(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6940166
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】P型太陽電池電極形成用組成物、これを用いて製造された電極及びP型太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0224 20060101AFI20210909BHJP
H01L 31/068 20120101ALI20210909BHJP
【FI】
H01L31/04 264
H01L31/06 300
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-565749(P2018-565749)
(86)(22)【出願日】2017年5月12日
(65)【公表番号】特表2019-519113(P2019-519113A)
(43)【公表日】2019年7月4日
(86)【国際出願番号】KR2017004961
(87)【国際公開番号】WO2017222181
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2019年12月26日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0078908
(32)【優先日】2016年6月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521193511
【氏名又は名称】チャンジョウ フション ニュー マテリアル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パク,サン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム,サン チン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ヒ イン
【審査官】
桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−209598(JP,A)
【文献】
特表2011−524069(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0301479(US,A1)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0088457(KR,A)
【文献】
特開2014−084249(JP,A)
【文献】
特開平10−326522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)銀粉末;(B)ガラスフリット;及び(C)有機ビヒクル;を含み、
前記ガラスフリットは、酸化されていないアルミニウム(Al)成分を50ppm〜10,000ppmで含むものであるP型太陽電池電極形成用組成物。
【請求項2】
前記ガラスフリットはテルル(Te)元素を含むものである、請求項1に記載のP型太陽電池電極形成用組成物。
【請求項3】
前記ガラスフリットは、鉛(Pb)元素及びビスマス(Bi)元素のうち少なくとも一つ以上を含むものである、請求項2に記載のP型太陽電池電極形成用組成物。
【請求項4】
前記ガラスフリットは、テルル元素及び鉛元素を含み、
前記ガラスフリット内のテルル元素:鉛元素のモル比が1:10〜30:1である、請求項1に記載のP型太陽電池電極形成用組成物。
【請求項5】
前記ガラスフリットは、テルル元素及びビスマス元素を含み、
前記ガラスフリット内のテルル元素:ビスマス元素のモル比が1:10〜40:1である、請求項1に記載のP型太陽電池電極形成用組成物。
【請求項6】
前記銀粉末60重量%〜95重量%、前記ガラスフリット0.5重量%〜20重量%及び有機ビヒクル1重量%〜30重量%を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のP型太陽電池電極形成用組成物。
【請求項7】
前記P型太陽電池電極形成用組成物は酸化タングステン粒子をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のP型太陽電池電極形成用組成物。
【請求項8】
前記P型太陽電池電極形成用組成物は、分散剤、揺変剤、可塑剤、粘度安定化剤、消泡剤、顔料、紫外線安定剤、酸化防止剤及びカップリング剤からなる群から選ばれる添加剤を1種以上さらに含むものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のP型太陽電池電極形成用組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のP型太陽電池電極形成用組成物で製造されたP型太陽電池電極。
【請求項10】
p型基板、及び前記p型基板の一面に形成されたn型エミッタを含むウエハー;
前記n型エミッタ上に形成された前面電極;及び
前記p型基板の他面に形成された後面電極;を含み、
前記前面電極は、請求項1〜8のいずれか1項に記載のP型太陽電池電極形成用組成物で製造されたことを特徴とするP型太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、P型太陽電池電極形成用組成物、これを用いて製造された電極及びP型太陽電池に関する。より詳細には、極少量のAlを含有するガラスフリットを使用し、電極とウエハーとの接触性及び抵抗特性を改善できるように開発されたP型太陽電池電極形成用組成物、これを用いて製造された電極及びP型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池は、太陽光のフォトン(photon)を電気に変換させるpn接合の光電効果を用いて電気エネルギーを発生させる。太陽電池においては、pn接合が構成される半導体ウエハー又は基板の上・下面にそれぞれ前面電極と後面電極が形成されている。太陽電池は、半導体ウエハーに入射される太陽光によってpn接合の光電効果が誘導され、これから発生した各電子が電極を介して外部に流れる電流を提供する。このような太陽電池の電極は、太陽電池電極形成用組成物の塗布、パターニング及び焼成によってウエハーの表面に形成され得る。前記太陽電池電極形成用組成物としては、導電性粉末、ガラスフリット、有機ビヒクルを含む導電性ペースト組成物が使用されている。
【0003】
一方、太陽電池のウエハー又は基板としては主にシリコン基板が使用されており、シリコン基板を使用する太陽電池は、p型シリコン基板上にリン(P)などの不純物をドーピングすることによってn型エミッタ層を形成するP型太陽電池と、n型シリコン基板上にボロン(B)などの不純物をドーピングすることによってp型エミッタ層を形成するN型太陽電池とに区分され得る。このうち、P型太陽電池は、エミッタ層の形成時に使用されるリン拡散がボロン拡散より低い温度で行われ、電子の移動度が正孔の移動度より速いという長所を有するが、N型太陽電池に比べて相対的に低い効率を示すという短所を有する。
【0004】
一方、近年、太陽電池の効率を増加させるために、太陽電池の面積は漸次増加し、エミッタ層の厚さは持続的に薄くなっている趨勢にある。このような太陽電池の面積の増加によってウエハーの面抵抗が増加し、これによって太陽電池の接触抵抗が高くなっており、これは、太陽電池の効率減少につながり得る。また、エミッタ層の厚さが薄くなることによって、シャンティング(shunting)発生頻度が増加しており、これは、太陽電池の性能低下につながり得る。
【0005】
したがって、多様な面抵抗下でエミッタ層の接合に対する被害を最小化し、ウエハーと電極との界面における導電性を向上させることによって接触抵抗を改善することができ、これによって太陽電池の効率を高めることができるP型太陽電池電極形成用組成物を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面は、電極と基板(ウエハー)との間の接触性及び抵抗特性を改善できるP型太陽電池電極形成用組成物を提供する。
【0007】
本発明の他の側面は、フィルファクター及び変換効率が向上したP型太陽電池電極及びP型太陽電池を提供する。
【0008】
本発明の更に他の側面は、P型太陽電池電極形成用組成物を用いて製造されたP型太陽電池電極及びP型太陽電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面において、本発明は、(A)銀粉末;(B)ガラスフリット;及び(C)有機ビヒクル;を含み、前記ガラスフリットが、Al成分を約50ppm〜約10,000ppmで含むものであるP型太陽電池電極形成用組成物を提供する。
【0010】
前記ガラスフリットは、テルル(Te)元素を含んでもよい。また、前記ガラスフリットは、テルル(Te)元素と共に、鉛(Pb)元素及びビスマス(Bi)元素のうち少なくとも一つ以上を含んでもよい。
【0011】
一具体例によると、前記ガラスフリットは、テルル元素及び鉛元素を含み、前記ガラスフリット内のテルル元素:鉛元素のモル比が約1:10〜約30:1であってもよい。
【0012】
他の具体例によると、前記ガラスフリットは、テルル元素及びビスマス元素を含み、前記ガラスフリット内のテルル元素:ビスマス元素のモル比が約1:10〜約40:1であってもよい。
【0013】
本発明に係るP型太陽電池電極形成用組成物は、前記銀粉末約60重量%〜約95重量%、前記ガラスフリット約0.5重量%〜約20重量%及び有機ビヒクル約1重量%〜約30重量%を含んでもよい。
【0014】
また、前記組成物は、タングステン粒子及び/又は分散剤、揺変剤(チクソトロピック剤)、可塑剤、粘度安定化剤、消泡剤、顔料、紫外線安定剤、酸化防止剤及びカップリング剤からなる群から選ばれる添加剤を1種以上さらに含んでもよい。
【0015】
他の側面において、本発明は、前記のような本発明に係るP型太陽電池電極形成用組成物で製造されたP型太陽電池電極を提供する。
【0016】
更に他の側面において、本発明は、p型基板、及び前記p型基板の一面に形成されたn型エミッタを含むウエハー;前記n型エミッタ上に形成された前面電極;及び前記p型基板の他面に形成された後面電極;を含み、前記前面電極が前記のような本発明のP型太陽電池電極形成用組成物で製造されたものである太陽電池を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、極少量のAlを含有するガラスフリットを使用し、シャンティング現象を発生させないと共に、電極と基板(ウエハー)との間の接触性及び抵抗特性を向上させるP型太陽電池電極形成用組成物を提供する。
【0018】
本発明は、抵抗が最小化され、フィルファクター及び変換効率に優れたP型太陽電池電極形成用組成物を用いて製造されたP型太陽電池電極及びP型太陽電池を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施例に係るP型太陽電池の構造を簡略に開示した概略図である。
【
図2】Ag−Al−Si系共融点を示すダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明をより具体的に説明する。
【0021】
<太陽電池電極形成用組成物>
本発明の太陽電池電極形成用組成物は、銀粉末、ガラスフリット及び有機ビヒクルを含み、前記ガラスフリットは、Al成分を約50ppm〜約10,000ppmで含む。
【0022】
(A)銀粉末
本発明の太陽電池電極形成用組成物は、導電性粉末として銀(Ag)粉末を使用する。前記銀粉末は、ナノサイズ又はマイクロサイズの粒径を有する粉末であってもよく、例えば、数十nm〜数百nmサイズの銀粉末、数μm〜数十μmの銀粉末であってもよい。また、前記銀粉末として、2以上の互いに異なるサイズを有する銀粉末を混合して使用してもよい。
【0023】
前記銀粉末は、粒子の形状が特に限定されなく、多様な形状の粒子、例えば、球形、板状又は無定形の粒子が制限なく使用可能である。
【0024】
前記銀粉末の平均粒径(D50)は、具体的に約0.1μm〜約10μmであって、より具体的には約0.5μm〜約5μmであってもよい。前記平均粒径は、イソプロピルアルコール(IPA)に導電性粉末を超音波で約25℃で約3分間分散させた後、CILAS社で製作した1064LDモデルを使用して測定されたものである。前記銀粉末の平均粒径(D50)が前記範囲内であると、接触抵抗及び線抵抗が低下するという効果を有することができる。
【0025】
前記銀粉末は、組成物の全体重量に対して約60重量%〜約95重量%で含まれてもよい。銀粉末の含量が前記範囲を満足するとき、太陽電池において優れた変換効率が示され、ペースト化が円滑に行われ得る。具体的に、前記銀粉末は、組成物の全体重量に対して約70重量%〜約90重量%で含まれてもよい。
【0026】
(B)ガラスフリット
ガラスフリットは、太陽電池電極形成用組成物の焼成工程中に反射防止膜をエッチングし、銀粒子を溶融させることによってエミッタ領域に銀結晶粒子を生成させるためのものである。また、ガラスフリットは、銀粉末とウエハーとの間の接着力を向上させ、焼結時の軟化によって焼成温度を低下させるという効果を誘導する。
【0027】
本発明において、前記ガラスフリットは、約50、約100、約200、約300、約400、約500、約600、約700、約800、約900、約1,000、約1,500、約2,000、約2,500、約3,000、約3,500、約4,000、約4,500、約5,000、約5,500、約6,000、約6,500、約7,000、約7,500、約8,000、約8,500、約9,000、約9,500又は約10,000ppmのアルミニウム成分を含んでもよい。また、前記ガラスフリットは、大略的に前記数値のうち一つ以上及び前記数値のうち一つ以下の範囲でアルミニウム成分を含んでもよい。例えば、前記ガラスフリットは、約50ppm〜約10,000ppmのアルミニウム成分を含み、具体的には、約100ppm〜約10,000ppmのアルミニウム成分を含む。
【0028】
上述したように、P型太陽電池は、p型基板の一面にリン(P)などの不純物をドーピングすることによってエミッタ層が形成され、前記エミッタ層上に前面電極が形成される構造からなる。ところが、前記n型エミッタ層にAlが結合される場合、シャンティングが発生し得るので、従来に使用されていたP型太陽電池の前面電極形成用組成物にはAlが含まれないことが一般的であった。
【0029】
しかし、本発明者等の研究により、ガラスフリット内に前記のように極少量のアルミニウムを含む場合、n型エミッタ層とのAlとの反応によるシャンティング現象を発生させないと共に、電極と基板(ウエハー)との間の接触性及び抵抗特性が向上するという効果が得られることが分かった。前記電極と基板との間の接触性及び抵抗特性の向上効果は、ガラスフリット内に含まれたアルミニウム、銀粉末及び基板に含まれたシリコン成分が焼成時に低い温度で共融されることから発生するものと判断される。
【0030】
図2は、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)の3成分系共融点を示すダイアグラムである。
図2により、銀、アルミニウム及びシリコンの3成分系では、アルミニウムの含量が少ないほどより低い温度で共融が形成されることを確認することができる。すなわち、本発明のように、ガラスフリット内にアルミニウムが極少量で含まれる場合、焼成時にガラスフリット内のアルミニウム、銀粉末、及び基板のシリコンが低い温度で共融されながら焼結速度が速くなり、電極焼結温度で銀粉末が液体状態で溶融されることによって液相焼結が行われ、シリコン基板(ウエハー)表面との接触抵抗を低下させることができる。しかし、ガラスフリット内のアルミニウムの含量が約10,000ppmを超える場合、ガラスフリット内に含まれたアルミニウムがn型エミッタ層と反応することによってシャンティング現象が発生し得るので、P型太陽電池用として適していない。
【0031】
一方、前記ガラスフリットは、前記アルミニウム(Al)元素以外にテルル(Te)元素を含むものであってもよく、具体的に、酸化テルルを約10重量%〜約80重量%で含む酸化テルル(TeO
2)系ガラスフリットであってもよい。
【0032】
また、前記ガラスフリットは、アルミニウム(Al)及びテルル(Te)元素と共に、鉛(Pb)元素及びビスマス(Bi)元素のうち少なくとも一つ以上をさらに含んでもよい。
【0033】
一具体例によると、前記ガラスフリットは、テルル元素及び鉛元素を含むTe−Pb−O系ガラスフリットであってもよく、このとき、前記ガラスフリット内のテルル元素:鉛元素のモル比は、約1:10、約1:5、約1:2、約1:1、約2:1、約5:1、約10:1、約15:1、約20:1、約25:1又は約30:1であってもよい。また、前記ガラスフリット内のテルル元素:鉛元素のモル比は、大略的に前記比率のうち一つ以上及び前記比率のうち一つ以下の範囲であってもよい。例えば、前記ガラスフリット内のテルル元素:鉛元素のモル比は、約1:10〜約30:1、具体的に約1:5〜約20:1であってもよい。
【0034】
他の具体例によると、前記ガラスフリットは、テルル元素及びビスマス元素を含むTe−Bi−O系ガラスフリットであってもよく、前記ガラスフリット内のテルル元素:ビスマス元素のモル比が約1:10、約1:5、約1:2、約1:1、約2:1、約5:1、約10:1、約15:1、約20:1、約25:1、約30:1、約35:1又は約40:1であってもよい。また、前記ガラスフリット内のテルル元素:ビスマス元素のモル比は、大略的に前記比率のうち一つ以上及び前記比率のうち一つ以下の範囲であってもよい。例えば、前記ガラスフリット内のテルル元素:ビスマス元素のモル比は、約1:10〜約40:1、具体的に約1:5〜約30:1であってもよい。
【0035】
また、前記ガラスフリットは、前記アルミニウム、テルル、鉛及び/又はビスマス以外に金属及び/又は金属酸化物をさらに含んでもよい。例えば、前記ガラスフリットは、リチウム(Li)、リン(P)、ゲルマニウム(Ge)、ガリウム(Ga)、セリウム(Ce)、鉄(Fe)、ケイ素(Si)、亜鉛(Zn)、タングステン(W)、マグネシウム(Mg)、セシウム(Cs)、ストロンチウム(Sr)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、インジウム(In)、バナジウム(V)、バリウム(Ba)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ヒ素(As)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、マンガン(Mn)及びこれらの酸化物からなる群から選ばれた1種以上の元素をさらに含んでもよい。
【0036】
前記ガラスフリットは、特に制限されることなく、通常の方法を使用して製造され得る。例えば、前記ガラスフリットは、上述した組成をボールミル(ball mill)又はプラネタリーミル(planetary mill)などを使用して混合した後、混合された組成物を約900℃〜約1300℃の条件で溶融させ、約25℃でクエンチング(quenching)した後、得られた結果物をディスクミル(disk mill)、プラネタリーミルなどによって粉砕して得ることができる。
【0037】
前記ガラスフリットとしては、平均粒径(D50)が約0.1μm〜約10μmであるものが使用されてもよいが、これに限定されることはない。また、前記ガラスフリットの形状は特に限定されなく、例えば、球形であってもよく、無定形であってもよい。
【0038】
前記ガラスフリットは、全体組成物の重量に対して約0.5重量%〜約20重量%、例えば、約3重量%〜約15重量%で含まれてもよい。前記ガラスフリットが前記範囲で含有される場合、多様な面抵抗下でpn接合安定性を確保することができ、且つ直列抵抗値を最小化させることができ、結局、太陽電池の効率を改善することができる。
【0039】
(C)有機ビヒクル
有機ビヒクルは、太陽電池電極形成用組成物の無機成分との機械的混合を通じて組成物に印刷に適した粘度及びレオロジー特性を付与する。
【0040】
前記有機ビヒクルは、通常、太陽電池電極形成用組成物に使用される有機ビヒクルであってもよいが、バインダー樹脂及び溶媒などを含んでもよい。
【0041】
前記バインダー樹脂としては、アクリレート系又はセルロース系樹脂などを使用してもよく、エチルセルロースが一般的に使用される樹脂である。しかし、前記バインダー樹脂として、エチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロースとフェノール樹脂との混合物、アルキド樹脂、フェノール系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、キシレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリエステル系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、木材ロジン(rosin)又はアルコールのポリメタクリレートなどを使用してもよい。
【0042】
前記溶媒としては、例えば、ヘキサン、トルエン、エチルセロソルブ、シクロヘキサノン、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)、ジブチルカルビトール(ジエチレングリコールジブチルエーテル)、ブチルカルビトールアセテート(ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ヘキシレングリコール、テルピネオール (Terpineol)、メチルエチルケトン、ベンジルアルコール、γ−ブチロラクトン又はエチルラクテートなどを単独で使用してもよく、これらの2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
前記有機ビヒクルは、太陽電池電極形成用組成物の全体重量に対して約1重量%〜約30重量%で含まれてもよい。前記有機ビヒクルが前記範囲で含まれると、十分な接着強度及び優れた印刷性を確保することができる。
【0044】
(D)金属酸化物
本発明の太陽電池電極形成用組成物は、上述した構成要素以外に、必要に応じて、金属酸化物粒子をさらに含んでもよい。
【0045】
太陽電池は多数のセルを含んでもよい。この場合、一つのセルは、隣接したセルとリボンによって互いに連結される。このとき、リボンは、バスバー形態の電極と直接接着され得る。よって、リボンと接着される太陽電池電極の接着強度が十分に確保されない場合、セルが脱落したり、太陽電池の信頼性が低下するおそれがある。金属酸化物粒子は、電極とリボンとの接着強度を向上させるためのものであって、例えば、酸化タングステン(WO
3)粒子であってもよい。
【0046】
このとき、酸化タングステン(WO
3)粒子は、粉末状又は顆粒状であってもよい。前記酸化タングステン(WO
3)粒子の焼結前の平均粒径(D50)は、例えば、約0.1μm〜約10μmであって、具体的には、約0.1μm〜約5μmであってもよい。前記酸化タングステン(WO
3)粒子の焼結前の平均粒径(D50)が前記範囲であると、電極において優れた接着強度及び光電変換効率を確保することができる。
【0047】
前記酸化タングステン粒子は、電極ペーストの全体重量に対して約0.1重量%〜約1.0重量%で含まれてもよい。前記酸化タングステン粒子が前記範囲で含まれると、電極のエッチング時に精密なパターンの形成が可能である。また、電極の開放電圧を向上させると同時に、優れた接着強度を確保することができる。
【0048】
(E)添加剤
本発明の太陽電池電極形成用組成物は、上述した構成要素以外に、流動特性、工程特性及び安定性を向上させるために、必要に応じて通常の添加剤をさらに含んでもよい。前記添加剤は、分散剤、揺変剤(チクソトロピック剤)、可塑剤、粘度安定化剤、消泡剤、顔料、紫外線安定剤、酸化防止剤、カップリング剤などを単独で使用してもよく、これらの2種以上を混合して使用してもよい。これらは、太陽電池電極形成用組成物の全体重量に対して約0.1重量%〜約5重量%で含まれてもよいが、必要に応じて含量を変更してもよい。
【0049】
前記のような本発明の太陽電池電極形成用組成物は、極少量のAlを含有するガラスフリットを使用することによって、電極の焼成時にアルミニウム、銀粉末及びシリコン成分が共融されながら液相焼結が行われ、その結果、電極とウエハーとの間の接触性及び抵抗特性が向上する。また、アルミニウムの含有量が非常に少ないので、P型太陽電池に適用されたときにもシャンティング現象を発生させない。
【0050】
<太陽電池電極及びこれを含む太陽電池>
本発明の他の観点は、前記のような太陽電池電極形成用組成物から形成された電極及びこれを含む太陽電池に関する。
図1は、本発明の一具体例に係る太陽電池の構造を示す。
【0051】
図1に示したように、本発明に係る太陽電池は、p型基板101、及び前記p型基板の一面に形成されたn型エミッタ102を含むウエハー100;前記n型エミッタ上に形成された前面電極230;及び前記p型基板101の他面に形成された後面電極210;を含むものであってもよい。
【0052】
このとき、前記n型エミッタ102は、p型基板101の一面に5族元素であるアンチモン(Sb)、ヒ素(As)、リン(P)などの不純物をドーピングして形成され得る。
【0053】
前記前面電極230は、前記のような本発明に係る太陽電池電極形成用組成物を用いて製造されたものであってもよく、前記後面電極210は、アルミニウムペーストで製造されたものであってもよい。具体的には、p型基板101及びn型エミッタ102を含むウエハー100の前面には、本発明に係る太陽電池電極形成用組成物を印刷・焼成することによって前面電極(P+電極)230を形成することができ、後面には、アルミニウムペーストを塗布した後で焼成することによって後面電極210を形成することができる。例えば、前記組成物をウエハーの後面に印刷・塗布した後、約200℃〜約400℃の温度で約10秒〜約60秒間乾燥させることによって、後面電極のための事前準備段階を行うことができる。また、ウエハーの前面に組成物を印刷した後で乾燥させることによって、前面電極のための事前準備段階を行うことができる。その後、約400℃〜約950℃、具体的に約850℃〜約950℃で約30秒〜約50秒間焼成する焼成過程を行うことによって前面電極及び後面電極を形成することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を通じて本発明をより具体的に説明する。但し、下記の各実施例は、本発明を説明するためのものであって、本発明が下記の実施例に制限されると解釈してはならない。
【0055】
(実施例及び比較例)
有機バインダーとしてエチルセルロース(ダウ・ケミカル株式会社、STD4)1.0重量%を溶媒であるテキサノール(Texanol)6.2重量%に60℃で十分に溶解した後、平均粒径が1.0μmである球形の銀粉末(DOWAハイテック株式会社、AG−4−8)89.0重量%、下記の表1に提示されたガラスフリット3.0重量%、添加剤として分散剤であるBYK102(BYK−chemie社)0.2重量%及び揺変剤であるThixatrol ST(Elementis社)0.3重量%、酸化タングステン粒子0.3重量%を投入して均一にミキシングした後、3本ロール混練器で混合・分散させることによって電極ペーストを製造した。
【0056】
【表1】
【0057】
<誘導結合プラズマ−原子放出分光法(ICP−OES)を用いたガラスフリット内のAl含量(wt%)の測定>
前記において、各ガラスフリットの成分及び含量は次のような方法で測定した。
【0058】
試料の前処理:分析対象試料であるガラスフリット0.5gをビーカーに入れて0.0001g単位まで正確に秤量する。試料が入ったビーカーに硫酸(H
2SO
4)5mlを投入した後、熱板(hot plate)を用いて220℃で3時間にわたって加熱し、試料を完全に炭化させた。炭化された試料が入ったビーカーが透明になるまで過酸化水素(H
2O
2)を投入することによって前処理を完了した。
【0059】
標準溶液の準備:分析対象である各元素(Al含有)の標準溶液をそれぞれ準備した。
【0060】
金属成分の含量測定:前処理が完了した試料が入ったビーカーに窒酸(HNO
3)を投入して5分間加熱した後で空冷した。準備された標準溶液をICP−OES測定機器(PerkinElmer社)に導入し、外部標準法(external standard method)で検定曲線(calibration curve)を作成した後、前記ICP−OES測定機器で試料内に含まれる分析対象元素であるガラスフリットの元素濃度をそれぞれ測定した後で換算し、ガラスフリット内のAlの含量比を計算した。
【0061】
【数1】
【0062】
【数2】
【0063】
<物性測定方法>
(1)Rs(series resistance)、Rsh(Shunt resistance)、フィルファクター(FF、%)及び変換効率(Eff.、%):
POCl
3でドーピングされたP型基板(Lightway Green New Energy Co.,Ltd.、c−Si p型ウエハー)の前面に前記実施例及び比較例で製造した太陽電池電極形成用ペーストを一定のパターンでスクリーンプリンティングして印刷し、これを赤外線乾燥炉を使用して乾燥させた。その後、ウエハーの後面にアルミニウムペーストを印刷した後、これを同一の方法で乾燥させた。前記過程で形成されたセルをベルト型焼成炉を使用して400℃〜950℃で30秒〜180秒間焼成し、このように製造が完了したセルに対しては、太陽電池効率測定装備(Pasan社、CT−801)を使用して太陽電池の接触抵抗(Rs)(ohm)、分路抵抗(Rsh)(ohm)、フィルファクター(FF、%)、変換効率(Eff.、%)を測定し、その結果を下記の表2に示した。
【0064】
【表2】
【0065】
前記表2により、Al成分を本発明の範囲で含むガラスフリットを使用した実施例1〜6の場合は、シャンティング現象が最小化され、分路抵抗(Rsh)が高いと共に接触抵抗(Rs)に優れ、電気的特性(フィルファクター及び変換効率)の全てに優れることを確認することができる。これに比べて、Al成分を本発明に比べて過量で含むガラスフリットを使用した比較例1の場合は、接触抵抗は良好な水準であるが、シャンティング現象が発生し、電気的特性が相対的に低下するという結果を示しており、Al成分を全く含んでいないガラスフリットを使用した比較例2の場合は、接触抵抗特性が高く、これによって電気的特性が低下することを確認した。
【0066】
例示的な実施例が本明細書に開示されており、特定の用語を使用しているが、これらは、制限的な目的でなく、一般的且つ説明的な意味でのみ使用されて解釈されなければならない。ある場合は、本発明の出願時点で当業者にとって自明なように、別段の特別な指示がない限り、特定の実施例と関連して記述された特徴、特性及び/又は要素は、単独で使用されたり、又は、他の実施例と関連して記述された特徴、特性及び/又は要素と組み合わされて使用される。したがって、当業者であれば、下記の特許請求の範囲に記載の本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の多様な変更が可能であることを理解できるだろう。