特許第6940448号(P6940448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6940448濁質分離装置、濁質分離方法、及び濁質分離システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6940448
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】濁質分離装置、濁質分離方法、及び濁質分離システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/02 20060101AFI20210916BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20210916BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20210916BHJP
   B01D 21/28 20060101ALI20210916BHJP
   B01D 21/30 20060101ALI20210916BHJP
   B01D 21/32 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   B01D21/02 R
   B01D21/01 B
   B01D21/24 H
   B01D21/24 T
   B01D21/28 A
   B01D21/30 H
   B01D21/32
【請求項の数】17
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-63693(P2018-63693)
(22)【出願日】2018年3月29日
(65)【公開番号】特開2019-171308(P2019-171308A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 利光
(72)【発明者】
【氏名】神林 琢也
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−186397(JP,A)
【文献】 特開2015−100719(JP,A)
【文献】 実開昭51−071665(JP,U)
【文献】 特開昭55−149610(JP,A)
【文献】 特開2001−334107(JP,A)
【文献】 特開昭62−289289(JP,A)
【文献】 特開平08−126803(JP,A)
【文献】 特開2006−198530(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1024437(KR,B1)
【文献】 特開平09−136090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00−21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿物排出口及び上澄み液排出口を有し、濁質を含む懸濁液が充填される液体容器と、
前記沈殿物排出口に設けられた沈殿物バルブと、
前記上澄み液排出口に設けられた上澄み液バルブと、
前記液体容器に充填された前記懸濁液に対して超音波を照射することにより前記懸濁液に含まれる前記濁質を凝集させる超音波照射部と、
前記沈殿物バルブ、前記上澄み液バルブ、及び前記超音波照射部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記超音波照射部による前記超音波の照射を停止させてから所定の時間が経過した後、前記沈殿物バルブを制御して前記濁質が凝集して成る沈殿物を排出させ、前記上澄み液バルブを制御して上澄み液を排出させる
ことを特徴とする濁質分離装置。
【請求項2】
沈殿物排出口及び上澄み液排出口を有し、濁質を含む懸濁液が充填される液体容器と、
前記沈殿物排出口に設けられた沈殿物バルブと、
前記上澄み液排出口に設けられた上澄み液バルブと、
前記液体容器に充填された前記懸濁液に対して超音波を照射することにより前記懸濁液に含まれる前記濁質を凝集させる超音波照射部と、
を備える濁質分離装置の濁質分離方法であって、
前記液体容器に前記懸濁液を充填させる充填ステップと、
前記超音波照射部に前記超音波を所定の時間照射させる照射ステップと、
前記超音波照射部に前記超音波の照射を停止させてから所定の時間が経過した後、前記沈殿物バルブを制御して前記濁質が凝集して成る沈殿物を排出させ、前記上澄み液バルブを制御して上澄み液を排出させる排出ステップと、
含むことを特徴とする濁質分離方法。
【請求項3】
濁質分離装置と搬送装置とから成る濁質分離システムにおいて、
前記濁質分離装置は、
沈殿物排出口及び上澄み液排出口を有し、濁質を含む懸濁液が充填される液体容器と、
前記沈殿物排出口に設けられた沈殿物バルブと、
前記上澄み液排出口に設けられた上澄み液バルブと、
前記液体容器に充填された前記懸濁液に対して超音波を照射することにより前記懸濁液に含まれる前記濁質を凝集させる超音波照射部と、
前記沈殿物バルブ、前記上澄み液バルブ、及び前記超音波照射部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記超音波照射部による前記超音波の照射を停止させてから所定の時間が経過した後、前記沈殿物バルブを制御して前記濁質が凝集して成る沈殿物を排出させ、前記上澄み液バルブを制御して上澄み液を排出させ、
前記搬送装置は、
前記沈殿物排出口から排出された前記沈殿物を沈殿物容器に収容し、1以上の前記沈殿物容器を順次搬送する
ことを特徴とする濁質分離システム。
【請求項4】
沈殿物排出口を有し、濁質を含む懸濁液が充填される液体容器と、
前記沈殿物排出口に設けられた沈殿物バルブと、
前記液体容器に充填された前記懸濁液に対して超音波を照射することにより前記懸濁液に含まれる前記濁質を凝集させる超音波照射部と、
前記沈殿物バルブ、及び前記超音波照射部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記超音波照射部による前記超音波の照射を停止させてから所定の時間が経過した後、前記沈殿物バルブを制御して前記濁質が凝集して成る沈殿物を排出させる
ことを特徴とする濁質分離装置。
【請求項5】
請求項に記載の濁質分離装置であって、
前記液体容器は上澄み液排出口を有し、
前記上澄み液排出口に備えられた上澄み液バルブを、備え、
前記制御部は、前記超音波照射部による前記超音波の照射を停止させてから所定の時間が経過した後、前記上澄み液バルブを制御して上澄み液を排出させる
ことを特徴とする濁質分離装置。
【請求項6】
沈殿物排出口を有し、濁質を含む懸濁液が充填される液体容器と、
前記沈殿物排出口に設けられた沈殿物バルブと、
前記液体容器に充填された前記懸濁液に対して超音波を照射することにより前記懸濁液に含まれる前記濁質を凝集させる超音波照射部と、
を備える濁質分離装置の濁質分離方法であって、
前記液体容器に前記懸濁液を充填させる充填ステップと、
前記超音波照射部に前記超音波を所定の時間照射させる照射ステップと、
前記超音波照射部に前記超音波の照射を停止させてから所定の時間が経過した後、前記沈殿物バルブを制御して前記濁質が凝集して成る沈殿物を排出させる排出ステップと、
含むことを特徴とする濁質分離方法。
【請求項7】
濁質分離装置と搬送装置とから成る濁質分離システムにおいて、
前記濁質分離装置は、
沈殿物排出口を有し、濁質を含む懸濁液が充填される液体容器と、
前記沈殿物排出口に設けられた沈殿物バルブと、
前記液体容器に充填された前記懸濁液に対して超音波を照射することにより前記懸濁液に含まれる前記濁質を凝集させる超音波照射部と、
前記沈殿物バルブ、及び前記超音波照射部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記超音波照射部による前記超音波の照射を停止させてから所定の時間が経過した後、前記沈殿物バルブを制御して前記濁質が凝集して成る沈殿物を排出させ、
前記搬送装置は、
前記沈殿物排出口から排出された前記沈殿物を沈殿物容器に収容し、1以上の前記沈殿物容器を順次搬送する
ことを特徴とする濁質分離システム。
【請求項8】
上澄み液排出口を有し、濁質を含む懸濁液が充填される液体容器と、
前記上澄み液排出口に設けられた上澄み液バルブと、
前記液体容器に充填された前記懸濁液に対して超音波を照射することにより前記懸濁液に含まれる前記濁質を凝集させる超音波照射部と、
前記上澄み液バルブ、及び前記超音波照射部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記超音波照射部による前記超音波の照射を停止させてから所定の時間が経過した後、前記上澄み液バルブを制御して上澄み液を排出させる
ことを特徴とする濁質分離装置。
【請求項9】
請求項に記載の濁質分離装置であって、
前記液体容器は、沈殿物排出口を有し、
前記沈殿物排出口に設けられた沈殿物バルブを、備え、
前記制御部は、前記超音波照射部による前記超音波の照射を停止させてから所定の時間が経過した後、前記沈殿物バルブを制御して前記濁質が凝集して成る沈殿物を排出させる
ことを特徴とする濁質分離装置。
【請求項10】
上澄み液排出口を有し、濁質を含む懸濁液が充填される液体容器と、
前記上澄み液排出口に設けられた上澄み液バルブと、
前記液体容器に充填された前記懸濁液に対して超音波を照射することにより前記懸濁液に含まれる前記濁質を凝集させる超音波照射部と、
を備える濁質分離装置のる濁質分離方法であって、
前記液体容器に前記懸濁液を充填させる充填ステップと、
前記超音波照射部に前記超音波を所定の時間照射させる照射ステップと、
前記超音波照射部に前記超音波の照射を停止させてから所定の時間が経過した後、前記上澄み液バルブを制御して上澄み液を排出させる排出ステップと、
含むことを特徴とする濁質分離方法。
【請求項11】
濁質分離装置と搬送装置とから成る濁質分離システムにおいて、
前記濁質分離装置は、
上澄み液排出口を有し、濁質を含む懸濁液が充填される液体容器と、
前記上澄み液排出口に設けられた上澄み液バルブと、
前記液体容器に充填された前記懸濁液に対して超音波を照射することにより前記懸濁液に含まれる前記濁質を凝集させる超音波照射部と、
前記上澄み液バルブ、及び前記超音波照射部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記超音波照射部による前記超音波の照射を停止させてから所定の時間が経過した後、前記上澄み液バルブを制御して上澄み液を排出させ、
前記搬送装置は、
前記上澄み液排出口から排出された前記上澄み液を上澄み液容器に収容し、1以上の前記上澄み液容器を順次搬送する
ことを特徴とする濁質分離システム。
【請求項12】
請求項1,4,5,8または9のいずれか一項に記載の濁質分離装置であって、
前記超音波照射部は、前記液体容器の対向する側面に配置された超音波振動子と超音波反射板から成り、前記液体容器に充填された前記懸濁液に前記超音波の定常波を発生させる
ことを特徴とする濁質分離装置。
【請求項13】
請求項1,4,5,8または9のいずれか一項に記載の濁質分離装置であって、
前記制御部からの制御に従い、前記懸濁液を凝集させる凝集剤を前記液体容器に充填された前記懸濁液に添加する供給部を、
備えることを特徴とする濁質分離装置。
【請求項14】
請求項1,4,5,8または9のいずれか一項に記載の濁質分離装置であって、
前記液体容器は浮上物排出口を有し、
前記浮上物排出口に設けられた浮上物バルブを、備え、
前記制御部は、前記浮上物バルブを制御して浮上物を排出させる
ことを特徴とする濁質分離装置。
【請求項15】
請求項1,5,または9のいずれか一項に記載の濁質分離装置であって、
前記液体容器は浮上物排出口を有し、
前記浮上物排出口に設けられた浮上物バルブと、
前記液体容器に充填された前記懸濁液を透過した光の強度を測定する透過光強度測定部、備え、
前記制御部は、前記透過光強度測定部による測定結果に基づいて前記沈殿物バルブ、前記上澄み液バルブ、及び浮上物バルブのうちの少なくとも1つを制御する
ことを特徴とする濁質分離装置。
【請求項16】
請求項15に記載の濁質分離装置であって、
前記透過光強度測定部は、前記沈殿物排出口の直上、前記上澄み液排出口の直下、及びを前記浮上物排出口の直下のうちの少なくとも1箇所に設けられている
ことを特徴とする濁質分離装置。
【請求項17】
請求項1,4,5,8または9のいずれか一項に記載の濁質分離装置であって、
前記液体容器に充填された前記懸濁液を透過した光の強度を測定することによって前記懸濁液の濁度を測定する透過光強度測定部を、備え、
前記制御部は、前記懸濁液の濁度が所定の閾値以下である場合、前記超音波照射部を制御して、前記超音波の照射を停止させる
ことを特徴とする濁質分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濁質分離装置、濁質分離方法、及び濁質分離システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、濁質を含む懸濁液に凝集剤を添加し、濁質を凝集させてから自然沈降または遠心分離させることにより、濁質を分離する方法が知られている。また、超音波を用いて濁質を凝集させてから分離する方法もあり、例えば特許文献1には「乳油性成分と水性成分を含む乳濁液を分離する乳濁液分離装置であって、 乳濁液を供給される乳濁液供給部と、分離された乳濁液を排出する乳濁液排出部と、乳濁液供給部に接続された流路部を有しており、 乳濁液供給部と乳濁液排出部とは、第一と第二の配管ユニットを介して接続され、配管ユニットは、流路部を挟み対向するように配置された超音波振動素子と超音波反射部材とから構成される乳濁液分離装置」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/042832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の乳濁液分離装置装置では、乳濁液から分離された濁質(沈殿物)を排出する構成が設けられていないので、濁質と上澄み液とを分けて取り出すことが困難である。また、乳濁液の濁度を測定していないため、濁質を分離する分離処理を適切なタイミングで制御することができない。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、懸濁液から濁質と上澄み液とを分けて取り出せるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下のとおりである。上記課題を解決すべく、本発明の一態様に係る濁質分離装置は、沈殿物排出口及び上澄み液排出口を有し、濁質を含む懸濁液が充填される液体容器と、前記沈殿物排出口に設けられた沈殿物バルブと、前記上澄み液排出口に設けられた第2の制限部と、前記液体容器に充填された前記懸濁液に対して超音波を照射する超音波照射部と、前記沈殿物バルブ、前記上澄み液バルブ、及び前記超音波照射部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記超音波照射部による前記超音波の照射を停止させてから所定の時間が経過した後、前記沈殿物バルブを制御して前記沈殿物を排出させ、前記上澄み液バルブを制御して前記上澄み液を排出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、懸濁液から濁質と上澄み液とを分けて取り出すことが可能となる。
【0008】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る第1の実施の形態である濁質分離装置の構成例を示す図である。
図2】本発明に係る第1の実施の形態である濁質分離装置の濁質分離部の構成例を示す図であり、図2(A)は側面図、図2(B)は上面図である。
図3】超音波照射の効果を説明するための図である。
図4】本発明に係る第1の実施の形態である濁質分離装置による濁質分離処理の一例を説明するフローチャートである。
図5】本発明に係る第2の実施の形態である濁質分離装置の構成例を示す図である。
図6】本発明に係る第2の実施の形態である濁質分離装置の濁質分離部の構成例を示す図であり、図6(A)は側面図、図6(B)は上面図である。
図7】本発明に係る第2の実施の形態である濁質分離装置による濁質分離処理の一例を説明するフローチャートである。
図8】本発明に係る第3の実施の形態である濁質分離装置の濁質分離部の構成例を示す断面図である。
図9】本発明に係る第3の実施の形態である濁質分離装置による濁質分離処理の一例を説明するフローチャートである。
図10】本発明に係る第3の実施の形態である濁質分離装置による濁質分離処理の一例を説明するフローチャートである。
図11】本発明に係る第4の実施の形態である濁質分離システムの構成例を示す図である。
図12】本発明に係る第4の実施の形態である濁質分離システムによる沈殿物搬送処理の一例を説明するフローチャートである。
図13】コンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る複数の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の各実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0011】
また、各実施形態の構成の説明では、理解のため、X,Y,Z軸を備える直交座標系を用いる。X,Yは水平面を構成する方向とし、Zは鉛直方向とする。もちろん、各実施形態の構成は、厳密にXYZ軸に一致していなくても、実質的に同じ作用効果を達成できる範囲内の変更は許容される。
【0012】
<本発明に係る第1の実施の形態である濁質分離装置の構成例>
図1は、本発明に係る第1の実施形態である濁質分離装置の構成例を示している。
【0013】
該濁質分離装置10は、入出力部20、制御部30、及び濁質分離部40を備える。
【0014】
入出力部20は、ユーザインターフェースとして機能し、例えばユーザから入力される開始コマンド等の各種コマンドを受け付けて制御部30に出力する。制御部30は、入出力部20からの各種コマンドに応じて、濁質分離部40を制御する。具体的には、制御部30は、濁質分離部40の超音波振動子48に超音波を出力させたり、上澄み液バルブ44等のバルブを開閉させたりする。なお、入出力部20と制御部30とは、一体化してもよい。
【0015】
次に、図2は、濁質分離部40の詳細な構成例を示しており、同図(A)はZY平面の側面図、同図(B)はXY平面の上面図を示している。
【0016】
濁質分離部40は、固体微粒子、油滴等の濁質を含む液体(以下、懸濁液と称する)が充填される液体容器41と、超音波振動子48と、超音波反射板49とを有する。超音波振動子48及び超音波反射板49(本発明の超音波照射部に相当する)は、液体容器41の対向する側面に平行に設置されている。
【0017】
超音波振動子48は、制御部30に接続されており、制御部30からの制御に従い、超音波反射板49に向けて超音波を照射する。超音波反射板49は、超音波振動子48から照射された超音波を超音波振動子48に向けて反射する。超音波が照射されている期間、超音波振動子48と超音波反射板49との間に充填される懸濁液には、超音波の定常波が生じ、その節や腹には濁質が凝集される。
【0018】
そして、超音波の照射が停止されると、凝集した濁質は重力によって沈下し、液体容器41の底部に沈殿物47として溜まることになる。また、濁質が沈下することにより、液体容器41の中部には上澄み液が生じることになる。
【0019】
なお、超音波振動子48を複数に分割して分散配置し、分割した超音波振動子48の配置に応じて、超音波の照射順序、周波数、位相を制御することによって、懸濁液の中の濁質を移動させて、凝縮や沈降を促進させるようにしてもよい。
【0020】
液体容器41の上面には、制御部30からの制御に従って懸濁液を流し入れる供給部42が設けられている。なお、供給部42の位置は、液体容器41の上面に限られず、例えば、液体容器41の側面上部であってもよい。また、供給部42を複数設けてもよい。さらに、供給部42には、液体容器41に懸濁液を流し入れるためのポンプ等が設けられていてもよい。
【0021】
供給部42は、懸濁液の他、懸濁液に含まれる濁質を凝集させるための凝集剤を添加することができる。なお、凝集剤を添加するための専用の供給部(不図示)を設けるようにしてもよい。
【0022】
凝集剤としては、一般的なポリ塩化アルミニウム(PAC)等の無機系凝集剤、高分子凝集剤、イオン交換作用を有する有機系凝集剤等を用いることができる。
【0023】
液体容器41の側面中部には、上澄み液を排出するための上澄み液排出口43と、上澄み液排出口43からの上澄み液の排出を制限するための上澄み液バルブ44が設けられている。上澄み液バルブ44は、制御部30に接続されており、制御部30からの制御に従って開閉する。なお、上澄み液排出口43の数は1に限らず、複数設けてもよい。また、上澄み液排出口43の近傍には、上澄み液を排出するためのポンプ等が設けられていてもよい。
【0024】
液体容器41の底部には、凝集して沈殿した濁質からなる沈殿物47を排出するための沈殿物排出口45と、沈殿物排出口45からの沈殿物47の排出を制限するための沈殿物バルブ46が設けられている。沈殿物バルブ46は、制御部30に接続されており、制御部30からの制御に従って開閉する。なお、沈殿物排出口45の数は1に限らず、複数設けてもよい。また、沈殿物排出口45の近傍には、沈殿物47を排出するためのポンプ等が設けられていてもよい。
【0025】
沈殿物排出口45の下には、沈殿物47を収容するための沈殿物容器50が設置されている。沈殿物容器50には、制御部30からの制御によって沈殿物バルブ46が開放されることにより沈殿物排出口45から排出される沈殿物47を収容することができる。沈殿物容器50には蓋51が設けられており、蓋51は沈殿物47を収容した後に閉めることができる。
【0026】
なお、液体容器41には、液面のレベルセンサや液体の重量計、撹拌装置や循環装置を設けてもよい。さらに、液体容器41には、恒温槽を付けたり、電熱ヒータや、水蒸気あるいは冷媒などを通した配管を入れて、温度制御を行えるようにしてもよい。
【0027】
<超音波照射の効果について>
次に、図3は、懸濁液に超音波照射することによって透明度が増す(濁度が低下する)ことの検証結果を示す図である。同図の横軸は、超音波の照射経過時間、縦軸は懸濁液を透過するレーザ光強度(懸濁液の透明度)を示している。
【0028】
なお、該検証には、懸濁液として、粒径4〜15μmのアルミナ粒子(濁質)を、濃度1g/Lで水に分散させたものを用いた。アクリル樹脂製で角型の液体容器を用い、該液体容器の対向する面に、固有振動数2MHzの超音波振動子と超音波反射板を互いに平行に設置した。また、懸濁液の透明度を測定するための発光部に波長633nmのHe−Neレーザ光を用い、受光部にはフォトダイオードセンサを用いた。
【0029】
懸濁液に超音波を照射すると、その定常波の腹と節に濁質が凝集し、体積を増して沈降し易くなる。よって、懸濁液の清澄化が進み、レーザ透過光強度が大きくなる(透明度が増す)。同図に示されるように、超音波照射ありの場合、超音波照射なし(自然沈降)に比べて、懸濁液が同程度の透明性になるまでの時間が約1/40に短縮された。したがって、超音波を照射することによって濁質の沈降促進が確認できる。
【0030】
<濁質分離装置10による濁質分離処理>
次に、図4は、濁質分離装置10による濁質分離処理の一例を説明するフローチャートである。
【0031】
該濁質分離処理は、例えば入出力部20に対してユーザから開始コマンドが入力されたときに開始される。
【0032】
はじめに、供給部42が、制御部30からの制御に従い、懸濁液を液体容器41に充填する(ステップS1)。次に、供給部42が、制御部30からの制御に従い、凝集剤を液体容器41に添加する(ステップS2)。なお、ステップS2の処理は省略してもよい。
【0033】
次に、超音波振動子48が、制御部30が出力した超音波を、所定の時間、超音波反射板49に向けて照射する(ステップS3)。照射された超音波は超音波反射板49によって反射される。これにより、懸濁液に超音波の定常波が生じ、その節や腹に濁質が凝集される。
【0034】
次に、制御部30が、超音波の出力を止め、所定の時間だけ待機する(ステップS4)。この待機の時間において、凝集した濁質は重力によって沈下し、液体容器41の底部に溜まることになる。また、濁質が沈下することにより、液体容器41の中部には上澄み液が生じることになる。
【0035】
次に、制御部30が、沈殿物バルブ46を、所定の時間だけ開放して、液体容器41の底部に溜まった沈殿物47を沈殿物排出口45から沈殿物容器50に排出する(ステップS5)。
【0036】
次に、制御部30が、上澄み液バルブ44を、所定の時間だけ開放して、液体容器41の中部に生じた上澄み液を上澄み液排出口43から排出する(ステップS6)。以上で、濁質分離装置10による濁質分離処理は終了される。
【0037】
なお、ステップS3における超音波を照射する時間、ステップS4における超音波の照射停止後に待機する時間、ステップS5における沈殿物47の排出時間、ステップS6における上澄み液を排出する時間については、予め実施した試験や、過去に実行した濁質分離処理の実績に基づいて決めればよい。
【0038】
また、ステップS5における沈殿物47を排出する処理と、ステップS6における上澄み液を排出する処理の順序を入れ替えてもよい。
【0039】
以上説明した濁質分離装置10による濁質分離処理によれば、従来に比較し、懸濁液を沈殿物47と上澄み液に分離するために要する時間を短縮することができる。また、懸濁液を長い時間溜める必要が無いので、液体容器41の容量を小さくすることができる。
【0040】
<本発明に係る第2の実施の形態である濁質分離装置の構成例>
次に、図5は、本発明に係る第2の実施形態である濁質分離装置の構成例を示している。なお、該第2の実施の形態である濁質分離装置60と、第1の実施の形態である濁質分離装置10(図1)とで共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0041】
該濁質分離装置60は、入出力部20、制御部30、測定部70、及び濁質分離部80を備える。
【0042】
制御部30は、入出力部20からの各種コマンドに応じて、濁質分離部80を制御する。また、制御部30は、内蔵する超音波発振器(不図示)が出力する超音波を濁質分離部80に出力する。
【0043】
測定部70は、制御部30からの制御に従い、濁質分離部80の液体容器41に充填された懸濁液を透過させた光ビームの受光強度に基づいて濁度を測定し、測定結果を制御部30に出力する。なお、入出力部20、制御部30、及び測定部70は、一体化してもよい。
【0044】
次に、図6は、濁質分離部80の詳細な構成例を示しており、同図(A)はZY平面の側面図、同図(B)はXY平面の上面図を示している。
【0045】
濁質分離部80は、濁質分離部40(図2)に対して、発光部81と受光部83との対を追加したものである。なお、測定部70、及び発光部81と受光部83との対は、本発明の透過光強度測定部に相当する。
【0046】
発光部81と受光部83との対は、上澄み液排出口43の直下であって、液体容器41の対向する側面に平行に設置されている。なお、図5の場合、超音波振動子48と超音波反射板49との対は液体容器41のYZ平面に設置され、発光部81と受光部83との対は液体容器41のXZ平面に設置されている。超音波振動子48と超音波反射板49との対を、発光部81と受光部83との対を、液体容器41の対向する同一の側面に設置するようにしてもよい。
【0047】
発光部81は、測定部70に接続されており、測定部70からの制御に従い、液体容器41の対向する面に設置された受光部83に対して光ビーム82を出力する。受光部83は、測定部70に接続されており、発光部81から出力された光ビーム82を受光し、その受光強度を測定して測定部70に通知する。なお、発光部81から出力された光ビーム82は、液体容器41に充填された懸濁液を介して受光部83で到達するので、懸濁液の濁度が高ければ、光ビーム82は濁質により散乱されるため、受光部83で受光される光の強度が低下することになる。よって、測定部70では、受光部83から通知される受光強度に応じて懸濁液の濁度を測定することができる。
【0048】
<濁質分離装置60による濁質分離処理>
次に、図7は、濁質分離装置60による濁質分離処理の一例を説明するフローチャートである。
【0049】
該濁質分離処理は、例えば入出力部20に対してユーザから開始コマンドが入力されたときに開始される。
【0050】
はじめに、供給部42が、制御部30からの制御に従い、懸濁液を液体容器41に充填する(ステップS11)。次に、供給部42が、制御部30からの制御に従い、凝集剤を液体容器41に添加する(ステップS12)。なお、ステップS12の処理は省略してもよい。
【0051】
次に、制御部30が、超音波の出力を開始する。これにより、超音波振動子48から超音波反射板49に向けて超音波の照射が開始される(ステップS13)。照射された超音波は超音波反射板49によって反射される。これにより、懸濁液に超音波の定常波が生じ、その節や腹に濁質が凝集される。
【0052】
次に、発光部81が、測定部70からの制御に従い、光ビーム82の出力を開始する。一方、受光部83が、光ビーム82の受光強度の通知を開始し、該通知に基づき、測定部70が、上澄み液排出口43の直下における懸濁液の濁度の測定を開始し、測定した濁度を制御部30に通知する(ステップS14)。
【0053】
次に、制御部30が、懸濁液の濁度が所定の閾値以下であるか否かを判断する(ステップS15)。ここで、制御部30が、懸濁液の濁度が所定の閾値以下ではないと判断した場合(ステップS15でNO)、懸濁液の濁度が所定の閾値以下になるまで超音波の出力を継続する。その後、超音波の照射によって濁質の凝集が進み、制御部30が、懸濁液の濁度が所定の閾値以下であると判断した場合(ステップS15でYES)、超音波の出力を止め、所定の時間だけ待機する(ステップS16)。この待機の時間において、凝集した濁質は重力によって沈下し、液体容器41の底部に溜まることになる。また、濁質が沈下することにより、液体容器41の中部には上澄み液が生じることになる。
【0054】
次に、制御部30が、沈殿物バルブ46を、所定の時間だけ開放して、液体容器41の底部に溜まった沈殿物47を沈殿物排出口45から沈殿物容器50に排出する(ステップS17)。
【0055】
次に、制御部30が、上澄み液バルブ44を所定の時間だけ開放して、液体容器41の中部に生じた上澄み液を上澄み液排出口43から排出する(ステップS18)。なお、上澄み液の排出が完了して懸濁液の水面が下がると、測定されている濁度が変換するので、上澄み液バルブ44の閉鎖を時間に依らず、発光部81と受光部83との対を用いて測定する濁度の変化に応じて閉鎖するようにしてもよい。なお、上澄み液を排出しているときに何らかの原因によって濁度が上昇した場合、制御部30が、上澄み液バルブ44を閉鎖して、濁質を再び沈殿させるようにしてもよい。以上で、濁質分離装置60による濁質分離処理は終了される。
【0056】
なお、ステップS16における超音波の照射停止後に待機する時間、ステップS17における沈殿物47の排出時間、ステップS18における上澄み液を排出する時間については、予め実施した試験や、過去に実行した濁質分離処理の実績に基づいて決めればよい。
【0057】
また、ステップS17における沈殿物47を排出する処理と、ステップS18における上澄み液を排出する処理の順序を入れ替えてもよい。
【0058】
さらに、凝集剤については、超音波の照射前に添加するのではなく、超音波を照射してから所定の時間が経過しても濁度が閾値以下にならない場合にて添加するようにしてもよい。この場合、超音波の照射を継続しながら添加剤を添加してもよいし、超音波の照射を一時的に停止して添加剤を添加し、超音波の照射を再開するようにしてもよい。
【0059】
以上説明した濁質分離装置60による濁質分離処理によれば、従来に比較し、懸濁液を沈殿物47と上澄み液に分離するために要する時間を短縮することができる。また、懸濁液を長い時間液体容器41に溜めておく必要がないので、液体容器41の容量を小さくすることができる。さらに、濁度を定量的に管理して効率よく濁質分離処理を実行することができる。
【0060】
なお、濁質分離装置60では、レーザ光を用いて懸濁液の濁度と測定したが、超音波を用いて懸濁液の濁度を測定することも可能である。その場合、超音波振動子48で超音波の反射波を測定し、懸濁液中の散乱体(濁質)による超音波の変化に基づいて懸濁液の濁度を測定するようにする。また、超音波反射板49の位置に超音波センサ(不図示)を追加配置し、超音波振動子48からの超音波を測定し、懸濁液中の散乱体(濁質)による超音波の変化に基づいて懸濁液の濁度を測定するようにする。あるいは、超音波振動子48または超音波反射板49を流用するのではなく、懸濁液の濁度を測定するための専用の超音波振動子や超音波反射板を設置するようにしてもよい。
【0061】
<本発明に係る第3の実施の形態である濁質分離装置の濁質分離部の構成例>
次に、本発明に係る第3の実施形態である濁質分離装置について説明する。本発明に係る第3の実施の形態である濁質分離装置は、第2の実施の形態である濁質分離装置60(図5)の濁質分離部80を濁質分離部90に置換したものである。
【0062】
図8は、濁質分離部90の構成例を示すZY平面の側面図であり、濁質分離部80(図6)と共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0063】
濁質分離部90には、濁質分離部80に対して、液体容器41の側面上部に、浮上物(比重が軽い油分等)を排出するための浮上物排出口91と、浮上物排出口91からの浮上物の排出を制限するための浮上物バルブ92が追加されている。浮上物バルブ92は、制御部30に接続されており、制御部30からの制御に従って開閉する。なお、浮上物排出口91の数は1に限らず、複数設けてもよい。また、浮上物排出口91の近傍には、浮上物を排出するためのポンプ等が設けられていてもよい。
【0064】
さらに、濁質分離部90には、濁質分離部80に対して、発光部93と受光部95との対、及び発光部96と受光部98との対が追加されている。
【0065】
発光部93と受光部95との対は、浮上物排出口91の直下に対向して設置されている。発光部96と受光部98との対は、沈殿物バルブ46の直上に対向して設置されている。
【0066】
発光部93は、測定部70に接続されており、測定部70からの制御に従い、懸濁液を介して受光部95に向けて光ビーム94を出力する。受光部95は、測定部70に接続されており、発光部93から出力された光ビーム94を受光し、その受光強度を測定して測定部70に通知する。例えば、発光部93と受光部95との間を浮上物が通過する場合、受光部95で受光される光ビーム94の受光強度は、浮上物によって一時的に低下し、浮上物が通過した後に回復する。よって、測定部70では、受光部95から通知される受光強度の変化に応じて浮上物の有無を判断することができる。
【0067】
発光部96は、測定部70に接続されており、測定部70からの制御に従い、懸濁液を介して受光部98に向けて光ビーム97を出力する。受光部98は、測定部70に接続されており、発光部96から出力された光ビーム97を受光し、その受光強度を測定して測定部70に通知する。例えば、発光部96と受光部98との間を沈殿物47が溜まった場合、受光部98で受光される光ビーム97の受光強度がほぼ0となる。よって、測定部70では、受光部98から通知される受光強度の変化に応じて沈殿物47の有無を判断することができる。
【0068】
なお、濁質分離部90には、発光部と受光部との対が3対設けられているが、発光部と受光部との対を2対または4対以上異なる高さに設けるようにしてもよい。
【0069】
<本発明に係る第3の実施の形態である濁質分離装置による濁質分離処理>
次に、図9は、本発明に係る第3の実施の形態である濁質分離装置による濁質分離処理の一例を説明するフローチャートである。
【0070】
該濁質分離処理は、例えば入出力部20に対してユーザから開始コマンドが入力されたときに開始される。
【0071】
はじめに、供給部42が、制御部30からの制御に従い、懸濁液を液体容器41に充填する(ステップS21)。次に、供給部42が、制御部30からの制御に従い、凝集剤を液体容器41に添加する(ステップS22)。なお、ステップS22の処理は省略してもよい。
【0072】
次に、制御部30が、超音波の出力を開始する。これにより、超音波振動子48から超音波反射板49に向けて超音波の照射が開始される(ステップS23)。照射された超音波は超音波反射板49によって反射される。これにより、懸濁液に超音波の定常波が生じ、その節や腹に濁質が凝集される。
【0073】
次に、発光部81が、測定部70からの制御に従い、光ビーム82の出力を開始する。一方、受光部83が、光ビーム82の受光強度の通知を開始し、該通知に基づき、測定部70が、上澄み液排出口43の直下における懸濁液の濁度の測定を開始し、測定した濁度を制御部30に通知する(ステップS24)。
【0074】
次に、制御部30が、上澄み液排出口43の直下における懸濁液の濁度が所定の閾値以下であるか否かを判断する(ステップS25)。ここで、制御部30が、懸濁液の濁度が所定の閾値以下ではないと判断した場合(ステップS25でNO)、処理をステップS24に戻して、超音波の照射と、懸濁液の濁度が所定の閾値以下であるかの判断を繰り返す。その後、超音波の照射によって濁質の凝集が進み、制御部30が、懸濁液の濁度が所定の閾値以下であると判断した場合(ステップS25でYES)、超音波の出力を止め、所定の時間だけ待機する(ステップS26)。この待機の時間において、凝集した濁質は重力によって沈下し、液体容器41の底部に溜まることになる。また、濁質が沈下することにより、液体容器41の中部には上澄み液が生じることになる。
【0075】
また、この待機の時間に、浮上物排出口91の直下に配置された発光部93が、測定部70からの制御に従い、光ビーム94の出力を開始し、受光部95が、光ビーム94の受光強度の通知を開始するようにする。
【0076】
次に、測定部70が、受光部95から順次通知される受光強度の変化に基づき、浮上物が浮上したか否かを判断する(ステップS27)。ここで、浮上物が浮上していないと判断した場合(ステップS27でNO)、浮上物が浮上したと判断するまで該判断を繰り返す。そして、浮上物が浮上したと判断した場合(ステップS27でYES)、測定部70が、その旨を制御部30に通知し、制御部30が、浮上物バルブ92を、所定の時間だけ開放して、液体容器41の上部に浮上した浮上物を浮上物排出口91から排出する(ステップS28)。
【0077】
次に、制御部30が、沈殿物バルブ46を開放し、沈殿物排出口45から沈殿物容器50に、液体容器41の底部に溜まった沈殿物47の排出を開始する(ステップS29)。次に、沈殿物排出口45の直上に設けられた発光部96が、測定部70からの制御に従い、光ビーム97を出力し、受光部98が、光ビーム97の受光強度を通知し、該通知に基づき、測定部70が、沈殿物排出口45の直上における懸濁液の濁度を測定し、測定結果を制御部30に通知する(ステップS30)。
【0078】
次に、制御部30が、沈殿物排出口45の直上における懸濁液の濁度が所定の閾値以下であるか否かを判断する(ステップS31)。ここで、制御部30が、懸濁液の濁度が所定の閾値以下ではないと判断した場合(ステップS31でNO)、処理をステップS30に戻してステップS30,S31の処理を繰り返す。その後、制御部30が、懸濁液の濁度が所定の閾値以下であると判断した場合(ステップS31でYES)、溜まっていた沈殿物47の排出が終了したと見做せるので沈殿物バルブ46を閉鎖する(ステップS32)。
【0079】
次に、制御部30が、上澄み液バルブ44を所定の時間だけ開放して、液体容器41の中部に生じた上澄み液を上澄み液排出口43から排出する(ステップS33)。
【0080】
なお、上澄み液の排出が完了して懸濁液の水面が下がると、測定されている濁度が変換するので、上澄み液バルブ44の閉鎖を時間に依らず、発光部81と受光部83との対を用いて測定する濁度の変化に応じて閉鎖するようにしてもよい。なお、上澄み液を排出しているときに何らかの原因により濁度が上昇した場合、制御部30が、上澄み液バルブ44を閉鎖して、濁質を再び沈殿させるようにしてもよい。以上で、本発明に係る第3の実施の形態である濁質分離装置による濁質分離処理は終了される。
【0081】
なお、ステップS26における超音波の照射停止後に待機する時間、ステップS28における浮上物を排出する時間、ステップS33における上澄み液を排出する時間については、予め実施した試験や、過去に実行した濁質分離処理の実績に基づいて決めればよい。
【0082】
また、ステップS29〜S32における沈殿物47を排出する処理と、ステップS34における上澄み液を排出する処理の順序を入れ替えてもよい。
【0083】
さらに、凝集剤については、超音波の照射前に添加するのではなく、超音波を照射してから所定の時間が経過しても濁度が閾値以下にならない場合にて添加するようにしてもよい。この場合、超音波の照射を継続しながら添加剤を添加してもよいし、超音波の照射を一時的に停止して添加剤を添加し、超音波の照射を再開するようにしてもよい。
【0084】
以上説明した本発明に係る第3の実施の形態である濁質分離装置による濁質分離処理によれば、懸濁液に比重が軽い油分等が含まれている場合、懸濁液を油分等の浮上物と上澄み液と沈殿物47とを分離することができ、且つ、分離のために要する時間を短縮することができる。また、懸濁液を液体容器41に長い時間溜めておき必要が無いので、液体容器41の容量を小さくすることができる。さらに、濁度を定量的に管理して効率よく濁質分離処理を実行することができる。
【0085】
なお、懸濁液の濁度と測定については、レーザ光を用いる代わりに超音波を用いることも可能である。その場合、超音波振動子48で超音波の反射波を測定し、懸濁液中の散乱体(濁質)による超音波の変化に基づいて懸濁液の濁度を測定するようにする。また、超音波反射板49の位置に超音波センサ(不図示)を追加配置し、超音波振動子48からの超音波を測定し、懸濁液中の散乱体(濁質)による超音波の変化に基づいて懸濁液の濁度を測定するようにする。あるいは、超音波振動子48または超音波反射板49を流用するのではなく、懸濁液の濁度を測定するための専用の超音波振動子や超音波反射板を設置するようにしてもよい。
【0086】
<本発明に係る第4の実施の形態である濁質分離システム>
次に、図11は、本発明に係る第4の実施の形態である濁質分離システムの構成例を示している。該濁質分離システムは、本発明に係る第2の実施の形態である濁質分離装置60(図5)に搬送装置100を追加したものである。
【0087】
搬送装置100は、濁質分離装置60の濁質分離部80から排出される沈殿物47を沈殿物容器50に収容して順次搬送するものであり、制御部110、及び搬送部120を備える。
【0088】
制御部110は、制御部30による濁質分離部80の制御と同期して、搬送部120を制御する。搬送部120は、例えばベルトコンベアから成り、載置された複数の沈殿物容器50を濁質分離部80の沈殿物排出口45の下方に順次移動させ、沈殿物47が沈殿物容器50に収容される期間停止した後、再び移動させることにより、沈殿物47が収容された複数の沈殿物容器50を順次搬送する。
【0089】
なお、搬送部120は、ベルトコンベアの他、ローラー、かご、台車、円板状の回転台等から構成するようでもよい。また、搬送部120は、載置された沈殿物容器50を移動する形状ではなく、懸架または保持した沈殿物容器50を移動する形状としてもよい。
【0090】
図11では省略されているが、沈殿物容器50に蓋51(図6)を設け、沈殿物容器50に対する沈殿物47の収容に応じて自動的に開閉するようにする。また、沈殿物容器50と沈殿物排出口45との間には隙間があってもよいが、沈殿物容器50と沈殿物排出口45とは密着して隙間がないことが望ましい。また、沈殿物容器50と沈殿物排出口45とは容易に着脱できることが望ましい。
【0091】
また、沈殿物容器50に対し、蓋51の代わりにバルブが付いた配管を設け、該配管を介して沈殿物排出口45からの沈殿物47を収容するようにしてもよい。
【0092】
さらに、該濁質分離システムは、本発明に係る第1または3の実施の形態である濁質分離装置に、搬送装置100を追加して構成するようにしてもよい。
【0093】
<濁質分離システムによる沈殿物搬送処理>
次に、図12は、濁質分離システムによる沈殿物搬送処理の一例を説明するフローチャートである。
【0094】
なお、濁質分離システムに含まれる濁質分離装置60の濁質分離部80では、既に懸濁液から濁質が分離され、液体容器41の底部に沈殿物47が溜まっているものとし、以下においては、主に、搬送装置100の処理について説明する。
【0095】
はじめに、制御部110が、ロボット等(不図示)を利用し、複数の空の沈殿物容器50を所定の間隔をあけて搬送部120に載置する(ステップS51)。次に、搬送部120が、制御部110からの制御に従い、1つの空の沈殿物容器50を濁質分離部80の沈殿物排出口45の下方に移動する(ステップS52)。
【0096】
次に、濁質分離装置60の制御部30が、濁質分離部80の沈殿物バルブ46を所定の時間だけ開放し、液体容器41の底部に溜まった沈殿物47を沈殿物排出口45から搬出させて沈殿物容器50に収容する(ステップS53)。
【0097】
次に、搬送部120が、制御部110からの制御に従い、ステップS53の処理によって沈殿物47が収容された沈殿物容器50を後段に移動させる(ステップS53)。これにより、1つの空の沈殿物容器50が濁質分離部80の沈殿物排出口45の下方に移動されることになるので、この後、処理はステップS53に戻されて、液体容器41の底部に溜まった沈殿物47は全て排出されるまで、ステップS53及びS54が繰り返される。以上で、濁質分離システムによる沈殿物搬送処理の説明を終了する。
【0098】
以上に説明した濁質分離システムによる沈殿物搬送処理によれば、懸濁液から分離した沈殿物47を沈殿物容器50に収容した状態で滞りなく搬送することが可能となる。
【0099】
なお、上述した各実施の形態において、上澄み液の排出先については言及していないが、沈殿物47と同様、上澄み液についても専用の容器に収容し、搬送するようにしてもよい。同様に、浮上物についても専用の容器に収容し、搬送するようにしてもよい。
【0100】
ところで、上述した各実施の形態における入出力部20、制御部30、測定部70、及び制御部110については、ハードウェアにより構成することもできるし、ソフトウェアにより実現することもできる。制御部30等をソフトウェアにより実現する場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにインストールされる。ここで、コンピュータには、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータや、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータ等が含まれる。
【0101】
図15は、制御部30等をプログラムにより実現するコンピュータのハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【0102】
該コンピュータ3000において、CPU(Central Processing Unit)3001,ROM(Read Only Memory)3002,RAM(Random Access Memory)3003は、バス3004により相互に接続されている。
【0103】
バス3004には、さらに、入出力インターフェース3005が接続されている。入出力インターフェース3005には、入力部3006、出力部3007、記憶部3008、通信部3009、及びドライブ3010が接続されている。
【0104】
入力部3006は、キーボード、マウス、マイクロフォン等より成る。出力部3007は、ディスプレイやスピーカ等より成る。記憶部3008は、HDD(Hard Disc Drive),SSD(Solid State Drive)等から成り、各種の情報を記憶する。通信部3009は、LANインターフェース等から成り、ネットワークを介して他の装置と通信を行う。ドライブ3010は、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリ等のリムーバブルメディア3011を駆動する。
【0105】
以上のように構成されるコンピュータ3000では、CPU3001が、例えば、記憶部3008に記憶されているプログラムを、入出力インターフェース3005及びバス3004を介して、RAM3003にロードして実行することにより、制御部30等が実現される。
【0106】
コンピュータ3000(CPU3001)が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブルメディア3011に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、通信ネットワーク、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
【0107】
コンピュータ3000では、プログラムは、リムーバブルメディア3011をドライブ3010に装着することにより、入出力インターフェース3005を介して、記憶部3008にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部3009で受信し、記憶部3008にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM3002や記憶部3008に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0108】
なお、コンピュータ3000が実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。
【0109】
本明細書に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、他の効果があってもよい。
【0110】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した各実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明が、必ずしも説明した全ての構成要素を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を、他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に、他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0111】
10・・・濁質分離装置、20・・・入出力部、30・・・制御部、40・・・濁質分離部、41・・・液体容器、42・・・供給部、43・・・上澄み液排出口、44・・・上澄み液バルブ、45・・・沈殿物排出口、46・・・沈殿物バルブ、47・・・沈殿物、48・・・超音波振動子、49・・・超音波反射板、50・・・沈殿物容器、51・・・蓋、60・・・濁質分離装置、70・・・測定部、80・・・濁質分離部、81・・・発光部、82・・・光ビーム、83・・・受光部、90・・・濁質分離部、91・・・浮上物排出口、92・・・浮上物バルブ、93・・・発光部、94・・・光ビーム、95・・・受光部、96・・・発光部、97・・・光ビーム、98・・・受光部、100・・・搬送装置、110・・・制御部、120・・・搬送部、3000・・・コンピュータ、3001・・・CPU、3002・・・ROM、3003・・・RAM、3004・・・バス、3005・・・入出力インターフェース、3006・・・入力部、3007・・・出力部、3008・・・記憶部、3009・・・通信部、3010・・・ドライブ、3011・・・リムーバブルメディア
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