(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6940797
(24)【登録日】2021年9月7日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20210916BHJP
B60N 2/20 20060101ALI20210916BHJP
B60R 22/26 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
B60N2/68
B60N2/20
B60R22/26
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-101868(P2020-101868)
(22)【出願日】2020年6月11日
(62)【分割の表示】特願2016-150359(P2016-150359)の分割
【原出願日】2016年7月29日
(65)【公開番号】特開2020-164163(P2020-164163A)
(43)【公開日】2020年10月8日
【審査請求日】2020年7月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 眞幸
(72)【発明者】
【氏名】大竹 茂和
【審査官】
森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−136264(JP,A)
【文献】
特開2004−114792(JP,A)
【文献】
実開昭56−158352(JP,U)
【文献】
実開平04−096570(JP,U)
【文献】
米国特許第04316633(US,A)
【文献】
特許第3070393(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/90
B60R 22/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアに所定の範囲で前後に回動可能に取り付けられたシートバックフレームと、
前記シートバックフレームの前方への傾倒に応じて前方に移動するシートクッションフレームと、
前記フロアに取り付けられた基端と、シートベルトのタングプレートと結合可能なバックルが設けられた先端とを備え、前記バックルが前記基端に対して上方に位置する使用位置と、前記使用位置に対して前記バックルが前方に位置した収納位置との間で移動可能なバックル支持アームとを有し、
前記シートクッションフレームは、前後に延びる左右一対のサイドフレーム、左右の前記サイドフレームの前部間に掛け渡された前フレーム、及び左右の前記サイドフレームの後部間に掛け渡された後フレームを有し、
前記後フレームは、左右における中間部に前方に突出した屈曲部を有し、
前記バックル支持アームは、前記屈曲部と対向して配置され、
前記バックルは、前記バックル支持アームが収納位置にあるときに、その全体が、前記シートバックフレームの前方への傾倒に応じて前方に移動する前記シートクッションフレームの前記後フレームが有する前記屈曲部の内側に収納されることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記屈曲部は、前記後フレームを前方に向けて湾曲させることにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記屈曲部は、平面視で前方に突出したV字形に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記シートバックフレームに支持されるシートバックパッドをさらに有し、
前記バックルは、前記使用位置において、前記シートバックパッドの下端部の前方に位置し、前記屈曲部と前記シートバックパッドの前面とによって画定される空間内に配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記バックルは、前記使用位置において、その少なくとも一部が、前記シートバックパッドの下端部と当接していることを特徴とする請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記シートクッションフレームに支持され、前記屈曲部と対応する部分に後縁から前方に凹んだ凹部を有するシートクッションパッドをさらに有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記バックルは、前記収納位置において、その上端が前記シートクッションパッドの上面よりも下方に位置することを特徴とする請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記シートクッションフレームを構成するフレーム間に前記屈曲部を避けるようにして掛け渡され、前記シートクッションパッドを下方から支持する支持部材をさらに有することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記後フレームは、前記屈曲部の左右においてそれぞれ左右に延びる左部分及び右部分を有し、
前記シートクッションフレームは、左右に2人分の着座部を構成し、
前記左部分は一方の前記着座部を構成し、前記右部分は他方の前記着座部を構成し、前記屈曲部は2つの前記着座部の境界に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前後に延びて前記屈曲部と前記前フレームとに掛け渡された補強部材を有し、
前記補強部材の後端は、前記屈曲部における、前記バックル支持アームとの干渉を避けることができる位置に連結されていることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項11】
前記前フレームと前記後フレームとの間を左右に延びて左右の前記サイドフレームのそれぞれに掛け渡された中間フレームと、
前後に延びて前記屈曲部と前記中間フレームとに掛け渡された補強部材を有し、
前記補強部材の後端は、前記屈曲部における、前記バックル支持アームとの干渉を避けることができる位置に連結されていることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項12】
前記補強部材の後端は、前記屈曲部の頂部を避けた位置で前記屈曲部に連結されることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の乗物用シート。
【請求項13】
前記屈曲部は、シート左右方向における中央部を避けた位置に配置され、
前記補強部材の後端は、シート左右方向における前記中央部側の位置で前記屈曲部に連結されることを特徴とする請求項12に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に搭載される乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
2人分の着座部を有する車両のリアシートでは、シートクッションの後部中央部にシートベルトのタングプレートと結合可能なバックルを設ける必要がある。このようなリアシートにおいて、シートクッションの後部を左右に延びるフレームの中央部を前方に向けて湾曲させて凹部を形成すると共に、シートクッションのパッドの後部中央部に前方に延びる切り欠きを形成し、バックルを車両のフロアに結合するアームが凹部及び切り欠きを通過するように配置し、バックルが切り欠きを通してシートクッションの座面より上方に露出するように配置されたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3070393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係るシートは、バックルが常にシートクッションの座面より上方に維持される構成であるため、バックルが障害となってシートバックを前方に倒すことができないという課題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、前倒可能なシートバックを有する車両用シートにおいて、シートバックの前倒時に、
その障害とならないようにバックルを
収納できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、フロア(FL)に所定の範囲で前後に回動可能に取り付けられたシートバックフレーム(F2)と
、前記シートバックフレームの前方への傾倒に応じて前方に移動するシートクッションフレーム(F1)と、前記フロア
に取り付けられた基端と、シートベルトのタングプレートと結合可能なバックル(45)が設けられた先端とを備え、前記バックルが前記基端に対して上方に位置する使用位置と、前記使用位置に対して前記バックルが前方に位置した収納位置との間で
移動可能なバックル支持アーム(44)とを有する乗物用シート(S)であって、前記シートクッションフレームは、前後に延びる左右一対のサイドフレーム(11)、左右の前記サイドフレームの前部間に掛け渡された前フレーム(12)、及び左右の前記サイドフレームの後部間に掛け渡された後フレーム(13)を有し、前記後フレームは、左右における中間部に前方に突出した屈曲部(13A)を有し、前記バックル支持アームは、前記
屈曲部と対向して配置され、前記バックルは、前記バックル支持アームが収納位置にあるときに、前記シートバックフレームの前方への傾倒に応じて前方に移動する前記シートクッションフレームの前記後フレームが有する前記屈曲部の内側に収納されることを特徴とする。
【0007】
この態様によれば、
バックル支持アームが収納位置にあるときに、バックルを、シートバックフレームの前方への傾倒に応じて前方に移動するシートクッションフレームの後フレームが有する屈曲部の内側に収納することができる。
【0008】
また、上記の態様において、
前記屈曲部は、前記後フレームを前方に向けて湾曲させることにより形成されているとよい。
【0009】
この態様によれば、
屈曲部のサイズを小さくして、シートクッションの座面を広く確保することができる。
【0010】
また、上記の態様において、
前記屈曲部は、平面視で前方に突出したV字形に形成されているとよい。
【0011】
この態様によれば、
後フレームの構造が簡素になるので、屈曲部の形成が容易になると共に、フレーム剛性を向上させることができる。
【0012】
また、上記の態様において、
前記シートバックフレームに支持されるシートバックパッド(35)をさらに有し、前記バックルは、前記使用位置において、前記シートバックパッドの下端部の前方に位置し、前記屈曲部と前記シートバックパッドの前面とによって画定される空間内に配置されているとよい。
【0013】
この態様によれば、
バックル支持アームが使用位置にあるときに、バックルを、屈曲部とシートバックパッドの前面とによって画定される空間内に収納することができる。
【0014】
また、上記の態様において、
前記バックルは、前記使用位置において、その少なくとも一部が、前記シートバックパッドの下端部と当接しているとよい。
【0015】
この態様によれば、
バックル支持アームが使用位置にあるときに、バックルを、シートベルトのタングプレートと着脱し易い位置に維持することができる。
【0016】
また、上記の態様において、
前記シートクッションフレームに支持され、前記屈曲部と対応する部分に後縁から前方に凹んだ凹部(34A)を有するシートクッションパッド(34)をさらに有するとよい。
【0017】
この態様によれば、
シートクッションパッドに形成される凹部を小さくして、シートクッションの座面を広く確保することができる。
【0018】
また、上記の態様において、
前記バックルは、前記収納位置において、その上端が前記シートクッションパッドの上面よりも下方に位置するとよい。
【0019】
この態様によれば、
シートバックの前倒時に、収納位置にあるバックルがシートバックと干渉することがない。
【0020】
また、上記の態様において、
前記シートクッションフレームを構成するフレーム間に前記屈曲部を避けるようにして掛け渡され、前記シートクッションパッドを下方から支持する支持部材(17)をさらに有するとよい。また、この場合、前記支持部材は、シート左右方向において前記屈曲部と重なる位置に配置されるとよい。
【0021】
この態様によれば、
支持部材によって、シートクッションパッドを下方から支持することができる。また、支持部材を、シート左右方向において屈曲部と重なる位置に配置することにより、乗物用シートの着座者を安定して支持することができる。
【0022】
また、上記の態様において、
前記後フレームは、前記屈曲部の左右においてそれぞれ左右に延びる左部分(13B)及び右部分(13C)を有し、前記シートクッションフレームは、左右に2人分の着座部を構成し、前記左部分は一方の前記着座部を構成し、前記右部分は他方の前記着座部を構成し、前記屈曲部は2つの前記着座部の境界に配置されるとよい。
【0023】
この態様によれば、
2人分の着座部を有するシートにおいて、屈曲部が乗物用シートの着座者の臀部の下方からずれた位置に配置されるので、着座者が感じる違和感が抑制される。
【0024】
また、上記の態様において、
前後に延びて前記屈曲部と前記前フレームとに掛け渡された補強部材(16)を有し、前記補強部材の後端は、前記屈曲部における、前記バックル支持アームとの干渉を避けることができる位置に連結されているとよい。
【0025】
この態様によれば、
バックル支持アームとの干渉を避けながら、補強部材によって後フレームを補強することができる。
【0026】
また、上記の態様において、
前記前フレームと前記後フレームとの間を左右に延びて左右の前記サイドフレームのそれぞれに掛け渡された中間フレーム(14)と、前後に延びて前記屈曲部と前記中間フレームとに掛け渡された補強部材を有し、前記補強部材の後端は、前記屈曲部における、前記バックル支持アームとの干渉を避けることができる位置に連結されているとよい。
【0027】
この態様によれば、
中間フレームにより、シートクッションフレームの剛性が向上する。また、バックル支持アームとの干渉を避けながら、補強部材によって後フレームを補強することができる。
【0028】
また、上記の態様において、
前記補強部材の後端は、前記屈曲部の頂部を避けた位置で前記屈曲部に連結されるとよい。
【0029】
この態様によれば、
補強部材の後端を屈曲部に強固に連結させることができる。
【0030】
また、上記の態様において、
前記屈曲部は、シート左右方向における中央部を避けた位置に配置され、前記補強部材の後端は、シート左右方向における前記中央部側の位置で前記屈曲部に連結されるとよい。
【0031】
この態様によれば、
屈曲部が、シート左右方向における中央部を避けた位置に配置された場合に、補強部材によって後フレームをより強固に補強することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上の構成によれば、前倒可能なシートバックを有する車両用シートにおいて、シートバックの前倒時に、
その障害とならないようにバックル
を収納することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】第1実施形態に係る乗物用シートのフレームを左前方から見た斜視図
【
図5】乗物用シートの使用状態を示す断面図(
図1のA−A断面に対応)
【
図6】乗物用シートの使用状態と折り畳み状態との中間の状態を示す断面図(
図1のA−A断面に対応)
【
図7】乗物用シートの折り畳み状態を示す断面図(
図1のA−A断面に対応)
【
図8】バックル支持アームの斜視断面図(
図1のA−A断面に対応)
【
図9】第2実施形態に係るシートクッションフレームを示す平面図
【
図10】第3実施形態に係るシートクッションフレームを示す背面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明に係る乗物用シートを自動車のリアシート(2列目及び3列目を含む)に適用した実施形態を説明する。以下の説明では、乗物用シートに着座した乗員を基準にして左右を定める。
【0035】
(第1実施形態)
図1及び
図2に示すように、乗物用シートSは、シートクッションフレームF1を含むシートクッションS1と、シートバックフレームF2を含むシートバックS2とを有する。シートバックフレームF2の下端は、リアリンク1を介してシートクッションフレームF1の後端に前後に回動可能に取り付けられている。シートクッションフレームF1の前端は、左右一対のフロントリンク2によって、フロアFLに設けられた前ブラケット3に支持されている。各フロントリンク2は、左右に延びる軸線を中心として前後に回動可能に前ブラケット3に支持されると共に、軸線の下方に位置し左右に延びる軸線を中心として前後に回動可能にシートクッションフレームF1に支持されている。シートバックフレームF2の下部は、フロアFLに設けられた後ブラケット4に、左右に延びる支持軸線4A(
図5参照)を中心として前後に回動可能に支持されている。
【0036】
シートクッションフレームF1に、シートクッションパッド34及び表皮を装着することにより、シートクッションS1が形成される。シートバックフレームF2に、シートバックパッド35及び表皮を装着することにより、シートバックS2が形成される。シートクッションフレームF1及びシートバックフレームF2は、金属の板状部材やパイプ材、棒状部材等を組み合わせて形成されている。
【0037】
図3に示すように、シートクッションフレームF1は、前後に延びる左右一対のサイドフレーム11と、左右のサイドフレーム11の前部間に掛け渡された前フレーム12と、左右のサイドフレーム11の後部間に掛け渡された後フレーム13とを有し、四角形の枠形に形成されている。前フレーム12には、左右のフロントリンク2が回動可能に結合されている。また、シートクッションフレームF1は、前フレーム12と後フレーム13との間を左右に延びて左右のサイドフレーム11にそれぞれに掛け渡された中間フレーム14を有する。左右のサイドフレーム11と、前フレーム12とは、1本の断面が円形のパイプ材を折り曲げることによって形成されている。中間フレーム14は、断面が円形のパイプ材から形成されている。
【0038】
後フレーム13は、左右における中間部に、屈曲して前方に突出した屈曲部13Aを有する。また、後フレーム13は、屈曲部13Aの左右においてそれぞれ左右に延びる左部分13B及び右部分13Cを有する。
【0039】
左部分13B及び右部分13Cは、直線状に形成されている。左部分13Bの左端は左側のサイドフレーム11に結合されており、右部分13Cの右端は右側のサイドフレーム11に結合されている。
図4に示すように、左部分13B及び右部分13Cは、右部分13Cが左部分13Bよりも高い位置になるように互いに段違いに平行に配置されている。なお、本実施形態では、左側のサイドフレーム11は右側のサイドフレーム11よりも高い位置に配置されており、左部分13Bの左端部は左側のサイドフレーム11に結合すべく上方に屈曲している。
【0040】
屈曲部13Aは、平面視で前方に突出したV字形に形成されている。屈曲部13Aの左端は、左部分13Bの右端に結合されており、屈曲部13Aの右端は、右部分13Cの左端に結合されている。また、
図4に示すように、屈曲部13Aは、左端から右端に向けて次第に高くなるように上方に傾斜している。
【0041】
屈曲部13A、左部分13B、及び右部分13Cは、断面が円形の一本の連続したパイプ材によって構成されており、屈曲部13Aは、前記パイプ材を折り曲げ加工することにより形成されている。また、後フレーム13は、サイドフレーム11、前フレーム12及び中間フレーム14を形成するパイプ材よりもパイプ径が小さいパイプ材から形成されている。また、後フレーム13は、前端から後端に向けて次第に低くなるように下方に傾斜する座面を形成すべく、前フレーム12及び中間フレーム14よりも下方に配置されている。
【0042】
図4に示すように、後フレーム13には、左右に延び、左端が左部分13Bに結合されると共に右端が右部分13Cに結合された後フレーム補強部材15が結合されている。後フレーム補強部材15は、屈曲部13Aに対応する中央部15Aが下方に四角形状に屈曲した形状となっている。後フレーム補強部材15は、金属棒を屈曲させることによって形成されており、後フレーム13の左部分13B及び右部分13Cに溶接により結合されている。
【0043】
図3に示すように、屈曲部13Aと中間フレーム14との間には、前後に直線状に延びる補強部材16が掛け渡されている。補強部材16は、前端が中間フレーム14に結合されると共に後端が屈曲部13Aに結合されている。補強部材16は、金属棒によって形成されており、中間フレーム14及び屈曲部13Aに溶接により結合されている。
【0044】
左部分13Bと中間フレーム14との間、及び右部分13Cと中間フレーム14との間には、前後に延びる複数のS形ばね17が掛け渡されている。S形ばね17は、左右に波形に屈曲した形状を有しており、シートクッションS1を形成するシートクッションパッド34を下方から支持する。
【0045】
シートバックフレームF2は、上下に延びる左右一対のサイドフレーム21と、左右のサイドフレーム21の上部間に掛け渡された上フレーム22と、左右のサイドフレーム21の下端の下方に位置し、上フレーム22と平行に左右に延びる下フレーム23とを有し、略四角形の枠形に形成されている。また、シートバックフレームF2は、左右のサイドフレーム21間を上下に延びて上フレーム22と下フレーム23とにそれぞれに掛け渡された中間フレーム24を有する。左右のサイドフレーム21と、上フレーム22とは、1本の断面が円形のパイプ材を折り曲げることによって形成されている。下フレーム23及び中間フレーム24は、断面が円形のパイプ材から形成されている。サイドフレーム21、上フレーム22、下フレーム23、及び中間フレーム24の後部には、平板状のパンフレーム25が結合されている。
【0046】
シートバックフレームF2は、左右のサイドフレーム21の下端において後ブラケット4に回動可能に結合されている。左右のリアリンク1の後端は、左右に延びる軸線を中心として回動可能にシートバックフレームF2の左右のサイドフレーム21の下部に結合されている。また、左右のリアリンク1の前端は、左右に延びる軸線を中心として回動可能に左右のシートクッションフレームF1のサイドフレーム11の後部に結合されている。
【0047】
本実施形態に係る乗物用シートSは、
図1に示すような、左側席31、中間席32、及び右側席33を左右一列に有する自動車のリアシート(後部座席)における、左側席31と中間席32との2つの席を構成する。すなわち、シートクッションフレームF1は左側席31及び中間席32の着座部を構成し、シートバックフレームF2は、左側席31及び中間席32の背もたれ部を構成する。右側席33は、左側席31及び中間席32とは別体に形成されている。
【0048】
左側席31及び中間席32のシートクッションS1はシートクッションパッド34により形成され、左側席31及び中間席32のシートバックS2は、シートバックパッド35により形成されている。シートクッションパッド34の後部には、左右における中間部に、後縁から前方に凹んだ凹部34Aが形成されている。凹部34Aは、後フレーム13の屈曲部13Aと対応する部分に形成されている。すなわち、シートクッションパッド34の後縁部は、後フレーム13の形状と一致するように形成されている。後フレーム13の屈曲部13A及びシートクッションパッド34の凹部34Aによって、シートクッションS1の後部中央には凹部36が形成されている。また、シートクッションS1の後部の右端には、後縁から前方に凹んだ凹部37が形成されている。
【0049】
シートクッションフレームF1の後フレーム13において、左部分13Bは左側席31の後部を構成し、右部分13Cは中間席32の後部を構成し、屈曲部13Aは、左側席31と中間席32との境界に配置される。
図4に示したように、左部分13Bは右部分13Cに対して下方に配置され、シートクッションパッド34における左部分13B上に位置する部分は、中間席32上に位置する部分よりも厚く形成されている。これにより、中間席32よりも使用される頻度が高い左側席31の座り心地をよくすることができる。また、屈曲部13Aは、着座者の臀部の下方からずれた位置に配置されるので、着座者が感じる違和感が抑制される。
【0050】
シートバックS2の背面には、車両の車室の側壁を構成するサイドパネルに設けられたストライカ(図示せず)に係脱可能なラッチ5が取り付けられている。ラッチ5がストライカと係合することにより、シートバックS2が起立した状態に維持される。このとき、左右のリアリンク1によってシートバックS2に結合されたシートクッションS1は、シートバックS2の起立位置に応じた所定の着座可能位置にある。この状態を、乗物用シートSの使用状態という。ラッチ5とストライカとの係合が解除された状態では、シートバックS2は前方に向けて回動可能になる。シートバックS2が前方に向けて回動すると、左右のリアリンク1によってシートバックS2に結合されたシートクッションS1は、前方かつ下方に移動する(
図6参照)。シートバックS2がシートクッションS1の上面に重なるように折り畳まれた状態を乗物用シートの折り畳み状態という(
図7参照)。
【0051】
左側席31のシートベルト用のバックル装置41の少なくとも一部である上部は、シートクッションS1の凹部36内に配置されている。すなわち、バックル装置41の上部は、後フレーム13の屈曲部13Aの内側を通過し、シートクッションパッド34の凹部34Aの内側に配置されている。中間席32のシートベルト用のバックル装置42と、右側席33のシートベルト用のバックル装置43とは、シートクッションS1の凹部37内に配置されている。
【0052】
図8に示すように、バックル装置41は、バックル支持アーム44と、バックル支持アーム44の先端に固定されたバックル45とを有する。バックル45は、シートベルトのタングプレートと着脱可能に構成されている。バックル支持アーム44の基端は、フロアFLに固定されたブラケット46により前後に回動可能に支持されている。これにより、バックル支持アーム44は、バックル45がバックル支持アーム44の基端に対して上方に位置する使用位置と、使用位置に対してバックル45が前方に位置した収納位置との間で前後に回動することができる。ブラケット46とバックル支持アーム44との間には付勢装置47が取り付けられている。付勢装置47は、例えば捩りコイルばねであり、ブラケット46に対して、バックル支持アーム44を使用位置に向けて付勢している。
【0053】
バックル支持アーム44は、シートクッションS1の凹部36に配置されている。すなわち、バックル支持アーム44は、後フレーム13の屈曲部13Aの内側を通過し、シートクッションパッド34の凹部34Aの内側に配置されている。
【0054】
乗物用シートSが使用状態のとき、バックル支持アーム44は付勢装置47に付勢されて使用位置にあり、バックル45の少なくとも一部はシートクッションS1(シートクッションパッド34)の上面より上方に位置する(
図5参照)。このとき、バックル45は、シートバックS2の下端部の前方に位置し、凹部36とシートバックS2の前面によって画定される空間内に配置されている。乗物用シートSが使用状態のとき、バックル45及びバックル支持アーム44を含むバックル装置41の回動軌跡内に、後フレーム13の屈曲部13A及びシートクッションパッド34が位置し、バックル支持アーム44は収納位置に移動することができない。乗物用シートSが折り畳み状態のとき、シートクッションS1が使用状態のときの位置に対して前方に移動するため、バックル45及びバックル支持アーム44を含むバックル装置41の回動軌跡内に、後フレーム13の屈曲部13A及びシートクッションパッド34が位置せず、バックル支持アーム44は収納位置に移動することができる。バックル45は、バックル支持アーム44が収納位置にあるときは、前傾した状態になり、その上端がシートクッションS1(シートクッションパッド34)の上面よりも下方に位置する(
図7参照)。
【0055】
乗物用シートSを使用状態から折り畳み状態にするときは、まず、図示しないストライカとラッチ5との係合を解除し、
図6に示すように、シートバックS2の上側を前側に押す。シートバックS2が前方に回動すると、リアリンク1によってシートバックS2に連結されたシートクッションS1がフロアFLに対して前方かつ下方に移動する。
【0056】
乗物用シートSが使用状態から折り畳み状態に変化するとき、シートクッションS1が前方に移動することによって後フレーム13の屈曲部13A及びシートクッションパッド34がバックル装置41の回動軌跡外に離脱し、バックル支持アーム44が回動可能になる。そして、バックル支持アーム44はシートバックS2に押され、付勢装置47の付勢力に抗して使用位置から収納位置に回動する。これにより、バックル45は、起立した状態(
図5)から前傾した状態(
図7)に変化する。
図7に示すように、バックル45は前傾した状態にあるときは、その上端がシートクッションパッド34の上面よりも下方に位置するため、バックル45がシートバックS2の回動を妨げることがない。このように、屈曲部13A及び凹部34A(36)は、乗物用シートSが折り畳み状態にあり、バックル支持アーム44が収納位置にあるときに、バックル45との干渉を避け得る大きさに形成されている。
【0057】
また、シートクッションS1が前方に移動したときのみ、バックル支持アーム44が収納位置を取り得る構成としたため、シートクッションパッド34に形成される凹部34Aを小さくして、シートクッションS1の座面を広く確保することができる。また、後フレーム13の屈曲部13Aの屈曲量を最小限にすることができる。
【0058】
また、シートクッションフレームF1の後フレーム13の屈曲部13Aと中間フレーム14との間には、補強部材16が掛け渡されているので、後フレーム13が屈曲部13Aを有する場合でも、後フレーム13の剛性が維持される。また、後フレーム13には、後フレーム補強部材15が結合されているので、バックル支持アーム44との干渉を避けながら、後フレーム13を補強することができる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る乗物用シートSの第2実施形態について説明する。上記の第1実施形態では、補強部材16は屈曲部13Aと中間フレーム14の間に掛け渡したが、
図9に示すように、補強部材16は屈曲部13Aと前フレーム12との間に掛け渡してもよい。この場合でも、補強部材16を屈曲部13Aと中間フレーム14の間に掛け渡した場合と同様の効果を得ることができる。すなわち、中間フレーム14により、シートクッションフレームF1の剛性が向上する。また、後フレーム13が屈曲部13Aを有する場合でも、補強部材16により、シートクッションフレームF1の剛性が維持される。
【0060】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る乗物用シートSの第3実施形態について説明する。上記の第1実施形態では、右部分13Cは左部分13Bよりも高い位置に配置したが、
図10に示すように、左部分13B及び右部分13Cを同じ高さの位置に配置し、右部分13Cの上面にブラケット18を設けることにより、右部分13Cの上面の位置が左部分13Bの上面の位置よりも高くなるようにしてもよい。この場合でも、右部分13Cは左部分13Bよりも高い位置に配置した場合と同様の効果を得ることができる。すなわち、中間席32よりも使用される頻度が高い左側席31において、シートクッションパッド34の厚さを厚くすることができる。
【0061】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、上記の実施形態では、シートクッションS1が前方に移動することによって初めてバックル支持アーム44が収納位置に回動可能になる構成としたが、他の実施形態では乗物用シートSが使用状態のときにもバックル支持アーム44が収納位置に回動可能となるように、バックル支持アーム44が収納位置にあるときに、バックル45との干渉を避け得る大きさに形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
11 :サイドフレーム
12 :前フレーム
13 :後フレーム
13A :屈曲部
13B :左部分
13C :右部分
14 :中間フレーム
15 :後フレーム補強部材
16 :補強部材
31 :左側席
32 :中間席
33 :右側席
34 :シートクッションパッド
34A :凹部
36 :凹部
41 :バックル装置
44 :バックル支持アーム
45 :バックル
47 :付勢装置
FL :フロア
F1 :シートクッションフレーム
F2 :シートバックフレーム
S :乗物用シート
S1 :シートクッション
S2 :シートバック