(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記浴槽の外周囲に配設され前記浴槽の上部から前記浴槽外に排出された前記伝搬液を回収する回収槽をさらに備え、前記上部排水検知センサは前記回収槽に配設されている、
請求項1に記載の画像処理装置。
前記浴槽の上方には、その中央部に前記被検体が挿入可能な開口を有する上部カバーが配設され、前記浴槽の上端部と前記上部カバーの下面との間には所定の隙間が形成されている、
請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
前記上部カバーの開口は、前記浴槽の上部開口よりも小さく、且つ平面視で前記浴槽の上部開口の内側に位置しており、前記上部カバーの前記開口を包囲する領域は、下方に傾斜したテーパ面を構成している、
請求項3に記載の画像処理装置。
前記伝搬液供給モジュールは、前記伝搬液の供給を制御する伝搬液供給バルブを備え、前記伝搬液供給バルブは、前記測定デバイスの作動中に所定量の前記伝搬液の供給を維持することが可能な供給量調整構造を備える、
請求項6に記載の画像処理装置。
内部に伝搬液が充填され且つ被検体が浸漬される浴槽と、前記浴槽内に放射波を照射し散乱した前記放射波を受信する素子群を有する測定デバイスと、前記伝搬液が前記浴槽の上部から前記浴槽外に排出されたことを検知する上部排水検知センサと、を備えた画像処理装置に、所定の処理を実行させる、画像処理装置の制御用プログラムであって、前記所定の処理は、
前記浴槽内に前記被検体を浸漬する前に、前記浴槽の許容量よりも所定量だけ少ない量の前記伝搬液を前記浴槽内に充填するステップと;
前記浴槽内に前記伝搬液を供給するステップと;
前記上部排水検知センサにより前記伝搬液の排出を検知するステップと;
前記伝搬液の排出が検知されたときに、前記浴槽内への前記伝搬液の供給を停止し、前記測定デバイスによる測定を許可するステップと;を備える、
画像処理装置の制御用プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
乳癌は、乳腺の内部から発生することが知られている。したがって、乳癌を発見するためには、乳房全体はもちろんのこと、乳房基部の特に乳腺と大胸筋との境界部分までの領域及び腋窩部の一部をも撮像範囲に含めることが漏れのない診断を行う上で重要である。そして、自動走査型の画像処理装置において、超音波や音響波等の放射波を用いて撮像を行う場合、伝搬液に浸漬されていない領域(言い換えれば、放射波の放射経路の途中に空気の層が存在する領域)は、放射波が減衰等してしまい撮像が正確に行えないことから、伝搬液内に被検体を完全に浸漬した状態とすることが望まれる。
【0006】
ここで、特許文献1に記載のような、浴槽上部から被検体を(直接)浸漬して撮像を行う画像処理装置の場合も、上述したように、被検体が浸漬した状態において浴槽内の伝搬液が被検体の基部にまで至るよう水位を調整する必要がある。しかし、被検体が浸漬した状態にあっては、浴槽は被検者の身体によって覆われているため浴槽を目視することは困難である。結果、浴槽の水位を測定台側に伝搬液を溢れさせることなく最適に調整するには、水位を正確に測定できるセンサ等が必要となり、構造が複雑化する。
【0007】
また、特許文献2に記載のような、浴槽内に被検体を浸漬しない構造、すなわち浴槽と被検体との間に被検体を保持する部材(被検部保持部材11)を介在する構造とすれば、この部材に阻まれて測定台に浴槽内の伝搬液が侵入することはないため、水位の調整は比較的単純な構造で実現できる。しかし、この被検体を保持する部材を用いると、この部材によって被検体が保持され変形した状態で撮像がなされるため、この変形を考慮して診断を行う必要が生じ、装置を操作するオペレータ(検査技師やその他医療従事者等)の技量や担当医師の読影の技量によって診断の精度にばらつきが生じ易い。また、被検体の変形度合いは撮像する毎に異なるため、検査の度に被検体の形状が異なることから経時変化の診断は困難である。さらに、この被検体を保持する部材と被検体との間に浴槽内のものとは異なる伝搬液(音響整合材12)を別途充填する必要があるため、その充填量の調整が浴槽内の伝搬液の水位制御とは別に、且つ被検体を変更する毎に必要となり、撮像前の調整要素が多く作業が極めて煩雑である。また、被検部保持部材11の表面及び裏面での音の反射が撮像性能を低下させてしまうことも、この手法を選択しづらい理由の一つである。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑み、自動走査型の画像処理装置において、簡単な構成で被検体を漏れなく撮像することが可能な画像処理装置及び画像処理装置の制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る画像処理装置は、例えば
図3に示すように、内部に伝搬液Wが充填され且つ被検体Sが浸漬される浴槽10と;前記浴槽10内に放射波を照射し散乱した前記放射波を受信する素子群を有する測定デバイス20と;前記伝搬液Wが前記浴槽10の上部から前記浴槽10外に排出されたことを検知する上部排水検知センサ33と;前記浴槽10内の前記伝搬液Wの水位を制御する水位制御モジュール123(
図8参照。)と;を含み、前記水位制御モジュール123は、前記浴槽10内に前記被検体Sが浸漬される前は、前記浴槽10の上端位置よりも低い水位となるように前記浴槽10内の前記伝搬液Wの量を制御し、前記浴槽10内に前記被検体Sが浸漬された後は、少なくとも前記上部排水検知センサ33による前記伝搬液Wの排出が検知されるまで、前記浴槽10内に前記伝搬液Wを供給して水位を上昇させるよう制御するものである。
【0010】
このように構成すると、浴槽内の水位を簡単な制御のみで最高水位とすることができ、被検者側への伝搬液の侵入を抑制しつつ被検体の基部にまで伝搬液を到達させることができる。よって、測定デバイスによって被検体をもれなく撮像することができる。
【0011】
本発明の第2の態様に係る画像処理装置は、例えば
図3に示すように、上記本発明の第1の態様に係る画像処理装置において、前記浴槽10の外周囲に配設され前記浴槽10の上部から前記浴槽10外に排出された前記伝搬液Wを回収する回収槽30をさらに含み、前記上部排水検知センサ33は前記回収槽30に配設されている。
【0012】
このように構成すると、浴槽上部から排水した伝搬液を確実に回収することができ、浴槽周囲に水濡れを生じさせることがなく、また伝搬液の再利用が可能となる。
【0013】
本発明の第3の態様に係る画像処理装置は、例えば
図3に示すように、上記本発明の第1又は第2の態様に係る画像処理装置において、前記浴槽10の上方には、その中央部に前記被検体が挿入可能な開口42を有する上部カバー40が配設され、前記浴槽10の上端部と前記上部カバー40の下面との間には所定の隙間44が形成されている。
【0014】
このように構成すると、上部カバーと浴槽との間の隙間を通って伝搬液が流れ出るため、上部カバー上に載っている被検者側に伝搬液が侵入することがないため、被検者に不快感を与えることなく水位調整及び測定を実行することができるようになる。
【0015】
本発明の第4の態様に係る画像処理装置は、例えば
図3に示すように、上記本発明の第3の態様に係る画像処理装置において、前記上部カバー40の開口42は、前記浴槽10の上部開口11よりも小さく、且つ平面視で前記浴槽10の上部開口11の内側に位置しており、前記上部カバー40の開口42を包囲する領域は、下方に傾斜したテーパ面を構成している。
【0016】
このように構成すると、上部カバーの開口の周囲がテーパ面を構成していることで、被検体をこの開口の奥まで挿入しやすくすると共に、被検体基部を浴槽内の伝搬液の水面により近づけることが可能となり、漏れのない撮像を実現しやすくする。
【0017】
本発明の第5の態様に係る画像処理装置は、例えば
図3に示すように、上記本発明の第3又は4の態様に係る画像処理装置において、前記浴槽10の上端部の高さは、前記上部カバー40の開口42の高さよりも下に位置する。
【0018】
このように構成すると、浴槽内に伝搬液を供給した際には、伝搬液が上部カバーの上に侵入する前に円滑に回収槽側へ流すことができる。
【0019】
本発明の第6の態様に係る画像処理装置は、例えば
図2及び
図4に示すように、上記本発明の第1乃至5のいずれかの態様に係る画像処理装置において、前記測定デバイス20は、環状に形成されているとともに前記浴槽10内に配設され、前記環状に形成された測定デバイス20の底部の少なくとも1箇所に、前記浴槽10の底部から上方に延在し前記測定デバイス20を高さ方向に移動させるリフタ50が取り付けられている。
【0020】
このように構成すると、簡単な構成で浴槽内の測定デバイスの高さ方向への移動を可能とすると共に、リフタが1箇所に取り付けられているため、浴槽内を掃除する場合等にリフタによって形成される死角を最小限にすることができ、メンテナンスがしやすいものとなる。
【0021】
本発明の第7の態様に係る画像処理装置は、例えば
図4に示すように、上記本発明の第6の態様に係る画像処理装置において、前記リフタ50の前記浴槽10内に位置する部分の外周囲は、リフタ50の作動に追従して伸縮可能な液密カバー55により覆われている。
【0022】
このように構成すると、液密カバーによりリフタ周囲の水漏れが抑制されると共に、液密カバー内に振動子に接続された配線を引き回すことができるため、振動子の配線のための経路を別途設ける必要がなくなる。
【0023】
本発明の第8の態様に係る画像処理装置は、例えば
図5乃至
図6に示すように、内部に伝搬液Wが充填され且つ被検体Sが浸漬される浴槽10と;前記浴槽10内に放射波を照射し散乱した前記放射波を受信する素子群を有する測定デバイス20であって、環状に形成された振動子台座21と;前記放射波の照射面が前記振動子台座21の内側を向くように振動子台座21の上部に配設された複数の振動子22と;を含む、前記測定デバイス20と;を含む。
【0024】
このように構成すると、測定デバイスが、振動子台座と複数の振動子とをそれぞれ別部材として備え、これらを組み立てて構成されるため、製造が容易である。また、測定デバイスが単一の振動子ではなく複数の振動子を備えているため、単体としての振動子の製造歩留まりが高く、また振動子の一部が故障した際、故障した振動子のみを修理/交換すればよいため、メンテナンス性が高くなる。
【0025】
本発明の第9の態様に係る画像処理装置は、例えば
図3に示すように、上記本発明の第8の態様に係る画像処理装置において、前記複数の振動子は、それぞれが樹脂モールド24により覆われている。
【0026】
このように構成すると、仮に複数の振動子をまとめて樹脂モールドにより液密としようとした場合には、振動子間に負荷がかかるなどの問題が生じ、完全な液密構造を維持するための製造が困難であるのに対し、複数の振動子のそれぞれが樹脂モールドにより液密性が確保されているため、その製造が容易である。加えて、複数の振動子をまとめて樹脂モールドにより液密とした場合に比べて、樹脂モールドに対する振動子からの負荷が抑制されて、長期の使用に耐え得る液密性を実現することができる。
【0027】
本発明の第10の態様に係る画像処理装置は、例えば
図6に示すように、上記本発明の第8又は9の態様に係る画像処理装置において、前記複数の振動子22及び/又は前記振動子台座21にはアライメントピン28が設けられており、前記アライメントピン28により、前記複数の振動子22と前記振動子台座21との間の位置決めがなされる。
【0028】
このように構成すると、アライメントピンを用いることで振動子台座への振動子の取り付けを確実且つ容易に行うことができる。また、振動子自体が振動を発生させる部材であるが、アライメントピンでも振動子の支持が可能となり、振動子に作動に伴う振動子の位置ずれを効果的に抑制することができる。
【0029】
本発明の第11の態様に係る画像処理装置は、例えば
図3に示すように、上記本発明の第8乃至10のいずれかの態様に係る画像処理装置において、前記振動子台座21の底面は、下方に凸の形状である。
【0030】
このように構成すると、振動台座の底面に気泡が付着し難くなり、気泡の存在に起因する放射場の反射等の影響をなくすることができる。
【0031】
本発明の第12の態様に係る画像処理装置は、例えば
図5に示すように、上記本発明の第8乃至11のいずれかの態様に係る画像処理装置において、前記複数の振動子22同士の間には、前記伝搬液Wが通過可能な隙間26が形成されている。
【0032】
このように構成すると、別々に形成された振動子同士が作動時に生じる振動によって動作しても両者が接触することがなくなる。また、この隙間を伝搬液が通過できるようになるため、測定デバイスによって浴槽内の伝搬液の流れが遮られることがなくなり、特に測定デバイス作動時において浴槽内の伝搬液の流れが乱れることが抑えられる。
【0033】
本発明の第13の態様に係る画像処理装置は、例えば
図7に示すように、上記本発明の第2乃至12のいずれかの態様に係る画像処理装置において、前記浴槽10内の前記伝搬液Wを循環させるための循環機構CSをさらに含み、前記循環機構CSは:前記伝搬液Wを貯留する貯留タンク70と;前記貯留タンク70内の前記伝搬液Wを前記浴槽10に供給するための伝搬液供給モジュール(V2、P1、L3、L4)と;前記回収槽30で回収された前記伝搬液Wを前記貯留タンク70に戻す回収槽側排水モジュール(L1)と;前記浴槽10の底部に設けられ前記浴槽10内の前記伝搬液Wを前記貯留タンク70に戻す浴槽側排水モジュール(V1、L2)と;前記浴槽10に供給される前記伝搬液Wを浄化するフィルタFと;前記浴槽10に供給される前記伝搬液W内の空気を除去する脱気モジュール80と;を含む。
【0034】
このように構成すると、循環機構により伝搬液を繰り返し使用することができるようになり、伝搬液を準備する手間を少なくすることができる。また、循環機構内の伝搬液は貯留タンク内の伝搬液からなるため、画像処理装置は近くに水源のない場所にも設置可能となる。
【0035】
本発明の第14の態様に係る画像処理装置は、例えば
図7に示すように、上記本発明の第13の態様に係る画像処理装置において、前記伝搬液供給モジュールは、前記伝搬液の供給を制御する伝搬液供給バルブV2を備え、前記伝搬液供給バルブは、前記測定デバイスの作動中に所定量の前記伝搬液の供給を維持することが可能な供給量調整構造を含む。
【0036】
このように構成すると、測定デバイスの作動中等に浴槽内の伝搬液の水位が意図せず下降した場合でも、即座に伝搬液の補給ができ、常に伝搬液の水位を最高位とすることができる。
【0037】
本発明の第15の態様に係る画像処理装置は、例えば
図8に示すように、上記本発明の第1乃至14のいずれかの態様に係る画像処理装置において、前記水位制御モジュール123により制御される前記浴槽10内に前記被検体Sが浸漬される前の水位を、段階的に設定可能なユーザインタフェース150をさらに含む。
【0038】
このように構成すると、ユーザインタフェースを介して測定前水位を設定することで、被検体が浴槽内に浸漬された後の水位調整に要する時間を少なくすることができる。
【0039】
本発明の第16の態様に係る画像処理装置の制御用プログラムは、例えば
図3、
図9乃至
図10に示すように、内部に伝搬液Wが充填され且つ被検体Sが浸漬される浴槽10と、前記浴槽10内に放射波を照射し散乱した前記放射波を受信する素子群を有する測定デバイス20と、前記伝搬液Wが前記浴槽10の上部から前記浴槽外に排出されたことを検知する上部排水検知センサ33と、を含む画像処理装置1に、以下の(1)〜(4)に示すステップを実行させる。
(1)前記浴槽内に前記被検体を浸漬する前に、前記浴槽の許容量よりも所定量だけ少ない量の前記伝搬液を前記浴槽内に充填するステップ;
(2)前記浴槽内に前記伝搬液を供給するステップ;
(3)前記上部排水検知センサにより前記伝搬液の排出を検知するステップ;
(4)前記伝搬液の排出が検知されたときに、前記測定デバイスによる測定を許可するステップ。
【0040】
このように構成すると、画像形成装置における測定前の水位調整プロセスを簡単に実現することができる。
【0041】
本発明の第17の態様に係る画像処理装置の制御用プログラムは、例えば
図9乃至
図10に示すように、上記本発明の第16の態様に係る画像処理装置の制御用プログラムにおいて、前記(3)に示すステップの後に、以下の(5)に示すステップをさらに実行させる。
(5)前記浴槽内への前記伝搬液の単位時間当たりの供給量を減らす、又は前記伝搬液の供給を停止するステップ。
【0042】
このように構成すると、伝搬液の供給を停止した場合には、浴槽内には伝搬液の供給に伴う水流が発生しなくなるため、水流によって被検体が動くことがなく、測定の精度を高く維持することができる。また、伝搬液の供給を減らした場合には、測定時に例えば測定デバイスが高さ方向に移動することに伴って伝搬液が浴槽外に不用意に排水された場合であっても水位を即座に元の最高位に戻すことができる。
【0043】
本発明の第18の態様に係る画像処理装置の制御用プログラムは、上記本発明の第16又は17の態様に係る画像処理装置の制御用プログラムにおいて、前記(4)に示すステップの後であって且つ前記被検体が前記浴槽外へ移動したときに、以下の(6)に示すステップをさらに実行させる。
(6)前記浴槽内へ前記伝搬液を供給して前記浴槽内の前記伝搬液を前記浴槽の上部から前記浴槽外に排出させる、及び/又は前記浴槽の底部から前記浴槽内の前記伝搬液を所定量排出するステップ。
【0044】
このように構成すると、被検体あるいは被検者が変更したタイミングで、浴槽内の伝搬液が清浄な伝搬液に交換されるため、常に正常な伝搬液による測定が可能となる。
【0045】
本発明の第19の態様に係る画像処理装置の制御用プログラムは、例えば
図8及び
図10に示すように、上記本発明の第16乃至18のいずれかの態様に係る画像処理装置の制御用プログラムにおいて、前記(1)に示すステップにおける前記所定量は、段階的に調整可能である。
【0046】
このように構成すると、測定前の水位を段階的に調整することで、被検体が浴槽内に浸漬された後の水位調整に要する時間を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、被検体を浴槽内に浸漬するタイプの自動走査型画像処理装置において、簡単な構成で被検体の基部を伝搬液内に浸漬することができ、被検体の撮像(測定)をもれなく実行することができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
この出願は、日本国で2019年2月28日に出願された特願2019−036731号に基づいており、その内容は本出願の内容としてその一部を形成する。
また、本発明は以下の詳細な説明によりさらに完全に理解できるであろう。本願のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明により明らかとなろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の実例は、本発明の望ましい実施の形態であり、説明の目的のためにのみ記載されているものである。この詳細な説明から、種々の変更、改変が、本発明の精神と範囲内で、当業者にとって明らかであるからである。
出願人は、記載された実施の形態のいずれをも公衆に献上する意図はなく、開示された改変、代替案のうち、特許請求の範囲内に文言上含まれないかもしれないものも、均等論下での発明の一部とする。
【0050】
以下、図面を参照して本発明を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0051】
以下に示す本発明の実施の形態においては、画像処理装置として超音波診断装置を、被検体として乳房をそれぞれ適用した場合について、詳細に説明する。なお、画像処理装置及び被検体についてはこれらに限定されるものではない。
【0052】
図1は、本発明の一実施の形態に係る画像処理装置1の外観図である。この
図1を含む本願の実施の形態に係る図中では、画像処理装置1の幅方向(短尺側方向)をX方向、長さ方向(長尺側方向)をY方向、及び上下方向(高さ方向)をZ方向とそれぞれ規定している。画像処理装置1は、被検者P(
図9参照。)の身体が載置できるようその外形形状が略直方体状に形成されており、測定台2と、計測装置3と、化粧板4とを含む。
【0053】
測定台2は、被検者Pがその上部に伏臥位にて載るための台であり、被検者Pの重量に耐え得る所定の強度を備え、
図1における手前側の部分に被検者の頭部が位置するよう図中のY方向に長尺に設計されている。特に測定台2上部の材質や形状等については、被検者への負荷等を考慮して適宜調整することができる。計測装置3は、測定台3の上部の一部に設けられており、内部に被検体S(
図9参照。)を浸漬して被検体Sの計測を行うためのものである。計測装置3の具体的な構造等については後述する。なお、計測装置3の測定台2に対する配置は、測定台2に載った被検者Pの乳房(すなわち、被検体S)の位置に合わせて調整されている。また、本実施の形態では測定台2と計測装置3の境界部分については隙間が生じないよう互いに当接した状態となっているが、本発明はこれに限定されない。具体的には、例えばこの境界部分に所定の隙間を形成して、計測装置3上に伝搬液W(
図7参照。)が付着した際等にこの付着した伝搬液Wを除去するための水路としてもよい。化粧板4は、測定台2の外周囲を囲むように配され、被検者等から測定台2の内部に配設される計測装置3を構成する各種部材等を隠すためのものである。好ましくは、この化粧板4はその一部を容易に取り外し可能な構成とすることで、計測装置3のメンテナンスや後述する伝搬液Wを貯留するための貯留タンク70(
図7参照。)の出し入れ等を可能とする。
【0054】
図2は、本発明の一実施の形態に係る計測装置3の平面図であり、
図3は、本発明の一実施の形態に係る計測装置の断面図であって、
図3(A)は
図2のA−A線で切断した断面図、
図3(B)は
図3(A)のB部拡大断面図である。なお、この
図2及び
図3では、計測装置3単体の構造が理解しやすいよう測定台2等は図示を省略している。
【0055】
図2及び
図3に示すように、この計測装置3は、内部に伝搬液Wが充填され且つ被検体Sが浸漬される浴槽10と、浴槽10内に放射波(超音波)を照射(送信)し散乱した放射波を受信することで被検体Sの測定を行う素子群を有するリングアレイ(測定デバイス)20と、浴槽10の外周囲に配設された回収槽30と、浴槽10の上方に配設された上部カバー40とを含むものである。
【0056】
浴槽10は、内部に伝搬液Wが貯留可能であって、その上部に上部開口11が形成された槽状の容器で構成される。また、この浴槽10の底部には浴槽10内部に貯留された伝搬液Wを排出可能な底部ドレン口12が設けられ、その側部には伝搬液Wが給水される給水口13が設けられている。この給水口13は、後述するリングアレイ20が測定プロセスにおける上端位置に位置した際のリングアレイ20底面よりも低い位置に設けることが好ましい。これは、給水口13がリングアレイ20底面よりも高い状態で給水を行うと、水流の速さによって、一時的にリングアレイ20内の水位が上昇しないままリングアレイ20の外側を経由して浴槽10外に排出されてしまうという現象が起こり得るからである。浴槽10の底部はこの底部ドレン口12に向かって2〜3°程度傾斜しており、ドレン時に浴槽10の底に伝搬液Wが残留することを防ぐことができる。さらに、この浴槽10の容量は、画像処理装置1を取り扱うオペレータ等が(性別に関わらず)この浴槽10を取り扱い可能な重量、例えば16〜20リットルとすることが好ましい。
【0057】
また、浴槽10の側部には、測定台2に対してこの浴槽10を固定するための設置片14が水平方向に延設されており、この設置片14を水平状態で固定することで浴槽10の水平性が担保される。ここで、浴槽10内の水面WS(
図9参照。)及びリングアレイ20に要求される水平精度について簡単に説明する。リングアレイ20の内径をR(
図2参照。)、リングアレイ20の送信面23Aの高さをh(
図6参照。)としたときの、水面WSとリングアレイ20とのなす角度αは、tanα≦h/(5R)を満たすことが望ましい。これは、リングアレイ20中の超音波素子群の一部が空気中に露出していると、超音波の送受信感度が露出した分だけ低下し、さらにこの超音波素子群の露出した部分では超音波が送信されず、多重反射して受信信号の上に重畳し、ノイズとなるためである。測定後に得られる画像データの画質を維持するためには、送受信感度の変化は2dB以下に抑える必要があり、感度低下を20%以下に抑える必要がある。したがって、超音波素子群の空気中への露出をh/5程度に抑える必要があり、tanα=h/(5R)が画質に影響が出始める目安の傾きとなる。
【0058】
また、浴槽10の底部の略中央には、被検体Sの3次元位置を特定するために用いられる位置検知用デバイス15が設けられている。この位置検知用デバイス15としては、種々のデバイス、例えばカメラや超音波素子、各種センサ等を必要に応じて組み合わせて採用することができる。なお、
図2等では、位置検知用デバイス15は浴槽10の底部の中央部に鉛直方向に向けて配設したものを示しているが、位置検知用デバイス5の浴槽10内における位置や向きについては、適宜調整可能である。
【0059】
リングアレイ20は、被検体Sの計測を行うための測定デバイスであって、浴槽10内にその全体が収容されるように配置され、浴槽10内に充填された伝搬液Wに浸漬した状態で動作するものである。このリングアレイ20は、上部に振動子22が配列される振動子台座21と、振動子台座21上のXY平面上に複数個(本実施の形態においては8個)配列された、被検体Sの測定(撮像)を行うための素子群としての振動子22とを含む。リングアレイ20の各部の詳細な構成については後述する。
【0060】
回収槽30は、浴槽10の外側を包囲するように形成され、浴槽10の上部開口11から浴槽10外へ排水された(オーバーフローした)伝搬液Wを回収するための槽である。この回収槽30の側面下部の所定の1箇所には、回収槽30に回収された伝搬液Wを排出するための水抜き穴31が形成されており、この水抜き穴31へ伝搬液Wを案内できるよう、回収槽30の底面は水抜き穴31が形成された側面に向かって傾斜している。また、回収槽30は、水抜き穴31に連通して回収槽30に回収された伝搬液Wを貯留タンク70に戻すための回収槽側ドレン口32を含む。
【0061】
そして、この回収槽側ドレン口32には、この回収槽側ドレン口32を通過する流体の流れを検知するための、例えばフロースイッチや電磁式等の流量センサ等からなるオーバーフロー検知センサ(上部排水検知センサ)33が設けられている。このオーバーフロー検知センサ33により、浴槽10内の伝搬液Wの、浴槽10上部から浴槽10外への排水(すなわち、オーバーフローの発生)を検知することができる。なお、本実施の形態におけるオーバーフロー検知センサ33は、取り付けの容易性や検知の確実性等の観点から、上述した通り回収槽側ドレン口32に配設されている。しかし、この位置は浴槽10から少し離れているため実際に浴槽10からオーバーフローが発生してからオーバーフロー検知センサ33で検知するまでに僅かなタイムラグが生じる。そこで、例えば被検体Sが浴槽10内に挿入してから被検体Sの測定を開始するまでの合計時間をより短縮したい場合等には、オーバーフロー検知センサ33を浴槽10の上部開口11により近い位置に配置すると良い。このように、オーバーフロー検知センサ33の具体的な配置やセンサの種類については、上述した機能を維持し得る範囲において適宜変更が可能である。また、本実施の形態に係る画像処理装置1においては、以下に詳細に説明する通り、このオーバーフロー検知センサ33の出力に基づいて浴槽10内の水位制御を行っている。しかし、本発明が、水位を検知するためのセンサを別途配設することを除外することを意図しているわけではないことは特に留意すべき事項である。すなわち、例えばオーバーフロー検知センサ33による水位制御を補完する目的等で、浴槽10内や浴槽10の周囲の所定の位置に別途水位センサを備えていてもよい。
【0062】
上部カバー40は、浴槽10の上方に配設され、浴槽10の上部を部分的に覆うものである。この上部カバー40は、平面視円環状に形成されその中央部に被検体Sが挿入可能な上面開口42を有する、XY平面に沿って配設される上面41と、上面41の外周囲からZ方向に所定距離垂下するように形成された側壁43とを含んでいる。この上部カバー40は、
図3に示すように、側壁43の下部が浴槽10の外壁に固定されている。なお、この上部カバー40は、少なくともその上面41が(例えば、側壁43にその中段部分で上下に分離可能な構成を採用することにより)浴槽10から容易に取り外せるような構成を備えていると好ましい。上部カバー40の少なくとも上面41が浴槽10から取り外せることで、浴槽10内の掃除が容易となる。また、被検体Sの一部が振動子22と上部カバー30との間に挟まった際には、被検者Sと共にこの上部カバー40を引き上げることで、この挟まりを容易に解除でき、安全性が高まる。さらに、上部カバー40を複数部材で構成するため量産設計上の難易度低下が見込め、コスト低減を達成できる。
【0063】
また、上部カバー40の上面41の外周囲の直径は、浴槽10の上部開口11の直径よりも大きく且つ回収槽30の内径よりも小さい。なお、本実施の形態においては、上面41の外周囲の直径は回収槽30の内径よりも小さいとしたが、これに限定されるものではない。具体的には、例えば上面41の外周囲の径を回収槽30の径と同一とし、上部カバー40の側壁43と回収槽30の側壁とが連続するよう、上部カバー40の側壁43の下端部を回収槽30の側壁の上端部に載置、あるいは互いに連結してもよい。このように構成すると、回収槽30内に計測装置3の外部から塵埃等が侵入することを抑制することができる。また、上面41に形成された上面開口42の直径は、浴槽10の上部開口11の内径よりも小さく且つリングアレイ20の内径よりも僅かに大きい。
【0064】
さらに、上面41の上面開口42を包囲する領域は、
図3(B)に示すように、所定角度θ(例えば、1〜2°)だけXY平面に対して下方向に傾斜したテーパ面を構成している。このようにテーパ面を構成することにより、被検体Sの上面開口42内への挿入を補助し、被検者Pが被検体S全体を上面開口42内に挿入する動作を容易にする。加えて、被検体Sの基部を浴槽10により近い位置で支持することができるようになる。具体的には、上面開口42と上端位置(すなわち、
図4(A)及び
図3(A)に示す初期位置)に支持されたリングアレイ20とのZ方向における距離が0.5〜1.5mmとなり、被検体Sの基部を浴槽10に近接して位置させることができる。なお、この上部カバー40には測定時に被検者Pが載るため、被検者Pの重量を受けても変形しないよう、その肉厚や材料を適宜調整することが好ましい。また、上面41の外形形状は、浴槽10や被検体S、あるいはリングアレイ20の形状に合わせて適宜変更可能である。そして、上面開口42の形状についても、円形のみならず、楕円形や(腋窩部の一部も浴槽10内に挿入しやすいような)長円形、多角形等、適宜変更可能である。
【0065】
図3に示すように、上面カバー40の上面41は、上部開口11を形成している浴槽10の上縁部の全周を覆っているが、この浴槽10の上縁部と上面41の下面との間には、Z方向に所定長さdだけ離間した隙間44が形成されている。この隙間44は、浴槽10上部からオーバーフローする伝搬液Wが通過するための隙間であり、その長さ(幅)dは、上面開口42の高さよりも下に設定された浴槽10の上端部を構成する上部開口10と、(被検者Pに苦痛を与えない程度に調整された)上面カバー40のテーパ面の角度とによって特定され、且つ伝搬液Wが流れる十分な幅を備える必要がある。例えば、上面開口42の直径が約230mm、上部カバー40のテーパ面の角度が1〜2°である場合、この長さdは、2.0〜3.0mmの範囲とすることが好ましい。この長さdが2.0mmより小さいと、オーバーフローする伝搬液Wの全てをこの隙間44から回収槽30へ導くことができず、上部カバー40上に伝搬液Wが流入してしまう。またこの長さdが3.0mmより大きいと、浴槽10と上部カバー40との間の距離が離れすぎて浴槽10内の伝搬液Wが被検体Sの基部にまで到達できず、被検体S基部の撮像が正確に行えない。上記説明から理解できるように、本実施の形態における「オーバーフロー」とは、浴槽10内の伝搬液Wがこの隙間44を経由して回収槽30に流入する現象を指しており、例えば伝搬液Wが上部カバー40の上面41の上に侵入する現象はここでいう「オーバーフロー」には含まれない。そして、このような隙間44を形成すれば、浴槽10内に伝搬液Wを供給した際に、上部カバー40の上に伝搬液Wが到達する前に、伝搬液Wがこの隙間44を介して回収槽30側へ流れるようになる。したがって、この隙間44を採用することで、浴槽10内の伝搬液Wに被検体Sを直接浸漬するタイプの超音波診断装置であっても、浴槽10内の伝搬液Wの水位を所望の水位に簡単に調整することができるようになる。
【0066】
上記の構成に加え、計測装置3の下方には、
図4に示すように、水受けプレート60が設けられている。この水受けプレート60は、蛇腹55の破損に起因して、あるいは蛇腹55と浴槽10との接合部分から伝搬液Wが漏れた場合にも画像処理装置1が設置された床を濡らさないために設けられたものである。上述の漏れが発生した際にこの水受けプレート60で受けた伝搬液Wは、後述する貯留タンク70の排水ストレーナ71へ案内される。
【0067】
次に、
図3乃至
図6を参照して、本発明のリングアレイ20の構成について更に説明する。
図4は、本発明の一実施の形態に係る計測装置の他の断面図であって、
図4(A)はリングアレイが初期位置にある状態における
図2のC−C線で切断した断面図、
図4(B)はリングアレイが終了位置にある状態における
図2のC−C線で切断した断面図である。
図5は、本発明の一実施の形態に係るリングアレイを示す斜視図である。
図6は、
図5に示すリングアレイを部分的に分解した状態を示す斜視図である。
【0068】
ここで、本発明のリングアレイ20のように、浴槽10内に完全に浸漬した状態で使用されるリングアレイ20にあっては、高い防水性が求められると共に、撮像に悪影響を及ぼす気泡の付着しにくさや、伝搬液の流れを阻害しないこと等、種々の考慮すべき事項が存在する。そして、本発明においても上述したような観点を考慮してリングアレイ20の構造について検討し、以下に示す構成に想到している。したがって、本発明の画像処理装置は、浴槽内に浸漬した状態で用いられるのに適したリングアレイ(測定デバイス)を提供することを、本発明の他の目的として包含している。
【0069】
上述した通り、本発明の実施の形態に係るリングアレイ20は、振動子台座21と複数の振動子22とを含む。振動子台座21は、
図3、
図5及び
図6に示すように、所定高さを備える環状の部材であって、その内部は円環状の空洞となっており、振動子22の配線等を引き回すことができるようになっている。振動子台座21の形状は、円状、楕円状、あるいは多角形状であってよい。また、振動子台座21の平面形状は環状であるとしたが、リングアレイ20を水平状態に支持することができる形状であれば種々の形状が許容され、例えばその一部が分離したC字状やU字状のものをも含む。
【0070】
また、振動子台座21の特に底部形状は、下方に凸の形状、詳しくは断面視で下方に向かって膨出するように湾曲した円弧状となっている。このような形状とすることにより、振動子台座21の底部に気泡が付着し難くなり、気泡によって放射波が反射する等の事象が起こらず、撮像を正確に行える。なお、振動子台座21は底面形状のみならず、伝搬液Wに接する部分においては凹凸を極力なくした形状とすることが気泡の付着を抑制するという観点において好ましいため、外観形状の全体を凹凸のない曲面によって形成してもよい。
【0071】
複数の振動子(超音波素子)22は、主に超音波送信機能と超音波受信機能とを備えた超音波素子を複数個(例えば256個)まとめて1つのユニットとして構成したものである。そしてこの複数の振動子22は、電気信号を(例えばその周波数が2.5〜3.5MHzの)超音波に変換し、複数の振動子22の送信面23A(
図6参照。)からその超音波を送信し、被検体Sにあたって反射(エコー)し、あるいは被検体Sを透過した、散乱波を複数の振動子22で受信し、この受信した散乱波を電気信号に変換して出力するものである。本発明の実施の形態に係るリングアレイ20においては、
図5に示すように、8個の振動子22−1〜22−8を用い、これらの振動子22−1〜22−8は、その送信面23Aが環状の振動子台座21の内側方向(リングアレイ20の中心部)を向くように、振動子台座21の上面に等間隔で配列されている。また、複数の振動子22の送信面23Aにより区画された円形の測定領域の大きさは、被検体Sの基部が挿入可能な大きさ、例えばその直径を200〜250mm程度とすることができる。
【0072】
各振動子22は、
図3に示すように、超音波の送信及び受信を行う振動子本体23を備え、この振動子本体23及びこの振動子本体23に電気信号等を供給するための配線(図示省略。)等がユニットを構成しており、振動子本体23の超音波送信及び受信を行う送信面23A及び配線の引き出し口を除くユニット全体が、樹脂モールド24により液密に覆われている。振動子本体23は樹脂モールド24により液密にシールされている。また、配線の引き出し口には、液密シール25が取り付けられており、この液密シール25は、振動子22を振動子台座21の上面に取り付ける際に、振動子台座21の上面の適所に形成された配線挿通穴27に嵌入される。また、この液密シール25には、Oリングを利用してもよい。そして、振動子22と振動子台座21の間を液密に連結した液密シール25の中央部に、振動子本体23に電気信号等を供給する配線が連通され、この配線は振動子台座21内の空洞内に引き回される。
【0073】
液密シール25にOリングを利用する場合、一つの配線挿通穴27を1つのOリングで塞ぐことが好ましい。この時、個別に水密された振動子22は機械加工によりフラットな平面を有し、Oリングで容易に塞ぐことが可能である。一方、一つのOリングが、隣接する複数の振動子カバーの隣接面をまたぐようにして配置され、液密とした場合には、隣接する複数の振動子22の隣接面で生じる段差とOリングが接触する部分で、水密が壊れやすい。また、複数の振動子22の振動子カバーが連結された状態で、複数の振動子22と複数の配線挿通穴27とを、振動子毎にOリングを利用してシールした場合は、Oリングを介して振動子22を台座にネジ止めする際に、異なる振動子に平行で異なる大きさの力が加わる可能性がある。その結果、隣接する振動子22の接合面を含む水密部分に応力が加わり、当該接合部の水密が壊れやすくなる。従って、振動子22の水密を保つ目的においては、振動子22を個別にモールドで水密したうえで、個々の振動子22と配線挿通穴27を液密シール25で個別に水密することが好ましい。
【0074】
また、
図6に示すように、各振動子22の下面には、振動子台座21に対して各振動子22を位置決めするためのアライメントピン28が1乃至複数本(
図6に示す振動子22にあっては2本)設けられている。このアライメントピン28が、振動子台座21の上面の対応する位置に設けられた有底のピン穴29に挿入されることで、両者の位置決めがなされる。なお、本実施の形態においては、振動子22側にアライメントピン28を、振動子台座21側にピン穴29をそれぞれ形成しているが、アライメントピンを振動子台座21側に、あるいは振動子22と振動子台座21の両方に設けることも可能である。本発明においてはこれらの配置、数あるいは形状については特に限定されない。
【0075】
アライメントピン28により位置決めされる8個の振動子22−1〜22−8は、
図5に示すように、隣接する振動子22間に所定幅の隙間26を形成するように、等間隔で配設されている。この隙間26は、浴槽10内の伝搬液Wの流れがリングアレイ20によって阻害されないための水路として設けられている。この隙間26の幅は、伝搬液Wの性質や振動子22の外観形状等を考慮して調整されればよい。ただし、特に振動子22の振動子本体23が位置する高さの隙間26の幅を大きくしすぎると、この隙間26部分には振動子22が存在しないために、振動子22が送信し被検体Sに反射した、あるいは被検体Sを透過した散乱波を受信することができず、結果、被検体Sの測定精度が低下するため、この部分の隙間はできるだけ小さな幅となるよう調整すると良い。
【0076】
この隙間26の幅は、アライメントの調整ができる程度に調整することが好ましい。このように調整することで、上述した通り、測定精度を低下させることなく、且つリングアレイ20周囲の水の流れを円滑にすることができる。例えば、浴槽10の上端部まで伝搬液Wが充填されている状態でリングアレイ20を上昇動作させた場合等に、リングアレイ20の上面によって伝搬液Wが押し上げられることで、あるいはリングアレイ20によって隙間44への機能水への流れが阻害されることで、上部カバー40の上面開口42から被検者P側に伝搬液が侵入することを抑制することができる。また、
図5に示すように、振動子22の振動子台座21への接続部分に比較的大きな隙間を形成してもよい。これにより、リングアレイ20の内側の伝搬液Wがリングアレイ20の外側へ流れるための充分な通路を確保することが可能となる。
【0077】
リングアレイ20は、
図4に示すように、リフタ50によって浴槽10内をZ方向に移動可能である。リングアレイ20をこのリフタ50を用いて移動させつつ超音波測定を行い、被検体Sの断面の撮像をその位置を異ならせ繰り返し取得していくことで、被検体S内部全体の組織の情報を得ることができる。走査の間隔は例えば1.0mmである。したがって、測定範囲の深さが20mmの場合、計21枚の断層画像を取得することになる。走査の間隔としては、1.0mmに限らず、0.5mmや2.0mm等適宜変更することができる。また、測定範囲の深さはリングアレイ20のZ方向のストローク長さ(例えば100mm)以内であれば被検体Sの大きさに合わせて適宜調整できる。なお、走査の方向は、上から下でも、下から上でもよいが、一方向であることが好ましい。本実施の形態においては、リングアレイ20を浴槽10の上方位置とした状態(
図4(A)及び
図3(A)に示す状態)を測定時の初期位置とし、リングアレイ20を浴槽10の下方位置とした状態(
図4(B)に示す状態)を測定時の終了位置としている。
【0078】
リフタ50は、振動子台座21の底部の1箇所に取り付けられてリングアレイ20をZ方向に動作させるものであり、ボールねじを用いた作動機構を備え、支持ロッド51と、動作部52と、ねじ軸53と、モータ54とを含んでいる。支持ロッド51は、長尺な棒状部材からなり、その一端が振動子台座21の底部の1箇所に固定され、浴槽10の底面を液密に且つ摺動可能に貫通し、他端が動作部52に取り付けられたものである。動作部52は、一端が支持ロッド51に取り付けられ、他端がねじ軸53に螺合されたナットを構成し、ねじ軸53の回転運動に伴ってZ方向に直線運動するものである。ねじ軸53は、一端がモータ54に連結しており、回転することで動作部52を移動させるものである。モータ54は、ねじ軸53を回転するための駆動源である。なお、本実施の形態においてはリフタ50の作動機構としてボールねじによる作動機構を採用しているが、直線運動が可能な作動機構であれば任意のもの(例えばリニアモータや電動スライダ、電動シリンダ等)を採用することができる。
【0079】
また、振動子台座21の支持ロッド51が固定された部分と浴槽10底部の支持ロッド51が貫通した部分との間に位置する支持ロッド51の外周囲には、当該支持ロッド51を覆うように蛇腹(液密カバー)55が設けられている。この蛇腹55は、支持ロッド51の作動に追従してZ方向に伸縮自在な部材からなり、伝搬液Wを浴槽10底部の支持ロッド51が貫通した部分に侵入させないこと等をその目的として設けられた液密カバーである。この蛇腹55(あるいは支持ロッド51)の内部には、振動子台座21内の空洞を引き回された各振動子22の配線が集束されて引き回され、外部電源等に接続される。
【0080】
図2及び
図4に示すように、蛇腹55及びこの蛇腹55に覆われた支持ロッド51は、振動子台座21の底部の1箇所のみに配設されている。これにより、例えば浴槽10内を掃除する場合には、支持ロッド51及び蛇腹55による死角を最小限とすることができ、複数箇所で振動子台座21を支持する構造を採用した場合に比べてメンテナンス性が高い。ただし、振動子台座21は支持ロッド51により1箇所しか固定されていないため、振動子台座21は支持ロッド51に片持ち状態で支持されることとなる。したがって、振動子台座21が、支持ロッド51が固定された点を基準としたモーメントにより水平状態が維持できなくなることを抑制すべく、各部材の材料及び振動子台座21と支持ロッド51の間の固定構造を適宜選択する必要があることは特に留意すべき事項である。具体的には、上述したように、水面WSとリングアレイ20とのなす角度αが、tanα≦h/(5R)である状態を維持できるよう、その固定構造等を選択する必要がある。なお、支持ロッド51等の配置は、少なくとも1箇所にあれば足り、上記の1箇所のみに限定されるものではなく、複数箇所に配設することも可能である。
【0081】
次に、本発明の一実施の形態に係る画像処理装置が備える循環機構CSについて、
図7を参照して以下説明する。
図7は、本発明の一実施の形態に係る画像処理装置1の伝搬液Wの循環機構CSを模式的に示した概略構造図である。この循環機構CSは、伝搬液Wを貯留する貯留タンク70と、回収槽30で回収された伝搬液Wを貯留タンク70に戻す回収槽側排水モジュールと、浴槽10の底部に設けられ浴槽10内の伝搬液Wを貯留タンク70に戻す浴槽側排水モジュールと、貯留タンク70内の伝搬液Wを浴槽10に供給するための伝搬液供給モジュールと、浴槽10に供給される伝搬液を浄化する中空糸フィルタ(フィルタ)Fと、浴槽10に供給される伝搬液W内の空気を除去する脱気モジュール80とを含むものである。
【0082】
貯留タンク70は、循環機構CS内を循環させるのに十分な容量、例えば20リットル程度の容量を備えている。貯留タンク70内には伝搬液Wが貯留されており、この伝搬液Wとしては、例えば水道水等を用いることができる。また、貯留タンク70の上部には浴槽10等から排水される伝搬液Wを受ける排水口としての排水ストレーナ71が設けられ、貯留タンク70の側部には、浴槽10内へ伝搬液Wを供給するための給水口としての給水ストレーナ72が設けられている。貯留タンク70は、内部の伝搬液Wの交換を容易とするため、図示しないキャスター付き台座上に配設されると好ましい。
【0083】
回収槽側排水モジュールは、被検体Sの測定開始時等に回収槽30で回収された伝搬液Wを貯留タンク70へ戻すためのものであって、回収槽側ドレン配管L1を含む。回収槽側ドレン配管L1は、回収槽側ドレン口32と排水ストレーナ71とを連結する配管であり、この回収側ドレン配管L1は常時開状態となっている。
【0084】
浴槽側排水モジュールは、伝搬液Wの水位調整、浴槽10内の掃除、あるいは伝搬液Wの交換の際に用いられ、浴槽10内の伝搬液Wを貯留タンク70へ戻すためのものであって、浴槽側ドレン配管L2とドレン用バルブV1とを含む。浴槽側ドレン配管L2は、底部ドレン口12と排水ストレーナ71とを連結する配管であり、例えば回収側ドレン配管L1に比して大きな口径を有する配管から構成される。ドレン用バルブV1は、浴槽側ドレン配管L2に配設され、浴槽10内の伝搬液Wの排水を制御するものである。
【0085】
伝搬液供給モジュールは、貯留タンク70内の伝搬液Wを浴槽10に供給するためのものであって、循環ポンプP1と、供給用配管L3、L4と、伝搬液供給バルブV2とを含む。循環ポンプP1及び供給用配管L3、L4は、貯留タンク70内の伝搬液Wを浴槽10に送るためのものである。伝搬液供給バルブV2は、循環ポンプP1等によって送られた伝搬液Wを浴槽10内に供給する量を制御するための弁であり、供給量調整、すなわち弁開度調整が可能なバルブ、例えばバタフライバルブ、ボール弁、ニードル弁等を用いることができる。本実施の形態においては、伝搬液供給バルブV2は、後述するように、漏れ量をゼロにする必要が必ずしもないこと等の理由から、バタフライバルブを採用している。
【0086】
中空糸フィルタFは、供給用配管L3に配設され、この供給用配管L3を流れる伝搬液Wを浄化するものである。本実施の形態に係る画像処理装置1は、浴槽10内に被検体Sを直接挿入・浸漬して測定を行う形式のものであるため、この中空糸フィルタFにより伝搬液W内の皮脂等が除去される。また、本実施の形態の中空糸フィルタFには、洗浄機能を備えるフィルタを用いており、洗浄(逆洗)時に伝搬液Wを通すためのフィルタ洗浄用配管L5及びフィルタ洗浄用バルブV3をさらに含んでいる。この洗浄機能を備える中空糸フィルタFについては従来周知のものを採用でき、その詳細な構成等についてはここでは説明を省略する。なお、中空糸フィルタFとしては上述した洗浄機能を備える必要は必ずしもなく、定期的に交換して使用される周知のフィルタを採用すること等も可能である。
【0087】
脱気モジュール80は、供給用配管L3から供給された伝搬液W中の気体(気泡)を除去するためのものであり、例えば内部に筒状の中空糸モジュールを備えた脱気モジュールを採用することができる。また、この脱気モジュール40は、伝搬液W中の気体(気泡)を吸引するための真空ポンプP2と、真空ポンプP2側に気体と共に流入し得る液体(伝搬液W)を捕捉するためのトラップ81とを更に含んでいる。なお、この脱気モジュール80についても従来周知のものを採用することができるため、その詳細な構成等についてはここでは説明を省略する。また、この脱気モジュール80に関しては、上述した真空ポンプP2等を用いた構造に限らず、例えば温調機構により、その機能を代替することも可能である。つまり、機能水Wの温度を上昇させることで飽和蒸気圧を上昇させて水中に溶け込んでいるガスの量を減らし、以って機能水Wからの脱気を行うことも可能である。
【0088】
上述した一連の構成を備える循環機構CSにおいては、
図7中に矢印で示した伝搬液Wの循環経路が形成される。すなわち、例えば画像処理装置1の測定開始時には、貯留タンク70内の伝搬液Wは、中空糸フィルタF及び脱気モジュール80により浄化処理及び脱気・脱泡処理が施されて、給水口13から浴槽10内に供給された後、浴槽10の上部開口11からオーバーフローし、回収槽30及び回収槽側ドレン配管L1を介して貯留タンク70内に戻される。このような循環機構CSを採用することにより、近くに水の供給源がない場所であっても本画像処理装置1を設置することができる。また、浴槽10に供給される伝搬液Wには、中空糸フィルタF及び脱気モジュール80によって浄化処理及び脱気処理が常に施されるため、浴槽10に供給される伝搬液Wの状態を長期間維持でき、貯留タンク70内の伝搬液Wの交換頻度を(例えば1日に1回程度に)低減させることができる。さらに、この中空糸フィルタF及び脱気モジュール80を備えるため、貯留タンク70内の水(伝搬液W)として、浄化された脱気水等を別途準備することなく、安価な水道水を利用することが可能であるため、被検体Sの測定を低コストで実現することができる。当然ながら、本実施の形態に係る循環機構CSにおいては、上述した構成以外にも種々の構成を採用することができる。例えば、伝搬液Wの温度を被検者Pが不快に感じない程度にまで加温するためのヒータ、伝搬液の殺菌を行うための(例えば紫外線やオゾン水、薬品等を利用した)殺菌装置、あるいは伝搬液Wの浴槽10に対する供給量あるいは排出量を検知するための水圧センサ等を、この循環機構CS内の適所に配置することが可能である。
【0089】
次に、
図8を参照し、本発明の一実施の形態に係る画像処理装置の制御モジュールについて説明を行う。
図8は、本発明の一実施の形態に係る画像処理装置の機能ブロック図である。なお、
図8においては、画像処理装置が備える各種モジュールのうち、特に本発明に関連するものを中心に示したものであり、
図8に記載された以外にも各種モジュール等を備えていることは言うまでもない。
【0090】
本実施の形態に係る画像処理装置1内には、画像処理装置1全体を制御するためのコントロールボックス100が設けられている。このコントロールボックス100内には、画像制御ユニット110と、メカニカル制御ユニット120と、データベース130と、パーソナルコンピュータ(PC)140とが含まれている。
【0091】
画像制御ユニット110は、被検体Sを測定し、画像データを取得するための各種制御を行うためのものである。この画像制御ユニット110は、少なくとも信号取得モジュール111と、信号処理モジュール112と、位置検知モジュール113とを含んでいる。信号取得モジュール111は、リングアレイ20の複数の振動子22の配線に接続されており、振動子22によって受信され電気信号に変換された超音波信号データを取得するためのものである。信号処理モジュール112は、信号取得モジュール111が取得した超音波信号を再構成し、Bモード画像のRAWデータを生成するためのものである。位置検知モジュール113は、位置検知用デバイス15で検知された被検体Sの位置情報を検知するためのものであり、XY平面上の被検体S位置とZ方向の被検体Sの撮像領域の深さ位置とを検知するものである。
【0092】
メカニカル制御ユニット120は、画像形成装置1が備える各種構成の機械的な制御を行うためのものである。このメカニカル制御ユニット120は、少なくとも振動子制御モジュール121と、リフタ制御モジュール122と、水位制御モジュール123とを含んでいる。振動子制御モジュール121は、リングアレイ20の複数の振動子22を動作させるためのものであって、所定のタイミングで振動子22を動作させることで、被検体SのBモード画像を生成するための超音波信号データを出力させるものである。リフタ制御モジュール122は、モータ54を動作させることで支持ロッド51をZ方向に動作させ、リングアレイ20の深さ方向位置を制御するものである。水位制御モジュール123は、循環機構CS内の各種部材に接続されており、浴槽10内への伝搬液Wの給水及び排水を実行し、浴槽10内の伝搬液Wの水位を所望の水位とするためのものである。この水位制御モジュール123は、オーバーフロー検知センサ33及び位置検知用デバイス15の出力等に基づき、バルブV1〜V3やポンプP1〜P2を制御することで、浴槽10の水位制御を実現している。
【0093】
データベース130は、画像制御ユニット110及びメカニカル制御ユニット120内の各モジュールを制御するための制御用プログラムを格納したものであり、周知の記憶媒体、例えばHDDやSSD等で構成されている。この制御用プログラムは、例えばソフトウェアの形式でデータベース130内に格納されており、後述するPC140のCPUが、又は場合によって画像制御ユニット110及びメカニカル制御ユニット120内の各モジュールが直接このソフトウェアを実行することで、被検体Sの一連の測定プロセスが実現される。
【0094】
PC140は、CPUやメモリ等からなる周知のパーソナルコンピュータである。このPC140では、データベース130に格納された制御用プログラムを参照することによる各種モジュールの制御や、画像制御ユニット110で生成されたRAWデータの各種データ処理等が、データベース130に格納された制御用プログラムに基づいて実行される。このPC140は画像制御ユニット110、メカニカル制御ユニット120及びデータベース130とコントロールボックス100が備える内部バスを介して接続されている。
【0095】
またこのPC140は、コントロールボックス100の外部、さらに言えば測定台2の外部に配設されたユーザインタフェース150にも接続されている。本実施の形態においては、このユーザインタフェース150は、GUI(Graphical User Interface)の形式で提供され、液晶モニタや有機ELモニタ等で構成された表示モジュール151と、キーボード、マウスやトラックボール等からなるポインティングデバイス、及び/又はタッチパネル等で構成された操作モジュール152とを含んでいる。このユーザインタフェース150としては、タブレット端末やノートパソコン等の周知の端末装置を採用することができ、このようなユーザインタフェース150を用いることで、画像測定時等におけるオペレータからの指示を取得することが可能となる。また、このユーザインタフェース150においては、必要に応じて周知の音声入出力モジュールを採用する、あるいは被検者情報やオペレータ情報等を入力するためのバーコードリーダー等からなる読み取りモジュールを採用する等、種々の変更が許容される。
【0096】
PC140においてデータ処理が行われて得られた被検体Sについての複数枚のスライス画像データは、インターネット又はイントラネットからなるネットワークNWを介して医用画像管理システム160(PACS:Picture Archiving and Communication System)へ送信される、PACS160へ格納するために、送信されるスライス画像データはDICOM(Digital Imaging and COmmunication in Medicine)規格に準じた形式のものに調整される。
【0097】
次に、本実施の形態に係る画像処理装置1における測定プロセスについて、簡単に説明を行う。被検体Sの浴槽10内への挿入や被検体Sの位置合わせ、あるいはリングアレイ20の測定の初期位置への移動等の種々の測定前調整が完了し、オペレータからの指示等による測定の開始がトリガされると、振動子制御モジュール121及びリフタ制御モジュール122により、振動子22による走査をリングアレイ20の移動と連携しつつ実行し、振動子22で受信・変換された超音波信号データを逐次信号取得モジュール111へ送信する。撮像範囲全域の走査が完了すると、一連の測定動作によって取得した複数の超音波信号データは、信号処理モジュール112で一連のRAWデータに再構成される。そして、再構成されたRAWデータはPCでDICOM規格に基づくスライス画像データに変換され、ネットワークNWを介してPACS160に送信・格納される。上述した一連の動作は被検体S毎に実行される。また、格納されたスライス画像は対象の被検体の電子カルテ等に関連付けられ、医師による診断等に利用される。なお、本発明の一実施の形態に係る画像処理装置1による測定プロセスについては、特に限定されず、例えば特許文献1、2等に記載されたような自動走査型の画像処理装置において従来から実行されている測定プロセスを採用することもできる。したがって、測定プロセスの詳細についてはその説明を省略する。
【0098】
次に、
図9及び
図10を参照し、本発明の一実施の形態に係る画像処理装置における主要な構成に関連する、測定開始時(且つ測定プロセス開始前)の水位調整プロセスについて、以下に説明を行う。
図9は、本発明の一実施の形態に係る画像処理装置を用いた測定開始時における水位の変化を示す模式図であり、
図10は、本発明の一実施の形態に係る画像処理装置を用いた測定開始時における一連の動作を示すフローチャートである。なお、
図9においては伝搬液Wの流れが見やすいよう、図中にはリングアレイ20等の部材を省略している。
【0099】
本実施の形態に係る画像処理装置1にあっては、測定台2の近傍にユーザインタフェース150としてのノートパソコンが配され、このノートパソコンをオペレータ(検査技師、医師、あるいは他の医療従事者)が操作しながら、被検者Pに対して所定の姿勢を取ることや、被検体の変更等を指示するものである。なお、本発明はこのような使用形態に限定されるものではなく、例えば被検者Pへの指示は全て自動音声あるいは表示によって行われ、画像処理装置1の一連の動作は被検者P等からの入力情報に基づいて自動的に行われるようなもの等、種々の形態を取り得るものである。また、測定に先立って、被検者Pの本人確認や被検者P情報の入力等が行われるが、これらのプロセスは各種モダリティによる測定を行う際に一般的に行われているものであってよく、その詳細については説明を省略する。
【0100】
特定の被検者Pに対して、画像処理装置1を用いた被検体Sの測定処理を実行するに際し、被検体Sを浴槽10内に挿入する前に、この時点での浴槽10内の水位(測定前水位という。)を特定する。測定前水位は、浴槽10の上端位置よりも低い水位、詳しくは被検体Sが浴槽10に挿入された際に、浴槽10内の水位が浴槽10の最高位よりも僅かに下に位置する程度とすることが、被検体S挿入時に伝搬液Wが上部カバー40の上面に侵入することを防止する、及び被検体S挿入後の伝搬液供給プロセスに要する時間を短縮するという観点から好ましい。測定前水位の特定は、ユーザインタフェース150を介したオペレータによる入力操作によって特定することが好ましい。この場合、オペレータは予め取得した電子カルテを参照する、あるいは目視や触診により、被検体Sの容量を特定あるいは推定し、合致する測定前水位を入力する。この入力に際し、入力方法としては段階的に入力可能であることが好ましく、例えば被検体Sの大きさを「大」「中」「小」の3段階からオペレータが選択することで、入力動作がなされる。なお、オペレータによる入力に代えて、被検者Pの各種情報を含む電子カルテ等の情報をPC140が認識することにより、自動的に測位前水位の入力を行うようにしてもよい。
【0101】
オペレータにより測定前水位が入力されると、PC140が入力された測定前水位を取得し(S101)、浴槽10内の水位をこの測定前水位に調整するべく、水位制御モジュール123による水位制御を実行する(S102)。この水位制御は、主にドレン用バルブV1と、伝搬液供給バルブV2及び循環ポンプP1を動作させることにより実現される。また、その際の浴槽10内の水位の具体的な検知方法には、伝搬液Wの供給量あるいは排出量を計算する、あるいは周知のセンサを用いることが採用できるが、測定前水位の検知に際しては高い精度は要求されないため、高精度センサ等を採用する必要は必ずしもない。
【0102】
水位制御モジュール123により浴槽10内の水位が測定前水位に調整される(
図9(A)の状態)と、オペレータが被検者Pに指示することにより、浴槽10内への被検体Sの挿入を行う。被検体Sが正常に挿入されれば(S103でYes、
図9(B)の状態)、次の伝搬液W供給プロセス(S104)を実行し、被検体Sが正常に挿入されていなければ(S103でNo)、被検体Sが正常に挿入されるまで待機する。ここで、被検体Sの「正常な」挿入とは、例えば、被検体Sのリングアレイ20の中心線に対するXY平面上のずれが予め設定された許容範囲内であり、且つ被検体SのZ方向への挿入程度が所定のしきい値以上であることを指す。この挿入状態の検知には位置検知用デバイス15及び位置検知モジュール113が用いられる。
【0103】
被検体Sが正常に挿入されると(S103でYes)、水位制御モジュール123による伝搬液Wの供給が開始される(S104)。伝搬液Wの供給は、循環ポンプP1の作動及び伝搬液供給バルブV2の開動作により実行される。伝搬液Wの供給速度は速い方が水位上昇を短時間で実現できるため好ましい。しかしながら、供給速度が速すぎると、浴槽10内に測定の際にノイズの原因となる水流が発生しこの水流が収まるまでの待ち時間が追加で必要となること、また、被検体Sと上面41の隙間に伝搬液Wが侵入する速度の方が、伝搬液Wが隙間44を経由して回収槽30で回収される速度より早くなり、上面41の上に伝搬液Wが侵入してしまう可能性があることから、例えば1.6〜2.0リットル/分程度とすると好ましい。
【0104】
伝搬液Wの供給が開始されて所定時間が経過すると、伝搬液Wが浴槽10内を満たし、浴槽10の上部開口11からオーバーフローが発生する(
図9(C)参照。)。上部開口11からオーバーフローした伝搬液Wは、上部カバー40との隙間44を通って回収槽30内に流入した後、回収槽側ドレン口32へ流れる。そして、回収槽側ドレン口32に設けられたオーバーフロー検知センサ33が、回収側ドレン口32への伝搬液Wの流入を検知する(S105でYes)。このとき、
図9(C)に示すように、隙間44が比較的狭いこと、及び上部カバー40の開口42の周囲が上述したテーパ面を構成していることに起因して、上部開口42の下側の部分が伝搬液Wの水面WSよりも下に位置し、伝搬液Wに浸漬した状態となる。これにより、上部開口42と被検体Sの基部との間にまで伝搬液Wが到達する。
【0105】
オーバーフロー検知センサ33の出力が検知されると、水位制御モジュール123は、伝搬液供給バルブV2を動作させて浴槽10内への伝搬液Wの供給量を大幅に低減する、又は停止する(S106)。ここで、伝搬液Wの供給量を大幅に低減させることは、例えば伝搬液供給バルブV2に所定の漏れ量を含むバタフライバルブを採用すること、あるいは供給用配管L4に伝搬液供給バルブV2を迂回する、供給用配管L4の径に比して十分に小さな径のバイパス経路を設けることにより実現できる。また、伝搬液Wの供給量を大幅に低減させることは、以降の測定プロセス中においても微量の伝搬液の供給は維持することを指す。これにより、一度浴槽10の上端水位、すなわち最高位に至った水面WSが、種々の要因によって伝搬液Wが減少することによって下方に移動した際に、伝搬液Wの供給が微量維持されていることにより下方に移動した水面WSを速やかに最高位に戻すことができるという点において有利な効果を備えている。この点は、特に上記画像処理装置1がリフタ50及び蛇腹55を備えており、これらの浴槽10内における長さが伸長する(すなわち、リングアレイ20を上方へ移動させる)際、その体積が大きくなることに起因して伝搬液Wが回収槽30側へオーバーフローした場合にも、速やかに水位を最高位に戻すことができるため、好ましい。
【0106】
また、伝搬液Wの供給を停止することは、伝搬液Wに起因する浴槽10内の流れが生じないことから、測定時のノイズを抑制するという点において有利な効果を備えている。なお、この場合はリングアレイ20の作動等に伴って水位が僅かに低下することが想定できるが、例えばリングアレイ20により被検体Sの基部の測定が完了していれば上述した水位の低下は大きな問題とはならないため、そのような場合には伝搬液Wの供給を停止してよい。したがって、オーバーフロー検知センサ33の出力があった後に、伝搬液Wの供給をどのようにするかについては、種々の条件を考慮してオペレータ等が設定すると良い。当然のことながら、オーバーフロー検知センサ33の出力があった後の供給量は1つの態様のみで制御される必要はなく、浴槽10内の状況等に合わせて(供給量の低減と停止を)適宜切り替えて実行することも可能である。
【0107】
図9(D)には、S106において伝搬液の供給量が低減された後の浴槽10の状態が示されている。この
図9(D)から分かる通り、伝搬液Wの水面WSは、表面張力の作用によって上部開口11の高さよりも上方に膨らんだ状態となる。したがって、この水面WSは上面開口42の高さまで至り、これにより上面開口42よりも下方向に位置する被検体Sは伝搬液Wに浸漬した状態となっている。加えて、伝搬液Wはこの時点で上部開口42と被検体Sの基部との間に到達しており、この伝搬液Wは同じく表面張力の作用で上部開口42と被検体Sの基部との隙間を埋めるように留まっている。結果として、上面開口42に挿入された被検体Sは、その基部に至るまで確実に伝搬液W内に浸漬した状態となり、被検体S全体を測定することができるものとなる。
【0108】
伝搬液Wの供給が低減又は停止されると、PC140は伝搬液Wの水面WSが最高水位にあると特定し、測定を許可する(S107)。ただし、この場合であっても、水位以外の条件が揃っていなければ当然測定プロセスを開始することはできない。例えばS106の後に再度位置検知用デバイス15及び位置検知モジュール113を動作させて被検体SのZ方向位置を検出した結果、被検体Sの基部が上部開口42内に完全には挿入されていないことが検知された場合等には、被検体Sの移動及び水位の再調整が必要となる。すなわち、S107においては、水位調整の観点において測定プロセスが開始可能であることを特定しているのみである。
【0109】
以上説明した通り、本発明は、被検体を浴槽内に浸漬するタイプの自動走査型画像処理装置において、浴槽から伝搬液をオーバーフローさせ、そのオーバーフローを検知するのみという極めて簡単な構成で、被検体の基部を伝搬液内に浸漬することができる。したがって、各種センサ等複雑な構成を採用することなく、被検体の撮像(測定)をもれなく実行することができる。
【0110】
オプションとして、本発明の一実施の形態に係る画像処理装置1においては、被検者Pが変更するタイミング等に浴槽10内の伝搬液Wをクリーニングする機能を備えていることが好ましい。詳しくは、例えば被検体Sの測定が完了し、被検者Pが測定台2から下りた際、この動作を検知あるいはオペレータの入力動作に起因して、浴槽10内の伝搬液Wをクリーニングするとよい。このクリーニング動作は、主に以下の2つの方法を選択的にあるいは組み合わせて実行するとよい。
【0111】
1つ目のクリーニング動作は、伝搬液供給モジュールを動作させて給水口13から伝搬液を所定量(好ましくは水位制御時の供給量よりも十分大きな量)供給し、被検体Sが浸漬していた浴槽10上部の伝搬液Wを積極的にオーバーフローさせ、浴槽10内に浮遊する皮脂等の汚れと共に貯留タンク70へ戻すことである。そして2つ目のクリーニング動作は、浴槽10底部に沈殿して留まっているゴミ等を除去するためにドレン用バルブV1を開動作し、浴槽10底部のゴミ等を含む伝搬液Wを所定量貯留タンク70へ戻すことである。
【0112】
以上のようなクリーニング機能を備えることで、被検者Pが変わる毎に浴槽10内に常に清浄な伝搬液Wを貯留することになり、被検者Pは衛生面の不安なく安心して測定を受けることができるようになる。
【0113】
オプションとして、上記実施の形態においては振動子22は樹脂モールドにより液密となっているが、モールド材料の耐水性を考慮すると、振動子22を定期的に伝搬液W外に離脱させることが好ましい。そこで、被検者Pが変わる際、あるいは上述のクリーニング動作の後においては、伝搬液Wの水位をリングアレイ20の高さ以下とするとよい。
【0114】
(その他の実施の形態)
上述した一実施の形態の画像処理装置1は、浴槽10の上端部と上面41の下面との間に隙間44を形成し、浴槽10内の伝搬液Wは、浴槽10上部から、オーバーフローによりこの隙間44を介して浴槽10外に排出されるように構成されているが、浴槽10外への伝搬液Wの排出構造は、上述の構成に限定されない。例えば伝搬液Wが浴槽10外に排出される位置は、浴槽10の上部であれば足り、上記実施の形態のように浴槽10の上端部からオーバーフローする構造である必要はない。したがって、本願のその他の実施の形態として、浴槽10の側壁の上部位置に複数の排水用の穴を形成し、当該排水用の穴を介して浴槽10内の伝搬液Wを浴槽10外へ排出する構造を採用することが可能である。このような実施の態様を採用した場合には、浴槽10の上端部を、被検体Sの周囲を直接あるいは間接的に支持するように構成することができ、その結果、上部カバー40を省略することも可能である。ただし、上記排水用の穴は、測定時のリングアレイ20の全体が常に伝搬液W内に浸漬するよう、測定プロセスにおける上端位置(初期位置)に配置したリングアレイ20の上端の高さ以上の高さ位置に配設する必要がある。
【0115】
なお、本発明の画像処理装置1は、データベース130にソフトウェアの形式で格納された制御用プログラムを実行することによって一連の制御を実現していたが、これに代えて専用のハードウェア回路を組み込んだ特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、又は単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)により実現することも可能である。
【0116】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【0117】
本明細書中で引用する刊行物、特許出願及び特許を含むすべての文献を、各文献を個々に具体的に示し、参照して組み込むのと、また、その内容のすべてをここで述べるのと同じ限度で、ここで参照して組み込む。
【0118】
本発明の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞及び同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数及び複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」及び「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「〜を含むが限らない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例又は例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、請求項に記載されていない要素を、本発明の実施に不可欠であるものとして示すものとは解釈されないものとする。
【0119】
本明細書中では、本発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読めば、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを期待しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本発明が実施されることを予定している。したがって本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正及び均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組合せも本発明に包含される。