(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スリット(130)が設けられた回転ディスク(120)の回転を、エンコーダ検出部(140)により検出し、前記回転ディスク(120)の回転角度をエンコーダ処理部(150)により算出するエンコーダ装置であって、
前記エンコーダ検出部(140)は、単一の受光部(142)の中に、角度データ生成に必要な受光素子組として第1受光部(142A)と第2受光部(142B)とを、所定の配置として前記スリット(130)に対向する位置であって、前記回転ディスク(120)の半径方向の異なる位置に複数有し、
前記エンコーダ処理部(150)は、複数の前記受光素子組で得られる受光信号を1回転の角度データに変換し、前記角度データと、前記配置に関する配置情報とから、1回転の前記角度データの絶対値精度誤差を算出し、前記絶対値精度誤差を用いて1回転の前記角度データの絶対精度を補正して前記回転角度を算出する際に、前記第1受光部(142A)の受光信号から算出される第1角度データP1、前記第2受光部(142B)の受光信号から算出される第2角度データP2、前記第1角度データP1に含まれる絶対値精度誤差Δ1、前記第2角度データP2に含まれる絶対値精度誤差Δ2、回転中心から前記第1受光部(142A)までの光学半径r1、回転中心から前記第2受光部(142B)までの光学半径r2を用いて、回転角度θを、θ=P1−Δ1=P1−(r2/(r2−r1))・(P1−P2)と算出し、算出した前記回転角度を外部に出力する、
エンコーダ装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のエンコーダ装置の実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0013】
実施の形態1.
はじめに、本発明の実施の形態1におけるエンコーダ装置100の基本的な構成について、
図1と
図2を参照して説明する。
図1は、本発明の実施の形態1におけるエンコーダ装置100の回路構成を示す構成図である。
図2は、本発明の実施の形態1におけるエンコーダ装置100の主要部の構成を示す概要図である。
【0014】
[エンコーダ装置100の構成]
図1において、エンコーダ装置100は、回転体1の回転角度を算出するものであり、主に、回転軸110、回転ディスク120、エンコーダ検出部140、及びエンコーダ処理部150を備えている。このエンコーダ装置100において、回転体1の回転角度を算出する際に、角度データに含まれる絶対値精度誤差の補正を行う。
【0015】
回転ディスク120には、
図2に示すように、放射状のスリット130が形成されている。回転ディスク120は、回転軸110により回転体1に接続されている。従って、スリット130が形成された回転ディスク120は、回転体1と同じ回転速度で回転する。
【0016】
エンコーダ検出部140は、回転ディスク120を挟むように発光部141と受光部142とを有している。従って、エンコーダ検出部140は、発光部141により回転ディスク120のスリット130を照射し、スリット130を透過した透過光を受光部142により受光する透過型センサであり、回転ディスク120の回転を光学的に検出する。なお、回転ディスク120にスリット130の代わりに反射型パターンを形成した場合は、エンコーダ検出部140に反射型センサを用いることができる。
【0017】
エンコーダ検出部140の受光部142の詳細な構成を
図3に示す。
図3は、本発明の実施の形態1における受光部142の詳細な構成を示す概要図である。エンコーダ検出部140において、単一の受光部142は、第1受光部142Aと、第2受光部142Bとを、回転ディスク120の周方向には同じ位置であり、回転ディスク120の半径方向には異なる位置に配置している。
【0018】
なお、第1受光部142Aと第2受光部142Bとは、それぞれ、4個の受光素子の組からなる受光素子組により構成されている。すなわち、単一の受光部142の中に、角度データ生成に必要な受光素子組を所定の配置により複数有している。
ここで、受光素子組を構成する4個の受光素子は、a+,a−,b+,b−を割り当てられている。これらa+,a−,b+,b−の各受光素子からの信号を加減算することにより、互いに位相の異なる二相の角度データ算出用の受光信号を得ることができる。
【0019】
エンコーダ処理部150には、角度データ変換部151Aと、角度データ変換部151Bと、誤差計算部152と、補正部153と、出力部154とが設けられている。角度データ変換部151Aは、第1受光部142Aからの二相の受光信号を演算処理し、第1角度データP1を算出する。角度データ変換部151Bは、第2受光部142Bからの二相の受光信号を演算処理し、第2角度データP2を算出する。なお、1つの角度データ変換部を高速に切り替えて、第1角度データP1と第2角度データP2とを算出してもよい。また、角度データ変換部151A及び151Bの入力にレベル補正回路を配置してもよい。
【0020】
誤差計算部152は、第1角度データP1、第2角度データP2、及び後述する配置情報を参照して、第1角度データP1に含まれる1回転に1周期の絶対値精度誤差Δ1を算出する。補正部153は、第1角度データP1から絶対値精度誤差Δ1を減算して、1回転の角度データの絶対精度を補正して、回転ディスク120の回転角度θを算出する。出力部154は、回転ディスク120の回転角度θを外部機器に対して出力する。出力部154は、回転角度θを外部機器に対して出力するために、通信機能を備えていてもよい。
【0021】
[エンコーダ装置100の処理]
次に、エンコーダ装置100において、回転ディスク120のスリット130の回転を光学的に検出して回転角度θを算出する際の処理を説明する。ここで、回転角度θを算出する際に使用される用語、パラメータ、またはデータは、以下の通りである。
【0022】
エンコーダ装置100において、回転ディスク120の回転中心と、スリット130のパターン中心とが一致していない場合、スリット130は1回転の周期において真円とは異なる状態でエンコーダ検出部140に回転が検出されることになる。このため、エンコーダ処理部150において算出される角度データには、真の回転角度θに対して1回転に1周期の誤差を含んでいる。この1回転に1周期の誤差を絶対値精度誤差と呼ぶ。
【0023】
実施の形態1におけるパラメータは以下のように定義される。
誤差の生じていない回転ディスク120の回転角度をθ(rad)、
第1受光部142Aでのスリット130の受光信号により角度データ変換部151Aで算出される第1角度データをP1(rad)=θ+Δ1、
第2受光部142Bでのスリット130の受光信号により角度データ変換部151Bで算出される第2角度データをP2(rad)=θ+Δ2、
第1角度データP1に含まれる絶対値精度誤差をΔ1(rad)、
第2角度データP2に含まれる絶対値精度誤差をΔ2(rad)、
とする。
【0024】
回転ディスク120の回転中心と、スリット130のパターン中心とが一致していない状態を、
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の実施の形態1における配置情報として、回転ディスク120の回転中心から受光部142までの光学半径を示す説明図である。
図4において、C1は回転ディスク120の回転中心、C2はスリット130のパターン中心である。そして、回転中心C1から第1受光部142Aまでの距離を光学半径r1、回転中心C1から第2受光部142Bまでの距離を光学半径r2、回転ディスク120の回転中心C1とスリット130のパターン中心C2の間の距離をズレδ、とする。
ここで、光学半径r1及びr2は、第1受光部142Aと第2受光部142Bを構成する複数の受光素子組の配置に関する配置情報である。なお、配置情報には、これ以外にも、複数の受光素子組間の距離や角度等の情報を含んでいてもよい。
【0025】
誤差計算部152は、以下のようにして絶対値精度誤差Δ1を算出する。ここで、絶対値精度誤差Δ1は、
Δ1=(δ/r1)・sinθ
と表すことができる。
また、絶対値精度誤差Δ2は、
Δ2=(δ/r2)・sinθ
と表すことができる。
以上の絶対値精度誤差Δ1及びΔ2の2つの式を整理して、sinθを除くと、
Δ1=(r2/(r2−r1))・(Δ1−Δ2)
となる。
【0026】
そして、P1=θ+Δ1、P2=θ+Δ2を用いて、上記Δ1の式からΔ2を消去すると、
Δ1=(r2/(r2−r1))・(P1−P2)
と表すことができる。
すなわち、誤差計算部152は、第1角度データP1、第2角度データP2、及び光学半径r1及びr2を用いて、絶対値精度誤差Δ1を算出することができる。
ここで、Δ1を算出する式のうち(r2/(r2−r1))は定数である。このため、誤差計算部152は、第1角度データP1と第2角度データP2との差分と、定数とにより、高速に絶対値精度誤差Δ1を算出することができる。
【0027】
補正部153は、誤差計算部152において計算された絶対値精度誤差Δ1を用いて、
θ=P1−Δ1
のように、回転角度θを算出する。ここで、補正部153は、角度データ変換部151Aで算出された第1角度データP1から、誤差計算部152で算出されたΔ1を減算するだけなので、高速に回転角度θを算出することができる。
【0028】
すなわち、エンコーダ処理部150は、第1受光部142Aの受光信号から算出される第1角度データP1と、第2受光部142Bの受光信号から算出される第2角度データP2と、第1受光部142Aの光学半径r1と、第2受光部142Bの光学半径r2とを用いて、回転角度θを
θ=P1−Δ1=P1−(r2/(r2−r1))・(P1−P2)
のように算出することができる。
ここで、(r2/(r2−r1))は定数であるため、第1角度データP1及びP2と定数とから、高速かつ高精度に回転角度θを算出することが可能である。
【0029】
[比較例(エンコーダ装置100A)の構成と動作]
ここで、実施の形態1のエンコーダ装置100の比較例として、従来のエンコーダ装置100Aの構成を説明する。
図5は、従来のエンコーダ装置100Aの主要部の構成を示す概要図である。
【0030】
図5において、スリット130が設けられた回転ディスク120は、回転軸110を介して検出対象の回転体1に接続され、回転体1と同じ速度で回転する。2つのエンコーダ検出部140Aと140Bとは、それぞれ発光部と受光部とを備え、回転ディスク120の回転中心を挟んで対向する位置に設けられ、回転する回転ディスク120のスリット130による光の通過と遮断とを検出する。
【0031】
回転ディスク120の回転中心とスリット130のパターン中心とが一致していない場合、エンコーダ検出部140Aの受光信号から算出される第1角度データと、エンコーダ検出部140Bの受光信号から算出される第2角度データとに含まれる絶対値精度誤差は、理論的に180°の位相差を有している。従って、第1角度データと第2角度データとを平均することで、1回転に1周期の絶対値精度誤差は相殺されて消滅する。
【0032】
以上のように、従来のエンコーダ装置100Aは、エンコーダ検出部140Aと140Bとを、回転ディスク120の回転中心を挟んで対向する位置に正確に配置する必要があるため、エンコーダ装置100が大型化する。また、エンコーダ検出部140Aと140Bとを設ける必要があるため、部品点数の増加によりコストが上昇する。そして、平均することによって絶対値精度誤差を相殺するために、2つのエンコーダ検出部140A及び140Bの位置について、第1角度データに含まれる絶対値精度誤差と第2角度データに含まれる絶対値精度誤差との位相差を正確に180°にするように細かな調整が必要になり、設置作業性が悪化する。
【0033】
[エンコーダ装置100とエンコーダ装置100Aの対比]
以上説明したように、実施の形態1のエンコーダ装置100は、回転ディスク120のスリット130の回転を光学的に検出して回転角度θを算出する際に、従来のエンコーダ装置100Aと比較して、単一のエンコーダ検出部140を用いることができるため、装置大型化とコスト上昇を招かず、面倒な調整を必要とせずに容易に設置でき、検出された角度に含まれる絶対値精度誤差を解消することができる。
【0034】
[実施の形態の効果]
実施の形態1のエンコーダ装置100は、回転ディスク120に設けられたスリット130を、エンコーダ検出部140により光学的に検出し、回転ディスク120の回転角度θをエンコーダ処理部150が算出するものであり、エンコーダ検出部140は、第1受光部142Aと第2受光部142Bとを、回転ディスク120の半径方向の異なる位置に有する。エンコーダ処理部150は、第1受光部142Aでのスリット130の受光信号により角度データ変換部151Aで算出される第1角度データをP1=θ+Δ1、第2受光部142Bでのスリット130の受光信号により角度データ変換部151Bで算出される第2角度データをP2=θ+Δ2、第1角度データP1に含まれる絶対値精度誤差をΔ1、第2角度データP2に含まれる絶対値精度誤差をΔ2、回転中心C1から第1受光部142Aまでの距離を光学半径r1、回転中心C1から第2受光部142Bまでの距離を光学半径r2、とした場合に、回転角度θをθ=P1−Δ1=P1−(r2/(r2−r1))・(P1−P2)と算出する。
【0035】
ここで、エンコーダ装置100は、1つのエンコーダ検出部140により回転ディスク120のスリット130の回転を光学的に検出して、絶対値精度誤差を含まない回転角度θを検出するため、装置の大型化とコスト上昇を招くことがなく、小型化することができる。また、エンコーダ装置100は、1つのエンコーダ検出部140により回転ディスク120のスリット130の回転を光学的に検出して、絶対値精度誤差を含まない回転角度θを検出するため、2つのエンコーダ検出部を使用する従来のような面倒な調整を必要とせず、容易に設置できるようになる。
【0036】
実施の形態1のエンコーダ装置100において、エンコーダ処理部150は、第1受光部142Aの検出結果から第1角度データP1を算出する角度データ変換部151Aと、第2受光部142Bの検出結果から第2角度データP2を算出する角度データ変換部151Bと、絶対値精度誤差Δ1を算出する誤差計算部152と、第1角度データP1から絶対値精度誤差Δ1を減算して回転角度θを算出する補正部153とを備え、誤差計算部152は、絶対値精度誤差Δ1、絶対値精度誤差Δ2、光学半径r1、及び光学半径r2を用いて、絶対値精度誤差Δ1をΔ1=(r2/(r2−r1))・(P1−P2)と算出し、補正部153は回転角度θをθ=P1−Δ1と算出する。ここで、誤差計算部152は、第1角度データP1と第2角度データP2との差分と、定数(r2/(r2−r1))とにより、高速に絶対値精度誤差Δ1を算出することができる。そして、補正部153は、第1角度データP1から、誤差計算部152で算出された絶対値精度誤差Δ1を減算するだけなので、高速かつ高精度に回転角度θを算出することができる。
【0037】
[その他の実施の形態]
エンコーダ検出部140は、第1受光部142Aと第2受光部142Bとを、回転ディスク120の半径方向の異なる位置に配置する具体例を示したが、配置はこれに限定されるものではなく、各種の配置の変更が可能である。そして、第1受光部142Aと第2受光部142Bとを配置を変更した場合には、その配置に応じた計算を行うことで、絶対値精度誤差Δ1を算出し、高精度に回転角度θを算出することができる。
【0038】
エンコーダ処理部150において、出力部154からデータを出力する具体例を示したが、外部機器と通信する通信部に置き換えることが可能である。
【0039】
図1に示したエンコーダ装置100の構成において、エンコーダ処理部150内の誤差計算部152を、(P1−P2)を算出する減算部と、(r2/(r2−r1))・(P1−P2)を算出する乗算部とに分けてもよい。
【0040】
また、
図1に示したエンコーダ装置100の構成において、エンコーダ処理部150内の誤差計算部152と補正部153とを一体化して、回転角度θについて、θ=P1−(r2/(r2−r1))・(P1−P2)を、一体化した演算処理部により一度に算出するようにしてもよい。
【解決手段】スリットが設けられた回転ディスク120の回転を、エンコーダ検出部140により検出し、回転ディスク120の回転角度をエンコーダ処理部150により算出するエンコーダ装置であって、エンコーダ検出部140は、単一の受光部142の中に、角度データ生成に必要な受光素子組を所定の配置により複数有し、エンコーダ処理部150は、複数の受光素子組で得られる受光信号を1回転の角度データに変換し、角度データと、配置に関する配置情報とから、1回転の角度データの絶対値精度誤差を算出し、絶対値精度誤差を用いて1回転の角度データの絶対精度を補正して回転角度を算出し、算出した前記回転角度を外部に出力する。