【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る支持具は、
建築物の区画体に形成された貫通孔に配置される支持対象物を支持する支持具であって、
前記貫通孔の形状に沿う筒状本体部と、当該筒状本体部の一端から内側に向かって突出する支持片部と、を有する樹脂製のスリーブ部材と、
クランク状に形成され、前記貫通孔の内部で前記筒状本体部及び前記支持片部に沿って延びつつ前記貫通孔の外部で前記区画体の表面に沿って延びる状態で前記スリーブ部材に取り付けられる金属製の補助支持部材と、を備える。
【0008】
この構成によれば、スリーブ部材が貫通孔の形状に沿う筒状本体部の一端から内側(径方向内側)に向かって突出する支持片部を有するので、貫通孔の内部で、広い径方向領域で支持対象物を支えることができる。よって、貫通孔の内部で支持対象物を十分に支えることができる。スリーブ部材は成形性に優れる樹脂で構成されるので、所望形状のスリーブ部材を容易に得ることができる。支持具にて支持対象物を支持するにあたっては、筒状本体部と支持片部とを有する支持具を貫通孔の内部に挿入するだけで良いので、施工時の手間が少なく施工性に優れる。
【0009】
一方で、スリーブ部材を樹脂製とすると、例えば火災等の熱によって溶融し、その溶融したスリーブ部材自体が区画体(貫通孔)から脱落してしまう可能性がある。その結果、支持対象物も区画体(貫通孔)から脱落してしまう可能性がある。
この点、本構成によれば金属製の補助支持部材がスリーブ部材に取り付けられているので、仮にスリーブ部材が溶融したとしても、補助支持部材は溶融することなくそのまま残る。この補助支持部材は、スリーブ部材を構成する筒状本体部及び支持片部に沿って延びつつ区画体の表面に沿って延びるようにクランク状に形成されるので、区画体の表面に係止されつつ、非常時には貫通孔の内部でスリーブ部材の機能を部分的に代替する。従って、本構成によれば、上述したように施工性を向上させつつ、通常時だけでなく例えば火災発生時等にも、貫通孔の内部で支持対象物を十分に支えることができる。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。但し、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0011】
一態様として、
前記補助支持部材における前記筒状本体部に沿う第一延在部が、前記筒状本体部の外面に沿って配置されていることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、貫通孔の内部に支持具を挿入する際に、支持具は、補助支持部材の第一延在部が貫通孔の内面に摺接しながら挿入されることになる。一般に金属材は樹脂材に比べて摺動抵抗が小さいため、挿入時の抵抗を小さく抑えることができ、この点からも施工性を向上させることができる。
【0013】
一態様として、
前記スリーブ部材は、前記筒状本体部における前記支持片部とは反対側の端部から外側に向かって突出して前記区画体に取り付けられる鍔部をさらに有し、
前記補助支持部材における前記区画体の表面に沿う第二延在部が、前記鍔部における前記区画体に対する対向面に沿って配置されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、スリーブ部材が、鍔部にて補助支持部材の第二延在部を介して区画体の表面に支持されるので、例えば水平方向に延在する区画体に形成され上下方向の貫通孔に設置する場合であっても、スリーブ部材を区画体に安定的に支持することができる。また、補助支持部材は第二延在部にて直接的に区画体の表面に支持されるので、当該補助支持部材を区画体に安定的に係止することができる。
【0015】
一態様として、
前記補助支持部材における前記支持片部に沿う第三延在部が前記筒状本体部と前記支持片部との境界部に形成された挿通孔に挿通された状態で、前記第三延在部が前記支持片部の内面に沿って配置されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、補助支持部材の第二延在部を鍔部の区画体対向面に沿って配置するとともに第三延在部を支持片部の内面に沿って配置することで、スリーブ部材の鍔部と支持片部との間に補助支持部材を安定的に取り付けることができる。このとき、筒状本体部と支持片部との境界部に形成された挿通孔に第三延在部を挿通させながら、補助支持部材を径方向外側からワンタッチでスリーブ部材に取り付けることができる。
【0017】
一態様として、
前記スリーブ部材と前記補助支持部材との間に、前記スリーブ部材に対する前記補助支持部材の取付状態を維持させるための抜け止め機構が設けられていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、施工時にスリーブ部材と補助支持部材とを一体的に扱うことができる。よって、この点からも貫通孔の内部に支持対象物を配置する際の施工性を向上させることができる。
【0019】
一態様として、
前記抜け止め機構が、少なくとも前記第二延在部と前記鍔部との間に設けられ、
前記第二延在部と前記鍔部との間の前記抜け止め機構は、前記第二延在部及び前記鍔部の一方に設けられた突起部と、前記第二延在部及び前記鍔部の他方に設けられて前記突起部が収納される収納凹部と、を含むことが好ましい。
【0020】
この構成によれば、スリーブ部材の鍔部と補助支持部材の第二延在部とに振り分けて突起部と収納凹部とを設けるだけで、簡単に、スリーブ部材に対する補助支持部材の取付状態を維持させることができる。
【0021】
一態様として、
前記抜け止め機構が、少なくとも前記第三延在部と前記筒状本体部との間に設けられ、
前記第三延在部と前記筒状本体部との間の前記抜け止め機構は、前記第三延在部に設けられて前記筒状本体部の内面に係止される突起部を含むことが好ましい。
【0022】
この構成によれば、補助支持部材の第三延在部が筒状本体部に形成された挿通孔に挿通される構造を利用して、補助支持部材の第三延在部に突起部を設けるだけで、簡単に、スリーブ部材に対する補助支持部材の取付状態を維持させることができる。
【0023】
一態様として、
前記補助支持部材における前記筒状本体部に沿う第一延在部が、前記筒状本体部の内面に沿って配置されていることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、スリーブ部材の筒状本体部の内側で補助支持部材と支持対象物とが直接接するので、例えば火災発生時等にスリーブ部材が溶融したとしても、支持対象物を安定的に支えることができる。
【0025】
一態様として、
前記スリーブ部材は、前記筒状本体部における前記支持片部とは反対側の端部から外側に向かって突出して前記区画体に取り付けられる鍔部をさらに有し、
前記補助支持部材における前記区画体の表面に沿う第二延在部が、前記鍔部における前記区画体に対する対向面とは反対側の面に沿って配置されているとともに、前記補助支持部材における前記支持片部に沿う第三延在部が、前記支持片部の内面に沿って配置されていることが好ましい。
【0026】
この構成によれば、補助支持部材を、スリーブ部材に挿通させることなくスライド移動させるだけで簡単に、スリーブ部材に取り付けることができる。
【0027】
一態様として、
前記スリーブ部材と前記補助支持部材との間に、前記スリーブ部材に対する前記補助支持部材の取付状態を維持させるための抜け止め機構が設けられていることが好ましい。
【0028】
この構成によれば、施工時にスリーブ部材と補助支持部材とを一体的に扱うことができる。よって、この点からも貫通孔の内部に支持対象物を配置する際の施工性を向上させることができる。
【0029】
一態様として、
前記抜け止め機構が、少なくとも前記第二延在部と前記鍔部との間に設けられ、
前記第二延在部と前記鍔部との間の前記抜け止め機構は、前記第二延在部及び前記鍔部の一方に設けられた突起部と、前記第二延在部及び前記鍔部の他方に設けられて前記突起部が収納される収納凹部と、を含むことが好ましい。
【0030】
この構成によれば、スリーブ部材の鍔部と補助支持部材の第二延在部とに振り分けて突起部と収納凹部とを設けるだけで、簡単に、スリーブ部材に対する補助支持部材の取付状態を維持させることができる。
【0031】
一態様として、
前記抜け止め機構が、少なくとも前記第三延在部と前記支持片部との間に設けられ、
前記第三延在部と前記支持片部との間の前記抜け止め機構は、前記第三延在部及び前記支持片部の一方に設けられた突起部と、前記第三延在部及び前記支持片部の他方に設けられて前記突起部が収納される収納凹部と、を含むことが好ましい。
【0032】
この構成によれば、スリーブ部材の支持片部と補助支持部材の第三延在部とに振り分けて突起部と収納凹部とを設けるだけで、簡単に、スリーブ部材に対する補助支持部材の取付状態を維持させることができる。
【0033】
一態様として、
前記第三延在部と前記支持片部との間の前記抜け止め機構は、前記第三延在部に設けられた第一突起部と、前記支持片部に設けられて前記第一突起部が収納される第一収納凹部と、を含む第1の組と、前記支持片部に設けられて前記第一突起部とは反対向きに突出する第二突起部と、前記第三延在部に設けられて前記第二突起部が収納される第二収納凹部と、を含む第2の組と、を含むことが好ましい。
【0034】
この構成によれば、互いに反対方向を向く2つの突起部(第一突起部、第二突起部)と、それらが収納される2つの収納凹部(第一収納凹部、第二収納凹部)とにより、効果的に抜け止めを図ることができる。よって、スリーブ部材に対する補助支持部材の取付状態を良好に維持させることができる。
【0035】
一態様として、
前記スリーブ部材は、前記筒状本体部における前記支持片部とは反対側の端部から外側に向かって突出して前記区画体に取り付けられる鍔部をさらに有し、
前記補助支持部材における前記区画体の表面に沿う第二延在部が、前記筒状本体部と前記鍔部との境界部に形成された挿通孔に挿通された状態で、前記鍔部における前記区画体に対する対向面に沿って配置されていることが好ましい。
【0036】
この構成によれば、スリーブ部材が、鍔部にて補助支持部材の第二延在部を介して区画体の表面に支持されるので、例えば水平方向に延在する区画体に形成され上下方向の貫通孔に設置する場合であっても、スリーブ部材を区画体に安定的に支持することができる。また、補助支持部材は第二延在部にて直接的に区画体の表面に支持されるので、当該補助支持部材を区画体に安定的に係止することができる。この場合において、筒状本体部と鍔部との境界部に形成された挿通孔に第二延在部を挿通させながら、補助支持部材を径方向内側からワンタッチでスリーブ部材に取り付けることができる。
【0037】
一態様として、
前記補助支持部材における前記支持片部に沿う第三延在部が前記支持片部の内面に沿って配置されていることが好ましい。
【0038】
この構成によれば、補助支持部材の第二延在部を鍔部の区画体対向面に沿って配置するとともに第三延在部を支持片部の内面に沿って配置することで、スリーブ部材の鍔部と支持片部との間に補助支持部材を安定的に取り付けることができる。
【0039】
一態様として、
前記スリーブ部材と前記補助支持部材との間に、前記スリーブ部材に対する前記補助支持部材の取付状態を維持させるための抜け止め機構が設けられていることが好ましい。
【0040】
この構成によれば、施工時にスリーブ部材と補助支持部材とを一体的に扱うことができる。よって、この点からも貫通孔の内部に支持対象物を配置する際の施工性を向上させることができる。
【0041】
一態様として、
前記抜け止め機構が、少なくとも前記第二延在部と前記筒状本体部との間に設けられ、
前記第二延在部と前記筒状本体部との間の前記抜け止め機構は、前記第二延在部に設けられて前記筒状本体部の外面に係止される突起部を含むことが好ましい。
【0042】
この構成によれば、補助支持部材の第二延在部が筒状本体部に形成された挿通孔に挿通される構造を利用して、補助支持部材の第二延在部に突起部を設けるだけで、簡単に、スリーブ部材に対する補助支持部材の取付状態を維持させることができる。
【0043】
一態様として、
前記抜け止め機構が、少なくとも前記第三延在部と前記支持片部との間に設けられ、
前記第三延在部と前記支持片部との間の前記抜け止め機構は、前記第三延在部及び前記支持片部の一方に設けられた突起部と、前記第三延在部及び前記支持片部の他方に設けられて前記突起部が収納される収納凹部と、を含むことが好ましい。
【0044】
この構成によれば、スリーブ部材の支持片部と補助支持部材の第三延在部とに振り分けて突起部と収納凹部とを設けるだけで、簡単に、スリーブ部材に対する補助支持部材の取付状態を維持させることができる。
【0045】
一態様として、
前記筒状本体部の一端であって前記支持片部よりも中央側の部位において、前記筒状本体部と前記支持対象物とが一体化されていることが好ましい。
【0046】
この構成によれば、支持対象物を筒状本体部と共に貫通孔に挿入することができる。スリーブ部材と支持対象物とを一体的に扱うことができるので、この点からも貫通孔の内部に支持対象物を配置する際の施工性を向上させることができる。
【0047】
一態様として、
前記スリーブ部材から少なくとも径方向に延出する板状体で構成され、前記支持対象物を前記支持片部とは反対側から当該支持対象物に対して交差姿勢で押さえる板状押さえ部をさらに備えることが好ましい。
【0048】
この構成によれば、径方向に延出する板状押さえ部にて、支持片部との協働により、相対的に広い径方向領域で支持対象物を確実に押さえることができる。このとき、板状押さえ部は支持対象物を当該支持対象物に対して交差姿勢で押さえるので、貫通孔の内部で支持対象物を軸方向に強固に押さえることができる。
【0049】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。