(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光源から出射された光を回転しながら反射して所定方向にスキャンする回転リフレクタを有するランプユニットであって、前記回転リフレクタを回転するモーターは、ステータと、回転軸に取り付けられたローターと、前記回転軸の軸方向に離間配置されて当該回転軸を軸転可能に支持する一対の軸受を備えており、前記回転リフレクタは前記回転軸の一方の端部に取り付けられ、前記回転軸の他方の端部にバランスウェイトが取り付けられて前記回転軸の重心が前記一対の軸受の軸方向の間に設定されており、前記バランスウエイトは放熱ファンとして構成されていることを特徴とするランプユニット。
前記回転リフレクタは、少なくとも1枚の光反射ブレードを備えており、当該光反射ブレードの光反射面は回転方向に沿って前記光源に対する対向角度が変化する構成である請求項1に記載のランプユニット。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明を自動車のヘッドランプのランプユニットLUとして構成した実施形態1の概略斜視図、
図2はその一部を破断した平面図である。このランプユニットLUは、例えばADB(Adaptive Driving Beam)配光制御、すなわち自動車の走行状況に応じてヘッドランプの照明領域と非照明領域を適応制御可能なスキャン式のランプユニットとして構成されており、光源部1と、リフレクタ部2と、投影レンズ部3を1つのユニットとして一体的に構成したものである。
【0012】
このランプユニットLUの概略構成を説明する。前記光源部1は平面視でほぼL字型をしたヒートシンク12を有しており、このヒートシンク12の内側の壁面の一部に光源としてのLED(発光ダイオード)11が搭載されている。前記ヒートシンク12は外面の一部に複数の放熱フィン13が形成されており、搭載しているLED11が発光したときに発生する熱をヒートシンク12及び放熱フィン13から外部空間に放熱させる。
【0013】
前記LED11は、詳細な図示は省略するが、複数のLEDチップ、例えば9個のLEDチップを所定形状に配列した複合型LEDとして構成されており、各LEDチップは発光したときに白色光を出射し、各LEDチップからの白色光は一体に合成された光束としてLED11から出射される。9個のLEDチップはランプユニットLUに要求される光度を満たすために設けられているので、当該要求される光度を満たすのであればLEDチップはこれよりも少ない個数あるいは多い個数であってもよい。また、ディスクリートLEDで構成されてもよい。さらには、集光用レンズや集光用リフレクタを一体に構成したLEDユニットとして構成されてもよい。
【0014】
前記リフレクタ部2は、モーター21と、このモーター21により回転駆動される回転リフレクタ22とで構成されており、ステム14により前記ヒートシンク12に支持されている。これらモーター21と回転リフレクタ22の詳細については後述するが、回転リフレクタ22は2枚の半円形をした光反射ブレード221(以下、ブレードと略称する)を円周配置した略円板状に構成されており、その中心のボス222において前記モーター21の回転軸211に取り付けられている。これにより、モーター21を駆動したときに回転リフレクタ22は回転軸211の回りに回転駆動される。
【0015】
前記投影レンズ部3は、円形レンズの一部を切除した形状の投影レンズ31を備えている。この投影レンズ31はレンズホルダ32及びステム33により前記ヒートシンク12に支持されており、後述するように、前記したリフレクタ部2の回転リフレクタ22によって反射された光をランプユニットLUの前方に向けて投影し、自動車の前方を照射するようになっている。投影レンズ31はスキャンに必要な部位のみを残し、その他の部位を切除することにより、レンズの小型化ないしランプユニットの小型化、軽量化が実現できる。
【0016】
前記回転リフレクタ22について説明する。
図3はリフレクタ部2の斜視図であり、後述するケーシング23の一部を破断した分解斜視図である。前記したように、ボス222に2枚の半円形をしたブレード221が支持されており、全体としてほぼ円板状に形成されている。各ブレード221は表面、すなわち自動車の前方に向けられている
図3の上側を向いた面が光反射面として構成されている。ここでは、2枚のブレード221は前記ボス222と共に樹脂成形により一体形成されており、少なくとも両ブレード221の表面にアルミニウム膜を蒸着、メッキ等した光反射膜が形成されている。2枚のブレード221の円周方向の間にはそれぞれ径方向に伸びる隙間が設けられており、この隙間は光反射を行わない無反射領域として構成されている。
【0017】
2枚のブレード221はボス222を中心とした点対称の形状であり、光反射面としての表面の径方向の傾斜角度、すなわち前記モーター21の回転軸211の軸方向と垂直な面に対する傾斜角度が、円周方向に沿って連続的に変化する構成とされている。ここでは、ブレード221を表面方向から見たときに、時計方向側では傾斜角度が裏面側に傾斜した負の角度であり、反時計側では傾斜角度が表面側に傾斜した正の角度に構成されている。
【0018】
以上、概略説明したランプユニットLUは、ヘッドランプが自動車に装備された状態では、
図2に示した前記投影レンズ31のレンズ光軸Lxが自動車の前後方向に向くように配置される。また、前記LED11は、各LEDチップから出射される光束の出射光軸Axが前記レンズ光軸Lxに対して水平方向にほぼ直角な方向に向けられている。前記リフレクタ部2は、前記モーター21の回転軸211が当該出射光軸Axと前記レンズ光軸Lxのそれぞれに対して水平方向にほぼ45度の角度で交差する方向に向けられるとともに、前記回転リフレクタ22の各ブレード221の反射面が前記出射光軸Axと前記レンズ光軸Lxの交点を通るように形成されている。
【0019】
そして、LED11を発光すると、各LEDチップから出射された光は1つの光束となって回転リフレクタ22のブレード221の表面に投射され、ここで反射される。反射された光束は投影レンズ31に入射され、ここで屈折されながらランプユニットLUの前方、すなわち自動車の前方に向けて投影され、自動車の前方領域を照射する。
【0020】
回転リフレクタ22のブレード221はモーター21により回転され、ブレード221の表面に対するLED11からの光束が入射される位置は円周方向に変化する。前記したようにブレード221の表面の傾斜角度は円周方向に変化しているので、ブレード221の回転に伴って入射する光束の入射角が変化される。これにより、ブレード221で反射される光束の反射角、すなわちレンズ光軸Lxに対する水平方向の角度が変化される。したがって、投影レンズ31を透過する光束は水平方向に偏向され、自動車の前方領域に向けてスキャン(走査)されながら照射されることになる。
【0021】
すなわち、LED11から光束が経時的に連続して出射されているときには、当該光束は回転リフレクタ22の回転に追従して、
図1と
図2に示すように、水平方向Sに高速でスキャンされる。このスキャン速度は高速であるので、人間の眼においては水平方向にスキャンされた領域を照明する配光となる。したがって、このスキャンに同期してLED11の発光光度(光度零の消光を含む)をタイミング制御することにより、スキャンする水平方向の光度を変化させることができ、例えば所望の領域のみを照明し、他の領域の光度を低下ないし消灯するADB配光制御が実現できる。また、複数のLEDチップ発光光度をそれぞれ独立してタイミング制御することにより、より細かい光度分布のADB配光制御が実現できる。
【0022】
なお、回転リフレクタ22においては、1枚のブレード221の回転により1回のスキャンが行われので、2枚のブレード221で構成されているこの実施形態の回転リフレクタ22では、回転リフレクタ22の1回転で2回のスキャンが行われる。2枚のブレード221の円周方向の間に隙間が設けられているので、光の反射が1枚のブレード221から他の1枚のブレード221に移る際に、この隙間では光反射が行われることはなく、各スキャンの間に光束が反対方向にスキャンされるようなことはない。
【0023】
回転リフレクタ22を回転駆動する前記モーター21について説明する。
図4は前記リフレクタ部2の縦断面図である。
図4と
図3を参照すると、モーター21は、コイル(巻線)241を有するステータ24と、このステータ24の周囲に配設されたマグネット(永久磁石)251を有するローター25とからなるアウターローター型のブラシレスモーターとして構成されている。
【0024】
前記モーター21は硬質樹脂からなるケーシング23を備えている。このケーシング23は、底面が二段に凹設された円形容器状とされ、このケーシング23の底面に中空円筒状の軸受筒231が突出した状態で一体成形されている。この軸受筒231の筒内には、筒軸方向に沿って一対のラジアルボールベアリング(以下、単にボールベアリングと称する)26が離間配置されている。モーター21の回転軸211は、前記軸受筒231に内挿されており、この軸受筒231内において前記一対のボールベアリング26により軸転可能に支持されている。
【0025】
前記ケーシング23の内底面上には所要の平面領域にわたって回路基板27が配設支持されている。この回路基板27は例えばプリント配線基板で構成されており、その一部には前記軸受筒231の外径に位置するように筒部271が一体に設けられている。この筒部271の周面にはコアに導線を巻回した複数のコイル241が配置されており、ここでは6つのコイル241が円周配置されている。各コイル241はそれぞれ前記回路基板27に設けられたプリント配線(図示せず)に電気接続され、給電が行われるようになっている。
【0026】
一方、前記回転軸211には前記ステータ24を構成している前記6つのコイル241を覆うように短円筒容器状をしたローターヨーク252が取り付けられている。このローターヨーク252は強磁性体で構成されており、円形をした底壁の中心において当該回転軸211にスプライン嵌合等によって回転方向に一体支持されている。当該ローターヨーク252の円周壁は前記コイル241の外周回りに配置されるとともに、この円周壁の内面には複数個、ここでは4つの円弧板状をしたマグネット251が周方向に所要のピッチ寸法で配列された状態で支持されている。これら4つのマグネット251は、前記各コイル241に対向する内径方向に向けられた面のN極とS極が周方向に交互に配列するように取り付けられている。
【0027】
前記回路基板27には前記コイル241に給電を行うための給電回路が構成されている。この給電回路は6つのコイル241に対して給電する3相信号(U,V,W)をシーケンス制御する。また、この給電回路にはシーケンス制御のタイミングを得るために、前記ローターヨーク252の回転を検出するための複数個、ここでは3つのホール素子272が搭載されている。これらのホール素子272はホール効果を利用して前記マグネット251の磁極方向の変化を検出することによりマグネット251を支持しているローターヨーク252の回転方向や回転速度を検出する。ホール素子自体は公知であるので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0028】
このモーターにおいて、6つのコイルに3相信号を給電して、各コイル241により発生するN磁界あるいはS磁界を周方向に経時的に変化させることにより、各マグネット251に接線方向の駆動力を生じさせ、マグネット251と一体のローターヨーク252を一体的に回転させる。このローターヨーク252の回転により、取り付けられている回転軸211が軸転され、アウターローター型のモーターとして機能される。
【0029】
前記した回転リフレクタ22のボス222は、この回転軸211の一方の端部、ここではローターヨーク252が取り付けられている側の端部に嵌合されて、回転軸211に一体的に取り付けられている。これにより、モーター21が駆動されて回転軸211が回転すれば、回転リフレクタ22が回転され、これに伴うブレード221の回転により前記したようにLED11の光を反射してスキャンによる照明を実行することになる。
【0030】
このように、実施形態ではモーター21の回転軸の一方の端部に回転リフレクタ22とローターヨーク252をそれぞれ取り付けた構成とすることにより、リフレクタ部2の組立に際しては、回転軸211を軸支させたケーシング23に回路基板27を搭載してステータ24を構成した後に、ローターヨーク252を回転軸211に取り付け、さらに当該回転軸211に回転リフレクタ22を取り付ける作業をケーシング23の一方側から行うことができ、モーター21と回転リフレクタ22の組立作業を容易に行うことができる。また、ヒートシンク12にリフレクタ部2を組み付けた後のモーター21や回転リフレクタ22のメインテナンスも容易になる。
【0031】
一方、回転軸211の一方の端部にローターヨーク252と回転リフレクタ22を共に取り付けた構成とすると、回転軸211の重心位置Gxは一方の端部側に偏って一対のボールベアリング26から大きく外れた状態になり易い。例えば、
図4に示すように、重心位置Gxは一対のボールベアリング26の間から一方の端部側に外れた位置になる。このような状態になると、回転軸211の回転に伴って回転軸211がみそすり運動をすることがあり、回転リフレクタ22の回転にぶれが生じ、LED11の光を好適にスキャンできなくなるおそれがある。
【0032】
実施形態1では、前記回転軸211の他方の端部、すなわち前記ケーシング23を挟んで前記ローターヨーク252及び回転リフレクタ22と反対側の端部には、バランスウェイト4が取り付けられている。このバランスウェイト4は、前記回転リフレクタ22の重量にほぼ匹敵する重量、あるいは回転リフレクタ22とローターヨー252クを合せた重量に近い重量をした円柱状に形成されている。このバランスウェイト4を取り付けることにより、
図4に示すように、回転軸211の重心位置Gを前記一対のボールベアリング26の軸方向の間の位置、好ましくは当該軸方向の中間位置に設定している。
【0033】
このようにバランスウェイト4を備えて重心位置Gを一対のボールベアリング26の軸方向の間に位置させることにより、モーター21が駆動されて回転軸211が軸転したときに、回転軸211がみそすり運動することを抑制する。したがって、回転軸211の一方の端部に取り付けられている回転リフレクタ22、特に2枚のブレード221は回転中心がぶれることなく安定して回転動作され、LED11の光を安定して反射して好適なスキャンが行われる。
【0034】
前記実施形態では回転軸211の他方の端部にバランスウェイト4を取り付けて回転軸211の重心位置を一対のボールベアリング26の軸方向の間に位置させているが、他の手法により重心位置を一対のボールベアリング26の軸方向の間に位置させることが可能であるならば、バランスウェイトは必ずしも必要とされるものではない。
【0035】
図5は実施形態2のリフレクタ部2の縦断面図であり、実施形態1のバランスウェイト4の代わりに回転軸211の他方の端部をケーシング23から裏面側に突出した延長部4Aを設けている。すなわち、回転軸211の他方の端部が他方の端部側に配置された軸受26(26b)から延長される長さが、回転軸211の一方の端部が回転軸の一方の端部側に配置された軸受26(26a)から延長される長さよりも長くするような延長部4Aが設けられている
【0036】
この延長部4Aを設けることにより回転軸211の重心位置Gを他方の端部側に移動させ、当該重心位置Gが一対のボールベアリング26の軸方向の間に位置するようにしたものである。この場合、図示は省略するが、延長部4Aの径寸法を一端側の部位よりも相対的に大径にした回転軸を構成すれば、延長部4Aの長さを短くすることが可能になる。
【0037】
図6は実施形態3のリフレクタ部の縦断面図であり、回転軸211における重心位置を他端側に移動するのではなく、ケーシング23の軸受筒231の突出長さを増大し、当該軸受筒231の先端をローターヨーク252の内底面に可及的に近接させている。そして、一対のボールベアリング26のうち回転軸211の一方の端部側、すなわち軸受筒231の先端側のボールベアリング26を先端側に移動してステータ24のコイル241よりも当該一方の端部側に突出した位置に配置している。これにより、一対のボールベアリング26の間隔寸法、すなわち回転軸211の軸方向の間隔寸法が増大され、回転軸211の重心位置Gを一対のボールベアリング26の間に位置することが可能になる。
【0038】
一方、前記バランスウェイトを異なる形態としてもよい。
図7は実施形態4の縦断面図である。実施形態1のバランスウェイト4の代わりに放熱ファン5を回転軸211の他方の端部に取り付けている。この放熱ファン5は各種電子部品の冷却用のファンとして用いているものをそのまま利用することができる。また、前記ケーシング23の裏面側には、当該放熱ファン5を内装する放熱ダクト28が設けられている。
【0039】
この放熱ダクト28は、前記放熱ファン5を包囲する容器状に形成されて前記ケーシング23の裏面に取り付けられている。そして、放熱ダクト28の一部には放熱ファン28に臨む位置に吸気口281が設けられる。また、放熱ダクト28は、
図8に示すように、前記ヒートシンク12の放熱フィン13に対向する位置まで延長され、この延長端に送気口282が開口されている。
【0040】
前記放熱ファン5は所定の重量を有しているので、この重量により実施形態1のバランスウェイト4と同様に回転軸211の重心位置Gを他方の端部側に移動し、一対のボールベアリング26の軸方向の間の位置に設定することが可能になる。これにより、回転軸211がみそすり運動が防止され、回転リフレクタ22が安定して回転動作され、LED11の光を適正に反射し、好適なスキャンが行われる。
【0041】
また、回転軸211の回転に伴って放熱ファン5が回転されると、放熱ダクト28内に空気流が生じる。ここでは放熱ダクト28の吸気口281から空気が流入され、流入された空気は送気口282から送出される。送出された空気は放熱フィン13に向けて送風され、ヒートシンク12における放熱効果を増大する。これにより、LED11が発光したときに発生した熱はヒートシンク12により効率よく放熱され、LED11ないしランプユニットLUの冷却効果が得られる。
【0042】
この、放熱ダクト28は必ずしも設ける必要はなく、放熱ファン5を回転させることによりランプユニットLUを内装しているランプハウジング内の空気を循環させ、ランプハウジング内の温度上昇を抑制し、あるいはランプハウジング内に生じる結露を防止する上でも有効である。
【0043】
本発明におけるバランスウェイトは、実施形態に記載の円板形状、あるいは放熱ファンに限られるものではない。また、回転軸にウエイトバランスを取り付ける位置を変化できるように構成することにより、重心位置を適宜に調整することができる。例えば、回転軸の他方の端部にネジ条を形成し、これにバランスウェイトを螺合させ、その螺合位置を変化するように構成してもよい。
【0044】
本発明は実施形態に記載したブラシレスモーターを用いるランプユニットに限られるものではない。例えば、ブラシを有するDCモーターにおいても、ローターを取り付けている回転軸の一方の端部に回転リフレクタを取り付けた場合には本発明を適用することができる。
【0045】
本発明にかかる回転リフレクタは実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、ブレードの形状や枚数等、異なる形態の構成であってもよい。例えば、ブレードは1枚でもよく、あるいは3枚以上であってもよい。また、回転リフレクタを駆動するモーターの構成も実施形態の構成に限定されるものではなく、コイルやマグネットの個数及び駆動する相信号も異なる形態のものであってもよい。さらに、回転軸の一方の端部から、ブレード、ケーシング、ヨークの順に配設した構成としてもよい。同様にランプユニットを構成している光源や投影レンズの形態も異なる構成であってもよい。