(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明者らは、従来の量子閉じ込め構造のトランジスタの特性を解明すべく、
図1に示す参考例について検討した。
図1(a)は参考例の断面図であり、
図1(b)は参考例のバンド図である。
【0012】
参考例の半導体装置10には、
図1(a)に示すように、GaNのバッファ層1と、バッファ層1のN極性面上のAlNのバリア層2と、バリア層2上のGaNのチャネル層3と、チャネル層3上のAlNのキャップ層4と、が含まれる。半導体装置10は、バリア層2がバッファ層1のN極性面上にあるため、チャネル層3のバリア層2との界面近傍に2次元電子ガス(2DEG)5が発生する。
【0013】
半導体装置10の製造に際してバリア層2、チャネル層3及びキャップ層4をMOVPE法で形成した場合、AlNのバリア層2がGaNのバッファ層1からGa原子を取り込み、AlNのキャップ層4がGaNのチャネル層3からGa原子を取り込む。この結果、
図1(b)に示すように、バリア層2の価電子帯Ecが下がり、チャネル層3と間のバンドオフセットが低下する。このため、十分な量子閉じ込め効果が得られず、十分な移動度が得られない。
【0014】
また、AlNとGaNとの間の格子定数差が大きいため、バリア層2の臨界膜厚が非常に小さく、バリア層2を厚く形成すると、バリア層2に欠陥が生じやすい。この点でも十分な量子閉じ込め効果が得られず、十分な移動度が得られない。
【0015】
本発明者らは、これらの知見に基づいて鋭意検討を行った結果、下記の実施形態に想到した。
【0016】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。
図2は、第1の実施形態に係る半導体装置を示す図である。
【0018】
第1の実施形態に係る半導体装置100には、
図2(a)に示すように、AlNの下地層101と、下地層101のN極性面上のAlNのバリア層102と、バリア層102上のGaNのチャネル層103と、チャネル層103上のAlGaNのキャップ層104と、が含まれる。キャップ層104の組成はAlNであってもよい。
【0019】
半導体装置100では、バリア層102が下地層101のN極性面上にあるため、チャネル層103に圧縮歪が生じ、チャネル層103のバリア層102との界面近傍に2次元電子ガス(2DEG)105が発生する。バリア層102をMOVPE法で形成したとしても、AlNの下地層101からバリア層102がGa原子を取り込むことはない。従って、Ga原子の取り込みに伴う価電子帯Ecの低下及びバンドオフセットの低下は生じず、
図2(b)に示すように、チャネル層103とバリア層102との間のバンドオフセットが大きく、電子がチャネル層103内に強く閉じ込められる。キャップ層104をMOVPE法で形成した場合、キャップ層104がチャネル層103からGa原子を取り込み、チャネル層103と間のバンドオフセットが低下することがある。しかし、キャップ層104とチャネル層103との間の自発分極差が大きく、チャネル層103のピエゾ分極によりバンドが押し上げられるため、2DEG105に対する障壁は高い。更に、AlNのバリア層102はAlNの下地層101上に形成されているため、バリア層102は参考例のバリア層2よりも厚く形成することができる。これらの要因により、第1の実施形態では、優れた電子の移動度を得ることができる。
【0020】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は化合物半導体エピタキシャル基板を含むHEMTの一例に関する。
図3は、第2の実施形態に係る半導体装置を示す図である。
【0021】
図3に示すように、第2の実施形態に係る半導体装置200には、AlNの基板201、基板201のN極性面上のAlNのバリア層202、バリア層202上のGaNのチャネル層203、及びチャネル層203上のAlNのキャップ層204が含まれる。
【0022】
バリア層202の厚さは5nm〜15nm、例えば10nm程度であり、チャネル層203の厚さは2nm〜20nm、例えば10nm程度であり、キャップ層204の厚さは2nm〜10nm、例えば5nm程度である。キャップ層204がチャネル層203からGa原子を取り込んで、Gaを含有していてもよい。この場合、キャップ層204の組成は厚さ方向で変化しており、すなわちチャネル層203に近い箇所ほどAl組成が低い。キャップ層204の全体的なAl組成は概ね0.30以上1.00未満の範囲内にある。特に優れた量子閉じ込め効果を得るために、チャネル層203の厚さは20nm以下であることが好ましい。
【0023】
基板201、バリア層202、チャネル層203及びキャップ層204の積層体に、素子領域を画定する素子分離領域211が形成されている。素子領域内で、キャップ層204にソース用の開口部212及びドレイン用の開口部213が形成されており、開口部212内にソース電極221が形成され、開口部213内にドレイン電極222が形成されている。ソース電極221及びドレイン電極222を覆うパッシベーション膜224がキャップ層204上に形成されている。パッシベーション膜224の厚さは2nm〜500nm、例えば100nm程度である。パッシベーション膜224の材料は、例えば、Si、Al、Hf、Zr、Ti、Ta又はWの酸化物、窒化物又は酸窒化物であり、好ましくは窒化シリコンである。ソース電極221とドレイン電極222との間で、パッシベーション膜224にゲート用の開口部214が形成されている。半導体装置200には、開口部214を通じてキャップ層204と接するゲート電極223が含まれる。ソース電極221及びドレイン電極222は、例えばTa膜及びその上のAl膜を含み、チャネル層203とオーミック接触している。ゲート電極223は、例えばNi膜及びその上のAu膜を含み、キャップ層204とショットキー接触している。このように、半導体装置200には、チャネル層203上方のソース電極221、ドレイン電極222及びゲート電極223が含まれる。
【0024】
第2の実施形態では、基板201、バリア層202、チャネル層203及びキャップ層204が化合物半導体エピタキシャル基板に含まれる。基板201はAlNの下地層の一例である。
【0025】
次に、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。
図4A乃至
図4Cは、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0026】
先ず、
図4A(a)に示すように、基板201上に、バリア層202、チャネル層203及びキャップ層204を形成する。バリア層202、チャネル層203及びキャップ層204は、例えばMOVPE法又は分子線エピタキシー(molecular beam epitaxy:MBE)法等の結晶成長法により形成することができる。MOVPE法により形成する場合、原料ガスとして、例えばトリメチルアルミニウム(TMAl)ガス、トリメチルガリウム(TMGa)ガス、トリメチルインジウム(TMIn)ガス及びアンモニア(NH
3)ガスの混合ガスを用い、キャリアガスとして窒素(N
2)ガス又は水素(H
2)ガスを用いる。形成しようとする化合物半導体層に応じて、TMAlガス、TMGaガス及びTMInガスの供給の有無並びに流量を適宜設定する。例えば、成長圧力は1kPa〜100kPa程度とし、成長温度は700℃〜1500℃程度とする。
【0027】
次いで、
図4A(b)に示すように、キャップ層204、チャネル層203、バリア層202及び基板201の一部の積層体に、素子領域を画定する素子分離領域211を形成する。素子分離領域211の形成では、例えば、素子分離領域211を形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンをキャップ層204上に形成し、このパターンをマスクとしてAr等のイオン注入を行う。このパターンをエッチングマスクとして塩素系ガスを用いたドライエッチングを行ってもよい。
【0028】
その後、素子領域内において、
図4A(c)に示すように、キャップ層204に開口部212及び213を形成する。開口部212及び213の形成では、例えば塩素系ガスを用いたドライエッチングを行う。
【0029】
続いて、
図4B(d)に示すように、開口部212内にソース電極221を形成し、開口部213内にドレイン電極222を形成する。ソース電極221及びドレイン電極222は、例えばリフトオフ法により形成することができる。すなわち、ソース電極221を形成する予定の領域及びドレイン電極222を形成する予定の領域を露出し、他の領域を覆うフォトレジストのパターンを形成し、このパターンを成長マスクとして蒸着法により金属膜を形成し、このパターンをその上の金属膜と共に除去する。金属膜の形成では、例えば、厚さが10nm〜30nm、例えば20nm程度のTa膜を形成し、その上に厚さが180nm〜220nm、例えば200nm程度のAl膜を形成する。次いで、例えば、N
2ガス雰囲気中にて400℃〜1000℃(例えば550℃)で、急速加熱処理(rapid thermal annealing:RTA)等の熱処理を行い、オーミック接触を得る。
【0030】
その後、
図4B(e)に示すように、ソース電極221及び222電極107を覆うパッシベーション膜224をキャップ層104上に形成する。パッシベーション膜224は、例えばプラズマ化学気相成長(plasma enhanced chemical vapor deposition:PECVD)法、原子堆積(atomic layer deposition:ALD)法又はスパッタ法により形成することができる。パッシベーション膜224として窒化シリコン膜を形成する場合、プラズマCVD法が好ましい。
【0031】
続いて、
図4C(f)に示すように、パッシベーション膜224に開口部214を形成する。開口部214を形成する際には、開口部214を形成する予定の領域を露出するレジストパターンをパッシベーション膜224上に形成し、パッシベーション膜224のエッチングを行う。エッチングとしては、例えば弗素系ガス若しくは塩素系ガスを用いたドライエッチング又は弗酸若しくはバッファード弗酸を用いたウェットエッチングを行う。
【0032】
次いで、
図4C(g)に示すように、開口部214を通じてキャップ層204と接するゲート電極223をパッシベーション膜224上に形成する。ゲート電極223は、例えばリフトオフ法により形成することができる。すなわち、ゲート電極223を形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンを形成し、このパターンを成長マスクとして蒸着法により金属膜を形成し、このパターンをその上の金属膜と共に除去する。金属膜の形成では、例えば、厚さが20nm〜40nm、例えば30nm程度のNi膜を形成した後に厚さが350nm〜450nm、例えば400nm程度のAu膜を形成する。
【0033】
そして、必要に応じて保護膜及び配線等を形成して、半導体装置を完成させる。
【0034】
第2の実施形態では、バリア層202が基板201のN極性面上にあるため、チャネル層203に圧縮歪が生じ、チャネル層203のバリア層202との界面近傍に2DEGが発生する。バリア層202をMOVPE法で形成したとしても、AlNの基板201からバリア層202がGa原子を取り込むことはない。従って、Ga原子の取り込みに伴うバンドオフセットの低下は生じず、チャネル層203とバリア層202との間のバンドオフセットが大きく、電子がチャネル層203内に強く閉じ込められる。キャップ層204をMOVPE法で形成した場合、キャップ層204がチャネル層203からGa原子を取り込み、チャネル層203と間のバンドオフセットが低下することがある。しかし、キャップ層204とチャネル層203との間の自発分極差が大きく、チャネル層203のピエゾ分極によりバンドが押し上げられるため、2DEGに対する障壁は高い。更に、AlNのバリア層202はAlNの基板201上に形成されているため、バリア層202は参考例のバリア層2よりも厚く形成しても、バリア層2に欠陥が生じにくく、チャネル層203に圧縮歪が生じさせることができる。これらの要因により、第2の実施形態でも、優れた電子の移動度を得ることができる。
【0035】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態は化合物半導体エピタキシャル基板を含むHEMTの一例に関する。
図5は、第3の実施形態に係る半導体装置を示す図である。
【0036】
図5に示すように、第3の実施形態に係る半導体装置300には、AlNのキャップ層204に代えてAlGaNのキャップ層304が含まれる。キャップ層304の組成は、例えばAl
yGa
1-yN(0.30≦y<1.00)で表され、キャップ層304の厚さは2nm〜10nm、例えば5nm程度である。キャップ層304は、例えばAl
0.5Ga
0.5N層である。他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0037】
第3の実施形態に係る半導体装置300を製造する際には、AlNのキャップ層204に代えてAlGaNのキャップ層304を形成する。つまり、Gaの原料ガス(TMGaガス)を供給しながらキャップ層304を形成する。Gaの原料ガスを供給しながらキャップ層304を形成することで、チャネル層203からのGa原子の取り込みが制御され、キャップ層304の組成は厚さ方向で変化しにくい。このため、第2の実施形態と比較して、安定した特性を得やすい。
【0038】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態は化合物半導体エピタキシャル基板を含むHEMTの一例に関する。
図6は、第4の実施形態に係る半導体装置を示す図である。
【0039】
図6(a)に示すように、第4の実施形態に係る半導体装置400には、AlNのキャップ層204に代えてキャップ層404が含まれる。キャップ層404には、チャネル層203上の第1のAlGaNの層404a及び第1の層404a上の第2のAlGaNの層404bが含まれ、層404aのAl組成が層404bのAl組成より低い。例えば、層404aの組成はAl
0.2Ga
0.8Nであり、層404bの組成はAl
0.8Ga
0.2Nである。層404a及び404bの厚さは、いずれも1nm〜5nm、例えば2nm程度である。キャップ層404の全体の組成は、例えばAl
yGa
1-yN(0.30≦y<1.00)で表される。他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0040】
第4の実施形態では、
図6(b)に示すように、層404aがサブチャネルとして機能し得る。つまり、ドレイン電圧が高くなった場合に、電子がチャネル層203から層404aに移動するため、より高電圧まで動作が可能となる。従って、第2の実施形態と比較して、優れた耐圧を得ることができる。
【0041】
上面に近いほどAl組成が高くなっていれば、キャップ層404に含まれる層の数は3以上であってもよい。Al組成が段階的ではなく連続的に変化していてもよい。
【0042】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態は化合物半導体エピタキシャル基板を含むHEMTの一例に関する。
図7は、第5の実施形態に係る半導体装置を示す図である。
【0043】
図7に示すように、第5の実施形態に係る半導体装置500には、厚さ方向で基板201とバリア層202との間のバックバリア層506が含まれる。バックバリア層506の組成は、In
aAl
bGa
1-a-bN(0≦a≦0.05、0.60≦b<1.00)で表され、バックバリア層506の厚さは1nm〜5nm、例えば2nm程度である。また、半導体装置500には、バリア層202に代えてn型不純物を含むAlNのバリア層502が含まれる。バリア層502の厚さは5nm〜15nm、例えば10nm程度である。バリア層502には、例えば、n型不純物としてSiが3×10
18cm
-3〜7×10
18cm
-3、例えば5×10
18cm
-3程度含まれる。バックバリア層506は、例えばAl
0.8Ga
0.2N層である。他の構成は第2の実施形態と同様である。
【0044】
第5の実施形態では、バックバリア層506とバリア層502との間に自発分極差が存在し、バックバリア層506に圧縮歪が生じ、これら自発分極差及びピエゾ分極により、
図7(b)に示すように、バリア層202のバンドが押し上げられる。このため、電子がより強くチャネル層203に閉じ込められ、より優れた電子の移動度が得られる。また、バリア層502と基板201との間にバックバリア層506があるため、バリア層502に含まれるn型不純物によりキャリア濃度が向上する。
【0045】
バックバリア層506がGaを含んでいるが、Ga組成は低いため、バリア層502がGaを取り込んだとしても、バンドオフセットへの影響は無視できる程度である。
【0046】
バリア層502に含まれるn型不純物がGe又はSnであってもよい。バリア層502に代えて、不純物が意図的に導入されていないバリア層202が用いられてもよい。但し、n型不純物を含むバリア層502が用いられた方が、バックバリア層506との相互作用によって高密度で2DEGを発生させることができるため、好ましい。第1〜第4の実施形態において、バリア層202に代えてn型不純物を含むバリア層502が用いられてもよい。
【0047】
(第6〜第9の実施形態)
次に、第6〜第9の実施形態について説明する。第6〜第9の実施形態は化合物半導体エピタキシャル基板を含むHEMTの一例に関する。
図8〜
図11は、それぞれ第6〜第9の実施形態に係る半導体装置を示す図である。
【0048】
図8に示すように、第6の実施形態に係る半導体装置600に含まれるパッシベーション膜224には開口部214が形成されておらず、ゲート電極223がパッシベーション膜224上に形成されている。他の構成は第2の実施形態と同様である。つまり、第2の実施形態がショットキー型ゲート構造を備えているのに対し、第6の実施形態はMIS型ゲート構造を備えている。第6の実施形態によっても第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0049】
図9に示すように、第7の実施形態に係る半導体装置700に含まれるパッシベーション膜224には開口部214が形成されておらず、ゲート電極223がパッシベーション膜224上に形成されている。他の構成は第3の実施形態と同様である。つまり、第3の実施形態がショットキー型ゲート構造を備えているのに対し、第7の実施形態はMIS型ゲート構造を備えている。第7の実施形態によっても第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0050】
図10に示すように、第8の実施形態に係る半導体装置800に含まれるパッシベーション膜224には開口部214が形成されておらず、ゲート電極223がパッシベーション膜224上に形成されている。他の構成は第4の実施形態と同様である。つまり、第4の実施形態がショットキー型ゲート構造を備えているのに対し、第8の実施形態はMIS型ゲート構造を備えている。第8の実施形態によっても第4の実施形態と同様の効果が得られる。
【0051】
図11に示すように、第9の実施形態に係る半導体装置900に含まれるパッシベーション膜224には開口部214が形成されておらず、ゲート電極223がパッシベーション膜224上に形成されている。他の構成は第5の実施形態と同様である。つまり、第5の実施形態がショットキー型ゲート構造を備えているのに対し、第9の実施形態はMIS型ゲート構造を備えている。第9の実施形態によっても第5の実施形態と同様の効果が得られる。
【0052】
(第10の実施形態)
次に、第10の実施形態について説明する。第10の実施形態は、HEMTのディスクリートパッケージに関する。
図12は、第10の実施形態に係るディスクリートパッケージを示す図である。
【0053】
第10の実施形態では、
図12に示すように、第2〜第9の実施形態のいずれかのHEMTのHEMTチップ1210の裏面がはんだ等のダイアタッチ剤1234を用いてランド(ダイパッド)1233に固定されている。また、ドレイン電極222に接続されたドレインパッド1226dに、Alワイヤ等のワイヤ1235dが接続され、ワイヤ1235dの他端が、ランド1233と一体化しているドレインリード1232dに接続されている。ソース電極221に接続されたソースパッド1226sにAlワイヤ等のワイヤ1235sが接続され、ワイヤ1235sの他端がランド1233から独立したソースリード1232sに接続されている。ゲート電極223に接続されたゲートパッド1226gにAlワイヤ等のワイヤ1235gが接続され、ワイヤ1235gの他端がランド1233から独立したゲートリード1232gに接続されている。そして、ゲートリード1232gの一部、ドレインリード1232dの一部及びソースリード1232sの一部が突出するようにして、ランド1233及びHEMTチップ1210等がモールド樹脂1231によりパッケージングされている。
【0054】
このようなディスクリートパッケージは、例えば、次のようにして製造することができる。先ず、HEMTチップ1210をはんだ等のダイアタッチ剤1234を用いてリードフレームのランド1233に固定する。次いで、ワイヤ1235g、1235d及び1235sを用いたボンディングにより、ゲートパッド1226gをリードフレームのゲートリード1232gに接続し、ドレインパッド1226dをリードフレームのドレインリード1232dに接続し、ソースパッド1226sをリードフレームのソースリード1232sに接続する。その後、トランスファーモールド法にてモールド樹脂1231を用いた封止を行う。続いて、リードフレームを切り離す。
【0055】
(第11の実施形態)
次に、第11の実施形態について説明する。第11の実施形態は、HEMTを備えたPFC(Power Factor Correction)回路に関する。
図13は、第11の実施形態に係るPFC回路を示す結線図である。
【0056】
PFC回路1250には、スイッチ素子(トランジスタ)1251、ダイオード1252、チョークコイル1253、コンデンサ1254及び1255、ダイオードブリッジ1256、並びに交流電源(AC)1257が設けられている。そして、スイッチ素子1251のドレイン電極と、ダイオード1252のアノード端子及びチョークコイル1253の一端子とが接続されている。スイッチ素子1251のソース電極と、コンデンサ1254の一端子及びコンデンサ1255の一端子とが接続されている。コンデンサ1254の他端子とチョークコイル1253の他端子とが接続されている。コンデンサ1255の他端子とダイオード1252のカソード端子とが接続されている。また、スイッチ素子1251のゲート電極にはゲートドライバが接続されている。コンデンサ1254の両端子間には、ダイオードブリッジ1256を介してAC1257が接続される。コンデンサ1255の両端子間には、直流電源(DC)が接続される。そして、本実施形態では、スイッチ素子1251に、第2〜第9の実施形態のいずれかのHEMTが用いられている。
【0057】
PFC回路1250の製造に際しては、例えば、はんだ等を用いて、スイッチ素子1251をダイオード1252及びチョークコイル1253等に接続する。
【0058】
(第12の実施形態)
次に、第12の実施形態について説明する。第12の実施形態は、HEMTを備えた電源装置に関する。
図14は、第12の実施形態に係る電源装置を示す結線図である。
【0059】
電源装置には、高圧の一次側回路1261及び低圧の二次側回路1262、並びに一次側回路1261と二次側回路1262との間に配設されるトランス1263が設けられている。
【0060】
一次側回路1261には、第11の実施形態に係るPFC回路1250、及びPFC回路1250のコンデンサ1255の両端子間に接続されたインバータ回路、例えばフルブリッジインバータ回路1260が設けられている。フルブリッジインバータ回路1260には、複数(ここでは4つ)のスイッチ素子1264a、1264b、1264c及び1264dが設けられている。
【0061】
二次側回路1262には、複数(ここでは3つ)のスイッチ素子1265a、1265b及び1265cが設けられている。
【0062】
本実施形態では、一次側回路1261を構成するPFC回路1250のスイッチ素子1251、並びにフルブリッジインバータ回路1260のスイッチ素子1264a、1264b、1264c及び1264dに、第2〜第9の実施形態のいずれかのHEMTが用いられている。一方、二次側回路1262のスイッチ素子1265a、1265b及び1265cには、シリコンを用いた通常のMIS型FET(電界効果トランジスタ)が用いられている。
【0063】
(第13の実施形態)
次に、第13の実施形態について説明する。第13の実施形態は、HEMTを備えた増幅器に関する。
図15は、第13の実施形態に係る増幅器を示す結線図である。
【0064】
増幅器には、ディジタル・プレディストーション回路1271、ミキサー1272a及び1272b、並びにパワーアンプ1273が設けられている。
【0065】
ディジタル・プレディストーション回路1271は、入力信号の非線形歪みを補償する。ミキサー1272aは、非線形歪みが補償された入力信号と交流信号とをミキシングする。パワーアンプ1273は、第2〜第9の実施形態のいずれかのHEMTを備えており、交流信号とミキシングされた入力信号を増幅する。なお、本実施形態では、例えば、スイッチの切り替えにより、出力側の信号をミキサー1272bで交流信号とミキシングしてディジタル・プレディストーション回路1271に送出できる。この増幅器は、高周波増幅器、高出力増幅器として使用することができる。
【0066】
基板の種類は、上面がN極性面のAlNの下地層が得られれば、特に限定されない。SiC基板を用いる場合、SiC基板のC極性面上にAlN層を形成することで、上面がN極性面の下地層が得られる。サファイア基板を用いる場合、サファイア基板の表面をアンモニアで窒化させ、この窒化した表面上にAlN層を形成することで、上面がN極性面の下地層が得られる。
【0067】
ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極の構造は上述の実施形態のものに限定されない。例えば、これらが単層から構成されていてもよい。また、これらの形成方法はリフトオフ法に限定されない。ゲート電極に、Ni及びAuの他にPd及び/又はPtが含まれていてもよい。
【0068】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0069】
(付記1)
AlNの下地層と、
前記下地層のN極性面上のAlNのバリア層と、
前記バリア層上のGaNのチャネル層と、
前記チャネル層上のAlGaNのキャップ層と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【0070】
(付記2)
前記チャネル層上方のソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を有することを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0071】
(付記3)
前記下地層はAlN基板であることを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
【0072】
(付記4)
前記チャネル層の厚さが20nm以下であることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0073】
(付記5)
前記キャップ層のAl組成は前記チャネル層から離間するほど高くなっていることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0074】
(付記6)
前記チャネル層に圧縮歪が生じていることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0075】
(付記7)
前記下地層と前記バリア層との間の、In
aAl
bGa
1-a-bN(0≦a≦0.05、0.60≦b<1.00)のバックバリア層を有することを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0076】
(付記8)
前記バックバリア層に圧縮歪が生じていることを特徴とする付記7に記載の半導体装置。
【0077】
(付記9)
前記バリア層はn型不純物を含むことを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0078】
(付記10)
付記1乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置を有することを特徴とする電源装置。
【0079】
(付記11)
付記1乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置を有することを特徴とする増幅器。
【0080】
(付記12)
AlNの下地層のN極性面上にAlNのバリア層を形成する工程と、
前記バリア層上にGaNのチャネル層を形成する工程と、
前記チャネル層上にAlGaNのキャップ層を形成する工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【0081】
(付記13)
前記チャネル層上方にソース電極、ドレイン電極及びゲート電極を形成する工程を有することを特徴とする付記12に記載の半導体装置の製造方法。
【0082】
(付記14)
前記下地層はAlN基板であることを特徴とする付記12又は13に記載の半導体装置の製造方法。
【0083】
(付記15)
前記チャネル層の厚さが20nm以下であることを特徴とする付記12乃至14のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0084】
(付記16)
前記キャップ層のAl組成を前記チャネル層から離間するほど高くすることを特徴とする付記12乃至15のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0085】
(付記17)
前記下地層と前記バリア層との間に、In
aAl
bGa
1-a-bN(0≦a≦0.05、0.60≦b<1.00)のバックバリア層を形成する工程を有することを特徴とする付記12乃至16のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【0086】
(付記18)
前記バリア層にn型不純物を含ませることを特徴とする付記12乃至17のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。