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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な記載
本発明は、一部には、この生物製剤および関連の薬剤の薬理学的関連特性を改善するフラジェリンの特定の変異の発見に基づく。そのような変異は、非限定的な例として、変異を有さないものに比較して改変された抗原性および免疫原性を有する、様々なフラジェリン関連組成物を生成する。フラジェリン関連組成物は、全長フラジェリン関連組成物のものと同一または類似のレベルで活性なTLR5シグナル伝達の能力を保持する。
【0026】
フラジェリン関連組成物
本発明は、一部には、フラジェリン関連組成物の最小化構築物が、全長フラジェリン関連組成物のものと同一または類似のレベルで活性なTLR5シグナル伝達の能力を保持しながら、低い免疫原性を示し得るという発見に基づく。低い免疫原性によって、構築物が全長フラジェリン関連組成物よりも長時間、宿主内に維持される。内在性C_D0セグメントの少なくとも半分を排除して、C末端HisタグによってキャップされたN末端ハーフ(470〜485)のみを残留させて、かつTLR5シグナル伝達を活性化する分子の能力のほとんどを保持することが可能である。変種33〜485はシグナル伝達活性の約90%を喪失するため、キャップの存在は、活性にとって肝要であり得る。これらの観察をまとめると、D_0ドメインはTLR5との直接の相互作用にほんのわずかの(存在するならば)寄与を有し、その役割はD1ドメインの構造統合性を維持することによって限定され得ることが示唆される。反対に、残留するC_D0セグメント(470〜485)は、除去できず、またはC_D0のC末端ハーフ(485〜504)もしくは他の配列と置換できない。
【0027】
様々な実施形態において、本発明は、フラジェリン関連組成物を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、(1)例えば非常に様々な疾患状態および患者のタイプでの使用を可能にする、抗原性および免疫原性の低下などの改善された薬理学的特性、ならびに/または(2)例えば改善された医療効果を可能にする、改善された機能的特性、を有するフラジェリン関連組成物を提供する。
【0028】
フラジェリン関連組成物は、フラジェリン関連ポリペプチドであり得る。フラジェリン関連組成物は、種々のグラム陽性菌種およびグラム陰性菌種を含む、様々な供給源由来であり得る。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2003/0044429号の
図7に示された細菌種からのフラジェリンのいずれかに由来するアミノ酸配列を有し得る。フラジェリン関連組成物は、NCBI Genbankデータベースをはじめとする供給源で一般的に入手可能な、米国特許出願公開第2003/0044429号の
図7に列挙されたフラジェリンポリペプチドをコードするものに関係するヌクレオチド配列を有し得る。
【0029】
フラジェリン関連組成物は、細菌鞭毛の主成分であり得る。フラジェリン関連組成物は、1、もしくは2、もしくは3、もしくは4、もしくは5、もしくは6、もしくは7のドメインまたはその断片で構成され得る(例えば、内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第8,324,163号の
図10参照)。そのドメインは、ND0、ND1、ND2、D3、CD2、CD1、およびCD0から選択され得る。ドメイン0(D0)、1(D1)、および2(D2)は不連続であり得、アミノ末端およびカルボキシ末端の残基がヘアピン構造の形成によって並置された時に形成され得る。D1およびD2ドメインを含むアミノおよびカルボキシ末端は、ほとんど保存され得るが、中央の超可変ドメイン(D3)は、高度に可変性であり得る。非保存D3ドメインは、鞭毛フィラメントの表面に存在し得、主要な抗原エピトープを含み得る。フラジェリンの強力な炎症誘発活性は、高度に保存されたND1、ND2、CD1、およびCD2領域内に存際し得る。
【0030】
フラジェリン関連組成物は、サルモネラ種由来であり得、その代表的例は、S.チフィムリムおよびS.ダブリンである(GenBankアクセション番号M84972によってコードされる)。フラジェリン関連ポリペプチドは、野生型フラジェリン(SEQ ID NO:1)の断片、変種、類似体、相同体、もしくは誘導体、またはその組み合わせであり得る。フラジェリンの断片、変種、類似体、相同体、または誘導体は、フラジェリンのドメイン構造およびTLR5によって認識されるその保存構造を基にして、推論に基づく設計によって得ることができる。
【0031】
フラジェリン関連組成物は、非限定的に、内容が本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2003/000044429号に開示されたフラジェリンポリペプチド、および米国特許出願公開第2003/000044429号の
図7(パネルA〜F)に示されたBLASTの結果に列挙されたアクセション番号に対応するフラジェリンペプチド、またはその変種を含む、任意のグラム陽性またはグラム陰性菌種からのフラジェリンポリペプチドに関連し得る。
【0032】
フラジェリンおよびこれまで記載された変種は、大部分が高度の抗原性および免疫原性の問題があり、理論に束縛されるのを望むものではないが、それはそれらが本質的に免疫原性の細菌タンパク質(例えば、フラジェリンまたは「FliC」)であるためであろう。既存のフラジェリン構築物における実践上の制約は、対象の多くがこれらの構築物のTLR5刺激活性を中和することが可能な既存の抗体を高力価で有する、ということである。これらの個体は、場合によっては単回の注射であっても、そして理論に束縛されるのを望むものではないが、おそらく反復処置ではより高い可能性で、フラジェリンでの処置に脱感作されるであろう。その上、そのような既存の抗体の力価は、最初は低レベルで存在したとしても、単回フラジェリン由来注射によって急速に追加免疫され、それにより医療適用に向けて計画される反復投与レジメンの目的では、さらにより大きな個体群で損なわれ得る。集団において抗FliC抗体(中和抗体を含む)が広範囲に既に存在することは、人体にコロニー形成する(および感染する)鞭毛のある腸内細菌(例えば、サルモネラ属菌種、大腸菌)の数多くの菌種に人類が一生暴露されることを反映している。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物は、フラジェリン活性を中和する様々な抗体に対するエピトープの改変を含む。
【0033】
幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、中和抗CBLB502抗体によって認識されるエピトープ内に変異を含む。フラジェリン関連組成物は、組成物を中和する抗体の能力を阻害または抑止する中和抗CBLB502抗体によって認識されるエピトープ内に1つまたは複数の変異を含む。さらなる実施形態において、フラジェリン関連組成物は、1つまたは複数のエピトープ内にトランケーションおよび変異を含む。さらなる実施形態において、変異は、アラニンによるエピトープ残基の置換を含む。さらなる実施形態において、変異されたエピトープは、以下の残基の1つまたは複数を含む:E153、S444、T154、N440、Q142、F131、D443、N68、T447、S110、Q117、R124、D113、E120、N127、およびQ128。
【0034】
フラジェリン関連組成物は、挿入、欠失、トランスポゾン挿入、およびD0、D1、D2および可変D3ドメインのうちの任意の1つへの変化を含み得る。D3ドメインは、変種がTLR5活性を刺激するようにD1およびD2ドメインを適正に折り畳ませるヒンジまたはリンカーペプチドで、一部または全体が置換され得る。
【0035】
幾つかの実施形態において、本発明は、フラジェリンの最小の機能的コアの作成、例えば既に短縮されたCBLB502分子に対して残基を欠失させることに関する。幾つかの実施形態において、本発明は、欠失、付加および置換を含み、改善された活性を提供する、野生型に対して改変されたアミノ酸同一性を有するフラジェリン関連組成物の作成に関する。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、CBLB502(SEQ ID NO:2)に由来する。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、1つまたは複数のドメイン内にトランケーションを含む。さらなる実施形態において、フラジェリン関連組成物は、N末端ドメイン内に欠失を含む。さらなる実施形態において、フラジェリン関連組成物は、ND0ドメイン内に欠失を含む。さらなる実施形態において、フラジェリン関連組成物は、ND0ドメイン全体の欠失を含む。さらなる実施形態において、フラジェリン関連組成物は、C末端ドメイン内に欠失を含む。さらに別の実施形態において、フラジェリン関連組成物は、CD0ドメイン内に欠失を含む。さらに別の実施形態において、フラジェリン関連組成物は、CD0ドメインのアミノ酸470〜485を保持する。さらなる実施形態において、最小化されたフラジェリン関連組成物は、CBLB502−S33(SEQ ID NO:17)である。
【0036】
フラジェリン関連組成物は、
図1Aおよび
図1Bに示される13の保存されたアミノ酸(89、90、91、95、98、101、115、422、423、426、431、436および452の位置)のうち少なくとも10、11、12、または13を含み得る。フラジェリン関連組成物は、SEQ ID NO:1のアミノ酸1〜174および418〜505と少なくとも30〜99%同一であり得る。
【0037】
幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、改善された機能的および薬理学的特性を有し、それは例えば改善された医療効果を可能にする。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、CBLB502に比較して改善されたNF−κB活性化および放射線防護性を有する。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、改善された薬物動態性を有し、比例してより強い薬力学的応答をもたらす(例えばサイトカインアッセイによって検出される)。
【0038】
幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、抗原性および免疫原性の低下を含む、改善された薬理学的特性を有し、それは例えば非常に多様な疾患状態および患者のタイプでの使用を可能にする。抗原性および免疫原性の低下は、例えば反復投与を必要とする医療用途を含む、本発明のフラジェリン関連組成物が用いられ得る医療用途を拡大する。幾つかの実施形態において、抗原性の低下は、既存のヒト抗体(例えば、抗フラジェリン)およびCBLB502注射に応答して誘導される抗体の中和作用に対する抵抗性の改善につながる。さらなる実施形態において、フラジェリン関連組成物は、インビボでより長い滞留時間を有する。より長い滞留時間によって、組成物をより少ない用量で、またはより長時間の間隔をおいた投与で、効果的にすることができる。
【0039】
幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、タグを含む。さらなる実施形態において、タグは、フラジェリン関連組成物のN末端に結合されている。さらに別の実施形態において、タグは、フラジェリン関連組成物のC末端に結合されている。
【0040】
幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、可撓性リンカーを含む。さらなる実施形態において、可撓性リンカーは、SEQ ID NO:16を含む。さらなる実施形態において、可撓性リンカーは、SEQ ID NO:242を含む。
【0041】
幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、表1に列挙されたポリペプチド、または上記ポリペプチドをコードする核酸のいずれかを含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、表1に列挙されたヌクレオチド配列によってコードされている。さらなる実施形態において、フラジェリン関連組成物は、表1に列挙されたポリペプチドを含む。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、SEQ ID NO:69または70のいずれかによってコードされたポリペプチドを含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、SEQ ID NO:71である「CBLB543」のポリペプチドを含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、SEQ ID NO:149または151のいずれかによってコードされたポリペプチドを含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、SEQ ID NO:150である「CBLB533」のポリペプチドを含む、またはそれからなる。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、表1に列挙された配列と少なくとも30〜99%同一であり得、例えば表1に列挙された配列と約50%、または約60%、または約70%、または約805、または約90%、または約95%、または約97%、または約98%、または約99%、または約100%同一であり得る。
【表1】
【0042】
フラジェリン関連組成物の使用
幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、Toll様受容体活性(例えば、TLR1、および/またはTLR2、および/またはTLR3、および/またはTLR4、および/またはTLR5、および/またはTLR6、および/またはTLR7、および/またはTLR8、および/またはTLR9、および/またはTLR10、および/またはTLR11、および/またはTLR12、および/またTLR13)を刺激し得る。TLRファミリーは、少なくとも10の要素で構成され、病原に対する自然免疫防護に肝要である。自然免疫系は、保存された病原関連分子パターン(PAMP)を認識する。TLRは、アミノ酸量の変動にある程度寛容な残基の大きな群で構成され得る細菌フラジェリンに特有の保存された構造を認識し得る。Smith et al., Nat. Immunol. 4:1247−53 (2003)は、TLR5によって認識される保存された構造の一部であるフラジェリン内の保存されたアミノ酸13種を同定した。TLR5活性に重要であり得るフラジェリンの保存されたアミノ酸13種を、
図1Aおよび1Bに示す。
【0043】
幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、TLR5シグナル伝達を活性化する。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、CBLB502と同じレベルまたは類似のレベルでTLR5を活性化する。TLR5の活性化は、核因子NF−κBの発現を誘導し、それが次に数多くの炎症関連サイトカインを活性化する。さらなる実施形態において、フラジェリン関連組成物は、炎症誘発性サイトカインの発現を誘導する。さらなる実施形態において、フラジェリン関連組成物は、抗炎症性分子の発現を誘導する。別の実施形態において、フラジェリン関連組成物は、抗アポトーシス性分子の発現を誘導する。さらなる実施形態において、フラジェリン関連組成物は、抗菌分子の発現を誘導する。NF−κBの標的としては、IL−β、TNF−α、IL−6、IL−8、IL−18、G−CSF、TNFSF13b、ケラチノサイト化学誘引物質(KC)、BLIMP1 /PRDM1、CCL5、CCL15、CCL17、CCL19、CCL20、CCL22、CCL23、CXCL1、CCL28、CXCL11、CXCL10、CXCL3、CXCL1、GRO−β、GRO−γ、CXCL1、ICOS、IFNG、IL−1A、IL−1b、IL1RN、IL−2、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−12b、IL−12A、IL−13、IL−15、IL−17、IL−23A、IL−27、EBI3、IFNB1、CXCL5、KC、IiGp1、CXCL5、CXCL6、LTA、LTB、CCL2、CXCL9、MCP−1/JE、CCL3、CCL4、CXCL3、CCL20、CXCL10、CXCL5、CCL5、CCL1、TNFβ、TNFSF10、TFF3、TNFSF15、CD86、補体成分8a、CCL27、ディフェンシン−β3、MIG、MIP−2、および/またはNOD2/CARD15が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
幾つかの実施形態において、TLR5シグナル伝達を活性化することは、制御性T細胞(T
regs)の生成を増加させること、LPS誘導性ERK1/2活性化を減少させること、および/またはナチュラルキラー(NK)T細胞を活性化させること、によってCD4
+ T細胞の免疫機能を調節し得る。
【0045】
疾患および処置/予防の方法
様々な実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)および方法は、種々の疾患状態に適用可能である。一態様において、本発明は、本発明のフラジェリン関連組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、TLR5シグナル伝達を刺激する方法を提供する。TLR5シグナル伝達を活性化することは、非限定的に、癌を処置すること、放射線誘発性もしくは再灌流誘発性損傷を防護すること、ワクチンにおいてアジュバントとして作用すること、または細胞毒性化合物から細胞を防護するを含む、広範囲の治療用途を有し得る。
【0046】
幾つかの実施形態において、本発明のフラジェリン関連組成物、またはその断片は、ウイルスワクチンへのアジュバントとして提供され得る。一実施形態において、フラジェリン関連組成物またはその断片は、インフルエンザワクチンまたは抗原と一緒に投与されて、インフルエンザ抗原へのより大きな宿主免疫応答を誘起し得る。さらなる実施形態において、本発明のフラジェリン関連組成物、またはその断片は、寄生虫に対するワクチンへのアジュバントとして提供され得る。一実施形態において、フラジェリン関連組成物またはその断片は、プラスモジウムワクチンまたは抗原と一緒に投与されて、プラスモジウム抗原へのより大きな宿主免疫応答を誘起し得る。
【0047】
幾つかの実施形態において、本発明のフラジェリン関連組成物は、細胞を毒性状態から防護するために投与され得る。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、肝細胞をFasによる傷害から防ぎ得る。本発明のフラジェリン関連組成物は、末梢血における肝臓酵素の減少およびカスパーゼ活性化を誘発し得る。
【0048】
癌
様々な実施形態において、本発明は、癌および/または腫瘍に関係し、例えば癌および/または腫瘍の処置または予防に関係する。本明細書で用いられる「癌」または「腫瘍」は、身体の臓器および系の正常な機能を妨害する無制御な細胞増殖および/または異常な長期細胞生存および/またはアポトーシスの阻害を指す。含まれるのは、良性および悪性の癌、ポリープ、過形成、ならびに休眠腫瘍または微小転移である。同じく含まれるのは、免疫系によって妨害されない異常な増殖を有する細胞(例えば、ウイルス感染細胞)である。癌または腫瘍を有する対象は、対象の体内に存在する客観的に測定可能な癌細胞を有する対象である。本来の場所から遊走して活力のある臓器に種をまく癌は、罹患した臓器の機能的破壊を通して最終的に対象の死をもたらす。白血病などの造血器癌は、対象中の正常な造血画分を破壊し、それにより造血不全(貧血、血小板減少症、および好中球減少症として)に導き、最終的に死をまねく可能性がある。
【0049】
癌は、原発癌または転移癌であり得る。原発癌は、臨床的に検出可能になる発生部位での癌細胞エリアであり得、原発腫瘍であり得る。これに対して転移癌は、1つの臓器または部分から別の非隣接臓器または部分への疾患の拡散であり得る。転移癌は、局所エリア中の周囲の正常組織に透過および浸潤する能力を獲得した癌細胞によって引き起こされ、新しい腫瘍を形成し、それが局所転移であり得る。
【0050】
癌は、リンパ管および/または血管の壁を透過する能力を獲得した癌細胞によっても引き起こされ得、その後、癌細胞は、血流を通して体内の他の部位および組織へ循環することができる(それにより循環する腫瘍細胞である)。癌は、リンパ性または血行性の散布などのプロセスを原因とし得る。癌はまた、別の部位に定着し、管または壁を再透過し、増殖し続け、そして別の臨床的に検出可能な腫瘍を最終的に形成する腫瘍細胞によっても引き起こされ得る。癌は、この新しい腫瘍であり得、それは転移性(または続発性)腫瘍であり得る。
【0051】
癌は転移した腫瘍細胞によって引きこされ得、それは続発性または転移性腫瘍であり得る。腫瘍の細胞は、最初の腫瘍のものと類似し得る。例として、乳癌または結腸癌が肝臓に転移すると、その続発性腫瘍は、肝臓に存在しながら、異常な乳房または結腸細胞から構成され、異常な肝細胞からではない。肝臓におけるこの腫瘍はしたがって、肝臓癌ではなく、転移性乳癌または転移性結腸癌であり得る。
【0052】
癌は、任意の組織から起源を有し得る。癌は、例えば黒色腫、結腸、乳房、または前立腺から発生し得、したがって本来がそれぞれ皮膚、結腸、乳房、または前立腺であった細胞から構成され得る。癌は血液の悪性腫瘍でもあり得、それはリンパ腫でもあり得る。癌は、肝臓、肺、膀胱または腸などの組織に侵襲し得る。侵襲された組織はTLRを発現し得るが、癌はTLRを発現する場合または発現しない場合がある。
【0053】
同じく本明細書で提供されるのは、本発明のフラジェリン関連組成物を、それを必要とする哺乳動物に投与することを含む、癌再発を低減する方法である。癌は、TLR5などのTLRを発現する、または発現しない組織に存在する場合、または存在した場合がある。方法はまた、癌再発を予防し得る。癌は、腫瘍学的疾患であり得る。癌は休眠腫瘍であり得、それは癌の転移から生じ得る。休眠腫瘍は、腫瘍の外科的除去からの残余でもあり得る。癌再発は、腫瘍再増殖、肺転移、または肝臓転移であり得る。
【0054】
本発明の代表的な癌および/または腫瘍は、TLR5を発現する場合、またはしない場合があり、基底細胞癌;胆管癌;膀胱癌;骨癌;脳および中枢神経系の癌;乳癌;腸膜の癌;子宮頸癌;絨毛癌;大腸癌;結合組織癌;消化器系の癌;子宮内膜癌;食道癌;眼の癌;頭頸部癌;胃癌(胃腸癌を含む);神経膠芽腫;肝細胞癌;肝細胞種;上皮内新生物;腎臓癌;喉頭癌;白血病;肝癌;肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌);黒色腫;骨髄腫;神経芽腫;口腔癌(唇、下、口、および咽頭);卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;網膜芽腫;横紋筋芽細胞腫;直腸癌;呼吸器系の癌;唾液腺癌;肉腫;皮膚癌;扁平上皮細胞癌;胃癌;精巣癌;甲状腺癌;子宮または子宮内膜癌;泌尿器系の癌;外陰癌;ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫;B細胞リンパ腫などのリンパ腫(低悪性度/濾胞性の非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性のNHL;中悪性度のびまん性NHL;高悪性度の免疫芽細胞性NHL;高悪性度のリンパ芽球性NHL;高悪性度小分割細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症);慢性リンパ球性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);有毛細胞白血病;慢性骨髄芽球白血病;他の肉腫および肉腫;移植後リンパ増殖性疾患(PTLD);母斑症、浮腫(脳腫瘍に関連するものなど)に関連する異常な血管増殖;ならびにメイグス症候群を含み得るが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)および方法は、癌および/または腫瘍を含む、適用可能な転移性疾患である。「転移」は、原発部位から体内の他の位置への癌の拡散を指す。癌細胞は、原発腫瘍を離れてリンパ管および血管中に侵入し、血流を通して循環し、体内の他の場所の正常組織内の遠隔病巣で成長(転移)できる。転移は、局所または遠隔であり得る。転移は連続工程であり、原発腫瘍から離れ、血流を通して移動し、遠隔部位で停止する腫瘍細胞に付随する。新たな部位で、細胞は血液供給を確立し、成長して生命を脅かす塊を形成し得る。腫瘍細胞内の刺激性および阻害性の分子経路の両者がこの挙動を調節し、遠隔部位での腫瘍細胞と宿主細胞との相互作用もまた重要である。
【0056】
転移は、特異的症状のモニタリングに加えて、磁気共鳴画像(MRI)スキャン、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、血液および血小板カウント、肝機能試験、胸部X線ならびに骨スキャンの単独の使用または併用を通して検出され得る。
【0057】
幾つかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を含む、NF−κB活性を誘導する薬剤の治療有効量を含む組成物を、哺乳動物に投与することを含む、構成的に活性なNF−κB癌に罹患した哺乳動物を処置する方法に関する。NF−κB活性を誘導する薬剤は、癌処置と組み合わせて投与され得る。
【0058】
幾つかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を投与することを含む、癌処置の副作用を処置する方法を包含する。幾つかの実施形態において、癌処置の副作用としては、脱毛症、骨髄機能抑制、腎毒性、体重減少、疼痛、吐気、嘔吐、下痢、便秘、貧血、栄養失調、毛髪脱落、痺れ、味覚変化、食欲不振、薄毛または脆弱毛、口内炎、記憶喪失、出血、心毒性、肝毒性、聴覚毒性、および化学療法後の認知障害が挙げられる。
【0059】
幾つかの実施形態において、本発明は、構成的に活性なNF−κB癌を非限定的に含む、癌の処置に起因し得る正常組織への損傷を受けている哺乳動物を処置する方法であって、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)の治療有効量を含む組成物を哺乳動物に投与することを含む、方法に関する。
【0060】
加齢およびストレス
幾つかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を投与することを含む、細胞の加齢の調整のための方法を包含する。
【0061】
幾つかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を投与することを含む、ストレスの処置のための方法を包含する。本発明はまた、ストレスに起因し得る正常組織への損傷を受けている哺乳動物を処置する方法であって、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)の治療有効量を含む組成物を哺乳動物に投与することを含む、方法に関する。ストレスは、放射線、創傷、中毒、感染、および温度ショックを非限定的に含む任意の発生源に起因し得る。
【0062】
幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、非限定的に、暴露前約48時間、約46時間、約44時間、約42時間、約40時間、約38時間、約36時間、約34時間、約32時間、約30時間、約28時間、約26時間、約24時間、約22時間、約20時間、約18時間、約16時間、約14時間、約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約3時間、約2時間、または約1時間を含む、ストレスへの暴露前の任意の時点で投与され得る。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物は、非限定的に暴露後約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、約22時間、約24時間、約26時間、約28時間、約30時間、約32時間、約34時間、約36時間、約38時間、約40時間、約42時間、約44時間、約46時間、または約48時間を含む、ストレスへの暴露後の任意の時点で投与され得る。
【0063】
放射線障害の緩和および予防
さらに別の実施形態において、本発明は、放射線関連の疾患または損傷の処置に関する。具体的実施形態において、本発明は、放射線関連の疾患の緩和または予防および/または防護に関する。
【0064】
一実施形態において、本発明は、放射線への曝露の影響からの細胞の防護に関する。幾つかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を投与することを含む、放射線から対象を防護する方法に関係する。幾つかの実施形態において、放射線は、電離放射線である。幾つかの実施形態において、電離放射線は、胃腸症候群または造血器症候群を誘発するのに十分である。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、放射線防護剤、例えば抗酸化剤(例えば、アミフォスチンおよびビタミンE)、サイトカイン(例えば、幹細胞因子)などと組み合わせて投与される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、放射線照射前、放射線照射と同時、または放射線照射後に投与される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、増殖因子(例えば、ケラチノサイト増殖因子)、ステロイド(例えば、5−アンドロステンジオール)、トリクロロ(ジオキソエチレン−O,O’)テルル酸アンモニウム、甲状腺保護剤(例えば、ヨウ化カリウム(KI))、鎮吐剤、下痢止め剤、鎮痛剤、抗不安薬、鎮静剤、サイトカイン療法、抗生物質、抗真菌薬、および/または抗ウイルス薬と組み合わせて投与される。
【0065】
幾つかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を含む組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象におけるアポトーシスを介した組織損傷を処置および/または緩和する方法に関係する。幾つかの実施形態において、アポトーシスは、細胞ストレスに起因し得る。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、組織損傷の前、組織損傷と同時、または組織損傷の後に投与される。幾つかの実施形態において、細胞ストレスは、放射線である。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、放射線防護剤、例えば、抗酸化剤(例えば、アミフォスチンおよびビタミンE)、サイトカイン(例えば、幹細胞因子)などと組み合わせて投与される。
【0066】
電離放射線による正常細胞の傷害および死亡は、曝露される細胞への直接の放射線誘発性損傷と、放射線誘発性ストレスに対する活性な遺伝的にプログラムされた細胞反応との組み合わせであり、自滅的な死またはアポトーシスをもたらす。アポトーシスは、複数の放射線感受性臓器(例えば、造血系および免疫系、消化管の上皮など)に生じる大規模な細胞損失において重要な役割を担い、その不能が、生物体の一般的な放射線感受性を決定する。幾つかの実施形態において、それを必要とする対象への本発明のフラジェリン関連組成物の投与は、細胞においてアポトーシスを抑制する。幾つかの実施形態において、本発明のフラジェリン関連組成物は、放射線処置の損傷作用から健常細胞を防護するために、癌の放射線処置を受けている対象に投与される。
【0067】
電離放射線(IR)への曝露は短期間もしくは長期間であり得、そして/またはそれは単回もしくは反復用量で適用され得、そして/またはそれは全身にもしくは局所的に適用され得る。本発明は、幾つかの実施形態において、核事故または軍事攻撃に関係し、それは単回の高線量の全身照射への曝露を含み得る(時として、その後、長期の放射性同位体中毒を伴う)。それは、例えば、宿主の血液前駆体から造血器官を「浄化」することによってドナーの骨髄のための造血器官を準備する必要がある場合の、骨髄移植の患者の前処置などにあてはまる(適用される線量を厳密に制御して)。癌処置は、全身照射として適用された場合には、致死量を大きく超える局所照射の反復照射を含み得る。放射性同位体の中毒または処置は、標的臓器の放射線への長期局所曝露をもたらす(例えば、
125Iの吸入の場合には甲状腺)。さらに、生物学的影響の重症度が有意に異なる、電離放射線の多くの物理的形態が存在する。
【0068】
分子のおよび細胞のレベルで、放射線粒子は、DNA,タンパク質、細胞膜および他の巨大分子構造における破壊および架橋を生じることができる。電離放射線はまた、フリーラジカルおよび活性酸素(ROS)を生じることによって、細胞成分に二次的損傷を誘導する。DNAの統合性および忠実性を回復させる複数のDNA修復経路、ならびにフリーラジカルおよびROSを掃除し酸化されたタンパク質および脂質を還元する抗酸化化学物質および酵素など、複数の修復システムがこの損傷を中和する。細胞のチェックポイントシステムがDNA欠損を検出し、損傷が修復されるまで、または細胞を増殖停止もしくはプログラム細胞死(アポトーシス)にゆだねる決定に至るまで、細胞周期進行を遅延させる。
【0069】
放射線は、低線量の軽度突然変異誘発性および発癌性作用から、高線量によるほぼ即死までの範囲で、哺乳動物への損傷を引き起こし得る。生物体の全放射線感受性は、造血系、生殖系および細胞交替速度の速い異なる上皮を含む複数の感受性組織において発生する病理学的改変によって決定される。
【0070】
死をまねくγ線照射の急性の病理学的転帰は、異なる線量であれば異なり、個々の線量への生物体の感受性の閾値を定める特定の臓器の不全によって決定され得る。したがって低用量での致死が、例えば骨髄形成不全から起こるが、中線量は、例えば胃腸(GI)症候群を誘導することによって、より急速に殺傷する。非常に高線量の放射線は、神経変性を誘発してほぼ即死を起こす可能性がある。
【0071】
放射線の急性毒性の期間を生き残る生物体は、照射後数ヶ月および数年に、曝露された臓器(例えば、腎臓、肝臓または肺)に発生する放射線誘発性癌および線維症を含む、長期の間接的転帰にみまわれる可能性がある。
【0072】
細胞内DNAは、直接的および間接的(例えば、フリーラジカルに基づく)メカニズムにより種々のタイプのDNA損傷(遺伝毒性ストレス)を引き起こすIRの主なターゲットである。全ての生物体は、放射線損傷DNAの効果的回復が可能なDNA修復システムを維持し、DNA修復プロセスのエラーは、変異につながる可能性がある。
【0073】
幾つかの実施形態において、対象が経験した放射線曝露は、癌放射線処置の結果である。腫瘍は一般に、γ線に対してより感受性があり、正常組織に比較的低い損傷を起こす複数回の局所線量で処置され得る。それにもかかわらず、幾つかの実施形態において、正常組織の損傷は、癌処置のためのγ線適用における限定要因である。従来の三次元共焦型またはより集中的なBeamCath発射による癌治療の際のγ線照射の利用は、放射線照射の累積作用、ならびに骨髄および胃腸(GI)管などの正常組織を急速に再生する幹細胞の損傷を誘発することによって引き起こされる線量制限毒性も有する。本発明のフラジェリン関連組成物の投与は、腫瘍細胞の放射線感受性に影響を及ぼさずに、患者の健常細胞を放射線障害から防護し得る。
【0074】
幾つかの実施形態において、対象は、放射線の致死線量に曝露されたことがある。高線量では、放射線による致死性は、いわゆる造血器および胃腸の放射線症候群に関連する。造血器症候群は、造血細胞およびそれらの前駆体の損失を特徴とし、血液およびリンパ系を再生することが不可能になる。通常、感染(免疫抑制の結果)、出血および/または貧血の結果として、死亡が起こる。GI症候群は、主に小腸での、腸上皮における大量の細胞死によって引き起こされ、続いて小腸壁が崩壊し、ならびに菌血症および敗血症により死に至る。造血器症候群は通常、GI症候群より低線量の放射線で生じ、より遅く死に至る。
【0075】
過去には、放射線防護剤は、典型的には合成および天然の両方の抗酸化剤であった。より近年になり、サイトカインおよび増殖因子が、放射線防護剤のリストに加えられ、それらの放射線防護メカニズムは、感受性組織の再生に及ぼす影響を促進する結果であると見なされる。しかし、幾つかのサイトカインは、マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)およびメタロチオネインなどの細胞内抗酸化タンパク質の発現を誘導するため、放射線防護剤の両群の間に明瞭な機能的差異はない。
【0076】
個々の薬剤についての防護の尺度は、線量変更因子(DMFまたはDRF)によって表され得る。DMFは、放射線防護剤で処置された対象および未処置対照の対象を、様々な放射線量で照射し、その後、生存または幾つかの他のエンドポイントを比較することによって決定される。DMFは一般に、30日間の生存について計算され(LD50/30薬物処置をLD50/30ビヒクル処置で除算)、造血系の保護を定量する。胃腸系保護を推定するために、LD50およびDMFを、6日間または7日間生存について計算する。
【0077】
本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物は、細胞レベルで、そして生物体全体において、強力な生存促進活性を有する。本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物は、超致死線量の放射線に応答して、急性放射線曝露による主な死因である胃腸症候群および造血器症候群の両方を阻害し得る。これらの特性の結果、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物は、自然な放射線事象および核事故の影響を処置するのに用いられ得る。その上、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物は、他の放射線防護剤と組み合わせて用いられ、それにより電離放射線からの防護の規模を大幅に拡大できる。
【0078】
従来の放射線防護剤(例えば、フリーラジカルのスカベンジャー)とは対照的に、抗アポトーシス剤は、放射線媒介性の一次損傷を低減しない場合があるが、一次損傷に対する活性細胞反応を含む二次事象に作用でき、それゆえ既存の防護線を補完する。p53(哺乳動物細胞における放射線応答の重要な媒介物質)の薬理学的阻害剤であるピフィスリン−αが、この新しいクラスの放射線防護剤の一例である。しかし、p53阻害剤の活性は造血系の防護に限定され消化管(胃腸症候群)における防護効果を有さず、それゆえこれらの化合物の治療価値を低下させている。
【0079】
本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物は、放射線防護剤として用いられ、現在利用可能な手段(遮蔽および既存の生体保護剤の適用)によって達成可能なレベルを超えてヒトの放射線抵抗性を増大させることによって、耐放射線量の範囲を拡大し得、そして例えば核事故または大規模な太陽粒子線事象の場合に、作業員生存の機会を大幅に増加させ得る。
【0080】
本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物は、例えば中枢神経系および生殖器官において、低線量の照射によって引き起こされた取り換えのきかない細胞の損失を処置するのにも有用である。本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物は、癌化学療法の際にも用いられ、脱毛症、骨髄機能抑制、腎毒性、体重減少、疼痛、吐気、嘔吐、下痢、便秘、貧血、栄養失調、毛髪脱落、痺れ、味覚変化、食欲不振、薄毛または脆弱毛、口内炎、記憶喪失、出血、心毒性、肝毒性、聴覚毒性、および化学療法後の認知障害などの化学療法に伴う副作用を処置することもできる。
【0081】
一実施形態において、哺乳動物は、フラジェリン関連組成物の治療有効量を含む組成物を哺乳動物に投与することを含む、放射線への曝露のために処置される。フラジェリン関連組成物は、1つまたは複数の放射線防護剤と併用で投与され得る。1つまたは複数の放射線防護剤は、非限定的に抗酸化剤、フリーラジカルスカベンジャーおよびサイトカインを含む、放射線曝露の影響を処置する任意の薬剤であり得る。
【0082】
本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物は、DNAおよび他の細胞構造における損傷に応答して、放射線誘発性のプログラム細胞死を阻害し得る。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物は、細胞での損傷に対処しない場合があり、そして変異を予防しない場合がある。フリーラジカルおよび活性酸素(ROS)は、変異および他の細胞内損傷の主因である。抗酸化剤およびフリーラジカルスカベンジャーは、フリーラジカルによる損傷の予防に効果的である。フラジェリン関連組成物と抗酸化剤またはフリーラジカルスカベンジャーとの組み合わせにより、放射線に曝露された哺乳動物に、あまり広範でない損傷、より高い生存率、および健康の改善がもたらされ得る。本発明の実践において用いられ得る抗酸化剤およびフリーラジカルスカベンジャーとしては、システイン、システアミン、グルタチオンおよびビリルビンなどのチオール類;アミフォスチン(WR−2721);ビタミンA;ビタミンC;ビタミンE;ならびにインディアンホーリーバジル(カミメボウキ)、オリエンチンおよびビセニンなどのフラボノイド類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物はまた、放射線感受性の幹細胞集団を補充および/または保護することによって、放射線防護を付与する多数のサイトカインおよび成長因子と組み合わせて投与され得る。最小の副作用での放射線防護は、幹細胞因子(SCF、c−kitリガンド)、Flt−3リガンド、およびインターロイキン−1断片であるIL−1b−rdの使用によって実現され得る。防護は、幹細胞の増殖の誘導(全ての上記サイトカイン)、および幹細胞のアポトーシスの予防(SCF)によって実現され得る。処置は、照射の前に白血球およびそれらの前駆体を蓄積させ、したがって照射後の免疫系のより急速な再構成を可能にする。SCFは、1.3〜1.35の範囲内のDMFで、致死的に照射されたマウスを効率的に救済し、胃腸症候群に対しても効果的である。Flt−3リガンドはまた、マウスおよびウサギにおいて強力な防護を提供する。
【0084】
幾つかの因子は、本来サイトカインではないが、免疫細胞の増殖を刺激し、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物と併用され得る。例えば、5−AED(5−アンドロステンジオール)は、サイトカインの発現を刺激し細菌およびウイルス感染に対する耐性を上昇させるステロイドである。トリクロロ(ジオキソエチレン−O,O’−)テルル酸アンモニウム(AS−101)などの合成化合物もまた、数多くのサイトカインの分泌を誘導するために、そして本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物との組み合わせで用いられ得る。
【0085】
増殖因子およびサイトカインはまた、胃腸症候群に対する保護を提供するために用いられ得る。ケラチノサイト増殖因子(KGF)は、腸粘膜において増殖および分化を促進し、腸陰窩において照射後の細胞生存を増加させる。造血性サイトカインおよび放射線防護剤SCFはまた、腸幹細胞の生存および関連する短期の生物体生存を増加させ得る。
【0086】
本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物は、胃腸(GI)症候群および造血器症候群の両方に対する防護を提供し得る。そのような組成物は、1つまたは複数のGI症候群阻害剤(非限定的に、SCFおよびKGFなどのサイトカインを含む)と併用され得る。
【0087】
フラジェリン関連組成物は、非限定的に、曝露前約48時間、約46時間、約44時間、約42時間、約40時間、約38時間、約36時間、約34時間、約32時間、約30時間、約28時間、約26時間、約24時間、約22時間、約20時間、約18時間、約16時間、約14時間、約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約3時間、約2時間、または約1時間を含む、放射線への曝露前の任意の時点で投与され得る。フラジェリン関連組成物は、非限定的に放射線への曝露後約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約14時間、約16時間、約18時間、約20時間、約22時間、約24時間、約26時間、約28時間、約30時間、約32時間、約34時間、約36時間、約38時間、約40時間、約42時間、約44時間、約46時間、または約48時間を含む、放射線への曝露後の任意の時点で投与され得る。
【0088】
様々な実施形態において、本発明の方法および組成物は、ARSなどの放射線関連障害の処置または予防を提供する。様々な実施形態において、本明細書に記載された処置は、曝露されたヒト患者集団の疾病率もしくは死亡率を低下させる、またはARSの症状からの回復を促進する。ARSは多くの場合、段階的症状の連続として現れ、それは個体の放射線感受性、放射線のタイプ、および吸収された放射線量によって変動し得る。一般には、理論に束縛されるのを望むものではないが、放射線量の増加に伴い、症状の程度が高まり、各相の期間が短縮する。ARSは、3つの相:前駆相(別名、A−V−D期)、潜伏期および症状発現に分けることができる。様々な実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、これらの3つの期間のいずれかにヒト患者に投与され得る(即ち、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は前駆相でヒト患者に投与でき、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は潜伏期でヒト患者に投与でき、またはフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は症状発現期でヒト患者に投与できる)。
【0089】
前駆相には多くの場合、吐気、嘔吐および不快感の比較的急速な徴候がある。高線量の放射線曝露が起こった状況、その可能性がある状況、またはそれが不可避の状況で、グラニセトロン(KYTRIL)、オンダンセトロン(ZOFRAN)および5−HT3ブロッカーなどの制吐剤(例えば、経口予防制吐剤)と、デキサメタゾンとの、またはデキサメタゾンを伴わない使用が適用され得る。したがって様々な実施形態において、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を、制吐剤を受けているヒト患者に投与でき、またはCBLB502を、制吐剤と組み合わせてヒト患者に投与し得る。例えばフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、以下の制吐レジメンに加えることができる;オンダンセトロン:最初0.15mg/kg IV;連続IV投与選択は、8mgの後、1mg/hでさらに24時間からなる。経口用量は、必要に応じて8時間ごとに8mg、またはグラニセトロン(経口投与剤形):用量は通常、最初1mgでその後、初回投与後12時間目に再び投与する。あるいは2mgを1用量として投与してもよい。IV用量は、体重に基づいており、典型的には10μg/kg(4.5μg/ポンド)体重である。
【0090】
潜伏期において、ヒト患者は、比較的無症状であり得る。この相の長さは、線量に応じて変動する。潜伏相は、造血器症候群の骨髄抑制に先行して最も長く、約2週間と6週間の間で変動し得る。潜伏期は、胃腸症候群の前には若干短く、数日〜1週間継続する。それは、神経血管症候群に先行して全てのうちで最も短く、せいぜい数時間しか継続しない。これらの時間は可変的で、他の疾患または傷害の存在によって改変され得る。症状発現は、損傷された主要な臓器系(骨髄、腸、神経血管)に関連する臨床症状と共に現れる。
【0091】
幾つかの実施形態において、本発明は、放射線への曝露の影響の緩和、または影響からの細胞の保護に関する。幾つかの実施形態において、本発明は、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を投与することを含む、放射線を緩和し、そして/または放射線からヒト患者を防護する方法に関係する。幾つかの実施形態において、放射線は、電離放射線である。幾つかの実施形態において、電離放射線は、胃腸症候群または造血器症候群を引き起こすのに十分である。
【0092】
幾つかの実施形態において、ARSは、胃腸症候群;造血器症候群;神経血管症候群;アポトーシス媒介組織損傷(このアポトーシスは場合により細胞ストレスに起因し得る);および電離放射線誘発性アポトーシス組織損傷、のうちの1つまたは複数を含む。
【0093】
造血器症候群(別名、骨髄症候群)は、造血細胞およびそれらの前駆体の損失を特徴とし、そのため血液およびリンパ系を再生することができない。この症候群は多くの場合、血液細胞の数の降下、即ち再生不良性貧血によって示される。これは、少量の白血球細胞による感染(例えば、日和見感染)、血小板欠乏による出血、および循環内の赤血球細胞の不足による貧血に至る可能性がある。これらの変化は、全身急性線量を受けた後、血液検査によって検出され得る。爆風による従来の外傷および熱傷が、造血器症候群による不十分な創傷治癒を合併し、死亡率が上昇する。感染(免疫抑制の結果)、出血および/または貧血の結果、死亡に至る場合がある。造血器症候群は通常、GI症候群より低線量の放射線で生じ、より遅く死に至る。
【0094】
胃腸症候群は、主に小腸での、腸上皮における大量の細胞死によって引き起こされ、続いて小腸壁が崩壊し、ならびに菌血症および敗血症により死に至る。この形態の放射線傷害の症状としては、吐気、嘔吐、食欲不振、吸収能力の喪失、露出領域での出血、および腹痛が挙げられる。胃腸症候群の例示的全身作用としては、栄養失調、脱水、腎不全、貧血、敗血症などが挙げられる。処置(例えば、骨髄移植)を行わない場合、一般に死亡する(例えば、腸内細菌の感染により)。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、骨髄移植と併用され得る。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、GI症候群の1つもしくは複数の阻害剤および/または本明細書に記載された追加の薬剤のいずれかと併用され得る。
【0095】
神経血管症候群は、めまい、頭痛、または意識レベルの低下などの神経症状と共に現れ、数分から数時間以内に起こり、嘔吐を伴わない。さらなる症状としては、極度の神経過敏および錯乱;重度の吐気、嘔吐、および水様下痢;意識喪失;ならびに皮膚の灼熱感が挙げられる。神経血管症候群は一般に、致死的である。
【0096】
幾つかの実施形態において、本発明は、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)の有効量を投与することを含む、放射線への曝露後の死亡リスクを低下させるための方法を提供する。幾つかの実施形態において、放射線は、潜在的に致死的であり、場合により放射線災害の結果として生じる。様々な実施形態において、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、放射線曝露後約25時間以内に投与される。幾つかの実施形態において、本発明は、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を放射線曝露後約25時間以内に投与することを含む、放射線災害の結果として起こる潜在的に致死的な照射への曝露後の死亡リスクを低下させるための方法を提供する。
【0097】
様々な実施形態において、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、高線量の放射線、即ち、全身線量に曝露されたことのある患者に投与される。様々な実施形態において、高線量の放射線は、不均一であり得る。様々な実施形態において、ARSは、高線量の放射線の結果である。様々な実施形態において、高線量の放射線は、約2.0Gy、または約2.5Gy、または約3.0Gy、または約3.5Gy、または約4.0Gy、または約4.5Gy、または約5Gy、または約10Gy、または約15Gy、または約20Gy、または約25Gy、または30Gyである。様々な実施形態において、高線量の放射線は、約5〜約30Gy、または約10〜25Gy、または約15〜20Gyである。幾つかの実施形態において、高線量の放射線は、物理学的線量測定および/または生物学的線量測定(例えば、マルチパラメータ線量評価)、細胞発生学(例えば、染色体分析、例えば血液試料についての(非限定的例として、二動原体分析など))のうちの1つまたは複数によって評価される。様々な実施形態において、全身放射線量は、致死量以下(2Gy未満)、潜在的致死量(2〜10Gy)、および超致死量(10Gyを超える)に分けることができる。
【0098】
再灌流障害
幾つかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を投与することを含む、対象の組織に及ぼす再灌流の影響を処置する方法に関係する。本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、例えばアミフォスチンおよびビタミンEなどの抗酸化剤と組み合わせて投与され得る。
【0099】
再灌流は、虚血または低酸素であり得る障害によって起こり得る。虚血は、例えば頻脈、梗塞、低血圧、塞栓症、血栓塞栓症(血塊)、鎌状赤血球症、身体の末端に対する局部圧力、および腫瘍などの状態から生じ得る。低酸素症は、低酸素性低酸素症(一酸化炭素中毒、睡眠時無呼吸、慢性閉塞性肺疾患、呼吸停止、シャント)、貧血性低酸素症(低O
2含有量)、低酸素性低酸素症、および組織中毒性低酸素から選択され得る。局部圧力は、止血帯に起因し得る。
【0100】
本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、酸素の流入の前、流入と同時、または流入の後に投与され得る。組織は、例えばGI管、肺、腎臓、肝臓、心血管系、血管内皮、中枢神経系、末梢神経系、筋肉、骨、および毛包であり得る。
【0101】
再灌流は、損傷後に血液供給が身体成分に戻ったときに、その身体成分を損傷し得る。再灌流の影響は、損傷そのものよりも身体成分にとってより有害であり得る。例えば酸素フリーラジカル、細胞内カルシウム過負荷、および内皮機能障害を含む再灌流の幾つかのメカニズムおよび媒介物質が存在する。過剰量の活性酸素は、それまでに損傷された身体成分に再導入されると、連続的な還元を受け、酸素フリーラジカルの形成を導く。スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシルラジカル、およびペルオキシニトライトなどの強力なオキシダントラジカルが、身体成分への再流の最初の数分以内に産生され得、そして再灌流障害の発生において重要な役割を担い得る。酸素フリーラジカルはまた、分子酸素の還元以外の供給源から産生され得る。これらの供給源としては、キサンチンオキシダーゼ、チトクロムオキシダーゼ、およびシクロオキシゲナーゼなどの酵素、およびカテコラミンの酸化が挙げられる。
【0102】
再灌流はまた好中球の活性化および蓄積のための強力な刺激因子であり、それは次に活性酸素産生のための強力な刺激因子として作用する。具体的には、好中球呼吸バーストの主な産物は、過酸化水素、フリー酸素ラジカルおよび次亜塩素酸塩を含む強力な酸化剤である。好中球は、通常全循環白血球の50〜60%を占める、最も豊富な型の貪食細胞であり、通常、損傷した身体成分の部位へ到着する最初の細胞である。酸素由来フリーラジカルは、多価不飽和脂肪酸と反応し、身体成分を損傷し膜結合酵素システムの機能を障害する脂質過酸化物およびヒドロペルオキシドの形成をもたらすことにより損傷を生じる。フリーラジカルは、血小板活性化因子ならびにケモカイン、例えば好中球活性化因子、ケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド1、およびケモカイン(C−X−Cモチーフ)リガンド1の内皮放出を刺激し、より多くの好中球を誘引してオキシダントラジカルの産生および再灌流障害の程度を増大する。活性酸素はまた一酸化窒素を消失させ、内皮傷害および組織細胞機能不全を増悪させる。産生増加に加えて、内因性オキシダント除去酵素の相対的欠如も存在し、それがフリーラジカルによる心機能不全をさらに増悪させる。
【0103】
再灌流はさらに、顕著な内皮細胞機能障害を引き起こし得る。内皮機能障害は、再灌流の重要なメディエーターである血小板および好中球の活性化を特徴とする血栓形成促進性表現型の発現を促進する。好中球が機能不全の内皮と接触すると、それらは活性化され、一連の確定された段階(ローリング、安定した接着、および遊出)で、それらは自然免疫応答の一部として内皮細胞接合部を通って組織傷害の領域へ遊走する。
【0104】
細胞内カルシウムホメオスタシスの変化が、再灌流の発生において重要な役割を担う。再灌流は、細胞内カルシウムの増加と関連し得、この影響は、L型カルシウムチャネルを介する筋細胞膜のカルシウム流入の増加と関連し得る、または筋質小網(sarcoplasmic reticulum)カルシウムサイクリングの変化に続いて起こり得る。細胞内カルシウム過負荷に加えて、カルシウムに対する筋フィラメントの感受性の変化が、再灌流に関連づけられている。結果として生じる筋フィラメントタンパク質分解を伴うカルシウム依存性プロテアーゼ(カルパインI)の活性化が、トロポニンのタンパク質分解と同様、再灌流障害を強調すると示唆されている。
【0105】
傷害を受けた組織細胞の再灌流は、細胞代謝の改変を有し、これが次に機能回復の遅延に寄与し得る。例えば傷害は、正味のラクタート産生を伴う細胞での嫌気性代謝を誘導し得る。ラクタート放出は再灌流の間持続し、正常な好気性代謝の回復遅延が示唆される。同様に、ミトコンドリアピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)の活性は、傷害後最大40%阻害され得、再灌流後最大30分の間抑制されたままであり得る。
【0106】
再灌流の間のこれらの事象はそれぞれ、組織細胞へのストレス、ならびに組織細胞のプログラム細胞死(アポトーシス)および壊死を引き起こし得る。アポトーシスは通常、傷ついた細胞および遺伝的に損傷した細胞から組織を「浄化」するよう機能し、サイトカインは、病原体に対する生物体の防護システムを動員するよう働く。しかし、重度傷害の条件下では、両方のストレス応答メカニズムが、それ自体、死亡の原因として働き得る。
【0107】
様々な実施形態において、再灌流の影響は、身体への損傷によって誘発され得る。損傷は、虚血、低酸素、梗塞、または塞栓によるものであり得る。損傷の処置は、再灌流および身体成分へのさらなる損傷を導き得る。
【0108】
虚血は、身体成分への血液供給の絶対的または相対的な不足であり得る。相対的不足は、身体成分に供給される血液(酸素送達)対、十分な酸素化のために身体成分に必要とされる血液の、わずかではあるが、不一致であり得る。虚血はまた、血液を供給する血管の収縮または閉塞による身体の一部への不十分な血流であり得、そして体内の任意の身体成分に影響を及ぼし得る。不十分な血液供給によって身体成分は低酸素になり、または、酸素が全く供給されなければ無酸素になる。これは、壊死を引き起こし得る。虚血のメカニズムは、大きく異なり得る。例えば、任意の身体成分に対する虚血は、頻脈(異常に速い心拍)、動脈硬化症(動脈の管腔を閉塞する脂質を含むプラーク)、低血圧(敗血症性ショック、心不全における低血圧)、血栓塞栓症(血塊)、血管の外側の圧迫(腫瘍)、塞栓症(循環における異物、例えば羊水塞栓症)、鎌状赤血球症(異常な形のヘモグロビン)、梗塞、血流を制限して血液を身体の先端へ押し出す誘導された重力、凍傷による局所的な超低温、氷、不適切な冷却圧迫治療、および止血帯などの四肢への血流を制限する任意の他の力による場合がある。四肢への血流を制限する力は、重度裂傷、切開、ナイフ創などの穿刺、鈍的外傷による粉砕損傷、および銃撃または榴散の創傷による銃創のために必要とされ得る。虚血は、心臓疾患、虚血性大腸炎、一過性虚血発作、脳血管偶発症候、急性腎傷害、破裂動静脈奇形、および末梢動脈閉塞性疾患の特徴であり得る。
【0109】
低酸素は、酸素の十分な供給の欠乏であり得る。低酸素は、全体としての身体(全身性低酸素)または身体の領域(組織低酸素)が、適当な酸素供給が欠乏している病的状態であり得る。動脈酸素のレベルにおける変動は、身体成分による酸素の供給と需要のミスマッチによる可能性がある。酸素供給の完全な欠乏は、無酸素である。低酸素は、低酸素性低酸素、貧血性低酸素、低酸素性低酸素、組織中毒性低酸素、組織中毒性低酸素、および虚血性低酸素であり得る。
【0110】
低酸素性低酸素は、動脈血における低い酸素分圧によって起こる身体全体への酸素の不十分な供給であり得る。低酸素性低酸素は、高地でなどの低い大気酸素分圧、下水溝などの変化した大気の換気混合物における酸素の置換、亜酸化窒素の娯楽的使用などの意図的な酸素の置換、睡眠時無呼吸もしくは減呼吸による血液の酸素飽和度の減少、慢性閉塞性肺疾患もしくは呼吸停止などの不十分な肺換気、肺循環での解剖学的もしくは機械的シャント、または心臓および肺での右→左シャントによる可能性がある。シャントは、依然として灌流される虚脱した肺胞または肺のある領域への換気の遮断を引き起こし得る。シャントは肺システムが換気されないことを意図した血液を提供し得、血管が左心室および気管支循環に入り、それが気管支に酸素を供給するため、ガス交換を妨害し得る。
【0111】
貧血性低酸素は、全酸素含有量が減少しているが、動脈酸素圧が正常な状態であり得る。低酸素性低酸素は、血液が酸素を標的の身体構成要素へ送達できない場合であり得る。低酸素性低酸素は、ヘモグロビンがそれに結合した酸素を放出する能力を阻害する一酸化炭素中毒、または血液中に蓄積する異常なヘモグロビンであるメトヘモグロビン血症によって起こり得る。組織中毒性低酸素は、能力を失った酸化的リン酸化酵素のため酸素を効果的に使用できないためであり得る。
【0112】
梗塞は、虚血を引き起こし得る病的状態の型である。梗塞は、閉塞のために十分な血液供給の喪失を引き起こした壊死組織の巨視的領域であり得る。梗塞は、血小板で構成される白色梗塞であり得、心臓、脾臓、および腎臓などの臓器組織において壊死を引き起こす。梗塞は、肺の臓器組織における赤血球およびフィブリン鎖で構成された赤色梗塞であり得る。梗塞と関連する疾患としては、心筋梗塞、肺塞栓症、脳血管偶発症候(脳卒中)、急性腎不全、末梢動脈閉塞性疾患(例は壊疽である)、抗リン脂質症候群、敗血症、巨細胞性動脈炎、ヘルニア、および腸捻転を挙げることができる。
【0113】
塞栓症は、虚血を引き起こし得る病的状態の型である。塞栓症は、身体の1つの部分から移動し、身体の別の部分で血管の閉塞または遮断を引き起こすものであり得る。塞栓症は、血栓塞栓症、脂肪塞栓症、空気塞栓症、敗血症性塞栓症、組織塞栓症、異物塞栓症、羊水塞栓症であり得る。血栓塞栓症は、血栓症の部位から、完全にまたは部分的に脱離した血塊であり得る。脂肪塞栓症は、血液循環中に逸脱した内因性脂肪組織であり得る。骨折は、破裂した血管および動脈への脂肪組織漏出の一例である。空気塞栓症は、肺胞の破裂および血管に漏出する吸入した空気であり得る。鎖骨下静脈の破裂または静脈内治療は、血管への空気漏出の例である。ガス塞栓症は、窒素およびヘリウムなどの気体であり得るが、それはそれらが不溶性で、血中に小泡を形成するためである。
【0114】
医薬的に許容し得る塩および賦形剤
本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、無機酸もしくは有機酸と反応し得る十分に塩基性の官能基、または無機塩基もしくは有機塩基と反応し得るカルボキシル基を有し、医薬的に許容し得る塩を形成し得る。医薬的に許容し得る酸付加塩は、当該技術分野で周知の通り医薬的に許容し得る酸から形成される。そのような塩としては、例えば全体として参照により本明細書に組み入れられるJournal of Pharmaceutical Science, 66, 2−19 (1977)およびThe Handbook of Pharmaceutical Salts; Properties, Selection, and Use. P. H. Stahl and C. G. Wermuth (eds.), Verlag, Zurich (Switzerland) 2002に列挙された医薬的に許容し得る塩が挙げられる。
【0115】
医薬的に許容し得る塩としては、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩(glucaronate)、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、パモ酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o−アセトキシ安息香酸塩、ナフタレン−2−安息香酸塩、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、α−ヒドロキシ酪酸塩、ブチン−1,4−二カルボン酸塩、ヘキシン−1,4−二カルボン酸塩、カプリン酸塩、カプリル酸塩、桂皮酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、リンゴ酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ニコチン酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、プロピオール酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、セバシン酸塩、スベリン酸塩、p−ブロモフェニルスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エチルスルホン酸塩、2−ヒドロキシエチルスルホン酸塩、メチルスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、ナフタレン−1,5−スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、および酒石酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
用語「医薬的に許容し得る塩」はまた、カルボン酸官能基などの酸性官能基および塩基を有する本発明の組成物の塩を指す。適切な塩基としては、ナトリウム、カリウムおよびリチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウムおよび亜鉛などの他の金属の水酸化物;アンモニアおよび非置換もしくはヒドロキシ置換されたモノ−、ジ−もしくはトリアルキルアミン、ジクロロヘキシルアミンなどの有機アミン;トリブチルアミン;ピリジン;N−メチル、N−エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ−、ビス−もしくはトリス(2−ヒドロキシエチル)アミン、2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミンもしくはトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミンなどのモノ−、ビス−もしくはトリス−(2−OH低級アルキルアミン);N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンなどのN,N,−ジ−低級アルキル−N−(ヒドロキシ低級アルキル)−アミン、またはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミン;N−メチル−D−グルカミン;およびアルギニン、リジンなどのアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載された組成物は、医薬的に許容し得る塩の形態である。
【0118】
さらに、本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、医薬的に許容し得る担体またはビヒクルを含む組成物の成分として、対象に投与され得る。そのような組成物は、場合により、適正な投与のための形態を提供するように、医薬的に許容し得る賦形剤の適切な量を含み得る。
【0119】
医薬賦形剤は、水および油などの液体であり得、石油、動物、植物性、もしくは合成起源のものを含み、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱物油、ゴマ油などである。医薬賦形剤は、生理食塩水、アラビアゴム、ゼラチン、デンプン糊、タルク、ケラチン、コロイドシリカ、尿素などであり得る。加えて、補助剤、安定化剤、増粘剤、滑沢剤および着色剤を用い得る。一実施形態において、医薬的に許容し得る賦形剤は、対象に投与される時には滅菌されている。水は、本明細書に記載された薬剤が静脈内投与される場合に有用な賦形剤である。生理食塩液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液もまた液体賦形剤として、特に注射溶液に用いられ得る。適切な医薬賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアラート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノールなども挙げられる。本明細書に記載された任意の薬剤は、所望ならば、微量の湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤も含み得る。
【0120】
配合、投与、投与量、および処置レジメン
本発明は、様々な配合剤中の記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を含む。本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、溶液、懸濁液、エマルジョン、滴下剤、錠剤、丸薬、ペレット、液体含有カプセル、粉末、徐放性配合剤、坐剤、エマルジョン、エアロゾル、スプレー、懸濁液、または使用に適した任意の他の剤形の形態をとり得る。一実施形態において、組成物は、カプセルの形態である(例えば、米国特許第5,698,155号)。適切な医薬的賦形剤の他の例は、参照により本明細書に組み入れられるRemington’s Pharmaceutical Sciences 1447−1676 (Alfonso R. Gennaro eds., 19th ed. 1995)に記載されている。
【0121】
必要に応じて、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)はまた、可溶化剤を含み得る。同じく薬剤は、当該技術分野で公知の適切なビヒクルまたは送達デバイスを用いて送達され得る。本明細書に概説された併用療法は、単一の送達ビヒクルまたは送達デバイス中で同時送達され得る。投与用組成物は、場合により、注射部位の疼痛を軽減するために、例えばリグノカインなどの局所麻酔を含み得る。
【0122】
本発明のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を含む配合剤は、簡便には単位投与剤形で提供され得、調剤学業界で周知の方法のいずれかによって調製され得る。そのような方法は治療薬を担体と会合させるステップを一般に含み、担体は1種または複数の付属成分を構成する。典型的には、配合剤は、治療薬を液体担体、微粒子固体担体、またはその両方と均一かつ緻密に会合させ、その後、必要に応じて生成物を所望の配合剤の投与剤形に成形する(例えば、湿式または乾式造粒、粉末ブレンドなど、そしてその後、当該技術分野で知られる従来法を利用して打錠する)ことによって調製される。
【0123】
一実施形態において、本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、本明細書に記載された投与方式に適合する組成物として日常的手順に従って配合される。
【0124】
投与経路としては、例えば皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻内、大脳内、膣内、経皮、直腸内、吸入により、あるいは局所的に、特に耳、鼻、目、または皮膚に対するものが挙げられる。幾つかの実施形態において、投与は、経口または非経口注射によって実行される。投与方式は、実施者の裁量に委ねてもよく、一部には医療状態の部位に依存する。ほとんどの例で、投与は、血流中への本明細書に記載された任意の薬剤の放出をもたらす。
【0125】
本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、経口投与できる。そのようなフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)はまた、他のいずれかの簡便な経路、例えば、静脈内輸液もしくはボーラス注射によって、上皮もしくは皮膚粘膜(mucocutaneous liningsを)通した吸収によって(例えば、口腔、直腸、および腸粘膜など)投与でき、かつ他の生物活性剤と共に投与できる。投与は、全身または局所であり得る。例えばリポソーム、微粒子、マイクロカプセルおよびカプセルにおけるカプセル化など、様々な送達システムが公知であり、それらを用いて投与できる。
【0126】
具体的実施形態において、処置を必要とする領域へ局所的に投与することが望ましい場合がある。
【0127】
一実施形態において、本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、日常的手順に従って、ヒトへの経口投与に適合する組成物として配合される。経口送達のための組成物は、例えば、錠剤、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁剤、顆粒、粉末、エマルジョン、カプセル剤、シロップ、またはエリキシルの形態であり得る。経口投与される組成物は、医薬的に口あたりのよい調製物を得るために、1つまたは複数の薬剤、例えば、甘味剤、例えばフルクトース、アスパルテームまたはサッカリン;香味料、例えばペパーミント、ウィンターグリーン油、またはチェリー;着色剤;および防腐剤を含み得る。その上、錠剤または丸薬形態の場合、組成物はコーティングされて胃腸管での崩壊および吸収を遅延し、それにより長時間にわたる持続的作用を提供できる。浸透圧的に能動に駆動する本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を取り囲む選択透過膜もまた、経口投与される組成物に適している。これらの後者のプラットフォームにおいて、カプセルを取り囲む環境からの液体は、駆動する化合物によって吸収され、化合物は膨潤して開口部から薬剤または薬剤組成物を排出する。これらの送達プラットフォームは、即時放出配合剤の急上昇するプロファイルに反して、本質的にゼロ次送達プロファイルを提供し得る。モノステアリン酸グリセロールまたはステアリン酸グリセロールなどの遅延材料もまた、有用であり得る。経口組成物は、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、および炭酸マグネシウムなどの標準の賦形剤を含み得る。一実施形態において、賦形剤は、医薬品等級である。活性化合物に加えて、懸濁液は、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、およびトラガカントなど、ならびにそれらの混合物などの懸濁剤を含み得る。
【0128】
非経口投与(例えば静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下および関節内注射および輸液)に適した投与剤形としては、例えば、溶液、懸濁液、分散液、エマルジョンなどが挙げられる。それらは、使用直前に滅菌注射可能媒体に溶解または懸濁され得る滅菌固体組成物の形態(例えば、凍結乾燥組成物)でも製造され得る。それらは、例えば、当該技術分野で公知の懸濁剤または分散剤を含有し得る。
【0129】
本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)の投与量および投与スケジュールは、非限定的に、処置される疾患、対象の一般的健康状態、および投与する医師の裁量を含む、様々なパラメータに依存し得る。本明細書に記載された任意の薬剤は、それを必要とする対象に、追加の治療薬を投与する前に(例えば、約5分、約15分、約30分、約45分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約12時間、約24時間、約48時間、約72時間、約96時間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約8週間、または約12週間前に)、追加の治療薬と同時に、または追加の治療薬の後に(例えば、約5分、約15分、約30分、約45分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約12時間、約24時間、約48時間、約72時間、約96時間、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約8週間、または約12週間後に)投与され得る。様々な実施形態において、本明細書に記載された任意の薬剤は、約1分間あけて、約10分間あけて、約30分間あけて、約1時間未満あけて、約1時間あけて、約1時間〜約2時間あけて、約2時間〜約3時間あけて、約3時間〜約4時間あけて、約4時間〜約5時間あけて、約5時間〜約6時間あけて、約6時間〜約7時間あけて、約7時間〜約8時間あけて、約8時間〜約9時間あけて、約9時間〜約10時間あけて、約10時間〜約11時間あけて、約11時間〜約12時間あけて、約24時間以下あけて、または48時間以下あけて投与される。
【0130】
担体材料と混和されて単一投薬量を生成する本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)の量は、処置される対象および特定の投与方式に応じて変動し得る。インビトロまたはインビボアッセイを利用して、最適な投薬範囲の同定を支援できる。
【0131】
一般に、有用な用量は、当業者に公知である。例えば用量は、内容が全体として参照により組み入れられる、参考資料Physicians’ Desk Reference, 66th Edition, PDR Network; 2012 Edition (December 27, 2011)を用いて決定され得る。
【0132】
本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)の投与量は、状態の重症度、状態が処置されるのかまたは予防されるのか、ならびに処置される対象の年齢、体重および健康状態を含む複数の因子に依存し得る。加えて、特定の対象に関する薬理ゲノミクス(治療薬の薬物動態、薬力学または有効性プロファイルに及ぼす遺伝子型の影響)情報は、用いられる投与量に影響を及ぼし得る。さらに、厳密な個々の投与量は、投与される薬剤の具体的な組み合わせ、投与時間、投与経路、配合剤の性質、排泄速度、処置される個々の疾患、障害の重症度、および障害の解剖学的位置を含む種々の因子に幾分か依存して適合され得る。投与量の若干の変動が、予測され得る。
【0133】
一般に、哺乳動物に経口投与される場合、本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)の投与量は、約0.001mg/kg/日〜約100mg/kg/day、約0.01mg/kg/日〜約50mg/kg/日、または約0.1mg/kg/日〜約10mg/kg/日であり得る。ヒトに経口投与される場合、本明細書に記載された任意の薬剤の投与量は通常、約0.001mg〜約1000mg/日、約1mg〜約600mg/日、または5mg〜約30mg/日である。
【0134】
非経口注射による本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)の投与の場合、投与量は通常、約0.1mg〜約250mg/日、約1mg〜約20mg/日、または約3mg〜約5mg/日である。注射は、1日4回まで与えられてもよい。一般に経口または非経口投与される場合、本明細書に記載された任意の薬剤の投与量は通常、約0.1mg〜約1500mg/日、または約0.5mg〜約10mg/日、または約0.5mg〜約5mg/日である。約3000mg/日までの投与量を、投与できる。
【0135】
別の実施形態において、送達は、小胞中、特にリポソーム中であり得る(Langer, 1990, Science 249:1527−1533; Treat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez−Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353−365 (1989)参照)。
【0136】
本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、当業者に周知である制御放出もしくは持続放出手段によって、または送達デバイスによって投与され得る。例としては、それぞれが全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許第3,845,770号;同第3,916,899号;同第3,536,809号;同第3,598,123号;および同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号および同第5,733,566号に記載されたものが挙げられるが、これらに限定されない。そのような投与剤形は、例えば、ヒドロプロピルメチル(hydropropylmethyl)セルロース、他のポリマーマトリックス、ゲル、透過膜、浸透圧システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、マイクロスフェア、またはこれらの組合せを、所望の放出プロファイルを提供するために種々の割合で用いて、1種または複数の有効成分の制御放出または持続放出をもたらすのに有用であり得る。本明細書に記載されるものを含む、当業者に公知の適切な制御放出または持続放出配合剤は、本明細書に記載された薬剤の有効成分との使用のために即座に選択できる。したがって本発明は、非限定的に、制御放出または持続放出に適合する錠剤、カプセル、ジェルキャップ、およびカプレットなどの経口投与に適した単一の単位投与剤形を提供する。
【0137】
有効成分の制御放出または持続放出は、非限定的に、pH変化、温度変化、適切な波長の光による刺激、酵素の濃度もしくは利用可能性、水の濃度もしくは利用可能性、または他の生理学的条件もしくは化合物を含む様々な条件によって刺激され得る。
【0138】
別の実施形態において、ポリマー材料が用いられ得る(Medical Applications of Controlled Release, Langer and Wise (eds.), CRC Pres., Boca Raton, Florida (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolen and Ball (eds.), Wiley, New York (1984); Ranger and Peppas, 1983, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61参照;同じくLevy et al., 1985, Science 228:190; During et al., 1989, Ann. Neurol. 25:351; Howard et al., 1989, J. Neurosurg. 71:105参照)。
【0139】
別の実施形態において、制御放出システムは、処置される標的領域の近部に配置され得、したがって全身用量の一部のみを必要とし得る(例えばGoodsonのMedical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp. 115−138 (1984)参照)。Langer, 1990, Science 249:1527−1533による論評おいて議論された他の制御放出システムを使用してもよい。
【0140】
本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)の投与は、独立して、1日あたり1〜4回、または1月あたり1〜4回、または1年に1〜6回、または2年、3年、4年もしくは5年毎に1回であり得る。投与は、約1日または約1ヶ月、約2ヶ月、約3ヶ月、約6ヶ月、約1年、約2年、約3年の期間であり得、対象の一生涯もあり得る。慢性的な長期投与が、多くの症例で適用されるであろう。投与量は、単一用量で、または複数の用量に分割されて投与され得る。一般に、所望の投与量は、数ヶ月または数年またはそれを超えるより長期間の投与が必要な場合があるが、通常少なくとも数週間または数ヶ月にわたり、長期間のために設定された間隔で投与されなければならない。
【0141】
本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を用いる投与レジメンは、対象のタイプ、種、年齢、体重、性別および医療状態;処置される状態の重症度;投与経路;対象の腎または肝機能;個体の薬理ゲノミクスの性質;および用いられる本発明の具体的化合物を含む種々の要因に応じて選択され得る。本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、1日1回投与されるか、または日用量の総量を1日あたり2回、3回もしくは4回に分割して投与され得る。さらに、本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、投与レジメン全期間に間欠的ではなくむしろ連続して投与され得る。
【0142】
併用療法およびコンジュゲーション
幾つかの実施形態において、本発明は、フラジェリン関連組成物と、追加の薬剤を対象に投与することをさらに含む方法とを提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、共投与および/または共配合に関係する。本明細書に記載された組成物はいずれも、共配合および/または共投与され得る。
【0143】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載された任意のフラジェリン関連組成物は、別の薬剤と共投与されると相乗作用し、そのような薬剤を単独療法として用いる場合に一般に利用される用量よりも低い用量で投与される。様々な実施形態において、本明細書で参照される任意の薬剤は、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物のいずれかと併用され得る。
【0144】
幾つかの実施形態において、本発明は、追加の薬剤としての化学療法薬に関係する。
【0145】
化学療法薬の例としては、アルキル化剤、例えばチオテパおよびCYTOXANシクロホスファミド;アルキルスルホナート、例えばブスルファン、イムプロスルファンおよびピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドパ、カルボコン、メツレドパおよびウレドパ;エチレンイミンおよびメチラメラミン(アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホルアミドおよびトリメチロールメラミンを含む);アセトゲニン(例えば、ブラタシンおよびブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシンおよびビゼレシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(例えば、クリプトフィシン1およびクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW−2189およびCB1−TM1を含む);エロイテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノベムビチン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロスウレア(nitrosureas)、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチンおよびラニムヌスチン;抗生剤、例えばエネジイン抗生剤(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγIIおよびカリケアマイシンωII(例えば、Agnew, Chem Intl. Ed. Engl., 33: 183−186 (1994)参照);ダイネマイシンAを含むダイネマイシン;ビスホスホナート、例えばクロドロナート;スペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォアおよび関連のクロモプロテインエネジイン抗生物質クロモフォア)、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCINドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシンおよびデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、例えばマイトマイシンC、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、プロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメックス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗物質、例えばメトトレキサートおよび5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリンアナログ、例えばフルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフル、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、ドロモスタノロンプロピオナート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン:抗アドレナル(anti−adrenals)、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補給剤、例えばフロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート;デホファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン;エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド、例えばメイタンシンおよびアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモル;ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体(JHS Natural Products,Eugene、オレゴン州所在);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン(triaziquone);2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT−2トキシン、ベラクリンA、ロリジンAおよびアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えばTAXOLパクリタキセル(Bristol−MyersSquibb Oncology,ニュージャージー州プリンストン所在)、ABRAXANE(パクリタキセルのクレモホール不含でアルブミン操作されたナノ粒子配合物)(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg、111)、およびTAXOTEREドキセタキセル(Rhone−Poulenc Rorer, Antony,フランス所在);クロランブシル;GEMZARゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金アナログ、例えばシスプラチン、オキサリプラチンおよびカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;NAVELBINEビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセロダ(xeloda);イバンドロネート;イリノテカン(Camptosar、CPT−11)(イリノテカンと5−FUおよびロイコボリンとの処置レジメンを含む);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド、例えばレチノイン酸;カペシタビン;コムブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン処置レジメンを含むオキサリプラチン(FOLFOX);ラパチニブ(Tykerb);PKC−αの阻害剤、Raf、H−Ras、EGFR(例えば、エルロチニブ(Taeceva))および細胞増殖を減少させるVEGF−A、ならびに上記のいずれかの医薬的に許容し得る塩、酸または誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、処置方法は、放射線使用をさらに含み得る。加えて処置方法は、光線力学的治療の利用をさらに含み得る。
【0146】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、修飾された、即ち、共有結合が組成物の活性を妨害しないような組成物への任意の型の分子の共有結合により修飾された誘導体を包含する。例えば、非限定的に、誘導体は、とりわけ、グリコシル化、脂質付加、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への結合などにより修飾されている組成物を包含する。数多くの化学修飾のいずれかを、非限定的に、特異的化学切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシン(turicamycin)の代謝合成などを含む公知の技術によって実施できる。追加として、誘導体は、1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含有し得る。
【0147】
さらに別の実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、細胞毒性剤をさらに含み、例示的実施形態において、毒素、化学療法剤、放射性同位体、およびアポトーシスまたは細胞死を誘発する薬剤を含む。そのような薬剤は、本明細書に記載された組成物にコンジュゲートされ得る。
【0148】
したがって、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を翻訳後修飾して、化学的リンカーなどのエフェクター部分、例えば蛍光色素、酵素、基質、生物発光材料、放射性材料、および化学発光部分などの検出可能部分、または例えばストレプトアビジン、アビジン、ビオチン、サイトトキシン、細胞毒性剤、および放射性材料などの官能基部分を付加できる。
【0149】
例示的な細胞毒性剤としては、メトトレキサート、アミノプテリン、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン;メクロレタミン、チオエパクロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、マイトマイシンC、ロムスチン(CCNU)、1−メチルニトロソ尿素、シクロソスファミド、メクロレタミン、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、シスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチンおよびカルボプラチン(パラプラチン)などのアルキル化剤;ダウノルビシン(以前はウノマイシン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、デトルビシン、カルミノマイシン、イダルビシン、エピルビシン、ミトキサントロンおよびビサントレンを含むアントラサイクリン;ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ブレオマイシン、カリケアマイシン、ミトラマイシン、およびアンスラマイシン(AMC)を含む抗生物質;ならびにビンカアルカロイド、ビンクリスチンおよびビンブラスチンなどの有糸分裂阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の細胞毒性剤としては、パクリタキセル(タキソール)、リシン、緑膿菌外毒素、ゲムシタビン、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、エトポシド、テノポシド、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、プロカルバジン、ヒドロキシ尿素、アスパラギナーゼ、コルチコステロイド、ミトタン(O,P’−(DDD))、インターフェロン、およびこれらの細胞毒性剤の混合物が挙げられる。
【0150】
さらなる細胞毒性剤としては、カルボプラチン、シスプラチン、パクリタキセル、ゲムシタビン、カリケアマイシン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、シクロホスファミド、ビンクリスチン、ブレオマイシン、VEGFアンタゴニスト、EGFRアンタゴニスト、プラチン(platins)、タキソール、イリノテカン、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、ロイコボリン、ステロイド、シクロホスファミド、メルファラン、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビン)、ムスチン、チロシンキナーゼ阻害剤、放射線療法、性ホルモンアンタゴニスト、選択的アンドロゲン受容体モジュレータ、選択的エストロゲン受容体モジュレータ、PDGFアンタゴニスト、TNFアンタゴニスト、IL−1アンタゴニスト、インターロイキン(例えばIL−12またはIL−2)、IL−12Rアンタゴニスト、毒素結合モノクローナル抗体、腫瘍抗原特異的モノクローナル抗体、Erbitux、Avastin、ペルツズマブ、抗CD20抗体、Rituxan、オクレリズマブ、オファツムマブ、DXL625、HERCEPTIN(登録商標)、またはそれらの任意の組み合わせなどの化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。リシン、ジフテリア毒素およびシュードモナス毒素などの植物および細菌からの毒性酵素を治療薬にコンジュゲートさせて、細胞型特異的殺傷試薬を生成させ得る(Youle, et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 77:5483 (1980); Gilliland, et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 77:4539 (1980); Krolick, et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 77:5419 (1980))。
【0151】
他の細胞毒性剤としては、米国特許第6、653、104号のGoldenbergによって記載された細胞毒性リボヌクレアーゼが挙げられる。本発明の実施形態はまた、アルファまたはベータ粒子を発する放射性核種が、複合体形成剤の使用を伴って、または伴わずに、抗体またはその結合断片に安定して結合される、放射性免疫複合体に関する。そのような放射性核種としては、リン32、スカンジウム47、銅67、ガリウム67、イットリウム88、イットリウム90、ヨウ素125、ヨウ素131、サマリウム153、ルテチウム177、レニウム186、またはレニウム188などのベータ放射体、およびアスタチン211、鉛212、ビスマス212、ビスマス213またはアクチニウム225などのアルファ放射体が挙げられる。
【0152】
例示的な検出可能な部分としてはさらに、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼおよびルシフェラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例示的な蛍光材料として、ローダミン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアナート、ウンベリフェロン、ジクロロトリアジニルアミン、フィコエリトリンおよび塩化ダンシルが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例示的な化学発光部分としては、ルミノールが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例示的な生物発光材料としては、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例示的な放射性材料としては、ヨウ素125、炭素14、硫黄35、トリチウムおよびリン32が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
様々な実施形態において、本発明の追加の薬剤としては、1種または複数の血液製剤、コロニー刺激因子、サイトカイン、および/または増殖因子、抗生物質、希釈剤および/または遮断薬、動員剤またはキレート化剤、幹細胞移植片、抗酸化剤またはフリーラジカル、ならびに放射線防護剤が挙げられる。
【0154】
幾つかの実施形態において、血液製剤は、フィルグラスチム(例えば、NEUPOGEN)、場合によりペグ化され得る顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)(例えば、NEULASTA);サルグラモスチム(LEUKINE);ならびに顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)およびKSFのうちの1つまたは複数である。
【0155】
幾つかの実施形態において、追加の薬剤は、放射線感受性幹細胞集団を補完および/または保護することによって放射線防護を付与し得る1種または複数のサイトカインおよび/または増殖因子である。最小の副作用での放射線防護は、幹細胞因子(SCF、c−kitリガンド)、Flt−3リガンド、およびインターロイキン−1断片であるIL−1b−rdの使用によって実現され得る。防護は、幹細胞の増殖の誘導(全ての上記サイトカイン)、およびそれらのアポトーシスの予防(例えば、SCFを介して)によって実現され得る。処置により、照射の前に白血球およびそれらの前駆体の蓄積が可能になり、したがって照射後の免疫系のより急速な再構成が可能になる。SCFは、1.3〜1.35の範囲での線量変更因子(DMF)で、致死的に照射されたマウスを効率的に救済し、胃腸症候群に対しても効果的である。Flt−3リガンドはまた、マウスおよびウサギにおいて強力な防護を提供する。
【0156】
幾つかの因子は、本来サイトカインではないが、免疫細胞の増殖を刺激し、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物と併用され得る。例えば、5−AED(5−アンドロステンジオール)は、サイトカインの発現を刺激し細菌およびウイルス感染に対する耐性を増加させるステロイドである。トリクロロ(ジオキソエチレン−O,O’−)テルル酸アンモニウム(AS−101)などの合成化合物もまた、数多くのサイトカインの分泌を誘導するために、そして本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物との組み合わせのために用いられ得る。増殖因子およびサイトカインもまた、胃腸症候群に対する防護を提供するために用いられ得る。ケラチノサイト増殖因子(KGF)は、腸粘膜において増殖および分化を促進し、そして腸陰窩において照射後の細胞生存を増加させる。造血性サイトカインおよび放射線防護剤SCFもまた、腸幹細胞の生存および関連する短期の生物体生存を増加させ得る。
【0157】
特定の実施形態において、フラジェリン関連組成物は、サイトカインのレジメン(例えば、FILGRASTIM(G−CSF)では2.5〜5μg/kg/d QD s.c.(100〜200g/m
2/d);SARGRAMOSTIMの場合(GM−CSF)5〜10μg/kg/d QD s.c.(200〜400g/m
2/d);そして/またはPEGFILGRASTIMの場合(pegG−CSF)6mgs.c.で1回)に加えられ得る。
【0158】
幾つかの実施形態において、抗生物質は、抗菌薬(抗グラム陽性および抗グラム陰性菌剤)、および/または抗真菌薬、および/または抗ウイルス薬のうちの1つまたは複数である。非限定的例としては、幾つかの実施形態において、抗生物質は、キノロン、例えばシプロフロキサシン、レボフロキサシン、シュードモナス属をカバーする第三世代または第四世代セファロスポリン:例えばセフェピム、セフタジジム、またはアミノグリコシド:例えばゲンタマイシン、アミカシン、ペニシリンもしくはアモキシシリン、アシクロビル、バノマイシンであり得る。様々な実施形態において、抗生物質は、緑膿菌をターゲットとする。
【0159】
幾つかの実施形態において、追加の薬剤は、希釈剤および/または遮断薬である。例えば、安定したヨウ化化合物(例えば、液体(ThyroShield)および錠剤(Iosat)KI(NUKEPILLS)、Rad Block、I.A.A.A.M.、No−Rad、Life Extension(LEF)、KI4U、NukeProtect、ProKI)を用いることができる。経口ヨウ化カリウム(KI)1日130mg用量を、フラジェリン関連組成物と一緒に用いることができる。
【0160】
幾つかの実施形態において、追加の薬剤は、可動化剤またはキレート化剤である。例示的可動化剤としては、放射性化合物の甲状腺滞留を減少し得るプロピルチオウラシルおよびメチマゾールが挙げられる。さらにフラジェリン関連組成物をヒト患者へ増加する口腔液と一緒に用いての排泄を促進できる。例示的キレート化剤は、水溶性であり尿中に排泄される。例示的キレート化剤としては、DTPAおよびEDTAが挙げられる。ジメルカプロールは、水銀、鉛、ヒ素、金、ビスマス、クロム、およびニッケルと安定したキレートを形成し、そのためこれらの元素の放射性同位体による内部混入の処置に考慮され得る。ペニシラミンは、銅、鉄、水銀、鉛、金、およびおそらく他の重金属をキレート化する。
【0161】
幾つかの実施形態において、追加の薬剤は、幹細胞移植片(例えば、骨髄移植片、PBSCT、MSCT)である。幾つかの実施形態において、幹細胞移植片は、CLT−008(Cellerant)のRemestemcel−L(Osiris)である。
【0162】
幾つかの実施形態において、追加の薬剤は、抗酸化剤またはフリーラジカルである。本発明の実践において用いられ得る抗酸化剤およびフリーラジカルスカベンジャーとしては、システイン、システアミン、グルタチオンおよびビリルビンなどのチオール類;アミフォスチン(WR−2721);ビタミンA;ビタミンC;ビタミンE;ならびにインディアンホーリーバジル(カミメボウキ)、オリエンチンおよびビセニンなどのフラボノイド類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0163】
幾つかの実施形態において、追加の薬剤は、放射線防護剤、例えば抗酸化剤(例えば、アミフォスチンおよびビタミンE、γ−トコトリエノール(ビタミンE部分)およびゲニステイン(大豆副産物))、サイトカイン(例えば、幹細胞因子)増殖因子(例えば、ケラチノサイト増殖因子)、ステロイド(例えば、5−アンドロステンジオール)、トリクロロ(ジオキソエチレン−O,O’)テルル酸アンモニウム、甲状腺保護剤(例えば、ヨウ化カリウム(KI)またはヨウ素酸カリウム(KIO
3)(例えば、液体(ThyroShield)および錠剤(Iosat)KI(NUKEPILLS)、Rad Block、I.A.A.A.M.、No−Rad、Life Extension(LEF)、KI4U、NukeProtect、ProKI)、鎮吐剤、下痢止め薬、グラニセトロン(KYTRIL)、オンダンセトロン(ZOFRAN)、および5−HT3ブロッカーなどの制吐剤(例えば、経口予防制吐剤)、鎮痛剤、抗不安薬、鎮静剤、サイトカイン療法、および抗生物質であり得る。
【0164】
追加の薬剤として用いられ得る胃洗浄および催吐剤は、有毒材料の摂取後に迅速かつ完全に胃を空にするのに用いることができる。同じく追加の薬剤として用いられ得る下剤、緩下剤、および浣腸は、結腸内の放射性材料の滞留時間を短縮できる。さらなる追加の薬剤としては、摂取または吸入された放射性核種の胃腸からの取り込みを制限し得るイオン交換樹脂、セシウム137の便排泄を促進するためにヒトにおいて用いられてきた、フェロシアン化第二鉄(プルシアンブルー)およびアルギン酸塩が挙げられる。
【0165】
さらに別の実施形態において、追加の薬剤は、例えば、5−AED(Humanetics)、Ex−RAD(Onconova)、ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(Soligenix)、無毒化エンドトキシン、EA−230(Exponential Biotherapies)、ON−01210.Na(Onconova)、Sothrombomodulin alfa(PAION)、Remestemcel−L(Osiris)、BIO−100、BIO−200、BIO−300、BIO−400、BIO−500(Humanetics)、CLT−008(Cellerant)、EDL−2000(RxBio)、Homspera(ImmuneRegen)、MnDTEIP(Aeolus Pharmaceuticals)、RLIP−76(Terapio)、ならびにRX−100およびRX101(RxBio)など、放射線関連障害を処置するために用いられる薬剤であり得る。
【0166】
さらに幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を、遮蔽;放射線被爆時間の減少;および身体被曝を減少させる物質の使用(例えば、グローブ、フェースマスク、フード、防護服(例えば、TYVEK ANTI−C SUITSまたはMOPP−4などの汚染防護服))との組み合わせで用いることができる。
【0167】
治療薬をコードするウイルスベクターおよびそれを発現する細胞
様々な実施形態において、本発明のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、ウイルスベクターおよび形質転換細胞によって発現される。例えば、本明細書に記載されたウイルスベクターおよびヒト形質転換細胞は、本発明の組成物を発現し得る。一実施形態において、治療薬を発現するウイルスベクターまたはヒト細胞は、腫瘍の付近で薬剤を発現できる。細胞は、インビボで修飾され得るか、あるいはエクスビボで修飾された細胞を、注射などの種々の方法によって患者に投与できる。
【0168】
一実施形態において、細胞は、腫瘍細胞である。エクスビボ形質転換の場合、そのような腫瘍細胞は、当該技術分野で公知の通り、放射線照射されて細胞の複製能力が排除されるが、投与後の治療薬の一過性発現を維持している。インビボ形質転換では、非組込み型発現ベクターが、好まれるであろう。
【0169】
特定の実施形態において、腫瘍細胞は、自家性または内在性である。前者の場合、腫瘍細胞は、患者から採取され、治療薬をコードする構築物をトランスフェクトまたは形質導入されて、例えば放射線照射後に、患者に再導入される。後者の場合、腫瘍細胞は、本明細書に記載されるように適切な構築物の局所投与によって、インビボで形質転換される。
【0170】
別の実施形態において、修飾された腫瘍細胞は、同種異系である。したがって同種異系腫瘍細胞は、細胞株で維持され得る。この場合、腫瘍細胞はこの細胞株から選択され、放射線照射され、患者に導入され得る。
【0171】
フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を産生可能な修飾ヒト細胞は、治療薬をコードするベクターを細胞にトランスフェクトまたは形質導入することによって、作製され得る。フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)、または治療薬の組み合わせの発現のための発現ベクターは、当該技術分野で周知の方法によって作製され得る。
【0172】
様々な実施形態において、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、1つまたは複数の核酸構築物の形態で、患者に投与され得る。
【0173】
一実施形態において、構築物は、レトロウイルスベクターを含む。レトロウイルスベクターは、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)をコードするDNAを細胞ゲノム中に永続的に組込むことが可能である。したがって、自家細胞または同種異系細胞のエクスビボ操作の場合、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を構成的に産生する安定した細胞株が、調製され得る。一実施形態において、細胞は、患者に投与される前に、放射線照射される。照射された細胞は、限定された期間、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を産生する。
【0174】
一実施形態において、発現構築物は、哺乳動物細胞において高レベルの一過性発現を示すSFVベクターを含む。SFVベクターは、例えば全体として参照により本明細書に組み入れられるLundstrom, Expert Opin. Biol. Ther. 3:771−777 (2003)に記載されている。したがって、患者における内在性細胞のインビボ操作の場合、高レベルのフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)の一過性発現が、完遂され得る。
【0175】
インビボで組換えタンパク質を発現可能な系は、当該技術分野で公知である。例としては、系は、開示が全体として参照により本明細書に組み入れられるFang et al., Nature Biotech. 23(5): 584−590 (2005)および米国特許出願公開第2005/0003506号に開示された2A媒介抗体発現系を用いることができる。当該技術分野で公知の他の系が企図され、それを本明細書に記載されるようにインビボでフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を産生するのに適合させることもできる。
【0176】
様々な実施形態において、本明細書に開示されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)発現細胞または本明細書に開示された本発明の薬剤の投与を、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インターロイキン3(IL−3)、インターロイキン12(IL−12)、インターフェロンなどの抗原提示細胞を刺激するサイトカイン、またはそのようなサイトカインを発現可能な細胞ワクチンの投与と組み合わせることができる。幾つかの実施形態において、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を発現する細胞は、そのようなサイトカインを発現するようにさらに修飾されている。IL−1、IL−2、B7、抗CD3および抗CD28など、T細胞増殖および分泌を増進することが知られている追加のタンパク質および/またはサイトカインを、本発明のフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)と同時にまたは連続して用いて免疫応答を増強し、および/または共刺激経路を刺激し、および/またはエフェクターT細胞の活性化/増殖を誘導できる。
【0177】
ベクターおよび形質転換法
フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)をコードする発現ベクターは、ウイルスまたは非ウイルスであり得る。ウイルスベクターは、インビボでの使用に好ましい。本発明の発現ベクターは、哺乳動物細胞内で機能的である発現制御領域またはその構成要素に動作可能に連結された、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)またはその成分をコードする核酸を含む。発現制御領域は、遮断薬および/または刺激薬が発現ベクターで形質転換されたヒト細胞内で産生されるように、動作可能に連結された遮断薬および/または刺激薬をコードする核酸の発現を駆動できる。
【0178】
発現制御領域は、動作可能に連結された核酸の発現に影響を及ぼす、プロモータおよびエンハンサなどの調節型ポリヌクレオチド(regulatory polynucleotides)(本明細書ではエレメントと称される場合もある)である。
【0179】
本発明の発現ベクターの発現制御領域は、動作可能に連結されたコードする核酸をヒト細胞において発現できる。一実施形態において、細胞は、腫瘍細胞である。別の実施形態において、細胞は、非腫瘍細胞である。
【0180】
一実施形態において、発現制御領域は、動作可能に連結された核酸に、調節可能な発現を付与する。シグナル(刺激と称される場合もある)が、そのような発現制御領域に動作可能に連結された核酸の発現を増加または減少させ得る。シグナルに応答して発現を増加させるそのような発現制御領域は多くの場合、誘導性と称される。シグナルに応答して発現を減少させるそのような発現制御領域は多くの場合、抑制性と称される。典型的には、そのようなエレメントによって付与される増加または減少の量は、存在するシグナルの量に比例し、シグナルの量が多い程、発現の増加または減少が多い。
【0181】
一実施形態において、本発明は、合図に一過性に応答して高レベルの発現を実行可能な誘導性プロモータの使用を企図する。そのような発現制御配列を含むフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)の発現ベクターで形質転換された細胞は、腫瘍細胞の付近にある場合、形質転換細胞を適切な合図にさらすことによって、高レベルの薬剤を一過性に産生するように誘導される。例示的な誘導性発現制御領域としては、低分子化学物質などの合図で刺激される誘導性プロモータを含むものが挙げられる。個々の例は、例えば、それぞれが全体として参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,989,910号、同第5,935,934号、同第6,015,709号、および同第6,004,941号に見出すことができる。
【0182】
発現制御領域は、ネイティブプロモータおよびエンハンサエレメントなどの全長プロモータ配列、ならびに全長または非変種の機能の全てまたは一部を保持する部分配列またはポリヌクレオチドを含む。核酸配列、部分配列または断片を参照する際に用いられる場合の、本明細書で用いられる用語「機能的」およびその文法上の変形例は、その配列がネイティブ核酸配列(例えば、非変種または非修飾配列)の1つまたは複数の機能を有することを意味する。
【0183】
本明細書で用いられる「動作可能な連結」は、それらの意図される様式でそれらが機能できるように、そのように記載された構成要素の物理的並置を意味する。核酸との動作可能な連結での発現制御エレメントの例において、その関連は、制御エレメントが核酸の発現を調整するようになっている。典型的には、転写を調整する発現制御領域は、転写される核酸の5’末端付近(即ち、「上流」)に並置されている。発現制御領域は、転写される配列の3’末端(即ち、「下流」)または転写産物(例えば、イントロン)の中に配置されてもよい。発現制御エレメントは、転写配列から離れて(例えば、核酸から100〜500、500〜1000、2000〜5000、またはそれよりも多くのヌクレオチドだけ離れて)配置されてよい。発現制御エレメントの具体的例はプロモータであり、それは通常は転写される配列の5’側に位置する。発現制御エレメントの別の例はエンハンサであり、それは転写される配列の5’もしくは3’側に、または転写される配列内に位置し得る。
【0184】
ヒト細胞において機能的な発現系は当該技術分野で周知であり、ウイルス系を含む。一般に、ヒト細胞において機能的なプロモータは、哺乳動物RNAポリメラーゼに結合しB7−H4リガンドコード配列のmRNAへの下流(3’)の転写を開始できる任意のDNAである。プロモータは、通常はコード配列の5’末端付近に位置する転写開始領域と、典型的には転写開始部位の25〜30塩基対上流に位置するTATAボックスと、を有するであろう。TATAボックスは、RNAポリメラーゼを指向して正しい部位でRNA合成を開始すると考えられる。プロモータはまた、典型的にはTATAボックスの100〜200塩基対上流に位置する、上流のプロモータエレメント(エンハンサエレメント)を典型的に含む。上流のプロモータエレメントは、転写が開始される速度を決定し、いずれか一方の方向に作用し得る。特に、プロモータとしての使用は、哺乳動物ウイルス遺伝子からのプロモータであり、それはウイルス遺伝子が多くの場合高度に発現され、広範囲の宿主を有するためである。例としては、SV40初期プロモータ、マウス哺乳動物腫瘍ウイルスLTRプロモータ、アデノウイルス主要後期プロモータ、単純ヘルペスウイルスプロモータ、およびCMVプロモータが挙げられる。
【0185】
典型的には、哺乳動物細胞によって認識される転写終結およびポリアデニル化配列は、翻訳終止コドンの3’側に位置する調節領域であり、つまりプロモータエレメントと共に、コード配列に隣接する。成熟mRNAの3’末端は、部位特異性翻訳後切断およびポリアデニル化によって形成される。転写ターミネータおよびポリアデニル化シグナルの例としては、SV40由来のものが挙げられる。イントロンもまた、発現構築物に含まれ得る。
【0186】
核酸を生存する細胞に導入するために利用可能な種々の技術が存在する。核酸を哺乳動物細胞にインビトロで転移させるのに適した技術としては、リポソームの使用、電気穿孔、微量注入法、細胞融合、ポリマーを基にしたシステム、DEAEデキストラン、ウイルス形質導入、リン酸カルシウム沈降法などが挙げられる。インビボ遺伝子導入の場合、多数の技術および試薬も用いられ、リポソーム;キトサンおよびゼラチンなどの天然ポリマーに基づく送達ビヒクルを含み、ウイルスベクターもまたインビボ形質導入に好まれる。幾つかの状況において、腫瘍細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体またはリガンドなどの標的薬剤を提供することが望ましい。リポソームが用いられる場合、エンドサイトーシスに関連する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質、例えば特定の細胞型に指向性のカプシドタンパク質またはその断片、サイクリングにおいて内在化を受けるタンパク質に対する抗体、細胞内局在をターゲットとし細胞内半減期を増加させるタンパク質を、標的化のために、そして/または取り込みを促進するために用いることができる。受容体を介したエンドサイトーシスの技術は、例えばWu et al., J. Biol. Chem. 262, 4429−4432 (1987);およびWagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 3410−3414 (1990)に記載されている。
【0187】
適切ならば、遺伝子送達物質、例えば組込み配列を用いることもできる。数多くの組込み配列が、当該技術分野で公知である(例えば、Nunes−Duby et al., Nucleic Acids Res. 26:391−406, 1998; Sadwoski, J. Bacteriol., 165:341−357, 1986; Bestor, Cell, 122(3):322−325, 2005; Plasterk et al., TIG 15:326−332, 1999; Kootstra et al., Ann. Rev. Pharm. Toxicol., 43:413−439, 2003参照)。これらには、リコンビナーゼおよびトランスポサーゼが含まれる。例としては、Cre(Sternberg and Hamilton, J. Mol. Biol., 150:467−486, 1981)、ラムダ(Nash, Nature, 247, 543−545, 1974)、FIp(Broach, et al., Cell, 29:227−234, 1982)、R(Matsuzaki, et al., J. Bacteriology, 172:610−618, 1990)、cpC31(例えば、Groth et al., J. Mol. Biol. 335:667−678, 2004参照)、スリーピングビューティー、マリナーファミリーのトランスポサーゼ(Plasterk et al.,上掲)、ならびにレトロウイルスまたはレンチウイルスのLTR配列およびAAVのITR配列など、ウイルス組込みを提供する成分を有するAAV、レトロウイルス、およびアンチウイルスなどのウイルスを組込むための成分(Kootstra et al., Ann. Rev. Pharm. Toxicol., 43:413−439, 2003)が挙げられる。
【0188】
ウイルスベクター
一態様において、本発明は、ウイルスベクターであるフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)の発現のための発現ベクターを提供する。遺伝子療法のために有用な多数のウイルスベクターが、公知である(例えば、Lundstrom, Trends Biotechnol., 21: 117, 122, 2003参照)。
【0189】
例示的ウイルスベクターとしては、アンチウイルス(LV)、レトロウイルス(RV)、アデノウイルス(AV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、およびαウイルスから選択されるものが挙げられるが、他のウイルスベクターも用いられ得る。インビボ使用の場合、宿主ゲノム中に組込まれないウイルスベクター、例えばαウイルスおよびアデノウイルスが好ましく、αウイルスが特に好ましい。αウイルスの例示的タイプとしては、シンドビスウイルス、ベネズエラウマ脳炎(VEE)ウイルス、およびセムリキフォレストウイルス(SFV)が挙げられ、SFVが特に好ましい。インビトロ使用の場合、宿主ゲノム中に組込まれるウイルスベクター、例えばレトロウイルス、AAV、およびアンチウイルスが好ましい。
【0190】
一実施形態において、ウイルスベクターは、形質導入されたヒト細胞における一過性の高レベル発現を提供する。
【0191】
一実施形態において、ウイルスベクターは、形質導入されたヒト細胞のゲノム中への、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)をコードする核酸の組込みを提供しない。
【0192】
別の実施形態において、ウイルスベクターは、形質導入されたヒト細胞のゲノム中への、フラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)をコードする核酸の組込みを提供する。
【0193】
一実施形態において、本発明は、インビボで固形腫瘍を本発明のウイルスベクターと接触させることを含む、インビボでヒト細胞を形質導入する方法を提供する。
【0194】
別の実施形態において、本発明は、エクスビボでヒト細胞を本発明のウイルスベクターと接触させることを含む、エクスビボでヒト細胞を形質導入する方法を提供する。一実施形態において、ヒト細胞は、腫瘍細胞である。一実施形態において、ヒト細胞は、同種異系である。一実施形態において、腫瘍細胞は、患者に由来する。一実施形態において、ヒト細胞は、非腫瘍細胞、例えば抗原提示細胞(APC)、またはT細胞である。
【0195】
ウイルス粒子コートは、当該技術分野で周知の通り、修飾されて特異性を改変し細胞/組織標的化を改善し得る。ウイルスベクターは、その他のビヒクル、例えばリポソーム中へも送達され得る。リポソームは、細胞/組織標的化を改善するためにそれらの表面に結合される標的化部分も有し得る。
【0196】
幾つかの実施形態において、本発明は、本発明の治療薬を発現するヒト細胞を提供する。様々な実施形態において、ヒト細胞は、例えば患者の、腫瘍細胞の付近で薬剤を発現する。
【0197】
診断および予測方法
幾つかの態様において、本発明は、TLR5アゴニストでの処置に応答し得る対象を同定する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、患者の腫瘍がTLR5を発現するか否かを決定する方法を提供する。
【0198】
TLR5発現は、患者の腫瘍または異形成のグレードおよび/または進行を決定するための予測マーカであり得る。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、特定の癌の腫瘍グレードおよび/またはステージを決定するのに有用である。
【0199】
腫瘍グレードは、顕微鏡下で癌細胞がどのくらい異常にみえるか、ならびに腫瘍がどのくらい速く成長および拡散しそうであるかに関連して癌細胞を分類するのに用いられるシステムである。腫瘍グレードを決定する際に、細胞の構造および成長パターンを含む多くの因子が考慮される。腫瘍グレードを決定するのに用いられる具体的な因子は、癌の各型によって異なり得、当該技術分野で公知である。
【0200】
分化とも呼ばれる組織学的グレードは、腫瘍細胞が同じ組織タイプの正常細胞にどのくらい似ているかを指す。核グレードは、腫瘍細胞における核のサイズおよび形状、ならびに分裂している腫瘍細胞のパーセンテージを指す。
【0201】
癌細胞の微視的外観に基づき、病理医は一般に、腫瘍のグレードを4つの重症度:グレード1、2、3、および4によって記載する。グレード1腫瘍の細胞は、正常細胞に類似しており、緩やかに成長および増殖する傾向がある。グレード1腫瘍は一般に、挙動において侵攻性が最も低いと見なされる。反対に、グレード3またはグレード4腫瘍の細胞は、同じタイプの正常細胞のように見えない。グレード3および4腫瘍は、より低いグレードの腫瘍よりも高速で成長し、急速に拡散する傾向がある。American Joint Committee on Cancerは、腫瘍のグレーディングに関して以下のガイドラインを推奨している:GXグレードは評価できない(悪性度が未確定);G1−高分化型(低悪性度);G2−中分化型(中悪性度);G3−低分化型(高悪性度);G4−未分化型(高悪性度)。
【0202】
グレーディングシステムは、癌の各タイプによって異なる。例えば病理医は、前立腺癌細胞の分化の程度を表現するためにグリーソンシステムを使用する。グリーソンシステムは、グレード2〜グレード10の範囲のスコアを使用する。低いグリーソンスコアは、高分化型で低侵攻性の腫瘍を表す。高スコアは、低分化型でより侵攻性の腫瘍を表す。他のグレーディングシステムとしては、例えば、乳癌に対するブルーム・リチャドソンシステム、および腎癌に対するファーマンシステムが挙げられる。
【0203】
癌生存率または生存統計は、癌の特定の型で特定時間、生存したヒトのパーセンテージを指し得る。癌統計は多くの場合、全5年生存率を利用する。例えば、膀胱癌の全5年生存率は80%であり、即ち、膀胱癌と診断されたヒト100名中80名が診断の5年後に生存しており、100名中20名は膀胱癌診断の5年以内に死亡している。他のタイプの生存率、例えば無病生存率(寛解に達した癌を有するヒトの数)および無増悪生存率(依然として癌を有するが疾患が進行していないヒトの数)を用いることができる。
【0204】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、本明細書に開示されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)の投与前、投与中、および/もしくは投与後そして/または抗ガン剤もしくは治療の実施前、実施中、および/または実施後の生存率、無病生存率および/または無増悪生存率の予測を含む、個々の癌の診断または予後の目的で腫瘍グレードを確定するのに有用である。
【0205】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、処置の選択を支援するため、そして/または処置の転帰を予測するために、腫瘍グレードのスコアリングの方法の一部として利用される。例えば、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を用いて患者の癌をステージI(例えば、局所に進行していない)と診断または同定し、侵襲性の低い処置の必要性を予測する。あるいは本明細書に記載された治療薬を用いて患者の癌をステージIIまたはIII(例えば、癌が局所に進行し得る)と診断または同定し、より侵襲的な処置の必要性を予測する。同様に、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)を用いて患者の癌をステージIVまたは転移性と診断または同定し、非常に侵襲的な処置の必要性を予測する。
【0206】
幾つかの実施形態において、癌は、切除不能である。切除不能の癌は、転移性病巣の数により、またはそれが外科的に危険な領域であるため、手術による除去ができない悪性腫瘍である。幾つかの実施形態において、本明細書に記載された治療薬は、例えば、化学療法および/もしくは放射線での処置の前に、腫瘍体積を減少させる抗がん剤を投与することを含む処置の性質および/もしくはタイミング/管理(administration)の選択を支援するため、そして/または患者に施される化学療法もしくは放射線の量を増加もしくは減少するために、腫瘍を処置する方法の一部として用いられ得る。
【0207】
幾つかの実施形態において、癌は、多剤耐性である。例えば患者は、1回または複数回の化学療法を受けたことがあり、実質的応答を伴わない。代わりにまたは追加として、腫瘍は、多剤耐性の1つまたは複数のマーカを有する。したがって、本明細書で用いられる多剤耐性という用語は、少なくとも1サイクルの併用化学療法に対して非応答性を呈する癌、あるいはドセタキセル、パクリタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、カルボプラチン、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、オキサリプラチン、カルムスチン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、シクロホスファミド、イホスファミド、トポテカン、エルロチニブ、エトポシド、およびマイトマイシン(同等の薬剤を含む)のうちの少なくとも2つに対して耐性としてスコアリング(診断)された癌を意味する。幾つかの実施形態において、本明細書に記載された治療薬は、腫瘍が1種または複数の化学療法薬、放射線療法および/または他の抗癌治療に応答性である否かを確定する上で有用である。
【0208】
他の実施形態において、癌は、最初の癌で従来の化学療法を行った後の再発である。多くの場合、再発癌は、薬物耐性を生じており、したがって処置が特に困難であり、多くの場合、生存に関して予後不良になる。
【0209】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、パフォーマンスステータスの代わりを果たす腫瘍評価の方法の一部として用いられる。パフォーマンスステータスは、当該技術分野で公知の、患者のパフォーマンスステータスをスコアリングするための任意のシステムおよび方法を利用して定量できる。測定は多くの場合、患者が化学療法、用量調整を受けることができるか否かを決定するため、そして/または苦痛緩和ケアの強度を決定するために用いられる。カルノフスキースコアおよびズブロドスコアを含む様々なスコアリングシステムがある。並列スコアリングシステムは、精神医学の診断および統計マニュアル(DSM)の第5軸として組込まれた、機能の全体的評価(GAF)スコアを含む。
【0210】
より高いパフォーマンスステータス(例えば、カルノフスキースコアリングシステムを用いて少なくとも約80%、または少なくとも約70%)は、疾患状態の進行を予防する処置を示唆し、化学療法および/または放射線処置を受け入れる患者の能力を増強する。例えば本明細書に記載された治療薬が、より高いパフォーマンスステータスを示す場合、患者は歩行ができ自己管理が可能である。他の実施形態において、本明細書に記載された治療薬が、低いパフォーマンスステータスを示す場合(例えば、カルノフスキースコアリングシステムを用いて約50%未満、約30%未満、または約20%未満)、患者は、ほとんど床に伏しているか、または自己管理さえできない。
【0211】
カルノフスキースコアは100から0までであり、100は「完全に」健康であり、0は死亡である。スコアは10間隔で用いることができ、約100%は正常であり、病訴がなく、疾患の兆候がなく;約90%は通常の活動ができ、疾患の症状または兆候がほとんどなく;約80%はある程度の困難はあるが通常の活動ができ、幾つかの症状または兆候があり;約70%は自分で管理できるが通常の活動または作業ができず;約60%はある程度の支援を必要とし、大半の個人的要求を自分で処理することができ;約50%は支援を必要とする場合が多く、医療ケアが頻繁に必要であり;約40%は障害を持ち、特別なケアおよび支援が必要であり;約30%は重度の障害を持ち、入院が適用されるが、死亡のリスクはなく;約20%は重病であり、緊急に入院する必要があり、補助的な対策または処置を必要とし;約10%は瀕死であり、急速に進行する致命的疾患の過程にある。
【0212】
パフォーマンスステータスのためのズブロド採点システムでは、0は十分活動的であり、制約なく全ての疾患前の能力を実行でき;1は身体的に活発な活動が制限されるが、歩行ができ、軽いもしくは座った姿勢の作業、例えば軽い家事、オフィスワークを行うことができ;2は歩行でき、全ての自己管理が可能であるが、任意の作業活動を実行できず、覚醒時間の約50%よりも長く床を離れることができず;3は限定された自己管理のみが可能であり、覚醒時間の50%よりも長い時間、床に伏しているか、または椅子に座ったままであり;4は完全に障害を持ち、任意の自己管理を行うことができず、ずっと床に伏しているか、または椅子に座ったままであり;5は死亡である。
【0213】
幾つかの実施形態において、腫瘍の組織学的試料は、全体として参照により本明細書に組み入れられるElston & Ellis, Histopathology, 1991, 19:403−10に従って、本明細書に記載された治療薬を用いてグレーディングされる。幾つかの実施形態において、本明細書に記載された治療薬は、特定の癌の診断または予測の目的で腫瘍グレードを確定する上で有用である。
【0214】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤)は、対象を評価するのに、そして/または対象(例えば、癌患者)からの標本を評価するのに有用である。幾つかの実施形態において、評価は、診断、予後、および/または処置への応答のうちの1つまたは複数である。
【0215】
診断は、可能性のある疾患または障害、例えば癌を決定または同定しようと試みるプロセスを指す。予後は、疾患または障害、例えば癌の可能な転帰の予測を指す。完全な予後は多くの場合、予測される持続期間、機能、および疾患経過の詳細、例えば進行的な衰退、間欠的な危機、または急激で予測不能な危機などを含む。処置への応答は、処置を受けている場合の、患者の医療的転帰の予測である。処置への応答は、非限定的例として、病理学的に完全な応答、生存、および再発の可能性であり得る。
【0216】
様々な実施形態において、本明細書に記載された診断および予測方法は、タンパク質の存在、非存在、またはレベルを評価することを含む。別の実施形態において、本明細書に記載された方法は、核酸の発現の存在、非存在、またはレベルを評価することを含む。本明細書に記載された組成物は、これらの測定に用いられ得る。例えば幾つかの実施形態において、本明細書に記載された方法は、腫瘍または腫瘍から培養された細胞の標本を、本明細書に記載された治療薬と接触させることを含む。
【0217】
幾つかの実施形態において、本発明は、生検または手術標本試料を含む、腫瘍標本の測定を含む。幾つかの実施形態において、生検は、ヒト生検である。様々な実施形態において、生検は、凍結腫瘍組織標本、培養細胞、循環する腫瘍細胞、およびホルマリン固定されたパラフィン包埋腫瘍組織標本のうちの任意の1つである。幾つかの実施形態において、腫瘍標本は、凍結された腫瘍組織(凍結切片)標本などの生検試料であり得る。当該技術分野で公知の通り、凍結切片は、冷凍機の内部にミクロトームを含むクライオスタットを用い得る。手術標本を金属製組織皿(metal tissue disc)の上に置き、その後、チャックで固定して、約−20℃〜約−30℃に急速凍結する。標本を、例えば、ポリエチレングリコールおよびポリビニルアルコールからなる、ゲル状の媒体に包埋する。凍結組織をクライオスタットのミクロトーム部分で凍結切断して、切片を場合によりスライドガラス上に拾い上げて染色する。幾つかの実施形態において、腫瘍標本は、培養細胞などの生検試料であり得る。これらの細胞は、当該技術分野で公知である通常の細胞培養技術を用いて処理され得る。これらの細胞は、循環する腫瘍細胞であり得る。幾つかの実施形態において、腫瘍標本は、生検試料、例えばホルマリン固定されたパラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織標本であり得る。当該技術分野で公知の通り、生検標本は、標本を保存するためのホルマリン(水とホルマリンの混合物)または幾つかの他の流体を含む容器の中に置いてよい。組織試料は、高温パラフィンワックスと共に鋳型中に置いてよい。ワックスは冷えて、組織を保護する固体塊を形成する。包埋組織を含むこのパラフィンワックス塊をミクロトーム上に置いて、組織の非常に薄い断片に切り出す。特定の実施形態において、腫瘍切片は、約100mg未満の組織を含み、または特定の実施形態において、約50mg以下の組織を含む。腫瘍切片(または生検)は、約20mg〜約50mgの組織、例えば約35mgの組織を含み得る。組織は、例えば1または複数の(例えば、1、2、3、4、または5の)針生検として得ることができる(例えば、14ゲージ針または他の適切なサイズを用いて)。幾つかの実施形態において、生検は、長く薄い針を疑いのある領域に挿入し注射筒を用いて分析用の流体および細胞を引き出す、細針生検である。幾つかの実施形態において、生検は、切断チップをコア針生検の際に用いて疑わしい領域から組織の円筒を引き出す、コア針生検である。幾つかの実施形態において、生検は、吸引装置によって針で抽出される流体および組織の量を増加させる、真空支援生検である。幾つかの実施形態において、生検は、例えばX線、コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像(MRI)または超音波などの画像処理と一緒に針生検を行う、画像誘導生検である。他の実施形態において、試料は、乳房生検用のレーザ誘導真空支援生検システムであるMAMMOTOME(登録商標)生検システムなどの装置を通して得ることができる。
【0218】
幾つかの実施形態において、診断および予測方法および/または評価は、処置(本明細書に記載された治療薬での処置など)を指向し得る。一実施形態において、評価は、摘出後のアジュバント療法の利用または保留を指向し得る。アジュバントケア(adjuvant care)とも呼ばれるアジュバント療法は、一次、主要または初期の処置に加えて与えられる処置である。非限定的例として、アジュバント療法は、全ての検出可能な疾患が摘出されたが、潜在的疾患による統計学的再発リスクが残されている場合の、手術後に通常行われる追加的処置であり得る。幾つかの実施形態において、本明細書に記載された治療薬は、癌の処置においてアジュバント療法として用いられる。幾つかの実施形態において、本明細書に記載された治療薬は、癌の処置において単独のアジュバント療法として用いられる。幾つかの実施形態において、本明細書に記載された治療薬は、癌の処置においてアジュバント療法として保留される。例えば、患者が本明細書に記載された治療薬に応答する可能性が低い場合、または最小の応答を有すると思われる場合、クオリティ・オブ・ライフのために、そして無効の化学療法による不要な毒性を回避するために、処置が施されない場合がある。そのような場合、苦痛緩和ケアが利用され得る。
【0219】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載された治療薬は、摘出前のネオアジュバント療法として投与される。特定の実施形態において、ネオアジュバント療法は、任意の手術の前に腫瘍を退縮させる治療、および/またはグレードを下げる治療を指す。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント療法は、手術前の癌患者に投与される化学療法を意味する。幾つかの実施形態において、ネオアジュバント療法は、手術前の癌患者に投与される本明細書に記載された治療薬を意味する。ネオアジュバント化学療法が一般に考慮される癌のタイプとしては、例えば乳癌、大腸癌、卵巣癌、子宮頸癌、膀胱癌、および肺癌が挙げられる。幾つかの実施形態において、本明細書に記載された治療薬は、癌の処置においてネオアジュバント療法として用いられる。幾つかの実施形態において、この使用は、摘出の前である。幾つかの実施形態において、本明細書に記載された治療薬は、癌の処置においてネオアジュバント療法として保留される。例えば、患者が本明細書に記載された治療薬に応答する可能性が低い場合、または最小の応答を有すると思われる場合、クオリティ・オブ・ライフのために、そして無効の化学療法による不要な毒性を回避するために、処置が施されない場合がある。そのような場合、苦痛緩和ケアが利用され得る。
【0220】
対象および/または動物
幾つかの実施形態において、対象および/または動物は、哺乳動物、例えばヒト、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ウサギ、ヒツジ、または非ヒト霊長類、例えばサル、チンパンジー、またはヒヒである。他の実施形態において、対象および/または動物は、非哺乳動物、例えばゼブラフィッシュである。幾つかの実施形態において、対象および/または動物は、蛍光標識細胞(例えば、GFPを用いる)を含み得る。幾つかの実施形態において、対象および/または動物は、蛍光細胞を含むトランスジェニック動物である。
【0221】
幾つかの実施形態において、対象および/または動物は、ヒトである。幾つかの実施形態において、ヒトは、小児である。他の実施形態において、ヒトは、成人である。他の実施形態において、ヒトは、老人である。他の実施形態において、ヒトは、患者と称され得る。
【0222】
特定の実施形態において、ヒトは、約0ヶ月〜約6ヶ月齢、約6ヶ月〜約12ヶ月齢、約6ヶ月〜約18ヶ月齢、約18ヶ月〜約36ヶ月齢、約1歳〜約5歳、約5歳〜約10歳、約10歳〜約15歳、約15歳〜約20歳、約20歳〜約25歳、約25歳〜約30歳、約30歳〜約35歳、約35歳〜約40歳、約40歳〜約45歳、約45歳〜約50歳、約50歳〜約55歳、約55歳〜約60歳、約60歳〜約65歳、約65歳〜約70歳、約70歳〜約75歳、約75歳〜約80歳、約80歳〜約85歳、約85歳〜約90歳、約90歳〜約95歳、または約95歳〜約100歳の範囲の年齢を有する。
【0223】
他の実施形態において、対象は、非ヒト動物であり、それゆえ本発明は、獣医学的使用に関係する。具体的実施形態において、非ヒト動物は、家で飼うペットである。別の具体的実施形態において、非ヒト動物は、家畜動物である。
【0224】
キット
本発明は、本明細書に記載された任意の薬剤の投与を単純化し得るキットを提供する。本発明の例示的キットは、単位投与剤形中に本明細書に記載された任意の組成物を含む。一実施形態において、単位投与剤形は、プレフィルドシリンジなどの容器であり、滅菌されていて、本明細書に記載された任意の薬剤と、医薬的に許容し得る担体、希釈剤、賦形剤、またはビヒクルとを含む。キットは、本明細書に記載された任意の薬剤の使用を指導するラベルまたは印刷された取扱説明書をさらに含み得る。キットはまた、開瞼器、局所麻酔、および投与場所の洗浄剤を含み得る。キットはまた、本明細書に記載された1種または複数の追加の薬剤をさらに含み得る。一実施形態において、キットは、本発明の組成物の有効量および本明細書に記載されたような別の組成物の有効量を含む容器を含む。
【0225】
定義
以下の定義は、本明細書に開示された本発明と一緒に用いられる。他に断りがなければ、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0226】
本明細書で用いられる「a」、「an」または「the」は、1または1よりも多いことを意味する。
【0227】
さらに、参照される数値表示と関係して用いられる場合の用語「約」は、参照される数値表示±参照される数値表示の10%以下を意味する。例えば言語「約50」は、45〜55の範囲を含む。
【0228】
医学的使用に関係して用いられる「有効量」は、該当する疾患の病因の測定可能な処置、予防、または割合の低下を提供するのに有効となる量である。
【0229】
本明細書で用いられる場合、活性および/または効果の読み取り値が、そのような調整の非存在下に比較して薬剤または刺激の存在下で、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、またはそれよりも多く、少なくとも約100%を含むそれ以下など、有意な量で下がっていれば、あるものが「減少している」。当業者に理解される通り、幾つかの実施形態において、活性は低下し、幾つかの下流の読み取り値は減少するであろうが他は上昇し得る。
【0230】
反対に、活性および/または効果の読み取り値が、そのような調整の非存在下に比較して薬剤または刺激の存在下で有意な量、例えば少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、またはそれよりも多く、少なくとも約100%を含むそれ以下またはそれを超えて、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍上がっていれば、活性が「上昇している」。
【0231】
本明細書で参照される全ての組成のパーセンテージは、他に明記されていなければ、組成物全体の重量による。本明細書で用いられる言語「包含する」およびその変形例は、非限定的であることを意図し、そのため列挙における項目の表明は、本技術の組成物および方法において同じく有用になり得る他の類似項目を排除しない。同様に用語「できる」および「し得る」およびその変形例は、非限定的であり、そのためある実施形態が特定の要素または特色を含んでよい、または含み得るという表明は、それらの要素または特色を含まない本発明の技術の他の実施形態を排除しない。
【0232】
「包含する」、「含有する」または「有する」と同義語としての制限のない用語「含む」は、本発明を記載および請求するために本明細書で用いられているが、本発明またはその実施形態は、あるいは「からなる」または「から本質的になる」などの別の用語を利用して記載され得る。
【0233】
本明細書で用いられる言語「好ましい」および「好ましくは」は、特定の状況下で特定の利益を与える技術の実施形態を指す。しかし他の実施形態もまた、同じまたは他の状況下で好ましい場合がある。さらに、1つまたは複数の好ましい実施形態の表明は、他の実施形態が有用でないことを示唆するものではなく、他の実施形態を本発明の技術範囲から排除する意図はない。
【0234】
治療効果を実現するのに必要とされる本明細書に記載された組成物の量は、個々の目的のために従来の手順に従って経験的に決定され得る。一般に、治療目的で治療薬(例えば、本明細書に記載されたフラジェリン関連組成物(および/または追加の薬剤))を投与する場合、治療薬は、薬理学的有効用量で与えられる。「薬理学的有効量」、「薬理学的有効用量」、「治療有効量」、または「有効量」は、特に障害または疾患を処置するために、所望の生理学的効果を生じるのに十分な量、または所望の結果を実現できる量を指す。本明細書で用いられる有効量は、例えば、障害または疾患の症状の発症を遅延させるのに、障害または疾患の症状の経過を改変するのに(例えば、疾患の症状の進行を緩徐にするのに)、障害または疾患の1つまたは複数の症状または症状発現を減少または排除するのに、そして障害または疾患の症状を回復させるのに、十分な量を包含する。例えば、癌に罹患した患者への治療薬の投与は、根底にある状態が増悪または軽減される場合だけでなく、患者が疾患関連の症状の重症度または期間の低下、例えば腫瘍量の減少、循環する腫瘍細胞の減少、無増悪生存の増加を報告する場合も、治療効果を提供する。治療効果は、改善が実現されるかにかかわらず、根底にある疾患または障害の進行を停止させることまたは緩徐にすることも包含する。
【0235】
有効量、毒性、および治療有効性は、例えばLD50(集団の約50%が死亡する用量)およびED50(集団の約50%において治療上有効となる用量)を決定するための、細胞培養または実験動物において標準の医学的手順によって決定され得る。投与量は、用いられる投与剤形および利用される投与経路に応じて変動し得る。毒性作用と治療効果との間の用量比が治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。幾つかの実施形態において、大きな治療指数を示す組成物および方法が好ましい。治療有効用量は、最初に、例えば細胞培養アッセイを含むインビトロアッセイから推定され得る。同じく用量は、細胞培養において、または適切な動物モデルにおいて決定されるIC50を含む循環血漿濃度範囲を実現するために、動物モデルにおいて配合され得る。血漿中の記載された組成物のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定できる。任意の特定の用量の効果は、適切なバイオアッセイによってモニタリングされ得る。投与量は医師によって決定され得、必要に応じて、観察される処置の効果に合うように調整できる。
【0236】
特定の実施形態において、効果は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約70%、または少なくとも約90%の定量可能な変化をもたらす。幾つかの実施形態において、効果は、約10%、約20%、約30%、約50%、約70%、または約90%またはそれを超える定量可能な変化をもたらす。治療効果は、改善が実現される否かにかかわらず、根底にある疾患または傷害の進行を停止または緩徐化することも含む。
【0237】
特定の実施形態において、癌を処置する薬理学的有効用量は、症状を、典型的には少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%調整するであろう。例示的実施形態において、そのような調整は、例えば癌性細胞の数の統計学的に有意で定量可能な変化をもたらすであろう。
【0238】
本発明は、以下の非限定的実施例によってさらに示される。
【0239】
実施例
実施例1:CBLB502に比較して改善された有効性を有するフラジェリン関連組成物のエンジニアリング
a.構造活性相関分析(SAR):
部位特異性突然変異誘発と欠失との組み合わせを含む分析の結果を、
図2に示す。CBLB502の得られた変種を大腸菌で発現させて精製し、(i)魚起源のTLR5エクトドメインの組換え精製断片を用いる競合に基づく蛍光偏光(FP)アッセイによる無細胞系の相対的結合親和性と、(ii)野生型CBLB502を参照として用いる細胞に基づくルシフェラーゼレポータアッセイによる相対的シグナル伝達効率と、によって特徴づけた(Yoon et al. (2012))に記載)。この分析によって、3D構造から予測される一次および二次境界面の形成におけるアミノ酸セグメントおよびドメインD1の特定の残基の役割が確証された(
図3)。シグナル伝達(一次結合ではない)にとってのドメインD0の重要性も明らかとなったが、このドメインの実際の役割は不明のままであった。この分析はまた、D0(C_D0)のC末端セグメントのみが肝要であり、N末端セグメントはシグナル伝達活性を喪失せずに除去できること(例えば、欠失変種S33(SEQ ID NO:17)でのように)を明らかにした。
【0240】
一次および二次境界面における変異体およびCBLB502のδ−D0欠失変種のシグナル伝達活性のインビトロテストから、インビトロシグナル伝達データとの相関が明らかとなった。このことは、NF−κBルシフェラーゼレポータマウスへの各変異体の様々な用量の注射、および様々な臓器におけるルシフェラーゼ活性の測定によって確定された(
図4のパネルA〜E参照)。
【0241】
手短に述べると、NF−κBルシフェラーゼレポータマウスに、示された通りCBLB502変種を皮下注射した(3匹/群)。用いられた注射の相対量は、細胞に基づくNF−κBルシフェラーゼアッセイにおけるシグナル伝達の有効性に基づいた。臓器を注射の3時間後に採取し、ドライアイス上で瞬間冷凍した。臓器を粉砕し、続いてプロテアーゼ阻害剤を補充したRIPA緩衝液を用いて溶解することによって、組織ホモジネートを調製した。ルシフェラーゼアッセイでは、各溶解物20μlをルシフェリン試薬(Bright−Glo luciferase assay system、Promega Inc.)30μlと混合し、ルミノメータを用いてルシフェラーゼ活性を定量した。ブラッドフォードアッセイを用いて測定されたタンパク質濃度を基にして、ルシフェラーゼ活性を正規化した。S33変異体で観察された肝臓における応答は中等度に約3倍増加したが、この変異体では、膀胱および大腸においてかなり強い増強(同じ用量0.3μgで10倍を超える)を示したことが、結果から実証される。
【0242】
さらなる全身SARの間に、多数のトランケートされた変種を作製して、主にシグナル伝達活性について特徴づけた(ルシフェラーゼに基づくアッセイ、またはLacZレポータシステムを用いる標準的なCBLB502生物活性アッセイを用いて)。これらの欠失(
図5の図解に部分的に示される)によって、最小の肝要なコアの境界を精密化し、タグ(N末端対C末端)の長さ(33aa〜12aa)と位置の潜在的関連性を特定し、かつリンカー領域を最小化する(構築物「33ML」(SEQ ID NO:35)でのように)可能性をテストできた。
【0243】
詳細なSAR分析を含むCBLB502変種のリストを、表2に提供する。このうち最も重要な観察は、理論に拘束されるのを望むものではないが、本来のC_D0セグメントの少なくとも半分を除去してC末端HisタグによってキャップされたN末端ハーフ(470〜485)のみを残す、基本的可能性である(変種33〜485はシグナル伝達活性の少なくとも約90%を喪失するため、キャップの存在は活性にとって肝要である;表2参照)。これらの観察を合わせると、理論に拘束されるのを望むものではないが、D0ドメインはTLR5との直接相互作用へのわずかな寄与(存在するならば)を有し、その役割はD1ドメインの構造的統合性を維持することに限定され得ることが示唆される。その一方で、残りのC_D0セグメント(470〜485)は、除去され得ず、またはC_D0のC末端ハーフ(485〜504)もしくは他の配列(例えば、CGD1のようなGFPの断片、または新しい構築物MF233(SEQ ID NO:123)のようなN_D0断片;以下の表2参照)によって置換され得ない。同時に、極性残基の幾つかは、活性の明らかな喪失を伴わずにこのセグメント内でアラニンによって置換され得た(表2を参照)。
【表2】
【0244】
要約すると、変種CBLB502−485CT(「CBLB533」(SEQ ID NO:71))は、シグナル伝達活性の喪失を伴わない(少なくともインビトロで)CBLB502の究極の最小化の結果を示す。この変種(233aa長)は、CBLB502(329aa)よりも30%短い(
図5参照)。
【0245】
N_D0セグメントを欠失し、本来の33aaN末端タグを有する、最小化における重要な中間体CBLB502−S33(SEQ ID NO:17)について、インビボでの特徴づけを完遂した(
図5)。各組換え精製タンパク質は、インビトロでほぼ完全なシグナル伝達活性を示した(表2)。注目すべきこととして、CBLB502と並行で実施されたNF−κB−ルシフェラーゼレポータマウスにおけるインビボテストの最初の結果から、Xenogen画像に基づいてインビボでCBLB502−S33の実質的により高い能力が明らかとなった(
図6)。個々の臓器におけるルシフェラーゼ活性のより定量的な分析は、肝臓における応答が中等度に増加し約3倍であったが、膀胱および大腸においてもっと強力な増強(同じ用量0.3μgで10倍を超える)が観察されたことを示した(
図7)。
【0246】
重要なことに、応答の増強は、放射線防護能力のレベルでも観察された(
図8)。
【0247】
この観察は、理論に拘束されるのを望むものではないが、CBLB502の最小化変種がより低用量での抗急性放射線症候群(ARS)兆候に効率的に用いられ得ることを示唆する。この増強能力は、放射線緩和(radiomitigation)様式(曝露後投与)でも示され得る。この予測は、CBLB502 PD−バイオマーカとして選択されその放射線緩和活性にとって機構的に不可欠であることが立証された重要なサイトカイン(G−CSFおよびIL−6)(Burdelya et al. 2008)を含む、観察されたより強いサイトカイン応答(
図9)によって実証される。
【0248】
NF−κBシグナル伝達、放射線防護およびサイトカイン産生(PD)のレベルでのCBLB502−S33インビボ活性の増強相関の明白な理論的根拠は、実質的に改善されたPKである(
図10)。血漿中のCBLB502−S33の持続的増強は、タンパク質分解に対するより高い安定性、またはより可能性が高いこととして、特定の臓器/組織における(例えば、肝臓での)より効率の低い「捕捉」および循環からのより遅いクリアランスしたがって他の臓器の増加した暴露を反映している可能性がある。後者の解釈は、薬物のMOAへのそのような組織(例えば、抹消血液細胞)の寄与の追加的エビデンスを提供する。
【0249】
非限定的な要約として、CBLB502−S33の特徴づけは、SAR分析および反復最小化が、改善された薬理学的特性を有する生物活性タンパク質変種をもたらすことを示した。この情報を利用して、CBLB533の最終設計を設計、エンジニアリングおよび特徴づけした。
【0250】
SARの結果は、変種CBLB502−485CT(追加の変異を有する、または有さない)に基づくCBLB533の最終設計を示唆する。このタンパク質は、十分な量で産生され得、放射線緩和特性のテストによって追加的に拡大された中間体リード候補CBLB502−S33に関して実施された分析と同様に、インビボで特徴づけできる。重要なことに、それらは、脱免疫化Nextgen薬の候補CBLB543を設計するための最適な足場を提供した。
【0251】
実施例2:CBLB502に比較して低下した抗原性を有するフラジェリン関連組成物のエンジニアリング
インビトロで中和活性を示す抗CBLB502抗体(既存の、または/およびCBLB502処置で追加免疫された)は、そのNF−κBシグナル伝達(およびしたがって治療的な)活性も中和するはずである。これを、マウスにおける直接実験によって確証した(
図11)。事実、NF−κBルシフェラーゼマウスでのCBLB502中和ヒト血清またはモノクローナル抗体の注射は、臓器(生体)溶解物中のルシフェラーゼ活性を完全に排除する。
【0252】
この実験において、NF−κBレポータマウスの5群(3匹/群)に(1)PBS、(2)非中和血清、(3)中和血清(15日目に採血)、(4)mAb 7C、(5)mAb 11Dを静脈内注射し、45分後に動物を採血した。モノクローナル抗体を、マウス1匹あたり100μgの用量で使用した。CBLB502(1μg)を、初回抗体注射後1時間目に全マウスに皮下注射した。CBLB502注射後3時間目に、動物を画像撮影し、溶解物の調製のために肝臓を採取した。この試験の結果を表3に示す。
【0253】
ルシフェラーゼの特異的活性を、以下のプロトコルに従って測定した。Bio−pulverizerを用いて、ドライアイス上の肝臓試料を破砕した。1×Reporter Lysis Buffer(Promega cat #E397A)+1×Protease Inhibitor Cocktail(PIC,Sigma P8340)750μlを添加して、ホモジナイズされた混合物を4℃、13,000rpmで30分間遠心分離した。上清を清潔なエッペンドルフ管に回収して、上清のタンパク質濃度を測定した。上清20μlおよびルシフェラーゼ緩衝液(Promega E2620)20μlを添加した。すべてを最小量のタンパク質試料に正規化し、それに応じて添加して、PICを含むLysis Bufferを用いて上清の容量を調整した。ルシフェラーゼ活性を、ルミノプレートリーダで測定した。
【表3】
【0254】
概要を以下に示す(そして表4、表5および
図12に示す)。
【表4】
【表5】
【0255】
最初の試験は、直鎖状エピトープのコンピュータ予測と、一連のトランケートされた変種に関する抗原性の比較分析(一連のヒト血清試料を用いたELISAによる評価)と、欠失変種445(組成については表2参照)が抗原性を有意に喪失し、どちらかといえば短いアミノ酸セグメント(440〜470)中の主要なエピトープの存在が指摘された、という観察と、に基づいた。しかし、この前提に基づいて作製された複数の変異体における抗原性の分析は、これらの予測を確証しなかった(
図12参照)。
【0256】
これらの観察に基づき、以下の研究において、予測された構造の(潜在的に非隣接の)エピトープの使用に向けてアプローチを調整して(
図13)、シグナル伝達アッセイにおいて抗体を中和することによる阻害の程度で評価される「中和抗原性」について中間変異体をテストした。本発明者らは、全サイズのCBLB502足場を用いることから最初のトランケート化リードCBLB502−S33(組成については表2参照)へと、およびそのさらなる修飾S33MX(SEQ ID NO:150)へと進めた。
【0257】
最初の一連の設計変異体において、CBLB502に対して生成された中和モノクローナル抗体および中和抗血清への感受性の低下において、実質的な進歩があった。中和抗体の明らかな非誘導力価を含む一連のヒト正常血清で、改善が観察された。
【0258】
この問題に取り組むために、追加の一連の変異体を設計して、特徴づけた。
【0259】
そのような反復の結果として、中和エピトープの大部分がマッピングされて、シグナル伝達活性を喪失せずに除去された(表4参照)。
【0260】
完全に活性な「脱免疫化」CBLB502リード候補(CBLB543)の第一世代を改変するために、以下のことを実施した。
【0261】
先に記載された通り得られたエピトープマッピングデータ(表5参照)から、脱免疫化CBLB543リード候補(CBLB502−S33MX(SEQ ID NO:150))の最終設計についての基礎が提供された。このタンパク質を改変し、シグナル伝達活性(不変)および中和抗原性によって特徴づけた。
図14に示された通り(個々のデータについては表4参照)、このタンパク質において、中和抗原性は、CBLB502に比較して実質的に低下した。リード候補の改変に用いられたトランケートされた足場CBLB502−S33ML(SEQ ID NO:35)とのさらなる比較は、この効果は変異の組み合わせによるもので、サイズの減少によらないことを示す。
【0262】
実施例3:脱免疫化変種(CBLB502−33MXおよびCBLB502−S33)の効力および薬理学的特性
選択されたフラジェリン関連組成物のPK/PD特性を評価する試験を実施した。具体的には、部分的に脱免疫化されたタンパク質CBLB502−33MXのPK/PD特性を、CBLB502のそれらと比較した。したがってこの試験で、「中和抗原性」が実質的に低く、このためインビトロシグナル伝達アッセイにおいてヒト中和抗体による中和に耐性がある、改変された新しい変種CBLB502−33MXの機能的および薬理学的特徴を確定した。
【0263】
PK/PD試験のインライフ相:C57Bl6マウス320匹を、10匹からなる群での実験に用いた。CBLB502(1および2μg/kg)および33MX(1および2μg/kg)を、静脈注射した。処置後5分目、15分目、30分目、1時間目、2時間目、4時間目、8時間目および24時間目に動物を殺処分して、血漿試料を採取した。
【0264】
PK測定:血漿試料中のCBLB502および33MXの濃度を、CBLB502および33MXの検量線を用い、標準のELISAに基づくプロトコルに従って測定した。
【0265】
PK測定の結果を、
図15に示す。
図15のパネルAおよびBは、マウス血漿試料中のCBLB502および33MXの定量を示す(BLQは定量限界未満)。それゆえ、CBLB502−33MXは親のCBLB502のものと非常に類似したPK特性を有し、即ちそれは、ほぼ同じ速度で、循環から浄化される。したがって、CBLB502のPK特性は、構築物を脱免疫化するように改変された突然変異によって排除されない(例えば、CBLB502−33MXに関連して)。
【0266】
同じ320の血漿試料を、CBLB502との比較による、33MXのPD特性の分析に関するサイトカインプロファイリングに用いた。データ(
図16)は、CBLB502−33MXが親のCBLB502と非常に類似したPDプロファイルを有することを示す。したがって、CBLB502のPD特性もまた、構築物を脱免疫化するように改変された突然変異によって排除されない(例えば、CBLB502−33MXに関連して)。
【0267】
親のCBLB502のインビボシグナル伝達を、中間体変種CBLB502−S33(脱免疫化の前に最小化)およびステージI脱免疫化の最終産物CBLB502−33MXと比較した。マウスにおけるNF−κBルシフェラーゼレポータアッセイを利用し、マウスに以下のタンパク質の1つを注射した:CBLB502(0.1μg、0.3μg、1μgおよび3μgの用量);CBLB502−S33(0.1μg、0.3μg、1μgおよび3μgの用量);およびCBLB502−33MX(0.1μg、0.3μg、1μgおよび3μgの用量)。処置の3時間後に、マウスを殺処分して、以下の臓器を回収し、−80℃で凍結させた:肝臓、膀胱、小腸、大腸、心臓、脾臓、肺、脳および腎臓。臓器溶解物中のルシフェラーゼ活性を、Bright−Glo Luciferase Assay Solution(Promega)を用いて測定し、特異的ルシフェラーゼ活性(RLU/mgタンパク質±SEM)として表した。
【0268】
図17に示された実験の結果は、脱免疫化された候補33MXのNF−κB活性化能はS33およびCBLB502と類似しており、幾つかの臓器(例えば、大腸および肺)では、幾つかの臓器におけるこれらのタンパク質の活性を超えていることを実証する。
【0269】
それゆえ、特にこの実施例は、幾つかのパラメータにおいて、脱免疫化変種CBLB502−33MXが本来のCBLB502の生物活性および薬理学的特徴を完全に保持したこと、または超えたことを示す。
【0270】
実施例4:局所頭頸部照射のネズミモデルにおける33MXのインビボ有効性
放射線照射に関係する33MXのインビボ効果を、CBLB502に比較して、様々な用量で評価した。各照射後1時間目に処置剤を注射して、分割した頭頸部照射の後の損傷を予防し組織回復を加速した。
【0271】
マウス8匹からなる6群を評価して、
図18にデータが示される順に列挙している(連続で8つの組織タイプ、各組織タイプについて棒は左から右へ特定される)。
:群1(ビヒクル):24時間間隔で6Gy×5回(合計30Gy)、各IR後1時間目にPBS−Tweenを注射、
群6(33MX、0.03μg):24時間間隔で6Gy×5回(合計30Gy)、各IR後1時間目に33MX 0.03μgを注射、群5(33MX、0.1μg):24時間間隔で6Gy×5回(合計30Gy)、各IR後1時間目に33MX 0.1μgを注射、群4(33MX、0.3μg):24時間間隔で6Gy×5回(合計30Gy)、各IR後1時間目に33MX 0.3μgを注射、群3(33MX、1μg):24時間間隔で6Gy×5回(合計30Gy)、各IR後1時間目に33MX 1μgを注射、および群2(CBLB502、0.1μg):24時間間隔で6Gy×5回(合計30Gy)、各IR後1時間目にCBLB502 0.1μgを注射(この用量は別の試験で特に有効であることが決定された)。
【0272】
最初のIR(0日目)後10日目に、マウスの上皮、舌、上部食道、唾液腺および皮膚の組織病理学的分析のために、全てのマウスを回収した。
【0273】
試験の結果を、
図18に表す。傷害スコアは、組織切片の組織学的評価に基づく。スコアは、損傷がなければスケール0を、最大の損傷では4と評価している。
【0274】
均等物
本発明を特定の実施形態と一緒に記載したが、本発明が、さらなる改変の可能性があり、本出願が、本発明が属する技術分野での公知のまたは関連的実践に含まれる通り、そして本明細書の先に示された本質的特色に適用され得る通り、そして添付の特許請求の範囲に従うように、一般には本発明の原理に従い本発明の開示からのそのような逸脱を含む、本発明の任意の変更、使用または適合を含むことは理解されよう。
【0275】
当業者は、わずかの日常的実験を利用すれば、本明細書に具体的に記載された具体的実施形態の数多くの均等物を認識するであろう、または確認することができよう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0276】
参考資料の組み入れ
本明細書で参照される全ての特許および発行物は、全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0277】
本明細書で議論された発行物は、本出願の提出日に先立ってそれらの開示のために提供されたに過ぎない。本発明が先行の発明のせいでそのような発行物よりも前の日付で権利を与えられないことの承認と解釈されるべきものは、本明細書には存在しない。
【0278】
本明細書で用いられる全ての表題は、単に編成のためのものであり、本開示を限定するものではない。任意の各節の内容は、全ての節に均等に適用可能であり得る。
【0279】
参考資料
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