特許第6940945号(P6940945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6940945
(24)【登録日】2021年9月7日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】制振構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20210916BHJP
   F16F 7/09 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   E04H9/02 311
   F16F7/09
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-250859(P2016-250859)
(22)【出願日】2016年12月26日
(65)【公開番号】特開2018-104952(P2018-104952A)
(43)【公開日】2018年7月5日
【審査請求日】2019年10月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】西塔 純人
【審査官】 兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−204458(JP,A)
【文献】 特開2010−031467(JP,A)
【文献】 特開2015−140553(JP,A)
【文献】 特開2007−046445(JP,A)
【文献】 米国特許第05934028(US,A)
【文献】 特開2006−336208(JP,A)
【文献】 特開2002−047829(JP,A)
【文献】 特開2001−082001(JP,A)
【文献】 特開2004−239411(JP,A)
【文献】 特開2004−068521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
F16F 7/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱部と、上記柱部の下端側に接合された下側梁部と、上記柱部の上端側に接合された上側梁部と、上記柱部の下端側および上記柱部の上端側にそれぞれ接続された斜材と、上記斜材同士の接合部と上記下側梁部または上記上側梁部の間に設けられたダンパーと、を備えており、
上記ダンパーは、上記斜材同士の接合部に対してピン接合され、且つ、上記下側梁部または上記上側梁部に対してピン接合され、上記柱部と上記上側梁部と上記下側梁部と上記斜材とが存在する面内で揺動可能に設けられることを特徴とする制振構造。
【請求項2】
請求項1に記載の制振構造において、上記ダンパーは、鉛直方向に設けられていることを特徴とする制振構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の制振構造において、柱部の設計基準間隔で柱部が設けられるとともに、隣り合う柱部間に上記ダンパーが設けられたことを特徴とする制振構造。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の制振構造において、柱部の設計基準間隔での柱部の配置を省略するとともに、柱部の配置が省略された箇所に上記ダンパーが設けられたことを特徴とする制振構造。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の制振構造において、柱部の設計基準間隔での柱部の配置を省略するとともに、柱部の配置が省略された箇所よりも上記斜材が接合される柱部に近い位置に上記ダンパーが設けられたことを特徴とする制振構造。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の制振構造において、上記ダンパーが摩擦ダンパーであることを特徴とする制振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の揺れを抑制する制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の柱部と梁部とで形成される方形状の鉛直構面内に、斜材(ブレース)をクロス状に取り付け、建物の揺れを抑制することが行われている。さらに、上記斜材とダンパーを組み合わせた制振構造も開示されている。例えば、図6に示すように、柱部101と梁部102とで形成される方形状空間内に斜材103を略クロス状に設け、斜材交差箇所に、水平方向に変位するダンパー104を設けた構造が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、上側梁と、下側梁と、上記上側梁及び上記下側梁に接合した柱とで画成された柱梁骨組の鉛直構面内にダンパーを配設し、上記鉛直構面の変形に伴う上記上側梁と上記下側梁との間の水平方向の相対変位を上記ダンパーに伝達するようにした制振装置において、上端部が上記上側梁の側に固定接合され、下端部にピン接合部を有する連結構造体と、一端部が上記下側梁の側にピン接合され、他端部が上記ダンパーの一端にピン接合され、中間部が上記連結構造体の上記ピン接合部にピン接合されたてこ部材とを備えた構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−336208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図6に示した従来の制振構造では、梁の水平方向の変位量と上記ダンパーの変位量が1対1の関係となる。そして、このような構造は、上側梁と下側梁との間の水平方向の相対変位(層間変形)において、大きな変位を生じた場合には、上記ダンパーも同じだけ変位して損傷するという問題点ある。
【0006】
また、特許文献1に開示された制振構造は、梁の水平方向の変位量と上記ダンパーの変位量との関係を1対1とするものではないが、上記層間変形を増幅してダンパーに伝達する機構となっており、大きな変位を生じた場合における上記ダンパーの損傷を防止することには向かないものとなっている。
【0007】
この発明は、上記の事情に鑑み、ダンパーを備える制振構造において、層間変形において大きな変位を生じた場合でも、上記ダンパーに損傷が生じるのを防止できる制振構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の制振構造は、上記の課題を解決するために、柱部と、上記柱部の下端側に接合された下側梁部と、上記柱部の上端側に接合された上側梁部と、上記柱部の下端側および上記柱部の上端側にそれぞれ接続された斜材と、上記斜材同士の接合部と上記下側梁部または上記上側梁部の間に設けられたダンパーと、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記の構成であれば、上記ダンパーが上記斜材同士の接合部と上記下側梁部または上記上側梁部の間に設けられたことで、上記梁部の水平変位量に対して、相対的に上記ダンパーの変位量を小さくできる。これにより、層間変形において大きな変位を生じた場合でも、上記ダンパーに損傷が生じるのを防止することができる。
【0010】
上記ダンパーは、上記柱部と上記上側梁部と上記下側梁部と上記斜材とが存在する面内で可動に設けられていてもよい。また、上記ダンパーは、鉛直方向に設けられていてもよい。
【0011】
また、柱部の設計基準間隔で柱部が設けられるとともに、隣り合う柱部間に上記ダンパーが設けられてもよい。
【0012】
或いは、柱部の設計基準間隔での柱部の配置を省略するとともに、柱部の配置が省略された箇所に上記ダンパーが設けられてもよい。
【0013】
或いは、柱部の設計基準間隔での柱部の配置を省略するとともに、柱部の配置が省略された箇所よりも上記斜材が接合される柱部に近い位置に上記ダンパーが設けられてもよい。
【0014】
また、上記ダンパーは摩擦ダンパーであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明であれば、ダンパーを備える制振構造において、層間変形において大きな変位を生じた場合でも、上記ダンパーに損傷が生じるのを防止できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る制振構造を示した概略構造図である。
図2図1の制振構造で層間変形が生じたときの梁の変位量とダンパーの変位量との関係を示した説明図である。
図3図2で示した変位量関係と同様の関係を狭い幅の耐力壁において示した説明図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る制振構造を示した概略構造図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る制振構造を示した概略構造図である。
図6】従来の制振構造を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示しているように、この実施形態の建物の制振構造1は、鉄骨構造の建物における柱部2と、上記柱部2の下端側に接合された下側梁部(例えば、基礎地中梁)3と、上記柱部2の上端側に接合された上側梁部4と、上記柱部2の下端側および上記柱部2の上端側にそれぞれ接続された2本の斜材5,5と、上記2本の斜材5,5同士の接合部と上記下側梁部3との間に縦に設けられたダンパー6と、を備える。この実施形態では、上記2本の斜材5,5の長さは同じとされ、これら斜材5,5同士の接合部は、上記柱部2の高さの略中間に位置している。
【0018】
上記ダンパー6は、本体部6aと、この本体部6aに対して可動に設けられた可動部6bとを備えており、摩擦力によって上記本体部6aに対する上記可動部6bの移動を制限する構造になっている。
【0019】
また、上記ダンパー6は、上記本体部6aにおける下端部が、上記下側梁部3にアンカーボルト等で固定された支持部6cに、水平配置のピンによって、ピン接合されるとともに、上記可動部6bの上端部が、上記斜材5,5同士の接合部に固定された支持部6dに、水平配置のピンによって、ピン接合されており、上記柱部2と上記梁部3,4と上記斜材5,5とが存在する面内で揺動可能に設けられる。また、上記ダンパー6は、未揺動状態において上記可動部6bの移動方向が鉛直方向となるように設けられている。なお、上記ダンパー6の設置において、上側に本体部6aが位置し、下側に可動部6bが位置する態様とすることができる。また、構造上ピン接合となればよいものであり、上記ピンの代わりにボルト・ナット等の部材を用いて、上記ダンパー6を上記支持部6dや支持部6cに連結してもよいものである。
【0020】
図1において実線で示している柱部2および仮想線で示している柱部2は、柱部の設計基準間隔(例えば、1P或いは2P等(Pは例えば910mm))をおいて設けられる。そして、上記ダンパー6は、上記仮想線で示している柱部2から独立した状態で、上記の隣り合う柱部2間に存在する。
【0021】
図2には、上記の制振構造1において、上記下側梁部3と上記上側梁部4との間の水平方向の相対変位(層間変形)を生じた場合を示している。ここで、上記柱部2の高さをn(nは1よりも大きいとする)とし、上記柱部2から上記ダンパー6(ピンの鉛直下)までの間隔が1であるとした縦長の鉛直構面の場合(アスペクト比1:n)で、上記水平方向の変形量としてAが生じた場合、上記ダンパー6に生じる変位量はA/nとなる。すなわち、上記ダンパー6が上記斜材5,5同士の接合部と上記下側梁部3との間に設けられたことで、上記梁部3,4の相対的な水平変位量に対して、相対的に上記ダンパー6の変位量が小さくなる。これにより、層間変形において大きな変位を生じた場合でも、上記ダンパー6に損傷が生じるのを防止することができる。換言すれば、上記ダンパー6としてストローク量の小さいものを用いることが可能になる。
【0022】
図3には、上記の制振構造1において、上記柱部2からダンパー6までの間隔を図2で示した間隔よりも短くした構造(幅の狭い耐力壁)を示している。この図3から分かるように、上記柱部2からダンパー6までの間隔を短くすると、より大きな水平変位に対しても、上記ダンパー6の損傷を防止できることになる。
【0023】
図4に示す実施形態の制振構造1では、上記ダンパー6は、上記本体部6aにおける上端部が、上記上側梁部4にボルト等で固定された支持部6cにピン接合されるとともに、上記可動部6bの下端部が、上記斜材5,5同士の接合部に固定された支持部6dにピン接合されている。このような構造でも、上記ダンパー6が上記斜材5,5同士の接合部と上記上側梁部4との間に設けられたことで、上記梁部3,4の相対的な水平変位量に対して、相対的に上記ダンパー6の変位量を小さくできる。これにより、層間変形において大きな変位を生じた場合でも、上記ダンパー6に損傷が生じるのを防止することができる。なお、上記ダンパー6の設置において、下側に本体部6aが位置し、上側に可動部6bが位置する態様とすることができる。
【0024】
ここで、ブレースをクロス配置に設ける場合は、その両側に柱部が存在することが必要となるが、上記図1および図4に示した制振構造1においては、柱部2が両側に存在する必要はなく、仮想線で示した柱部2を省略することができる。すなわち、柱部の設計基準間隔上での柱部2の配置を省略するとともに、柱部2の配置が省略された箇所よりも上記斜材5,5が設けられる柱部2に近い位置に上記ダンパー6が設けられる構造としてもよい。
【0025】
図5に示す実施形態の制振構造1では、柱部の設計基準間隔上での柱部(仮想線で示している)2の配置を省略している。そして、上記柱部2の配置が省略された箇所に上記ダンパー6を設けている。このような構造でも、上記ダンパー6が上記斜材5,5同士の接合部と上記下側梁部3との間に設けられたことで、上記梁部3,4の相対的な水平変位量に対して、相対的に上記ダンパー6の変位量を小さくできる。これにより、層間変形において大きな変位を生じた場合でも、上記ダンパー6に損傷が生じるのを防止することができる。なお、この図5に示した制振構造1においても、上記ダンパー6を上側梁部4の側に取り付けてもよいものである。
【0026】
なお、これらの実施形態では、上記ダンパー6を鉛直配置に設けたが、これに限らず、斜め配置とすることもできる。また、建物の1階に限らず、上階においてこれらの制振構造1を設けることもできる。また、上記ダンパー6として摩擦ダンパーを用いたが、これに限らず、オイルダンパー、粘弾性体を用いたダンパー等を用いることができる。
【0027】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 :制振構造
2 :柱部
3 :下側梁部
4 :上側梁部
5 :斜材
6 :ダンパー
6a :本体部
6b :可動部
6c :支持部
6d :支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6