特許第6940316号(P6940316)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

<>
  • 特許6940316-二次電池及び二次電池の製造方法 図000003
  • 特許6940316-二次電池及び二次電池の製造方法 図000004
  • 特許6940316-二次電池及び二次電池の製造方法 図000005
  • 特許6940316-二次電池及び二次電池の製造方法 図000006
  • 特許6940316-二次電池及び二次電池の製造方法 図000007
  • 特許6940316-二次電池及び二次電池の製造方法 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6940316
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月22日
(54)【発明の名称】二次電池及び二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20210909BHJP
   H01M 10/056 20100101ALI20210909BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20210909BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20210909BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20210909BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20210909BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20210909BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20210909BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20210909BHJP
【FI】
   H01M10/0585
   H01M10/056
   H01M10/0568
   H01M10/0569
   H01M10/052
   H01M10/04 Z
   H01M4/13
   H01M4/139
   H01M4/04 A
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-122898(P2017-122898)
(22)【出願日】2017年6月23日
(65)【公開番号】特開2019-8963(P2019-8963A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年2月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尼崎 新平
(72)【発明者】
【氏名】加賀 祐介
(72)【発明者】
【氏名】直江 和明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 誠
(72)【発明者】
【氏名】西村 悦子
(72)【発明者】
【氏名】野家 明彦
【審査官】 福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−069121(JP,A)
【文献】 特開2014−216131(JP,A)
【文献】 特表2012−531716(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0330418(US,A1)
【文献】 特開2011−108499(JP,A)
【文献】 特開2008−171588(JP,A)
【文献】 特開2017−059432(JP,A)
【文献】 特表2005−530882(JP,A)
【文献】 特開2015−128063(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104752661(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
H01M 10/00−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された電解質層と、を有し、
前記電解質層は、担持材として粒子又は繊維を含み、かつ、第一の電解質を含む第一の領域と、第二の電解質を含む第二の領域と、を有し、
前記第の領域に存在する担持材の平均粒子径又は平均線幅、前記第の領域に存在する担持材の平均粒子径又は平均線幅より小さく
前記第二の領域の長径は、前記第一の領域に存在する担持材の平均粒子径又は平均線幅よりも大きく、
前記第二の領域は、前記正極層側に位置する前記第一の領域と、前記負極層側に位置する前記第一の領域との間に位置することを特徴とする、二次電池。
【請求項2】
前記第二の領域に存在する担持材の単位体積あたりの表面積は、前記第一の領域に存在する担持材の単位体積あたりの表面積よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第二の領域に存在する担持材は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース、ポリマー、及びコポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第二の電解質として、Li塩を含有するイオン性液体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第二の電解質は、溶媒として、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、及び1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第二の領域は、セルロース繊維と、(CFSONLiと、テトラエチレングリコールジメチルエーテルとを含むことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
【請求項7】
(1)正極層の表面上に、担持材として粒子又は繊維を含む第一の電解質を含むスラリーを塗布して積層体を準備する工程と、
(2)負極層の表面上に、前記第一の電解質を含むスラリーを塗布して積層体を準備する工程と、
(3)前記(1)工程により得られた積層体と、前記(2)工程により得られた積層体と、を、担持材として粒子又は繊維を含む第二の電解質を挟んで、重ね合わせることにより、前記正極層と前記負極層との間に配置された電解質層を形成させる積層工程と、をみ、
前記積層工程において、前記正極層側に位置し前記第一の電解質を含む第一の領域と、前記負極層側に位置し前記第一の電解質を含む第一の領域との間に、前記第二の電解質を含む第二の領域が形成され、
前記第二の領域に存在する担持材の平均粒子径又は平均線幅は、前記第一の領域に存在する担持材の平均粒子径又は平均線幅より小さく、
前記第二の領域の長径は、前記第一の領域に存在する担持材の平均粒子径又は平均線幅よりも大きいことを特徴とする、二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池及び二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2012−018932号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、「正極活物質層、固体電解質層、及び負極活物質層がこの順に積層されてなる少なくとも1つの単電池層を有する固体電解質電池において、前記固体電解質層と前記正極活物質層および/または前記負極活物質層との間に、無機微粒子を含む接着層を介在させる。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−018932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、リチウムイオン電池に代表される二次電池の電解質として、半固体状態の電解質が用いられている。例えば、微粒子等に電解質を担持させて絶縁層を形成し、絶縁層を電解質層として機能させることができる。正極層と負極層の間に電解質層を設けることで、二次電池が形成される。しかし、単に正極層、電解質層、負極層を重ね合わせるだけでは、積層界面に空隙が生じる等して界面抵抗が増大し、これが内部抵抗の構成因子の一つとなり電池性能の低下を招く場合がある。
【0005】
また、電池性能を向上させるために、特許文献1には、電解質層と正極層及び/又は負極層との間に、無機微粒子を含む接着層を介在させる技術が記載されている。しかし、特許文献1のように、接着層や接合層(以下、これを接着層と相称することがある。)を設けるがゆえに界面の数が増加し、二次電池全体としての界面抵抗を高く、ひいては二次電池の内部抵抗が高くなってしまう場合がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、内部抵抗が低く、優れた性能を有する二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様は、正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置された電解質層と、を有し;前記電解質層は、担持材として粒子又は繊維を含み、かつ、第一の電解質を含む第一の領域と、第二の電解質を含む第二の領域と、を有し;前記第の領域に存在する担持材の平均粒子径又は平均線幅、前記第の領域に存在する担持材の平均粒子径又は平均線幅より小さく;前記第二の領域の長径は、前記第一の領域に存在する担持材の平均粒子径又は平均線幅よりも大き前記第二の領域は、前記正極層側に位置する前記第一の領域と、前記負極層側に位置する前記第一の領域との間に位置する、二次電池である。
【0008】
また、本発明の別の態様は、(1)正極層の表面上に、担持材として粒子又は繊維を含む第一の電解質を含むスラリーを塗布して積層体を準備する工程と;(2)負極層の表面上に、前記第一の電解質を含むスラリーを塗布して積層体を準備する工程と;(3)前記(1)工程により得られた積層体と、前記(2)工程により得られた積層体と、を、担持材として粒子又は繊維を含む第二の電解質を挟んで、重ね合わせることにより、前記正極層と前記負極層との間に配置された電解質層を形成させる積層工程と;を含み、前記積層工程において、前記正極層側に位置し前記第一の電解質を含む第一の領域と、前記負極層側に位置し前記第一の電解質を含む第一の領域との間に、前記第二の電解質を含む第二の領域が形成され、前記第二の領域に存在する担持材の平均粒子径又は平均線幅は、前記第一の領域に存在する担持材の平均粒子径又は平均線幅より小さく、前記第二の領域の長径は、前記第一の領域に存在する担持材の平均粒子径又は平均線幅よりも大きい、二次電池の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、内部抵抗が低く、優れた性能を有する二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第一の実施形態に係る二次電池の断面模式図である。
図2】第二の実施形態に係る二次電池の断面模式図である。
図3】実施例1及び比較例1における電解質層の観察箇所を示す断面模式図である。
図4】実施例1及び比較例1のサンプルの断面を撮像したSEM像である。
図5】実施例1及び比較例1のサンプルの断面のEDX分析箇所を示す図である。
図6】実施例1及び比較例1の内部抵抗を評価した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。また、以下の実施形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクション又は実施形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部又は全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0012】
また、以下の実施形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む。)に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む。)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0013】
同様に、以下の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値及び範囲についても同様である。
【0014】
さらにまた、実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0015】
<二次電池>
(第一の態様)
図1は、第一の実施態様に係る二次電池の断面模式図である。二次電池1Aは、正極層10と、負極層20と、正極層10と負極層20との間に配置された電解質層30と、を有し;電解質層30は、担持材として粒子又は繊維を含み、かつ、第一の電解質を含む第一の領域31と、第二の電解質を含む第二の領域32と、を有し;第一の領域31に存在する担持材の平均粒子径又は平均線幅と、第二の領域32に存在する担持材の平均粒子径又は平均線幅とは異なり;第二の領域32の長径は、第一の領域31に存在する担持材の平均粒子径又は平均線幅よりも大きい。
【0016】
二次電池1Aは、電解質層30において、第一の電解質と第二の電解質を併用するものであり、第一の電解質により形成されている第一の領域31と、第二の電解質により形成されている第二の領域32とを有するものである。
【0017】
電解質層に半固体電解質等を使用する場合、正極と負極を積層させると、その界面や内部等に空隙が形成されてしまい、この空隙が界面抵抗の原因となっていた。このような界面抵抗は、二次電池の内部抵抗の構成因子の一つとなっている。
【0018】
この点、本実施形態では、電解質層30について、第一の電解質と第二の電解質を併用し、それぞれの担持材の形状を制御する。これによって、第一の電解質(第一の領域)において形成されうる空隙を第二の電解質(第二の領域)によって充填することが可能となる。その結果、上述した空隙を低減でき、界面抵抗を低減できる。さらに、本実施形態に係る二次電池1Aは接着層等を設けなくてもよいため、界面の数を低減することも可能であるから、かかる観点からも界面抵抗の低減が期待できる。その結果、二次電池1Aは、内部抵抗が低減され、優れた性能を有する。
【0019】
また、第一の電解質に用いられる担持材(以下、第一の担持材という場合がある。)及び第二の電解質に用いられる担持材(以下、第二の担持材という場合がある。)として、それぞれ、粒子又は繊維を用いる。粒子を用いる場合にはその平均粒子径を制御し、繊維を用いる場合にはその平均線幅を制御することで、各担持材の形状を制御する。
【0020】
具体的には、本実施形態では、第一の担持材の平均粒子径又は平均線幅は、第二の担持材の平均粒子径又は平均線幅と異なっており、第二の領域の長径は、第一の担持材の平均粒子径又は平均線幅よりも大きい。このような構成とすることで、第一の領域の空隙を第二の領域(第二の担持材が担持された第二の電解質)により充填することができる。第二の領域の長径がかかる条件を満たすことは、例えば、二次電池1Aの断面において第一の領域中に第二の領域が存在していること等によって確認することができる。
【0021】
このような観点から、第二の領域の長径は、第一の担持材の平均粒子径又は平均線幅の1倍を超えて5倍以下であることが好ましく、1倍を超えて3倍以下であることがより好ましく、1倍を超えて2倍以下であることが更に好ましい。
【0022】
なお、本実施形態では、第二の領域の長径については、二次電池1Aに存在する少なくとも1つが、上述した条件を満たすものであればよい。平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定して求める平均粒子径D50を用いることができる。平均線幅は、繊維の長手方向の形状を観察し、写真撮影して50カ所の線幅を測定し、その算術平均をとることによって求めることができる。
【0023】
そして、第二の担持材の平均粒子径又は平均線幅は、第一の担持材の平均粒子径又は平均線幅よりも小さいことが好ましい。これにより、電解質層30の空隙を一層充填することができる。
【0024】
さらに、第二の領域に存在する担持材の単位体積あたりの表面積は、第一の領域に存在する担持材の単位体積あたりの表面積よりも大きいことが好ましい。これにより、電解質の担持量を増加させることができる。このような観点から、粒子としては微粒子であることが、繊維としては微細繊維であることがそれぞれ好ましい。
【0025】
また、担持材の担持量、リチウムイオン電池の薄型化、及び電解質層30のクラック防止等の観点から、第一の担持材の平均粒子径又は平均線幅は、0.1〜10μmであることが好ましく、0.1〜8μmであることがより好ましく、0.1〜6μmであることが更に好ましい。電解質層30のクラックを防止することで、正極10と負極20の接触による短絡を防止することができる。
【0026】
二次電池A1は、正極層10と電解質層30と負極層20とのそれぞれを単層で積層しものであるが、本実施形態はこのような単層構造に限定されない。例えば、二層以上の多層構造であってもよいし、その他種々の形状であってもよい。
【0027】
正極層10、電解質層30、及び負極層20を構成する各種材料については、特に限定されず、後述するものを適宜選択して使用することができる。
【0028】
(第二の態様)
図2は、第二の実施態様に係る二次電池の断面模式図である。二次電池1Bは、多層構造のリチウムイオン電池である。正極集電箔11の両面に正極合剤層12が形成され、正極層10が形成されている。そして、負極集電箔21の両面に負極合剤層22が形成され、負極層20が形成されている。正極層10と負極層20の間に、電解質層30が形成されている。これらの積層体を外装体4で囲んでいる。外装体4からは、正極端子5と負極端子6が取り出される。
【0029】
(各部材)
本実施形態に係る二次電池1A(図1参照)及び1B(図2参照)の各部材について説明する。上述した二次電池1A及び1Bにおいて共通する材料については、特に断りがない限り、以下においてまとめて説明する。
【0030】
(正極層)
正極層10としては、正極集電箔11の表面上に正極合剤層12が塗布形成されたものを使用できる。正極集電箔11としては、例えば、ステンレス鋼やアルミ等の導電性金属からなる金属箔や網状金属等が使用できる。正極合剤層12としては、例えば、正極活物質、結着剤、導電助剤、及び半固体電解質を含有するものが挙げられる。
【0031】
正極活物質としては、特に限定されず、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等が使用できる。正極活物質としては、リチウムを挿入・脱離可能な材料であり、予め充分な量のリチウムを挿入したリチウム含有遷移金属酸化物等が使用できる。遷移金属としては、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄等の単体や、2種類以上の遷移金属を主成分とする材料等が使用できる。
【0032】
正極活物質の結晶構造については、特に限定されず、例えば、スピネル結晶構造や層状結晶構造等を採用することができる。これらの中でも、リチウムイオンを挿入・脱離可能な構造であることが好ましい。さらに、結晶中の遷移金属やリチウムの一部をFe、Co、Ni、Cr、Al、Mg等の元素で置換した材料や、結晶中にFe、Co、Ni、Cr、Al、Mg等の元素をドープしたものであってもよい。
【0033】
結着剤としては、特に限定されず、例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(P(VDF−HFP))や、これらの混合物等が使用できる。
【0034】
導電助剤としては、特に限定されず、例えば、カーボンブラック等の黒鉛粉末を使用することもできる。
【0035】
半固体電解質としては、例えば、電解質と担持材を含むものを使用できる。
【0036】
電解質は、非水電解液であれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。電解質は、電解質塩と溶媒を含有するものを使用できる。電解質塩の具体例としては、例えば、(CFSONLi、(SOF)NLi、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiB(C、CHSOLi、CFSOLi等のLi塩や、これらの混合物等が挙げられる。
【0037】
電解質の溶媒としては、特に限定されず、例えば、有機溶媒、イオン性液体、電解質塩の共存下においてイオン性液体に類似の性質を示す物質(本明細書中、電解質塩の共存下においてイオン性液体に類似の性質を示す物質も、イオン性液体と総称することがある。)等が挙げられる。溶媒の具体例としては、例えば、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等や、これらの混合液等が挙げられる。これらの中でも、安全性の観点から、有機溶媒よりも難燃性であるイオン性液体が好ましい。
【0038】
担持材としては、特に限定されず、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース、ポリマー、コポリマーやこれらの混合物等が使用できる。担持材として、正極活物質や導電助剤等を用いることもできる。
【0039】
(負極層)
負極層20としては、負極集電箔21の表面上に負極合剤層22が塗布形成されたものを使用できる。負極集電箔21としては、例えば、ステンレス鋼や銅等の導電性金属からなる金属箔や網状金属等が使用される。負極合剤層22としては、例えば、負極活物質、結着剤、導電助剤、半固体電解質等を含有するものが使用できる。
【0040】
負極活物質としては、特に限定されず、例えば、結晶質の炭素材料や非晶質の炭素材料等が使用できる。負極活物質としては、リチウムイオンを挿入・脱離可能な材料であることが好ましく、天然黒鉛や、人造の各種黒鉛剤、コークス等の炭素材料や、二酸化ケイ素、酸化ニオブ、酸化チタン等の酸化物、シリコン、スズ、ゲルマニウム、鉛、アルミニウム等に代表されるリチウムと合金を形成する材料やこれらの混合物等が使用できる。
【0041】
負極活物質の粒子形状については、特に限定されず、例えば、鱗片状、球状、繊維状、塊状等様々な粒子形状のものが使用できる。
【0042】
結着剤としては、特に限定されず、例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(P(VDF−HFP)、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム等や、これらの混合物等が使用できる。
【0043】
負極層に使用される半固体電解質は、上述した半固体電解質の材料と同様のものを使用できるが、担持材として、負極活物質や導電助剤等を使用できる。
【0044】
(電解質層)
電解質層30は、正極層10と負極層20との間を絶縁し、電気的な接触を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるスペーサとしての機能を有している。そして、電解質層30は、第一の電解質部31(第一の領域に対応)と第二の電解質部32(第二の領域に対応)を有するが、必要に応じて3つ以上の電解質部を有する構成としてもよい。
【0045】
第一の電解質部31は、第一の電解質として半固体電解質の材料と、第一の担持材とを含有し、必要に応じて結着剤を更に含有してもよい。半固体電解質、担持材、及び結着剤については、それぞれ上述したものを使用することができる。
【0046】
第一の電解質は、非水電解質であれば特に限定されず、公知のものを使用することができ、例えば、電解質塩と溶媒を含有するものを使用できる。電解質塩の具体例としては、例えば、(CFSONLi、(SOF)NLi、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiB(C、CHSOLi、CFSOLi等のLi塩や、これらの混合物等が挙げられる。
【0047】
第一の電解質の溶媒としては、特に限定されず、例えば、有機溶媒、イオン性液体、電解質塩の共存下においてイオン性液体に類似の性質を示す物質(本明細書中、電解質塩の共存下においてイオン性液体に類似の性質を示す物質も、イオン性液体と総称することがある。)等が使用できる。溶媒の具体例としては、例えば、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル等や、これらの混合液等が挙げられる。これらの中でも、安全性の観点から、有機溶媒よりも難燃性であるイオン性液体が好ましい。
【0048】
第一の担持材としては、特に限定されず、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース、ポリマー、コポリマーやこれらの混合物等が使用できる。
【0049】
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(P(VDF−HFP)、ポリイミド、スチレンブタジエンゴムやこれらの混合物等を使用することができる。
【0050】
第二の電解質部32は、第二の電解質として半固体電解質の材料と、第二の担持材とを含む。半固体電解質、及び担持材については、それぞれ上述したものを使用することができる。ただし、第二の電解質部32は第一の電解質部31の空隙部分を埋める役割を有するため、第二の電解質部32の担持材は第一の電解質部31の担持材より微細なものが好ましい。なお、同一体積であれば、粒子の表面積よりも繊維の表面積が大きく、電解質の担持量を増大できるため、第二の電解質の担持材は繊維であることが好ましく、微細繊維であることがより好ましい。
【0051】
第二の電解質部32は、第二の電解質として半固体電解質の材料と、第二の担持材とを含有し、必要に応じて結着剤等を更に含有してもよい。半固体電解質は、第一の電解質において説明したものを使用できる。第二の担持材は、第一の担持材において説明したものを使用できるが、第一の担持材の平均粒子径又は平均線幅と、第二の担持材の平均粒子径又は平均線幅と異なるものである。
【0052】
第二の電解質として、Li塩を含有するイオン性液体を含むことが好ましい。
【0053】
第二の電解質は、溶媒として、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホナート、及び1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドからなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0054】
第二の担持材は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース、ポリマー、及びコポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
【0055】
第二の電解質部は、セルロース繊維と、(CFSONLiと、テトラエチレングリコールジメチルエーテルとを含むことが好ましい。
【0056】
以上、積層型の二次電池を例に説明したが、本実施形態に係る二次電池は、捲回型の二次電池であってもよいし、同一集電箔の一方の片面に正極合剤層が形成され、他方の片面に負極合剤層が形成されたバイポーラ構造を持つ二次電池であってもよい。
【0057】
<製造方法>
【0058】
本実施形態に係る二次電池の製造方法としては、(1)正極層の表面上に、第一の電解質を含むスラリーを塗布して積層体を準備する工程と;(2)負極層の表面上に、第一の電解質を含むスラリーを塗布して積層体を準備する工程と;(3)(1)工程により得られた積層体と、(2)工程により得られた積層体と、を、第二の電解質を挟んで、重ね合わせることにより、正極層と負極層との間に配置された電解質層を形成させる工程と;を含む方法が好ましい。このような製造方法を採用することで、第一の電解質部の内部の空隙を、第一の電解質部の担持材とは異なる担持材を有する第二の電解質で充填する構造を実現することができる。
【0059】
(1)工程では、正極層の表面上に、第一の電解質を含むスラリー(第一のスラリー)を塗布し、積層体とする(図1の破線Lの上方側参照)。第一のスラリーは、第一の電解質の成分を含有するものであればよく、スラリーの粘度や分散状態を適宜調整するためにバインダー等の成分を更に含有してもよい。また、塗布形成の手法は、特に限定されず、公知の手法を用いることができる。ここで得られる積層体では、正極層の上に第一の電解質部が形成されており、かつ、電解質層の表面には多くの空隙が存在している状態である。
【0060】
(2)工程では、負極層の表面上に、第一の電解質を含むスラリー(第一のスラリー)を塗布し、積層体とする(図1の破線Lの下方側参照)。第一のスラリーは、(1)工程で用いた第一のスラリーと同様のものを使用できる。また、塗布形成の手法は、特に限定されず、公知の手法を用いることができる。ここで得られる積層体では、負極層の上に第一の電解質部が形成されており、かつ、電解質層の表面には多くの空隙が存在している状態である。
【0061】
(3)工程では、(1)工程の積層体と、(2)工程の積層体とを、第二の電解質で挟み、重ね合わせることで、二次電池を得る。(1)工程の積層体の第一の電解質部や、(2)工程の積層体の第一の電解質部は、それぞれの表面上に多くの空隙が存在しているが、それらに第二の電解質を加えることで、各空隙を第二の電解質によって充填する状態とする。その上で両積層体を重ね合わせることで、正極層/電解質層/負極層の構成を有する二次電池1A(図1参照)を得ることができる。
【0062】
本実施形態に係る製造方法は、各層を単純に積層させるものではなく、電解質層30を破線L(図1参照)にて分割した構造の積層体を重ね合わせるものであり、重ね合わせる際に第一の電解質部31の空隙を第二の電解質で充填する。これにより、第一の電解質部31の界面等に存在する空隙を充填することができる。
【0063】
積層体上の空隙を充填するために第二の電解質を加える手法は、特に限定されない。例えば、(1)工程の積層体に第二の電解質を加え、かつ、(2)工程の積層体に第二の電解質を加えた後に;両積層体を重ね合わせる手法が挙げられる。あるいは、(1)工程の積層体又は(2)工程の積層体の一方に、第二の電解質を加えた後に、両積層体を重ね合わせる手法が挙げられる。
【0064】
さらに、必要に応じて、重ね合わせる際に両積層体をプレスすることで、第二の電解質を空隙に確実に充填することができる。
【0065】
本実施形態に係る二次電池は、リチウムイオン電池をはじめとする種々の電池に応用することができる。例えば、正極、負極、及び、正極と負極とを電気的に分離するセパレータとを備える蓄電デバイス(例えば、電池やキャパシタ等)に幅広く適用することができる。
【実施例】
【0066】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0067】
<実施例1>
(二次電池の作製)
以下の要領にて、図1に示す二次電池1Aを作製した。
【0068】
(1)まず、正極層10として、正極集電箔11の表面上に正極合剤層12が塗布形成されたものを以下の方法により準備した。
【0069】
正極合剤層12について、正極活物質としてリチウムマンガンコバルトニッケル複合酸化物、導電助剤として黒鉛粉末、結着剤としてフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体(P(VDF−HFP))を用いた。そして、正極合剤層12の半固体電解質材料((CFSONLiを含んだテトラエチレングリコールジメチルエーテルと、黒鉛粉末を含有。)、結着剤、及び電解質を混合し、さらにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に分散させることで、正極合剤層12のスラリーを得た。
【0070】
得られた正極合剤層12のスラリーを、正極集電箔11(ステンレス箔)上に塗工し、100℃の熱風乾燥炉で乾燥させ、乾燥した膜をプレス圧縮し、正極層10を得た。
【0071】
(2)次に、第一の電解質部31のスラリー(第一のスラリー)を以下の方法により準備した。半固体電解質材料として、電解質として(CFSONLiを含んだテトラエチレングリコールジメチルエーテル、担持材として二酸化ケイ素粉末(平均粒子径1.2μm)を用いた。結着剤としてフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(P(VDF−HFP))を用いた。そして、電解質、担持材、及び結着剤を混合し、さらにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に分散させることで、半固体電解質スラリー(第一のスラリー)を作製した。なお、平均粒子径は、日機装株式会社製、レーザー回折式粒度分布測定装置「Microtrac MT3000II」を用いて測定し、算出されたD50を用いた。
【0072】
得られた第一のスラリーを正極層10の表面上に塗布し、100℃の熱風乾燥炉で乾燥させることで、正極層10の表面上に第一の電解質部31を形成させた。この様に正極層10の表面上に第一の電解質部31を塗布して形成したため、正極層10と第一の電解質部31との界面については、空隙の存在は確認されなかった。
【0073】
(3)続いて、負極層20として、負極集電箔21の表面上に負極合剤層22が塗布形成されたものを以下の方法により準備した。
【0074】
負極合剤層22について、負極活物質として黒鉛粒子、導電助剤として黒鉛粉末、結着剤としてフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(P(VDF−HFP))を用いた。そして、負極合剤層22の半固体電解質材料((CFSONLiを含んだテトラエチレングリコールジメチルエーテル、黒鉛粉末を含有。)、活物質、導電助剤、結着剤、及び電解質を混合し、さらにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に分散させることで、負極合剤層22のスラリーを得た。
【0075】
得られた負極合剤層22のスラリーを、負極集電箔21(ステンレス箔)上に塗工し、100℃の熱風乾燥炉で乾燥させ、乾燥した膜をプレス圧縮し、負極層20を得た。
【0076】
(4)そして、正極層10上に第一の電解質部31を形成した手法と同様の方法(上記「2.」参照)によって、負極層20の表面上に第一の電解質部31を形成した。この様に負極層20の表面上に第一の電解質部31を塗布して形成したため、負極層20と第一の電解質部31との界面については、空隙の存在は確認されなかった。
【0077】
(5)続いて、第二の電解質部32のスラリー(第二のスラリー)を以下の方法により準備した。電解質として(CFSONLiを含んだテトラエチレングリコールジメチルエーテル)、担持材としてセルロース繊維を用いた。担持材として用いたセルロース繊維には、第一の電解質部31の担持材として用いた二酸化ケイ素粉末よりも、単位体積あたりの表面積が大きいものを用いた。電解質と担持材を混合することで、流動性は低いが変形性を有するゲル状の第二のスラリーを得た。
【0078】
(6)上述した「1.」〜「5.」において準備した各部材等を用いて、以下の方法によって二次電池を得た。第一の電解質部31が形成された正極層10の積層体と、第一の電解質部31が形成された負極層20の積層体を、それぞれ所定のサイズに加工した。そして、これらを積層する際に、第二のスラリーを層間に挟みこんだ。続いて、両積層体を約0.2〜0.6MPaの圧力でプレスした。これによって、余分な第二のスラリーを積層体外へ排出するとともに、正極層10側に形成された第一の電解質部31(図1の破線Lの上方側を参照)と、負極層20側に形成した第一の電解質部31(図1の破線Lの下方側を参照)とを積層した際に生じる界面部分の空隙を、第二の電解質部32で充填させた。これによって、図1に示す二次電池1Aを得た。そして、これをサンプルとして評価した。
【0079】
<比較例1>
(二次電池の作製)
第一の電解質部が形成された正極層と、第一の電解質部が形成された負極層を積層する際に、第二の電解質を挟まなかった点以外は、実施例1と同様の方法で二次電池を作製した。そして、これをサンプルとして評価した。
【0080】
<評価>
1.SEM観察、EDX分析
各実施例及び比較例で得られたサンプルを、クロスセクションポリッシャー(JEOL製、「SM−09010」)によって断面加工した。そして、電解質層部分の断面について、電界放出型電子顕微鏡(JEOL製、「JSM−7000F」)を用いて、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)観察とエネルギー分散型X線分析(EDX:Energy Dispersive X−ray spectrometry)を実施した。なお、加速電圧は5kVとした。
【0081】
図3は、実施例1及び比較例1における電解質層の観察箇所を示す断面模式図である。図3に示すように、左側を正極層、右側を負極層とした状態において、電解質層断面のAの領域をSEM観察した。
【0082】
図4は、実施例1及び比較例1のサンプルの断面を撮像したSEM像である。比較例1の断面SEM像では、図中の破線枠で示した部分に、空隙が確認できた。これは、正極層側に形成した第一の電解質部と負極側に形成した第一の電解質部を積層した際に、表面凹凸等に起因して形成された空隙である。実施例1の断面SEM像では、空隙が観察されなかった。その代わりに、破線枠で示した部分のように、第一の電解質部を積層した際に形成された空隙部分が、第二の電解質で占有された状態が観察された。このような状態であることは、すなわち、第二の領域の長径が、第一の領域に存在する担持材の平均粒子径よりも大きいことを意味する。
【0083】
次に、実施例1及び比較例1におけるサンプルの断面をEDX分析した結果について説明する。図5は、実施例1及び比較例1のサンプルの断面のEDX分析箇所を示す図である。実施例1では、断面SEM像において第二の電解質が占有する箇所を含めて元素分析を行った。比較例1では、断面SEM像において空隙が観察された箇所を含めて元素分析を行った。
【0084】
表1は、実施例1及び比較例1において電解質層の断面をEDXにより分析した元素組成であり、小数第一位にて四捨五入した百分率(%)で示している。実施例1の項番a、b、c、d、及び、比較例1の項番a’、b’、c’、d’、は、図5に示した分析箇所と対応している。まず、実施例1の項番a、c、dからは、第一の電解質部の担持材である二酸化ケイ素粒子由来のSi元素が検出された。項番bでは、Si元素は検出されなかった。このことから、項番bは第二の電解質で占有された箇所であることが分かる。なお、比較例1では、いずれの場所からもSi元素が検出され、第二の電解質を用いない場合には図5の実施例1の破線枠で示したような箇所は形成されないことが、少なくとも確認された。
【0085】
【表1】
【0086】
2.電気特性評価
各実施例及び比較例で得られたサンプルについて、電気化学測定装置(ソーラトロン社製、「SI1260」)を用いて、交流インピーダンス法により内部抵抗を測定し、電気特性を評価した。評価条件は、バイアス電圧0V、振幅電圧10mVとした。
【0087】
交流インピーダンス測定では、周波数を掃引して交流電圧を印加し、周波数に応じた抵抗と位相が得られ、この測定結果は、横軸を実数と縦軸を虚数としてナイキストプロットをとると円弧成分が得られる。本評価では、円弧の実部抵抗を用い、各実施例と比較例の結果を比較した。図6は、実施例1及び比較例1の内部抵抗を評価した結果を示すグラフである。図6から、比較例1(図6の「2」)に比して、実施例1(図7の「1」)は内部抵抗が小さいことが少なくとも確認された。
【0088】
以上より、本実施例によれば図1に示す構造を有する二次電池が作製でき、かかる二次電池は内部抵抗が低く、優れた電気特性を有することが少なくとも確認された。
【符号の説明】
【0089】
1A、1B…二次電池、10…正極層、11…正極集電箔、12…正極合剤層、20…負極層、21…負極集電箔、22…負極合剤層、30…電解質層、31…第一の領域(第一の電解質部)、32…第二の領域(第二の電解質部)、4…外装体、5…正極端子、6…負極端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6