特許第6940917号(P6940917)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6940917
(24)【登録日】2021年9月7日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】複合的なインプラント材料
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/12 20060101AFI20210916BHJP
   A61L 27/10 20060101ALI20210916BHJP
   A61L 27/04 20060101ALI20210916BHJP
   A61L 27/14 20060101ALI20210916BHJP
   A61L 27/16 20060101ALI20210916BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20210916BHJP
   A61L 27/40 20060101ALI20210916BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20210916BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20210916BHJP
   A61L 27/52 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   A61F2/12
   A61L27/10
   A61L27/04
   A61L27/14
   A61L27/16
   A61L27/18
   A61L27/40
   A61L27/56
   A61L27/50
   A61L27/52
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-566230(P2017-566230)
(86)(22)【出願日】2016年3月13日
(65)【公表番号】特表2018-510043(P2018-510043A)
(43)【公表日】2018年4月12日
(86)【国際出願番号】IL2016050277
(87)【国際公開番号】WO2016142949
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2019年3月12日
(31)【優先権主張番号】62/132,078
(32)【優先日】2015年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/132,071
(32)【優先日】2015年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/153,608
(32)【優先日】2015年4月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517318403
【氏名又は名称】ジー アンド ジー バイオテクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ガヴリーン‐セガール,ダエル
(72)【発明者】
【氏名】ドヴィル,ハイム
(72)【発明者】
【氏名】ガヴリン‐イエフダイン,ジャッキー
【審査官】 寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/086537(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0299473(US,A1)
【文献】 特表2004−519312(JP,A)
【文献】 米国特許第05824081(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/12
A61L 27/00−27/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒または遊離ポリマー鎖である自由分子を含むポリマー網目から選択されるベース材料と、複数の添加物とを含む複合材料を有する、人体に植え込むのに適したプロテーゼインプラントであって、
a)前記添加物が、放射線透過性添加物および/または高エコー領域の添加物から選択され、
b)前記添加物が、前記複合材料の1Hzにおける弾性係数が前記ベース材料の弾性係数を上回るように選択され、前記複合材料の前記弾性係数が、前記ベース材料の弾性係数を少なくとも20%上回り、
c)前記添加物が、0.2nmから40nmのRRMSの表面粗さを有し、
d)前記添加物が、500ミクロンを超えないサイズであり、その間には少なくとも20%のサイズ差があり、かつ
e)前記ベース材料が、シリコンゲルを含
前記添加物が、前記複合材料の溶媒濃度が前記ベース材料の溶媒濃度の5%〜95%の間であるように選択され、
前記添加物が、ベース材料中の自由分子の濃度を5%〜95%低下させる、プロテーゼインプラント。
【請求項2】
前記添加物が
a)ガラス、セラミック、金属、ポリマー、PMMA、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、PEEK、天然ゴム、合成ゴム、非晶質ポリマーまたは半結晶性ポリマーのうちの少なくとも1つを含む添加物、
b)球形、線維状、小さな板状体、フレーク状、非晶質、結晶質、半球、棒、ディスク、またはこれらの形状の組み合わせ、またはこれらの形状の不規則な変形を含む三次元形状を有する添加物、
)中空の添加物、
)多孔質の添加物、
)中実の添加物、
)少なくとも2つの材料を含む添加物、
)非シリコンゲルである添加物、
)微小な管腔として形成された添加物、および
)上記の組み合わせ、から成る群から選択される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
少なくとも1つの内側シェルと、少なくとも1つの外側シェルとを含む複数のシェルを備え、前記少なくとも1つの内側シェルが前記外側シェルによって少なくとも部分的に囲まれており、前記外側シェルが、前記ベース材料と、複数の高エコー領域の添加物とによって満たされており、前記内側シェルが、前記ベース材料と、複数の放射線透過性添加物とによって満たされている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記添加物の体積百分率は、
a)前記添加物が、前記複合材料の体積の60%までを占める、および
b)前記添加物が、前記複合材料の体積の90%までを占める、から成る群から選択される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
少なくとも1つの内側シェルと、少なくとも1つの外側シェルとを含む複数のシェルを備え、前記少なくとも1つの内側シェルが、前記外側シェルによって少なくとも部分的に囲まれており、前記外側シェルが、前記ベース材料と、前記外側シェルにより近づく程濃度が高まる添加物とによって満たされており、前記内側シェルは、前記ベース材料と、前記内側シェルからの距離に対して濃度が高まる添加物とによって満たされている、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記添加物の体積百分率は、
a)前記添加物が、前記複合材料の体積の60%までを占める、および
b)前記添加物が、前記複合材料の体積の90%までを占める、から成る群から選択される、請求項に記載のインプラント。
【請求項7】
前記添加物が、前記複合材料の1Hzにおける弾性係数が前記ベース材料の弾性係数を上回るように選択され、前記添加物は、ガラス、セラミック、金属、ポリマー、PMMA、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、PEEK、天然ゴム、合成ゴム、非晶質ポリマーまたは半結晶性ポリマーのうちの少なくとも1つを含み、前記弾性係数は、
a)前記弾性係数が、前記ベース材料の弾性係数を100%から1000%の間上回る、
b)前記弾性係数が、前記ベース材料の弾性係数を100%から500%の間上回る、および
c)前記弾性係数が、前記ベース材料の弾性係数を500%から5000%の間上回る、から成る群から選択される、請求項1〜のいずれか1項に記載のプロテーゼインプラント。
【請求項8】
前記添加物が、
a)球形、線維状、小さな板状体、フレーク状、非晶質、結晶質、半球、棒、ディスク、またはこれらの形状の組み合わせ、またはこれらの形状の不規則な変形を含む三次元形状を有する添加物、
)中空の添加物、
)多孔質の添加物、
)中実の添加物、
)少なくとも2つの材料を含む添加物、
)非シリコンゲルである添加物、
)微小な管腔として形成された添加物、および
)上記の組み合わせ、から成る群からさらに選択される、請求項に記載のインプラント。
【請求項9】
少なくとも1つの内側シェルと、少なくとも1つの外側シェルとを含む複数のシェルを備え、前記少なくとも1つの内側シェルが、前記外側シェルによって少なくとも部分的に囲まれており、前記外側シェルが、前記ベース材料と、低濃度の添加物とによって満たされており、前記内側シェルが、前記ベース材料と、高濃度の添加物とによって満たされている、請求項に記載のインプラント。
【請求項10】
前記添加物の体積百分率は、
a)前記添加物が、前記複合材料の体積の60%までを占める、および
b)前記添加物が、前記複合材料の体積の90%までを占める、から成る群から選択される、請求項に記載のインプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、植え込み可能なプロテーゼ器具に関し、具体的には、ベース材料と、添加材料の複合体を特色として備える植え込み可能なプロテーゼ器具に関する。
【背景技術】
【0002】
前世紀の中で、再建および美容整形手術は一般的な慣習になっている。具体的には、乳房切除術などの処置により影響を受けた女性の乳房を再建することを可能にするために乳房再建手術が開発されてきた。例えばインプラントを付け足すことで乳房の大きさを大きくする、非対称性を矯正する、形を変え奇形部分を修復するなどによって女性の乳房の外見を修正するために、美容整形的な乳房手術も利用できるようになってきている。
【0003】
インプラント用に選ばれる材料は、しかるべき反発性、弾力性および柔軟性を有する必要があり、この材料が、知覚される際にインプラントに特有の感触を与える。一般に、特有の形状を提供し、インプラントの位置において実際のヒトの組織の感触に似せたインプラントを提供することが望ましい。さらなる手術の必要性をなくすために、インプラントが長期間にわたってその形態および感触を維持することが重要である。
【0004】
例えば乳房インプラント手術に関して今日使用される従来技術のインプラントは、典型的には加硫処理したシリコンゴム(エラストマー)から形成されており、単一層もしくは多層を成す、滑らかなもしくは織り目が刻まれた、バリア層を含むもしくは含まない、またはポリウレタンフォームで覆われた外側シェルと、典型的にはシリコンゲルまたは生理食塩水で構成された内側の内容物とを備える。Mentor社からのBeckerインプラントなど、シリコンと生理食塩水の両方の組み合わせである二重管腔のインプラントも存在する。
【0005】
従来技術のインプラントは、以下により詳細に記載される複数の分野において課題を呈しており、これには、マンモグラムなどの撮像処置、インプラントから流出するゲル、ならびに機械的および化学的問題が含まれる。
【0006】
2つの主な理由、すなわち1)胸の組織を検査するため(例えば病変に備えて);2)複雑な問題に備えて乳房インプラントを検査するため(例えばインプラントのシェルが損傷していないことをはっきりと確認することができることが重要である)に豊胸が行われた乳房に対して撮像調査が行われる。胸の組織を検査する際、検査下でインプラントが組織を見えにくくしたり、選択した撮像技術の邪魔をしないことが望ましい。さらに、インプラントのシェルが損傷していないことをはっきりと確認することができることが望ましい。
【0007】
3つの主な撮像様式が乳房の検査で使用される。
・超音波診断法
・マンモグラム(X線)および
・MRI(磁気共鳴撮像法)である。
【0008】
標準的なインプラントにおいて使用される際のシリコンゲルは、放射線不透過性である。したがってマンモグラフィーでは、インプラントの典型的な画像は白くなり、インプラントの前方または背後の組織のさらなる細部は全く見えてない。これは、従来技術のインプラントを含む乳房のマンモグラムである図3Aに例示されている。マンモグラム300に示されるように、インプラント302は、完全に白く見えており(x線を通さない)、その前方または背後の組織の細部を全く見えなくしている。インプラントによって見えにくくなっていない乳房の組織304は、マンモグラム300に見ることができる。
【0009】
したがって乳房インプラントを有する女性のためのマンモグラムは典型的には二度行われ、インプラントを含んでいない乳房に対するような通常のやり方で一度行い、その後でインプラントをマンモグラムのフレームからできるだけ後方に押しやって斜めの位置で再度行われる(エクルンド式インプラント圧排撮影法として知られる)。典型的には乳房の30%の組織はなおも、インプラントによって見えにくい可能性がある。
【0010】
超音波診断法と共に使用する場合、シリコンゲルは無響性である。シリコンゲルは、液体に似た密度を有するため、インプラント内での音の速さはわずかに遅くなるが、水の(および周辺組織)のものと同様であるため、超音波検査法は通常、ゲル自体から付加的な反響性の人工物を有するシェルのエコーまたは反響を検出する。ゲルからの反響は、画像上に視覚的なノイズを形成し、これは異常を検出する放射線専門医の技量の妨げとなる。
【0011】
柔軟な組織は1540m/秒の伝導速度を有する。1492m/秒の伝導速度を有する水は暗く見え、材料がより反響性になる程、その画像はより白く見えることになる。シリコンは、おおよそ997m/秒の伝導速度を有するため、インプラント内での音波の減速は、多くの反響と人工物を見られるようにするものである。
【0012】
これは、現場での従来技術の乳房インプラントの縁部の超音波画像である図5Aおよび図5Cに例示されている。これらは図5Aに示されるように12MHzのプローブによって取り込まれた超音波画像500において、従来技術のインプラントのシェル502を見ることができる。
【0013】
画像500の頂部は、プローブと皮膚との境界面である。この場合、皮膚、脂肪、腺および他の組織を有する組織502の画像があり、その後にシリコンインプラント504のシェルが続く。ゲル508は、黒い領域として見られる。インプラントによって生じた視覚的ノイズ506として見られる反響もまた、黒であるべき領域(ゲル508)において画像500中に見ることができる。このようなノイズは、画像500のこの領域内に1.5cm入り込むようにして広がっているのが見られる。ノイズはまた、シェルより上にも延びており、診断のために意図される画像の組織領域502の上に雪のような雲を形成する。同様に図5Cは、17MHzプローブによって取り込まれた超音波画像520を示しており、ここでもインプラントシェル522と、インプラントによって生じた視覚的ノイズ524を両方とも見ることができる。
【0014】
インプラントに破裂が生じた場合、滲出したゲルが、体内の他の領域へと移動する可能性がある。しかしながらそれが無響性であり水によく似ているため、遊動するシリコンゲルは嚢胞などの病変と間違えられることが多い。
【0015】
背景技術は故に、検査下で組織を見えにくくしたり、選択した撮像法を妨害したりしないプロテーゼインプラント材料を教示したり提案したりはしていない。さらに、示されるように、従来技術のインプラントは、異常を検知する放射線専門医の技量の妨げとなる視覚的ノイズも発生させる。結果として、万一シェルが破裂した場合でも、シリコン材料が結合力を維持し、人体の他の部分に移動するのを阻止する、またはそれを組織と区別することができるようにシリコン材料を容易に識別できることが好ましい。
【0016】
従来技術のインプラントに関するさらなる問題は、完全な状態のインプラントから染み出すゲルである。ゲルの流出は、シリコンゲルの一部としての溶媒(シリコンオイル)がシェルを通り抜けて拡散する/染み出す拡散による現象を形容する一般的な用語である。拡散は、化学的な潜在能力のために、物質が高濃度の部分から低濃度の部分へと流れる現象である。拡散流量は濃度勾配に反比例し、比例係数は拡散係数である。流れは、高濃度の部分から低濃度の部分へと進む。故に濃度勾配を低下させることはゲルの流出を抑制することになる。
【0017】
遊動するシリコンは、乳房の中に肉芽腫および石灰化を生じさせる異物反応を誘発させる可能性があり、これらは放射線スクリーニングにおいて胸の組織の異常として誤読される可能性があるため、体内組織中にシリコンを流出させることは望ましいことではない。遊動するシリコンはまた、リンパ系の中に容易に入り込み、リンパ節(通常は、腋窩)の中に蓄積し、しこりやリンパ節炎を引き起こす恐れもある。ゲルの流出はまた瘢痕組織の1つの原因とも称されてもいる。動物モデルでの研究は、「シリコンゲルの流出と、シリコンの結合力と無関係のカプセルコンプライアンス(capsule compliance)の間には用量依存的な関係がある」(Moyer HR1, Ghazi BH,Losken A. Plast Reconstr Surg.2012年10月;130(4):793−800)という結論を下した。
【0018】
ゲルの流出を抑制するための取り組みは、2つの方向に集中してきた。
・シェル内に1つまたは複数のバリア層を加え強化すること、
・溶媒の組成を変えることで、エラストマー系シェルを通り抜けて容易に拡散する可能性のある低分子シリコン成分の量を低下させ、それらをより高分子重量のシリコン成分と置き換えることである。
【0019】
このような取り組みは結果として、ゲルの流出をいくらか抑制する第4および第5世代の乳房インプラントを生み出したが、それらは問題を完全に解決したわけではない。さらにこれらの解決策は、インプラントシェルが損傷していない場合にいくらか有効であるだけである。インプラントシェルが、破裂または劣化により損なわれた場合、これらの解決策は、効果が有意に低下し、溶媒が体内に移動する率が上昇するのを許すことになる。したがって損傷していないインプラントと同様に破裂したインプラントからも流出する溶媒を抑制するようにインプラントを向上させることが望ましい。
【0020】
最終的に、いくつかの理由のためにより結合力があるゲルを使用することが望ましいことが近年わかってきた。
・乳房をより自然な感触にするために、周辺の乳房組織をより厳密に模倣するため、
・上記に記載したようなゲルの流出を抑制するため、
・豊胸が行われた乳房の形状を支えるための足場としての働きをすることによって、乳房との動的な力学的境界面を改善するため、
・万一破裂またはシェルが劣化した場合、体内にゲルが流れ込み分散するのを阻止するため、
・体内に挿入するまたは体内で使用する際のゲルの破損を阻止するため、
・通常の使用においてインプラントの形状をより最適に維持するため。これは、成形されたまたは解剖学的インプラントにおいてとりわけ重要である。
・しわがよるのを阻止するまたは抑制するため。インプラントは目に見える織り目およびしわ(とりわけ薄い組織の範囲を有する女性において)ができるという欠点がある。
【0021】
現在のシリコンゲルは、結合力の度合いが変わるようになってきている。シリコンゲルの結合は、架橋結合を高め、結果としてより高い架橋結合密度のメッシュを形成することによって高めることができる。2つの隣接する架橋間の平均的な距離はこのようにして縮小される。
【0022】
このようにして高められた架橋結合はいくつかの利点を有するが、架橋結合を過度に高めることは、たとえ外側から加えられる力がなかったとしても内部の残存する応力が理由でゲルの破損を引き起こす恐れがある。例えばNUSIL Med 3−6300などのゲルを利用する場合、指定される混合比は、部分A対部分Bが3:1である。部分Aは触媒を中に含み、部分Bは架橋剤を中に含むため、混合の割り当てを変えることは、異なる架橋結合密度および異なる結合力が生じることになる。しかしながら架橋剤の成分を過度に増加することは、ゲルの破損につながる。このような場合、3:2の比率で混合することで、負荷が全く加えられなければ破損し砕けることのない高い結合性のゲルとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって上記に述べた理由のために、より結合力のあるゲルが望ましいが、単に架橋結合を高めるだけではゲルを砕けさせることになるため、ゲルの結合力をより高めるための別の手段が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、ベース材料と、添加物とを有する複合的なインプラント材料を有するプロテーゼインプラントを提供することによって背景技術の欠点を克服する。本明細書で使用される際のベース材料という用語は、溶媒または遊離ポリマー鎖のいずれかであり得る自由分子を含むポリマー網目を指している。故にこの自由分子が、ポリマー網目がゲル形態を有するか、エラストマー形態を有するかを規定する。目下記載される発明の複合材料は、本明細書において代替として、インプラント材料、複合的インプラント材料、または複合材料と呼ばれる場合もある。ベース材料に対して添加物を加えることによっていくつかの改善点を提供する。
【0025】
このインプラント材料は、超音波画像における放射線透過性の向上および関連する視覚的ノイズの減少など、改善された放射線医学の特徴を有する。さらに複合的材料は、撮像の属性を利用して独自に識別することが可能であり、組織または他の材料とは容易に区別することができる。
【0026】
ゲルの流出現象は、ベース材料からの自由分子の流出を含むように総括することができる。インプラント材料は、自由分子の全体量を減少させることで、結果として濃度勾配を低下させ、故に自由分子の流出も抑えることになる。上記に記載されるように、濃度勾配は、自由分子の流出に対する推進力であり、故に自由分子の濃度を低下させることは自由分子の流出を抑えることになる。
【0027】
さらにベース材料に組み入れられた添加物は、2つの付加的な機構に基づいて自由分子の流出を制限する。最初の機構は物理的なものであり、この場合何らかの時点でベース材料中での自由分子の損失が理由で複合材料が減少する際、添加物が、それらの物理的なサイズ、および互いとのその接触が理由でさらなる減少を抑制する。2番目の機構は、添加物の大きな累積的な表面積によるものである。ベース材料における自由分子は、表面相互作用により添加物の表面を濡らすため、除去されにくくなる(乾燥、脱離またはこの表面に対してより親和性の高い別の液体と置き換えない限り)。対照的に、従来技術のインプラントが抑制されることはなく、理論的には全てのその溶媒が拡散して失なわれる可能性がある。
【0028】
インプラント材料における添加物は、ベース材料の架橋結合密度/結合力を高めることにより、その完全性を維持しつつベース材料を強化する(補強する)。補強されたベース材料を含むインプラント材料は、乳房インプラントにおいて使用される際、いくつかの利点を提供する。
・乳房をより自然な感触にするために周辺乳房組織をより厳密に模倣する、
・補強されたインプラントは、その結合力が高く形態が安定した性質のために望ましい滑らかな輪郭を呈する。
・しわがよるのを阻止するまたは抑制する。
・完全な状態のインプラントから溶媒が流出するのを抑える。
・インプラントの形態および形状を維持する。
・植え込みまたは使用中に破損するのを阻止する。
・豊胸が行われた乳房の形状を支えるための足場としての働きをすることによって、乳房との動的な力学的境界面を改善する。
・万一破裂またはシェルが劣化した場合、体内にベース材料が流れ込み分散するのを阻止し、そのような場合に人体に吸収され得る遊離溶媒を低下させる。
【0029】
添加物は、体積置換要素としてベース材料に加えられ、連続層と、分散層を有する2相式の体系または二重に連続する体系を創り出す。一例として、インプラントのベース材料の体積の30%を添加物によって置き換えることができる。任意選択で添加物は、複合材料の体積の60%までを占める。任意選択で添加物は、複合材料の体積の90%までを占める。
【0030】
このインプラント材料は、本発明の少なくとも一部の実施形態によるカプセル化インプラントにおいて使用するのに適しており、そこではインプラントは、インプラント材料がシェルの内部に含まれるようなシェルと、インプラント材料とを特色としている。
【0031】
さらに本発明は、特有の三次元形状を提供し、何年もの間、好ましくはインプラントが据え付けられた患者の寿命の間、その形状を維持することができる、好ましくは実際の乳房の感触などヒトまたは動物の組織の感触を模倣する特有の感触を有する、ヒトまたは動物の身体との相互作用によって損なわれることがないように生体耐久性である、たとえ極限状況下においてもインプラントによって患者の健康が有害な影響を受けないように生体適合性である、例えば充填材(添加物を含むベース材料)は、インプラントから漏出した場合に備えて無毒であることが要求されるなど、植え込み可能なプロテーゼの要件に適合している。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によると、インプラントは、乳房インプラントとして使用するように適合されている。
【0033】
本発明の少なくとも一部の実施形態によると、インプラント材料は、例えばシリコンゲルなどのベース材料と、より密度が低い材料とを有する。シリコンゲルの密度は、水および有機溶媒などの他の液体の密度の約lgr/cm程である。故により密度が低い材料は、約lgr/cmより低い密度を有する。任意選択でおよび好ましくは、より密度が低い材料は気体である。
【0034】
本発明の一例の実施形態において、インプラントは、例えば50ccから1500ccに及ぶ、またはそれより大きいもしくはそれより小さいなど種々のサイズで提供されてよい。任意選択でインプラントは、自然の組織に似た触感の特性を呈しつつ、乳房以外の身体の他の領域に、例えば精巣、胸筋、顎、頬、ふくらはぎ、臀部、またはヒトもしくは動物の身体の他の部位を置き替えるまたは増強するために埋め込まれてよい。
【0035】
本発明の好ましい実施形態によると、人体に植え込むのに適したプロテーゼインプラントは、ベース材料と、複数の添加物とを含む複合材料を有し、添加物は、放射線透過性添加物および/または高エコー領域の添加物から選択される。好ましくは添加物は、ガラス、セラミック、金属、ポリマー、PMMA、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、PEEK、天然ゴム、合成ゴム、非晶質ポリマーまたは半結晶性ポリマーのうちの少なくとも1つを含む添加物、1nmから1mmの直径の添加物、球形、線維状、小さな板状体、フレーク状、非晶質、結晶質、半球、棒、ディスク、またはこれらの形状の組み合わせ、またはこれらの形状の不規則な変形を含む三次元形状を有する添加物、中空の添加物、多孔質の添加物、中実の添加物、少なくとも2つの材料を含む添加物、0.2nmから40nmのRRMSの表面粗さを有する添加物、気体である添加物、非溶媒液体である添加物、非シリコンゲルである添加物、微小な管腔として形成された添加物、および上記の組み合わせから成る群から選択される。
【0036】
任意選択でベース材料はシリコンゲルである。任意選択でインプラントは、少なくとも1つの内側シェルと、少なくとも1つの外側シェルとを含む複数のシェルを備え、この場合少なくとも1つの内側シェルは、外側シェルによって少なくとも部分的に囲まれており、外側シェルは、ベース材料と、複数の高エコー領域の添加物とによって満たされており、内側シェルは、ベース材料と、複数の放射線透過性添加物とによって満たされている。
【0037】
本発明の別の好ましい実施形態によると、人体に植え込むのに適した複合材料は、ベース材料と、複数の添加物とを含み、添加物は、放射線透過性添加物および/または高エコー領域の添加物から選択される。好ましくは添加物は、複合材料の体積の60%までを占める。好ましくは添加物は、複合材料の体積の90%までを占める。任意選択でベース材料はシリコンゲルである。
【0038】
本発明の別の好ましい実施形態によると、人体に植え込むのに適したプロテーゼインプラントは、ベース材料と、複数の添加物とを含む複合材料を有し、添加物は、複合材料の溶媒濃度が、ベース材料の溶媒濃度の5%〜95%の間であるように選択される。
【0039】
任意選択で添加物は、ベース材料の溶媒濃度を20%から80%低下させる。任意選択で添加物は、ベース材料の溶媒濃度を40%から60%低下させる。任意選択で添加物は、ベース材料の溶媒濃度を50%まで低下させる。
【0040】
好ましくは添加物は、ガラス、セラミック、金属、ポリマー、PMMA、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、PEEK、天然ゴム、合成ゴム、非晶質ポリマーまたは半結晶性ポリマーのうちの少なくとも1つを含む添加物、1nmから1mmの直径の添加物、球形、線維状、小さな板状体、フレーク状、非晶質、結晶質、半球、棒、ディスク、またはこれらの形状の組み合わせ、またはこれらの形状の不規則な変形を含む三次元形状を有する添加物、中空の添加物、多孔質の添加物、中実の添加物、少なくとも2つの材料を含む添加物、0.2nmから40nmのRRMSの表面粗さを有する添加物、気体である添加物、非溶媒液体である添加物、非シリコンゲルである添加物、微小な管腔として形成された添加物、および上記の組み合わせから成る群から選択される。
【0041】
任意選択でベース材料はシリコンゲルである。任意選択でインプラントは、少なくとも1つの内側シェルと、少なくとも1つの外側シェルとを含む複数のシェルを備え、この場合少なくとも1つの内側シェルは、外側シェルによって少なくとも部分的に囲まれており、外側シェルは、ベース材料と、外側シェルにより近づく程濃度が高まる添加物とによって満たされており、内側シェルは、ベース材料と、内側シェルからの距離に対して濃度が高まる添加物とによって満たされている。
【0042】
本発明の別の好ましい実施形態によると、人体に植え込むのに適した複合材料は、ベース材料と、複数の添加物とを有し、添加物は、複合材料の溶媒濃度がベース材料の溶媒濃度の5%〜95%になるように選択される。好ましくは添加物は、複合材料の体積の60%までを占める。好ましくは添加物は、複合材料の体積の90%までを占める。任意選択でベース材料はシリコンゲルである。
【0043】
本発明の別の好ましい実施形態によると、人体に植え込むのに適したプロテーゼインプラントは、ベース材料と、複数の補強用添加物とを含む複合材料を有し、添加物は、複合材料の弾性係数が、ベース材料の弾性係数を少なくとも20%上回るように選択される。好ましくは弾性係数は、100%から1000%の間だけ上回る。好ましくは弾性係数は、100%から500%の間だけ上回る。
【0044】
好ましくは添加物は、貫入試験によって測定される際に複合材料の結合力が高まり、その結果がベース材料のものより5%〜99.5%短くなるように選択され、貫通は、12グラムのシャフトと、1インチの直径のフットとを備えたLab−Line (Melrose、イリノイ州、米国)針入度計を用いて5秒後に測定される。
【0045】
好ましくは添加物は、ガラス、セラミック、金属、ポリマー、PMMA、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、PEEK、天然ゴム、合成ゴム、非晶質ポリマーまたは半結晶性ポリマーのうちの少なくとも1つを含む添加物、1nmから1mmの直径の添加物、球形、線維状、小さな板状体、フレーク状、非晶質、結晶質、半球、棒、ディスク、またはこれらの形状の組み合わせ、またはこれらの形状の不規則な変形を含む三次元形状を有する添加物、中空の添加物、多孔質の添加物、中実の添加物、少なくとも2つの材料を含む添加物、0.2nmから40nmのRRMSの表面粗さを有する添加物、気体である添加物、非溶媒液体である添加物、非シリコンゲルである添加物、微小な管腔として形成された添加物、および上記の組み合わせから成る群から選択される。任意選択でベース材料はシリコンゲルである。
【0046】
任意選択でインプラントは、少なくとも1つの内側シェルと、少なくとも1つの外側シェルとを含む複数のシェルを備え、この場合少なくとも1つの内側シェルは、外側シェルによって少なくとも部分的に囲まれており、外側シェルは、ベース材料と、低濃度の添加物とによって満たされており、内側シェルは、ベース材料と、高濃度の添加物とによって満たされている。
【0047】
本発明の別の好ましい実施形態によると、人体に植え込むのに適した複合材料は、ベース材料と、複数の添加物とを有し、添加物は、1Hzにおける複合材料の弾性係数がベース材料の弾性係数より20%〜5000%大きくなるように選択される。好ましくは、添加物は、複合材料の結合力が、貫入試験によって測定される際に高まり、その結果がベース材料のものより5%〜99.5%短くなるように選択され、貫通は、12グラムのシャフトと、1インチの直径のフットとを備えたLab−Line (Melrose、イリノイ州、米国)針入度計を用いて5秒後に測定される。
【0048】
好ましくは添加物は、複合材料の体積の60%までを占める。好ましくは添加物は、複合材料の体積の90%までを占める。任意選択でベース材料はシリコンゲルである。
【0049】
任意選択で上記の実施形態のいずれかのインプラントは、少なくとも1つの内側シェルと、少なくとも1つの外側シェルとを含む複数のシェルを備え、少なくとも1つの内側シェルは、外側シェルによって少なくとも部分的に囲まれており、外側シェルは、ベース材料と、第1の濃度の添加物とによって満たされており、内側シェルは、ベース材料と、第2の濃度の添加物とによって満たされている。好ましくは、第1の濃度は第2の濃度を下回る。あるいは第1の濃度は第2の濃度を上回る。
【0050】
任意選択でインプラントは、複数の領域または区画を備える。任意選択でインプラント材料は、インプラントの選択された領域または区画のみに存在する。任意選択でインプラントは、異なる領域において異なる濃度のベース材料および/または添加物を有する。任意選択で単一の添加物が使用される、または代替として複数の添加物が使用される。任意選択で、異なる濃度のベース材料に、インプラントの異なる領域において添加物の異なる組み合わせが与えられる。
【0051】
そうでないことが定義されていなければ、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で提供される材料、方法および例は、単に例示的なものであり、限定することは意図されていない。
【0052】
本発明の方法およびシステムの実装は、特定の選択された作業またはステップを手動にて、自動的に、またはその組み合わせで行うことまたは完了させることを伴う。
【0053】
本発明は、単なる一例として添付の図面を参照してここに記載される。ここで図面を詳細に個別に参照すると、示される事項は、一例としてであり、かつ本発明の好ましい実施形態の例示的な考察を目的としており、最も有益であると考えられるもの、および本発明の原理および概念上の態様の理解し易い記載を提供するために提示されていることを強調する。この点において、本発明を基本的に理解するのに必要であるもの以外は、本発明の構造上の詳細をより詳細を示すような試みは成されておらず、記載を図面と併せることで、本発明の複数の形態がいかにして実際に具現化され得るかを当業者に明らかにしている。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】本発明の少なくとも一部の実施形態による例示のプロテーゼインプラントの非制限的な例を示す図である。
図2】本発明の少なくとも一部の実施形態による例示のプロテーゼインプラントの非制限的な例を示す別の図である。
図3A-3B】従来技術のインプラントを有する乳房と、現在クレーム主張される発明のインプラントを有する乳房のマンモグラフィー画像を示す図である。
図4A-4B】印が付けられた局所化パドルの頂部にある従来技術のインプラントおよび現在クレーム主張されるインプラントと、七面鳥の胸のマンモグラフィー画像を示す図である。
図5A-5D】従来技術のインプラントを有する乳房と(図5A図5C)、現在クレーム主張される発明のインプラントを有する乳房(図5B図5D)の超音波画像を示す図である。
図6A-6B】従来技術のインプラントゲルと、現在クレーム主張される発明の複合材料とを比較した拡散を示す表およびグラフである。
図7】従来技術のインプラントゲルと、現在クレーム主張される発明による3つの代替の複合材料とを比較した弾性係数を示す一例のレオロジーグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明は、添加物と混合されたベース材料を含む複合的なインプラント材料を提供する。インプラント材料は、放射線透過性を高める、超音波診断法からの関連する視覚的ノイズを減少させるなど改善された放射線医学の特徴を有する。超音波を用いて撮像した場合のインプラントシェルの解像度は好ましくは、高エコー領域であるシェルに直接隣接させて複合材料を利用することによって向上する。エコーは、音波の伝導速度の差によって生じるため、高エコー領域のインプラント材料は、音の速度を最大限に低下させることによって創られる。よってインプラントは好ましくは、低密度の添加物、例えば中空の添加物または気体を含む添加物を有する。好ましくは、添加物は、部分的にまたは完全に真空であることで、音を伝導する分子がより少ないため、エコーをさらに強力にする。
【0056】
本発明の材料は、例えばマンモグラムにおいて観察したとき、純粋なシリコンゲルよりも放射線透過性が高く、インプラントの前方または背後の組織の見え方を改善し、それ故に医師または放射線専門医の診断力を向上させる。材料は好ましくは、放射線透過性であるものなど、例えば中空、多孔質または気体であるより密度の低い要素など放射線医学に適した添加物を含む。任意選択で、X線に対して比較的透過性である追加の材料が使用され、この場合使用されるX線の設定(電圧およびミリアンペア)は撮像分野において一般に使用されるものである。X線電圧の非制限的な例は、24kV−32kVのマンモグラフィーで典型的に使用されるものである。
【0057】
添加物として任意選択で使用される放射線透過性材料の非制限的な例は、Kurtz SM,Devine JN.(外傷用、整形外科用および脊椎インプラントにおけるPEEK生体材料。生体材料 2007;28(32):4845−4869. doi:10.1016/j .生体材料2007年7月13日)「PEEK is now broadly accepted as a radiolucent alternative to metallic biomaterials in the spine community.」でのようにポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。
【0058】
現行の発明の複合材料は好ましくは、万一破裂した場合、撮像技術を用いて本発明の滲出した複合材料を容易に識別できるように、かつ添加物が存在することに起因する嚢胞などの生理学的な異常(嚢内であろうと嚢外であろうと)と区別できるようにするための添加物を含む。
【0059】
特定の溶媒を含むベース材料に関して、インプラント材料中の添加物が自由分子の全体量を減少させるため、その結果として濃度勾配が低下し、故に自由分子の流出も低下することになる。上記に記載したように、濃度勾配は、自由分子の流出の推進力であり、そのため自由分子の濃度の低下は、ゲルの流出を低下させる。好ましくは添加物は、ベース材料中の自由分子の濃度を5%〜95%低下させる。添加物を持たないベース材料の自由分子の濃度を複合材料の自由分子の濃度と比較することによって、低下した自由分子の濃度が測定される。この改良形態の非制限的な例が、図6Aおよび図6Bに提示される図とグラフに示される。
【0060】
さらに、インプラントから流出した場合、残存する添加物が、上記に記載した2つの機構を用いて、移動し得る液体の全体量を制限する。対照的に、従来技術のインプラントは、抑制されることはなく、理論的には全てのその液体が拡散して失われてしまう可能性がある。
【0061】
インプラント材料における添加物は、ベース材料の架橋結合密度/結合力を高め、これによりその元の状態を保ちつつベース材料を強化する。好ましくは添加物は、弾性係数(G’)を20%〜1000%または5000%またはそれ以上高めるなど機械的特性を向上させるように選択される。この改良形態の非制限的な例が、図7に提示されるグラフに示される。あるいは結合力の増大は、プレートを有する重み付けされたシャフトを試験される材料の表面に置き、特定の時間が経過した後どのくらい深くそれが沈んだかを測定する貫通試験によって測定される。好ましくは添加物は、複合材料内への貫通がベース材料内への貫通よりも5%〜99.5%短くなるように、貫通試験によって測定される際の結合力を高める。
【0062】
このような改良形態およびその他のものは好ましくは、添加物を体積置換要素としてベース材料に加え、連続する相と、分散する相とを有する2相式の体系または二重に連続する体系を生み出すことによって提供される。
【0063】
インプラント材料は好ましくは、シェルの中に含まれることでカプセル化されたプロテーゼインプラントを形成する。好適なシェル材料の非制限的な例は、シリコンエラストマーであり、任意選択でシェルの上に張られたポリウレタンフォームなどの材料を含む。少なくともシェル、但し好ましくはインプラントの材料全ては、人体の内部での治療上および/または美容的な利用のために生物学的に適合可能であり安全である。
【0064】
上記に記載したベース材料は好ましくは、当分野で知られるシリコンゲルであり、例えばPDMSおよびその誘導体である。あるいはベース材料はポリウレタン網目である。あるいはベース材料は、任意の他の好適な生態適合ベース材料または複数のベース材料の組み合わせである。
【0065】
任意選択でベース材料は、それが、本明細書に記載される添加物のうちのいずれかである得る選択された添加物と共に共有結合を形成し得るように選択される。
【0066】
添加物または添加物の組み合わせは好ましくは、これに限定するものではないが生体適合性、耐久性、価格および他の要因を含めた要因に基づいて選択される。
【0067】
添加物は任意選択で、ガラス、セラミック、金属、ポリマー、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)(または任意の他の天然もしくは合成ゴムまたは同様の物質)、または任意の他の非晶質ポリマーもしくは半結晶性ポリマーなどの1つまたは複数の材料を含む。材料は任意選択で、その相対的な柔軟性に従って決定されてよい。例えばPMMAの場合、引っ張り降伏応力が好ましくは52〜71メガ−パスカルであり、引っ張り係数が好ましくは2.2から3.1ギガ−パスカルである。別の一例として、80%のシリカと、13%のホウ素と塩を含むホウケイ酸塩ガラス(パイレックス(登録商標))の場合、引っ張り降伏応力は、35から100のメガ−パスカルであり、引っ張り係数は、64*10^3メガ−パスカルである。
【0068】
任意選択で添加物は、ゴムである。好適なゴムの非制限的な例は、エチレン−アクリレートゴム、ポリエステルウレタン、ボロモイソブチレンイソプレン、ポリブタジエン、クロロイソブチレンイソプレン、ポリクロロプレン、クロロスルホン化ポリエチレン、エピクロルヒドリン、エチレンプロピレン、エチレンプロピレンジエンモノマー、ポリエーテルウレタン、ペルフルオロカーボンゴム、フッ素化炭化水素、フルオロシリコン、フルオロカーボンゴム、水素化ニトリルブタジエン、ポリイソプレン、イソブチレンイソプレンブチル、アクリロニトリルブタジエン、ポリウレタン、スチレンブタジエン、スチレンエチレンブチレンスチレンコポリマー、ポリシロキサン、ビニルメチルシリコン、アクリロニトリルブタジエンカルボキシモノマー、スチレンブタジエンカルボキシモノマー、熱可塑性ポリエーテル−エステル、スチレンブタジエンブロックコポリマー、スチレンブタジエンカルボキシブロックコポリマーを含む。
【0069】
添加物は任意選択で任意の好適なサイズであってよい。各々の添加物は任意選択で、1nm(ナノメートル)から1mmの間である。好ましくは添加物は、500ミクロンを超えるほど大きくならない。好ましくは、添加物のサイズの多分散性を利用することによって添加物の詰め込み率を高めることもできる。好ましくは添加物は、複数の異なるサイズの粒子を含み、任意選択でその間には少なくとも20%の差がある。
【0070】
添加物は任意選択で任意の三次元形状を有してよい。添加物の形状の非制限的な例は任意選択で、球形、線維状、小さな板状体、フレーク状、非晶質、結晶質、半球、棒、ディスク、またはこれらの形状の組み合わせ、またはこれらの形状の不規則な変形を含む。各々の添加物は任意選択で、これに限定するものではないがミツバチの巣箱状などを含めた、添加物の三次元形状を維持するための内側もしくは外側構造要素を有する、またはそれらの組み合わせを有する場合がある。
【0071】
添加物は任意選択で中空であってよい、または完全に中実である場合もある。中空の添加物は、好ましくは厚さが原子の単分子層から添加物の半径の95%まで及ぶシェルを備える。中空の添加物は任意選択で気体によって満たされる場合もある。任意選択で添加物は多孔質であり、添加物の内部に変化する蛇行部を備えた穴または孔を有し、これらはベース材料または他の材料によって満たすことができる。多孔質の添加物は好ましくは、厚さが原子の単分子層から添加物の半径の95%まで及ぶ中実の要素を有する。
【0072】
添加物は任意選択で複数の材料の複合体であってよい。このような材料は任意選択で、後に続く層が内側の層を密閉する複数の層に配列されてよい、あるいは別個の層が囲繞するベース材料と接するように配列される場合もある。添加物は任意選択で、平坦であろうと湾曲を含もうと、積み重ねられた複数の層を含む場合があり、後者の場合、湾曲は好ましくはインプラントの形状に従って決められる。組み合わせることができる材料の非制限的な例は、ガラス、セラミック、金属、プラスチックおよびゴムを含む。例えばガラス製のマイクロスフェアがゴムの層によって覆われる場合がある。より好ましくは、例えばPMMAなどのポリマーと、例えばポリブタジエンなどのゴム状の材料の混合物が使用される。
【0073】
添加物は任意選択で、変化する表面粗さを有する。任意選択でRMS粗さは、0.2nmから40nmの間で変動する。
【0074】
任意選択で添加物は、ベース材料の内部で泡を形成する油などの非溶媒液体である。粘度が変化する非溶媒液体が任意選択で使用される場合もある。任意選択で、添加物はヒドロゲルなどの非シリコンゲルである。
【0075】
任意選択で添加物は気体である。好ましくはこの気体は窒素など不活性である。任意選択で気体は、酸素または二酸化炭素である場合もある。任意選択で気体は、微小な管腔として形成され、これは任意選択で、これに限定するものではないがガラス、セラミックなどの剛性材料を含んでよい。任意選択で微小な管腔は、剛性プラスチックなどの剛性材料によって密閉される。剛性プラスチックの非制限的な例は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。
【0076】
添加物は任意選択で、不活性な状態から囲繞するベース材料との化学結合相互作用まで変化する表面相互作用を取り入れる。任意選択で添加物は自由に遊動しており、すなわちベース材料に結合されず、ベース材料によって機械的に制約を受けている。任意選択で、添加物は、ファンデルワールス吸着、水素結合またはイオン相互作用などの弱い結合によってベース材料に結合される。好ましくは添加物は、化学結合を用いてベース材料に結合される。このような結合は好ましくは、ベース材料と添加物が2つの相に分離するのを阻止する。
【0077】
添加物は好ましくは、囲繞するベース材料とのより優れた結合作用を可能にし、ずれたり2つの相に分離したりするのを阻止するように処理された表面である。またベース材料に対する添加物の結合作用によって、ベース材料が添加物を取り囲むようにさせ、破裂または漏出が起こった場合に、唯一の仮説によって制限されることを望むのではなく、人体が曝されるのがベース材料に限られるようにベース材料が添加物を覆い続けることが期待される。
【0078】
表面処理の非制限的な例には、ステアリン酸などの長分子量鎖、または任意の他の長い有機鎖、またはポリマーブラシ、疎水性もしくは親水性分子、および他のそのような分子にアンカーされた表面、例えばシリコンゲルに高分子電解質を加えることによる、静電引力に有利である帯電表面の形成、表面の一部が外に突き出しベース材料の中に入ることでベース材料と相互作用し得るように添加物の表面の「粗さ」または物理的な多様性を高めること、または例えばガラスなどの添加物と合わせたシランの利用が含まれる。シランの有機官能基は、ベース材料と添加物の間で好適である相互作用の種類によって選択される。
【0079】
好ましくは添加物を表面処理するのに特定の界面剤が使用される。任意選択で1つまたは2つ以上のカップリング剤が表面処理として使用され、連続するカップリング剤が頂部に加えられる。好ましくは2つのカップリング剤が使用される。任意選択で20までのカップリング剤が使用される場合もある。有機官能シラン、ジルコン酸塩、チタン酸塩、および他のカップリング剤によって表面処理したほとんどのケースは、結果としてポリマーと表面の相互作用が生じることになる。カップリング剤の種類は、添加物の表面の化学反応とベース材料の化学物質に従って選択される。
【0080】
様々な他の表面処理およびこれらを適用するための方法が、2012年7月3日に提出された米国特許出願第13/520,356号に教示されており、これは本明細書に完全に記載されるかのように参照により本明細書に組み込まれおり、本出願と共通して共同で所有されており、共通して少なくとも1人の発明者を有し、追加としてまたは代替として任意選択で利用されてよい。
【0081】
任意選択で添加物は、インプラントの異なる領域において異なる濃度で提供される。非制限的な例として、超音波で使用するように適合された添加物は、上記に記載されるように強力なエコーを生み出すためにシェルにすぐ隣接してより高い濃度を有する場合がある。別の非制限的な例として、マンモグラフィーで使用するように適合された添加物は、インプラント内で高度の放射線透過性を生み出すためにインプラントの内部においてより高い濃度を有する。
【0082】
別の非制限的な例として、添加物は、インプラントの内部に向いた拡散勾配を形成するために、インプラントの内部でより高い濃度を有する場合がある。別の非制限的な例として、添加物はまた、拡散に備えてバリア/緩衝材としての働きをするために、シェルに近接してより高い濃度を有する場合もある。
【0083】
別の非制限的な例として、添加物は表面に近づく程より剛性の低いインプラント材料を形成するために、インプラントの内部でより高い濃度を有する場合もある。
【0084】
任意選択で添加物は、ベース材料と同じ密度を有する、または代替としてそれらはより大きな密度を有する。添加物は好ましくは囲繞するベース材料より低い密度を有する。
【0085】
好ましくは添加物は、組み合わされ変更されたサイズ、形状、密度、材料および構造の添加物を包含する本発明の特定の範囲の実施形態を可能にするために上記に列記されたものからの任意の特徴をベース材料に対する選択された結合機構と組み合わせる。
【0086】
本発明の原理および作用は、図面および添付の記載を参照することでより最適に理解され得る。
【0087】
次に、本発明によるインプラントの非制限的な例示の実施形態を示す図1および図2を参照されたい。シェル材料、ベース材料および添加物またはそれらの組み合わせの上記に記載した特徴のいずれも、以下に記載される構造と共に任意選択で利用されてよい。
【0088】
図1は、本発明の少なくとも一部の実施形態による例示のカプセル化されたプロテーゼインプラントの非制限的な例を示す。示されるように、植え込み可能なプロテーゼ100は、生体適合シリコン、ポリウレタンまたはインプラントに関して一般に使用されるような任意の他の材料を任意選択で含む貫通性の低いシェル110を有する。シェル110は、単一層または多重層を含んでよく、この場合一部の層が特定の材料からできており、他の層は別の材料からできている場合もある。追加として、シェル110は、滑らかである、または種々のパターンを有して織り目が付けられる場合もある。シェル110は、弾力性が変化する領域を有することができる。シェル100は、異なる領域において異なる厚さを有することができる。任意選択でシェル110の材料は、複数の材料の組み合わせであってよい。一般にシェル110は、プロテーゼ100の中身の一部またはその全てが外に漏れ出すのを阻止するための囲いとしての働きをする。任意選択でシェル110は、様々な形状で提供されてよく、例えば円形、楕円形、解剖学的構造、特別注文のものまたはその他などであってよい。
【0089】
シェル110は、ベース材料120と、少なくとも1つの添加物140とを包含する。この非制限的な例では、シェル110は、複数の添加物140を包含しており、これは任意選択で上記に記載した特徴のいずれかを有してよい。任意選択で添加物は、ベース材料120の至るところに均一に分散される。任意選択で添加物は、ベース材料120の異なる部分では異なる濃度で提供される。
【0090】
次に本発明の少なくとも一部の実施形態による例示のカプセル化されたプロテーゼインプラント200の別の非制限的な例の部分的な切欠き図を示す図2を参照されたい。この例では、外側シェル202は、外側の複合材料204を包含するのに対して、内側シェル206は、内側の複合材料208を包含している。外側シェル202および内側シェル206の各々は任意選択で、本明細書に記載されるようなシリコンエラストマー材料から構築されてよく、任意選択で複数の層を備え、任意選択でバリア層も備える。外側シェル202は任意選択で滑らかな、織り目のない表面、織り目の付けられた表面、またはマイクロポリウレタンフォームが塗布された表面のいずれかを特色として有する場合がある。表面の織り目加工処理は、カプセルの収縮の発生率を下げ、その度合いを低下させることを示してきた。内側シェル206は好ましくは滑らかであるが、任意選択で織り目が付けられる場合もある。
【0091】
外側の複合材料204は好ましくは、上記に記載されるように強力なエコーを生み出すためにより高い濃度を有する、超音波で使用するように適合された添加物を特色として有する。内側の複合材料208は好ましくは、上記に記載したように高度の放射線透過性を有する、マンモグラフィーで使用するように適合された添加物を特色として有する。
【0092】
あるいは外側の複合材料204は好ましくは、上記に記載したように拡散に備えてバリア/緩衝材としての働きをするために、シェルに近接してより高い濃度を有する添加物を特色として有する。内側の複合材料208は好ましくは、上記に記載したように内部に向かう拡散勾配を形成するために、内側シェル206からの距離が大きくなるにつれて添加物の濃度が高くなることを特色とする。
【0093】
あるいは外側の複合材料204は好ましくは、表面に近づくほど剛性の低いインプラント材料を形成するために、より低濃度の補強用の添加物を特色として有する。内側の複合材料208は好ましくは、より高い濃度の添加物、およびそれ故により大きな補強を特色として有する。あるいは内側の複合材料208は、内側シェル206からの距離が大きくなるにつれて添加物の濃度が高くなることを特色とする。
【0094】
任意選択で外側シェル202および内側シェル206の各々は、それぞれのシェル202および206と同じシリコンエラストマーでできたパッチによって塞がれ、接着要素にを用いて接着され、小さいシリコンキャップ210を後部パッチ212の内側に有し、これは複合材料によってインプラントを満たすのに使用される。任意選択で内側シェル206は、外側シェル202と同心円状に位置が決められ、ベース214のところでそれに接着される。
【0095】
シェルおよび/または他の構成要素の種々の他の構成が、2006年4月24日に提出された米国特許出願第20090299473に教示されており、これはあたかも本明細書に完全に記載されるかのように参照により本明細書に組み込まれており、本出願と共通して共同で所有されており、共通して少なくとも1人の発明者を有し、追加としてまたは代替として任意選択で利用されてよい。
【0096】
次に、従来技術のインプラントを含む乳房と、現在クレーム主張される発明のインプラントを含む乳房それぞれのマンモグラフィーによる画像である図3Aおよび図3Bを参照されたい。マンモグラム300に示されるように従来技術のインプラント302は、完全に白く見えており(x線を通さない)、その前方およびその背後の組織の詳細を示していない。インプラントによって見えにくくなっていない乳房の組織304はマンモグラム300において見ることができる。
【0097】
対照的に、現在クレーム主張される発明のインプラント312を含む乳房314のマンモグラム310では、乳房の組織316は、上記に記載した放射線透過性添加物が存在するためにインプラント312を通して見ることができる。
【0098】
次に、印が付けられた局所化パドルの頂部にある乳房インプラントと、七面鳥の胸のマンモグラフィー画像である図4Aおよび図4Bを参照されたい。図4Aは、従来技術のインプラントを示しており、図4Bは、現在クレーム主張される発明のインプラントを示している。両方のマンモグラムは、同一の厚さおよび同一の照射パラメータの下で行われた。
【0099】
図4Aに示されるように、マンモグラム400では、従来技術のインプラント402はほぼ完全に局所化パドル404を見えなくしている。対照的に図4Bでは、マンモグラム410は、現在クレーム主張される発明のインプラント412を示しており、ここでは局所化パドル414の刻印処理をインプラント412を通して見ることができる。これは上記に記載されるように、インプラント412内の添加物の放射線透過性によるものである。
【0100】
次に従来技術のインプラントを含む乳房の超音波画像(5A、5C)と、現在クレーム主張される発明のインプラントを含む乳房の超音波画像(5B、5D)である図5A図5Dを参照されたい。図5Aに示されるように、従来技術のインプラントのシェル502は、12MHzプローブによって取り込まれた超音波画像500に見ることができる。
【0101】
画像500の頂部は、プローブと皮膚との境界面である。この場合、皮膚、脂肪、腺および他の組織を有する組織502の画像があり、その後にシリコンインプラント504のシェルが続く。ゲル508は、黒い領域として見られる。インプラントによって発生する視覚的ノイズ506として見られる反響もまた、黒になるべき領域において(ゲル508)画像500中に見ることができる。このようなノイズは、画像500のこの領域内に1.5cm入り込むように広がっているのが見られる。ノイズはまた、シェルより上にも延びて、診断しようとする画像の組織領域502の上に雪のような雲を形成する。
【0102】
対照的に、現在クレーム主張される発明のインプラントを含む乳房の12MHzの超音波画像510は、極めて小さい視覚的ノイズ516を示しており、組織512、シェル514およびインプラント材料518は、超音波画像500に見られたようにノイズによって見えなくなっていない。
【0103】
同様に図5Cは、17MHzのプローブによって取り込まれた超音波画像520を示しており、インプラントシェル522およびインプラントによって発生した視覚的ノイズ524を共に見ることができる。シェル522の境界面におけるエコー境界が分厚く見えており、シェルが実際よりも分厚くなるように放射線専門医に見せている。対照的に現在クレーム主張される発明のインプラントを含む乳房の17MHzの超音波画像530は、はるかに少ない視覚的ノイズ534を示しており、組織532、シェル534およびインプラント材料538は、超音波画像520に見られたようにノイズによって見えなくなったり、不正確に伝えられることはない。
【0104】
次に従来技術のインプラントゲルと、現在クレーム主張される発明の複合的インプラント材料の比較による溶媒拡散を示す写真とグラフである図6A図6Bを参照されたい。図6Aは以下のように、経過時間の行602、従来技術のゲルの行604および複合的なインプラント材料の行606の行を含む表600を示す。行604および606の各々は、吸収紙610の上に置かれた均等な大きさにされたゲル/複合材料の試料の徐々に進行する写真を示している。ゲル612は、従来技術のインプラントからのものであり、複合材料614は、現在クレーム主張される発明の複合的なインプラント材料であり、拡散を抑える添加物を含んでいる。
【0105】
列622は、時間=0のとき、すなわちゲル/材料を所定の場所に設置した直後に撮影された写真を示しており、列623は、2日と7.5時間後に撮影された同じ材料を示しており、列624は、5日と4時間後に撮影された同じ材料を示しており、列625は、17日と10時間後に撮影された同じ材料を示しており、列626は、33日と17時間後に撮影された同じ材料を示しており、列627は、82日と19時間後に撮影された同じ材料を示している。
【0106】
図6Bは、図6Aの写真に示されるように、吸収紙610の計算された濡れた面積 652(mm単位で)に対する経過時間602(時間単位で)をグラフ化するグラフ650を示している。
【0107】
2日と7.5時間後の列623に示されるように、従来技術のゲル612からの溶媒は、現在クレーム主張される発明の複合材料614からの溶媒よりも有意に拡散した。この違いは、拡散した従来技術の溶媒616の直径が現在クレーム主張される発明からの拡散した溶媒618の直径と比べると大きいことから明らかである。同様に従来技術のゲル612からの列624〜627の溶媒は、現在クレーム主張される発明の複合材料614からの溶媒よりも有意に拡散した。グラフ650は、従来技術のゲル溶媒(ライン654)が、現在クレーム主張される発明の複合材料における溶媒(ライン656)と比べて拡散を大きいことを示している。
【0108】
溶媒(紙の上の)は除去されないため、拡散率(紙の上の)は実際には遅くなるため、吸収紙610は人体と比較できるものではないことに留意されたい。人体では、溶媒の大部分が、種々の生体機構を通して除去されたり、または広がることもあるため、拡散勾配は高いままである。それでもやはり吸収紙610は、従来技術と現在の発明の複合材料との有意な差を例証している。
【0109】
したがってより長い時間にわたって、潜在的に体内に放出され得る総体的な溶媒の量には有意な差が生じる。現在クレーム主張される発明の複合材料は、拡散率が遅くなり、放出する溶媒の全体量も有意に少なくなる。これは場合によっては、たとえ破裂した場合でもリンパ節炎を発症する可能性が少なくなるために際立ってくる場合もある。
【0110】
次に、従来技術のインプラントゲルと、現在クレーム主張される発明による3つの代替の複合材料との比較による弾性係数を示す一セットのレオロジーグラフである図7を参照されたい。流性学的特徴が、剪断速度の関数(Hzまたはrad/sで測定される周波数)として貯蔵弾性係数(’G)の測定法を提供する。グラフは、4つの異なる物質に関する流性学的特徴を示しており、702は、従来技術のインプラントゲルに関するレオロジーグラフであり、704、706および708は、現在クレーム主張される発明のインプラント材料に関するレオロジーグラフであり、各々が異なる濃度の異なる添加物を含んでいる。
【0111】
示されるように現在クレーム主張される発明のインプラント材料は、従来技術のインプラントゲル(グラフ702)と比べて弾性係数が上昇していることを示しており、グラフ708の複合材料は、最も増大した弾性係数を示している。
【0112】
本発明を限られた数の実施形態に関して記載してきたが、サイズ、材料、形状、形態、機能および作用方法、組み立ておよび使用法における変形形態を含めるような本発明の部品に関する最適な寸法の関係は当業者にとって容易に認められ、明白であるとみなされ、図面に図示され明細書に記載されるものに対する全ての等価な関係が、本発明によって包含されるように意図されていることを理解すべきである。
【0113】
したがって上述は、本発明の原理の単なる例示とみなされる。さらに多くの修正および変更が当業者には容易に思いつくと思われるため、示され記載される、かつそれに応じた厳密な構造および作用に本発明を限定することは記載されておらず、全ての好適な修正形態および等価物は、本発明の範囲に再分類されてよく、本発明の範囲内にあってよい。
【0114】
本発明の特有の好ましい実施形態を添付の図面を参照して記載してきたが、本発明は、厳密な実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者によってそれに対して種々の変更および修正を行うことができることを理解されたい。
【0115】
本発明のさらなる修正を当業者が思いつく場合もあり、全てのそういったものは、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神および範囲の範囲内にあるものとみなされる。
【0116】
本発明を限られた数の実施形態に関して記載してきたが、本発明の多くの変形形態、修正形態および他の出願が作成される可能性があることを理解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7