(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術の車両内装用ボードは、自動車等の燃費を向上させるために更なる軽量化を図り、金属板の劣化や剥離等を抑制して信頼性及び耐久性を向上させ、且つ生産性を高めるために改善すべき点があった。
【0007】
具体的には、車両内装用ボードの軽量化を図るため、車両内装用ボードを薄くするまたは鋼板の代わりにアルミニウム板を採用する等が考えられる。しかし、その場合には、車両内装用ボードの強度及び剛性が低下する恐れがある。車両の床板等に用いられる車両内装用ボードには、車両に取り付けられた状態において、乗員や積み荷等によって主面に対して略垂直な方向に荷重が作用し、その荷重による曲げモーメントが作用する。そのため、車両内装用ボードの強度及び剛性が不足すると、車両内装用ボードが大きく撓み、破損してしまう恐れがあった。
【0008】
また、上記した従来技術では、下型及び上型に形成された凹部及びその底面であるセット面は、鋼板と平面形状が一致し、成形された後の硬質発泡ポリウレタン層の平面形状も鋼板の平面形状と同一である。そのため、車両内装用ボードの周囲端部においては、鋼板の切断面である端部が露出していた。即ち、鋼板の主面に亜鉛メッキや塗装等の表面処理が施されていても、車両内装用ボードの周囲端部においては、鋼板の表面処理が施されていない切断面が露出する。これにより、鋼板の端部が酸化等によって劣化する恐れがあった。
【0009】
また、車両内装用ボードの周囲縁部では、鋼板の剥離や硬質発泡ポリウレタン層の欠けが生じ易いという問題点もあった。即ち、車両内装用ボードの端部に露出している鋼板と硬質発泡ポリウレタン層との境界近傍を起点として鋼板の剥離が生じ易く、鋼板が剥がれることによって硬質発泡ポリウレタン層が欠け易くなる。また、成形後の車両内装用ボードを下型や上型の凹部から取り外す際には、鋼板の端部近傍の離型が難しく、露出している鋼板の端部が下型等に引っ掛かり易いため、鋼板の端部近傍が剥がれてしまう恐れもあった。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、薄くて軽量且つ高強度であり、金属板端部近傍の劣化や剥離等が少なく、高品質で、且つ生産性に優れる車両内装用ボード及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の車両内装用ボードは、一対の金属板と、前記一対の金属板の間に形成された発泡ポリウレタン層と、を備え、前記金属板の外面には、外側に向かって突出し前記外面に沿って所定の方向に延在する凸条部が形成されて
おり、周囲縁部において、前記発泡ポリウレタン層は、前記金属板の周囲端部を覆い、前記金属板の前記外面と面一に形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の車両内装用ボードの製造方法は、平板状の一対の金属板をそれぞれ所定の平面形状に成形する工程と、前記一対の金属板のそれぞれ内面になる主面にエポキシ樹脂系のコーティング剤を塗布する工程と、前記コーティング剤が塗布された前記内面になる主面を対向させて前記一対の金属板を下型及び上型で挟み込んで前記一対の金属板の間に成形空間を形成する工程と、前記成形空間に発泡ポリウレタンの原料を注入して反応させて発泡ポリウレタン層を形成する工程と、を具備し、前記下型及び前記上型には、それぞれ前記金属板の外面が当接するように前記金属板がセットされるセット面が形成されており、前記下型及び前記上型の少なくとも一方の前記セット面には、所定の方向に延在する凹溝部が形成されており、前記発泡ポリウレタン層を形成する工程では、前記発泡ポリウレタンの圧力によって平坦な前記金属板が押圧され変形して前記外面から前記凹溝部に対応する形状に突出する凸条部が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両内装用ボードによれば、一対の金属板と、一対の金属板の間に形成された発泡ポリウレタン層と、を備え、金属板の外面には、外側に向かって突出し外面に沿って所定の方向に延在する凸条部が形成されている。凸条部が形成されていることにより、車両内装用ボードの強度及び剛性を高めることができる。これにより、金属板若しくは発泡ポリウレタン層を薄化した場合または金属板として軽量なアルミニウム板等を採用した場合であっても、所望の強度及び剛性を得ることができ、車両内装用ボードの軽量化を図ることができる。
【0014】
また、本発明の車両内装用ボードによれば、金属板の周囲端部は、発泡ポリウレタン層で覆われていても良い。これにより、金属板の切断面である周囲端部の酸化を抑制することができる。
【0015】
また、金属板の周囲端部が発泡ポリウレタン層で覆われることにより、金属板の周囲縁部において、金属板と発泡ポリウレタン層との接合が良好になり、金属板の剥離を防止することができる。
【0016】
また、車両内装用ボードの周囲縁部は、金属板の外面と面一に形成される発泡ポリウレタン層で取り囲まれていても良い。車両内装用ボードの周囲縁部が発泡ポリウレタン層で形成されることにより、車両内装用ボードの周囲角部に丸み付けを施すことが可能となる。これにより、車両内装用ボードの製造工程において、車両内装用ボードを型から取り外す際、金属板の剥離や発泡ポリウレタン層の欠け等を防止することができ、車両内装用ボードの離型が容易になる。
【0017】
また、本発明の車両内装用ボードの製造方法によれば、平板状の一対の金属板をそれぞれ所定の平面形状に成形する工程と、一対の金属板のそれぞれ内面になる主面にエポキシ樹脂系のコーティング剤を塗布する工程と、コーティング剤が塗布された内面になる主面を対向させて一対の金属板を下型及び上型で挟み込んで一対の金属板の間に成形空間を形成する工程と、成形空間に発泡ポリウレタンの原料を注入して反応させて発泡ポリウレタン層を形成する工程と、を具備し、下型及び上型には、それぞれ金属板の外面が当接するように金属板がセットされるセット面が形成されており、下型及び上型の少なくとも一方のセット面には、所定の方向に延在する凹溝部が形成されており、発泡ポリウレタン層を形成する工程では、発泡ポリウレタンの圧力によって略平坦な金属板が押圧され変形して外面から凹溝部に対応する形状に突出する凸条部が形成される。これにより、外面に凸条部を有する強度及び剛性の高い車両内装用ボードが得られる。また、素材としての金属板には凸条部に相当する凸形状を形成する必要がないので、金属板に凸条部を成形するための金型や工程が不要になり、車両内装用ボードの生産性が高められる。
【0018】
また、本発明の車両内装用ボードの製造方法によれば、下型及び上型のセット面は、金属板の平面形状よりも大きく形成されており、一対の金属板は、それぞれセット面の中央付近に配置されても良い。これにより、車両内装用ボードの周囲縁部において、発泡ポリウレタン層は、金属板の周囲端部を覆い、金属板の外面と面一に形成される。これにより、金属板の周囲端部の酸化を抑制することができる。また、金属板の周囲端部が発泡ポリウレタン層に接合され、金属板と発泡ポリウレタン層との接合強度が高められる。よって、金属板の剥離を防止することができる。
【0019】
また、車両内装用ボードの周囲縁部が発泡ポリウレタン層で形成されることにより、車両内装用ボードの周囲角部に丸み付けを施すことできる。これにより、金属板の剥離や発泡ポリウレタン層の欠け等を防止しつつ、車両内装用ボードの離型を容易化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る車両内装用ボード及びその製造方法について図面に基づき詳細に説明する。
先ず、
図1及び
図2を参照して、本発明の実施形態に係る車両内装用ボード1の構成について詳細に説明する。
図1は、車両内装用ボード1の概略構造を示す斜視図である。車両内装用ボード1は、例えば、自動車等の車両の荷室の床板等として用いられるものである。
【0022】
図1に示すように、車両内装用ボード1は、一対の金属板11、12と、金属板11と金属板12の間に形成された発泡ポリウレタン層13と、を備える。車両内装用ボード1は、後述する製造方法によって一体的に成形された多層構造の板状体である。車両内装用ボード1の厚みは、例えば、約3〜20mmであり、車両内装用ボード1は、用途に応じた所定の周囲形状に成形されている。
【0023】
一対の金属板11、12は、例えば、厚み約0.1〜0.3mm、好ましくは、厚み約0.12〜0.15mmの略平坦なアルミニウム板である。なお、図においては、説明のため金属板11、12の厚みを大きく表している。金属板11、12としてアルミニウム板が用いられることより、軽量且つ高強度な車両内装用ボード1となる。なお、金属板11、12としては、亜鉛めっき鋼板や各種塗装鋼板等、その他の金属板が用いられても良い。金属板11、12として鋼板が用いられる場合には、金属板11、12の厚みは、約0.07〜0.3mmが好ましい。
【0024】
金属板11は、車両内装用ボード1が車両に取り付けられた状態において車外側となる面に設けられている。他方、金属板12は、車両内装用ボード1が車両に取り付けられた状態において車室内側となる面に設けられている。具体的には、車両内装用ボード1が車両の床板として用いられる場合には、金属板11が車両内装用ボード1の下部に設けられて下方の車外側を向き、金属板12が上部に設けられて上方の車室内側を向く。
【0025】
金属板11には、外側に向かって突出し金属板11の外面11aに沿って所定の方向に延在する線状または帯状の凸条部16が形成されている。具体的には、凸条部16は、金属板11の外面11aから横断面略円弧状に突出し、外面11aに沿って一方向に細長く略直線状に延在している。このように凸条部16が形成されることにより、車両内装用ボード1の強度及び剛性を確保することができる。
【0026】
凸条部16は、車外側となる金属板11に形成され、車外側に突出するよう形成されているので、車室内側に突出して車室空間を狭めることはなく、また、車両内装用ボード1の上に積み荷等が載置される際にも邪魔にならない。
【0027】
また、凸条部16の長手方向の両端部は、角部に丸み付けが施され、平面視略半円状に形成されている。これにより、金属板11の塑性変形による凸条部16の成形が容易になる。また、凸条部16の長手方向の端部近傍における応力集中が抑えられる。
【0028】
また、凸条部16は、車両内装用ボード1が車両に取り付けられた状態において、車両の左右方向または前後方向に延在している。車両内装用ボード1を支える支点間の距離が比較的長くなる方向に凸条部16が延在することにより、車両内装用ボード1の剛性が高められ、乗員や積み荷等の荷重による車両内装用ボード1の撓みを効率良く抑えることができる。また、車両内装用ボード1の強度が高められ、車両内装用ボード1の破損を防止することができる。
【0029】
なお、凸条部16の形状、凸条部16が形成される位置及び凸条部16の条数は、
図1に示す例に限定されず、車両内装用ボード1が設けられる車両の形態や車両内装用ボード1が設けられる位置等に応じて、適宜設定される。例えば、凸条部16は、略曲線状に延在するよう形成されても良い。また例えば、凸条部16は、複数条形成されても良く、具体的には、略平行に延在する2条または3条の凸条部16が形成されても良い。また例えば、凸条部16は、車室内側となる金属板12に形成されて車室内側に突出しても良い。詳しくは、凸状部16は、車外側となる金属板11及び車室内側となる金属板12の何れか一方のみに形成されても良いし、金属板11及び金属板12の両方に形成されて車外側及び車室内側の両面側に突出しても良い。
【0030】
車両内装用ボード1には、車両内装用ボード1に図示しないヒンジやねじ、リベット、把手等の他の部品を取り付けるための取付孔14、把手孔15及びその他の図示しない取付孔等が形成されている。
【0031】
取付孔14及び把手孔15は、例えば、車両内装用ボード1の一方の主面からその反対側となる他方の主面に貫通する孔として形成されている。なお、取付孔14及び把手孔15は、車両内装用ボード1の一方の主面から他方の主面に貫通しない穴であっても良い。
【0032】
また、取付孔14の周囲に補強部材または締結部材としてのグロメット等が配設されても良い。また、把手孔15の周囲の発泡ポリウレタン層13の内部には、把手孔15を囲むように、鋼線等からなる補強部材が配設されても良い。これにより、把手孔15近傍の強度及び剛性が高められる。
【0033】
また、図示を省略するが、車両内装用ボード1の外面11a、12a(
図2参照)には、用途に応じて表面仕上げ用の表皮材として、カーペット等が貼付される。表皮材としては、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)製の不織布等が用いられる。また、表皮材として、その他の繊維等を材料とする不織布や繊維織物、その他各種シート材等が用いられても良い。
【0034】
図2(A)は、車両内装用ボード1の凸条部16付近の概略構成を示す断面図であり、凸条部16の延在方向に対する横断面を示している。
図2(A)に示すように、凸条部16は、外側に向かって横断面略円弧状に盛り上がっている。即ち、凸条部16は、車両内装用ボード1の他の部分よりも厚く形成されている。凸条部16が形成されることによって、車両内装用ボード1の断面係数が高くなり、車両内装用ボード1の強度及び曲げ剛性が高められる。
【0035】
金属板11に形成された横断面略円弧状の凸条部16と、金属板11の略平坦な外面11aとの連続部分には、適度な丸み付けが施されている。このように凸条部16が横断面略円弧状に形成され、凸条部16と外面11aとの連続部分に適度な丸み付けが施されることにより、金属板11の塑性変形による凸条部16の成形が容易になると共に、凸条部16近傍における応力集中が抑えられる。
【0036】
図2(B)は、車両内装用ボード1の周囲縁部の概略構造を示す断面図である。
図2(B)に示すように、発泡ポリウレタン層13は、金属板11、12よりも平面形状が大きく、車両内装用ボード1の周囲縁部において、金属板11、12の周囲端部11c、12cよりも外側に突出している。
【0037】
そして、金属板11、12の周囲端部11c、12cは、発泡ポリウレタン層13で覆われている。また、金属板11、12の周囲端部11c、12cよりも外側に形成される部分の発泡ポリウレタン層13は、その上面及び下面がそれぞれ金属板11、12の外面11a、12aと面一に形成されている。
【0038】
このように金属板11、12の周囲端部11c、12cが発泡ポリウレタン層13で覆われることにより、金属板11、12の切断面である周囲端部11c、12cの酸化等による劣化を抑制することができる。また、金属板11、12の周囲端部11c、12cにおいて、金属板11、12と発泡ポリウレタン層13との接合が良好になり、金属板11、12の剥離を防止することができる。
【0039】
図2(C)は、車両内装用ボード1の周囲縁部の他の例を示す断面図である。前述のとおり、車両内装用ボード1の周囲縁部は、発泡ポリウレタン層13で取り囲まれている。このような構成により、
図2(C)に示すように、車両内装用ボード1の周囲角部に丸み付けを施し、面取部13aを形成することが可能となる。
【0040】
面取部13aが形成されることにより、車両内装用ボード1の製造工程において、車両内装用ボード1を型から取り外す際、金属板11、12の剥離や発泡ポリウレタン層13の欠け等を防止することができ、車両内装用ボード1の離型が容易になる。なお、面取部13aの形状は、丸み付け形状に限定されるものではなく、周囲角部に平面を付ける面取り形状でも良い。また、面取部13aは、車両内装用ボード1の上下両面側の角部に形成されても良い。また、
図2(B)に示すように、面取部13aが形成されない構成も勿論可能である。
【0041】
次に、
図3ないし
図5を参照して、車両内装用ボード1を成形するための成形装置20及び車両内装用ボード1の製造方法について詳細に説明する。
図3(A)ないし
図3(C)は、車両内装用ボード1の製造工程を示す図である。
図3(A)は、一対の金属板11、12が下型21及び上型22にセットされた状態を示す図である。
図3(B)は、成形空間50が形成された状態を示す図であり、
図3(C)は、発泡ポリウレタン層13が形成された状態を示す図である。
【0042】
車両内装用ボード1を製造するための工程として、先ず、金属板11、12を成形する工程が行われる。具体的には、例えば、プレスせん断加工やレーザー加工等によって、一対の金属板11、12がそれぞれ所定の周囲形状にカットされる。また、金属板11、12には、
図1に示す取付孔14や把手孔15を形成するための孔や、位置決め用の孔等が形成される。
【0043】
次に、コーティング剤を塗布する工程が行われる。コーティング剤を塗布する工程では、一対の金属板11、12のそれぞれ一方の主面にエポキシ樹脂系のコーティング剤が塗布される。このコーティング剤が塗布された前記一方の主面は、車両内装用ボード1が形成された際に発泡ポリウレタン層13側を向く内面11b、12bになる主面である。そして、塗布されたコーティング剤を乾燥させる乾燥工程が行われ、これにより、コーティング剤は乾燥する。
【0044】
次に、
図3(A)及び
図3(B)に示すように、成形空間50を形成する工程が行われる。成形空間50を形成する工程では、先ず、
図3(A)に示すように、コーティング剤が塗布された金属板11、12がRIM成形装置である成形装置20の下型21及び上型22にセットされる。
【0045】
ここで、成形装置20は、下型21と、下型21にヒンジ部30を介して開閉自在に接続された上型22と、を有する。成形装置20の下型21の上面には、平面形状が金属板11よりも大きい凹部23が形成されている。凹部23の底面は、金属板11がセットされるセット面24となる。このセット面24の略中央に金属板11の外面11aになる主面、即ちコーティング剤が塗布された内面11bに対して反対側の主面、が当接するようにして、金属板11がセット面24にセットされる。
【0046】
また、上型22には、金属板12よりも平面形状が大きいセット面25が形成されている。このセット面25の略中央に金属板12の外面12aになる主面、即ちコーティング剤が塗布された内面12bに対して反対側の主面、が当接するようにして、金属板12がセット面25にセットされる。
【0047】
また、セット面24及びセット面25には、金属板11、12をそれぞれセット面24及びセット面25の略中央に固定するための図示しない位置決め用のピンが形成されている。そして、金属板11に形成された位置決め用の孔がセット面24に形成された位置決め用のピンに嵌合するように金属板11がセットされる。同様に、金属板12に形成された位置決め用の孔がセット面25に形成された位置決め用のピンに嵌合するように金属板12がセットされる。これにより、金属板11、12をセット面24、25の略中央に固定することができる。
【0048】
そして、下型21のセット面24に開口するバキューム孔28及び上型22のセット面25に開口するバキューム孔29の内部が図示しないバキューム装置によって減圧される。これにより、金属板11、12は、バキューム孔28、29によって吸引され、下型21及び上型22にそれぞれ保持される。なお、金属板11、12として、例えば、鋼板等の磁性材料が使用される場合には、電磁石の磁力を利用して金属板11、12が保持されても良い。
【0049】
次に、
図3(B)に示すように、上型22が閉じられて、下型21の上面に載せられる。これにより、コーティング剤が塗布された内面11b、12bになる主面を対向させるようにして、一対の金属板11、12が下型21及び上型22で挟み込まれる。そして、金属板11と金属板12の間に成形空間50が形成される。
【0050】
そして次に、
図3(C)に示すように、発泡ポリウレタンの液体原料であるイソシアネートとポリオールを含む液状の混合原料が注入ポート27を経由して成形空間50に注入され、発泡ポリウレタン層13を形成する工程が行われる。
【0051】
ここで、下型21及び上型22は、図示しない加熱手段によって所定の温度、例えば60〜80℃、に維持されている。これにより、成形空間50に注入された前記液体原料は、成形空間50の内部で加熱され化学反応して発泡し硬化する。その結果、発泡ポリウレタン層13が形成される。
【0052】
このように液体原料が反応して発泡、硬化して、発泡ポリウレタン層13が形成されることにより、発泡ポリウレタン層13を接合部材として金属板11、12が強固に接合され、一体化された車両内装用ボード1が成形される。
【0053】
なお、前述のとおり、金属板11、12の内面11b、12bには、予めエポキシ樹脂系のコーティング剤が塗布されている。これにより、発泡ポリウレタン層13と、金属板11、12との接合が強固になる。
【0054】
発泡ポリウレタン層13の成形が完了したら、バキューム孔28、29による金属板11、12の保持が解除され、上型22が開かれ、車両内装用ボード1が下型21から取り外される。
【0055】
以上の工程により、一対の金属板11、12と発泡ポリウレタン層13が一体となった積層構造の車両内装用ボード1が完成する。なお、この後、それぞれの用途に応じて、車両内装用ボード1の外面11a、12aに適当な表皮材等が貼付され、また、車両内装用ボード1にその他の部品等が取り付けられて、車両等に用いられる床板等の製品が完成する。
【0056】
なお、前述のように、位置決めピンによって金属板11、12の位置決めを行うことにより、発泡ポリウレタン層を形成する工程では、車両内装用ボード1の位置決めピンに対応する位置に、位置決めピンの形状に対応した形状の穴または上下方向に貫通する貫通孔が形成される。この穴や貫通孔は、
図1に示す車両内装用ボード1に他の部品を取り付けるための取付孔14や把手孔15として利用することができる。
【0057】
即ち、車両内装用ボード1を成形する工程において、位置決め用のピンを利用して、車両内装用ボード1に他の部品を取り付けるための取付孔14及び把手孔15を同時に形成することができる。これにより、車両内装用ボード1を成形した後に、取付孔14及び把手孔15を形成する工程を別途行う必要がなくなり、車両内装用ボード1の生産性が向上する。
【0058】
図4(A)は、車両内装用ボード1の製造工程における成形空間50が形成された状態を示す凹溝部26付近の断面図である。
図4(B)は、発泡ポリウレタン層13が形成された状態を示す凹溝部26付近の断面図である。
【0059】
図4(A)に示すように、下型21のセット面24には、セット面24から下方に向かって凹む凹溝部26が形成されている。凹溝部26は、横断面略円弧状で所定の方向に長く延在する略溝状の凹みである。凹溝部26とその周囲の略平坦なセット面24との連続部分には、適度な丸み付けが施されている。
【0060】
素材としての金属板11は略平坦であるので、金属板11がセット面24にセットされた状態において、金属板11は、凹溝部26と接触していない。即ち、金属板11と凹溝部26との間には隙間が形成されている。
【0061】
成形空間50に注入された発泡ポリウレタンの液体原料が反応して発泡、硬化することにより、
図4(B)に示すように、金属板11は、反応する発泡ポリウレタン層13の圧力によって押され、凹溝部26に略沿うように変形する。これにより、凹溝部26の形状に対応する形状で略平坦な外面11aから突出する凸条部16が形成される。
【0062】
また、発泡ポリウレタン層13を形成する工程において凸条部16が形成されるため、素材としての金属板11に予め凸条部16に相当する凸形状を形成しておく必要がない。つまり、発泡ポリウレタン層13を形成する工程の前に、金属板11に対して凸条部16に相当する凸形状を成形するための工程を行う必要がない。また、金属板11に凸形状を成形するための金型も不要である。よって、車両内装用ボード1の生産性が高められる。
【0063】
なお、上記のように下型21のセット面24に凹溝部26が形成された構成に代えて若しくは加えて、図示を省略するが、凹溝部26は、上方に向かって凹むよう上型22のセット面25に形成されても良い。即ち、凹溝部26は、下型21及び上型22の何れか一方のみに形成されても良いし、下型21及び上型22の両方に形成されても良い。上型22のセット面25に凹溝部26が形成されることにより、上記と同様にして、発泡ポリウレタン層13を形成する工程において、凹溝部26の形状に対応する形状で金属板12の略平坦な外面12aから上方に突出する凸条部16を形成することができる。
【0064】
図5(A)は、成形空間50が形成された状態における金属板11、12の周囲端部11c、12c近傍を示す断面図である。
図5(B)は、下型21のバキューム孔28付近を示す平面図である。
【0065】
前述のとおり、下型21及び上型22のセット面24、25は、金属板11、12の平面形状よりも大きく形成されており、成形空間50を形成する工程では、金属板11、12は、それぞれセット面24、25の中央付近に配置される。即ち、成形空間50が形成された状態において、周囲端部11c、12cは、下型21及び上型22に当接しておらず、成形空間50内に露出している。
【0066】
これにより、液体原料を成形空間50に注入して発泡ポリウレタン層13(
図2参照)を形成する工程において、発泡ポリウレタン層13は、金属板11、12の周囲端部11c、12cを覆い、金属板11、12の外面11a、12aと面一に形成される。よって、金属板11、12の周囲端部11c、12cの酸化を抑制することができる。また、金属板11、12と発泡ポリウレタン層13との接合強度が高められ、金属板11、12の剥離等を防止することができる。
【0067】
また、下型21の凹部23の周囲角部23aには、丸み付けが施されていても良い。これにより、
図2(C)に示すように、車両内装用ボード1の周囲角部に面取部13aを形成することができ、金属板11、12の剥離や発泡ポリウレタン層13の欠け等を防止することができる。また、車両内装用ボード1の離型を容易化することができる。
【0068】
また、
図5(A)及び
図5(B)に示すように、下型21及び上型22のセット面24、25には、セット面24、25に開口するバキューム孔28、29がそれぞれ形成されている。バキューム孔28、29の周囲には、バキューム孔28、29を囲む略環状のシールリング溝41、42が形成されており、シールリング溝41、42には、シール部材としてのシールリング43、44が装着されている。バキューム孔28、29及びそれらを囲むシールリング43、44は、金属板11、12の平面形状に対応する位置に、複数形成されている。
【0069】
シールリング43、44は、略環状に形成され、素線の断面形状が略円形状である、いわゆるOリング等でも良い。また、シールリング43、44としては、Oリングの他にも、素線の断面形状が略四角形状、略T字状、略十字状、略U字状等に形成された各種の異形断面シールリングが用いられても良い。
【0070】
このような構成により、金属板11、12をセットする工程では、バキューム孔28、29の内部が減圧されてシールリング43、44で囲まれた領域に金属板11、12が吸引されて、金属板11、12が下型21または上型22に保持される。
【0071】
これにより、金属板11、12を下型21または上型22に密着させて所定の位置に保持することができ、金属板11、12の外面11a、12aに発泡ポリウレタンが漏れて付着することを抑制することができる。よって、高品質な車両内装用ボード1を製造することができる。
【0072】
また、シールリング43、44に囲繞されたバキューム孔28、29による吸引を利用することにより、アルミニウム等の非磁性材料からなる金属板11、12を好適に保持することができる。よって、軽量で高強度な車両内装用ボード1を形成することができる。また、バキューム孔28、29の周囲にシールリング43、44が設けられることにより、発泡ポリウレタンによるバキューム孔28、29の詰まり等を抑制することができる。
【0073】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲で、その他の種々の変更実施が可能である。