方法
【請求項8】
前記材料輸送設備は材料添加装置を有し、前記材料添加装置は、
前記材料輸送柱と接続され、常温下で液態の前記炭化水素系原料を気態に加熱する加熱装置と、
前記加熱装置と接続され、前記炭化水素系原料を貯える貯蔵タンクと、
前記貯蔵タンクに設置され、前記炭化水素系原料を圧送する増圧ポンプと、を備える
ことを特徴とする請求項6に記載の比表面積を収める導電カーボンブラックの生産方法
【請求項9】
前記材料添加装置は、前記加熱装置と前記材料輸送柱との間に設置され、前記炭化水素系原料の輸送量を示す流量計を備える
ことを特徴とする請求項8に記載の比表面積を収める導電カーボンブラックの生産方法
【請求項10】
前記材料添加装置は、前記加熱装置と前記材料輸送柱との間に設置され、材料添加装置のオン、オフを制御する電動弁を備える
ことを特徴とする請求項8に記載の比表面積を収める導電カーボンブラックの生産方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、導電カーボンブラックの調製の技術分野に属し、具体的に、比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法及び材料輸送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
カーバイド法で生産されるアセチレンブラックは、熱伝導性、導電性が優れる。生産した導電カーボンブラックの粒径が小さいほど、比表面積が大きくなり、比表面積が大きいほど、カーボンブラックの熱伝導性、導電性がより優れる。
【0003】
しかしながら、導電カーボンブラック粒子の粒径が比較的に小さい場合、材料混合加工を行うとき、材料は、凝集し、均一に混合することが難しいので、複合材料の性能が影響される。このため、一部の応用分野では、例えばリチウム電池分野では、導電カーボンブラックの比表面積を40〜80m/gに収めるように要求される。過大又は過小になると、正負極の材料の全体性能が影響される。アセチレンの熱分解による生産では、常用方法により調製できた導電カーボンブラックの比表面積が80m/g以上となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、比表面積が主に40〜80m/gとなる導電カーボンブラックを調製することができる比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法及び材料輸送設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願における実施例は下記のように実現される。
【0006】
第1の局面は、本出願における例による比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法が、混合されたアセチレンと炭化水素系原料とを、1300〜1500℃で熱分解反応させることを含み、炭化水素系原料が、炭化水素系化合物のうちの1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0007】
上記の技術案では、アセチレンの熱分解反応の温度が通常1800℃前後であり、アセチレンのみを導入して熱分解反応させる場合、1800℃下で得た導電カーボンブラックの比表面積が通常80m/g以上となる。アセチレンと炭化水素系原料とを混合して熱分解反応させる場合、温度が1300〜1500℃に低下した。熱分解の温度を制御することにより、調製できた導電カーボンブラックの比表面積が主に40〜80m/gとなる。
【0008】
第1の局面において、本出願における第1の局面の第1種の好ましい例として、上記の炭化水素系原料は、芳香族炭化水素、オレフィン及び天然ガスのうちの1種又は複数種を含み、芳香族炭化水素が、トルエン及び/又はベンゼンを含み、オレフィンが、エチレン、プロピレン及びブタジェンのうちの1種又は複数種を含む。
【0009】
上記の例では、芳香族炭化水素、オレフィン及び天然ガスの熱分解による放熱がアセチレンより少なく、芳香族炭化水素、オレフィン及び天然ガスの熱分解反応の温度が600〜1300℃である。放熱がより少なく、熱分解反応の温度がより低い芳香族炭化水素、オレフィン、天然ガスとアセチレンとを混合して熱分解させる場合、熱分解反応の温度を1300〜1500℃に収めることができ、これによって、熱分解により調製できた導電カーボンブラックの比表面積が主に40〜80m/gとなる。
【0010】
トルエン、ベンゼンは常用の芳香族炭化水素であり、エチレン、プロピレン及びブタジェンは常用のオレフィンであり、上記の芳香族炭化水素及びオレフィン原料は、広く入手可能であるので、安価で、導電カーボンブラックの生産プロセスに用いられる場合、コストを抑えることができる。
【0011】
第1の局面において、本出願における第1の局面の第1種の好ましい例として、上記のアセチレンと炭化水素系原料との質量比が1:0.1〜1:0.4であり、
【0012】
好ましくは、アセチレンと炭化水素系原料との質量比が1:0.2〜1:0.4であり、
【0013】
好ましくは、アセチレンと炭化水素系原料との質量比が1:0.2〜1:0.3である。
【0014】
上記の例では、アセチレンと炭化水素系原料とを1:0.1〜1:0.4の質量比で混合する場合、熱分解による放熱が多いアセチレンと熱分解による放熱が少ない炭化水素系原料とを混合して熱分解反応を行うときの温度を1300〜1500℃に収めることができ、調製できた導電カーボンブラックの比表面積が主に40〜80m/gであることを保証できる。
【0015】
第1の局面において、本出願における第1の局面の第1種の好ましい例として、上記の導電カーボンブラックの調製方法が、先にアセチレンガスを導入し、燃焼させて反応エリアを形成し、第1の時間で反応させたあと、気態の炭化水素系原料を反応エリアに導入し、第2の時間で反応し続けたあと、生成物を収集し始める。
【0016】
上記の例では、先にアセチレンガスを導入し、燃焼させて反応エリアを形成し、反応の温度が1500〜1800℃となり、熱分解反応が開始したあと、さらに気態の炭化水素系原料を反応エリアに導入し、アセチレンと気態の炭化水素系原料とが混合されてともに熱分解反応して放熱し、温度が1300〜1500℃にゆっくりと安定したあと、生成物を収集し始める。このとき、収集された導電カーボンブラックの比表面積の分布及び粒径の分布は比較的に均一であり、比表面積が主に40〜80m/gである。
【0017】
第2の局面は、本出願における例による比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法が、アセチレンと炭化水素系原料とを予め設定される混合方式で反応エリアに輸送し、混合されたアセチレンと炭化水素系原料とを反応エリアにおいて1300〜1500℃で熱分解反応させることを含み、予め設定される混合方式が、アセチレンが炭化水素系原料を覆う方式であり、炭化水素系原料が、炭化水素系化合物のうちの1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0018】
上記の技術案では、アセチレンの熱分解反応の温度が通常1800℃前後であり、アセチレンのみを導入して熱分解反応させる場合、1800℃下で得た導電カーボンブラックの比表面積が一般的に80m/g以上となる。アセチレンと炭化水素系原料とを、アセチレンが炭化水素系原料を覆う方式で混合して熱分解反応させる場合、温度が1300〜1500℃に低下した。熱分解の温度をコントロールすることにより、調製できた導電カーボンブラックの比表面積が主に40〜80m/gとなる。この混合方式は、安定性が優れ、反応エリアの温度の分布が均一で、部分温度が高い又は低い状況が避けられる。
【0019】
第3の局面は、本出願における例による材料輸送設備が、上記の比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法を実施するためのものであり、第1端から第2端まで延在する材料輸送柱を有し、材料輸送柱が内層を外層とを備え、内層により第1チャンバが形成され、第1チャンバが、第1端に設けられる第1材料入口と第2端に設けられる第1材料出口とを有し、内層と外層との間に第2チャンバが形成され、第2チャンバが、第1端に設けられる第2材料入口と第2端に設けられる第2材料出口とを有する。
【0020】
上記の技術案では、第1チャンバと第2チャンバとが、それぞれ独立して設けられ、それぞれ材料入口と材料出口とを有し、第2チャンバが第1チャンバに周設され、第2チャンバの材料出口が第1チャンバの材料出口に周設されるので、第2チャンバの材料出口から送出される材料が第1チャンバの材料出口から送出される材料を覆うことができる。
【0021】
第3の局面において、本出願における第3の局面の第1種の好ましい例として、上記の第1材料出口に第1ノズルが設けられ、第2材料出口に第2ノズルが設けられ、第1ノズルが、第1ノズルにより噴出される材料と第2ノズルにより噴出される材料とを均一に混合するように、その中心に対して外へ傾斜する。
【0022】
上記の例では、第1ノズル及び第2ノズルは、第1材料出口、第2材料出口から送出される材料を分散することに寄与できる。そして、第1材料出口に設けられる第1ノズルは、その中心に対して外へ傾斜するので、第1材料出口から材料を放射状に送出し、第2材料出口から送出される材料とよりよく混合させることに寄与できる。
【0023】
第3の局面において、本出願における第3の局面の第2種の好ましい例として、上記の材料輸送設備が、材料添加装置を有し、材料添加装置が、材料輸送柱と接続され、常温下で液態の炭化水素系原料を気態に加熱する加熱装置と、加熱装置と接続され、炭化水素系原料を貯える貯蔵タンクと、貯蔵タンクに設置され、炭化水素系原料を圧送する増圧ポンプとを備える。
【0024】
上記の例では、材料添加装置は、材料輸送柱に、処理された原料を提供するためのものである。材料添加装置は、材料輸送柱と連通し、材料を貯えて、貯えられる材料を加熱、加圧して材料輸送柱に輸送する。
【0025】
第3の局面における第2種の好ましい実施形態において、本出願における第3の局面の第3種の好ましい例として、材料添加装置が、加熱装置と材料輸送柱との間に設置され、炭化水素系原料の輸送量を示す流量計を備える。
【0026】
上記の例では、流量計に示される輸送量の示度により、材料の輸送速度を適当なタイミングで効果的にコントロールすることができる。
【0027】
第3の局面における第2種の好ましい実施形態において、本出願における第3の局面の第3種の好ましい例として、上記の材料添加装置は、加熱装置と材料輸送柱との間に設置され、材料添加装置のオン、オフを制御する電動弁を備える。
【0028】
上記の例では、電動弁で材料添加装置のオン、オフを制御することにより、材料輸送設備全体のオン、オフを制御し、不意な状況が発生する場合にすぐオフにし、更なる悪影響を避けることができる。
【0029】
以下、本出願における実施例の技術案をより明瞭に説明するため、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明する。説明する図面は、本出願の一部の実施例を示すものに過ぎず、範囲を限定するものではない。当業者は、発明能力を用いなくても、これらの図面に基づいてその他の関連図面を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本出願における実施例による材料輸送柱の構成模式図である。
図2】本出願における実施例による材料輸送柱の正面図である。
図3】本出願における実施例による材料輸送柱の第1断面図である。
図4】本出願における実施例による材料輸送柱の第2断面図である。
図5】本出願における実施例による材料輸送柱の材料出口の平面図である。
図6】本出願における実施例による材料輸送柱の材料出口の構成模式図である。
図7】本出願における実施例による材料輸送装置の構成模式図である。
図8】本出願における実施例による材料添加装置の構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、実施例を用いて本出願の実施案を詳細に説明するが、下記の実施例は、本出願を説明するものに過ぎず、本出願の範囲を限定するものではない。実施例において、具体的な条件を明記しないものについて、従来の条件又はメーカーの勧めの条件下で行うことが可能である。使用する試剤又は器械のうちの製造メーカーが明記されていないものが、市販の従来品を使用することが可能である。
【0032】
アセチレンの熱分解反応は、放熱反応である。別途の手段で反応炉内の反応エリアの温度を800℃以上に上昇させたあと、アセチレンが熱分解反応し始める。そして、アセチレンの熱分解反応が放熱反応であるため、反応が自動に進行でき、最後に1800℃前後で安定に行われる。
【0033】
熱分解反応の温度が1800℃前後になったとき、調製できた導電カーボンブラックは、比表面積が主に80m/g以上であり、このような比表面積の導電カーボンブラックの粒径が比較的に小さい。その導電性及び熱伝導性が優れるが、材料混合加工を行うとき、凝集しやくなり、材料を均一に混合すること難しいので、調製できた複合材料の性能が影響される。このため、一部の応用分野では、例えばリチウム電池分野では、導電カーボンブラックの比表面積を40〜80m/gに収めるように要求される。過大又は過小になると、正負極の材料の全体性能が影響される。それで、比表面積が主に40〜80m/gとなる導電カーボンブラックの調製に用いられる比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法及び材料輸送設備を提供する。
【0034】
以下、本出願における実施例による比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法及び材料輸送設備を具体的に説明する。
【0035】
本出願に係る比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法は、混合されたアセチレンと炭化水素系原料とを、1300〜1500℃で熱分解反応させることを含み、炭化水素系原料が、炭化水素系化合物のうちの1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0036】
アセチレンの熱分解は、放熱反応であり、一定の温度に達したあと、アセチレンの熱分解反応により十分の熱を提供できるので、アセチレンの熱分解が持続して自動に進行でき、反応が安定になったとき、アセチレンの熱分解反応の温度が1800℃となる。
【0037】
一部の炭化水素系原料の熱分解も放熱反応であるが、単位質量あたりの放熱量がアセチレンより少ない。これらの炭化水素系原料を熱分解反応させ、反応が安定になったとき、熱分解反応の放熱で達する温度が600〜1300℃である。
【0038】
アセチレンと炭化水素系原料とを所定の比例で混合する場合、放熱が少ない炭化水素系原料により、放熱が多いアセチレンの放熱を低減させることができるので、アセチレンのみの反応系に対して、同質量のアセチレンと炭化水素系原料との混合系による放熱がより少ない。これによって、熱分解反応の温度を1800℃から1300〜1500℃まで低下させ、熱分解で比表面積が主に40〜80m/gである導電カーボンブラックを調製することができる。
【0039】
なお、本出願における実施例では、熱分解反応の温度が、1300〜1500℃であるが、1300〜1400℃、1400〜1500℃、1300℃、1400℃又は1500℃であってもよい。本出願のその他の実施例では、熱分解反応の温度が1290℃、1510℃等であってもよい。
【0040】
本出願における実施例では、調製できた導電カーボンブラックは、比表面積が主に40〜80m/gであり、比表面積が主に50〜70m/gである導電カーボンブラックと、比表面積が主に60〜80m/gである導電カーボンブラックとを含む。
【0041】
先に反応炉内にアセチレンガスを持続して導入し、アセチレンガスを燃焼させて1500〜1800℃の反応エリアを形成させ、熱分解反応を誘発する。そして、気態の炭化水素系原料を持続して導入してアセチレンと混合させて熱分解反応を行い、温度が1300〜1500℃で安定したあと、生成物を収集する。
【0042】
或いは、反応炉を加熱して温度を800℃まで上昇させ、アセチレンガスと気態の炭化水素系原料とを同時に持続して導入し、温度が上昇し始めたあと、加熱装置を外し、温度が1300〜1500℃で安定したあと、生成物を収集する。
【0043】
好ましくは、炭化水素系原料が、芳香族炭化水素、オレフィン及び天然ガスのうちの1種又は複数種を含む。
【0044】
好ましくは、芳香族炭化水素が、トルエン及び/又はベンゼンを含む。
【0045】
好ましくは、オレフィンが、エチレン、プロピレン及びブタジェンのうちの1種又は複数種を含む。
【0046】
本出願における実施例では、炭化水素系原料が、トルエン、ベンゼン、又はトルエンとベンゼンとの混合物を含む芳香族炭化水素であってもよく、エチレン、プロピレン、ブタジェン、エチレンとプロピレンとの混合物、エチレンとブタジェンとの混合物、プロピレンとブタジェンとの混合物、又はエチレン、プロピレン及びブタジェンの混合物を含むオレフィンであってもよい。本出願のその他の実施例では、炭化水素系原料が、天然ガス、又は天然ガスとエチレンとの混合物であってもよい。
【0047】
トルエン、ベンゼンが常用の芳香族炭化水素であり、エチレン、プロピレン及びブタジェンが常用のオレフィンであり、上記の芳香族炭化水素及びオレフィンの原料は、広く入手可能であるので、安価で、導電カーボンブラックの生産プロセスに用いられる場合、コストを抑えることができる。
【0048】
アセチレンと炭化水素系原料との質量比を1:0.1〜1:0.4にする。アセチレンと炭化水素系原料とを質量比が1:0.1〜1:0.4で混合するとき、熱分解による放熱が多いアセチレンと熱分解による放熱が少ない炭化水素系原料とを混合して熱分解反応を行うときの温度を1300〜1500℃に収めることができる。これによって、調製できた導電カーボンブラックの比表面積が主に40〜80m/gであることを保証できる。
【0049】
好ましくは、アセチレンと炭化水素系原料との質量比が1:0.2〜1:0.4である。
【0050】
好ましくは、アセチレンと炭化水素系原料との質量比が1:0.2〜1:0.3である。
【0051】
本出願に係る比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法は、アセチレンと炭化水素系原料とを予め設定される混合方式で反応エリアに輸送し、反応エリアにおいて混合されたアセチレンと炭化水素系原料とを1300〜1500℃で熱分解反応させることを含み、
【0052】
予め設定される混合方式が、アセチレンで炭化水素系原料を覆う方式であり、
【0053】
炭化水素系原料が、炭化水素系化合物のうちの1種又は複数種の組み合わせを含む。
【0054】
アセチレンで炭化水素系原料を覆う方式は、アセチレンと炭化水素系原料とを反応エリアに同時に送り、同時に熱分解反応させることに寄与できるので、反応エリアの温度の分布が均一になる。これによって、部分温度が高い又は低い状況が避けられ、粒径均一な導電カーボンブラックを得ることに寄与できる。
【0055】
図1図2図3図4及び図5に示すように、本出願に係る上記比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法を実施するための材料輸送設備は、第1端101から第2端102まで延在する材料輸送柱100を有し、材料輸送柱100が内層110と外層120とを備える。
【0056】
内層110により第1チャンバ111が形成され、第1チャンバ111が、第1端101に設けられる第1材料入口112と第2端102に設けられる第1材料出口113とを有する。
【0057】
内層110と外層120との間に第2チャンバ121が形成され、第2チャンバ121が、第1端101に設けられる第2材料入口122と第2端102に設けられる第2材料出口123とを有する。
【0058】
該材料輸送設備は、上記の比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法を実施するためのものであり、アセチレンガスと気態の炭化水素系原料とを反応炉に輸送し、さらに反応エリアに輸送するものである。
【0059】
材料輸送柱100における第1チャンバ111と第2チャンバ121は、それぞれ独立して設けられ、それぞれが材料入口及び材料出口を有し、2種の材料を同時に輸送することができる。第2チャンバ121が第1チャンバ111に周設され、第2チャンバ121の材料出口が第1チャンバ111の材料出口に周設されるので、第2チャンバ121の材料出口から送出される材料が第1チャンバ111の材料出口から送出される材料を覆うことができる。
【0060】
該材料輸送設備は、上記の比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法を実施することに用いられる場合、第1チャンバ111により気態の炭化水素系原料を輸送し、第2チャンバ121によりアセチレンガスを輸送する。第2チャンバ121の第2材料出口123は第1チャンバ111の第1材料出口113に周設されるため、アセチレンガスが気態の炭化水素系原料を覆いながら材料輸送柱100から送出されて最後に反応エリアに輸送されて熱分解反応することができる。
【0061】
本出願では、第2材料入口122の位置及び形状は限定されない。本出願における実施例では、第1材料入口112及び第2材料入口122は、円形の材料入口であり、第2材料入口122が第1材料入口112の一側に設けられる。材料が、第2材料入口122から入ったあと、ガスの流動性で環状の第2チャンバ121に沿って運動して第2チャンバ121の全領域を満たす。本出願におけるその他の実施例では、第2材料入口122は、環状の第2チャンバ121に対応するとともに第1材料入口112に周設される環状の材料入口であってもよい。
【0062】
図5図6に示すように、第1材料出口113に第1ノズル114が設けられ、第2材料出口123に第2ノズル124が設けられ、第1ノズル114が、第1ノズル114により噴出される材料と第2ノズル124により噴出される材料とを均一に混合するように、その中心に対して外へ傾斜する。
【0063】
第1ノズル114及び第2ノズル124は、第1材料出口113、第2材料出口123から送出される材料を分散することに寄与できる。そして、第1材料出口113に設けられる第1ノズル114は、中心に対して外へ傾斜し、傾斜角が10〜30°である。傾斜して設けられるので、第1材料出口113から材料を放射状に送出し、第2材料出口123から送出される材料とよりよく混合させることに寄与できる。
【0064】
図7に示すように、好ましくは、材料輸送設備は、材料輸送柱100の材料入口に接続されるとともに、材料を貯えて、貯えられる材料に対して加熱、加圧の処理を行って材料輸送柱100に輸送する材料添加装置200をさらに有する。
【0065】
該材料輸送設備は、上記の比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法を実施することに用いられる場合、材料輸送柱100が反応炉300の炉口に設置され、アセチレン輸送装置400が材料輸送柱100の第2材料入口122に接続される。アセチレン貯蔵タンクは、アセチレンガスを、材料輸送柱100の第2材料入口122を介して材料輸送柱100の第2チャンバ121に輸送するためのものである。材料添加装置200は、炭化水素系原料を貯えて、液態の炭化水素系原料を気態に加熱し、そして加圧して材料輸送柱100の第1材料入口112を介して材料輸送柱100の第1チャンバ111に輸送するためのものである。
【0066】
図8に示すように、材料添加装置200は、加熱装置210と、増圧ポンプ220と、貯蔵タンク230と、流量計240と、電動弁250とを備える。貯蔵タンク230と加熱装置210とが接続され、加熱装置210と材料輸送柱100とが接続され、貯蔵タンク230と加熱装置210との間に増圧ポンプ220が設置され、加熱装置210と材料輸送柱100との間に流量計240及び電動弁250が設置される。貯蔵タンク230は炭化水素系原料を貯えるためのものであり、加熱装置210は常温下で液態の炭化水素系原料を気態に加熱するためのものであり、増圧ポンプ220は炭化水素系原料を圧送するためのものであり、流量計240は炭化水素系原料の輸送量を示すためのものであり、電動弁250は材料添加装置200のオン、オフを制御するためのものである。
【0067】
好ましくは、加熱装置210は、炭化水素系原料を100〜150℃に加熱する。
【0068】
増圧ポンプ220は、気態の炭化水素系原料を40〜60kPaに増圧し、アセチレン輸送装置400は、アセチレンガスを40〜60kPaに増圧し、増圧された気態の炭化水素系原料と増圧されたアセチレンガスが材料輸送柱100により反応エリアに直接輸送されて熱分解反応する。
【0069】
以下、実施例を用いて本出願に係る比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法及び材料輸送設備をより詳細に説明する。
【0070】
実施例1
【0071】
本出願における実施例による比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法は、材料輸送設備により70m/hの速度で反応炉にアセチレンガスを導入し、燃焼させて反応エリアを形成し、40min反応させて温度が1600℃に達したあと、11.7m/hの速度で反応炉にアセチレンガスを導入し、同時に58.3m/hの速度で反応炉に気態のトルエンを導入し、熱分解系が80min反応したあと、反応エリアの温度が1400℃前後で安定になり、生成物を収集し始める。
【0072】
実施例2
【0073】
本出願における実施例による比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法は、材料輸送設備により70m/hの速度で反応炉にアセチレンガスを導入し、燃焼させて反応エリアを形成し、40min反応させて温度が1600℃に達したあと、63.6m/hの速度で反応炉にアセチレンガスを導入し、同時に6.4m/hの速度で反応炉に気態のベンゼンを導入し、熱分解系が80min反応したあと、反応エリアの温度が1500℃前後で安定になり、生成物を収集し始める。
【0074】
実施例3
【0075】
本出願における実施例による比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法は、材料輸送設備により70m/hの速度で反応炉にアセチレンガスを導入し、燃焼させて反応エリアを形成し、40min反応させて温度が1600℃に達したあと、50m/hの速度で反応炉にアセチレンガスを導入し、同時に20m/hの速度で反応炉にエチレンガスを導入し、熱分解系が80min反応したあと、反応エリアの温度が1300℃前後で安定になり、生成物を収集し始める。
【0076】
比較例1
【0077】
本出願における比較例による比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法は、材料輸送設備により70m/hの速度で反応炉にアセチレンガスを導入し、燃焼させて反応エリアを形成し、熱分解系が120min反応したあと、温度が1800℃に達し、生成物を収集し始める。
【0078】
比較例2
【0079】
本出願における比較例による比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法は、材料輸送設備により70m/hの速度で反応炉にアセチレンガスを導入し、燃焼させて反応エリアを形成し、40min反応させて、温度が1750℃に達したあと、水冷により反応炉を冷却し、熱分解系が80min反応したあと、生成物を収集し始める。
【0080】
比較例3
【0081】
本出願における比較例による比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法は、材料輸送設備により70m/hの速度で反応炉にアセチレンガスを導入し、燃焼させて反応エリアを形成し、40min反応させて温度が1600℃に達したあと、66.7m/hの速度で反応炉にアセチレンガスを導入し、同時に3.3m/hの速度で反応炉に気態のトルエンを導入し、熱分解系が80min反応したあと、反応エリアの温度が1700℃前後で安定になり、生成物を収集し始める。
【0082】
比較例4
【0083】
本出願における比較例による比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法は、材料輸送設備により70m/hの速度で反応炉にアセチレンガスを導入し、燃焼させて反応エリアを形成し、40min反応させて温度が1600℃に達したあと、46.7m/hの速度で反応炉にアセチレンガスを導入し、同時に23.3m/hの速度で反応炉に気態のトルエンを導入し、熱分解系が80min反応したあと、熱分解反応が終了する。
【0084】
実験例1
【0085】
実施例1〜3及び比較例1〜4により調製できた導電カーボンブラックの生成物をそれぞれ収集し、測定した導電カーボンブラックの比表面積の分布が表1に示すようになる。
【0086】
【表1】
【0087】
実施例1と比較例1の比較から分かるように、熱分解反応の温度が高いほど、導電カーボンブラックの比表面積が大きくなる。アセチレンのみを用いる熱分解により調製できた導電カーボンブラックの比表面積は84±2m/gとなり、40〜80m/gという比表面積の要求範囲を超えた。
【0088】
実施例1と比較例2の比較から分かるように、水冷により反応炉の温度を低下させる場合、冷却が不均一で、反応エリアの温度差が比較的に大きい。調製できた導電カーボンブラックの比表面積は、81±10m/gとなり、その分布もばらつきになる。そして、水冷による反応エリアに対する温度低下効果が顕著でない。
【0089】
実施例1と比較例3、4の比較から分かるように、アセチレンと炭化水素系原料との質量比が高すぎる場合、調製できた導電カーボンブラックの比表面積は、79±2m/gとなり、すべて40〜80m/gの基準を満たしていない。アセチレンと炭化水素系原料との質量比が低すぎる場合、アセチレンの熱分解反応が止まる。
【0090】
上記のように、本出願に係る比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法は、アセチレンと放熱量がより少ない炭化水素系原料とを共に熱分解させることにより、熱分解反応の温度が1300〜1500℃に収められ、調製できた導電カーボンブラックの比表面積が主に40〜80m/gであるとともに比表面積の分布が均一になり、生産要求を満たすことができる。材料輸送設備は、2種の反応原料を均一に混合でき、材料輸送設備を上記の比表面積を効果的に収める導電カーボンブラックの生産方法を実施することに用いる場合、アセチレンガスと気態の炭化水素系原料との均一の混合に寄与できるので、反応エリアの温度の分布が均一になり、部分温度が高い又は低い状況が避けられ、調製できた導電カーボンブラックの比表面積の分布が均一である。
【0091】
上記は、本出願の具体的な実施例にすぎず、本出願を限定するものではなく、当業者にとって、本出願が各種の変更や改良されてもよい。本出願の精神及び主旨から逸脱しない限り、行われる如何なる変更、均等置換、改良等は、いずれも本出願の保護範囲内に属する。
【符号の説明】
【0092】
100 材料輸送柱
101 第1端
102 第2端
110 内層
111 第1チャンバ
112 第1材料入口
113 第1材料出口
114 第1ノズル
120 外層
121 第2チャンバ
122 第2材料入口
123 第2材料出口
124 第2ノズル
200 材料添加装置
210 加熱装置
220 増圧ポンプ
230 貯蔵タンク
240 流量計
250 電動弁
300 反応炉
400 アセチレン輸送装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8