特許第6941013号(P6941013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6941013
(24)【登録日】2021年9月7日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】タイヤ評価装置及びタイヤ評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20210916BHJP
   G01M 9/04 20060101ALI20210916BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   G01M17/02
   G01M9/04
   B60C19/00 H
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-178234(P2017-178234)
(22)【出願日】2017年9月15日
(65)【公開番号】特開2019-52980(P2019-52980A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 宏典
【審査官】 萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−005444(JP,U)
【文献】 実開平04−138260(JP,U)
【文献】 実開昭63−193343(JP,U)
【文献】 特許第5945314(JP,B2)
【文献】 米国特許第05127264(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/02
G01M 9/00 − 9/08
B60C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風洞と、
前記風洞内でタイヤを保持し、かつ回転させる回転装置と、
前記風洞に対して空気を送り込み、前記風洞内に空気流を発生させる送風装置と、
前記風洞内に配置された金属線と、
前記金属線に通電するための通電装置と
風洞内を撮影する撮影装置と
を備え、
前記金属線は、
ループ部と、
前記ループ部の基端に設けられ、前記金属線が互いに接触する接触部と
を備え、
前記ループ部内に、昇温により発熱する発煙性材料が保持されている、タイヤ評価装置。
【請求項2】
前記接触部は、前記ループ部に対して前記空気流の下流側に位置する、請求項1に記載のタイヤ評価装置。
【請求項3】
前記発煙性材料は、昇温により発煙する発煙性液状材料に、粘性付与材料を添加したものである、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ評価装置。
【請求項4】
前記発煙性液状材料は流動パラフィンである、請求項3に記載のタイヤ評価装置。
【請求項5】
粘性付与材料は粉体材料である、請求項3又は請求項4に記載のタイヤ評価装置。
【請求項6】
前記粉体材料は滑石、又は窒化ホウ素である、請求項5に記載のタイヤ評価装置。
【請求項7】
前記発煙性材料の粘度は2Pa・s以上12Pa・s以下である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のタイヤ評価装置。
【請求項8】
前記接触部は、前記ループ部の前記基端において、前記金属線に設けられた撚り部である、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のタイヤ評価装置。
【請求項9】
前記金属線は、前記回転装置に保持された前記タイヤに対して前記空気流の上流側において、前記風洞内に張られている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のタイヤ評価装置。
【請求項10】
前記金属線は、前回転装置に保持された前記タイヤを取り囲むように配置されている、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のタイヤ評価装置。
【請求項11】
空洞内に配置したタイヤを回転させ、
前記風洞内に空気流を発生させ、
前記風洞内に配置された金属線に通電して、前記金属線に保持された発煙性材料を加熱して煙を発生させ、
風洞内の少なくとも前記タイヤの周囲の領域を撮影し、
前記金属線は、ループ部と、前記ループ部の基端に設けられ、前記金属線が互いに接触する接触部とを備え、前記発煙性材料は前記ループ部内に保持されている、タイヤ評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ評価装置及びタイヤ評価方法に関する。
【0002】
風洞試験装置で空気流を可視化する手法の一つとして、スモークワイヤ法が知られている(例えば、特許文献1参照)。従来のスモークワイヤ法では、気流中に張った金属線の表面に流動パラフィンのような液状の発煙性材料を塗布し、通電による金属線の発熱によって発煙性材料を昇温させて煙を生じさせる。この煙によって空気流が可視化される。スモークワイヤ法は、タイヤの評価、具体的にはタイヤの周囲の空気流の評価に適用し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−264397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスモークワイヤ法では、発煙性材料は金属線に塗布されているので、発煙性材料の量が少なく、煙発生時間が短い。また、金属線に塗布された発煙性材料から連続的に煙が発生するので、空気流の流線は可視化できるが、空気流の流速に関する情報を得ることは困難である。これらの理由で、従来のスモークワイヤ法をタイヤの評価に適用した場合、タイヤの周囲の空気流を高精度で評価することは困難である。
【0005】
本発明は、タイヤの周囲の空気流をより高精度で評価することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、風洞と、前記風洞内でタイヤを保持し、かつ回転させる回転装置と、前記風洞に対して空気を送り込み、前記風洞内に空気流を発生させる送風装置と、前記風洞内に配置された金属線と、前記金属線に通電するための通電装置と風洞内を撮影する撮影装置とを備え、前記金属線は、ループ部と、前記ループ部の基端に設けられ、前記金属線が互いに接触する接触部とを備え、前記ループ部内に、昇温により発熱する発煙性材料が保持されている、タイヤ評価装置を提供する。
【0007】
通電装置によって通電された金属線が発熱し、この熱によって発煙性材料から煙が発生する。煙によって可視化された空気流の流線を撮影装置で撮影することによって、タイヤの周囲の空気流を評価できる。
【0008】
発煙性材料は金属線の表面に塗布されているのではなく、ループ部内に保持されている。金属線の表面に塗布するのではなく、ループ部内に保持することで、発煙に供する発煙性材料の量を増やすことができる。その結果、煙発生時間、従って煙によって可視化された空気流の流線の撮影時間を延ばすことができる。
【0009】
ループ部内に保持された発煙性材料から切れ目のなく連続的に煙が発生するのではなく、ループ部内に保持された発煙性材料から短い時間間隔で、断続的ないし非連続的にドット状の煙が発生する。そのため、空気流の流線を可視化できるだけでなく、空気流の速度に関する情報を得ることができる。
【0010】
金属線の表面に発煙性液状材料を塗布する従来のスモークワイヤ法では、発生する煙の形状の制御と、金属線のどの位置で煙を発生させるかの制御が困難である。これに対して、本発明に係るタイヤ評価装置では、ループ部内に保持された発煙性材料のみから煙が発生するので、発生する煙の形状の制御と、金属線のどの位置で煙を発生させるかの制御が容易である。
【0011】
金属線の表面に発煙性液状材料を塗布する従来のスモークワイヤ法では、空気流の流速が速いと、空気流によって発煙性液状材料が金属線から吹き飛ばされやすい。これに対して、本発明に係るタイヤ評価装置では、発煙性材料は単に金属線の表面に塗布されているのではなく、ループ部内に保持されている。そのため、比較的高流速であっても、発煙性材料が空気流によって金属線から吹き飛ばされることがなく、空気流の流速は5m/分程度であっても使用できる。
【0012】
前記接触部は、前記ループ部に対して前記空気流の下流側に位置する。
【0013】
前記発煙性材料は、昇温により発煙する発煙性液状材料に、粘性付与材料を添加したものである。
【0014】
前記発煙性液状材料は、例えば流動パラフィンである。
【0015】
粘性付与材料は、例えば粉体材料である。
【0016】
前記粉体材料は、例えば滑石、又は窒化ホウ素である。
【0017】
前記発煙性材料の粘度は2Pa・s以上12Pa・s以下が好ましい
【0018】
前記接触部は、前記ループ部の前記基端において、前記金属線に設けられた撚り部である。
【0019】
前記金属線は、前記回転装置に保持された前記タイヤに対して前記空気流の上流側において、前記風洞内に張られてもよい。
【0020】
前記金属線は、前回転装置に保持された前記タイヤを取り囲むように配置されてもよい。
【0021】
本発明の第2の態様は、空洞内に配置したタイヤを回転させ、前記風洞内に空気流を発生させ、前記風洞内に配置された金属線に通電して、前記金属線に保持された発煙性材料を加熱して煙を発生させ、風洞内の少なくとも前記タイヤの周囲の領域を撮影し、前記金属線は、ループ部と、前記ループ部の基端に設けられ、前記金属線が互いに接触する接触部とを備え、前記発煙性材料は前記ループ部内に保持されている、タイヤ評価方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るタイヤ評価装置及びタイヤ評価方法によれば、より高精度でタイヤの周囲の空気流を評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係るタイヤ評価装置を示す模式的な断面図。
図2図1のII−II線に沿った模式的な断面図。
図3図1のIII部の拡大図。
図4図3のIV−IV線に沿った拡大断面図。
図5】ループ部の形成を説明するための模式図。
図6】ドット状の煙の移動を説明するための概念図。
図7】第1実施形態に係るタイヤ評価装置の変形例を示す図2と同様の模式的な断面図。
図8】本発明の第2実施形態に係るタイヤ評価装置を示す模式的な断面図。
図9図8のIX−IX線に沿った模式的な断面図。
図10】第1実施形態に係るタイヤ評価装置の変形例を示す図9と同様の模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
図1及び図2を参照すると、本発明の第1実施形態に係るタイヤ評価装置(風洞試験装置)1は、風洞2、送風装置3、回転装置(保持装置)4、煙発生装置5、ビデオカメラ(撮影装置)6、及びレーザ光発生装置(照明装置)7を備える。
【0025】
本実施形態における風洞2は、底壁2a、頂壁2b、及び一対の側壁2cを備え、風洞2の内部空間8は水平方向(図においてX方向)に延びている。
【0026】
送風装置3は、本実施形態では、風洞2の一端側(図1において右端部側)に配置されており、内部空間8に空気を送り込み、風洞2の他端側(図1において左端部側)に向かう空気流を生じさせる(図1において空気流の向きを矢印Fで示す)。風洞2の他端側に送風装置を配置し、内部空間7の空気を吸引することで矢印Fに示す向きの空気流を生じさせてもよい。
【0027】
回転装置4は、風洞2の外側に位置するベース部4aと、ベース4aから鉛直方向(図においてZ方向)に延びて底壁2aを介して風洞2の内部空間8に進入しているケーシング4bとを備える。内部空間8内に位置するケーシング4bの上端側には、風洞2の幅方向(Y方向)に水平に延びる軸線AX回りに回転する駆動軸4cが設けられている。観察対象であるタイヤ11は、ホイール12に装着されている。ホイール12は駆動軸4cに取り付けられている。つまり、タイヤ11は回転装置4の駆動軸4に固定されることで、風洞2の内部空間に保持されている。ベース部4aにはモータ4dが備えられている。モータ4dの出力軸の回転は、ケーシング4b内に内蔵された伝動機構(図示せず)を介して駆動軸4cに伝達される。従って、タイヤ11は風洞2の内部空間8において駆動軸4dと共に軸線AX回りに回転する(図1の矢印R1,R2参照)。
【0028】
煙発生装置5は、本実施形態では、風洞2の内部空間8に張られた単一の金属細線21と、この金属細線21に通電するための通電装置22とを備える。
【0029】
本実施形態における金属細線21は、鉛直方向(Z方向に)に直線状に延びるように内部空間8に張られており、上端が風洞2の頂壁2b側に位置し、下端が風洞2の底壁2a側に位置している。また、金属細線21は、回転装置4に保持されたタイヤ11よりも空気流の上流側に張られている。金属細線21には、間隔をあけて複数のループ部21aが設けられている。個々のループ部21a内には、昇温により発熱する発煙性材料23が保持されている。金属細線21は、その両端に設けられた端子部24A,24Bが導線25A,25Bを介して通電装置22に電気的に接続されている。本実施形態における通電装置22は、金属細線21に直流電圧を印加する。通電装置22によって通電された金属細線21は抵抗熱を生じ、この抵抗熱によって個々のループ部21aに保持された発煙性材料23から煙が発生する。金属細線21と発煙性材料23については、後に詳述する。
【0030】
ビデオカメラ6は、風洞2の内部空間8のうち、少なくともタイヤ11の周囲の領域を撮影する。つまり、ビデオカメラ6は、発煙性材料23が発生する煙によって可視化されたタイヤ11の周囲の空気流を撮影する。煙によって可視化された空気流の流線をビデオカメラ6で撮影し、撮影された動画像によってタイヤ11の周囲の空気流を評価できる。レーザ光発生装置7が発生するレーザ光の照射方向は、タイヤ11の周囲に向けられている。タイヤ11の周囲の煙にレーザ光が照射されることで、ビデオカメラ6は煙によって可視化されたタイヤ11の周囲の空気流を、より鮮明に撮影できる。
【0031】
以下、金属細線21と発煙性材料23について詳述する。
【0032】
本実施形態では、金属細線21はニクロム線である。金属細線21は単線であっても、撚線であってもよい。金属細線21の直径は、1mm以上20mm以下が好ましく、5mm以上10mm以下がより好ましい。
【0033】
図3から図5を参照すると、本実施形態におけるループ部21aは、金属細線21を巻回した後に、巻回した部分の基端において金属細線21を1回だけ撚ることで形成されている。つまり、ループ部21aの基端には、金属細線21が互いに接触する撚り部(接触部)21bが形成されている。
【0034】
本実施形態におけるループ部21aは楕円状である。ループ部21aは、円形、又は三角形等の多角形であってもよい。また、ループ部21aは、金属細線21を複数回巻回したコイル状であってもよい。ループ部21aの周長は、円形に変形させた直径が1mm以上20mm以下、好ましくは5mm以上10mm以下となるように設定することが好ましい。
【0035】
本実施形態における発煙性材料23は、発煙性液状材料としての流動パラフィンに、粘性付与材料として、粉体材料の一例である滑石を混合し、ループ部21aから脱落しないような粘性を付与したものである。発煙性液状材料は流動パラフィンに限定されず、同様の特性を有する材料であってもよい。粘性付与材料としての粉体材料は、滑石に限定されず、例えば窒化ホウ素(BN)の粉末を採用できる。
【0036】
発煙性材料の粘度は、0.1Pa・s以上100Pa・s以下が好ましく、2Pa・s以上12Pa・s以下がより好ましい。発煙性液状材料の粘度が0.1Pa・s以上100Pa・s以下である場合、2Pa・s以上12Pa・s以下の粘度を有する発煙性材料を得るには、粘性付与材料としての粉体材料の粒子径が2μm以上75μm以下であることが好ましい。
【0037】
通電装置22によって金属細線21に通電すると、金属細線21の発熱によってループ部21a内に保持された発煙性材料23が加熱され、発煙性材料23に含まれる発煙性液状材料が気化して煙が発生する。この際、ループ部21a内に保持された発煙性材料23から切れ目のなく連続的に煙が発生するのではなく、ループ部21a内に保持された発煙性材料23から短い時間間隔で、断続的ないし非連続的にドット状の煙が発生する。図2の符号26は、ドット状の煙の塊を示す(以下、単に「ドット26」という)。ドット26が発生する時間間隔は、40msec程度である。
【0038】
発煙性材料23は金属細線21の表面に塗布されているのではなく、ループ部21a内に塊状で保持されている。そのため、発煙に供する発煙性材料23の量を増やすことができる。その結果、煙発生時間、従って、煙によって可視化された空気流の流線をビデオカメラ6で撮影できる時間を延ばすことができる。
【0039】
金属細線の表面に発煙性液状材料を塗布する従来のスモークワイヤ法では、発生する煙の形状の制御と、金属細線のどの位置で煙を発生させるかの制御が困難である。これに対して、本実施形態における煙発生装置5では、ループ部21a内に保持された発煙性材料23のみから煙が発生するので、発生する煙の形状の制御と、金属細線21のどの位置で煙を発生させるかの制御が容易である。
【0040】
前述のように、ループ部21a内に保持された発煙性材料23から煙のドット26が断続的に発生する理由は、以下の通り推察される。ループ部21aの周辺では金属細線21が互いに接触している撚り部21bの部分で最も電気抵抗が大きいので、通電装置22で金属細線21に通電したときに、抵抗熱の発熱は撚り部21bにおいて最も顕著である。そのため、ループ部21a内の発煙性材料23のうち撚り部21bに最も近い部分において、発煙性材料23に含まれる発煙性液状材料(前述のように、本実施形態では、流動パラフィン)が気化して煙が発生する。この煙発生時、つまり発煙性液状材料の気化時には、気化熱によって撚り部21bの温度が瞬間的に低下し、その結果、煙の発生(発煙性液状材料の気化)が瞬間的に停止する。しかし、抵抗熱によって撚り部21bの温度は瞬間的に再上昇し、発煙性液状材料が気化して、再び煙が発生する。このように、撚り部21bの温度が瞬間的な低下と上昇を繰り返すことで、発煙性材料23から煙のドット26が断続的に発生するものと推察される。
【0041】
発煙性材料23からの煙のドット26の断続的な発生は、ループ部21a内に保持された発煙性材料23に含まれる発煙性液状材料が消費されるまで継続する。発煙性材料23からの煙発生時間は、ループ部21a内に保持されている発煙性材料23の量、従ってループ部21aの大きさに依存し、10秒以上600秒以下程度である。
【0042】
ループ部21a内に保持された発煙性材料23から切れ目のなく連続的に煙が発生するのではなく、ループ部21a内に保持された発煙性材料23から短い時間間隔で、断続的ないし非連続的に煙のドット26が発生する。そのため、空気流の流線を可視化できるだけでなく、空気流の速度に関する情報を得ることができる。例えば、図6は、ビデオカメラ6によって撮影されたある時刻「T秒」の画像における複数のドット26と、時刻「T秒」より1/f秒後(fはビデオカメラのフレームレイト(fps))の「T+1/f秒」の画像における複数のドット26を示す。これら2枚の画像における個々のドット26のX方向の位置を比較することで、空気流のX方向の速度に関する情報を得ることができる。つまり、ビデオカメラ6で撮影することで、空気流の流線に関する情報が得られるだけでなく、空気流の速度に関する情報(例えばタイヤ11の周辺での空気流の速度分布)を得ることができ、高精度でタイヤ11を評価できる。
【0043】
前述のように、撚り部21bで発生する抵抗熱によって、ループ部21a内の発煙性材料23に含まれる発煙性液状材料が気化し、煙のドット26が発生するものと推察される。そのため、安定して煙のドット26を発生させるには、撚り部21bに空気流が直接吹き付けられないことが好ましい。本実施形態では、図3及び図4に最も明瞭に示すように、撚り部21bをループ部21aに対して空気流の下流側に位置させ、それによってループ部21a内の発煙性材料23からの煙のドット26の発生を安定させている。
【0044】
金属細線の表面に発煙性液状材料を塗布する従来のスモークワイヤ法では、空気流の流速が速いと、空気流によって発煙性液状材料が金属細線から吹き飛ばされやすい。これに対して、本実施形態における煙発生装置5では、発煙性材料23は単に金属線の表面に塗布されているのではなく、ループ部21a内に保持されている。そのため、空気流が比較的高流速であっても、発煙性材料23が空気流によって金属線から吹き飛ばされることがない。そのため、本実施形態における煙発生装置5は、空気流の流速が5m/分程度であっても使用できる。発煙性材料23のループ部21aからの脱落を回避するには、発煙性材料23空気流が直接吹き付けられないことが好ましい。そのため、本実施形態では、図4に示すように、ループ部21aが構成する面Sを空気流の向きに対して平行としている。
【0045】
図7は、第1実施形態の変形例を示す。この変形例では、3本の金属細線21が鉛直方向(Z方向)に直線状に延びるように、風洞2の幅方向(Y方向)に間隔をあけて、内部空間8に張られている。鉛直方向に直線状に延びるように内部空間8に張られる金属線21の本数は、2本でもよいし、4本以上であってもよい。また、1本又は複数本の金属線21を、風洞2の幅方向(Y方向)に直線状に延びるように内部空間8に張ってもよい。さらに、1本又は複数本の金属線21を、鉛直方向(Z方向)、風洞2の幅方向(Y方向)、及び風洞2の長手方向(Z方向)のうちの少なくとも一方に対して傾斜させて、直線状に延びるように内部空間8に張ってもよい。
【0046】
(第2実施形態)
図8及び図9を参照すると、本発明の第2実施形態に係るタイヤ評価装置(風洞試験装置)1では、煙発生装置5が備える単一の金属細線21は、回転装置4の駆動軸4cに保持されたタイヤ11のトレッド部を、間隔をあけて取り囲むように配置されている。このように金属細線21を配置することで、タイヤ11の周囲における空気流の形状や速度をより詳細に評価できる。
【0047】
第2実施形態のその他の構成及び作用は、第1実施形態と同様である。
【0048】
図10は、第2実施形態の変形例を示す。この変形例では、3本の金属細線21をタイヤ11の周囲を取り囲むように配置している。タイヤ11の周囲を取り囲むように配置する金属細線21の本数は、2本でもよいし、4本以上であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 タイヤ評価装置
2 風洞
2a 底壁
2b 頂壁
2c 側壁
3 送風装置
4 回転装置
4a ベース部
4b ケーシング
4c 駆動軸
4d モータ
5 煙発生装置
6 ビデオカメラ(撮影装置)
7 レーザ光線発生装置(照明装置)
8 内部空間
11 タイヤ
12 ホイール
21 金属細線(金属線)
21a ループ部
21b 撚り部(接触部)
22 通電装置
23 発煙性材料
24A,24B 端子
25A,25B 導線
26 ドット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10