(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
プリント配線板やシリコンウエハといった基板上に形成される電子回路に電子部品を接合する方法としては、はんだ合金を用いたはんだ接合方法が挙げられる。そしてこの際、はんだ合金や基板上の金属酸化物の除去、並びにはんだ合金の表面張力の低下によるぬれ性の向上を目的として、はんだ合金と共にフラックス組成物を用いることが一般的である。
【0003】
ここで、はんだ合金には鉛を使用するのが一般的であった。しかし環境負荷の観点からRoHS指令等によって鉛の使用が制限されたため、近年では鉛を含有しない、所謂鉛フリーはんだ合金を使用することが一般的になりつつある。そしてこのような鉛フリーはんだ合金としては一般的にSn−3Ag−0.5Cuはんだ合金が多く使用されている。
【0004】
Sn−3Ag−0.5Cuはんだ合金は、鉛を含有していないことから鉛含有はんだ合金よりも溶融温度(固相線温度・液相線温度)が高く、そのため鉛含有はんだ合金よりもぬれ性が悪い。このぬれ性を向上するためにフラックス組成物に配合する活性剤を増量したり、高耐熱性の活性剤を使用する方法も存在するが、使用する活性剤の増量は、特にフラックス組成物とはんだ合金の粉末を使用するソルダペーストにおいてステンシルライフの短縮及び保管期間の低下を招く虞がある。
【0005】
またフラックス組成物は、基板上への電子部品の実装時にはんだ接合部やその近傍、例えば基板上や電子部品の端子・リードフレーム等に付着し、フラックス残さとして実装後も基板上に残存する。このフラックス残さについては、はんだ付け後に基板を洗浄してこれを取り除く洗浄方式と、洗浄しないまま残す無洗浄方式とが存在する。この無洗浄方式は洗浄工程を省略できる点では好ましい。
【0006】
しかし残存したフラックス残さは基板の腐食、マイグレーション等の原因となり易い。特にフラックス組成物にハロゲン系活性剤を配合する場合、フラックス残さにハロゲンなどの陰イオン成分が残存し易いため、このようなフラックス残さを有する基板を組み込んだ電子機器は、その長期間の使用により導体金属におけるイオンマイグレーションの発生を加速し、当該基板の配線間の絶縁不良を引き起こす危険性が高くなる。
【0007】
フラックス残さの絶縁特性を改善し、イオンマイグレーションの発生を抑制するため、例えばハロゲン捕捉剤を配合してフラックス中に浮遊する余剰なハロゲンイオンを捕捉させることで電子部品のはんだ付け後に基板上に存在するハロゲンイオンをなくすことのできるフラックス及びクリーム半田(特許文献1参照)や、活性剤に含まれるハロゲンや銅等のイオンを捕捉する無機イオン交換体を配合することで、ハロゲン等のイオンに起因するイオンマイグレーションを防止するフラックス及びクリームはんだ(特許文献2参照)が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のフラックス組成物及びソルダペーストの一実施形態を詳述する。なお、本発明が以下の実施形態に限定されるものではないことはもとよりである。
【0020】
(1)フラックス組成物
本実施形態に係るフラックス組成物は、(A)ベース樹脂と、(B)活性剤と、(C)チキソ剤と、(D)溶剤と、(E)インジウム錯体とを含む。
【0021】
(A)ベース樹脂
前記ベース樹脂(A)としては、例えば(A−1)ロジン系樹脂を用いることが好ましい。
【0022】
前記ロジン系樹脂(A−1)としては、例えばトール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン;ロジンを重合化、水添化、不均一化、アクリル化、マレイン化、エステル化若しくはフェノール付加反応等を行ったロジン誘導体;これらロジンまたはロジン誘導体と不飽和カルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸等)とをディールス・アルダー反応させて得られる変性ロジン樹脂等が挙げられる。これらの中でも特に変性ロジン樹脂が好ましく用いられ、アクリル酸を反応させて水素添加した水添アクリル酸変性ロジン系樹脂が特に好ましく用いられる。なおこれらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0023】
なお前記ロジン系樹脂(A−1)の酸価は140mgKOH/gから350mgKOH/gであることが好ましく、その重量平均分子量は200Mwから1,000Mwであることが好ましい。
【0024】
また前記ベース樹脂(A)としては、前記ロジン系樹脂(A−1)以外に合成樹脂(A−2)を用いることもできる。
当該合成樹脂(A−2)としては、例えばアクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、テルペン樹脂、ポリアルキレンカーボネート及びカルボキシル基を有するロジン系樹脂とダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合してなる誘導体化合物が挙げられる。なおこれらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。これらの中でも特にアクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0025】
前記アクリル樹脂は、例えば炭素数1から20のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを単重合、または当該アクリレートを主成分とするモノマーを共重合することにより得られる。このようなアクリル樹脂の中でも、特にメタクリル酸と炭素鎖が直鎖状である炭素数2から20の飽和アルキル基を2つ有するモノマーを含むモノマー類とを重合して得られるアクリル樹脂が好ましく用いられる。なお当該アクリル樹脂は、1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0026】
前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂とダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合してなる誘導体化合物(以下、「ロジン誘導体化合物」という。)について、先ずカルボキシル基を有するロジン系樹脂としては、例えばトール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジン等のロジン;水添ロジン、重合ロジン、不均一化ロジン、アクリル酸変性ロジン、マレイン酸変性ロジン等のロジン誘導体等が挙げられ、これら以外にもカルボキシル基を有するロジンであれば使用することができる。またこれらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
次に前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物としては、例えばダイマージオール、ポリエステルポリオール、ポリエステルダイマージオールのようなダイマー酸から誘導される化合物であって、その末端にアルコール基を有するもの等が挙げられ、例えばPRIPOL2033、PRIPLAST3197、PRIPLAST1838(以上、クローダジャパン(株)製)等を用いることができる。
前記ロジン誘導体化合物は、前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂と前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合することにより得られる。この脱水縮合の方法としては一般的に用いられる方法を使用することができる。また、前記カルボキシル基を有するロジン系樹脂と前記ダイマー酸誘導体柔軟性アルコール化合物とを脱水縮合する際の好ましい重量比率は、それぞれ25:75から75:25である。
【0027】
前記合成樹脂(A−2)の酸価は0mgKOH/gから150mgKOH/gであることが好ましく、その重量平均分子量は1,000Mwから30,000Mwであることが好ましい。
【0028】
また前記ベース樹脂(A)の配合量は、フラックス組成物全量に対して10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【0029】
前記ロジン系樹脂(A−1)を単独で用いる場合、その配合量はフラックス組成物全量に対して20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることが更に好ましい。ロジン系樹脂(A−1)の配合量をこの範囲とすることで、フラックス残さが良好な絶縁特性を発揮し得ることができる。
【0030】
また前記合成樹脂(A−2)を単独で用いる場合、その配合量はフラックス組成物全量に対して10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【0031】
更に前記ロジン系樹脂(A−1)と前記合成樹脂(A−2)とを併用する場合、その配合比率は20:80から50:50であることが好ましく、25:75から40:60であることがより好ましい。
【0032】
なお前記ベース樹脂(A)としては、前記ロジン系樹脂(A−1)単体を使用、若しくは前記ロジン系樹脂(A−1)と前記合成樹脂(A−2)を併用することが好ましく、このようなベース樹脂(A)とすることにより、フラックス残さの初期絶縁抵抗のみならず、経時的絶縁抵抗をも良好に保つことができる。
【0033】
(B)活性剤
前記活性剤(B)としては、例えばカルボン酸類、ハロゲンを含む化合物等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
【0034】
前記カルボン酸類としては、例えばモノカルボン酸、ジカルボン酸等並びにその他の有機酸が挙げられる。
前記モノカルボン酸としては、例えばプロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
また前記その他の有機酸としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸、アントラニル酸等が挙げられる。
なおこれらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
また前記活性剤(B)として好ましいカルボン酸類は、1種単独で用いる場合にはピコリン酸が好ましく、複数種を混合して用いる場合にはピコリン酸、コハク酸及びスベリン酸の混合が好ましく用いられる(但し、他のカルボン酸類を更に混合してもよい)。またこの場合であっても前記ハロゲンを含む化合物等と混合して用いてよい。
【0035】
前記ハロゲンを含む化合物としては、例えば非解離性のハロゲン化化合物(非解離型活性剤)、解離性のハロゲン化化合物(解離型活性剤)が挙げられる。
前記非解離型活性剤としては、ハロゲン原子が共有結合により結合した非塩系の有機化合物が挙げられ、例えば塩素化物、臭素化物、ヨウ素化物、フッ化物のように塩素、臭素、ヨウ素、フッ素の各単独元素の共有結合による化合物でもよく、またこの4つの元素の任意の2つまたは全部のそれぞれの共有結合を有する化合物でもよい。当該化合物は水性溶媒に対する溶解性を向上させるために、例えばハロゲン化アルコールのように水酸基等の極性基を有することが好ましい。当該ハロゲン化アルコールとしては、例えば2,3−ジブロモプロパノール、2,3−ジブロモブタンジオール、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、トリブロモネオペンチルアルコール等の臭素化アルコール;2−ブロモヘキサン酸等の臭化有機酸;1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,4−ジクロロ−2−ブタノール等の塩素化アルコール;3−フルオロカテコール等のフッ素化アルコール;その他のこれらに類する化合物が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
なお前記活性剤(B)として好ましいハロゲンを含む化合物は、1種単独で用いる場合には2−ブロモヘキサン酸が好ましく用いられる。但しこの場合であっても前記カルボン酸類等と混合して用いてよい。
【0036】
(C)チキソ剤
前記チキソ剤(C)としては、例えば水素添加ヒマシ油、脂肪酸アマイド類、飽和脂肪酸ビスアミド類、オキシ脂肪酸、ジベンジリデンソルビトール類が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記チキソ剤(C)の配合量は、フラックス組成物全量に対して2質量%以上15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
なお前記チキソ剤(C)としては、1種単独で用いる場合には、脂肪酸アマイド類が好ましく用いられる。
【0037】
(D)溶剤
前記溶剤(D)としては、例えばイソプロピルアルコール、エタノール、アセトン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルジグリコール、(2−エチルヘキシル)ジグリコール、フェニルグリコール、ブチルカルビトール、オクタンジオール、αテルピネオール、βテルピネオール、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリメリット酸トリス(2−エチルヘキシル)、セバシン酸ビスイソプロピル等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記溶剤(D)の配合量は、フラックス組成物全量に対して20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、25質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
なお前記溶剤(D)としては、1種単独で用いる場合は、ヘキシルジグリコールが好ましく用いられる。
【0038】
(E)インジウム錯体
前記インジウム錯体(E)としては、インジウムイオンに配位子となる有機化合物を結合させたものが挙げられ、アセチルアセトンインジウムやトリスステアリン酸インジウム等の市販されているものも使用できるが、配位子となる有機化合物を使用して、塩類として前記インジウム錯体(E)を生成してもよい。
有機化合物を使用して塩類として前記インジウム錯体(E)を生成する場合の生成方法としては公知の方法を使用することができる。例えばアセチルアセトンを配位子としてインジウムイオンに結合させてアセチルアセトンインジウムを生成する場合、インジウム金属を塩素化した塩化インジウムをアセチルアセトン中で加熱してインジウム錯体を合成する。そして副生する塩酸を除去するために、上記インジウム錯体を含む溶液を酢酸エチル、ジエチルエーテル、ベンゼンまたはトルエン等の有機相と水相に分液した後、有機相に溶解したアセチルアセトンインジウムを濃縮及び凍結乾燥する方法を採り得る。
【0039】
前記有機化合物としては、アセチルアセトン等のβ―ジカルボニル化合物類;エチレンジアミン、ピリジン、ポルフィリン等のアミン類;イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、エチレンジアミン二酢酸、ジアミノプロパノール四酢酸、ヘキサメチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸等のアミノカルボン酸類;ニトリロトリスメチレンホスホン酸等のホスホン酸類;ステアリン酸、パルミチン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、マルガリン酸、2−エチルヘキサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸類;オレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪族カルボン酸類;安息香酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸類が挙げられる。なお当該有機化合物は1種単独でまたは複数種を用いてもよい。
【0040】
本実施形態に係るフラックス組成物は前記インジウム錯体(E)を含むことにより、これを用いて形成されるフラックス残さにおいてインジウム錯体(E)がイオン性物質を捕捉するため、その絶縁特性の低下を抑制し得る。
またこのようなフラックス組成物は、活性剤の配合量を増量等せずともはんだ合金のぬれ性を確保し得るため、ステンシルライフ、印刷性及びはんだ接合部のボイド抑制といったソルダペーストにおける良好なリフロー特性を発揮することができる。
更には、前記インジウム錯体(E)は、金属元素としてのインジウムよりもはんだ付け時における電子部品脇に発生するはんだボールの発生を抑制し得る。
【0041】
前記インジウム錯体(E)の配合量は、フラックス組成物全量に対して0.1質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上0.7質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以上0.6質量%以下であることが更に好ましい。前記インジウム錯体(E)の配合量をこの範囲内とすることにより、上記絶縁特性低下の抑制効果とはんだ合金のぬれ性並びリフロー特性を更に向上することができる。
但し、前記インジウム錯体(E)の配合量がフラックス組成物全量に対して1質量%を超えると、形成するはんだ接合部にボイドが発生し易くなるため、好ましくない。
【0042】
本実施形態に係るフラックス組成物には、使用するはんだ合金の酸化を抑える目的で酸化防止剤を配合することができる。この酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、ポリマー型酸化防止剤等が挙げられる。その中でも特にヒンダードフェノール系酸化剤が好ましく用いられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記酸化防止剤の配合量は特に限定されないが、一般的にはフラックス組成物全量に対して0.5質量%以上5質量%程度以下であることが好ましい。
【0043】
本実施形態に係るフラックス組成物には、必要に応じて添加剤を配合することができる。前記添加剤としては、例えば消泡剤、界面活性剤、つや消し剤等が挙げられる。これらは1種単独でまたは複数種を混合して用いてもよい。
前記添加剤の配合量は、フラックス組成物全量に対して0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
(2)ソルダペースト
本実施形態のソルダペーストは、例えば前記フラックス組成物と、鉛フリーはんだ合金からなる合金粉末とを混合することにより得られる。
前記合金粉末とフラックス組成物との配合比率は、合金粉末:フラックス組成物の比率で65:35から95:5であることが好ましい。より好ましいその配合比率は85:15から93:7であり、特に好ましい配合比率は87:13から92:8である。
【0045】
前記鉛フリーはんだ合金としては、例えばSnを母材とし、Ag、Cu、Bi、In、Sb、Ni、Co、Fe、Mn、Cr、Mo、P、Ga、Ge、Zn、Cd、Tl、Se、Au、Ti、Si、Al及びMgの少なくとも1種を含む鉛フリーはんだ合金が使用できる。これらの中でも特に、Snを90質量%以上含むSn−Ag−Cu系鉛フリーはんだ合金が好ましく用いられる。
【0046】
なお前記合金粉末の平均粒子径は1μm以上40μm以下であることが好ましく、5μm以上35μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0047】
なお、本実施形態のフラックス組成物は、ソルダペーストとして以外にも、例えばフロー方法、リフロー方法、ソルダボール実装方法等種々のはんだ付け方法に用いることができる。
そして本実施形態のフラックス組成物及びソルダペーストを用いて形成されたフラックス残さは良好な絶縁特性を有するため、基板におけるイオンマイグレーションや配線間の絶縁不良を抑制すると共に、はんだ付け時においてもはんだ合金の良好なぬれ性を確保でき、更にステンシルライフ、印刷性及びはんだ接合部のボイド抑制といったソルダペーストにおける良好なリフロー特性も確保することができる。
よってこのようなフラックス残さを有する電子回路基板は、車載用電子回路基板といった高い信頼性の求められる電子回路基板にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳述する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
アクリル樹脂の合成
メタクリル酸10質量%、2−エチルヘキシルメタクリレート51質量%、ラウリルアクリレート39質量%を混合した溶液を作製した。
その後、撹拌機、還流管及び窒素導入管とを備えた500mlの4つ口フラスコにジエチルヘキシルグリコール200gを仕込み、これを110℃に加熱した。次いで前記溶液300gにアゾ系ラジカル開始剤としてジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)(製品名:V−601、和光純薬(株)製)を0.2質量%から5質量%を加えてこれを溶解させた。
この溶液を前記4つ口フラスコに1.5時間かけて滴下し、当該4つ口フラスコ内にある成分を110℃で1時間撹拌した後に反応を終了させ、合成樹脂を得た。なお、合成樹脂の重量平均分子量は7,800Mw、酸価は40mgKOH/g、ガラス転移温度は−47℃であった。
【0050】
フラックス組成物の作製
表1に記載の各成分を混練し、フラックス組成物を得た。なお、特に記載のない限り、表1に記載の配合量の単位は質量%である。
【0051】
【表1】
※1 荒川化学工業(株)製 水添酸変性ロジン
※2 BASFジャパン(株)製 ヒンダードフェノール系酸化防止剤
※3 東亜合成(株)製 Zr・Mg・Al系無機フィラー
【0052】
ソルダペーストの作製
前記各フラックス組成物を11質量%と、以下の各鉛フリーはんだ合金の粉末(粉末粒径20μmから38μm)89質量%とを混合し、実施例1から実施例4及び比較例1から6に係る各ソルダペーストを作製した
実施例1から実施例4及び比較例1から比較例4及び比較例6:Sn−3Ag−0.5Cu鉛フリーはんだ合金
比較例5:Sn−3Ag−0.5Cu−0.2In鉛フリーはんだ合金
【0053】
(1)絶縁抵抗試験
JIS規格Z3284に準拠し、JIS2型くし型電極基板(導体幅:0.318mm、導体間隔:0.318mm、大きさ:30mm×30mm)上にメタルマスク(くし型電極パターンに合わせて、スリット状に加工したもの。厚み100μm)を用いて各ソルダペーストを印刷した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP40−577PH、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各基板を加熱して各試験基板を得た。この際のリフロー条件は、プリヒートが170℃から180℃で75秒間、ピーク温度を230℃、220℃以上の時間が30秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を3℃から8℃/秒とし、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次いで各試験基板を温度85℃、相対湿度95%に設定した恒温恒湿試験機(製品名:小型環境試験機SH−641、エスペック(株)製)に投入し、当該恒温恒湿試験機内の温湿度が設定値に到達した時点から2時間後の絶縁抵抗値を初期絶縁抵抗値として測定した。
そして、初期絶縁抵抗値計測から所定時間経過後(100時間後、200時間後、300時間後、400時間後及び500時間後)に絶縁抵抗値の測定を行い、初期絶縁抵抗値、及び所定時間経過後の絶縁抵抗値のうちの最小値(最低絶縁抵抗値)について、以下の基準に従って評価した。その結果を表2に表す。
なお所定時間経過後の絶縁抵抗値は、上記恒温恒湿試験機内測定電圧を100Vとし、測定秒数60秒後の絶縁抵抗値を測定した。
○:絶縁抵抗値が1.0×10
9Ω以上
△:絶縁抵抗値が1.0×10
8Ω以上1.0×10
9Ω未満
×:絶縁抵抗値が1.0×10
8Ω未満
【0054】
(2)ボイド試験
3.2mm×1.6mmのサイズのチップ部品と、当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップ部品を接続する電極とを備えたガラスエポキシ基板(t=1.6mm)と、同パターンを有する厚さ150μmのメタルマスクを用意した。
前記ガラスエポキシ基板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペーストを印刷し、それぞれに前記チップ部品20個を搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP40−577PH、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各ガラスエポキシ基板を加熱してそれぞれに前記ガラスエポキシ基板と前記チップ部品とを電気的に接合するはんだ接合部を形成し、前記チップ部品を実装した各試験基板を作製した。この際のリフロー条件は、プリヒートが170℃から190℃で110秒間、ピーク温度を245℃、200℃以上の時間が65秒間、220℃以上の時間が45秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を3℃から8℃/秒とし、酸素濃度は1500±500ppmに設定した。
次いで各試験基板の表面状態をX線透過装置(製品名:SMX−160E、(株)島津製作所製)で観察し、各はんだ接合部におけるチップ部品の電極下の領域(
図1の(a)で示す領域)及びフィレットが形成されている領域(
図1の(b)で占めす領域)におけるボイドの面積率(総ボイド面積/ランド面積×100)を算出し、以下のように評価した。その結果を表2に表す。
○:ボイド面積率が10%以下
△:ボイド面積率が10%超15%未満
×:ボイド面積率が15%以上
【0055】
(3)はんだボール試験
2.0mm×1.2mmのサイズのチップ部品を20個使用する以外は上記(2)ボイド試験と同様の条件にて各試験基板を作製した。
次いで各試験基板の表面状態をX線透過装置(製品名:SMX−160E、(株)島津製作所製)で観察し、その周辺にはんだボールが発生しているチップ部品数を算出し、以下のように評価した。その結果を表2に表す。
○:5未満
△:5以上10以下
×:11以上
【0056】
【表2】
【0057】
以上に示す通り、上記実施例はフラックス組成物に所定量のインジウム錯体(E)を含んでいることから、活性剤としてハロゲンを有する化合物を配合しているにも関わらず、形成されるフラックス残さにおいて当該インジウム錯体(E)がイオン性物質を捕捉するため、いずれも良好な絶縁特性及びはんだボール抑制効果を発揮し得ると共に、ボイド抑制効果をも発揮し得ることが分かる。一方で、インジウム錯体(E)を1質量%超配合した比較例6においては、良好な絶縁特性及びはんだボール抑制効果を発揮し得るものの、形成したはんだ接合部においてボイドが発生し易いことが分かる。
なお表2に示す通り、Inを添加した鉛フリーはんだ合金を使用した比較例5においては、はんだボール抑制効果は十分ではなく、インジウム錯体(E)をフラックス組成物に配合することにより、このような効果をも発揮し得ることが分かる。
【0058】
以上、本発明のフラックス組成物及びソルダペーストは、車載用電子回路基板といった高い信頼性の求められる電子回路基板にも好適に用いることができる。更にこのような電子回路基板は、より一層高い信頼性が要求される電子制御装置に好適に使用することができる。