(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1面及びそれに対向する第2面を有する基材と、凹凸パターンが形成されてなるパターン形成面を有するインプリントモールドとを準備し、前記基材の第1面と前記インプリントモールドの凹凸パターン形成面との間に活性エネルギー線硬化型樹脂を介在させてインプリント処理を行い、複数の凸部、複数の凹部及び前記凹部の底部に位置する残膜部を有する樹脂パターンを前記基材の前記第1面上に形成するパターン形成工程と、
前記樹脂パターンの前記残膜部を除去する残膜部除去工程と、
ルイス酸性を示す無機化合物を含有する第1ガスに前記残膜部が除去された前記樹脂パターンを所定の条件で曝すことで、前記無機化合物と前記樹脂パターンを構成する前記活性エネルギー線硬化型樹脂とを前記樹脂パターン内部にて化学反応させる第1ガス暴露工程と、
前記第1ガス暴露工程後、酸化剤を含有する第2ガスに前記樹脂パターンを曝す第2ガス暴露工程と
を有することを特徴とするパターン形成方法。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイス(例えば、半導体メモリ等)等の製造工程において、基板の表面に微細凹凸構造を形成した型部材(モールド)を用い、微細凹凸構造を基板等の被加工物に転写することで微細凹凸構造を等倍転写するパターン形成技術であるナノインプリント技術が利用されている。
【0003】
このような微細凹凸構造を有するナノインプリントモールドは、一般に、基板の表面に設けたレジスト膜に対する電子線描画処理又は紫外線露光処理、現像処理を経て、微細凹凸構造に対応するレジストパターンを形成し、その後、当該レジストパターンが形成された基板を、そのレジストパターンをマスクとするエッチング処理に付する、いわゆる電子線リソグラフィー法又はフォトリソグラフィー法により製造される。
【0004】
このナノインプリントモールドの製造には多大な時間及びコストがかかる。そのため、半導体デバイス等の製造工程においては、一般に、上記のようにして電子線リソグラフィー法又はフォトリソグラフィー法により製造されたナノインプリントモールドをマスターモールドとし、当該マスターモールドを用いたインプリントリソグラフィー法により作製したナノインプリントモールド(レプリカモールド)が用いられる。
【0005】
半導体メモリ等の半導体デバイスは、基板の表面に設けたレジスト膜に対してナノインプリントモールド(一般にはレプリカモールド)の微細凹凸構造をインプリント法により転写して微細なレジストパターンを形成し、当該レジストパターンが形成された基板を、そのレジストパターンをマスクとするエッチング処理に付して基板上に微細凹凸構造を形成した後、所定の工程を経て製造される。
【0006】
上述したように、微細凹凸構造を有するナノインプリントモールド、半導体デバイス等は、当該微細凹凸構造に対応する微細な寸法のレジストパターンをインプリント法により基板上に形成することで製造される。
【0007】
このようにして形成されるレジストパターンは、基板や基板上に設けられているハードマスク層等をエッチングするためのマスクとして用いられるものである。そのため、ナノインプリントモールド、半導体デバイス等における微細凹凸構造を高い精度で形成するために、レジストパターンには、基板やハードマスク層のエッチング処理中に消失しない程度のエッチング耐性が具備されていることが要求される。
【0008】
従来、レジストパターンの少なくとも側壁にALD(atomic layer deposition)等により側壁保護材料を堆積させることで、当該レジストパターンを高い精度で基板に転写する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0009】
また、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とポリスチレン(PS)とからなるブロック・コポリマーを用いた自己組織化膜において、相分離したPMMAパターンの内部にてPMMAとトリメチルアルミニウム(TMA)とを化学反応させて、PMMAパターンのエッチング耐性を向上させる方法が知られている(非特許文献1参照)。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るパターン形成方法の各工程を示すフローチャートであり、
図2は、本実施形態に係るパターン形成方法におけるインプリント工程及び残膜部除去工程の各工程を切断端面図にて示す工程フロー図であり、
図3は、本実施形態に係るパターン形成方法におけるガス暴露工程と凹凸構造体の製造方法におけるエッチング工程との各工程を切断端面図にて示す工程フロー図であり、
図4は、本実施形態におけるガス暴露工程を実施可能な装置を概略的に示す構成図である。
【0026】
<インプリント工程>
第1面11及びそれに対向する第2面12を有する基材10を準備し、当該基材10の第1面11上に樹脂製凹凸パターン31を形成する(
図1のS01,
図2(A)〜(C)参照)。
【0027】
基材10としては、例えば、石英ガラス、ソーダガラス、蛍石、フッ化カルシウム基板、フッ化マグネシウム基板、アクリルガラス等のガラス基板、ポリカーボネート基板、ポリプロピレン基板、ポリエチレン基板等の樹脂基板、これらのうちから任意に選択された2以上の基板を積層してなる積層基板等の透明基板;ニッケル基板、チタン基板、アルミニウム基板等の金属基板;シリコン基板、窒化ガリウム基板等の半導体基板等を用いることができる。
【0028】
本実施形態においては、基材10の第1面11上に、金属クロム、酸化クロム、窒化クロム、酸窒化クロム等からなるハードマスク層20が設けられている。本実施形態に係るパターン形成方法によれば、エッチング耐性を向上させた凹凸パターン33(
図3(B)参照)を形成することができるため、ハードマスク層20の厚さ、すなわちハードマスク層20のエッチング量を大きくしても、ハードマスク層20のエッチング処理中に凹凸パターン33が消失することがない。したがって、本実施形態においては、ハードマスク層20の厚さを1〜30nm程度にすることができ、これにより、基材10の第1面11側に形成される凹凸構造1a(
図3(E)参照)のアスペクト比を大きくすることができる。なお、本実施形態において、このような態様に限定されるものではなく、ハードマスク層20は設けられていなくてもよい。
【0029】
基材10の厚さは、基板の強度、取り扱い適性等を考慮し、例えば、300μm〜10mm程度の範囲で適宜設定され得る。なお、本実施形態において「透明」とは、波長300〜450nmの光線の透過率が85%以上であることを意味し、好ましくは90%以上である。
【0030】
樹脂製凹凸パターン31を構成する樹脂材料は、後述するガス暴露工程(第1ガス暴露工程,
図1のS03)にて凹凸パターン32に曝される第1ガスに含有される無機化合物との反応性を示す反応性官能基を有するものである限り、特に制限されない。当該樹脂材料として、一般にインプリントモールドを用いたインプリント処理に用いられるアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の活性エネルギー線硬化型樹脂(例えば、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等)を例示することができる。第1ガスに含有される無機化合物との反応性を示す反応性官能基としては、例えば、カルボニル基、チオカルボニル基、アクリロイル基、ヒドロキシル基、スルファニル基、エポキシ基等が挙げられる。
【0031】
樹脂製凹凸パターン31は、樹脂製凹凸パターン31に対応する凹凸パターン41が形成されたパターン形成面を有するインプリントモールド40(マスターモールド)を用いたインプリント処理を経て基材10の第1面11上に形成される。具体的には、まず、樹脂製凹凸パターン31に対応する凹凸パターン41を有するインプリントモールド40を準備するとともに、基材10のハードマスク層20上に活性エネルギー線硬化型樹脂を塗布し、インプリント樹脂膜30を形成する(
図2(A)参照)。
【0032】
次に、インプリント樹脂膜30にインプリントモールド40の凹凸パターン41を押し当てて凹凸パターン41内に活性エネルギー線硬化型樹脂を充填させ、その状態でインプリント樹脂膜30を硬化させる(
図2(B)参照)。インプリント樹脂膜30を硬化させる方法としては、インプリント樹脂膜30を構成する樹脂材料の硬化タイプに応じた方法を採用すればよく、例えば、当該樹脂材料が紫外線硬化型樹脂であれば、インプリントモールド40を介してインプリント樹脂膜30に紫外線を照射する方法を採用することができる。
【0033】
硬化したインプリント樹脂膜30からインプリントモールド40を引き離す(
図2(C)参照)。このようにして、複数の凸部31a及び凹部31bと、凹部31bの底部に位置する残膜部31cとを有する、樹脂製凹凸パターン31をインプリント法により形成することができる。
【0034】
樹脂製凹凸パターン31の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、ラインアンドスペース状、ホール状、ピラー状等、用途に応じた形状が挙げられる。樹脂製凹凸パターン31の寸法は、用途に応じた寸法であればよいが、5nm以上30nm未満(0X〜2Xnm)、特に10nm以上20nm未満(1Xnm)であると、本実施形態に係るパターン形成方法の効果が顕著に現われるため好ましい。樹脂製凹凸パターン31のアスペクト比は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5〜10程度であるのが好ましく、より好ましくは0.5〜2.5程度である。本実施形態においては、エッチングマスクとして利用され得る凹凸パターン33のエッチング耐性が向上しているため、比較的アスペクト比が小さくても(例えば、0.5〜2.0程度)、エッチング処理中に凹凸パターン33が消失することなく、十分にエッチングマスクとしての機能が果たされ得る。
【0035】
<残膜部除去工程>
インプリント工程(
図1のS01,
図2(A),(B))により形成された樹脂製の凹凸パターン31の凹部31bの底部には、所定の厚さ(1〜20nm程度、好ましくは5〜10nm程度)の残膜部31cが存在する(
図2(C)参照)。この残膜部31cを有する樹脂製凹凸パターン31を後述するガス暴露工程(
図1のS03〜S06,
図3(A),(B)参照)に付すと、樹脂製凹凸パターン31が変形してしまう。そこで、本実施形態においては、ガス暴露工程(
図1のS03〜S06,
図3(A),(B)参照)を実施するよりも前に、残膜部31cを除去する(
図2(D)参照)。これにより、基材10上に、残膜部31cが除去された凹凸パターン32が形成される。
【0036】
残膜部31cを除去する方法としては、例えば、酸素プラズマによるアッシング処理、紫外光によるUVオゾン処理、真空紫外光によるVUV処理等が挙げられる。
【0037】
<ガス暴露工程>
次に、凹凸パターン32を有する基材10を所定のガスに曝す(
図1のS03〜S06)。具体的には、まず、ルイス酸性を示す無機化合物を含有し、キャリアガスとして窒素(N
2)等の不活性ガスを含有する第1ガスに凹凸パターン32を所定の条件で曝す(第1ガス暴露工程,
図1のS03)。凹凸パターン32を第1ガスに曝すことで、凹凸パターン32内部において、凹凸パターン32を構成する樹脂材料の化学構造中の反応性官能基と無機化合物とを化学反応させることができる。なお、第1ガス暴露工程(
図1のS03)における「所定の条件」は、凹凸パターン32の寸法、凹凸パターン32を構成する樹脂材料の種類、第1ガスに含有される無機化合物の種類、エッチング耐性が向上した凹凸パターン33をマスクとしてエッチングするハードマスク層20や基材10を構成する材料の種類等、様々な条件を考慮して条件出しを行い、適宜設定され得る。
【0038】
第1ガスに含有される無機化合物としては、トリメチルアルミニウム(Al(CH
3)
3,TMA)、メチルトリクロロシラン、トリス(ジメチルアミノ)アルミニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)チタン(IV)、チタン(IV)イソプロポキシド、テトラクロロチタン(IV)、四塩化ケイ素、トリス(tert−ペントキシ)シラノール、ビス(エチルメチルアミノ)シラン等を例示することができる。第1ガスに含有される無機化合物がトリメチルアルミニウム(TMA)であって、反応性官能基がカルボニル基である場合、下記反応式(1)に示すようにトリメチルアルミニウム(TMA)とカルボニル基とが反応する。
【0040】
ガス暴露工程(
図1のS03〜S06)は、例えば、チャンバ51と、ガス投入口52及びガス排気口53を有し、被処理物(本実施形態においては凹凸パターン32が形成されている基材10)を載置可能なステージ54と、ステージ54上に載置された被処理物を加熱可能なヒータとを備える逐次気相化学反応装置50(
図4参照)等を用いて行われ得る。なお、ガス暴露工程(
図1のS03〜06)は、ALD(atomic layer deposition)装置を用いて行われてもよい。
【0041】
凹凸パターン32を第1ガスに曝す時間(第1ガス暴露時間)は、1秒以上、好ましくは30〜10000秒である。第1ガス暴露時間が1秒未満であると、第1ガスに含有される無機化合物が凹凸パターン32の最表面に位置する反応性官能基と結合して凹凸パターン32の最表面に化学吸着し、後述の第2ガスに含まれる酸化剤の作用により凹凸パターン32の表面に無機酸化物の薄膜(いわゆるALD膜)が形成されてしまう。凹凸パターン32の表面に酸化物の薄膜が形成されると、無機化合物が凹凸パターン32内部で反応し難くなるため、後述する第2ガス暴露工程(
図1のS05)を含むガス暴露工程(
図1のS03〜S06)を複数回繰り返す間に、無機酸化物の薄膜が多層に形成されて、凹凸パターン32の寸法が変動してしまう。一方で、第1ガス暴露時間が1秒以上であれば、上記無機化合物が凹凸パターン32内部の反応性官能基とも反応・結合するため、凹凸パターン32の寸法を実質的に変動させることなく、エッチング耐性を向上させることができる。
【0042】
第1ガス暴露工程(
図1のS03)において、凹凸パターン32を構成する樹脂材料の融点以下、好ましくはガラス転移温度未満の温度条件下で加熱しながら、凹凸パターン32を第1ガスに曝すのが好ましい。凹凸パターン32を加熱しながら第1ガスに曝すことで、凹凸パターン32内部において反応性官能基と第1ガスに含まれる無機化合物との反応を促進することができるが、本実施形態においては、第1ガス暴露時間が比較的長時間であるため、凹凸パターン32を構成する樹脂材料のガラス転移温度以上の温度条件下にて凹凸パターン32を第1ガスに曝してしまうと、樹脂製の凹凸パターン32が変形してしまうおそれがある。
【0043】
第1ガス暴露工程(
図1のS03)におけるチャンバ51内の処理圧力条件は、133.3〜1333.2Pa(1.0〜10.0Torr)程度に設定されるのが好ましく、400.0〜933.3Pa(3.0〜7.0Torr)程度に設定されるのがより好ましい。処理圧力条件が133.3Pa(1Torr)未満であると、第1ガスに含有される無機化合物が凹凸パターン32の最表面に位置する反応性官能基と結合して凹凸パターン32の最表面に化学吸着し、後述の第2ガスに含まれる酸化剤の作用により凹凸パターン32の表面に無機酸化物の薄膜(いわゆるALD膜)が形成されてしまうおそれがある。
【0044】
チャンバ51内に供給される第1ガスの流量は、特に限定されるものではなく、例えば、8.45×10
-4〜5.07×10
-2Pa・m
3/sec(5.0〜300.0sccm)程度である。
【0045】
次に、チャンバ51内に窒素(N
2)等の不活性ガスを供給し、余剰の第1ガスをパージ(排気)する(
図1のS04)。反応性官能基との反応に寄与しなかった無機化合物を含む第1ガスをチャンバ51内からパージ(排気)することで、後述する第2ガス暴露工程(
図1のS05)による効果が良好に奏される。すなわち、凹凸パターン32内部の反応性官能基に結合した無機化合物部位に含まれる残余の反応活性基を効率的に加水分解することができる。かかる第1ガスパージ工程(
図1のS04)は、例えば10〜10000秒程度実施され得る。
【0046】
続いて、凹凸パターン32を、酸化剤を含有する第2ガスに所定の条件で曝す(第2ガス暴露工程,
図1のS05)。第1ガスに曝された凹凸パターン32を第2ガスに曝すことで、凹凸パターン32を構成する樹脂材料の反応性官能基に結合した無機化合物部位に含まれる残余の反応活性基が加水分解されて水酸基に置換される。その後に脱水縮合反応が起こることで、凹凸パターン32のエッチング耐性を向上させることができる。なお、第2ガス暴露工程(
図1のS05)における「所定の条件」は、凹凸パターン32の寸法、凹凸パターン32を構成する樹脂材料の種類、第2ガスに含有される酸化剤の種類、エッチング耐性が向上した凹凸パターン33をマスクとしてエッチングするハードマスク層20や基材10を構成する材料の種類等、様々な条件を考慮して条件出しを行い、適宜設定され得る。
【0047】
第2ガスに含有される酸化剤としては、反応性官能基と結合している無機化合物部位に含まれる残余の反応活性基を水酸基で置換可能なものであればよく、例えば、水(H
2O)、酸素(O
2)、オゾン、過酸化水素等が挙げられる。
【0048】
第1ガスに含有される無機化合物がトリメチルアルミニウムであり、反応性官能基がカルボニル基である場合、下記反応式(2)に示すように、カルボニル基に結合したジメチルアルミニウム部位に含まれる残余の反応活性基(2つのメチル基)が酸化剤としての水により加水分解されて水酸基に置換される。その後、下記反応式(3)に示すように、ジヒドロキシアルミニウム部位の脱水縮合反応が起こる。
【0051】
凹凸パターン32を第2ガスに曝す時間(第2ガス暴露時間)は、好ましくは1〜3600秒、より好ましくは30〜1000秒である。第2ガス暴露時間が1秒未満であると、凹凸パターン32内部の反応性官能基に結合した無機化合物部位に含まれる残余の反応活性基の加水分解反応が十分に行われないおそれがある。
【0052】
第2ガス暴露工程(
図1のS05)において、第1ガス暴露工程(
図1のS03)と同様に、凹凸パターン32を構成する樹脂材料の融点以下、好ましくはガラス転移温度未満の温度条件下で、凹凸パターン32を第1ガスに曝すのが好ましい。これにより、樹脂製の凹凸パターン32が軟化し、変形するのを防止しつつ、反応性官能基に結合した無機化合物部位に含まれる残余の反応活性基の加水分解反応を促進することができる。
【0053】
第2ガス暴露工程(
図1のS05)におけるチャンバ51内の処理圧力条件は、133.3〜1333.2Pa(1.0〜10.0Torr)程度に設定されるのが好ましく、400.0〜933.3Pa(3.0〜7.0Torr)程度に設定されるのがより好ましい。
【0054】
次に、チャンバ51内に窒素(N
2)等の不活性ガスを供給し、余剰の第2ガスをパージ(排気)する(
図1のS06)。かかる第2ガスパージ工程(
図1のS06)は、例えば、30〜10000秒程度実施され得る。
【0055】
この一連のガス暴露工程(
図1のS03〜S06)を1サイクルとし、好ましくは複数サイクル繰り返す。より好ましくは、上記ガス暴露工程(
図1のS03〜S06)を3〜5サイクル繰り返す。上記ガス暴露工程(
図1のS03〜S06)を複数サイクル繰り返すことで、無機化合物を凹凸パターン32内部で効率よく化学反応させることができる。その結果、凹凸パターン32の寸法を変動させることなく、エッチング耐性を効果的に向上させることができる。一方で、上記ガス暴露工程(
図1のS03〜S06)の繰り返し回数が多くなりすぎると(例えば、5サイクル超)、過剰な成分(無機酸化物)が凹凸パターン32の表面に析出し、凹凸パターン32の寸法を増大させてしまうおそれがある。
【0056】
続いて、上述したガス暴露工程(
図1のS03〜S06)に付された凹凸パターン33をマスクとして用いて、ハードマスク層20をエッチングし、ハードマスクパターン21を形成する(
図3(C)参照)。本実施形態においては、凹凸パターン33のエッチング耐性が向上していることで、ハードマスク層20のエッチング処理中に凹凸パターン33が消失してしまうのを防止することができる。したがって、寸法精度の極めて高いハードマスクパターン21が形成される。
【0057】
このようにして形成されたハードマスクパターン21をマスクとして用いて、基材10の第1面11側をエッチングし、凹凸構造1aを形成し(
図3(D)参照)、最後にハードマスクパターン21を除去することで、凹凸構造体1が製造される(
図3(E)参照)。本実施形態において製造される凹凸構造体1としては、例えば、ナノインプリントモールド、凹凸構造1aとしての配線パターンを有する半導体チップ等が挙げられる。
【0058】
上述したように、本実施形態においては、ハードマスクパターン21をエッチングにて形成するためにマスクとして用いられる凹凸パターン33が、極めてエッチング耐性に優れるものであることで、ハードマスクパターン21が高い精度で形成される。そのため、高精度なハードマスクパターン21をエッチングマスクとして用いて形成される凹凸構造1aもまた、高い精度で形成される。しかも、凹凸パターン33のエッチング耐性が向上していることで、ハードマスク層20(ハードマスクパターン21)の膜厚を厚くすることができる。そのため、アスペクト比の大きい凹凸構造1aを基材10の第1面11側に高い精度で形成することができる。以上のように、本実施形態によれば、高精度の凹凸構造1aを有する凹凸構造体1を製造することができる。
【0059】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0060】
上記実施形態においては、第1面11にハードマスク層20が形成されている基材10における当該ハードマスク層20上に凹凸パターン32を形成する態様を例に挙げて説明したが(
図2(A)〜(D)参照)、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、ハードマスク層20を有しない基材10の第1面11上に凹凸パターン32を形成してもよい。一般に、凹凸パターン32を構成する樹脂材料としては、基材10を構成する材料のエッチングレートとの差の小さいものが多く、エッチング耐性を向上させていない凹凸パターンをマスクとして基材10をエッチングすると、基材10のエッチング処理中に凹凸パターンが消失してしまう問題や、凹凸パターンが完全に消失しなくても凹凸パターンの肩部がエッチングされて基材10の第1面11に形成される凹凸構造の寸法精度が低下してしまう問題が発生する。しかしながら、上記実施形態において形成される凹凸パターン33は、極めて優れたエッチング耐性を有するため、寸法精度の良好な凹凸構造1aを基材10の第1面11側に形成することができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら制限されるものではない。
【0062】
〔実施例1〕
反応性官能基としてのカルボニル基を有する電子線レジスト(ZEP520A,日本ゼオン社製)をシリコンウェハの一方面(第1面)上にスピンコートで塗布し、膜厚70nmのレジスト膜を形成した。ALD装置(ウルトラテック社製,製品名:SavannahS200)のチャンバに当該シリコンウェハをセットしてガス暴露工程(
図1、S03〜S06)を実施した。
【0063】
ガス暴露工程においては、まず、下記条件にて、トリメチルアルミニウム(TMA)を含有する第1ガスをチャンバ内に供給した(
図1,S03)。
キャリアガス:窒素(N
2)
処理圧力条件:466.6Pa(3.5Torr)
処理時間:1200秒
ガス流量:3.38×10
-3Pa・m
3/sec(20sccm)
チャンバ内温度:85℃
【0064】
次に、窒素(N
2)を30秒間チャンバ内に供給し、チャンバ内に残存する第1ガスをパージした後(
図1、S04)、下記条件にて、第2ガス(H
2O)をチャンバ内に供給した(
図1,S05)。
処理圧力条件:933.2Pa(7.0Torr)
処理時間:500秒
ガス流量:3.38×10
-3Pa・m
3/sec(20sccm)
チャンバ内温度:85℃
【0065】
最後に、窒素(N
2)を30秒間チャンバ内に供給し、チャンバ内に残存する第2ガスをパージした(
図1,S06)。
【0066】
一連のガス暴露工程を3サイクル実施した後、段差計(Bruker社製,製品名:DimensionX3D)を用いてシリコンウェハの第1面上のレジスト膜厚(エッチング前)を測定した。
【0067】
ガス暴露工程後のシリコンウェハの第1面側に、塩素系ガス(Cl
2+O
2)によるドライエッチング処理(エッチング時間:60秒)を施し、エッチング処理後のシリコンウェハの第1面上のレジスト膜厚(エッチング後)を、段差計(Bruker社製,製品名:DimensionX3D)を用いて測定した。レジスト膜厚測定結果を
図5に示す。
【0068】
〔実施例2〕
一連のガス暴露工程を5サイクル実施した以外は、実施例1と同様にしてシリコンウェハの第1面上のレジスト膜厚(エッチング前及びエッチング後)を測定した。レジスト膜厚測定結果を
図5にあわせて示す。
【0069】
〔実施例3〕
一連のガス暴露工程を10サイクル実施した以外は、実施例1と同様にしてシリコンウェハの第1面上のレジスト膜厚(エッチング前及びエッチング後)を測定した。レジスト膜厚測定結果を
図5にあわせて示す。
【0070】
〔比較例1〕
一連のガス暴露工程を1サイクル実施した以外は、実施例1と同様にしてシリコンウェハの第1面上のレジスト膜厚(エッチング前及びエッチング後)を測定した。レジスト膜厚測定結果を
図5にあわせて示す。
【0071】
〔実施例4〕
第1ガスを供給する処理時間を100秒とした以外は、実施例2と同様にしてシリコンウェハの第1面上のレジスト膜厚(エッチング前及びエッチング後)を測定した。レジスト膜厚測定結果を
図5にあわせて示す。
【0072】
〔実施例5〕
第1ガスを供給する処理時間を100秒とした以外は、実施例3と同様にしてシリコンウェハの第1面上のレジスト膜厚(エッチング前及びエッチング後)を測定した。レジスト膜厚測定結果を
図5にあわせて示す。
【0073】
〔比較例2〕
第1ガスを供給する処理時間を100秒とした以外は、比較例1と同様にしてシリコンウェハの第1面上のレジスト膜厚(エッチング前及びエッチング後)を測定した。レジスト膜厚測定結果を
図5にあわせて示す。
【0074】
〔比較例3〕
第1ガスを供給する処理時間を100秒とした以外は、実施例1と同様にしてシリコンウェハの第1面上のレジスト膜厚(エッチング前及びエッチング後)を測定した。レジスト膜厚測定結果を
図5にあわせて示す。
【0075】
実施例1〜5及び比較例1〜3における塩素系ガス(Cl
2+O
2)によるドライエッチング処理は、ハードマスク層としての金属クロム膜(膜厚:1〜100nm)をエッチングしてハードマスクパターンを形成する一般的な処理方法及び処理条件である。
図5に示すように、実施例1〜5においては、ドライエッチング処理後にレジストが十分に残存していることが窺える。この結果から、適切な条件を設定した上でガス暴露工程(
図1,S03〜S06)を行うことで、レジストパターンのエッチング耐性を向上させ得るということができる。
【0076】
〔試験例1〕
一連のガス暴露工程後のシリコンウェハ(実施例2)の第1面側からの深さ方向における組成を、飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS装置,ionTOF社製,製品名:TOF−SIMS5)を用いて分析した。結果を
図6に示す。
【0077】
図6に示すように、シリコンウェハの第1面上に形成されたレジスト膜内に、アルミニウム酸化物が含まれていることが確認された。このことから、第1ガス暴露工程によりTMAがレジスト膜内部で化学反応していることが確認された。
【0078】
この結果から、反応性官能基を有する樹脂材料により構成される凹凸パターン32を、無機化合物を含有する第1ガスに曝し、無機化合物を凹凸パターン32内部で化学反応させた後、酸化剤を含有する第2ガスに凹凸パターン32を曝すことで、凹凸パターン32のエッチング耐性を向上させ得ると推察される。
【0079】
〔実施例6〕
反応性官能基としてのアクリロイル基を有する、下記組成の紫外線硬化型樹脂組成物を石英ガラス基板10(152mm×152mm)の第1面11側のハードマスク層20上にインクジェットで塗布した。凹凸パターン41(ラインアンドスペース状、寸法:60nm)を有するインプリントモールド40を準備し、当該インプリントモールド40を用いて凹凸パターン41をハードマスク層20上の紫外線硬化型樹脂組成物の液滴に接触させることで、当該紫外線硬化型樹脂組成物をハードマスク層20上に展開させ、インプリント樹脂膜30を形成した。その状態で紫外線を照射してインプリント樹脂膜30を硬化させ、インプリントモールド40を引き離すことによりハードマスク層20上に樹脂製凹凸パターン31を形成した。
【0080】
<紫外線硬化型樹脂組成>
・イソボルニルアクリレート 38質量%
・エチレングリコールジアクリレート 20質量%
・ブチルアクリレート 38質量%
・2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン 2質量%
・2−ペルフルオロデシルエチルアクリレート 1質量%
・メチルペルフルオロオクタノレート 1質量%
【0081】
樹脂製凹凸パターン31の残膜部31cを、酸素プラズマアッシング処理により除去した後、ALD装置(ウルトラテック社製,製品名:SavannahS200)のチャンバに石英ガラス基板10をセットしてガス暴露工程(
図1、S03〜S06)を実施した。
【0082】
ガス暴露工程においては、まず、下記条件にて、トリメチルアルミニウム(TMA)を含有する第1ガスをチャンバ内に供給した(
図1,S03)。
キャリアガス:窒素(N
2)
処理圧力条件:466.6Pa(3.5Torr)
処理時間:1200秒
ガス流量:3.38×10
-3Pa・m
3/sec(20sccm)
チャンバ内温度:85℃
【0083】
次に、窒素(N
2)を30秒間チャンバ内に供給し、チャンバ内に残存する第1ガスをパージした後(
図1、S04)、下記条件にて、第2ガス(H
2O)をチャンバ内に供給した(
図1,S05)。
処理圧力条件:933.2Pa(7.0Torr)
処理時間:500秒
ガス流量:3.38×10
-3Pa・m
3/sec(20sccm)
チャンバ内温度:85℃
【0084】
最後に、窒素(N
2)を30秒間チャンバ内に供給し、チャンバ内に残存する第2ガスをパージした(
図1,S06)。一連のガス暴露工程を5サイクル実施した後、電子顕微鏡(LWM9000,Leica社製)を用いて凹凸パターン32を観察した。当該凹凸パターン32のSEM画像を
図7に示す。
【0085】
〔比較例4〕
樹脂製凹凸パターン31の残膜部31cを除去することなく、合成石英基板をガス暴露工程に付した以外は、実施例1と同様にしてガス暴露工程後の凹凸パターンを観察した。当該凹凸パターンのSEM画像を
図8に示す。
【0086】
図7及び
図8に示すように、実施例6の凹凸パターン32は変形を生じさせていないが、比較例4の凹凸パターンにおいては、紫外線硬化型樹脂からなる凹凸パターンが、部分的に軟化するようにして変形していることが確認された。これらの結果から、ガス暴露工程を実施する前に残膜部31cを除去することで、凹凸パターン32の変形を防止可能であることが明らかとなった。
【0087】
〔試験例2〕
比較例4の凹凸パターンが軟化するようにして変形したことから、ガス暴露工程(
図1,S03〜S06)における加熱が凹凸パターンの変形の要因であるか否かを確かめるために、以下のようにして耐熱試験を行った。
【0088】
実施例6と同様にして残膜部31cを除去する前の樹脂製凹凸パターン31を作成し、当該樹脂製凹凸パターン31に、90℃で1時間の加熱処理(ベーク処理)を施した。そして、電子顕微鏡(SU−8000,日立製作所社製)を用いて加熱処理前後の樹脂製凹凸パターン31を観察した。加熱処理前の樹脂製凹凸パターン31のSEM画像を
図9に、加熱処理後の樹脂製凹凸パターン31のSEM画像を
図10に示す。
【0089】
図9及び
図10に示すSEM画像から明らかなように、樹脂製凹凸パターン31に加熱処理を施しても、樹脂製凹凸パターン31の変形は生じないことが確認された。この結果から、一連のガス暴露工程(
図1,S03〜S06)により樹脂製凹凸パターン31の内部で当該凹凸パターン31を構成する紫外線硬化型樹脂に、第1ガスに含まれる無機化合物が化学反応することで、当該樹脂製凹凸パターン31に歪みが生じ、特に残膜部31cを介して樹脂製凹凸パターン31(凸部31a)が繋がっているために大きな歪みが生じると考えられる。それにより当該樹脂製凹凸パターン31(凸部31a)が変形するものと推察される。一方、実施例6のように、樹脂製凹凸パターン31の残膜部31cを除去した後にガス暴露工程(
図1,S03〜S06)を実施することで、凹凸パターン32の各凸部が石英ガラス基板10上で独立することになる。そのため、凹凸パターン32の歪みによる変形が抑制されるものと考えられる。
【0090】
よって、実施例6のように、ガス暴露工程を実施する前に残膜部31cを除去することで、凹凸パターン32の変形を防止することができ、エッチング耐性を向上させてなる凹凸パターン32を形成可能であることが確認された。