特許第6940151号(P6940151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6940151
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】熱溶着装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/20 20060101AFI20210909BHJP
   B29C 65/56 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   B29C65/20
   B29C65/56
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-5727(P2018-5727)
(22)【出願日】2018年1月17日
(65)【公開番号】特開2019-123157(P2019-123157A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2020年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】509294922
【氏名又は名称】ムネカタインダストリアルマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067091
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100198797
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 裕
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 悠
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−228074(JP,A)
【文献】 特開2010−005891(JP,A)
【文献】 特開昭56−080420(JP,A)
【文献】 特開2016−141101(JP,A)
【文献】 特開昭61−177230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00−65/82
F16B 5/00− 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂成形品に形成された溶着ボスを被固定物側に設けた固定穴内に通して、この固定穴から突出した溶着ボスの先端側をカシメ止めするための熱溶着装置であって、この熱溶着装置の熱溶着チップは、中空の冷却パイプの先端に一体に形成されていること、
前記冷却パイプはベースブロックに対して取り付けられたリニアブッシュ内で摺動する中空つば付きリニアシャフトを介して取り付けられていること、
前記リニアブッシュ下側には同軸にコイルスプリングが取り付けられていて、このコイルスプリングの下端は前記リニアシャフトに係止されたカラーに当着されていること、
前記リニアシャフトにはリニアシャフト上端のツバに当着して前記ベースブロックに対して間隔調整自在のスライドブロックが連結されていること、
を特徴とする熱溶着装置。
【請求項2】
前記熱溶装置であって、前記スライドブロックにはその下降位置を検出する近接センサーが内蔵されていることを特徴とする、請求項1に記載の熱溶着装置
【請求項3】
前記熱溶着装置の前記リニアブッシュと、前記リニアシャフトと、前記コイルスプリングと、前記冷却パイプと、前記熱溶着チップと、前記スライドブロックとで構成される溶着ユニットが、前記べースブロック に2以上の複数配置されていることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の熱溶着装置。
【請求項4】
前記熱溶着装置の前記熱溶着チップがインパルス加熱方式であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱溶着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂成形品へ被固定物を固定する際に、熱可塑性樹脂成形品の一部に溶着ボスと称される溶着又は変形部を予め形成し、この溶着ボスを被固定物側の固定穴内に通し、又は被固定物側に形成した係合部に係合するようにして突出させた先端側を熱で溶融又は変形することにより、熱可塑性樹脂成形品に被固定物をカシメ止めする熱溶着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂成形品(以下「成形品」と称す。)へ被固定物をカシメ止めする熱溶着装置として、特許文献1に開示されている熱溶着装置が公知である。この熱溶着装置は熱溶着チップ先端の抵抗発熱体を加熱して溶着ボスを溶融加熱し、溶着ボスを所望の形状に成形後、熱溶着チップに具備する冷却パイプに冷却エアーを供給して溶着ボスを速やかに冷却固化してカシメ止めする熱溶着装置である
【0003】
この熱溶着装置は図4に示すように、抵抗発熱体3と冷却パイプ5を同軸に配置た熱溶着チップ2と、前記熱溶着チップ2の冷却パイプ5をクランプして前進後退動作をするためのスライドレール21とスプリング11、前記熱溶着チップ2の動作位置を検出するストロークセンサー(光電センサー)25及び取付ベース21で構成される熱溶着装置20(昇降ブロック)を図示しないエアーシリンダーまたは電動シリンダーで上下させる構造である。
【0004】
熱溶着チップ2が溶着ボスを押す強さ(押圧)の調整はスプリング11の与圧量をアジャスターナット24で行い、カシメ止めの完了は熱溶着チップ2が設定した位置まで降下した事をストロークセンサー25で検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−042527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この熱溶着装置には次のような問題がある。
熱溶着装置は昇降ブロック上に、熱溶着チップと前記熱溶着チップを溶着ボスのカシメ方向に付勢しするためのスプリングと、熱溶着チップを上下に摺動させるためのスライドガイドと熱溶着チップの位置を検出するストロークセンサーなど多数の部品で構成されるため、構造が複雑であった。
【0007】
さらに、成形品にカシメ止めする被固定物は年々小型化して高密度で配置されるため、カシメ止めする溶着ボスの間隔が狭くなり、熱溶着装置を小型化して狭小部の溶着を可能にする必要がある。しかし、従来の熱溶着装置は熱溶着チップを上下に摺動させる部品の構成上狭い間隔で配置することが難しかった。本発明の目的は、狭い間隔で配置された溶着ボスをカシメ止め出来るコンパクトな熱溶着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の熱溶着装置は、熱可塑性樹脂成形品に形成された溶着ボスを被固定物側に設けた固定穴内に通して、この固定穴から突出した溶着ボスの先端側をカシメ止めするための熱溶着装置であって、この熱溶着装置の熱溶着チップは、中空の冷却パイプの先端に一体に形成されていること、前記冷却パイプはベースブロックに対して取り付けられたリニアブッシュ内で摺動する中空つば付きリニアシャフトを介して取り付けられていること、前記リニアブッシュ下側には同軸にコイルスプリングが取り付けられていて、このコイルスプリングの下端は前記リニアシャフトに係止されたカラーに当着されていること、前記リニアシャフトにはリニアシャフト上端のツバに当着して前記ベースブロックに対して間隔調整自在のスライドブロックが連結されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項2に記載の熱溶着加工装置は、請求項1に記載の熱溶装置であって、前記スライドブロックにはその下降位置を検出する近接センサーが内蔵されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項3に記載の熱溶着装置は、請求項1又は請求項2に記載の熱溶着装置であって、前記リニアブッシュと、前記リニアシャフトと、前記コイルスプリングと、前記冷却パイプと、前記熱溶着チップと、前記スライドブロックとで構成される溶着ユニットが、前記ベースブロックの平面上に2以上の複数個配置されるように構成して成ることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、請求項4に記載の熱溶着装置は、請求項1ないし請求項3に記載の熱溶着装置であって、前記熱溶着チップがインパルス加熱方式であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の熱溶着装置によれば、熱溶着チップと同軸にスプリングとリニアブッシュを配置することで、溶着チップがスムーズに上下摺動可能になると同時に軽量でコンパクトな熱溶着装置とすることができる。
【0013】
請求項2に記載の熱溶着装置によれば、スライドブロックに近接センサーを内蔵して配置することにより、カシメ止め加工後の溶着チップの下降位置を検知することが可能となり、カシメ止め加工後の高さ精度を確認することでカシメ止め加工の品質管理が可能となる。
【0014】
請求項3に記載の熱溶着装置によれば、溶着ユニットを狭い間隔で配置することが可能となり、被固定物を高密度で配置してカシメ止め加工することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の熱溶着装置によれば、小型軽量で加工時間の短い熱溶着装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】熱溶着装置の全体を示す説明図
図2】熱溶着装置の断面を示す説明図
図3】熱溶着装置の溶着ユニット17を示す説明図
図4】従来の熱溶着装置を示す説明図
図5】カシメ止め加工開始を示す説明図
図6】カシメ止め加工完了を示す説明図
図7】本発明の熱溶着装置を複数配置した例を示す説明図
図8】従来のの熱溶着装置を複数配置した例を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の熱溶装置1を図1図3を用いて説明する。本発明の熱溶着装置1は、中空の冷却パイプ5の先端にインパルス加熱方式の熱溶着チップ2を一体に形成している。熱溶着チップ2の発熱部3は冷却パイプ5と絶縁材4を介して同軸に形成され、発熱部3先端の当接部3aはカシメ形状に合わせて略半球形に形成されている。当接部3aの形状は略半球形に限定されるものではなく、所望するカシメ形状に応じて適宜設定されることは言うまでもない。発熱部3は電線6a,6bから供給される電流によりインパルス加熱され、冷却パイプ5から供給される冷却エアーで冷却される。
【0018】
前記冷却パイプ5はベースブロック8に取り付けられたリニアブッシュ9内を摺動する中空つば付きのリニアシャフト10を介して取り付けられている。熱溶着チップ2とリニアシャフト10は一体でリニアブッシュ9内を上下に摺動する構造である。冷却却パイプ5とリニアシャフト10の固定はリニアシャフトのツバ10aに設けたホーローセット16a(六角穴付止めねじ)で行い、リニアシャフト10はリニアシャフトのツバ10aがスライドブロック12に当接した位置でホーローセット16aによってスライドブロック12に固定される。
【0019】
前記リニアブッシュ9は、ストッパーリング9aがリニアブッシュ9の外周溝に係合し、ベースブロック8の下面に当接して位置決めされる。リニアブッシュ9の下側には同軸にコイルスプリング11が取り付けられていて、このコイルスプリング11の下端はEリング10cで前記リニアシャフト10に係止されたカラー10bに当着している。
【0020】
前記リニアシャフト10には、上端のツバ10aに当着して前記ベースブロック8に対して間隔調整自在のスライドブロック12が連結される。ベースブロック8とスライドブロック12の間隔を広げるとスプリング11の縮み量が大きくなり、熱カシメにおいて熱溶着チップ2の押圧力が増大する構造である。
【0021】
ベースブロック8とスライドブロック12の間隔調整は、ベースブロック8に立設したピラー14に当接した押しねじ13を回転させることで行い、押しねじ13の固定はロックナット13aで行う。
【0022】
近接センサー15はスライドブロック12の取付穴にホーローセット16aで固定されている。この近接センサー15は、熱カシメが正常に完了して熱溶着チップ2が所望の位置まで下降し、リニアブッシュ9の上端を検知して信号を出す位置に調整してホーローセット6cで固定する。
【0023】
ベースブロック8は図3の溶着ユニット17を搭載して、図示しない溶着装置本体に取り付けるためのものである。図1図2では断面矩形のベースブロック8を示したが、この形状に限定するものではない。また、カシメ止めボスの位置や角度及び溶着装置の動作方向に応じて斜め、横方向などに取り付け可能な形状にできる事は言うまでもない。
【0024】
比較例として従来の熱溶装置20を図4に示す。従来の熱溶装置20は中空の冷却パイプ5の先端にインパルス加熱方式の熱溶着チップ2を一体に形成し、冷却パイプ5と並行の位置にリニアガイド22を配置し、リニアガイド22側にスプリング11や、引っ張りボルト23、スプリング与圧調整ナット24及び近接センサー25をベースブロック21に取り付ける構造である。
【0025】
この構造では、溶着チップ2とスプリング11とリニアガイド22がそれぞれ並列に配置されるため、平面視における設置面積が大きくなってしまう問題があった。またそれぞれの作動する軸がずれているため、熱カシメの押圧力によって垂直方法だけでなく斜め方向に応力が発生してスムーズな動作を阻害する場合があった。
【実施例1】
【0026】
図5,6を用いて本発明の熱溶着装置1によるカシメ止め工程の実施例を説明する。溶着装置本体の構造は省略している。図5は熱溶着装置1が設定位置まで降下して熱溶着チップ2の当接部3が溶着ボス18aの先端に当接した状態で、熱溶着チップ2とリニアシャフト10とスライドブロック12が押し上げられ、スプリング11が縮められた状態である。
【0027】
次に、図示しない電源装置から電線6a,6bに電流が供給されて抵抗発熱体3が発熱し、当接部3aに当接している溶着ボス18aが加熱される。溶着ボス18aの温度が上昇して樹脂が軟化溶融するに従ってスプリング11の押圧力で熱溶着チップ2が下降して溶着ボス18aが変形し、図6のように当接部3の形状に賦形(カシメ止め)される。
【0028】
熱溶着チップ2が設定位置まで降下すると近接センサー15がリニアブッシュ9を検知して信号を出力する。次に冷却ホース7に冷却エアーが供給され、冷却パイプ5を通過た冷却エアーが当接部3の裏側を冷却すると溶着ボス18aが冷却固化する。最後に熱溶着装置1が離脱上昇してカシメ止め工程が完了する。
【実施例2】
【0029】
次に、図7を用いて本発明の熱溶着装置1によるカシメ止め装置の実施例を説明する。図7は熱溶着ユニット17をベースブロック8に並列に4つ配置したものである。ベースブロック8を取り付ける溶着装置本体の構造は省略する。
【0030】
ベースブロック8に並列に4つ配置した熱溶着ユニット17は図3に示すように、熱溶着チップ2とスプリング11とリニアブッシュ9が同軸に配置された構造である。このため図4に示す従来の熱溶着ユニット20より平面視の投影面積が小さく、より狭い間隔でベースブロック8に配置することが可能となる。また、熱溶着ユニット17が小型軽量であるため、熱溶着装置1を上下させるための作動シリンダーを小型化することができる。
【0031】
図8は従来の熱溶着ユニット20を複数配置した場合の比較例である。従来の熱溶着ユニット20は熱溶着チップ2とスプリング11とリニアガイド22が並列に配置されているため、溶着チップを近接して配置するには限度があり、図7のように狭ピッチの等間隔で配置することは困難であった。
【0032】
本実施例では熱溶着ユニット17をベースブロック8に同じ高さで一列に配置しているが、実施方法はこれに限定されず、複数の熱溶着ユニット17をベースブロック8にランダムに配置するなど用途に応じた使用形態が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 熱溶着装置
2 熱溶着チップ
3 抵抗発熱体
3a 当接部
4 絶縁部
5 冷却パイプ
6a、6b 電線
7 冷却ホース
8 ベースブロック
9 リニアブッシュ
10 リニアシャフト
10a リニアシャフトのツバ
10b リニアシャフトのカラー
11 スプリング
12 スライドブロック
13 押しねじ
14 ピラー
15 近接センサー
16a、16b、16c ホーローセット(六角穴付止めねじ)
17 熱溶着ユニット
18 樹脂成型品
18a 溶着ボス
19 被固定物
20 従来の熱溶着ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8