【実施例1】
【0018】
図1は、実施例の二重効用の吸収式冷凍機を示したものである。
【0019】
本図においては、吸収式冷凍機は、蒸発器1、吸収器2、高温再生器3、低温再生器4、凝縮器5、低温熱交換器6及び高温熱交換器7を備えている。低温熱交換器6及び高温熱交換器7は、溶液熱交換器と呼んでもよい。
【0020】
冷媒として水を、吸収液として臭化リチウム水溶液を用いた場合の例について説明する。
【0021】
蒸発器1は、冷水が通る配管を有する。蒸発器1の内部は、空気が除去され、大気圧よりも低い状態である減圧状態としてあり、気相は実質的に水蒸気のみで満たされた状態に保たれている。蒸発器1の底に溜まった冷媒は、冷媒ポンプ40によって冷水配管に散布され、蒸発する。冷水配管内の水は、冷媒の蒸発熱により熱を奪われるため、冷却される。蒸発器1の内部の冷媒(水)は、冷水との熱交換により約4℃で蒸発するように設定されている。
【0022】
蒸気となった冷媒は、吸収器2で臭化リチウム水溶液に吸収される。臭化リチウム水溶液は、温度が低いほど蒸気を吸収しやすいため、吸収器2の内部に設けた冷却水配管内に冷却水を流し、臭化リチウム水溶液を管外に散布することにより、冷却されるようになっている。
【0023】
冷媒蒸気を吸収することにより臭化リチウムの濃度が低下した吸収液は、吸収器2から溶液ポンプ41により高温再生器3に送られる。その間、吸収液は、低温熱交換器6及び高温熱交換器7を経由する。加熱部8で吸収液を加熱することにより、吸収液中の冷媒を蒸発分離し、吸収液を濃縮する。加熱部8の加熱源には、都市ガス、重油、蒸気等を用いる。なお、高温再生器3内の吸収液の温度は、高温再生器温度センサ17により測定する。
【0024】
高温再生器3で蒸発した冷媒は、ドレン配管を介して凝縮器5に送られる。ドレン配管は、その途中で、低温再生器4の内部を通過する。その際、ドレン配管を通過する高温の冷媒と、低温再生器4の内部に送られスプレーされた吸収液とが熱交換される。低温再生器4に送られる吸収液は、低温熱交換器6と高温熱交換器7との間で分岐された配管を介して送られるものである。低温再生器4で加熱された吸収液から発生する冷媒は、凝縮器5に送られる。高温再生器3及び低温再生器4で濃縮された吸収液は、溶液スプレーポンプ42によって低温熱交換器6に送られ、吸収器2で冷媒蒸気を吸収して希釈された吸収液と熱交換をし、吸収器2に戻される。
【0025】
凝縮器5は、冷却水が通る配管を有している。高温再生器3及び低温再生器4で発生した冷媒蒸気は、凝縮器5に送られ、冷却水の配管との熱交換により液体となり、凝縮器5の底部に溜まる。溜まった冷媒は、蒸発器1に送られる。
【0026】
低温熱交換器6及び高温熱交換器7は、吸収液が吸収器2から高温再生器3に流れ込むまでの過程で、高温の吸収液の熱を低温の吸収液に与える。これにより、低温の吸収液は予熱され、加熱部8の加熱源の燃料が節約される。
【0027】
冷水配管は室内機に繋がっており、冷却水配管は冷却塔に接続されている。
【0028】
図2は、吸収式冷凍機の性能診断装置の構成例を示したものである。
【0029】
本図においては、性能診断装置は、計測データ50及び演算装置51を有する。計測データ50には、冷水入口温度、冷水出口温度、冷水流量等が含まれる。演算装置51は、効率演算部、性能判定部及び要素診断部を有する。
【0030】
効率演算部は、計測データ50を取り込み、冷凍能力、冷凍機の効率等を算出する。
【0031】
算出された冷凍機の効率は、性能判定部で、異常値かどうか判定される。異常値である場合は、要素診断部に値が送られ、要素診断部で各構成要素の性能が計算される。要素診断部で、各構成要素の性能指標値、あるいは異常度を算出し、出力部に結果を出力する。
【0032】
計算結果は、ネットワークを通じて、別の表示装置に表示することができる。また、ネットワークを通じて、記録装置に計算結果を保存することもできる。ネットワークは無くても構わないが、ネットワークがあることにより、遠隔地でも装置の状態を把握することができる。
【0033】
また、演算装置51は、吸収式冷凍機の機能として吸収式冷凍機に取り付けてもよいが、計測データ50をネットワークに接続して、演算装置51をサーバー等に配置してもよい。演算装置51をサーバー等に配置することにより、計算速度や記録容量等の制限がほぼ無くなり、計算処理能力を向上させ、計測データ50および計算結果を何十年分も記録しておくことができる。また、計算処理は、ネットワークを通じて分散処理をしてもよい。記録した計測データおよび計算結果は、ネットワークに通じていれば、セキュリティによるアクセス制限はあるが、世界中のどこからでも見ることができる。
【0034】
図1に示すように、吸収式冷凍機には、各構成要素の性能を診断するためのセンサが取り付けられている。
【0035】
冷水配管には、冷水の入口温度T
a_inを計測するための冷水入口温度センサ11、冷水の出口温度T
a_outを計測するための冷水出口温度センサ12、及び冷水流量V
aを計測するための冷水流量センサ60が設けられている。冷水の流量を計測するには、超音波流量計等を用いてもよいが、冷水の入口圧力と、冷水の出口圧力の差圧から流量を求めてもよい。流量計は圧力計よりも高価であるため、圧力計を用いることにより、流量計測にかかるコストを低減することができる。
【0036】
冷凍能力R
cは、冷水流量V
a、冷水比熱C
a及び冷水密度Ρ
aを用いて、下記式(1)により算出される。
【0037】
【数1】
【0038】
冷却水配管には、冷却水の入口温度T
co_inを計測するための冷却水入口温度センサ14、冷却水の出口温度T
co_outを計測するための冷却水出口温度センサ15、及び冷却水の流量V
coを計測するための冷却水流量センサ61が設けられている。冷却水の流量Ρ
coを計測するには、冷水と同様に超音波流量計や圧力計を用いる。
【0039】
また、流量が変化しないことが予め判明している箇所や、流量計測のためのセンサ設置が難しい場合には、冷凍能力や放熱量の算出に、装置設置時の流量の値を用い、流量を常時計測しなくても構わない。流量を常時計測しないことにより、電気代やデータのメモリを削減できる。
【0040】
放熱量R
rは、冷却水の流量V
co、冷却水比熱C
co及び冷却水密度Ρ
coを用いて、下記式(2)により算出される。
【0041】
【数2】
【0042】
冷凍機の効率は、下記式
(3)又は
(4)により算出される。
【0043】
【数3】
【0044】
【数4】
【0045】
ガスや重油等の加熱部8の加熱源の流量を計測できる場合は、上記式(3)のCOP(効率)を計算する。ガスや重油等であっても、加熱部8の加熱源の流量を計測できない場合や、蒸気焚きや温水焚きなどの加熱部8の消費熱量の計測が難しい場合は、上記式(4)のサイクルCOPを計算する。これらの計算は、効率演算部で行う。
【0046】
図3は、本発明の冷凍機の性能診断装置における診断処理プロセスを示すフローチャートである。
【0047】
効率演算部にて冷凍機の効率を算出し(ステップS1)、性能判定部で冷凍機の効率が正常かどうかを判定する(ステップS2)。ステップS2において、冷凍機の効率が正常であれば、処理を終了する。一方、冷凍機の効率が異常であれば、要素診断部にて各構成要素(構成部品)の診断を行う(ステップS3)。
【0048】
出力部(端末の画面、データの印刷機等)において、各要素の異常度を表示する(ステップS4)。これにより、効率が低下している場合に、原因となっている要素を可視化し、確認することができる。原因となっている要素を可視化することにより、速やかに吸収式冷凍機の保全を行うことができる。また、吸収式冷凍機の効率、各要素の異常度を予め算出しておいてから、冷凍機の性能を診断してもよいが、冷凍機の効率を先に求めて判断することにより、処理時間を削減することができる。
【0049】
図4は、定格の冷凍能力を1とした場合の冷凍能力に対する正常時のCOP(効率)の例を示すグラフである。横軸に定格冷凍能力に対する割合(冷凍能力割合)、縦軸にCOP(効率)をとっている。ここで、冷凍能力割合は、実測した冷凍能力と定格冷凍能力との比である。
【0050】
本図においては、曲線は上に凸となり、COP(効率)は、冷凍能力割合が0.4付近のときに最大となっている。
【0051】
運転時の冷凍能力については、運転時のCOPと正常時のCOPとを比較することが望ましい。性能判定部では、例えば、COPの値が正常時の±7%以内の範囲に入っている場合は正常、この範囲外の場合は異常と判定することとする。
【0052】
また、COPは各能力に対する値の変化量が小さいことから、正常状態の平均値のCOP、例えば、
図4のグラフの場合の平均値1.35に対して±10%以内であれば正常、この範囲外の場合は異常と判断してもよい。
【0053】
要素診断部では、吸収式冷凍機の構成要素の性能判定を行う。蒸発器1の診断には、冷水出口温度T
a_out及び蒸発温度T
evaを用いる。蒸発温度T
evaは、蒸発器1内の冷水配管近傍に温度センサを設置して計測することは難しいため、蒸発器1の出口付近に蒸発器冷媒温度センサ13を設置し、必要に応じて計測値を補正して蒸発温度T
evaとする。冷水流量が一定の場合に、蒸発温度T
evaが上昇している場合は、蒸発器1の真空度の劣化が考えられる。
【0054】
蒸発器1には冷水配管が通っており、冷水配管内が汚れると、蒸発器LTD(Leaving Temperature Difference)の値が、正常値と比較して大きくなる。蒸発器LTDは、下記式(5)により算出される。
【0055】
【数5】
【0056】
また、蒸発器1の性能を判断する別の方法として、下記式(6)に示すKAeの値を用いてもよい。冷水配管の汚れ等により伝熱性能が低下すると、KAeの値は低下する。
【0057】
【数6】
【0058】
また、蒸発器1の性能を診断する別の方法として、下記式(7)に示す温度効率η
Aを用いて評価してもよい。
【0059】
【数7】
【0060】
上記式(5)〜(7)は、いずれか一つのみを用いて蒸発器1の性能を診断してもよいし、全てを用いてもよい。全てを用いることにより、より正確に診断可能となる。
【0061】
吸収器2の診断には、吸収器2の中に含まれる吸収剤(臭化リチウム)の濃度を用いる。吸収液を送るための溶液ポンプや溶液スプレーポンプの異常、結晶析出等による配管の詰まり等が発生すると、吸収器2の中に含まれる吸収剤の濃度が変化する。吸収剤の濃度は、吸収器出口温度センサ16に、必要に応じて補正をかけて、吸収器2内部の吸収液の平衡温度を算出し、冷水出口温度から、必要に応じて補正をかけて、冷媒の飽和温度を求めることにより、算出する。
【0062】
高温再生器3の診断には、高温再生器3の中に含まれる吸収剤の濃度と、高温再生器3の圧力とを用いる。吸収液を送るための溶液ポンプや溶液スプレーポンプの異常、結晶析出等による配管の詰まり等が発生すると、吸収剤の濃度が正常値よりも高くなる。高温再生器3に含まれる吸収剤の濃度は、高温再生器出口温度センサ22で測定される高温温再生器出口温度から高温再生器3内の吸収液の平衡温度を算出し、低温再生器冷媒温度センサ20から、高温再生器3内の飽和温度を求めることにより、算出する。
【0063】
低温再生器冷媒温度センサ20を設置できない場合には、高温再生器3の圧力から、高温再生器3内の吸収剤の濃度を算出する。また、高温再生器3の圧力値で性能を診断してもよい。
【0064】
図5は、定格の冷凍能力を1とした場合の冷凍能力に対する正常時の高温再生器3の吸収剤濃度の例を示すグラフである。横軸に定格冷凍能力に対する割合、縦軸に高温再生器3の吸収剤濃度をとっている。
【0065】
本図に示すように、冷凍能力に対して正常時の高温再生器3の吸収剤濃度は変化する。冷凍能力が高くなるに従って、高温再生器3の吸収剤濃度が高くなる傾向がある。このため、運転時の冷凍能力において、正常時の濃度と比較して、正常か否かを診断する。例えば、正常時の高温再生器3の吸収剤濃度の±5%以内を正常と判断し、それ以外を異常と判断する。計測値が図中の正常範囲外になった場合は、異常と判断する。
【0066】
低温再生器4の診断には、低温再生器4の中に含まれる吸収剤の濃度を用いる。低温再生器溶液出口温度センサ21に、必要に応じて補正をかけて、低温再生器4内部の吸収液の平衡温度を算出し、凝縮器5の出口付近に設置した凝縮器冷媒温度センサ19から、必要に応じて補正をかけて、低温再生器4内部の冷媒の飽和温度を算出し、低温再生器4の中に含まれる吸収剤の濃度を算出する。
【0067】
凝縮器5の診断には、冷却水出口温度T
CD_out及び凝縮温度T
Ceを用いる。凝縮温度T
Ceは、凝縮器5内の冷却水配管近傍に温度センサを設置して計測することは難しいため、凝縮器冷媒温度センサ19を設置し、必要に応じて計測値を補正して凝縮温度T
Ceとする。
【0068】
凝縮器5には、冷却水配管が通っており、冷却水配管内が汚れると、凝縮器LTDの値が、正常値と比較して大きくなる。蒸発器LTDは、下記式(8)により算出される。
【0069】
【数8】
【0070】
また、凝縮器5の性能を判断する別の方法として、下記式(9)で示すKAcの値を用いてもよい。冷却水配管の汚れ等により伝熱性能が低下すると、KAcの値は低下する。
【0071】
【数9】
【0072】
また、凝縮器5の性能を診断する別の手段として、下記式(10)で示す温度効率η
Cを用いて評価してもよい。
【0073】
【数10】
【0074】
上記式(8)〜(10)は、これら式のうちいずれか一つを用いて凝縮器5の性能を診断してもよいし、全てを用いてもよい。全てを用いることにより、より正確に診断可能となる。
【0075】
吸収器2の出口から凝縮器5入口までの間の冷却水温度を計測することが可能であれば、その温度を冷却水中間温度T
CD_midとして、上記式(8)〜(10)において、冷却水入口温度T
CD_inの替わりにT
CD_midを用いて、値を算出する。冷却水中間温度T
CD_midを用いることで、より正確に診断が可能となる。
【0076】
低温熱交換器6の性能は、低温側流体の温度効率η
lLXで診断する。低温熱交換器稀溶液出口温度センサ28の温度を低温熱交換器稀溶液出口温度T
sLXwoとし、低温熱交換器濃溶液入口温度センサ26の温度を低温熱交換器濃溶液入口温度T
sLXsiとし、吸収器出口温度センサ16の温度を吸収器出口温度T
sAoとし、これらの値から低温側流体の温度効率η
lLXを下記式(11)により算出する。
【0077】
【数11】
【0078】
また、低温熱交換器6の性能は、高温側流体の温度効率η
hLXで診断してもよい。この場合は、低温熱交換器濃溶液出口温度センサ27の温度を低温熱交換器濃溶液出口温度T
sLXsoとして、下記式(12)を用いてη
hLXを算出する。
【0079】
【数12】
【0080】
配管に孔が開いたり、配管の内側に結晶が析出したりすると、温度効率は低下する。よって、温度効率で熱交換器の性能を診断することができる。
【0081】
高温熱交換器7の性能は、低温側流体の温度効率η
hHXで診断する。高温熱交換器稀溶液出口温度センサ24の温度を高温熱交換器稀溶液出口温度T
sHXwoとし、高温再生器出口温度センサ22の温度を高温再生器出口温度T
sFBoとし、高温熱交換器稀溶液入口温度センサ23の温度を高温熱交換器稀溶液入口温度T
sHXwiとして、下記式(13)を用いてη
lHXを算出する。
【0082】
【数13】
【0083】
また、高温熱交換器7の性能は、高温側流体の温度効率η
hHXで診断してもよい。この場合は、高温熱交換器濃溶液出口温度センサ25の温度を高温熱交換器濃溶液出口温度T
sHXsoとして、下記式(14)を用いてη
hHXを算出する。
【0084】
【数14】
【0085】
加熱部8の加熱源として燃焼時にスス等が発生する燃料(重油等)を用いた場合には、煙道の汚れが発生し、加熱部8の熱が高温再生器3に伝わりにくくなるため、吸収式冷凍機の効率が低下する。煙道の汚れは、高温再生器温度センサ17で計測した高温再生器温度T
HGと、排ガス温度センサ18で計測した排ガス温度T
EXGとにより、下記式(15)を用いて算出される高温再生器LTDにより評価する。
【0086】
【数15】
【0087】
本実施例では、二重効用の場合の吸収式冷凍機の例で説明したが、一重効用や三重効用等の他方式の吸収式冷凍機に用いてもよい。その場合は、構成要素に合わせて温度センサを増減させる。
【0088】
これらの数式を用いることにより、各構成要素の状態を診断することができる。
【0089】
各構成要素の診断は、ある冷凍能力値において、計測値が正常値とどの程度離れているのか、という判断とは別に、異常度という数値で判断することもできる。
【0090】
図6は、異常度の求め方の例を示すグラフである。横軸に定格冷凍能力に対する冷凍能力割合、縦軸に凝縮器LTDをとっている。
【0091】
本図においては、凝縮器LTDの正常値(実線)と、定格冷凍能力に対する冷凍能力割合が0.8の場合の凝縮器LTDの計測値(測定値)とを示している。計測値に対して、各冷凍能力における予測近似線(破線)の式を算出する。そして、定格に対する冷凍能力割合が1(定格の冷凍能力)の場合の凝縮器LTDの値を予測する。予測した凝縮器LTDの値をC
pre_LTD、正常値の凝縮器LTDの値をC
nor_LTDとすると、凝縮器LTDの異常度C
ab_LTDは、下記式(16)〜(18)のいずれかにより定義される。
【0092】
【数16】
【0093】
【数17】
【0094】
【数18】
【0095】
定格の冷凍能力に換算することにより、経年的な比較をすることが可能となる。
【0096】
なお、予測近似線の式は、変動する凝縮器LTD及び冷凍能力を実測し、実測値の対応関係から算出することができる。また、異常度は、その経時変化を記録装置等に記録しておくことが望ましい。経時変化の記録は、「時系列的に管理する」ことと同義である。
【0097】
図7は、異常度の経時変化を示すグラフである。横軸に運転を継続している時期として年月日をとり、縦軸に異常度をとっている。
【0098】
本図に示すように、ある期間、運転を継続すると、異常度が上昇する場合がある。異常度が予め設定していた閾値を超えた場合、あるいは異常度が急激に増加している場合等には、アラート(警報)等を表示する。もし、異常度が急激に増加している場合があれば、増加傾向を予め知ることで、装置が故障する前に対策を行うことが可能となる。
【0099】
凝縮器5以外の構成要素についても、凝縮器と同様に定格の冷凍能力における値を予測し、それぞれの構成要素について異常度を算出して診断を行う。
【0100】
図8は、
図6に例示する異常度の算出工程を示すフローチャートである。
【0101】
図8においては、それぞれの構成要素について、稼働条件における指標(
図6の例では凝縮器LTD)の計測値(測定値)を算出する(S11)。つぎに、それぞれの構成要素について、定格における指標の予測値を算出する(S12)。そして、それぞれの構成要素について、定格における異常度を算出する(S13)。
【0102】
これにより、
図6に例示するグラフを表示することができる。
【0103】
さらに、それぞれの構成要素について、定格における異常度を閾値と比較する(S14)。
【0104】
図8の工程により得られた異常度のデータを蓄積し、過去から現在に至るグラフとして出力したものの一例が
図7である。
【実施例2】
【0105】
本実施例は、高効率の二重効用の吸収式冷凍機の例である。
【0106】
図9は、実施例1(
図1)よりも高効率の吸収式冷凍機の構成を示したものである。
【0107】
図9において
図1と異なる点は、ドレン熱交換器9及び排ガス熱交換器10が設けられている点である。これらにより、投入した熱の回収率が向上するため、加熱部8の燃料を節約することができる。
【0108】
各熱交換器の性能は、実施例1と同様に、温度効率を算出して診断する。
【0109】
ドレン熱交換器9の性能は、低温側流体の温度効率η
lDXで診断する。ドレン熱交換器稀溶液出口温度センサ30をドレン熱交換器稀溶液出口温度T
sDXoとし、吸収器出口温度センサ16を吸収器出口温度T
sAoとし、低温再生器冷媒温度センサ20を低温再生器冷媒温度T
LGdとし、これらの値から低温側流体の温度効率η
lDXを下記式(19)で算出する。
【0110】
【数19】
【0111】
ドレン熱交換器9の性能は、高温側流体の温度効率η
hDXで診断してもよい。この場合は、ドレン熱交換器ドレン出口温度センサ31をドレン熱交換器ドレン出口温度T
rDXoとし、高温側流体の温度効率η
hDXを下記式(20)で算出する。
【0112】
【数20】
【0113】
排ガス熱交換器10についても、他の熱交換器と同様に温度効率で性能を診断する。排ガス熱交換器稀溶液出口温度センサ29を排ガス熱交換器稀溶液出口温度T
sEXoとし、排ガス温度センサ18を排ガス温度T
EXGとし、高温熱交換器稀溶液入口温度センサ23を高温熱交換器入口温度T
sHXwiとして、下記式(21)を用いて低温側流体の温度効率η
lEXを算出して診断する。
【0114】
【数21】
【0115】
排ガス熱交換器10の出口側の排ガス温度を計測し、高温側の温度効率η
hEXを算出してもよい。
【0116】
配管に孔が開いたり、配管の内側に結晶が析出したりすると、温度効率は低下する。よって、温度効率で熱交換器の性能を診断することができる。その他の構成要素は、実施例1と同様にして診断を行う。
【0117】
以下、実施例1及び2の吸収式冷凍機の性能診断装置における出力の例について説明する。
【0118】
図10Aは、
図2の計測データ50の一部及び性能指標値の表示画面の一例を示したものである。
【0119】
本図においては、冷凍能力、効率、冷水出口温度及び冷却水出口温度の定格値及び現在値が表示されている。また、冷凍機の状態として、凝縮器に関する注意喚起が表示されている。
【0120】
図10Bは、冷凍機の異常度等の詳細情報を表示する第二の画面の例を示したものである。
【0121】
本図のように表示することにより、画面の大きさに制約されることなく必要な情報を提供することができる。本図と同様にして、必要に応じて、第三の画面、第四の画面と切替られるようにすることもできる。
【0122】
図10Bの表示例では、凝縮器の異常度が増加しているため、凝縮器に対してアラート(警報)を表示する。各構成要素の状態は、正常・注意・異常等のように、言葉で表示してもよいし、異常度とその閾値を表示してもよい。
【0123】
また、
図1や
図9のような構成図を簡略化して表示し、図中の各位置に温度等を表示してもよい。構成図として表示することにより、数値だけで表示するよりも直感的に分かりやすくなる利点がある。
【0124】
本発明によれば、吸収式冷凍機の効率が変化した場合に、不具合の発生箇所を特定することが可能となる。