(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6940070
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】ハウス用防風ネット
(51)【国際特許分類】
A01G 9/14 20060101AFI20210909BHJP
A01G 13/00 20060101ALI20210909BHJP
A01G 13/02 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
A01G9/14 S
A01G9/14 K
A01G13/00 B
A01G13/02 B
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-217522(P2017-217522)
(22)【出願日】2017年11月10日
(65)【公開番号】特開2019-88192(P2019-88192A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2020年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】392002918
【氏名又は名称】日本ワイドクロス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】510180968
【氏名又は名称】株式会社興農園
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】野田 良信
(72)【発明者】
【氏名】田中 穂積
【審査官】
坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−68448(JP,A)
【文献】
特開2001−136843(JP,A)
【文献】
特開平10−327684(JP,A)
【文献】
特開平6−153710(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3156759(JP,U)
【文献】
特開2017−217829(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3186590(JP,U)
【文献】
特表2014−531900(JP,A)
【文献】
実開昭63−187841(JP,U)
【文献】
実開昭51−133639(JP,U)
【文献】
特開昭54−105026(JP,A)
【文献】
実開昭62−193846(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/14
A01G 13/00
A01G 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織編成されたネット状であり、ハウスに被せて使用されるハウス用防風ネットであって、
基布に複数本の遮光テープが間隔をあけて織り込まれており、
前記遮光テープが、一定幅のテープ状をなし全体が白色で光反射性を有するものである
ハウス用防風ネット。
【請求項2】
前記遮光テープが不織布製である
請求項1に記載のハウス用防風ネット。
【請求項3】
前記遮光テープが遮熱性を有するものである
請求項1または請求項2に記載のハウス用防風ネット。
【請求項4】
前記遮光テープが、相互間に隙間をあけて平行に織り込まれた
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のハウス用防風ネット。
【請求項5】
前記基布が、透明のモノフィラメントからなる
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のハウス用防風ネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、台風や強風から農業用ハウスを保護するために用いられるようなハウス用防風ネットに関する。
【背景技術】
【0002】
農業用ハウス、特に合成樹脂フィルムを被覆材として用いたいわゆるパイプハウスでは、ハウス表面を構成する被覆材を防風ネットで押さえて被覆材の破れを防ぐことが行われている。
【0003】
防風ネットは網状であるが、被覆材の上を覆うものであるため、光の透過が抑制されて作物の生育に影響が出るおそれがある。このため下記特許文献1では、防風ネットの透光率を80%以上としている。
【0004】
しかし、防風ネットはまた、被覆材に対して密着するので、特許文献1にも記載されているように、被覆材の表面に雨水や露等がたまりやすい。このため、コケやカビの発生により光の透過率が低下することがある。
【0005】
また、防風ネットは被覆材に対して圧力をかけた状態で密着しているので、コケやカビが生える場合には、被覆材にできた凹みやしわに沿って広範囲に広がりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4556837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、必要な光の入射を確保できるようにするとともに、被覆材の表面環境を良好に保つことを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのための手段は、織編成されたネット状であり、ハウスに被せて使用されるハウス用防風ネットであって、基布に複数本の遮光テープが間隔をあけて織り込まれており、前記遮光テープが、一定幅のテープ状をなし全体が白色で光反射性を有するものである、ハウス用防風ネットである。
【0009】
この構成では、基布に織り込まれた複数本の遮光テープが、ハウス内に入射しようとする光を遮るが、遮光テープのない部分では光の入射を許容する。そして遮光テープの表面(ハウスと反対側)と裏面(ハウス側)では、光を反射させ散乱させて、ハウスに対する光の透過性を劣化させずにハウス内を明るく保つ。
【0010】
また、基布に織り込まれた遮光テープは、基布を構成する糸とは異なりハウスの表面に沿って真っ直ぐに延びて、ハウスの表面との間にたまろうとする水の排出を促す。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、遮光テープを備えて一部光の入射を遮るものの、遮光テープの全体が光反射性を有するので、光の入射を確保できる。また、遮光テープがハウス表面の水の排出を促すので、ハウスの表面環境を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】ハウス用防風ネットを被覆した状態の農業用ハウスの斜視図。
【
図4】ハウス用防風ネットを被覆した状態の農業用ハウスの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1に、ハウス用防風ネット11(以下、「防風ネット」という。)の表面図を示す。この図に示すように防風ネット11は、織編成されたネット状であり、より具体的には、たてよこの糸で織成されたネット状である。この防風ネット11は、例えば
図2に示したように、農業用ハウス21(以下、「ハウス」という。)の合成樹脂フィルムからなる被覆材22に被せて使用される。防風ネット11のハウス21に対する被覆は、適宜の部位に対して行われるが、図示例のようなパイプハウスの場合、一般的には妻部の所定範囲の部分と、側面部の風を強く受ける部分に被覆される。
図2では、妻部側の部分のみに被覆を行った例を示している。
【0014】
防風ネット11は、基布13と遮光テープ15で構成される。つまり、基布13に複数本の遮光テープ15が間隔をあけて織り込まれている。基布13は、経糸13aと緯糸13bにポリエチレン等からなる透明のモノフィラメントを使用して平織したものであり、所定幅の帯状に形成される。基布13は、通気を可能にする複数の網目を有している。網目の形状は正方形状であるとよく、網目の大きさは、害虫の侵入防止や抑制にも兼用できる大きさ、例えば0.6mm〜2mm程度にしてもよい。
【0015】
遮光テープ15は、一定幅のテープ状をなし全体が白色で光反射性を有するものである。好ましくは、不織布製であり、遮熱性を兼ね備えるものであるとよい。
【0016】
このような遮光テープ15の素材としては、0.5μm〜10μm程度のポリエチレンの極細長繊維に熱を加えて結合したシート材(不織布シート)が好適に用いられる。具体的には、デュポン社の「タイベック(登録商標)」を用いるとよい。「タイベック(登録商標)」からなる遮光テープ15は、耐水性にすぐれ、透湿性と通気性を有し、耐久性が高い。そして光反射率が高く、熱吸収率はほとんどゼロであるので太陽光にさらされても蓄熱せず、熱を遮る遮熱性を有するという特性を備えている。
【0017】
遮光テープ15は一定幅のテープ状である。遮光テープ15の幅は適宜設定されるが、基布13の目合よりも幅広である。目合に対応する幅、つまり経糸13aや緯糸13b間に収まる幅に設定するとすれば、遮光テープ15が極めて細いものとなって存在意義がなくなるか、目合が極めて大きなものとなってハウス21の被覆材22を押さえて保護するという機能が減殺するものとなってしまうからである。
【0018】
遮光テープ15の基布13に対する織り込みは、相互間に隙間をあけて平行に行う。具体的には、長手方向に延びる経糸13aに沿わせる。前述のように遮光テープ15の幅は基布13の目合よりも広いので、遮光テープ15を織り込む部分には経糸13aを入れず、遮光テープ15の表裏両面が緯糸13bに挟まれて保持された状態となる。
【0019】
遮光テープ15同士の間は、光を通す透光部17であり、基布13を構成する経糸13aと緯糸13bのみからなる網目状であり、遮光テープ15を有する部位と同様に平行に並んでいる。透光部17の幅は防風ネット11全体の遮光率又は透光率を考慮して適宜設定されるが、ハウス21内により多くの光を取り込むためには遮光テープ15の幅よりも広く設定する。
【0020】
以上のように構成された防風ネット11は、
図2に例示したように、ハウス21の被覆材22における補強すべき部分に上から張る。
【0021】
図3に、被覆材22の上に防風ネット11が重なった状態の断面図を示す。
図3に示すように、被覆材22の表面は防風ネット11で覆われて押さえられることになるが、外からの光は遮光テープ15間の透光部17を通って入射する。透光部17を構成するモノフィラメントは透明であるので透光性が高い。
【0022】
遮光テープ15を有する部分では光の入射は妨げられることになるものの、遮光テープ15の表面と裏面では光の反射がなされる。このため、遮光テープ15を備えても、防風ネット11全体としての光の入射量は確保でき、遮光テープ15の表面での光の散乱とも相まってハウス21内を明るく保てる。この結果、防風ネット11を使用しても作物の生育に悪影響を与えないようにすることができる。
【0023】
また、遮光テープ15は、基布13の経糸13aに沿って織り込まれており、経糸13aや緯糸13bよりも広い一定幅のテープ状であるので、基布13に織り込まれた状態において大きく波打たない比較的伸びた状態で存在する。このため、被覆材22に接した状態において、遮光テープ15のない部分との間での構造の違いから、遮光テープ15が水の移動のためのガイドとなって、被覆材22との間にたまろうとする水の排出を促す。
【0024】
しかも、遮光テープ15は極細長繊維からなる不織布であって、透湿性や通気性を有するので、遮光テープ15自体を通じても、被覆材22との間にたまりがちな水を排出する。特に、遮光テープ15が相互間に隙間をあけて平行に並んでいるので、排水は円滑に行われる。そのうえ遮光テープ15は遮熱性を有し、それ自体が熱を持つことを回避できる。
【0025】
このため、被覆材22の表面がコケやカビの発生しやすい状況になることを抑えて、コケやカビの発生を抑制することができる。つまり、被覆材22の表面環境を良好に維持できるので、この点からも、光の透過率が低下して作物の生育に影響を与えることを抑制できる。
【0026】
さらに、前述のように被覆材22の表面環境を良好にできるので、被覆材22の劣化を抑制でき、遮光テープ15自体が耐久性も有するものでもあるので、防風ネット11の本来の目的を十分に発揮させることができる。
【0027】
また、遮光テープ15は全体が白色で光反射性を有するものであるので、層構造にして片面だけに光反射性を備える場合とは異なり、構成が簡素であり、使用に際して裏表を考慮する必要もないため、取扱いが容易である。
【0028】
以上のように防風ネット11は、全体として十分な光透過性を有するうえに、接する被覆材22上の水を排出する機能を有するので、光透過性を確保できる。このため、防風ネット11はハウス21の妻部など部分的にではなく、例えば
図4に示したようにハウス21の全体または略全体を覆って使用しても、作物の十分な生育をはかることができる。
【0029】
以上はこの発明を実施するための一形態の構成であり、この発明は前述の構成のみに限定されるものではなく、その他の構成を採用することもできる。
【0030】
たとえば、遮光テープ15を織り込む態様は、前述のように平行に間隔をあけて織り込むだけではなく、遮光テープ15同士が交差するように織り込んでもよく、編織組織は適宜選定できる。
【符号の説明】
【0031】
11…ハウス用防風ネット
13…基布
15…遮光テープ
21…農業用ハウス
22…被覆材