(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
互いに抗する方向に2つのパイロット圧が入力され、前記2つのパイロット圧の差圧に応じて所定方向一方及び他方に夫々移動してメインポンプから油圧アクチュエータに流れる作動油の方向を切換えると共に前記メインポンプと油圧アクチュエータとの間の開度を制御するスプールを有する流量制御弁と、
一定の設定圧に保たれた圧油を供給する圧力源から供給される圧油を一次圧とする正比例型の電磁比例制御弁であって、入力される電流に応じた第1出力圧に減圧制御し、前記第1出力圧を前記2つのパイロット圧のうちの一方である第1パイロット圧として前記流量制御弁に出力して前記スプールを前記所定方向一方に移動させる正比例型の第1電磁比例制御弁と、
前記圧力源から供給される圧油を一次圧とする正比例型の電磁比例制御弁であって、入力される電流に応じて、第2出力圧に減圧制御して出力する正比例型の第2電磁比例制御弁と、
前記圧力源から供給される設定圧及び前記第2電磁比例制御弁から出力される前記第2出力圧のうち何れかを前記2つのパイロット圧のうちの他方である第2パイロット圧として前記流量制御弁に出力して前記スプールを前記所定方向他方に移動させる切換弁と、
前記第1電磁比例制御弁と前記流量制御弁との間に設けられた通路であって前記流量制御弁に前記第1パイロット圧を与える通路に一端が接続され、前記第1パイロット圧を与えるべく他端が前記切換弁に接続された油通路と、
互いに異なる第1方向及び第2方向に操作可能な操作装置と、
前記第1電磁比例制御弁及び前記第2電磁比例制御弁が正常に作動する状態で、且つ前記操作装置が前記第1方向に操作される場合は、その第1方向操作量に応じた電流を前記第1電磁比例制御弁に流し、前記操作装置が前記第2方向に操作される場合は、その第2方向操作量に応じた電流を前記第2電磁比例制御弁に流す制御ユニットと、を備え、
前記切換弁は、前記第1パイロット圧と前記第2出力圧とが互いに抗するように入力され、前記第1パイロット圧から前記第2出力圧を差し引いた差分が予め定められた所定圧力以上である場合は、前記設定圧を第2パイロット圧として前記流量制御弁に出力し前記差分が前記所定圧力未満である場合は、前記第2出力圧を前記第2パイロット圧として出力し、
前記制御ユニットは、前記操作装置が前記第2方向に操作されても前記第2出力圧がゼロに維持されるような故障が前記第2電磁比例制御弁又はその配線経路に生じている判断した場合は、前記第1電磁比例制御弁に通電して前記所定圧力以上で且つ前記操作装置の第2方向操作量に応じた前記第1出力圧を前記第1パイロット圧として前記第1電磁比例制御弁から前記流量制御弁及び前記切換弁に出力させる、油圧駆動装置。
前記スプールは、前記第2パイロット圧に比べて前記第1パイロット圧が大きく且つ前記2つのパイロット圧の差圧が予め定められる規定圧力に達すると、前記所定方向一方へのストローク量が最大となるように構成され、
前記切換弁は、前記所定圧力が前記規定圧力より大きくなるように構成されている、請求項1に記載の油圧駆動装置。
前記第1電磁比例制御弁から出力される前記第1出力圧及び前記圧力源によって一定に保たれている設定圧のうち何れか一方を前記第1パイロット圧として前記流量制御弁に出力する第1切換弁、を更に備え、
前記第1切換弁は、前記第2パイロット圧と前記第1出力圧とが互いに抗するように入力され、前記第2パイロット圧から前記第1出力圧を差し引いた第1差分が第1所定圧力以上である場合は、前記設定圧を前記第1パイロット圧として出力し、前記第1差分が前記第1所定圧力未満である場合は、前記第1出力圧を前記第1パイロット圧として出力し、
前記切換弁である第2切換弁は、前記第1パイロット圧と前記第2出力圧とが互いに抗するように入力され、前記第1パイロット圧から前記第2出力圧を差し引いた差分である第2差分が所定圧力である第2所定圧力以上である場合は、前記設定圧を前記第2パイロット圧として前記流量制御弁に出力し、前記第2差分が前記第2所定圧力未満である場合は、前記第2出力圧を前記第2パイロット圧として前記流量制御弁に出力し、
前記制御ユニットは、前記操作装置が前記第1方向に操作されても前記第1出力圧がゼロに維持されるような故障が前記第1電磁比例制御弁又はその配線経路に生じていると判断した場合は、前記第2電磁比例制御弁に通電して前記第1所定圧力以上で且つ前記操作装置の第1方向操作量に応じた前記第2出力圧を前記第2パイロット圧として前記第2電磁比例制御弁から前記流量制御弁及び前記第2切換弁に出力させる、請求項1に記載の油圧駆動装置。
前記スプールは、前記第2パイロット圧に比べて前記第1パイロット圧が大きく且つ前記2つのパイロット圧の差圧が予め定められた第1規定圧力に達すると前記所定方向一方へのストローク量が最大となり、前記第1パイロット圧に比べて前記第2パイロット圧が大きく且つ前記2つのパイロット圧の差圧が予め定められる第2規定圧力に達すると、前記所定方向他方へのストローク量が最大となるように構成され、
前記第1切換弁は、前記第1所定圧力が前記第1規定圧力より大きくなるように構成され、
前記第2切換弁は、前記第2所定圧力が前記第2規定圧力より大きくなるように構成されている、請求項3に記載の油圧駆動装置。
前記スプールは、前記2つのパイロット圧の差圧がゼロの場合において、前記メインポンプと前記油圧アクチュエータとの間を遮断する中立位置に位置する、請求項1乃至4の何れか1つに記載の油圧駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電磁比例制御弁は、以下のような故障が発生することが考えられる。即ち、電磁比例制御弁と制御装置とを繋ぐ信号線が断線する等のような配線経路に故障が生じる場合がある。この場合、操作レバーを操作しても電磁比例制御弁の一次圧側の通路と二次圧(出力)側の通路とが遮断された状態が継続し、電磁比例制御弁から出力圧がゼロのままとなる。また、電磁比例制御弁の弁体が電磁比例制御弁の一次圧側の通路と二次圧側の通路とを遮断する状態でスティックするような故障が生じる場合もあり、この場合も配線経路に故障が生じている場合と同様に、電磁比例制御弁から出力圧がゼロのままとなる。それ故、何れの場合においても、操作レバーが操作されてもマルチコントロール弁のスプールが中立位置に維持されるので、操作レバーを操作しても油圧アクチュエータが反応しない。しかし、このような故障が生じている場合においても、油圧アクチュエータを作動させることができるようにすることが望まれている。
【0006】
そこで本発明は、電磁比例制御弁からの出力圧がゼロのままに維持されるような故障が生じても、操作装置の操作に応じて油圧アクチュエータを動作させることができる油圧駆動装置、及びそれを備える油圧駆動システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の油圧駆動装置は、互いに抗する方向に2つのパイロット圧が入力され、前記2つのパイロット圧の差圧に応じて所定方向一方及び他方に夫々移動してメインポンプから油圧アクチュエータに流れる作動油の方向を切換えると共に前記メインポンプと油圧アクチュエータとの間の開度を制御するスプールを有する流量制御弁と、一定の設定圧に保たれた圧油を供給する圧源から供給される圧油を一次圧とする正比例型の電磁比例制御弁であって、入力される電流に応じた第1出力圧に減圧制御し、前記第1出力圧を前記2つのパイロット圧のうちの一方である第1パイロット圧として前記流量制御弁に出力して前記スプールを前記所定方向一方に移動させる正比例型の第1電磁比例制御弁と、前記圧力源から供給される圧油を一次圧とする正比例型の電磁比例制御弁であって、入力される電流に応じた第2出力圧に減圧制御して出力する正比例型の第2電磁比例制御弁と、前記圧力源から供給される設定圧及び前記第2電磁比例制御弁から出力される前記第2出力圧のうち何れかを前記2つのパイロット圧のうちの他方である第2パイロット圧として前記流量制御弁に出力して前記スプールを前記所定方向他方に移動させる切換弁と、前記第1電磁比例制御弁と前記流量制御弁との間の通路から分岐して前記切換弁に接続する油通路と、互いに異なる第1方向及び第2方向に操作可能な操作装置と、前記第1電磁比例制御弁及び前記第2電磁比例制御弁が正常に作動する状態で、且つ前記操作装置が前記第1方向に操作される場合は、その第1方向操作量に応じた電流を前記第1電磁比例制御弁に流し、前記操作装置が前記第2方向に操作される場合は、その第2方向操作量に応じた電流を前記第2電磁比例制御弁に流す制御ユニットと、を備え、前記切換弁は、前記第1パイロット圧と前記第2出力圧とが互いに抗するように入力され、前記第1パイロット圧から前記第2出力圧を差し引いた差分が予め定められた所定圧力以上である場合は、前記設定圧を第2パイロット圧として前記流量制御弁に出力し、前記差分が前記所定圧力未満である場合は、前記第2出力圧を前記第2パイロット圧として出力し、前記制御ユニットは、前記操作装置が前記第2方向に操作されても前記第2出力圧がゼロに維持されるような故障が前記第2電磁比例制御弁又はその配線経路に生じていると判断した場合は、前記第1電磁比例制御弁に通電して前記所定圧力以上で且つ前記操作装置の第2方向操作量に応じた前記第1出力圧を前記第1パイロット圧として前記第1電磁比例制御弁から前記流量制御弁及び前記切換弁に出力させるものである。
【0008】
本発明に従えば、第2電磁比例制御弁又はその配線経路に故障がない状態において、操作装置が第2方向に操作されると、操作装置の操作量に応じた第2出力圧が出力される。他方、第1電磁比例制御弁からの出力がなければ、第1パイロット圧から第2出力圧を引いた差分が所定圧力以下となり、第2出力圧が第2パイロット圧として切換弁から流量制御弁に出力される。これにより、流量制御弁のスプールは、所定方向他方に且つ第2出力圧に応じた位置へと移動し、メインポンプと油圧アクチュエータとの間の開度が第2出力圧に応じた開度となる。即ち、操作装置の操作量に応じた流量の作動油を油圧アクチュエータに流すことができ、操作装置の操作量に応じた速度で油圧アクチュエータを動かすことができる。
【0009】
他方、例えば第2電磁比例制御弁の配線経路に故障が生じている状態において、操作装置が第2方向に操作されると、制御ユニットは、第2電磁比例制御弁ではなく第1電磁比例制御弁に通電して、第1電磁比例制御弁から所定圧力以上の第1出力圧を出力させる。これにより、第1パイロット圧が所定圧力以上になり、設定圧が第2パイロット圧として切換弁から流量制御弁に出力される。即ち、互いに抗する2つパイロット圧がスプールに作用するようになる。ここで、第1パイロット圧は、設定圧以下に制御され、第2パイロット圧は設定圧と同圧になっている。それ故、2つのパイロット圧がスプールに作用することによってスプールが所定方向他方に且つその差分に応じた位置に移動する。従って、操作装置の操作量に応じて第1出力圧を調整することによって2つのパイロット圧の差分を調整することができ、第2電磁比例制御弁の配線経路において故障が生じてもスプールを操作装置の第2方向操作量に応じた位置に移動させることができる。即ち、電磁比例制御弁の配線経路において故障が生じた場合のように、第2電磁比例制御弁からの出力圧がゼロのままに維持されるような故障が第2電磁比例制御弁に生じた場合において、操作装置の第2方向操作量に応じた流量の作動油を油圧アクチュエータに流すことができ、操作装置の第2方向操作量に応じた速度で油圧アクチュエータを動かすことができる。
【0010】
なお、操作装置が第1方向に操作される場合には、第2電磁比例制御弁又はその配線経路における故障の有無に関わらず、制御ユニットが操作装置の操作量に応じた電流を第1電磁比例制御弁に出力する。そうすると、操作装置の操作量に応じた圧力の第1出力圧が第1パイロット圧として第1電磁比例制御弁から流量制御弁に出力され、操作装置が操作される第1方向であって且つその操作量に応じた位置にスプールが移動する。これにより、操作装置の第1方向操作量に応じた流量の作動油を油圧アクチュエータに流すことができ、操作装置の第1方向操作量に応じた速度で油圧アクチュエータを動かすことができる。
【0011】
上記発明において、前記スプールは、前記第2パイロット圧に比べて前記第1パイロット圧が大きく且つ前記2つのパイロット圧の差圧が予め定められる規定圧力に達すると、前記所定方向一方へスプールのストローク量が最大となるように構成され、前記切換弁は、前記所定圧力が前記規定圧力より大きくなるように構成されていてもよい。
【0012】
上記構成に従えば、規定圧力が所定圧力よりも低く設定されているので、第2電磁比例制御弁又はその配線経路が故障している状態において、第1パイロット圧を規定圧力まで昇圧しても設定圧が第2パイロット圧として出力されることがない。それ故、第2電磁比例制御弁又はその配線経路が故障している状態においても、スプールを所定方向一方に向かって最大ストローク量までストロークさせることができる。即ち、第2電磁比例制御弁又はその配線経路が故障している状態において、第1パイロット圧によってスプールを所定方向一方に移動させる際に油圧駆動装置の機能が低下することを抑えることができる。
【0013】
上記発明において、前記第1電磁比例制御弁から出力される前記第1出力圧及び前記圧力源によって一定に保たれている設定圧のうち何れか一方を前記第1パイロット圧として前記流量制御弁に出力する第1切換弁、を更に備え、前記第1切換弁は、前記第2パイロット圧と前記第1出力圧とが互いに抗するように入力され、前記第2パイロット圧から前記第1出力圧を差し引いた第1差分が第1所定圧力以上である場合は、前記設定圧を前記第1パイロット圧として出力し、前記第1差分が前記第1所定圧力未満である場合は、前記第1出力圧を前記第1パイロット圧として出力し、前記切換弁である第2切換弁は、前記第1パイロット圧と前記第2出力圧とが互いに抗するように入力され、前記第1パイロット圧から前記第2出力圧を差し引いた差分である第2差分が所定圧力である第2所定圧力以上である場合は、前記設定圧を前記第2パイロット圧として前記流量制御弁に出力し、前記第2差分が前記第2所定圧力未満である場合は、前記第2出力圧を前記第2パイロット圧として前記流量制御弁に出力し、前記制御ユニットは、前記操作装置が前記第1方向に操作されても前記第1出力圧がゼロに維持されるような故障が前記第1電磁比例制御弁又はその配線経路に生じていると判断した場合は、前記第2電磁比例制御弁に通電して前記第1所定圧力以上で且つ前記操作装置の第1方向操作量に応じた前記第2出力圧を前記第2パイロット圧として前記第2電磁比例制御弁から前記流量制御弁及び前記第2切換弁に出力させてもよい。
【0014】
上記構成に従えば、第1電磁比例制御弁又はその配線経路が故障している状態においても、操作装置に対する第1方向及び第2方向の操作の何れであっても操作装置の操作量に応じた流量の作動油を油圧アクチュエータに流すことができ、操作装置の操作量に応じた速度で油圧アクチュエータを動かすことができる。
【0015】
上記発明において、前記スプールは、前記第2パイロット圧に比べて前記第1パイロット圧が大きく且つ前記2つのパイロット圧の差圧が予め定められた第1規定圧力に達すると前記所定方向一方へのストローク量が最大となり、前記第1パイロット圧に比べて前記第2パイロット圧が大きく且つ前記2つのパイロット圧の差圧が予め定められる第2規定圧力に達すると、前記所定方向他方へのストローク量が最大となるように構成され、前記第1切換弁は、前記第1所定圧力が前記第1規定圧力より大きくなるように構成され、前記第2切換弁は、前記第2所定圧力が前記第2規定圧力より大きくなるように構成されていてもよい。
【0016】
上記構成に従えば、第1規定圧力が第1所定圧力よりも低く設定されているので、第1電磁比例制御弁が通電不可な状態において、第2パイロット圧を規定圧力まで昇圧しても設定圧が第1パイロット圧として出力されることがない。それ故、第1電磁比例制御弁又はその配線経路が故障している状態においても、スプールを所定方向他方に向かって最大ストローク量までストロークさせることができる。即ち、第1電磁比例制御弁又はその配線経路が故障している状態において、スプールを所定方向他方に移動させる際に油圧駆動システムの機能が低下することを抑えることができる。
【0017】
また、同様に、第2規定圧力が第2所定圧力よりも低く設定されているので、第2電磁比例制御弁又はその配線経路が故障している状態においてもまた、スプールを所定方向他方に向かって最大ストローク量までストロークさせることができる。即ち、スプールを所定方向一方に移動させる際に油圧駆動システムの機能が低下することを抑えることができる。
【0018】
上記発明において、前記スプールは、前記2つのパイロット圧の差圧がゼロの場合において、前記メインポンプと前記油圧アクチュエータとの間を遮断する中立位置に位置してもよい。
【0019】
上記構成に従えば、第2電磁比例制御弁が、二次圧ポートが一次圧ポートと連通する状態でスティックして制御不能になった場合、第2電磁比例制御弁から設定圧と同圧の第2出力圧が出力されることになる。そうすると、第2パイロット圧として設定圧と同圧の第2出力圧が第2切換弁から流量制御弁に出力される。他方、第1切換弁においては設定圧と同圧の第2出力圧が第2パイロット圧として入力されることにより、第1切換弁は第1パイロット圧として設定圧を前記流量制御弁に出力するようになる。これにより、流量制御弁のスプールに同圧の第1パイロット圧及び第2パイロット圧が互いに抗するように作用し、スプールが中立位置に保持される。その結果、作動油が油圧アクチュエータに導かれて不所望な動きをすることを防ぐことができ、フェールセーフを達成することができる。
【0020】
本発明の油圧駆動システムは、前述する油圧駆動装置と、前記油圧アクチュエータに供給する作動油を吐出するメインポンプと、前記圧力源を構成するサブポンプとを備えるものである。
【0021】
上記構成に従えば、前述するような機能を有する油圧駆動システムを実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、電磁比例制御弁からの出力圧がゼロのままに維持されるような故障が生じても、操作装置の操作に応じて油圧アクチュエータを動作させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態の油圧駆動システム1について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する油圧駆動システム1は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0025】
建設機械では、様々なアタッチメントを備えており、それらが油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータ2によって動かされている。また、建設機械では、油圧アクチュエータ2を動かすべく油圧駆動システム1を備えている。油圧駆動システム1は、作動油を油圧アクチュエータ2(本実施形態において油圧シリンダ)に供給して油圧アクチュエータ2を駆動するようになっている。なお、本実施形態では、説明の便宜上、油圧駆動システム1に1つの油圧アクチュエータ2だけが接続されているが、油圧駆動システム1に2つ以上の油圧アクチュエーが接続されてもよい。以下では、油圧駆動システム1の構成について更に詳細に説明する。
【0026】
[油圧駆動システム]
油圧駆動システム1は、メインポンプ11と、タンク12と、エンジンEと、サブポンプ13と、油圧駆動装置14とを備えている。メインポンプ11は、可変容量型の斜板ポンプであって、吸入ポート11aにタンク12が接続され、吐出ポート11bに油圧駆動装置14が接続されている。また、メインポンプ11は、エンジンEに接続されており、エンジンEは、メインポンプ11の回転軸11cを予め定められた任意の回転数にて回転させるようになっている。また、メインポンプ11は、傾転角を変更可能な斜板11dを有しており、斜板11dの傾転角を変えることによってメインポンプ11の吐出容量を調整できるようになっている。更に、メインポンプ11の斜板11dにはレギュレータ15が設けられており、レギュレータ15によって斜板11dの傾転角を変更できるようになっている。
【0027】
このように構成されているメインポンプ11は、エンジンEが回転軸11cを回転させることによって作動油を吐出するようになっており、吐出される作動油の流量(即ち、吐出流量)は、斜板11dの傾転角とエンジンEの回転数に応じた流量となっている。このような機能を有するメインポンプ11の回転軸11cには、更にサブポンプ13の回転軸13aが回転軸11cと一体的に回転するようになっている。なお、本実施形態において、サブポンプ13は、メインポンプ11と直列的に接続されているが、並列的に接続されてもよく、またエンジンEに対してメインポンプ11とは反対側に接続されてもよい。
【0028】
このように接続されているサブポンプ13は、固定容量型のポンプであり、吸入ポート13bにタンク12が接続され、吐出ポート13cに油圧駆動装置14のサブ通路20が接続されている。また、サブポンプ13の回転軸13aは、回転軸11cを介してエンジンEに繋がっており、エンジンEの回転数に応じた回転数で回転するようになっている。更に、サブポンプ13は、回転することによってサブ通路20に圧油を吐出するようになっており、サブ通路20には、この圧油の圧力を一定に保つべくリリーフ弁28が設けられている。
【0029】
リリーフ弁28は、サブ通路20とタンク12を連通するように配置されている。リリーフ弁28は、サブ通路20の油圧が予め定められる設定圧を超えるとサブ通路20を流れる作動油を排出し、サブポンプ13のサブポンプ吐出圧ppを設定圧(即ち、一定圧)にて維持する。このようにして油圧駆動装置14には、一定圧の圧油が供給されている。
【0030】
[油圧駆動装置]
油圧駆動装置14は、サブポンプ13からのサブポンプ吐出圧ppを利用して作動し、またメインポンプ11から吐出された作動油を油圧アクチュエータ2のどちらの通路へ導くかを切換えたり流量を調整したりすることによって油圧アクチュエータ2の動きを制御するようになっている。更に詳細に説明すると、油圧駆動装置14は、流量制御弁21と、第1電磁比例制御弁22Rと、第2電磁比例制御弁22Lと、第1切換弁24Rと、第2切換弁24Lと、制御ユニット26と、操作装置27とを備えている。
【0031】
流量制御弁21は、メインポンプ11と油圧アクチュエータ2とに接続されており、メインポンプ11から油圧アクチュエータ2に流れる作動油の方向及び流量を制御するようになっている。更に詳細に説明すると、油圧アクチュエータ2は、2つのポート2a,2bを有しており、流量制御弁21は、2つのポート2a,2bに接続されている。また、流量制御弁21は、メインポンプ11の吐出ポート11b及びタンク12に接続され、これらの接続状態を切換えるべくスプール21aを有している。即ち、流量制御弁21は、スプール21aを動かすことによって作動油の流れる方向及び流量制御弁21の開度を調整できるようになっている。
【0032】
更に詳細に説明すると、スプール21aは、所定方向一方及び他方、即ち中立位置M0から第1オフセット位置M1及び第2オフセット位置M2に夫々移動できるようになっており、中立位置M0において、メインポンプ11と油圧アクチュエータ2との間、及び油圧アクチュエータ2とタンク12との間を夫々遮断して作動油がそれらの間を流れないようになっている。スプール21aが第1オフセット位置M1に位置すると、メインポンプ11の吐出ポート11bと油圧アクチュエータ2の第1ポート(本実施形態において、ヘッド側ポート)2aとが接続され、油圧アクチュエータ2の第2ポート(本実施形態において、ロッド側ポート)2bとタンク12とが接続される。この際、吐出ポート11bと第1ポート2aとの間はスプール21aの位置に応じた開度で繋がり、スプール21aの位置(ストローク量)に応じた流量の作動油が第1ポート2aに導かれる。これにより、スプール21aの位置に応じた速度で油圧アクチュエータ2が伸長する。他方、スプール21aが第2オフセット位置M2に位置すると、メインポンプ11の吐出ポート11bと油圧アクチュエータ2の第2ポート2bとが接続され、また油圧アクチュエータ2の第1ポート2aとタンク12とが接続される。この際、吐出ポート11bと第2ポート2bとの間はスプール21aの位置に応じた開度で繋がり、スプール21aの位置に応じた流量の作動油が第2ポート2bに導かれる。これにより、スプール21aの位置に応じた速度で油圧アクチュエータ2が収縮する。
【0033】
このように構成される流量制御弁21は、2つのばね31L,31Rを更に有しており、2つのばね31L,31Rは、互いに抗するようにスプール21aを付勢してスプール21aを中立位置M0に維持している。また、流量制御弁21は、2つのパイロットポート21R,21Lを有しており、各々にパイロット圧piR,piLが入力されるようになっている。第1パイロットポート21Rは、そこに入力される第1パイロット圧piRが第1のばね31Lに抗するようにスプール21aに作用するように形成されており、スプール21aは、第1パイロット圧piRによって第1オフセット位置M1の方に押圧されるようになっている。また、第2パイロットポート21Lは、そこに入力される第2パイロット圧piLが第2のばね31Rに抗するようにスプール21aに作用するように形成されており、スプール21aは、第2パイロット圧piLによって第2オフセット位置M2の方に押圧されるようになっている。それ故、スプール21aは、そこに作用する2つのパイロット圧piR,piLの差圧に応じた位置へと移動し、その位置に応じた方向かつ流量の作動油を油圧アクチュエータ2に流すようになっている。このように入力される2つのパイロット圧piR,piLは、サブポンプ13から吐出されるサブポンプ吐出圧ppから生成されており、2つのパイロット圧piR,piLを生成すべくサブポンプ13にはサブ通路20を介して2つの電磁比例制御弁22R,22Lが並列に接続されている。
【0034】
2つの電磁比例制御弁22R,22Lのうちの一方である第1電磁比例制御弁22Rでは、一次圧ポートがサブポンプ13及びタンク12の何れかに選択的に接続され、二次圧ポートが第1切換弁24Rに接続されている。また、第1電磁比例制御弁22Rには、そのソレノイド部22Raに電流を流す(即ち、第1指令信号を入力する)ことができるようになっており、ソレノイド部22Raに流す電流に応じて開度を切換えるようになっている。即ち、第1電磁比例制御弁22Rは、正比例型の電磁比例制御弁であり、ソレノイド部22Raに電流を流すことによってサブポンプ13と二次圧ポートとが接続され、サブポンプ13と二次圧ポートとの間がソレノイド部22Raに流れる電流に応じた開度で開かれる。他方、ソレノイド部22Raに流れる電流が止められると、サブポンプ13と弁二次圧ポートとの間が遮断されて弁二次圧ポートがタンク12と接続される。このように構成されている第1電磁比例制御弁22Rは、サブポンプ吐出圧ppをソレノイド部22Raに流される電流に応じた圧力(第1出力圧psR)に減圧制御して二次圧ポートに出力する。
【0035】
2つの電磁比例制御弁22R,22Lのうちの他方である第2電磁比例制御弁22Lは、第1電磁比例制御弁22Rと同様の構造を有しており、一次圧ポートがサブポンプ13及びタンク12の何れかに選択的に接続され、二次圧ポートが第2切換弁24Lに接続されている。即ち、第2電磁比例制御弁22Lは、正比例型の電磁比例制御弁であり、ソレノイド部22Laに電流を流すことによってサブポンプ13と二次圧ポートとが接続され、サブポンプ13と二次圧ポートとの間がソレノイド部22Laに流れる電流に応じた開度で開かれる。他方、ソレノイド部22Laに流れる電流が止められると、サブポンプ13と二次圧ポート弁との間が遮断されて二次圧ポート弁がタンク12と接続される。このように構成されている第2電磁比例制御弁22Lは、サブポンプ吐出圧ppをソレノイド部22Laに流される電流に応じた圧力(即ち、第2出力圧psL)に減圧制御して二次圧ポートに出力する。
【0036】
このような構成されている2つの電磁比例制御弁22R,22Lは、以下のような機能を有する。即ち、2つの切換弁24R,24Lの各々には、2つの電磁比例制御弁22R,22Lから出力される出力圧psR,psLが入力されるようになっている。また、第1切換弁24Rには、第1電磁比例制御弁22Rの二次圧ポートの他にサブポンプ13及び流量制御弁21の第1パイロットポート21Rが接続され、第2切換弁24Lには、第2電磁比例制御弁22Lの二次圧ポートの他にサブポンプ13及び流量制御弁21の第2パイロットポート21Lが接続されている。このように接続されている第1切換弁24R及び第2切換弁24Lは、以下のように構成されている。
【0037】
第1切換弁24Rは、第1パイロット通路23Rを介して流量制御弁21の第1パイロットポート21Rに接続され、流量制御弁21に入力される第1パイロット圧piRを切換えるようになっている。即ち、第1切換弁24Rは、第1位置M1R及び第2位置M2Rとの間で移動可能なスプール24Raを有しており、スプール24Raが第1位置M1Rに位置する状態で第1電磁比例制御弁22Rの二次ポートと第1パイロットポート21Rとを接続する。これにより、第1電磁比例制御弁22Rの二次圧である第1出力圧psRが第1パイロット圧piRとして流量制御弁21に出力される。他方、スプール24Raが第2位置M2Rに位置する状態では、サブポンプ13と第1パイロットポート21Rとが接続され、サブポンプ13のサブポンプ吐出圧ppが第1パイロット圧piRとして流量制御弁21に出力される。
【0038】
また、第2切換弁24Lは、第2パイロット通路23Lを介して流量制御弁21の第2パイロットポート21Lに接続され、流量制御弁21に入力される第2パイロット圧piLを切換えるようになっている。即ち、第2切換弁24Lは、第1位置M1L及び第2位置M2Lとの間で切換可能なスプール24Laを有しており、スプール24Laが第1位置M1Lに位置する状態で第2電磁比例制御弁22Lの第2出力圧pslと第2パイロットポート21Lとを接続する。これにより、第2電磁比例制御弁22Lの第2出力圧psLが第1パイロット圧piLとして流量制御弁21に出力される。他方、スプール24Laが第2位置M2Lに位置する状態では、サブポンプ13と第2パイロットポート21Lとが接続され、サブポンプ吐出圧ppが第2パイロット圧piLとして流量制御弁21に出力する。
【0039】
また、第1パイロット通路23Rは、その途中で分岐するように第1油通路25Rに接続され、第1油通路25Rは、第2切換弁24Lに接続されている。第1油通路25Rは、第2切換弁24Lのスプール24Laに第1パイロット圧piRを与える。また、第2切換弁24Lのスプール24Laには、第1パイロット圧piRに抗する方向に第2電磁比例制御弁22Lから出力される第2出力圧psLが作用している。それ故、第2切換弁24Lのスプール24Laは、第2出力圧psLと第1パイロット圧piRとの差圧に応じて移動し、その位置を切換えるようになっている。また、第2切換弁24Lのスプール24Laには、第1パイロット圧piRに抗する方向に付勢力を与えるばね24Lbが設けられている。それ故、スプール24Laは、第1パイロット圧piRから第2出力圧psLを減算して得られる差圧が第2所定圧力ps2未満である場合、第1位置M1Lに位置し、第2出力圧psLを第2パイロット圧piLとして流量制御弁21に出力される。他方、前記差分が第2所定圧力ps2以上である場合、スプール24Laが第2位置M2Lに位置する。これにより、サブポンプ吐出圧ppが第2パイロット圧piLとして流量制御弁21に出力される。
【0040】
なお、第2所定圧力ps2は、スプール24Laを付勢するばね24Lbの付勢力に応じて決まる圧力であって、以下のように設定されている。即ち、第2所定圧力ps2は、第1パイロット圧piRをスプール21aに作用させてスプール21aを最大ストローク量までストロークさせるのに必要な圧力pm1より大きく且つサブポンプ吐出圧ppより小さい圧力に設定されている。なお、本実施形態において、第2所定圧力ps2は、第1所定圧力ps1と同じ圧力に設定されている。
【0041】
また、第2パイロット通路23Lは、その途中で分岐するように第2油通路25Lに接続され、第2油通路25Lは第1切換弁24Rに接続されている。第2油通路25Lは、第1切換弁24Rのスプール24Raに第2パイロット圧piLを与える。また、第1切換弁24Rのスプール24Raには、第2パイロット圧piLに抗する方向に第1電磁比例制御弁22Rから出力される第1出力圧psRが作用している。それ故、第1切換弁24Rのスプール24Raは、第1出力圧psRと第2パイロット圧piLとの差圧に応じて移動し、その位置を切換えるようになっている。また、第1切換弁24Rのスプール24Raには、第2パイロット圧piLに抗する方向に付勢力を与えるばね24Rbが設けられている。それ故、スプール24Raは、第2パイロット圧piLから第1出力圧psRを減算して得られる差圧が第1所定圧力ps1未満であると第1位置M1Rに位置し、第1出力圧psRを第1パイロット圧piRとして流量制御弁21に出力する。他方、前記差分が第1所定圧力以上である場合、スプール24Raが第2位置M2Rに位置する。これにより、サブポンプ吐出圧ppが第1パイロット圧piRとして流量制御弁21に出力される。
【0042】
なお、第1所定圧力ps1は、スプール24Raを付勢するばね24Rbの付勢力に応じて決まる圧力であって、以下のように設定されている。即ち、第1所定圧力ps1は、第2パイロット圧piLをスプール21aに作用させてスプール21aを最大ストローク量までストロークさせるのに必要な圧力pm2より大きく且つサブポンプ13の吐出圧ppより小さい圧力に設定されている(
図2のグラフ参照)。なお、
図2のグラフは、横軸にパイロット圧piR,piL、縦軸にスプール24Raのストローク量が示されている。
【0043】
このように構成されている油圧駆動装置14は、前述の通り、2つの電磁比例制御弁22R,22Lに電流を流すことができるようになっており、電流を流すことによって流量制御弁21のスプール21aの位置を制御するようになっている。このように構成される2つの電磁比例制御弁22R,22Lには、それらに電流を流してそれらの動きを制御すべく制御ユニット26が電気的に接続され、また制御ユニット26には、操作装置27が電気的に接続されている。操作装置27は、操作レバー27aを有しており、操作レバー27aは、互いに相反する第1方向A1及び第2方向A2に操作可能(より具体的には、傾倒可能)に構成されている。また、操作装置27は、操作レバー27aの操作方向及び操作量(即ち、傾倒量)に応じた操作指令を制御ユニット26に出力するようになっている。
【0044】
制御ユニット26は、第1電磁比例制御弁22R、第2電磁比例制御弁22L、及びレギュレータ15に電気的に接続され、操作装置27からの操作指令に応じてこれらの動きを制御するようになっている。即ち、制御ユニット26は、レギュレータ15を作動させ、斜板11dの傾転角を操作レバー27aの操作量に応じた傾転角に調整する。また、制御ユニット26は、操作レバー27aの操作方向に応じて2つの電磁比例制御弁22R,22Lの何れかを制御し、操作レバー27aの操作方向に応じた方向で且つ操作量に応じた流量の作動油を油圧アクチュエータ2に供給するようになっている。
【0045】
また、制御ユニット26は、第1電磁比例制御弁22R及び第2電磁比例制御弁22Lの故障を検出すべく、以下のように動作している。即ち、制御ユニット26は、第1電磁比例制御弁22R及び第2電磁比例制御弁22Lへ流れる電流の値を検出し、電磁比例制御弁22R,22Lの配線経路(即ち、第1及び第2電磁比例制御弁22R、22Lの各々に対して、制御ユニット26に繋がるハーネス、接続部分、及びソレノイド部22Ra,22La)の通電状態を検出し、各配線経路における通電不良(即ち、配線経路における断線及びショートの発生)を検知している。更に、制御ユニット26は、図示しない圧力センサを用いてメインポンプ11の吐出圧pを検出し、検出した吐出圧pと操作レバー27aの操作量との関係から第1電磁比例制御弁22R及び第2電磁比例制御弁22Lの弁体が供給した電流値に応じた動作をしているか否か(即ち、スティックの発生の有無)を検知できるようになっている。
【0046】
[油圧駆動システムの動作]
以上のように構成される油圧駆動システム1は、操作レバー27aの操作量に応じた方向且つ流量の作動油を油圧アクチュエータ2に供給することができる。即ち、操作レバー27aの操作量に応じた方向、且つ速度で油圧アクチュエータ2を駆動することができる。例えば、操作レバー27aが第2方向に操作されると、操作される方向及び操作レバー27aの操作量に応じた操作指令が操作装置27から制御ユニット26に出力される。制御ユニット26は、この操作指令に応じた電流を第2電磁比例制御弁22Lのソレノイド部22Laに流す。これにより、操作レバー27aの操作量に応じた第2出力圧psLが第2電磁比例制御弁22Lから第2切換弁24Lに出力される。
【0047】
第2切換弁24Lでは、そのスプール24Raが第1出力圧psRと第2パイロット圧piLとの差圧に応じて位置を変える。第1パイロット圧piRは、第1電磁比例制御弁22Rの第1出力圧psR及び第1切換弁24Rのスプール24Raの位置に応じて変動する。操作レバー27aが第2方向に操作された場合、第1出力圧psRは基本的にタンク圧となっており、第1切換弁24Rのスプール24Raの位置は、第2パイロット圧piLが第1所定圧力ps1以上か否かによって決まる。前述の通り、流量制御弁21のスプール21aは、第2パイロット圧piLが圧力pm2に達すると最大ストローク量までストロークするようになっている。それ故、制御ユニット26は、後述するような場合(即ち、第2電磁比例制御弁22Lの故障)を除いて、第2出力圧psLが0≦psL≦pm2の範囲内となるように制御されており、その結果第2パイロット圧piLが0≦piL≦pm2の範囲内で制御されている。即ち、第2パイロット圧piLは、基本的に第1所定圧力ps1未満となっており、第1切換弁24Rのスプール24Raは第1位置M1Rに位置し、第1パイロット圧piRはタンク圧にて維持されている。
【0048】
第1パイロット圧piRがタンク圧に維持されることによって、第1パイロット圧piRから第2出力圧psLを減算した差圧が第2所定圧力ps2未満となり、第2切換弁24Lのスプール24Laもまた第1位置M1Lに位置する。これにより、第2出力圧psLが第2パイロット圧piLとして第2切換弁24Lから流量制御弁21に出力され、流量制御弁21のスプール21aが第2パイロット圧piLに応じた位置、即ち操作レバー27aの操作量に応じた位置に移動する。移動することによって操作レバー27aが操作された方向、即ち油圧アクチュエータ2の第2ポート2bに操作レバー27aの操作量に応じた流量の作動油が導かれる。これによって、操作レバー27aの操作量に応じた速度で油圧アクチュエータ2を収縮させることができる。
【0049】
なお、操作レバー27aが第1方向に操作される場合については、第2方向に操作される場合と同様の動作であるので詳しくは説明しないが、第1方向に操作される場合もまた操作装置27から制御ユニット26に操作指令が出力される。制御ユニット26は、この操作指令に応じた電流を第1電磁比例制御弁22Rのソレノイド部22Raに流す。そうすると、第1出力圧psRは、第1切換弁24Rを介して流量制御弁21に出力され、即ち、第1出力圧psRが第1パイロット圧piRとして流量制御弁21に入力される。これにより、操作レバー27aが第1方向に操作された場合、油圧アクチュエータ2の第1ポート2aに操作レバー27aの操作量に応じた流量の作動油が導かれる。これによって、操作レバー27aの操作量に応じた速度で油圧アクチュエータ2を伸長させることができる。
【0050】
[故障時の動作]
このように動作する油圧駆動システム1は、第1電磁比例制御弁22R及び第2電磁比例制御弁22Lの何れかが故障した場合において、以下のように動作するようになっている。ここで故障としては、通電不良及び弁体のスティックに起因して第2電磁比例制御弁22Lの第2出力圧psL(又は第1電磁比例制御弁22Rの第1出力圧psR)がゼロに維持されるような故障、並びに弁体のスティックに起因して第2電磁比例制御弁22Lの第2出力圧psL(又は第1電磁比例制御弁22Rの第1出力圧psR)がサブポンプ吐出圧ppに維持されるような故障が想定される。以下では、第2電磁比例制御弁22Lの第2出力圧psL(又は第1電磁比例制御弁22Rの第1出力圧psR)がゼロに維持されるような故障であって、第2電磁比例制御弁22L(又は第1電磁比例制御弁22R)の配線経路に故障(即ち、断線及びショート)が生じて第2電磁比例制御弁22L(又は第1電磁比例制御弁22R)に通電できない場合を例にして説明する。
【0051】
なお、油圧駆動システム1では、第1電磁比例制御弁22R及び第2電磁比例制御弁22Lの何れか一方において配線経路に故障が生じた場合でも、故障が生じていない他方を作動させることによって油圧アクチュエータ2を駆動させるようになっている。それ故、以下では第2電磁比例制御弁22Lの配線経路に故障が生じて通電できない場合について説明し、第1電磁比例制御弁22Rの配線経路に故障が生じて通電できない場合については説明を省略する。
【0052】
制御ユニット26は、第2電磁比例制御弁22Lに通電する際の電流の値を検知している。それ故、操作指令に応じた指令電流(即ち、前記制御ユニットが指示した電流値)と実際に検知された電流の値(即ち、第2電磁比例制御弁に実際に流れた電流値)とが異なる場合、例えば第2電磁比例制御弁22Lに通電しようとしいるにもかかわらず電流の値が検知されない場合、制御ユニット26は、第2電磁比例制御弁22Lにおける配線経路に故障があると判断する。配線経路に故障が生じた場合、第2電磁比例制御弁22Lが正比例型の電磁弁であるので、操作レバー27aの操作に関わらず第2切換弁24Lとタンク12とが連通している状態が維持されている。他方、第1電磁比例制御弁22Rが正常に動作する場合には、第1出力圧psRが0≦psR≦pm1の範囲内で制御可能であるので、第2切換弁24Lのスプール24Laは第1位置M1Lにて留めることができる。即ち、第2パイロット圧piLがタンク圧に維持されている。それ故、操作レバー27aが第1方向に操作された場合、制御ユニット26は、第2電磁比例制御弁22Lにおける配線経路に故障が生じていない場合と同様に、0≦psR≦pm1の範囲内で第1電磁比例制御弁22Rを制御し、操作レバー27aの操作量に応じた速度で油圧アクチュエータ2を伸長させることができる(
図3のグラフの有効パイロット範囲(0≦psR≦pm1)を参照)。なお、
図3は、横軸が出力圧psRを示し、縦軸の上側が第1パイロット圧piRを示し、縦軸の下側が第2パイロット圧piLを示している。
【0053】
他方、操作レバー27aが第2方向に操作された場合には、第2電磁比例制御弁22Lに通電できないので、制御ユニット26は、第1電磁比例制御弁22Rを用いて以下のように油圧アクチュエータ2を収縮させる。即ち、制御ユニット26は、操作レバー27aが第2方向に操作されて操作装置27から操作信号を受けると、第1出力圧psRが第2所定圧力ps2以上となるように第1電磁比例制御弁22Rの動作を制御する。これにより、第2所定圧力ps2以上の第1出力圧psRが第1パイロット圧piRとして第1切換弁24Rから出力され、第1パイロット圧piRが第2所定圧力ps2以上となる。また、第1パイロット圧piRが第2所定圧力ps2以上となることによって、第2切換弁24Lのスプール24Laが第2位置M2Lに移動し、第2切換弁24Lによってサブポンプ13と流量制御弁21の第2パイロットポート21Lとが繋がる。即ち、サブポンプ13のサブポンプ吐出圧ppが第2パイロット圧piLとして第2切換弁24Lから出力される。これにより、流量制御弁21のスプール21aには、第1パイロット圧piRより大きい第2パイロット圧piLを第1パイロット圧piRに抗するように作用させることができ、その差圧に基づいてスプール21aを第2オフセット位置M2の方へと移動させることができる。即ち、操作レバー27aの第2方向への操作に応じて油圧アクチュエータ2の第2ポート2bに作動油を流してシリンダを収縮させることができる。
【0054】
また、制御ユニット26は、
図3のグラフに示すように操作レバー27aの操作量に応じて出力圧psRを制御し、操作レバー27aの操作量に応じた流量の作動油が油圧アクチュエータ2に流れるようにスプール21aの位置を調整する。即ち、スプール21aは、2つのパイロット圧piR,piLの差圧に応じた位置に移動するようになっており、第1出力圧psRを調整することによって2つのパイロット圧piR,piLの差圧Δp(
図3の二点鎖線)を調整して操作レバー27aの操作量に応じた位置、即ち第2オフセット位置M2の方へとスプール21aを移動させる。
【0055】
例えば、油圧駆動システム1において、第2電磁比例制御弁22Lが正常に動作する場合、操作レバー27aの操作量に対して第2電磁比例制御弁22Lから圧力値pxの出力圧psLが出力されるとする。制御ユニット26は、第2電磁比例制御弁22Lが故障した場合も前述する操作量に対して同様のストローク量分だけスプール21aを移動させるべく、2つのパイロット圧piL,piRの差圧(より詳細には、第2パイロット圧piLから第1パイロット圧piRを減算して得られる差圧)が圧力値pxとなるように調整した出力圧psRを第1電磁比例制御弁22Rから出力させる。即ち、制御ユニット26は、サブポンプ吐出圧ppとの差分が圧力値pxとなるように出力圧psRを調整する。これにより、第2電磁比例制御弁22Lが故障した場合でも、操作レバー27aの操作量に応じた速度で油圧アクチュエータ2を収縮させることができる。
【0056】
なお、
図3の二点鎖線(前述する差分)からわかるように、第2電磁比例制御弁22Lが通電不良になった場合において、操作レバー27aが第2方向に操作される場合(即ち、ps2≦psR≦pp)、第1出力圧psRとスプール21aの位置との関係が逆比例の関係を有している。即ち、制御ユニット26が第1電磁比例制御弁22Rに通電して開度を最も大きくた状態(即ち、第1出力圧psRをサブポンプ吐出圧ppと同圧になる状態)においてスプール21aが中立位置に位置する。また、その状態から制御ユニット26が第1電磁比例制御弁22Rに流す電流を小さくして前記開度を小さくすることによって、スプール21aの第2オフセット位置M2への方向のストローク量が増加し、第1出力圧psRが第2所定圧力ps2と同圧となった際にストローク量が最大となる。
【0057】
また、本実施形態の油圧駆動システム1は、前述する機能をあくまでフェールセーフ機能として備えているので、以下のように構成されている。即ち、本実施形態の油圧駆動システム1では、第2電磁比例制御弁22Lが通電不良になった場合において、第2パイロット圧piLを0≦piL≦pp−ps2の範囲で変動させることが可能である。それ故、サブポンプ吐出圧ppから第2所定圧力ps2を減算した値が前述する圧力pm2より小さくなるように、サブポンプ吐出圧pp及び第2所定圧力ps2を設定する。これにより、第2電磁比例制御弁22Lが故障した場合において、スプール21aの最大ストローク量を制限することができ、操作レバー27aの操作量が所定量を超えて操作された際に操作量に対する速度を比例せずに一定速に制限することができる。また、このようにすれば、部品を追加することなく、運転者に比例弁の故障を知らせることができる。なお、サブポンプ吐出圧ppから第2所定圧力ps2を減算した値を圧力pm2より大きくしてもよい、その場合には故障時においても操作レバー27aの操作量に対して速度が制限されない油圧駆動システム1を構成することができる。
【0058】
このように油圧駆動システム1では、第1電磁比例制御弁22Rが故障していない正常な状態において出力しても有効に使われない第1規定圧力pm1以上の第1出力圧psRを出力することによって、第2電磁比例制御弁22Lにおける配線経路に故障が生じた場合にも第1電磁比例制御弁22Rによって油圧アクチュエータ2を伸長させるだけでなく収縮させることを可能にしている。それ故、油圧駆動システム1では、第2電磁比例制御弁22Lにおける配線経路に故障が生じた場合でもフェールセーフを達成することができ、信頼性の高い油圧駆動システム1を実現することができる。また、切換弁24R,24Lを追加するだけの構成であるので、フェールセーフを達成しつつ油圧駆動システム1のコスト増加を抑えることができる。
【0059】
また、油圧駆動システム1では、第1規定圧力pm1を第2所定圧力ps2より小さく設定することによって、第2電磁比例制御弁22Lが通電不良である状態において、第1パイロット圧piRを第1規定圧力pm1まで昇圧してもサブポンプ吐出圧ppが第2パイロット圧piLとして出力されることがない。それ故、第2電磁比例制御弁22Lが通電不良である状態においても、スプール21aを第1オフセット位置M1に向かって最大ストローク量までストロークさせることができる。即ち、第2電磁比例制御弁22Lが通電不良である状態において、スプール21aを第1オフセット位置M1に移動させる際に油圧駆動装置14の機能が低下することを抑えることができる。
【0060】
次に、第2電磁比例制御弁22Lの第2出力圧psL(又は第1電磁比例制御弁22Rの第1出力圧psR)がゼロに維持されるような故障として、その出力側とタンク12とが連通した状態のままで第2電磁比例制御弁22L(又は第1電磁比例制御弁22R)の弁体がスティックする場合について説明する。この場合もまた、前述するような第2電磁比例制御弁22Lに対して通電ができない場合と同じ制御を実行することによって、操作レバー27aの操作量に応じて油圧アクチュエータ2を収縮させることができる。なお、第1電磁比例制御弁22R及び第2電磁比例制御弁22Lがその出力側とタンク12とが連通した状態のまま弁体がスティックしているか否かは、第1電磁比例制御弁22R及び第2電磁比例制御弁22Lに対する通電状態を検知しつつ、操作レバー27aの操作量とメインポンプ11の吐出圧pとの関係から検知することができる。
【0061】
最後に、油圧駆動システム1において、第1電磁比例制御弁22R及び第2電磁比例制御弁22Lの何れか一方の弁体が、その出力側とサブ通路20とを連通させた状態のままスティックした場合について説明する。なお、第1電磁比例制御弁22R及び第2電磁比例制御弁22Lの何れがスティックした場合であっても、スティックしていない他方によってフェールセーフを達成することができる。それ故、配線経路の故障に関する説明と同様、第2電磁比例制御弁22Lの弁体がその出力側とサブ通路20とを連通させた状態のままでスティックした場合についてのみ説明する。
【0062】
第2電磁比例制御弁22Lでは、その出力側とその一次圧を与えるサブ通路20とを連通させた状態で弁体がスティックすると、第2電磁比例制御弁22Lの第2出力圧psLがサブポンプ吐出圧ppと等しくなる。そのため、第2切換弁24Lのスプール24Laは、第1パイロット圧piRの大きさに関係なく第1位置M1Lに位置し、サブポンプ吐出圧ppに等しい第2出力圧psLが第2パイロット圧piLとして流量制御弁21に出力される。他方、第1切換弁24Rのスプール24Raは、第1電磁比例制御弁22Rに通電されていない状態でサブポンプ吐出圧ppに等しい第2出力圧psLが第2パイロット圧piLとして出力されることによって第2位置M2Rに移動する。これにより、第1パイロット圧piRとしてサブポンプ吐出圧ppが流量制御弁21に出力される。そうすることで、流量制御弁21のスプール21aに同圧の第1パイロット圧piR及び第2パイロット圧piLが互いに抗するように作用し、スプール21aが中立位置M0に保持される。その結果、作動油が油圧アクチュエータ2に導かれて不所望な動きをすることを防ぐことができ、フェールセーフを達成することができる。
【0063】
[その他の実施形態]
本実施形態の油圧駆動システム1は、1つの油圧アクチュエータ2にしか接続されていないが、前述の通り接続される油圧アクチュエータは1つに限定されない。例えば、油圧駆動システム1が2つ以上の油圧アクチュエータに接続されていてもよく、それに応じて複数の流量制御弁21を有していてもよい。この場合、複数の流量制御弁21は、例えばメインポンプ11に対して並列して接続され、流量制御弁21の各々に対して第1電磁比例制御弁22R、第2電磁比例制御弁22L、第1切換弁24R、及び第2切換弁24Lが夫々設けられている。これにより、複数の流量制御弁21を備える油圧駆動システムもまた前述する場合と同様の機能を達成する。また、油圧駆動システム1では、流量制御弁21の何れのポート21R,21Lにも切換弁24R,24Lが設けられているが、必ずしも両方設けられている必要はなく何れか一方だけであってもよい。
【0064】
また、本実施形態の油圧駆動システム1では、一定の設定圧を供給する圧力源がサブポンプ13及びリリーフ弁28によって構成されているが、必ずしもこのような構成である必要なない。例えば、メインポンプ11及び減圧弁によって圧力源を構成し、メインポンプ11と流量制御弁21とを繋ぐメイン通路から減圧弁を介してサブ通路20に一定の設定圧を供給するようにしてもよい。
【0065】
更に、本実施形態の油圧駆動システム1では、電磁比例制御弁22R,22Lにおける故障が発生した後において油圧アクチュエータ2の最大速度を制限し、故障発生前後における操作レバー27aの操作量と油圧アクチュエータ2の速度との関係が変化しないように制御ユニット26が構成されている。しかし、制御ユニット26は、必ずしもこのように構成されている必要はない。即ち、故障発生後においても操作レバー27aの操作量を最大にすると、故障発生前と同様の最大速度にて油圧アクチュエータ2が駆動できるように操作レバー27aの操作量と油圧アクチュエータ2の速度との対応関係を変えるようにしてもよい。この場合、サブポンプ吐出圧ppは、第1所定圧力ps1に第2規定圧力pm2を加算した圧力,第2所定圧力ps2に第1規定圧力pm1を加算した圧力の高い方とする必要がある。
【0066】
更に、本実施形態の油圧駆動システム1では、油圧アクチュエータ2として油圧シリンダが採用されているが、必ずしも油圧シリンダに限定されない。即ち、油圧アクチュエータ2は、油圧モータであってもよく、作動油などの作動油を供給することによって作動するものであればよい。