(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6940694
(24)【登録日】2021年9月6日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】脂肪族イソシアネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 263/10 20060101AFI20210916BHJP
C07C 265/14 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
C07C263/10
C07C265/14
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-515655(P2020-515655)
(86)(22)【出願日】2018年9月3日
(65)【公表番号】特表2020-533393(P2020-533393A)
(43)【公表日】2020年11月19日
(86)【国際出願番号】KR2018010227
(87)【国際公開番号】WO2019050236
(87)【国際公開日】20190314
【審査請求日】2020年3月11日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0116138
(32)【優先日】2017年9月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ヒョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ヨン・パク
(72)【発明者】
【氏名】チョ・ヒ・アン
(72)【発明者】
【氏名】サン・ヒョン・チョ
【審査官】
奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−309827(JP,A)
【文献】
特開2007−051092(JP,A)
【文献】
特開昭60−255758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 263/10
C07C 265/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族アミンの塩をホスゲンと反応させる段階を含み、
前記反応段階は、80〜100℃の温度下に、ホスゲンを1次投入しながら前記脂肪族アミンの塩と反応させる第1反応段階と、120〜160℃の温度下に、ホスゲンを2次投入しながら前記第1反応段階の結果物と反応させる第2反応段階を含み、
前記1次投入されるホスゲンの量は、1次および2次投入されるホスゲン総量の10〜30重量%である、脂肪族イソシアネートの製造方法。
【請求項2】
前記脂肪族アミンの塩は、固体状態の脂肪族アミンの塩酸塩または炭酸塩を含む、請求項1に記載の脂肪族イソシアネートの製造方法。
【請求項3】
前記反応段階前に、前記脂肪族アミンと、塩酸または炭酸を反応させて固体状態の脂肪族アミンの塩酸塩または炭酸塩を形成する段階をさらに含む、請求項2に記載の脂肪族イソシアネートの製造方法。
【請求項4】
前記反応段階は、沸点が120℃以上である有機溶媒下で行われる、請求項1に記載の脂肪族イソシアネートの製造方法。
【請求項5】
前記反応段階は、芳香族炭化水素系有機溶媒、エステル系有機溶媒およびこれらの混合物からなる群より選択される有機溶媒下で行われる、請求項1に記載の脂肪族イソシアネートの製造方法。
【請求項6】
前記反応段階は、有機溶媒の液状媒質内で、固体状態の脂肪族アミンの塩と、気体状態のホスゲンが反応する気体−液体−固体の3相反応で行われる、請求項4に記載の脂肪族イソシアネートの製造方法。
【請求項7】
前記第1反応段階では、カルバモイル系中間体が形成される、請求項1に記載の脂肪族イソシアネートの製造方法。
【請求項8】
前記脂肪族アミンは、キシリレンジアミンである、請求項1に記載の脂肪族イソシアネートの製造方法。
【請求項9】
前記反応段階は、回転軸を有する反応器;前記反応器の内部に連結された反応物供給部;前記反応器に熱量を供給する熱源;および前記反応器で生成された反応物を収集する生成物収集部を含む反応装置内で行われる、請求項1に記載の脂肪族イソシアネートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2017年9月11日付韓国特許出願第10−2017−0116138号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、脂肪族イソシアネートの高純度製造方法、より具体的には副反応の発生や副産物の生成を抑制することができる脂肪族ポリイソシアネートを含む脂肪族イソシアネートの高純度製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
キシリレンジイソシアネート(xylylene diisocyanate、以下、XDI)は芳香族環を含んでいるが、脂肪族イソシアネートに分類され、化学工業、樹脂工業およびペイント工業分野でポリウレタン系材料、ポリウレア系材料またはポリイソシアヌレート系材料などの原料として非常に有用な化合物である。
【0004】
通常脂肪族イソシアネートは、合成時に副反応が多く発生するため、無水塩酸、または炭酸と反応させて塩を形成し、これをホスゲンと反応させる方法で製造される。一例として、XDIの場合、キシリレンジアミン(xylylene diamine、以下、XDA)を無水塩酸と反応させてアミン−塩酸塩を形成し、これをホスゲンと反応させることによって製造される。より具体的に、既存には液状の原料アミン、例えば、XDA含有溶液を無水塩酸と反応させてXDA−HCl塩酸塩を形成し、これを少なくとも100℃以上の高温で加熱した後、気状のホスゲンを注入して気−液反応を行う方法を行って、XDIなど脂肪族イソシアネートを製造する方法を適用してきた。
【0005】
このように、高温加熱下に反応が行われたのは特に、前記脂肪族イソシアネートの形成反応が代表的な吸熱反応であって、その収率を高めるために反応中に持続的な加熱および高温の維持が必要であるためである。
【0006】
しかし、XDIなどの脂肪族イソシアネートは大体アミノ基の反応性が大きいためホスゲン化反応中に副反応が多く発生し、副反応を通じて形成される不純物はポリウレタン樹脂が形成される反応に影響を及ぼして樹脂の品質低下を招く問題がある。
【0007】
前述のような、脂肪族イソシアネート製造過程中の高温の維持必要性と、XDIなど生成された脂肪族イソシアネートの大きな反応性によって、製品の熱変性などによる副産物の生成や副反応の発生の恐れはさらに高まるようになる短所があり、これによって精製工程にも大きな負荷が発生する場合が多かった。
【0008】
このような問題点によって、以前から脂肪族イソシアネート製造中の副反応や、副産物の生成を抑制するための多角的な試みが行われたことがあるが、まだ実効性ある技術は開発されていないのが実情である。さらに、前述の製造工程中にホスゲンの爆発的気化が発生して危険性も大きくなる短所が存在した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ホスゲンを用いた脂肪族イソシアネートの製造時、反応段階を順次に行うことによって、副反応の発生や副産物の生成を抑制することができる脂肪族イソシアネートの高純度製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、脂肪族アミンの塩をホスゲンと反応させる段階を含み、前記反応段階は80〜100℃の温度下に、ホスゲンを1次投入しながら前記脂肪族アミンの塩と反応させる第1反応段階と、120〜160℃の温度下に、ホスゲンを2次投入しながら前記第1反応段階の結果物と反応させる第2反応段階を含み、前記1次投入されるホスゲンの量は1次および2次投入されるホスゲン総量の10〜30重量%である、脂肪族イソシアネートの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、副反応の発生や副産物の生成を最少化して、簡単な製造工程を通じて高純度の脂肪族イソシアネートを高収率で製造することができる。また、ホスゲンの高温反応時間を相対的に短縮させてホスゲンの爆発的気化による危険性も大きく減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、“含む”、“備える”または“有する”などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするのであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。
【0013】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるので、特定実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術の範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0014】
発明の一実施形態によれば、脂肪族アミンの塩をホスゲンと反応させる段階を含み、
前記反応段階は、80〜100℃の温度下に、ホスゲンを1次投入しながら前記脂肪族アミンの塩と反応させる第1反応段階と、120〜160℃の温度下に、ホスゲンを2次投入しながら前記第1反応段階の結果物と反応させる第2反応段階を含み、
前記1次投入されるホスゲンの量は1次および2次投入されるホスゲン総量の10〜30重量%である脂肪族イソシアネートの製造方法が提供される。
【0015】
一般に、脂肪族イソシアネートの製造は脂肪族アミンとホスゲンの反応によって行われ、この時に副反応が発生し、副反応物として、例えば、クロロメチルベンジルイソシアネート(CMBI)のようなモノイソシアネートなどが生成される。このような副反応の発生および副産物の生成は、脂肪族イソシアネート製造過程中の高温の維持必要性と、XDIなど生成された脂肪族イソシアネートの大きな反応性によってもたらされることが知られている。特に、最終生成物である脂肪族イソシアネートは高温に一定時間露出される場合、副反応を起こすか、二量体、三量体以上の多量体を含むオリゴマーやポリマーなど高分子形態の副産物が形成されうる。
【0016】
一実施形態の製造方法では、このような副反応および/または副産物の発生を抑制するために、相対的に低い温度でホスゲンを相対的に小さい量で1次投入して中間体を生成させ、高温下に残量のホスゲンを2次投入しながら、このようなホスゲンと、前記中間体を反応させて脂肪族イソシアネートを形成することができる。
【0017】
一例として、脂肪族イソシアネートに属するキシリレンジイソシアネート(XDI)の場合、キシリレンジアミンとホスゲンの反応によって形成され、前記第1反応段階では、前記の少ない量のホスゲンを1次投入しながら、相対的に低い温度でキシリレンジアミンの塩と反応させるようになり、これによってカルバモイル系塩形態の中間体を生成するようになる。特に、この時、相対的に低い速度で反応させて前記中間体を適切に形成するために、前記キシリレンジアミンのような脂肪族アミンの塩形態に予め製造して反応させるようになる。
【0018】
その後、高温下に残量のホスゲンを2次投入しながら、このようなホスゲンと、前記カルバモイル系塩形態の中間体を反応させてキシリレンジイソシアネートのような脂肪族イソシアネートを形成することができる。
【0019】
このような一実施形態の方法によれば、最終生成物である脂肪族イソシアネートが高温の熱に曝される時間を最小化することができ、さらに、相対的に低い温度での第1反応段階で中間体を形成することによって、全体的な反応工程で高温の維持必要時間を減らすことができる。その結果、脂肪族イソシアネートの製造過程中の副反応の発生や、副産物の生成を大きく減らすことができる。
【0020】
加えて、全体工程に投入される熱量が減少することによって、全体的な工程費用も減少できる。
【0021】
したがって、一実施形態の製造方法によれば、簡単な製造工程を通じて高純度の脂肪族イソシアネートを高収率で製造することができ、さらに、ホスゲンの高温反応時間を相対的に短縮させてホスゲンの爆発的気化による危険性も大きく減らすことができる。
【0022】
以下、一実施形態の製造方法を各段階別に説明する。
【0023】
一実施形態の方法では、まず、80〜100℃、あるいは85〜95℃の温度下に、ホスゲンを1次投入しながら前記脂肪族アミンの塩と反応させる第1反応段階を行う。
【0024】
この時、使用可能な脂肪族アミンとしては、脂肪族基を有するアミンであれば特に制限されない。具体的に、前記脂肪族アミンは、鎖状または環状の脂肪族アミンであってもよく、より具体的には分子内2つ以上のアミノ基を含む、2官能以上の鎖状または環状脂肪族アミンであってもよい。具体的な例としては、ヘキサメチレンジアミン、2,2−ジメチルペンタンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサンジアミン、ブテンジアミン、1,3−ブタジエン−1,4−ジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,6,11−ウンデカトリアミン、1,3,6−ヘキサメチレントリアミン、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、ビス(アミノエチル)カーボネート、ビス(アミノエチル)エーテル、キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジアミン、ビス(アミノエチル)フタレート、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、ジシクロヘキシルジメチルメタンジアミン、2,2−ジメチルジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、3,9−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、4,8−ビス(アミノメチル)トリシクロデカン、4,9−ビス(アミノメチル)トリシクロデカンまたはビス(アミノメチル)ノルボルネンなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。一方、発明の一実施形態において、キシリレンジアミンは脂肪族ジアミンに分類される。
【0025】
また、前記脂肪族アミンとしてビス(アミノメチル)スルフィド、ビス(アミノエチル)スルフィド、ビス(アミノプロピル)スルフィド、ビス(アミノヘキシル)スルフィド、ビス(アミノメチル)スルホン、ビス(アミノメチル)ジスルフィド、ビス(アミノエチル)ジスルフィド、ビス(アミノプロピル)ジスルフィド、ビス(アミノメチルチオ)メタン、ビス(アミノエチルチオ)メタン、ビス(アミノエチルチオ)エタン、ビス(アミノメチルチオ)エタン、1,5−ジアミノ−2−アミノメチル−3−チアペンタンなどの硫黄含有脂肪族アミンが使用できる。
【0026】
前記脂肪族アミンの中でもキシリレンジアミンまたはその塩が本発明の一実施形態による脂肪族イソシアネート製造方法に適用時、より優れた効果を示すことができる。具体的に、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミンまたはo−キシリレンジアミンのようなキシリレンジアミン(XDA)、XDA−HCl塩またはXDA炭酸塩などであってもよく、これらのうちの1種以上の化合物が使用できる。
【0027】
一方、前記第1反応段階を含む一実施形態の方法では、ホスゲンとの急激な反応を抑制するために、脂肪族アミンがそれ自体で使用されるよりは、例えば、固体状態の脂肪族アミンの塩酸塩または炭酸塩のような脂肪族アミンの塩が使用される。このような脂肪族アミンの塩は前記第1反応段階前に、前記脂肪族アミンと、無水塩酸または炭酸を反応させて中和反応によって予め製造することができる。前記塩形成のための中和反応は、前記第1反応段階と相応するか、これより低い温度で行うことができる。例えば、このような中和反応は、20〜80℃の温度で行うことができる。
【0028】
これにより、前記第1反応段階を含む全体反応段階は、後述の有機溶媒の液状媒質内で、固体状態の脂肪族アミンの塩と、気体状態のホスゲンが反応する気体−液体−固体の3相反応で行われるので、これによって、急激な反応がより抑制され、これにより副産物/副反応の発生がさらに抑制できる。
【0029】
加えて、前記第1反応段階を含む全体反応段階は、120℃以上、より具体的には120〜200℃の沸点を有する有機溶媒中で行うことができる。このように高い沸点を有する溶媒中で行われる時、高純度の脂肪族イソシアネートを高収率で製造することができる。
【0030】
また、前記有機溶媒は、芳香族炭化水素系有機溶媒およびエステル系有機溶媒のうちの少なくとも一つを含むものであり得る。
【0031】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒は具体的に、モノクロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、または1,2,4−トリクロロベンゼンなどのようなハロゲン化芳香族炭化水素系有機溶媒であってもよい。
【0032】
また、前記エステル系有機溶媒は具体的に、アミルホルメート、n−ブチルアセテート、イソブチルアセテート、n−アミルアセテート、イソアミルアセテート、メチルイソアミルアセテート、メトキシブチルアセテート、sec−ヘキシルアセテート、2−エチルブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、シクロヘキシルアセテート、メチルシクロヘキシルアセテート、ベンジルアセテート、エチルプロピオネート、n−ブチルプロピオネート、イソアミルプロピオネート、エチルアセテート、ブチルステアレート、ブチルラクテートまたはアミルラクテートなどのような脂肪酸エステル;およびメチルサリシレート、ジメチルフタレートまたはメチルベンゾエートなどのような芳香族カルボン酸エステルであってもよい。
【0033】
より具体的に、前記有機溶媒は、前記芳香族炭化水素系有機溶媒およびエステル系有機溶媒の中でも120℃以上、あるいは120〜200℃の沸点を有する芳香族炭化水素系有機溶媒およびエステル系有機溶媒のうちの少なくとも一つを含むものであり得る。
【0034】
このように有機溶媒中でホスゲン化反応が行われる場合、前記脂肪族アミンの塩は20体積%以下の濃度で使用できる。脂肪族アミンまたはその塩の濃度が20体積%を超過する場合、多量のアミン塩酸塩が析出する恐れがある。
【0035】
一方、前述の各反応物を使用した第1反応段階は、80〜100℃、より具体的に85〜95℃の温度で行うことができ、第1および第2反応段階で投入されるホスゲンの総量を基準に、第1反応段階で投入されるホスゲンの量が10〜30重量%、あるいは12〜30重量%、あるいは15〜28重量%となり得る。このような反応条件によって、第1反応段階では、急激な反応が抑制され、カルバモイル系塩形態の中間体が選択的、効果的に形成されうる。
【0036】
一方、前述の第1反応段階後には、120〜160℃、より具体的に125〜145℃の温度下に、第1反応段階で投入されて残った残量、例えば、第1および第2反応段階で投入されるホスゲンの総量を基準に、70〜90重量%、あるいは70〜85重量%、あるいは72〜80重量%のホスゲンを2次投入しながら、このようなホスゲンと、前記第1反応段階の結果物、即ち、前記カルバモイル系塩形態の中間体を反応させる第2反応段階を行うことができる。
【0037】
このような第2反応段階は前記反応温度およびホスゲンの投入量を除いては第1反応段階と大同小異の方法および条件下に行うことができるので、これに関する追加的な説明は省略する。
【0038】
追加的に、前述の第1および第2反応段階を含む全体反応段階は、回転軸を有する反応器;前記反応器の内部に連結された反応物供給部;前記反応器に熱量を供給する熱源;および前記反応器で生成された反応物を収集する生成物収集部を含む反応装置内で連続遂行できる。
【0039】
一方、各反応段階を完結した後には、未反応のホスゲンなどに対する窒素バブリングなどの除去工程および蒸留などを通じた溶媒除去工程を選択的にさらに行うことができ、これら工程は通常の方法によって行うことができる。
【0040】
前述の一実施形態の製造方法は、通常の脂肪族イソシアネートまたは脂肪族ポリイソシアネートを含むイソシアネートの製造に適合する。具体的には、n−ペンチルイソシアネート、6−メチル−2−ヘプタンイソシアネート、シクロペンチルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン(H6TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジイソシアネートシクロヘキサン(t−CHDI)またはジ(イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)などの製造に有用であり、特にこの中でもキシリレンジイソシアネート(XDI)の製造により有用であり得る。
【0041】
前述のような一実施形態の方法では、前述の第1および第2反応段階の段階的進行によって、最終生成物である脂肪族イソシアネートが高温の熱に曝される時間を最小化することができ、さらに、相対的に低い温度での第1反応段階で中間体を形成することによって、全体的な反応工程で高温の維持必要時間を減らすことができる。その結果、脂肪族イソシアネートの製造過程中に副反応の発生や、副産物の生成を大きく減らすことができる。
【0042】
また、前記各反応段階、特に、第1反応段階を有機溶媒の液状媒質内で、固体状態の脂肪族アミンの塩と、気体状態のホスゲンが反応する気体−液体−固体の3相反応で行うことによって、急激な反応がより抑制され、これによって副産物/副反応の発生がさらに抑制できる。
【0043】
さらに、ホスゲンの高温反応時間を相対的に短縮させてホスゲンの爆発的気化による危険性も大きく減らすことができる。
【0044】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述することにする。但し、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が決められるのではない。
【実施例】
【0045】
[分析]
GCを用いてホスゲン反応生成物を分析した。分析に使用したGCはHP−6890であり、FIDで検出した。使用したカラムはDB−17(30m*0.25mm*0.5μm)、キャリアガスは窒素(1.0mL/min)、オーブン温度は80℃→5℃/min→160℃(8min)→20℃/min→280℃(18min)であった。
【0046】
[実施例1]
まず、常温、常圧の条件下に、471.5gの1,2−ジクロロベンゼンの溶媒内で、塩酸17.5gと、キシリレンジアミン(XDA)32.5gを反応させて、キシリレンジアミンの塩酸塩50.0gを形成した。
【0047】
前記キシリレンジアミンの塩酸塩50.0gが含まれているフラスコの温度を60℃に昇温および維持した状態で、ホスゲン9.0gを反応器に入れて攪拌した。ホスゲン投入時点から反応終了時点までドライアイス−アセトンコンデンサを使用してホスゲンが外部に漏れていかないようにした。90℃の温度下に1.5時間反応を行わせた。
【0048】
その後、フラスコ内部温度を125℃になるように加熱し、滴下漏斗(dropping funnel)を活用してホスゲン51.0gを追加的に投入した。フラスコの温度が125℃に維持されるようにし、反応溶液が透明になるまで4.5時間を追加的に攪拌した。反応溶液が透明になれば加熱を中断し、80℃まで冷却した後、窒素バブリングを実施した。結果の反応液を回収して真空蒸留を通じて1,2−ジクロロベンゼンを除去し、GCで分析を実施した。このような分析結果を下記表1に記載した。
【0049】
[実施例2]
まず、常温、常圧の条件下に、471.5gの1,2−ジクロロベンゼンの溶媒内で、塩酸17.5gと、キシリレンジアミン(XDA)32.5gを反応させて、キシリレンジアミンの塩酸塩50.0gを形成した。
【0050】
前記キシリレンジアミンの塩酸塩50.0gが含まれているフラスコの温度を60℃に昇温および維持した状態で、ホスゲン15.0gを反応器に入れて攪拌した。ホスゲン投入時点から反応終了時点までドライアイス−アセトンコンデンサを使用してホスゲンが外部に漏れていかないようにした。90℃の温度下に2時間反応を行わせた。
【0051】
その後、フラスコ内部温度を125℃になるように加熱し、滴下漏斗(dropping funnel)を活用してホスゲン45.0gを追加的に投入した。フラスコの温度が125℃に維持されるようにし、反応溶液が透明になるまで4時間、追加的に攪拌した。反応溶液が透明になれば加熱を中断し、80℃まで冷却した後、窒素バブリングを実施した。結果の反応液を回収して真空蒸留を通じて1,2−ジクロロベンゼンを除去し、GCで分析を実施した。このような分析結果を下記表1に記載した。
【0052】
[比較例1]
まず、常温、常圧の条件下に、471.5gの1,2−ジクロロベンゼンの溶媒内で、塩酸17.5gと、キシリレンジアミン(XDA)32.5gを反応させて、キシリレンジアミンの塩酸塩50.0gを形成した。
【0053】
前記キシリレンジアミンの塩酸塩50.0gが含まれているフラスコの温度を125℃に昇温および維持した状態で、ホスゲン60.0gを反応器に入れて攪拌した。ホスゲン投入時点から反応終了時点までドライアイス−アセトンコンデンサを使用してホスゲンが外部に漏れていかないようにした。フラスコの温度が125℃に維持されるようにし、反応溶液が透明になるまで8時間を攪拌しながら反応を行った。反応溶液が透明になれば加熱を中断し、80℃まで冷却した後、窒素バブリングを実施した。結果の反応液を回収して真空蒸留を通じて1,2−ジクロロベンゼンを除去し、GCで分析を実施した。このような分析結果を下記表1に記載した。
【0054】
[比較例2]
まず、常温、常圧の条件下に、471.5gの1,2−ジクロロベンゼンの溶媒内で、塩酸17.5gと、キシリレンジアミン(XDA)32.5gを反応させて、キシリレンジアミンの塩酸塩50.0gを形成した。
【0055】
前記キシリレンジアミンの塩酸塩50.0gが含まれているフラスコの温度を最初温度25(R.T.水準)℃から125℃に急速に昇温しながら、ホスゲン60.0gを当該7時間にわたって反応器に徐々に入れながら攪拌した。ホスゲン投入時点から反応終了時点までドライアイス−アセトンコンデンサを使用してホスゲンが外部に漏れていかないようにした。
【0056】
このような方法で14時間反応を行いながら、反応溶液が透明になるまで攪拌し、反応溶液が透明になれば加熱を中断し、80℃まで冷却した後、窒素バブリングを実施した。結果の反応液を回収して真空蒸留を通じて1,2−ジクロロベンゼンを除去し、GCで分析を実施した。このような分析結果を下記表1に記載した。
【0057】
【表1】
【0058】
前記実験結果から、ホスゲンを用いた脂肪族イソシアネートの製造時、実施例1および2のような多段階反応を行うことによって、モノイソシアネートなどの不純物の含量を低くし、高純度の脂肪族イソシアネートを製造できることを確認することができる。
【0059】
よって、比較例1および2では脂肪族イソシアネートが十分に高い純度で得られにくいということが確認された。