特許第6940901号(P6940901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6940901音圧信号出力装置、音圧信号出力方法及び音圧信号出力用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6940901
(24)【登録日】2021年9月7日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】音圧信号出力装置、音圧信号出力方法及び音圧信号出力用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/04 20060101AFI20210916BHJP
【FI】
   G10K15/04 302J
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-513037(P2020-513037)
(86)(22)【出願日】2018年4月13日
(86)【国際出願番号】JP2018015539
(87)【国際公開番号】WO2019198230
(87)【国際公開日】20191017
【審査請求日】2020年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】520014291
【氏名又は名称】サウンドデザインラボ合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100173510
【弁理士】
【氏名又は名称】美川 公司
(72)【発明者】
【氏名】前田 修
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−256527(JP,A)
【文献】 特開2007−256838(JP,A)
【文献】 特開2016−057448(JP,A)
【文献】 特開2007−258980(JP,A)
【文献】 前田 修,"二輪車サウンドデザインツールと新型サウンドシミュレーター",ヤマハ発動機技報,日本,ヤマハ発動機株式会社,2005年,No.39
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃式且つ多気筒のエンジンの各気筒それぞれにおける一回の燃焼サイクルの間に当該各気筒からそれぞれ生じる音に相当する音データである単発音データをそれぞれ取得する第1取得手段と、
前記エンジンの回転数に対応した周波数の次数音に相当する音データである次数音データであって各前記気筒のそれぞれに対応した次数音データを取得する第2取得手段と、
前記エンジンにおける燃焼により、当該エンジンを構成する構造体の材質又は形状の少なくともいずれか一方に対応して発生するランダム音に相当する音データであるランダム音データを取得する第3取得手段と、
各前記単発音データの音圧信号、各前記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号を合成して前記エンジンの音の音圧信号を出力する合成手段であって、各前記気筒における燃焼間隔に対応させて各前記単発音データの音圧信号及び各前記次数音データの音圧信号を遅延させつつ、各前記単発音データの音圧信号、各前記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号を合成して前記エンジンの音の音圧信号を出力する合成手段と、
を備えることを特徴とする音圧信号出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音圧信号出力装置において、
前記単発音データの音圧信号又は前記次数音データの音圧信号の少なくともいずれか一方における振幅倍率が前記気筒ごとに異なっていることを特徴とする音圧信号出力装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の音圧信号出力装置において、
一の前記単発音データが、当該単発音データに対応する前記気筒における複数の異なる回転数での前記燃焼サイクルの間に生じる音にそれぞれ対応した複数の回転数別単発音データにより構成されていることを特徴とする音圧信号出力装置。
【請求項4】
請求項3に記載の音圧信号出力装置において、
前記合成手段は、複数の前記単発音データの音圧信号を、前記回転数に基づいてクロスフェードさせつつ、前記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号と合成することを特徴とする音圧信号出力装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の音圧信号出力装置において、
前記次数音データは、加速時の次数音データと減速時の次数音データとで一つの当該次数音データが形成されていることを特徴とする音圧信号出力装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の音圧信号出力装置において、
前記合成手段は、前記単発音データの音圧信号、前記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号のそれぞれを、前記エンジンによる車両の走行に対応したアクセル開度及び回転数に基づいて制御して合成することを特徴とする音圧信号出力装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の音圧信号出力装置において、
前記合成手段は、前記エンジンに対応するアイドリング音に相当するアイドリング音データの音圧信号、当該エンジンに対応するスタータ音に相当するスタータ音データの音圧信号、当該エンジンに対応するギア音に相当するギア音データの音圧信号、当該エンジンに対応するシフト音に相当するシフト音データの音圧信号、当該エンジンに対応するリミッタ音に相当するリミッタ音データの音圧信号又は当該エンジンに対応するアフターファイア音に相当するアフターファイア音データの音圧信号の少なくともいずれかを更に合成して前記エンジン音の音圧信号を出力することを特徴とする音圧信号出力装置。
【請求項8】
内燃式且つ多気筒のエンジンの音の音圧信号をコンピュータにより合成して出力する音声信号出力方法において、
前記エンジンの各気筒それぞれにおける一回の燃焼サイクルの間に当該各気筒からそれぞれ生じる音に相当する音データである単発音データをそれぞれ取得するステップと、
前記エンジンの回転数に対応した周波数の次数音に相当する音データである次数音データであって各前記気筒のそれぞれに対応した次数音データを取得するステップと、
前記エンジンにおける燃焼により、当該エンジンを構成する構造体の材質又は形状の少なくともいずれか一方に対応して発生するランダム音に相当する音データであるランダム音データを取得するステップと、
各前記単発音データの音圧信号、各前記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号を合成して前記エンジンの音の音圧信号を出力するステップであって、各前記気筒における燃焼間隔に対応させて各前記単発音データの音圧信号及び各前記次数音データの音圧信号を遅延させつつ、各前記単発音データの音圧信号、各前記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号を合成して前記エンジンの音の音圧信号を出力するステップと、
を含むことを特徴とする音圧信号出力方法。
【請求項9】
コンピュータに、
内燃式且つ多気筒のエンジンの各気筒それぞれにおける一回の燃焼サイクルの間に当該各気筒からそれぞれ生じる音に相当する音データである単発音データをそれぞれ取得するステップと、
前記エンジンの回転数に対応した周波数の次数音に相当する音データである次数音データであって各前記気筒のそれぞれに対応した次数音データを取得するステップと、
前記エンジンにおける燃焼により、当該エンジンを構成する構造体の材質又は形状の少なくともいずれか一方に対応して発生するランダム音に相当する音データであるランダム音データを取得するステップと、
各前記単発音データの音圧信号、各前記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号を合成して前記エンジンの音の音圧信号を出力するステップであって、各前記気筒における燃焼間隔に対応させて各前記単発音データの音圧信号及び各前記次数音データの音圧信号を遅延させつつ、各前記単発音データの音圧信号、各前記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号を合成して前記エンジンの音の音圧信号を出力するステップと、
を実行させることを特徴とするエンジン音の音圧信号出力用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音圧信号出力装置、音圧信号出力方法及び音圧信号出力用プログラムの技術分野に属する。より詳細には、内燃式のエンジンから発生する音に相当するエンジン音の音圧信号を合成して出力する音圧信号出力装置及び音圧信号出力方法並びに当該音圧信号出力装置用のプログラムの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年のシミュレータやコンピュータゲームにおいては、車両の走行に伴って発生するエンジン音を、実際の車両を走行させることなく(即ち擬似的に)出力させることが行われている。なお、以下の説明では、上記シミュレータやコンピュータゲームを、単に「シミュレータ等」と称する。このような擬似的なエンジン音の出力については、従来は、実際の車両の走行により発生したエンジン音を録音し、その録音データを、シミュレータ等の内容に応じて加工して出力させることが行われていた。しかしながら、実際のエンジン音を録音した録音データを加工することでは、シミュレータ等の内容に合わせることにも限界があり、結果的に臨場感やリアルタイム性に欠けるという問題点があった。そこで、従来では、例えば下記特許文献1及び下記特許文献2に記載されている発明のように、エンジンの一つの気筒における一回の燃焼サイクルの間に当該気筒から生じる音を、そのエンジンの気筒数や回転数に応じて繰り返して再生することで、所望されるエンジン音を合成して出力することが行われていた。なお以下の説明では、上記一つの気筒における一回の燃焼サイクルの間に当該気筒から生じる音を、「単発音」と称する。より具体的に、これらの特許文献に開示されている技術では、エンジンの回転数とアクセルの開度(換言すれば、エンジンに対する負荷の度合い)に応じた複数種類の単発音の音圧信号を予め用意し、これらを上記のようにエンジンの気筒数や回転数に応じて繰り返して再生し、これらを合成して出力する構成とされている。なお以下の説明において、エンジンの回転数を、適宜「回転数」と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4282786号公報
【特許文献2】特許第4079518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記各特許文献に開示されている技術では、単発音の音圧信号を種々の条件で加工して合成する必要があるため、当該合成を行う装置の処理負荷が大きくなるという問題点があった。また、エンジンの仕様(例えば、燃焼(爆発)間隔等)の変更に迅速に対応することができないという問題点もあった。
【0005】
そこで本発明は、上記の各問題点に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、種々の仕様のエンジンについて、実物のエンジンに近いエンジン音の音圧信号を低負荷且つリアルタイムに出力することが可能な音圧信号出力装置及び音圧信号出力並びに当該音圧信号出力装置用のプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、内燃式且つ多気筒のエンジンの気筒それぞれにおける一回の燃焼サイクルの間に当該気筒からそれぞれ生じる音に相当する音データである単発音データをそれぞれ取得する第1取得手段と、前記エンジンの回転数に対応した周波数の次数音に相当する音データである次数音データであって各前記気筒のそれぞれに対応した次数音データを取得する第2取得手段と、前記エンジンにおける燃焼により、当該エンジンを構成する構造体の材質又は形状の少なくともいずれか一方に対応して発生するランダム音に相当する音データであるランダム音データを取得する第3取得手段と、記単発音データの音圧信号、記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号を合成して前記エンジンの音の音圧信号を出力する合成手段であって、各前記気筒における燃焼間隔に対応させて各前記単発音データの音圧信号及び各前記次数音データの音圧信号を遅延させつつ、各前記単発音データの音圧信号、各前記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号を合成して前記エンジンの音の音圧信号を出力する合成手段と、を備える。
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項に記載の発明は、内燃式且つ多気筒のエンジンの音の音圧信号をコンピュータにより合成して出力する音声信号出力方法において、前記エンジンの気筒それぞれにおける一回の燃焼サイクルの間に当該気筒からそれぞれ生じる音に相当する音データである単発音データをそれぞれ取得するステップと、前記エンジンの回転数に対応した周波数の次数音に相当する音データである次数音データであって各前記気筒のそれぞれに対応した次数音データを取得するステップと、前記エンジンにおける燃焼により、当該エンジンを構成する構造体の材質又は形状の少なくともいずれか一方に対応して発生するランダム音に相当する音データであるランダム音データを取得するステップと、記単発音データの音圧信号、記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号を合成して前記エンジンの音の音圧信号を出力するステップであって、各前記気筒における燃焼間隔に対応させて各前記単発音データの音圧信号及び各前記次数音データの音圧信号を遅延させつつ、各前記単発音データの音圧信号、各前記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号を合成して前記エンジンの音の音圧信号を出力するステップと、を含む。
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項に記載の発明は、コンピュータに、内燃式且つ多気筒のエンジンの気筒それぞれにおける一回の燃焼サイクルの間に当該気筒からそれぞれ生じる音に相当する音データである単発音データをそれぞれ取得するステップと、前記エンジンの回転数に対応した周波数の次数音に相当する音データである次数音データであって各前記気筒のそれぞれに対応した次数音データを取得するステップと、前記エンジンにおける燃焼により、当該エンジンを構成する構造体の材質又は形状の少なくともいずれか一方に対応して発生するランダム音に相当する音データであるランダム音データを取得するステップと、記単発音データの音圧信号、記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号を合成して前記エンジンの音の音圧信号を出力するステップであって、各前記気筒における燃焼間隔に対応させて各前記単発音データの音圧信号及び各前記次数音データの音圧信号を遅延させつつ、各前記単発音データの音圧信号、各前記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号を合成して前記エンジンの音の音圧信号を出力するステップと、を実行させる。
【0009】
請求項1、請求項又は請求項のいずれか一項に記載の発明によれば、エンジンの仕様変更にも柔軟に対応しつつ、実物のエンジンにより近いエンジン音の音圧信号を、低負荷且つリアルタイムに合成して出力することができる。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の音圧信号出力装置において、前記単発音データの音圧信号又は前記次数音データの音圧信号の少なくともいずれか一方における振幅倍率が前記気筒ごとに異なっているように構成される。
【0013】
この発明によれば、更に臨場感のあるエンジン音を発生させるためのエンジン音データの音圧信号を合成して出力することができる。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項1又は請求項に記載の音圧信号出力装置において、一の前記単発音データが、当該単発音データに対応する前記気筒における複数の異なる回転数での前記燃焼サイクルの間に生じる音にそれぞれ対応した複数の回転数別単発音データにより構成されている。
【0015】
この発明によれば、より臨場感のあるエンジン音を発生させるためのエンジン音データの音圧信号を合成して出力することができる。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の音圧信号出力装置において、前記合成手段は、複数の前記単発音データの音圧信号を、前記回転数に基づいてクロスフェードさせつつ、前記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号と合成するように構成される。
【0017】
この発明によれば、より臨場感のあるエンジン音を発生させるためのエンジン音の音圧信号を合成して出力することができる。
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の音圧信号出力装置において、前記次数音データは、加速時の次数音データと減速時の次数音データとで一つの当該次数音データが形成されている。
【0019】
この発明によれば、より臨場感のあるエンジン音を発生させるためのエンジン音の音圧信号を合成して出力することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の音圧信号出力装置において、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の音圧信号出力装置において、前記合成手段は、前記単発音データの音圧信号、前記次数音データの音圧信号及び前記ランダム音データの音圧信号のそれぞれを、前記エンジンによる車両の走行に対応したアクセル開度及び回転数に基づいて制御して合成するように構成される。
【0021】
この発明によれば、より臨場感のあるエンジン音を発生させるためのエンジン音の音圧信号を合成して出力することができる。
【0022】
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の音圧信号出力装置において、前記合成手段は、前記エンジンに対応するアイドリング音に相当するアイドリング音データの音圧信号、当該エンジンに対応するスタータ音に相当するスタータ音データの音圧信号、当該エンジンに対応するギア音に相当するギア音データの音圧信号、当該エンジンに対応するシフト音に相当するシフト音データの音圧信号、当該エンジンに対応するリミッタ音に相当するリミッタ音データの音圧信号又は当該エンジンに対応するアフターファイア音に相当するアフターファイア音データの音圧信号の少なくともいずれかを更に合成して前記エンジン音の音圧信号を出力するように構成される。
【0023】
この発明によれば、より臨場感のあるエンジン音を発生させるためのエンジン音の音圧信号を合成して出力することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、エンジンの仕様変更にも柔軟に対応しつつ、実物のエンジンにより近いエンジン音の音圧信号を、低負荷且つリアルタイムに合成して出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態の音圧信号出力装置の概要構成を示すブロック図等であり、(a)は当該ブロック図であり、(b)は当該音圧信号出力装置における音声信号出力処理の概要を説明する図である。
図2】第1実施形態の回転数別単発音音圧信号の波形を例示する図であり、(a)は第1実施形態の低回転単発音音圧信号の波形を例示する図であり、(b)は第1実施形態の高回転単発音音圧信号の波形を例示する図である。
図3】第1実施形態の音圧信号出力処理を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態の音圧信号出力処理におけるアイドリング再生処理を示す図であり、(a)は当該アイドリング再生処理におけるアクセル開度と音圧増幅率との関係を例示する図であり、(b)は当該アイドリング再生処理における回転数と音圧増幅率との関係を例示する図である。
図5】第1実施形態の音圧信号出力処理における単発音ループ再生処理を示す図であり、(a)は当該単発音ループ再生処理の波形を例示する図であり、(b)は当該単発音ループ再生処理におけるアクセル開度と音圧増幅率との関係を例示する図(i)であり、(c)は当該単発音ループ再生処理におけるアクセル開度と音圧増幅率との関係を例示する図(ii)であり、(d)は当該単発音ループ再生処理における単発音の回転数と音圧増幅率との関係を例示する図(i)であり、(e)は当該単発音ループ再生処理における単発音の回転数と音圧増幅率との関係を例示する図(ii)である。
図6】第1実施形態の音圧信号出力処理における単発音による複数気筒音再生処理の波形を例示する図である。
図7】第1実施形態の音圧信号出力処理における次数音波形生成処理を示す図(I)であり、(a)は当該次数音波形生成処理における次数と音圧係数との関係を例示する図であり、(b)は当該次数音波形生成処理の波形を例示する図である。
図8】第1実施形態の音圧信号出力処理における次数音波形生成処理を示す図(II)であり、(a)は当該次数音波形生成処理におけるアクセル開度と音圧増幅率との関係を例示する図であり、(b)は当該次数音波形生成処理における回転数と音圧増幅率との関係を例示する図である。
図9】第1実施形態の音圧信号出力処理における次数音による複数気筒音生成処理の波形を例示する図である。
図10】第1実施形態の音圧信号出力処理におけるランダム音再生処理を示す図であり、(a)は当該ランダム音再生処理におけるアクセル開度と音圧増幅率との関係を例示する図であり、(b)は当該ランダム音再生処理における回転数と音圧増幅率との関係を例示する図である。
図11】第1実施形態の音圧信号出力処理における単発音等合成処理の波形を例示する図である。
図12】第2実施形態の音圧信号出力処理を示すフローチャートである。
図13】第2実施形態の音圧信号出力処理における単気筒音生成処理の波形を例示する図である。
図14】第2実施形態の音圧信号出力処理における遅延による複数気筒音生成処理の波形を例示する図である。
図15】第2実施形態の音圧信号出力処理における複数気筒音の音圧信号とランダム音の音圧信号との合成処理の波形を例示する図である。
【発明を実施するため形態】
【0026】
次に、本発明を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、車両に搭載されている内燃式のエンジンから発生する音の音圧信号を合成して出力する場合に本発明を適用した実施形態である。なお上記車両には、四輪車や二輪車等の車両が含まれる。
【0027】
(I)第1実施形態
初めに、本発明に係る第1実施形態について、図1乃至図11を用いて説明する。なお、図1は第1実施形態の音圧信号出力装置の概要構成を示すブロック図等であり、図2は第1実施形態の回転数別単発音音圧信号の波形を例示する図であり、図3は第1実施形態の音圧信号出力処理を示すフローチャートであり、図4は当該音圧信号出力処理におけるアイドリング再生処理を示す図である。また、図5は当該音圧信号出力処理における単発音ループ再生処理を示す図であり、図6は当該音圧信号出力処理における単発音による複数気筒音再生処理の波形を例示する図であり、図7及び図8は当該音圧信号出力処理における次数音波形生成処理を示す図である。更に、図9は当該音圧信号出力処理における次数音による複数気筒音生成処理の波形を例示する図であり、図10は当該音圧信号出力処理におけるランダム音再生処理を示す図であり、図11は当該音圧信号出力処理における単発音等合成処理の波形を例示する図である。
【0028】
図1(a)に示すように、第1実施形態の音圧信号出力装置Sは、HDD(Hard Disc Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記録媒体に記録されているデータベースDBと、パーソナルコンピュータ又はいわゆるスマートフォン等により実現される処理装置10と、により構成されている。また、処理装置10は、CPU、ROM(Read-0nly Memory)及びRAM(Random-Access Memory)等からなる処理部11と、インターフェース12と、タッチパネル又はキーボード及びマウス等からなる操作部13と、液晶ディスプレイ等からなる表示部14と、スピーカ15と、により構成されている。更に処理部11は、複数気筒音生成部110と、合成部111と、を備えている。そして、上記処理部11の複数気筒音生成部110及び合成部111、インターフェース12、操作部13、表示部14並びにスピーカ15は、バス16を介してデータ又は情報の授受が可能に接続されている。ここで、上記複数気筒音生成部110及び上記合成部111は、処理部11を構成するCPU等のハードウェアロジック回路により実現されるものでもよいし、後述する第1実施形態の音圧信号出力処理に相当するプログラムを処理部11が読み出して実行することによりソフトウェア的に実現されるものでもよい。更に、上記インターフェース12が本発明の「第1取得手段」の一例、「第2取得手段」の一例及び「第3取得手段」の一例にそれぞれ相当し、上記複数気筒音生成部110及び合成部111が本発明の「合成手段」の一例に相当する。
【0029】
以上の構成において、データベースDBには、第1実施形態の音波形データ1と、第1実施形態の音制御データ2と、が不揮発性に記録されている。
【0030】
ここで、第1実施形態の音圧信号出力装置Sにおいて実行される、第1実施形態の音圧信号出力処理の概要(原理)について、図1(b)を用いて説明する。
【0031】
図1(b)に示すように、データベースDBに記録されている音波形データ1には、単発音データ1Aと、ランダム音データ1Bと、が含まれている。またデータベースDBに記録されている音制御データ2には、次数音制御データ2Aが含まれている。そして、第1実施形態の音圧信号出力処理では、単発音データ1Aの音圧信号と、次数音制御データ2Aを用いて合成された次数音データの音圧信号と、ランダム音データ1Bの音圧信号と、を用いて、対応するエンジンの音の音圧信号を合成して出力する。このとき、後述する付加的な音データの音圧信号を併せて用いてもよい。
【0032】
ここで、上記単発音データ1Aとは、上記エンジンの一の気筒(シリンダ)における一回の燃焼サイクルの間に当該気筒から生じる音(以下、当該一回の燃焼サイクルの間に気筒から生じる音を「単発音」と称する)に相当する音データである。なお第1実施形態の音圧信号出力処理では、後述するように、エンジンが予め設定された低回転領域で回転している際の単発音(以下、「低回転単発音」と称する。)に相当する音データである低回転単発音データの音圧信号と、エンジンが予め設定された高回転領域で回転している際の単発音(以下、「高回転単発音」と称する。)に相当する音データである高回転単発音データの音圧信号と、を用いて、第1実施形態のエンジン音の音圧信号を合成して出力する。このとき、低回転単発音データの音圧信号(低回転単発音音波形信号)の波形の一例を図2(a)に、高回転単発音データの音圧信号(高回転単発音音波形信号)の波形の一例を図2(b)に、それぞれ示す。図2(a)及び図2(b)に示す例において、音圧信号としての長さは、例えば50ミリ秒である。
【0033】
また、上記次数音データとは、上記エンジン音(又は上記エンジンを動力源とする車両が発生する音。以下、同様。)のうち、回転数に応じてその周波数(又は周波数スペクトル。以下、同様。)が変動する音成分であって、予め設定された純音(正弦波形の音)及びその倍音を次数音制御データ2Aに基づいて合成した、いわゆる倍音構造を有する音成分に相当する音データである。なお、第1実施形態の音圧信号出力処理では、後述するように、車両が加速している際の次数音(以下、「加速時次数音」と称する)に相当する音データである加速時次数音データと、車両が減速している際の次数音(以下、「減速時次数音」と称する)に相当する音データである減速時次数音データと、を用いてエンジン音の音圧信号を合成して出力する。
【0034】
更に、上記ランダム音データ1Bとは、上記エンジン音のうち、回転数によらずにその周波数が実質的に変動しない音成分(即ち、上記エンジンを構成する構造体(部品等)の材質又は形状の少なくともいずれか一方に対応する音成分)に相当する音データであり、車種又はエンジンの形式(型番)によって異なる音データである。
【0035】
更にまた、上記付加的な音データには、例えば、上記エンジンに対応するアイドリング音に相当するアイドリング音データ、上記エンジンに対応するスタータ音に相当するスタータ音データ、上記エンジンに対応するギア音に相当するギア音データ、上記エンジンに対応するシフト音に相当するシフト音データ、上記エンジンに対応するリミッタ音に相当するリミッタ音データ、上記エンジンに対応するアフターファイア音に相当するアフターファイア音データ等が含まれる。
【0036】
そして、データベースDBに記録されている音波形データ1としては、第1実施形態の音圧信号出力処理に必須の音データとして、上記低回転単発音データ及び上記高回転単発音データを含む上記単発音データ1A、上記ランダム音データ1B、上記スタータ音データ及び上記アイドリング音データが含まれて記録されている。また、エンジン音の音圧信号を合成する用途や車種或いは効果音の必要性等に応じて、上記の必須の音データの他に、上記シフト音データ及び上記ギア音データ等が含まれて記録されていてもよい。
【0037】
なお、上記音波形データ1は、例えば実際の車両の走行音等を録音したデータを元にコンピュータを用いて独自に合成された音データが、例えば、車種又はエンジン型式ごとに予めデータベースDBに記録されているものである。
【0038】
一方、データベースDBに記録されている音制御データ2としては、上記加速時次数音データの音圧信号のアクセル開度−音圧増幅率特性制御データ及び回転数−音圧増幅率特性制御データ、上記減速時次数音データの音圧信号のアクセル開度−音圧増幅率特性制御データ及び回転数−音圧増幅率特性制御データ、上記加速時次数音の音圧係数を示す加速時次数音圧係数データ並びに上記減速時次数音の音圧係数を示す減速時次数音圧係数データ含む上記次数音制御データ2Aに加えて、上記低回転単発音データの音圧信号のアクセル開度−音圧増幅率特性制御データ及び回転数−音圧増幅率特性制御データ、上記高回転単発音データの音圧信号のアクセル開度−音圧増幅率特性制御データ及び回転数−音圧増幅率特性制御データ、上記ランダム音データの音圧信号のアクセル開度−音圧増幅率特性制御データ及び回転数−音圧増幅率特性制御データ、上記アイドリング音データの音圧信号のアクセル開度−音圧増幅率特性制御データ及び回転数−音圧増幅率特性制御データ、上記エンジンの気筒数を示す気筒数データ、上記エンジンの気筒間における爆発間隔を示す爆発間隔データ、当該気筒ごとの音圧係数を示す気筒音圧係数データが含まれて記録されている。更に、音制御データ2としては、上記低回転単発音及び上記高回転単発音、上記加速時次数音及び上記減速時次数音、上記ランダム音、上記スタータ音及び上記アイドリング音それぞれの音量係数データが含まれて記録されている。なお、音制御データ2として、上記用途や車種或いは効果音の必要性等に応じて、上記シフト音及び上記ギア音等それぞれの音量係数データが含まれて記録されていてもよい。
【0039】
なお、上記音制御データ2は、例えば車種ごと又はエンジン型式ごとに対応した当該音制御データ2が、予めデータベースDBに記録されているものである。
【0040】
他方、処理装置10には、第1実施形態の音圧信号出力の対象となるエンジンのスタート/ストップを示すデータ、並びに車両の走行におけるアクセル開度及び回転数を示す各データが、車両データCとして、外部からインターフェース12を介してリアルタイムに入力される。これにより、処理部11の複数気筒音生成部110は、当該車種又はエンジン型式等に対応した上記音波形データ1及び上記音制御データ2をデータベースDBからインターフェース12を介して読み出し、第1実施形態の音圧信号出力処理における気筒ごとの音の音圧信号等を生成する。そして、合成部111は、複数気筒音生成部110により生成された気筒ごとの音圧信号等を、第1実施形態のエンジン音の音圧信号として合成する。このとき、第1実施形態の音圧信号出力処理に必要な操作等は操作部13において実行され、これにより、操作部13は、当該操作等に対応する操作信号を生成して処理部11に出力する。そして、処理部11は、当該操作信号に対応して第1実施形態の音圧信号出力処理を実行する。なお、当該音圧信号出力処理において必要な情報は、表示部14を介して使用者に提示される。また、当該音圧信号出力処理により合成して出力された音圧信号に相当するエンジン音は、必要に応じてスピーカ15を介して放音される。更に、合成されたエンジン音の音圧信号(又は、当該音圧信号に相当する音データ)は、上記車種又はエンジン型式等、当該エンジン音データが対応する諸元を示すデータに関連付けられて、例えばデータベースDBが記録されている上記不揮発性記録媒体に記録される。
【0041】
次に、第1実施形態の音圧信号出力処理について、具体的に図3乃至図11を用いて説明する。なお、以下の説明では、四気筒のエンジンのエンジン音データを合成する処理について、例示しつつ説明する。
【0042】
図3に対応するフローチャートを示すように、第1実施形態の音圧信号出力処理では、例えば、操作部13における開始操作により当該音圧信号出力処理が開始されると、初めに、処理部11が初期設定を行う(ステップS1)。ステップS1の初期設定として具体的に、処理部11は、データベースDBに記録されている上記音波形データ1及び上記音制御データ2を、インターフェース12を介して読み込む。このとき、処理部11は、操作部13における選択操作により選択された車種又はエンジン型式等に対応した音波形データ1及び音制御データ2を読み込む。これに加えて、処理部11は、第1実施形態の音圧信号出力処理におけるパラメータとしてのアクセル開度、回転数及び(車両の)走行速度を初期化する。
【0043】
次に、処理部11は、エンジン音の音圧信号を合成して出力する対象としての車両の運転操作情報を、車両データCとしてインターフェース12を介して取得する(ステップS2)。このとき、上記運転操作情報としては、一般的には、エンジンスタート/ストップスイッチの操作情報、上記アクセル開度を示す情報及び上記回転数を示す情報等が含まれる。しかしながら、ステップS2の段階ではエンジンがまだ停止していることになるため、ステップS2として取得されるのは、エンジンスタート/ストップスイッチの操作情報となる。そして、処理部11は、ステップS2でエンジンスタート/ストップスイッチがオンとなった旨(即ち、エンジンがスタートされた旨)の操作情報が取得された否かを判定する(ステップS3)。ステップS3の判定において、エンジンスタートストップスイッチがオンとなった旨の操作情報が取得されない場合(ステップS3:NO)、処理部11はステップS2に戻って、当該オンとなった旨の操作情報の取得を待機する。一方、ステップS3において、エンジンスタートストップスイッチがオンとなった旨の操作情報が取得された場合(ステップS3:YES)、次に、複数気筒音生成部110は、アイドリング再生処理を実行する(ステップS4)。ステップS4のアイドリング再生処理において、複数気筒音生成部110は、上記エンジンスタート/ストップスイッチがオンとなった旨の操作情報に対応して、上記スタータ音データを再生して対応する音圧信号を出力し、その後に上記アイドリング音データをループ再生して対応する音圧信号を出力することで、アイドリング状態を再現する。ここで、上記スタータ音データの音圧信号及び上記アイドリング音データの音圧信号それぞれの再生時における音圧は、ステップS1でデータベースDBから読み込んだスタータ音及びアイドリング音それぞれの音量係数データに基づいて制御される。これに加えて、アイドリング音データの音圧信号の音圧増幅率は、図4(a)に例示するアクセル開度−音圧増幅率特性制御データ及び図4(b)に例示する回転数−音圧増幅率特性制御データにより、車両データCとして入力される当該アクセル開度及び回転数を示す各データに基づいてそれぞれ制御される。
【0044】
次に、処理部11は、アイドリング再生処理(ステップS4)中において、エンジンの運転状態(例えば回転数や変速ギアポジション)や車両としての運転操作(例えばアクセル開度、走行速度及びエンジンスタート/ストップスイッチの状態)を示す情報を、車両データCとして周期的に取得する(ステップS5)。ステップS5としての各情報の取得周期は、処理部11としての仕様等によって予め設定されるが、具体的には数十ミリ秒程度が好ましい。そして、処理部11は、ステップS5で取得した各情報に基づき、エンジンスタート/ストップスイッチがオフとなった(即ち、エンジンがストップされた)か否かを判定する(ステップS6)。ステップS6の判定において、エンジンスタート/ストップスイッチがオフとなったと判定された場合(ステップS6:YES)、処理部11は、第1実施形態の音圧信号出力処理を終了する。一方、ステップS6の判定において、エンジンスタート/ストップスイッチがオフとなったと判定されない場合(ステップS6:NO)、処理部11は次に、合成するエンジン音に相当するエンジンの動作サイクルの周期T(単位:秒)を算出する(ステップS7)。なお以下の説明において、当該動作サイクルの周期を、単に「エンジンサイクル周期」と称する。ここで、最も一般的な4ストロークエンジンでは、クランク軸が720度回転する時間がエンジンサイクル周期Tとなり、それは回転数によって変化することになる。そして、当該回転数(単位:rpm(round per minute))をNとすると、エンジンサイクル周期Tは、以下の式(1)で算出される。
【0045】
T=120/N …(1)
【0046】
なお、上記式(1)は、2ストロークエンジンやロータリーエンジンでは異なることに注意を要する。
【0047】
次に、複数気筒音生成部110は、回転数に合わせて、一気筒分の低回転単発音データの音圧信号と高回転単発音データの音圧信号をそれぞれループ再生する(ステップS8)。このステップS8において、複数気筒音生成部110は、図5(a)に例示するように、低回転単発音データの音圧信号と高回転単発音データの音圧信号を、ステップS7で算出したエンジンサイクル周期Tでループ再生する。このとき、複数気筒音生成部110は、各単発音データの音圧信号の再生音圧をエンジンサイクル周期Tごとに予め設定された範囲内でランダムに変化させる。また、再生時におけるアクセル開度と音圧増幅率との関係の例が、図5(b)に低回転単発音データの音圧信号について、図5(c)に高回転単発音データの音圧信号について、それぞれ示されている。更に、再生時における回転数と音圧増幅率との関係の例が、図5(d)に低回転単発音データの音圧信号について、図5(e)に高回転単発音データの音圧信号について、それぞれ示されている。このとき、図5(d)及び図5(e)に例示するように、低回転単発音データの音圧信号と高回転単発音データの音圧信号とは、回転数との関係においてクロスフェードするように再生される。
【0048】
次に、複数気筒音生成部110は、ステップS8で再生された低回転単発音データの音圧信号及び高回転単発音データの音圧信号を、残る三気筒分複製し、更に、上記爆発間隔データにより示される気筒間の爆発間隔(燃焼間隔)に合わせた遅延を与えた後に再生する(ステップS9)。より具体的に、複数気筒音生成部110は、図6に例示するように、エンジンサイクル周期Tを基準として、気筒ごとに爆発間隔TFだけ遅延を与えて複製しつつ、低回転単発音データの音圧信号及び高回転単発音データの音圧信号を再生する。なお、図6では、各気筒による爆発の順序を「♯」で示している。更に、上記爆発間隔TFは、気筒ごとに同一であってもよいし、異なっていてもよい。更にまた、各気筒の低回転単発音データ及び高回転単発音データそれぞれの音圧信号における音圧については、気筒ごとに異なる音圧係数(換言すれば、振幅倍率)を乗じた後に再生するように構成してもよい。
【0049】
次に、複数気筒音生成部110は、例えば上記予め設定された正弦波形と、次数音制御データ2Aと、を用いて、例えば0.5次から例えば8次までの次数音データの音圧信号を、0.5次刻みで16音分生成する(ステップS10)。このとき、複数気筒音生成部110は、各次の次数音データの音圧信号を、それぞれ単一の周波数成分を持ち且つ車種又はエンジン型式に対応した上記正弦波形とし、それぞれの位相をランダムに変更して生成する。ここで、各次数音の音圧信号の周波数は回転数によって変化するが、その変化は、「F」をn次の次数音の音圧信号の周波数(単位:ヘルツ)とし、「O」を0.5から8まで変化する次数(単位なし)とし、「N」を上記回転数とすると、以下の式(2)で算出される。
【0050】
=O×N/60 …(2)
【0051】
一方、複数気筒音生成部110は、各次の次数音の音圧信号の音圧を、例えば図7(a)に例示する次数と音圧係数との関係を示す上記次数音制御データ2Aに基づいて制御しつつ、各次の次数音データの音圧信号を再生する。このとき、一般には、次数が高くなるほどその音圧信号の音圧が小さくなるように制御される。そして、複数気筒音生成部110は、それぞれに生成された次数音の音圧信号を図7(b)に例示するように混合し、一のエンジンサイクル周期T分の次数音データの音圧信号を生成する。その後、複数気筒音生成部110は、図8(a)に例示するアクセル開度−音圧増幅率特性制御データ及び図8(b)に例示する回転数−音圧増幅率特性制御データにより、車両データCとして入力される当該アクセル開度及び回転数を示す各データに基づいて音圧信号の音圧を制御しつつ、混合された次数音データの音圧信号を再生する。このとき、複数気筒音生成部110は、上記加速時次数音圧係数データ及び上記減速時次数音圧係数データをそれぞれ別個に用いて、例えばアクセル開度に応じて次数音データの音圧信号の音圧を制御するように構成してもよい。
【0052】
次に、複数気筒音生成部110は、ステップS10で再生された次数音データの音圧信号を、残る三気筒分複製し、更に、上記爆発間隔データにより示される気筒間の爆発間隔に合わせた遅延を与えた後に、再生する(ステップS11)。より具体的に、複数気筒音生成部110は、図9に例示するように、エンジンサイクル周期Tを基準として、気筒ごとに爆発間隔TFだけ遅延を与えて複製しつつ、次数音データの音圧信号を再生する。なお、図9では、図6に示す場合と同様に、各気筒による爆発の順序を「♯」で示している。更に、上記爆発間隔TFも、図6に示す場合と同様に、気筒ごとに同一であってもよいし、異なっていてもよい。更にまた、各気筒の次数音データの音圧信号の音圧については、気筒ごとに異なる音圧係数を乗じた後に再生するように構成してもよい。
【0053】
次に、複数気筒音生成部110は、ランダム音再生処理を実行する(ステップS12)。ステップS12のランダム音再生処理において、複数気筒音生成部110は、第1実施形態の音圧信号出力処理により合成するエンジン音に相当するエンジン又は車種に対応したランダム音データ1Bの音圧信号を継続してループ再生する。ここで、上記ランダム音データの音圧信号の再生時におけるピッチ(周波数)やループ周期は、アクセル開度及び回転数のいずれによっても変化させないが、その音圧増幅率は、図10(a)に例示するアクセル開度−音圧増幅率特性制御データ及び図10(b)に例示する回転数−音圧増幅率特性制御データにより、車両データCとして入力される当該アクセル開度及び回転数を示す各データに基づいてそれぞれ制御される。
【0054】
その後、処理部11の合成部111は、ステップS9で再生された各気筒の低回転単発音データの音圧信号及び高回転単発音データの音圧信号(図6参照)、ステップS11で再生された各気筒の次数音データの音圧信号、及びステップS12で再生されたランダム音データの音圧信号を、エンジンサイクル周期Tを基準として混合する(ステップS13)。このとき、合成部111は、図11に例示するように、各音の音圧信号に対応してステップS1で読み込まれた音量係数データにより示される音量係数を各音データに乗じてその音量を調整しつつ、混合する。
【0055】
その後、合成部111は、第1実施形態の音圧信号出力処理により合成するエンジン音の音圧信号の用途に応じた効果音として、上記ギア音、上記シフト音、上記リミッタ音又は上記アフターファイア音を加える場合は、それらの音に対応する音データを音波形データ1から抽出し、それらをステップS13で混合された音圧信号に更に混合する(ステップS14)。このとき、合成部111は、各音データの音圧信号の音圧を、対応する音量係数データを用いて調整しつつ、混合する。
【0056】
その後、処理部11は、ステップS14までの処理で生成/混合された音圧信号を、第1実施形態の音圧信号出力処理の結果としてのエンジン音の音圧信号として図示しないD/A(Digital/Analog)変換部によりアナログ化し、例えばスピーカ15から放音させる(ステップS15)。その後、処理部11は、必要に応じて、当該エンジン音の音圧信号(又は、当該音圧信号に相当する音データ)を、当該エンジン音の音圧信号が対応する諸元(上記車種又はエンジン型式等)を示すデータに関連付けて、例えばデータベースDBが記録されている上記不揮発性記録媒体に記録する。そして、処理部11は、上記ステップS5に戻って、上述してきた一連の処理を繰り返す。
【0057】
以上説明したように、第1実施形態の音圧信号出力処理によれば、単発音データの音圧信号、次数音データの音圧信号及びランダム音データの音圧信号を用いてエンジン音の音圧信号を合成して出力するので、エンジンの仕様(例えば、気筒数、爆発間隔、ロータリーエンジンか否か等の仕様)の変更にも柔軟に対応しつつ、実物のエンジンに近いエンジン音の音圧信号を、低負荷且つリアルタイムに合成して出力することができる。
【0058】
また、エンジンの各気筒についての単発音データ1A及び次数音データ(次数音制御データ2A)をそれぞれ取得し、各気筒による爆発間隔に対応させて単発音データの音圧信号及び次数音データの音圧信号を遅延させつつ、単発音データの音圧信号、次数音データの音圧信号及びランダム音データの音圧信号を合成するので、実物のエンジンにより近いエンジン音の音圧信号を合成して出力することができる。
【0059】
更に、単発音データの音圧信号又は次数音データの音圧信号の少なくともいずれか一方における音圧係数(振幅倍率)を気筒ごとに異ならせる場合は、更に臨場感のあるエンジン音の音圧信号を合成して出力することができる。
【0060】
更にまた、i)一の単発音データの音圧信号を、低回転単発音データの音圧信号と高回転単発音データの音圧信号とにより構成する場合、ii)低回転単発音データの音圧信号と高回転数単発音データの音圧信号をエンジンの回転数に基づいてクロスフェードすることにより単発音データの音圧信号を合成する場合(図5(d)及び図5(e)参照)、又はiii)加速時次数音データの音圧信号と減速時次数音データの音圧信号とで一つの次数音データの音圧信号を形成する場合、のいずれも、より臨場感のあるエンジン音の音圧信号を合成して出力することができる。
【0061】
また、単発音データの音圧信号の音圧、次数音データの音圧信号の音圧及びランダム音データの音圧信号の音圧それぞれをアクセル開度及び回転数に基づいて制御して合成するので、更に臨場感のあるエンジン音の音圧信号を合成して出力することができる。
【0062】
更に、アイドリング音データ、スタータ音データ、ギア音データ、シフト音データ、リミッタ音データ又はアフターファイア音データの少なくともいずれかを更に用いてエンジン音の音圧信号を合成する場合は、種々の効果音を加えてより臨場感のあるエンジン音の音圧信号を合成して出力することができる。
【0063】
(II)第2実施形態
次に、本発明に係る他の実施形態である第2実施形態について、図12乃至図15を用いて説明する。なお、図12は第2実施形態の音圧信号出力処理を示すフローチャートであり、図13は当該音圧信号出力処理における単気筒音生成処理の波形を例示する図であり、図14は当該音圧信号出力処理における遅延による複数気筒音生成処理の波形を例示する図であり、図15は当該音圧信号出力処理における複数気筒音の音圧信号とランダム音の音圧信号との合成処理の波形を例示する図である。
【0064】
また、以下に説明する第2実施形態の音圧信号出力装置のハードウェア的な構成は、基本的には第1実施形態の音圧信号出力装置Sのものと同一である。よって以下の説明では、第2実施形態の音圧信号出力装置において、第1実施形態の音圧信号出力装置Sの構成部材と同様の構成部材については、同様の部材番号を用いて細部の説明は省略する。更に、以下に説明する第2実施形態の音圧信号出力処理のうち、第1実施形態の音圧信号出力処理と同様の処理については、図3に示されるステップ番号と同一のステップ番号を用いて細部の説明は省略する。
【0065】
上述した第1実施形態の音圧信号出力処理では、単発音データの音圧信号及び次数音データの音圧信号それぞれについて、別個に複数気筒分の各音データの音圧信号を生成し(図3ステップS9及びステップS11参照)、それらとランダム音データの音圧信号とを最後に混合する構成とした(図3ステップS13参照)。これに対して、以下に説明する第2実施形態の音圧信号出力処理では、一の気筒について単発音データの音圧信号と次数音データの音圧信号とを混合して一気筒分の混合音データの音圧信号を生成し、それに基づいて複数気筒分の混合音データの音圧信号を生成して最後にランダム音データの音圧信号を混合する。
【0066】
即ち、図12に示すように、第2実施形態に係る音圧信号出力処理では、初めに、第1実施形態の音圧信号出力処理におけるステップS1乃至ステップS8と、ステップS10と、が、複数気筒音生成部110により実行される。このとき、第1実施形態の音圧信号出力処理におけるステップS9は実行されない。
【0067】
次に、複数気筒音生成部110は、一の気筒についてステップS8で再生された低回転単発音データの音圧信号及び高回転単発音データの音圧信号と、当該気筒についてステップS10で生成された次数音データの音圧信号と、を、エンジンサイクル周期Tを基準として混合する(ステップS20)。このとき、合成部111は、図13に例示するように、各音の音圧信号に対応してステップS1で読み込まれた音量係数データにより示される音量係数を各音の音圧信号に乗じてその音量を調整しつつ混合して、混合音データの音圧信号を生成する。
【0068】
次に、複数気筒音生成部110は、ステップS20で生成された混合音データの音圧信号を、残る三気筒分複製し、更に、上記爆発間隔データにより示される気筒間の爆発間隔に合わせた遅延を与えた後に、再生する(ステップS21)。より具体的に、複数気筒音生成部110は、図14に例示するように、エンジンサイクル周期Tを基準として、気筒ごとに爆発間隔TFだけ遅延を与えて複製しつつ、混合音データの音圧信号を再生する。なお、図14では、各気筒による爆発の順序を「♯」で示している。更に、上記爆発間隔TFは、気筒ごとに同一であってもよいし、異なっていてもよい。更にまた、各気筒の混合音データの音圧については、気筒ごとに異なる音圧係数を乗じた後に再生するように構成してもよい。
【0069】
次に、複数気筒音生成部110は、第1実施形態の音圧信号出力処理におけるステップS12を実行し、その後、合成部111は、ステップS20で生成された全気筒分の混合音データの音圧信号(図13参照)と、ステップS12で再生するランダム音データの音圧信号と、を、エンジンサイクル周期Tを基準として混合する(ステップS22)。このとき、合成部111は、図15に例示するように、各音に対応してステップS1で読み込まれた音量係数データにより示される音量係数を各音データの音圧信号に乗じてその音量を調整しつつ、混合する。
【0070】
その後、合成部111は、第1実施形態の音圧信号出力処理におけるステップS14及びステップS15を実行し、ステップS5に移行する。
【0071】
以上説明した第2実施形態の音圧信号出力処理によっても、第1実施形態の音圧信号出力処理による効果と同様の効果を奏することができる。
【0072】
(III)第3実施形態
次に、本発明に係る更に他の実施形態である第3実施形態について説明する。
【0073】
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、次数音データの音圧信号について、これを、一気筒分ずつ再生された当該音圧信号を混合することで、エンジン音全体としての次数音データの音圧信号を合成して出力した。しかしながらこれ以外に、多気筒のエンジン音の音圧信号を合成して出力する際に、それに対応する次数音の音圧信号を、当該多気筒分を纏めて一度に合成するように構成してもよい。この場合でも、上記正弦波形及びその倍音を用いた倍音構造を有する音成分として、各気筒分の次数音データの音圧信号を纏めて合成するように構成することができる。
【0074】
以上説明した第3実施形態の音圧信号出力処理によっても、第1実施形態及び第2実施形態の音圧信号出力処理による効果と同様の効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上それぞれ説明したように、本発明は音圧信号出力装置の分野に利用することが可能であり、特に内燃式のエンジン音に相当する音圧信号出力装置の分野に適用すれば特に顕著な効果が得られる。
【符号の説明】
【0076】
1 音波形データ
1A 単発音データ
1B ランダム音データ
2 音制御データ
2A 次数音制御データ
10 処理装置
11 処理部
12 インターフェース
13 操作部
14 表示部
15 スピーカ
16 バス
110 複数気筒音生成部
111 合成部
C 車両データ
S 音圧信号出力装置
DB データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15