特許第6940922号(P6940922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6940922建具用ディスクタンブラー錠及び該建具用ディスクタンブラー錠用の鍵
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6940922
(24)【登録日】2021年9月7日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】建具用ディスクタンブラー錠及び該建具用ディスクタンブラー錠用の鍵
(51)【国際特許分類】
   E05B 29/06 20060101AFI20210916BHJP
   E05B 19/06 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   E05B29/06
   E05B19/06
【請求項の数】2
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-82614(P2017-82614)
(22)【出願日】2017年4月19日
(65)【公開番号】特開2018-178624(P2018-178624A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【弁理士】
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】田中 健一
(72)【発明者】
【氏名】河合 伸幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 英樹
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−152593(JP,A)
【文献】 特開昭53−98638(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0173051(US,A1)
【文献】 中国実用新案第201040954(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 19/02
E05B 19/06−19/08
E05B 29/02−29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面の母線に沿ってロックカム溝を有する外筒体と、この外筒体に回動自在に嵌合すると共に、中心軸線に沿って形成されたキー孔及び半径方向の解錠切欠を有する内筒体と、この内筒体の外周面の母線に沿って延在し、前記ロックカム溝と係合する方向に付勢されたロッキングバーと、前記内筒体の各仕切り部の間に位置すると共に、タンブラーバネのバネ力に抗して半径方向にスライド自在であり、かつ合鍵のブレードに形成された大小のタンブラー用誘導刻みに対応して係合する被誘導部分を有する複数枚の可動障害子を備えた建具用ディスクタンブラー錠に於いて、
前記可動障害子は、対向状態に二分割され、また前記被誘導部分は断面山形形状又は断面弧状面のいずれかであり、合鍵を挿入する前の初期状態に於いて、その内端部側の各対向面の一部の前記被誘導部分(a、b)の対向稜線部が、前記内筒体(3)の中心軸線(O)を通る垂直線(V)に対して傾斜状に形成され、
一方、前記合鍵の前記タンブラー用誘導刻みは、前記ブレードの平面部の一側上面に側面部からブレードの幅方向に形成された窪み状の第1刻み(73a)と、この第1刻みのほぼ裏側位置に相当する前記ブレードの平面部の一側下面に形成された窪み状の第2刻み(73b)であり、
前記合鍵のブレードを前記キー孔に挿入すると、前記二分割の可動障害子は、それぞれ前記タンブラーバネのバネ力に抗して、かつ一対のガイド棒にそれぞれ同じ方向に案内されると共に、該可動障害子の被誘導部分が前記合鍵のタンブラー用誘導刻みに係合し、これにより二分割された可動障害子の外端部側の各解錠用受け入れ凹所が、前記ロッキングバーの内端部と一致し、以て、合鍵と共に内筒体を解錠方向へ回動させた時、前記ロックカム溝と前記ロッキングバーとの間に生じる楔作用により、内筒体が外筒体に対して相対回動する建具用ディスクタンブラー錠。
【請求項2】
内周面の母線に沿ってロックカム溝を有する外筒体と、この外筒体に回動自在に嵌合すると共に、中心軸線に沿って形成されたキー孔及び半径方向の解錠切欠を有する内筒体と、この内筒体の外周面の母線に沿って延在し、前記ロックカム溝と係合する方向に付勢されたロッキングバーと、前記内筒体の各仕切り部の間に位置すると共に、タンブラーバネのバネ力に抗して半径方向にスライド自在であり、かつ合鍵のブレードに形成された大小のタンブラー用誘導刻みに対応して係合する被誘導部分を有する複数枚の可動障害子を備えた建具用ディスクタンブラー錠用の鍵に於いて、
前記可動障害子は、対向状態に二分割され、また前記被誘導部分は断面山形形状又は断面弧状面のいずれかであり、合鍵を挿入する前の初期状態に於いて、その内端部側の各対向面の一部の前記被誘導部分(a、b)の対向稜線部が、前記内筒体(3)の中心軸線(O)を通る垂直線(V)に対して傾斜状に形成され、一方、前記合鍵の前記タンブラー用誘導刻みは、前記ブレードの平面部の一側上面に側面部からブレードの幅方向に形成された窪み状の第1刻み(73a)と、この第1刻みのほぼ裏側位置に相当する前記平面部の一側下面に形成された窪み状の第2刻み(73b)であり、前記合鍵のブレードを前記キー孔に挿入すると、前記二分割の可動障害子は、それぞれ前記タンブラーバネのバネ力に抗して、かつ一対のガイド棒にそれぞれ同じ方向に案内されると共に、該可動障害子の被誘導部分が前記合鍵のタンブラー用誘導刻みに係合し、これにより二分割された可動障害子の外端部側の各解錠用受け入れ凹所が、前記ロッキングバーの内端部と一致し、以て、合鍵と共に内筒体を解錠方向へ回動させた時、前記ロックカム溝と前記ロッキングバーとの間に生じる楔作用により、内筒体が外筒体に対して相対回動する建具用ディスクタンブラー錠用の鍵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建具用ディスクタンブラー錠に関し、特に可動障害子が外筒体の半径方向にスライドする方式の建具用ディスクタンブラー錠及び該建具用ディスクタンブラー錠用の鍵に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、「タンブラー」と称される可動障害子が支軸を中心にして揺動する振り子式のロータリーディスクタンブラー錠である点で、本発明とは技術的原理が相違する。また特許文献2は、本発明と同様に可動障害子が直線移動するスライド方式のディスクタンブラー錠なので、本発明と技術的原理が同じである。これらの特許文献に記載の公知発明は、「鍵違いの増大化」を図ることができる点で、本発明の課題と一部共通するものの、錠前を構成する各部材が同一であっても、複数種類の可動障害子の配列を任意に変更することにより、鍵違いの増大化を得ることができる多種類のタンブラー錠を提供することができないという問題点がある。
【0003】
出願人は上記問題点を克服するために特許文献3を提案した。この特許文献3の段落0042、段落0047等には、図面(図31など)と共に、可動障害子としての複数種類の環状ディスクタンブラーの設計変更例として、各環状ディスクタンブラーをそれぞれ左右或いは上下対称に二分割しても良い旨が記載されている。
【0004】
しかしながら、この特許文献3の発明の課題は、外筒体或いは内筒体の軸線方向に少なくとも3種類の可動障害子の配列を任意に変更することにより、鍵違いの増大化を得ることができる多種類のタンブラー錠を提供することであることから、異なる形状の可動障害子を複数製造となければならない、また合鍵のタンブラー用誘導刻みも、前記3種類の可動障害子の各被誘導部分に対応して完全な窪み、谷型の刻み、縁部分の切欠溝等の3種類を形成しなければならないので、タンブラー錠及び鍵の製造コストがそれぞれ高くなるという問題点がある。そこで、現在、可動障害子を左右或いは上下対称に二分割する実施形態をさらに発展させ、「より一層の鍵違いの増大化」を図ることができると共に、二分割した可動障害子の形態を、極力一種類の形態に統一化することにより、タンブラー錠及び鍵の製造コストをそれぞれ低く抑えることが期待されている。
【0005】
ところで、特許文献4には、ディスクタンブラー錠及び鍵に於いて、環状ディスクタンブラーを左右或いは上下対称に二分割すること、二分割された可動障害子の対向側の内端部の一部に傾斜状の被誘導部分(被係合面)を形成すること、可動障害子の前記傾斜状の被誘導部分に対応して、合鍵のブレートの側壁部に、該ブレートの平面部に相当する一側面から他側面にかけて傾斜状のタンブラー用誘導刻み(刻みタイプの傾斜状谷部)を形成することが記載されている。
【0006】
この特許文献4は、本発明の如く、二分割した可動障害子の形態を、それぞれ一種類の形態に統一化するので、タンブラー錠及び鍵の製造コストをそれぞれ低く抑えることができるものの、前記タンブラー用誘導刻みは、例えば特許文献5の図1に記載されたリバーシブルキーの如く、一側面から他側面にかけて傾斜状に形成された谷部なので、「より一層の鍵違いの増大化を図る」及び「より一層の複製が困難な合鍵を得る」という発明の課題を十分に満足させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4008302号公報
【特許文献2】特開2011−74613号公報
【特許文献3】特開2014−152593号公報
【特許文献4】実開昭63−44965号公報
【特許文献5】特開平9−144398号公報の図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主たる目的は、特許文献3及び特許文献4の問題点に鑑み、二分割の可動障害子を備える建具用ディスクタンブラー錠及び該建具用ディスクタンブラー錠用の鍵に於いて、前記可動障害子の被誘導部分の構成と、合鍵のブレードに形成したタンブラー用誘導刻みの構成との組み合わせに工夫を凝らし、「より一層のピッキングの防止」、「より一層の鍵違いの増大化を図る」及び「より一層の複製が困難な合鍵を得る」ことである。第2の目的は、例えばタンブラー用誘導刻みの側壁部から平面部に至る複数の刻みの長さに変化を持たせることにより、ピッキングの防止という観点から、より安全性が高いディスクタンブラー錠及び複製が困難な鍵を得ることである。さらに、例えば合鍵の挿入時及び引き抜き時に可動障害子との摩擦抵抗を少なくする、タンブラー錠及び鍵の製造コストをそれぞれ低く抑える、同位置にタンブラー用誘導刻みを形成しても、合鍵のブレードは垂直に刻みを形成するものよりも強靭である等の目的は、構成要件によって特定される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の建具用ディスクタンブラー錠は、内周面の母線に沿ってロックカム溝を有する外筒体と、この外筒体に回動自在に嵌合すると共に、中心軸線に沿って形成されたキー孔及び半径方向の解錠切欠を有する内筒体と、この内筒体の外周面の母線に沿って延在し、前記ロックカム溝と係合する方向に付勢されたロッキングバーと、前記内筒体の各仕切り部の間に位置すると共に、タンブラーバネのバネ力に抗して半径方向にスライド自在であり、かつ合鍵のブレードに形成された大小のタンブラー用誘導刻みに対応して係合する被誘導部分を有する複数枚の可動障害子を備えた建具用ディスクタンブラー錠に於いて、前記可動障害子は、対向状態に二分割され、また前記被誘導部分は断面山形形状又は断面弧状面のいずれかであり、合鍵を挿入する前の初期状態に於いて、その内端部側の各対向面の一部の前記被誘導部分a、bの対向稜線部が、前記内筒体3の中心軸線Oを通る垂直線Vに対して傾斜状に形成され、一方、前記合鍵の前記タンブラー用誘導刻みは、前記ブレードの平面部の一側上面に側面部からブレードの幅方向に形成された窪み状の第1刻み73aと、この第1刻みのほぼ裏側位置に相当する前記ブレードの平面部の一側下面に形成された窪み状の第2刻み73bであり、前記合鍵のブレードを前記キー孔に挿入すると、前記二分割の可動障害子は、それぞれ前記タンブラーバネのバネ力に抗して、かつ一対のガイド棒にそれぞれ同じ方向に案内されると共に、該可動障害子の被誘導部分が前記合鍵のタンブラー用誘導刻みに係合し、これにより二分割された可動障害子の外端部側の各解錠用受け入れ凹所が、前記ロッキングバーの内端部と一致し、以て、合鍵と共に内筒体を解錠方向へ回動させた時、前記ロックカム溝と前記ロッキングバーとの間に生じる楔作用により、内筒体が外筒体に対して相対回動することを特徴とする。
【0010】
また本発明の建具用ディスクタンブラー錠用の鍵は、内周面の母線に沿ってロックカム溝を有する外筒体と、この外筒体に回動自在に嵌合すると共に、中心軸線に沿って形成されたキー孔及び半径方向の解錠切欠を有する内筒体と、この内筒体の外周面の母線に沿って延在し、前記ロックカム溝と係合する方向に付勢されたロッキングバーと、前記内筒体の各仕切り部の間に位置すると共に、タンブラーバネのバネ力に抗して半径方向にスライド自在であり、かつ合鍵のブレードに形成された大小のタンブラー用誘導刻みに対応して係合する被誘導部分を有する複数枚の可動障害子を備えた建具用ディスクタンブラー錠用の鍵に於いて、前記可動障害子は、対向状態に二分割され、また前記被誘導部分は断面山形形状又は断面弧状面のいずれかであり、合鍵を挿入する前の初期状態に於いて、その内端部側の各対向面の一部の前記被誘導部分a、bの対向稜線部が、前記内筒体3の中心軸線Oを通る垂直線Vに対して傾斜状に形成され、一方、前記合鍵の前記タンブラー用誘導刻みは、前記ブレードの平面部の一側上面に側面部からブレードの幅方向に形成された窪み状の第1刻み73aと、この第1刻みのほぼ裏側位置に相当する前記平面部の一側下面に形成された窪み状の第2刻み73bであり、前記合鍵のブレードを前記キー孔に挿入すると、前記二分割の可動障害子は、それぞれ前記タンブラーバネのバネ力に抗して、かつ一対のガイド棒にそれぞれ同じ方向に案内されると共に、該可動障害子の被誘導部分が前記合鍵のタンブラー用誘導刻みに係合し、これにより二分割された可動障害子の外端部側の各解錠用受け入れ凹所が、前記ロッキングバーの内端部と一致し、以て、合鍵と共に内筒体を解錠方向へ回動させた時、前記ロックカム溝と前記ロッキングバーとの間に生じる楔作用により、内筒体が外筒体に対して相対回動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
(a)請求項1に記載の発明は、「可動障害子は、対向状態に二分割され、また前記被誘導部分は断面山形形状又は断面弧状面のいずれかであり、合鍵を挿入する前の初期状態に於いて、その内端部側の各対向面の一部の被誘導部分(a、b)の対向稜線部が、内筒体(3)の中心軸線(O)を通る垂直線(V)に対して傾斜状に形成され、一方、合鍵のブレードに形成されたタンブラー用誘導刻みは、ブレードの平面部の一側上面に側面部からブレードの幅方向に形成された窪み状の第1刻みと、この第1刻みのほぼ裏側位置に相当する平面部の一側下面に形成された窪み状の第2刻みを有するので」、二分割の可動障害子を備えるディスクタンブラー錠に於いて、合鍵をキー孔に挿入した時、前記二分割の可動障害子は、各タンブラーバネのバネ力に抗して、かつ一対のガイド棒にそれぞれ同じ方向に案内されない限り、該可動障害子の被誘導部分が前記合鍵のタンブラー用誘導刻みに係合し、これにより二分割の可動障害子の外端部側の各解錠用受け入れ凹所が、ロッキングバーの内端部(好ましくはその係合板部分)とそれぞれ同時に一致しないので、内筒体を解錠方向へ回転させることができない。したがって、「より一層のピッキングの防止」、「より一層の鍵違いの増大化を図る」及び「より一層の複製が困難な合鍵を得る」ことができる。「より一層のピッキングの防止」について付言すると、二分割の可動障害子の被誘導部分は、例えば「ハの字状」或いは「楔状」の格好で合鍵のタンブラー用誘導刻みの窪み状の第1刻み及び第2刻みを待ち構えているので、不正解錠工具(ピッキングツール)の先端が被誘導部分の傾斜面に対して滑り、その結果、ピッキングの防止に寄与する。さらに、例えば合鍵の挿入時及び引き抜き時に可動障害子との摩擦抵抗を少なくするという発明の課題を達成することができる。
(b)請求項2に記載の発明は、「可動障害子は、対向状態に二分割され、また前記被誘導部分は断面山形形状又は断面弧状面のいずれかであり、合鍵を挿入する前の初期状態に於いて、その内端部側の各対向面の一部の被誘導部分(a、b)の対向稜線部が、内筒体(3)の中心軸線(O)を通る垂直線(V)に対して傾斜状に形成され、一方、合鍵のブレードに形成されたタンブラー用誘導刻みは、ブレードの平面部の一側上面に側面部からブレードの幅方向に形成された窪み状の第1刻みと、この第1刻みのほぼ裏側位置に相当する平面部の一側下面に窪み状の第2刻みを有するので」、鍵の構成として、合鍵のタンブラー用誘導刻みは、ブレードの平面部の一側上面に側面部からブレード幅方向(鍵幅方向)に形成された窪み状の第1刻みと、この第1刻みのほぼ裏側位置に相当する前記平面部の一側下面に形成された窪み状の第2刻みであり、これらの第1刻み及び第2刻みは、可二分割の可動動障害子の各対向面の一部に形成された一対の傾斜状の被誘導部分にそれぞれ対応していることから、「より一層の複製が困難な合鍵を得る」ことができる。さらに、例えば合鍵の挿入時及び引き抜き時に可動障害子との摩擦抵抗を少なくするという発明の課題を達成することができる。
その他、例えばタンブラー用誘導刻みの第2刻の斜辺の長さは、第1刻みの斜辺の長さよりも短い(異なる刻みである)ので、合鍵の挿入時、該合鍵のタンブラー用誘導刻みによって、外筒体の内周面の一部から離れるようにリフトアップされた或いは位置変位した二分割の可動障害子は、それぞれ移動量が異なるので、ピッキングの防止という観点から、より安全性が高いディスクタンブラー錠及び複製が困難な鍵を得ることができる。また合鍵のタンブラー用誘導刻みの第2刻みの斜辺の長さが、第1刻みの斜辺の長さと略同じ(同等の刻み)である実施形態の場合には、前記(a)で述べた通り、ピッキングの防止の向上を図ることができる。また合鍵のタンブラー用誘導刻みの構造について、第2刻みの斜辺の長さが第1刻みの斜辺の長さよりも短いもの(異なる刻み)と、第2刻みの斜辺の長さが第1刻みの斜辺の長さと略同じもの(同等の刻み)の二種類が、内筒の中心軸線に沿って組み込まれている実施形態の場合には、「より一層のピッキングの防止」、「より一層の鍵違いの増大化を図る」及び「より一層の複製が困難な合鍵を得る」というそれぞれの観点から、好ましい効果を得ることができる。また二分割の可動障害子の中には、複数の解錠用受け入れ凹所を有する可動障害子が含まれている実施形態の場合には、単数と複数の解錠用受け入れ凹所を有する可動障害子を任意に組み合わせることが可能となる。したがって、製造段階で、ピッキングの防止という観点から、より安全性が高いディスクタンブラー錠を提供することができる。さらに、二分割された可動障害子の幅広側壁は、外観上ほぼ小舟形状であり、船首に相当する一端部は、外筒体の内周面の一部の曲率に合うように弧状に形成され、前記一端部と反対側の船尾に相当する他端部にはタンブラーバネの一端部を支持するバネ端支持部が設けられ、該他端部の内端部側に前記タンブラーバネの伸縮方向に沿って内筒体に設けた案内部に案内される指状突起部を設け、前記指状突起部の内側縁に被誘導部分が形成され、前記内端部と反対側の外端部に解錠用受け入れ凹所が形成されている実施形態の場合には、外筒体の内周面の一部、タンブラーバネ及びロッキングバーの内端部側の係合板部分に対して対応するように内筒体に簡単に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1乃至図12は本発明の第1実施形態を示す各説明図。図13図15は本発明の他の実施形態を示す各説明図。
図1】使用態様の一例を示す外観斜視図。
図2図1で示したタンブラー錠Xの中心軸線0を含む面で切断した概略縦断面図。
図3】合鍵の挿入方向Aに直交する面(正面視)で切断した概略縦断面図(二分割した可動障害子が見える初期位置の状態)。
図4】外筒体の概略断面図。
図5】内筒体を構成する主たる部材の概略説明図。
図6】可動障害子の横にした状態の正面図。
図7】ブレードを有する合鍵の正面図。
図8】ブレードを有する合鍵の平面図。
図9】タンブラー用誘導刻みの切断端面の断面形状及び表側の斜辺の長さと裏側の斜辺の長さが相違する旨(特徴部分)を示す説明図(図7の9−9線の箇所を参照)。
図10】合鍵をキー孔に挿入した説明図(図2に於いて、合鍵を水平状態に差し込んだ場合)。
図11】合鍵をキー孔に挿入した状態の説明図(タンブラー用誘導刻みの表側の斜辺と裏側の斜辺の稜線部が内筒体の中心軸線と交差する垂直線から外側に外れている説明も含む)。
図12】内筒体が外筒体に対して相対回動する旨の説明図。
図13】第2実施形態(可動障害子の組み合わせの例)の説明図。
図14】第3実施形態(可動障害子の組み合わせの例)の説明図。
図15】第4実施形態(タンブラー用誘導刻みの断面形状及び表側の斜辺の長さと裏側の斜辺の長さがほぼ同じである旨(特徴部分)を示す説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1乃至図12は、本発明の第1実施形態のディスクタンブラー錠X(以下、ここでは「タンブラー錠」という。)及び該タンブラー錠用の鍵の各説明図である。図1は本発明のタンブラー錠Xを扉1の壁部1aに取り付け、それと共に合鍵Yを示した外観斜視図である。まずこの図1に於いて、Xはタンブラー錠で、このタンブラー錠Xは合鍵Yの操作力により、複数の部材を組み合わせて形成された内筒体3が長筒状の外筒体2に対して相対回動する。
【0014】
実施形態では、扉1(例えば、住宅の扉)の壁部1aにタンブラー錠Xが水平状態に固着され、前記内筒体3を構成する錠先端部4に化粧カバー5が外嵌合している。
【0015】
図1で示すように、キー孔6を有する錠先端部4及び化粧カバー5は、壁部1aの外壁面から突出している。また内筒体3を構成する錠後端部7は、外筒体2あるいは内筒体3の軸線0上に位置するテールピース(出力片)8を有している。なお、符号Aは合鍵Yの挿入方向である。図2図1で示したタンブラー錠Xの中心軸線0を含む面で切断した概略縦断面図である。一方、図3は合鍵Yの挿入方向Aに直交する面で切断した概略縦断面図である。図2及び図3を参照してタンブラー錠Xの基本的な構成部材を説明する。
まず、本発明のタンブラー錠Xは、内筒体の中心軸方向に所定間隔を有して二列状態に配設された二分割の左右或いは上下の可動障害子Zを有する点、また本発明のディスクタンブラー錠の鍵は、前記二分割の可動障害子Zのブレート用嵌挿孔を形成する各対向面に設けた傾斜状の各被誘導部分に対応する鍵幅方向の断面が、ほぼ山形のタンブラー用誘導刻みである点に特徴がある(特徴点)。
【0016】
前述したように、2は長筒状の外筒体で、この外筒体の内周面2aには、該外筒体2の母線に沿ってロックカム溝11が形成されている(図2図4参照)。図4を基準にすると、一部略ハの字形あるいは略逆ハの字形の一対のロックカム溝11が外筒体の母線に沿って、かつ外筒体2或いは内筒体3の中心軸線0を基準にして上下の中心部に対称に形成されている。実施形態では外筒体2の上下にロックカム溝11、11が設けられていることから、これに対応して一対のロッキングバー12、12が上下に配設されている。
【0017】
図3で示すように、左右のロッキングバー12は、外筒体2の各ロックカム溝11に対して係脱する外側の尖頭部12aと、この尖頭部に連設形成された内側の係合部としての係合板部分12bとから成り、内筒体3の外周端部に形成された該内筒体の解錠切欠13に適宜に組み込まれている。そして、図2で示すように、例えば内筒体3の錠先端部4側(後方)に配設された前側の付勢バネ14と、錠後端部7側(前方)に配設された後側の付勢バネ14により、各ロッキングバー12は内筒体3の半径外方向にそれぞれ常時付勢されている。したがって、各ロッキングバー12は、常態では、それぞれ複数の付勢バネ14、14により、各外側の尖頭部12aが外筒体2の各ロックカム溝11、11に係合している。
【0018】
次に図5は、主に内筒体3を構成する部材を、説明の便宜上、適宜に判り易く示した概略説明図である。実施形態の内筒体3は、中心部にキー孔6を有する錠先端部4と、出力突起片としてのテールピース8を中心部に有する錠後端部7と、この錠後端部7と前記錠先端部4との間に設けられ、かつ該軸線方向と直交する複数の仕切板(或いは仕切り部)16によって区画形成される複数のタンブラー収容部27並びに複数のタンブラーバネ用収容部28、不番の仕切板用スロット、可動障害子用の一対の板状案内部10,10、軸線方向の解錠切欠13等を有すると共に、断面弧状の上下或いは左右の分割体を複数の仕切板等を介して長筒状に形成された内筒本体15と、この内筒本体に中心軸線方向に沿って列状に併設されていると共に、該軸線方向と直交し、かつ前記タンブラー収容部27及びタンブラーバネ収容部28を形成する複数の円形或いはトラック形状の仕切板16と、前記内筒本体15の一端開口27aから差し込まれた前記仕切板16の連結孔18を貫通して前記錠先端部4及び錠後端部7に架設された一対の所定長の連結棒19とから成る。
【0019】
ここで、図2図3及び図5を参照にして、さらに内筒体3の構成を説明する。まず図3及び図5を参照にすると、錠先端部4は、短筒状のヘッド部分4aと、このヘッド部分4aに連設する環状のフランジ部分4bを有し、前述したようにその中心部にキー孔6が形成されている。キー孔6の形状や大きさは、合鍵YのブレードBに対応して適宜に形成されている。そして、前記ヘッド部分4aの先端面は、前記キー孔6に向かってすり鉢形状に形成された案内曲面となっている。また、前記キー孔6の同心円上には、錠先端部4の後端面から内部に向かって所定長の前支持孔25が形成されている。実施形態では二本の連結棒19を用いているので、図2を基準にすると、前支持孔25は所定間隔を有して上下に一対設けられている。
【0020】
次に図2を参照にすると、26は環状の防御プレートで、この防御プレート26は適宜に焼き入れされていると共に、その中心部にキー孔6と一致する不番の中心孔、その中心部寄りの部位に前述したガイド棒用の不番の挿通孔等が適宜に形成されている。なお、防御プレート26も本発明の課題との関係では、発明の本質的事項ではない。この防御プレート26は、例えば内筒本体15の先端部の上方に形成された長孔状の切欠部分を介して内筒本体15内に組み込まれる。
【0021】
ここで初期位置を示す図3を基準にすると、内筒本体15は、ハッチングで示した左右の段差状実体部分15a、15aを除き、上方外周の開口側の一端部が幅広く、一方、下方外周の開口或いは非開口の他端部が幅狭であり、内筒体3(内筒本体15)の中心軸線Oを通る垂直線V上に位置する可動障害子用の上下の板状案内部10,10を基準にすると、左右一対のタンブラー収容部27、27を有している。これらのタンブラー収容部27には、その一端開口27aから左右一対の可動障害子Zが適宜に組み込まれる。図2で示すように、7枚(分割の可動障害子Zは、全部で14枚)の可動障害子Zは、複数のトラック形状或いは円形の仕切板16を介して中心軸線O方向に列状に配設されている。もちろん、可動障害子Zの数は、任意に設計変更できる事項である。
【0022】
しかして、13は内筒本体15の上下部或いは左右部に対称的に形成された一対の解錠切欠で、これらの解錠切欠13は前述した上下或いは左右の実体部分15a、15aの中央部に半径内方向に向かって形成され、一対のロッキングバー12の尖端部12aをそれぞれ嵌合案内する。28はタンブラー収容部27内の適宜箇所(図3では、左右の実体部分15a、15aの段差状下端部分)に形成されたバネ端支持面を有する左右一対のタンブラーバネ収容部で、これらのタンブラーバネ収容部28は、左右の段差状実体部分15a、15aの内側に対向して垂直方向或いは水平方向に一対設けられている。
次に同様に図5を参照にして仕切部16を説明する。なお、仕切部16の構成に関して、設計如何によっては内筒本体15の内側に壁を設けて仕切り、或いは内筒本体15の内側に仕切板16を設けることができるので、ここでは仕切りに相当する前記壁や仕切板を「仕切部16」の概念に含めることにする。また仕切部16の形状に関して、円形や楕円形に形成し、内筒本体15の解錠切欠13と一致する仕切板解錠切欠を形成しても良いが、実施形態では、外観上、図5で示すようなトラック形状に形成している。また複数の仕切板16を内筒本体15自体に一体形成しても良い。本実施形態では、出願人が提案した特許第4008302号の特許発明(図3図4)と同様に、内筒本体15と仕切板16は別個の部材であり、二つの弧状分割片を一体的に組み合わせて内筒本体15を形成した後に、該内筒本体15に多数の仕切板16を一体的に組み込み、タンブラー収容部27を区画形成している。
【0023】
ところで、両端部又は挿入部端が弧状の嵌合突片を有するトラック形状の仕切板16は、矩形状の連結孔18及び中央部に形成された横長矩形状の案内開口29を有する。
【0024】
次に図2図5を参照にして錠後端部7側の構成を説明する。前述したように、錠後端部7はテールピース8を有するが、該テールピース8は、外筒体2の後端部に設けられたワッシヤーリング31a、ストッパーリング31b等の止め具31を介して外筒体2の後端部内に回動自在に嵌合するテールプラグ32の中心部に取付けられている。
【0025】
錠後端部7を構成するテールプラグ32は、錠先端部4と同様に連結棒19の後端部を支持する後支持孔33を一対有している。連結棒19は、内筒本体15に組み込まれた後述の可動障害子Z及び仕切板16を貫通した状態で、その先端部は前支持孔25に、一方、後端部は後支持孔33に支持されている。
【0026】
さて、本発明の特徴事項について説明する。例えば二分割の可動障害子Zの両方を、図6で示すように「横にした状態」で説明する。なお、図面上方の他方の可動障害子Zの構成は、図面下方の一方のそれと同一なので、同一の符号を付して重複する説明を割愛する。図6は可動障害子Zの横にした状態の正面図(又は背面図)である。
【0027】
この図6を基準にすると、右側の大きな弧状に形成された右端部(ここでは「一端部41a」とする)は、外筒体2の内周面2aの曲率に対応して形成されているので、タンブラーバネ42に付勢されている状態(施錠状態)では、例えば外筒体2の内周面2aに圧接する。左側の小さな弧状端面を有する突起状の左端部(ここでは「突起状他端部41b」とする)は、タンブラーバネ収容部27と下方の板状案内部10の間の収納部30内に位置する。この突起状他端部41bの内端部側41cに傾斜状の他方の被誘導部分bが形成されている。この図6では現れないが、前記他方の被誘導部分bの裏側(背面)に、傾斜状の一方の被誘導部分aが形成されている。そして、前記内端部側41cに対する外端部41dに単数又は複数のロッキングバー12の係合部としての係合板部分12b用の受け入れ凹所48が形成されている。また左端部の横倒れ状凹所は、タンブラーバネ42用の端部を支持するバネ支持端部49である。さらに、46は連結棒19用貫通孔で、この連結棒19用貫通孔46は、可動障害子Zがタンブラーバネ42のバネ力に抗して図面上左側にスライドすることから、長孔矩形状に形成されている。
【0028】
以上のように、図6を参照にすると、二分割の長板状の可動障害子Zは、例えば正面視、その幅広側壁は、それぞれ外観上ほぼ小舟形状であり、船首に相当する一端部41aは、外筒体2の内周面2aの曲率に合うように弧状に形成され、前記一端部と反対側の船尾に相当する突起状他端部41bにはタンブラーバネ42の一端部を支持する凹所状のバネ端支持部49が設けられ、該突起状他端部の内端部側41cに前記タンブラーバネ42の伸縮方向に沿って内筒体3に設けた板状案内部10に案内される指状突起部50が設けられ、該指状突起部50の内側縁に断面山形状の被誘導部分a、bが形成され、前記内端部と反対側に相当する外端部41dに解錠用受け入れ凹所48が形成されている。付言すると、可動障害子Zは、対向状態に二分割Z、Zされ、その内端部側の各対向面の一部に傾斜状に形成された被誘導部分a、bを有する。
ところで、図3は合鍵の挿入方向Aに直交する面(正面視)で切断した概略縦断面図(二分割した可動障害子が見える初期位置の状態)であるが、例えばこの図3を参照にすると、合鍵を挿入する前の初期状態に於いて、これらの被誘導部分a、bの対向稜線部は、前記内筒体3の中心軸線Oを通る垂直線Vに対して傾斜状に形成され、望ましくは前記対向稜線部にそれぞれ直交する前記タンブラー用誘導刻み用の被誘導部分a、bは、合鍵Yの挿入時及び引き抜き時に該合鍵Yの窪み状の第1刻みと第2刻みがそれぞれ摩擦することから、断面山形形状又は断面弧状面のいずれかである。
付言すると、断面山形形状に形成された前記被誘導部分a、bの対向稜線部が、前記内筒体3の中心軸線Oを通る垂直線Vに対して傾斜状に形成されている。また前記前記被誘導部分a、bは断面山形形状のみならず、例えば断面弧状面であっても良い。
【0029】
次に、図7乃至図9を参照にして、本発明の合鍵Yの一例を説明する。これらの図に於いて、Yは合鍵、Bはブレード(差し込み部分)、71は平面部、71aは平面部の一側上面、71bは平面部の一側下面、72は側面部、72aは一方の側面、72bは他方の側面である。
【0030】
本発明の合鍵Yを構成要件とするディスクタンブラー錠用の鍵は、内周面に母線に沿ってロックカム溝11を有する外筒体2と、この外筒体に回動自在に嵌合すると共に、中心軸線Oに沿って形成されたキー孔6及び半径方向の解錠切欠13を有する内筒体3と、この内筒体の母線に沿って延在し、前記ロックカム溝11と係合する方向に付勢されたロッキングバー12と、前記内筒体3の各仕切り部16の間にそれぞれ位置すると共に、タンブラーバネ42のバネ力に抗して半径方向にスライド自在であり、かつ合鍵YのブレードBに形成された好ましくは大小のタンブラー用誘導刻み73に対応して係合する被誘導部分を有する複数枚の可動障害子Zを備えたディスクタンブラー錠用の鍵であって、前記可動障害子Zは、対向状態に二分割され、また前記被誘導部分は断面山形形状又は断面弧状面のいずれかであり、合鍵を挿入する前の初期状態に於いて、その内端部側の各対向面の一部の前記被誘導部分(a、b)の対向稜線部が、前記内筒体(3)の中心軸線(O)を通る垂直線(V)に対して傾斜状に形成され、一方、前記合鍵のYの前記タンブラー用誘導刻み73は、前記ブレードBの平面部71の一側上面71aに側面部72からブレード幅方向(鍵幅方向)に形成された窪み状の第1刻み73aと、好ましくはこの第1刻み73aのほぼ裏側位置に相当する前記平面部71の一側下面71bに形成された窪み状の第2刻み73bであり、前記合鍵YのブレードBを前記キー孔6に挿入すると、前記二分割の可動障害子Zは、それぞれ前記タンブラーバネ42のバネ力に抗して、かつ一対の連結棒19にそれぞれ同じ方向に案内されると共に、該可動障害子Zの被誘導部分a、bが前記合鍵のタンブラー用誘導刻み73に係合し、これにより二分割された可動障害子Zの外端部側の各解錠用受け入れ凹所48が、前記ロッキングバー12の内端部(好ましくはその係合板部分)12bと一致し、以て、合鍵Yと共に内筒体3を解錠方向へ回動させた時、前記ロックカム溝11と前記ロッキングバー12との間に生じる楔作用により、内筒体3が外筒体2に対して相対回動する(図12参照)。
【0031】
図9は、図7の9−9線の箇所のタンブラー用誘導刻み73の断面形状、及び表側の斜辺の長さと裏側の斜辺の長さが相違する旨(特徴部分)を示す説明図である。実施形態のタンブラー用誘導刻み73は、例えば図7で示すように、ブレード(差し込み部分)Bの側面部72である両側面72a、72bにそれぞれブレードの差し込み方向に深さが異なる大小の誘導刻み73がそれぞれ形成されているが、図7の状態で合鍵Yをひっくり返した場合、前記側面部72である両側面72a、72bにもそれぞれブレードBの差し込み方向に深さが異なる大小の誘導刻み73がそれぞれ形成されている。
【0032】
したがって、図9で示すようにタンブラー用誘導刻み73の断面形状はほぼ山形状であり、上下の山形状誘導刻み73の各稜線部(刃先に見える部分)P、Pは、内筒体2の中心軸線Oを通る垂直線Vから回転対称の状態で外れている。したがって、タンブラー用誘導刻み73の第2刻み73bの斜辺の長さL2は、第1刻み73aの斜辺の長さL1よりも短い。
【0033】
さらに付言すると、タンブラー用誘導刻み73は、一方の側面部の縁部に形成された一群のものと、他方の側面部の縁部に形成された一群のものとがあり、かつ、前記一群の隣同士のタンブラー用誘導刻みの断面形状の頂点Pの位置が異なるものが含まれ、しかも、鍵Yは180度回転させて使用することができるリバーシブルであることを特徴とする。ところで、実施形態では、図7及び図10で示すように、前記深さが異なる大小の誘導刻み73は、可動障害子Zの配列位置に対応してブレードBの挿入方向に表と裏にそれぞれ合計6個形成されているが、もちろん、大小のタンブラー用誘導刻み73の数は可動障害子Zのそれに対応するのが望ましい。なお、合鍵のYのブレードBの平面視上の中央部部分に回転対称にブレードの挿入方向に沿って直線状に長溝74が形成されている。したがって、実施形態の合鍵Yは、リバーシブルである。
【実施例】
【0034】
第1実施形態では、合鍵のタンブラー用誘導刻みの第2刻みの斜辺の長さは、第1刻みの斜辺の長さよりも短い(異なる刻みである)。しかしながら、後述するように合鍵のタンブラー用誘導刻みの第2刻みの斜辺の長さは、第1刻みの斜辺の長さと略同じ(同等の刻みである)であっても良い。
【0035】
この欄では、タンブラー錠Xを構成する可動障害子Zの他の実施形態について、簡単に説明する。まず図13は第2実施形態(可動障害子の組み合わせの例)の説明図、図14は第3実施形態(可動障害子の組み合わせの例)の説明図である。第2実施形態の可動障害子Z及び第3実施形態の可動障害子Zは、二分割の可動障害子の少なくとも一方には、複数の解錠用受け入れ凹所48が形成されている旨を示す。前述したように、二分割の可動障害子は、二列の状態で、内筒体3の中心軸線O方向に整列しているが、単数の解錠用受け入れ凹所48を有する可動障害子Zのみを適宜に組み合わせて配列しても良いし、また単数の解錠用受け入れ凹所48を有する可動障害子Zと複数の解錠用受け入れ凹所48を有する可動障害子Zとを適宜に組み合わせて配列しても良い。このように構成すると、ピッキング対策の観点から安全性の高いタンブラー錠Xを得ることができる。
【0036】
次に図15は第4実施形態の合鍵Y1である。この合鍵Y1のタンブラー用誘導刻み73の断面形状と図9に示した合鍵Yのそれとを比較すると明らかなように、表側の斜辺の長さL1と裏側の斜辺の長さL2がほぼ同じである。
【0037】
このように構成しても、対向状態に二分割された各可動障害子は、その内端部側の各対向面の傾斜状の誘導部分が、合鍵Y1のタンブラー用誘導刻みに同方向に係合するので、このように同時に係合する位置に対応する前記タンブラー用誘導刻みを正確に形成しなければならないので、複製が困難な鍵を得ることができる。
【0038】
なお、第1実施形態の二分割の可動障害子と第2実施形態の二分割の可動障害子を組み合わせても良い。すなわち、合鍵のタンブラー用誘導刻みは、第2刻みの斜辺の長さが第1刻みの斜辺の長さよりも短いもの(異なる刻み)と、第2刻みの斜辺の長さが第1刻みの斜辺の長さと略同じもの(同等の刻み)の二種類が、内筒の中心軸線に沿って組み込まれても良い。このように構成すると、他の実施形態によりも、「より一層のピッキングの防止」、「より一層の鍵違いの増大化を図る」及び「より一層の複製が困難な合鍵を得る」という、優れた効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、錠前や建具の分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
X…タンブラー錠、
Z…二分割の可動障害子、
a、b…被誘導部、
Y、Y1…合鍵、
B…ブレード、
71…平面部、
72…側面部、
73…タンブラー用誘導刻み、
73a…第1刻み、
L1…第1刻みの斜辺の長さ、
73b…第2刻み、
L2…第2刻みの斜辺の長さ、
74…直線状長溝、
1…扉、
2…外筒体、
3…内筒体、
11…ロックカム溝、
12…ロッキングバー、
12a…尖端部、12b…係合板部分、
13…解錠切欠、14…付勢バネ、
15…内筒本体、
16…仕切板
18…連結孔、
19…連結棒
27…タンブラー収容部、
28…タンブラーバネ収容部、
42…タンブラーバネ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15