(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1(a)及び
図1(b)は、第1実施形態に係るセンサを例示する模式図である。
図1(a)は、断面図である。
図1(b)は、平面図である。
図1(b)においては、図を見やすくするように、一部の要素が省略され、磁性層の位置がシフトされて描かれている。
【0009】
図1(a)に示すように、本実施形態に係るセンサ110は、構造体70d及び第1検知素子51を含む。
【0010】
構造体70dは、変形部70cを含む。変形部70cは、変形可能である。例えば、変形部70cは、支持部70sに支持される。例えば、変形部70cに加わる力(例えば音など)に応じて、変形部70cは変形する。変形部70cは、片持ち梁でも良く、両持ち梁でも良い。
【0011】
第1検知素子51は、変形部70cに設けられる。第1検知素子51は、変形部70cの一部に設けられている。この一部は、例えば、変形部70cのうちの支持部70sに近い部分である。
【0012】
第1検知素子51は、第1磁性層10、第2磁性層20、第3磁性層43、第4磁性層44、及び、第1中間層30を含む。
【0013】
第1磁性層10は、第2磁性層20と第3磁性層43との間に設けられる。第4磁性層44は、第1磁性層10と第3磁性層43との間に設けられる。第1中間層30は、第2磁性層20と第1磁性層10との間に設けられる。
【0014】
この例においては、第1電極58a及び第2電極58bがさらに設けられる。これらの電極の間に、上記の、複数の磁性層及び第1中間層30が設けられている。
【0015】
第1磁性層10及び第2磁性層20は、例えば、強磁性層である。
【0016】
第2磁性層20から第1磁性層10への方向を第1方向とする。第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0017】
第1方向は、例えば、上記の複数の磁性層の積層方向に対応する。この例では、第2電極58bから第1電極58aへの方向は第1方向に沿う。上記の2つの電極の間において、上記の複数の磁性層が第1方向に沿って並ぶ。
【0018】
例えば、第1磁性層10の第1磁化の向きは、第2磁性層20の第2磁化の向きよりも変化し易い。第1磁性層10は、例えば、磁化自由層である。第2磁性層20は、例えば、参照層(例えば磁化固定層)である。
【0019】
例えば、変形部70cが変形する。変形は、例えば、Z軸方向に沿う変位を含む。変形は、変形部70cの少なくとも一部の、X−Y平面に沿う面内での伸び縮みを含んでも良い。
【0020】
第1検知素子51の電気抵抗は、変形部70cの変形に応じて変化する。例えば、変形部70cの変形に応じて、第1磁性層10の第1磁化10Mの向きが変化する。第1磁化10Mと第2磁化20Mとの間の角度が、変形に応じて変化する。角度の変化は、例えば、逆磁歪効果に基づくと考えられる。角度の変化により、電気抵抗が変化する。電気抵抗の変化は、例えば、磁気抵抗効果に基づくと考えられる。
【0021】
実施形態において、第3磁性層43は、以下の第1材料及び第2材料の少なくともいずれかを含む。第1材料は、Ir−Mn、Pt−Mn、Pd−Pt−Mn及びRu−Rh−Mnよりなる群から選択された少なくともいずれかを含む。第2材料は、CoPt(Coの比率は、50at.%以上85at.%以下)、(Co
xPt
100−x)
100−yCr
y(xは50at.%以上85at.%以下、yは0at.%以上40at.%以下)、及び、FePt(Ptの比率は40at.%以上60at.%以下)の少なくともいずれかを含む。第3磁性層43は、例えば、バイアス印加層として機能する。
【0022】
第3磁性層43は、例えば、反強磁性層である。
【0023】
例えば、第3磁性層43との交換結合により生じる磁気的なバイアスにより、第4磁性層44の磁化が制御される。例えば、第3磁性層43との第4磁性層44との間において、強磁性交換結合が生じる。例えば、第3磁性層43との第4磁性層44との間において、反強磁性交換結合が生じる。第4磁性層44の磁化により、第1磁性層10の第1磁化10Mの磁化が制御されると考えられる。これにより、後述するように、センサ110において、感度が向上する。
【0024】
この例では、第1検知素子51は、中間磁性層15、第1非磁性層41n及び第2非磁性層42nをさらに含む。中間磁性層15は、第1磁性層10と第1中間層30との間に設けられる。中間磁性層の例については、後述する。中間磁性層は、省略されても良い。第1非磁性層41nは、第1磁性層10と第4磁性層44との間に設けられる。第2非磁性層42nは、第4磁性層44と第3磁性層43との間に設けられる。これらの磁性層の例については、後述する。これらの非磁性層は、省略されても良い。
【0025】
第1磁性層10の厚さを第1厚さt1とする。第4磁性層44の厚さを第4厚さt4とする。これらの厚さは、Z軸方向に沿う長さである。後述するように、第4厚さt4は、第1厚さt
1よりも薄いことが好ましい。
【0026】
以下、第1検知素子51における磁化の向きの例について説明する。
図1(b)は、第1検知素子51における磁化を模式的に示している。
図1(b)に示すように、変形部70cは、支持部70sに接続された接続部70eを含む。接続部70eは、第1接続方向に沿っている。この例では、第1接続方向は、X軸方向である。
【0027】
例えば、変形部70cに外力が加わっていないとき(初期状態)において、第1磁性層10の第1磁化10Mは、第1接続方向(X軸方向)に対して、傾斜している。
【0028】
変形部70cに外力が加わると、変形部70cに、第1接続方向(X軸方向)と交差する方向(例えばY軸方向)に沿った応力(または歪み)が加わる。第1磁性層10において、第1接続方向(X軸方向)と交差する方向(例えばY軸方向)に沿った応力(または歪み)が、加わる。
【0029】
初期状態において、第1磁性層10の第1磁化10Mが第1接続方向(X軸方向)に対して傾斜しているため、例えば、変形部70cの変形に応じて、第1磁化10Mの向きが容易に変化する。例えば、第1磁化10Mの向きの変化に応じた、第1検知素子51の抵抗変化が、大きい。変形部70cの変形が小さいときにも、電気抵抗の変化が安定して得られる。感度を向上できるセンサが提供できる。例えば、変形部70cに外力が加わった際の、第1磁化10Mと第2磁化20Mとの相対角度の可変領域を広げることができる。例えば、変形部70cに加わる力の向き及び大きさについて、検出範囲が広がる。例えば、ダイナミックレンジの広いセンサが提供できる。
【0030】
1つの例において、第1磁化10Mと第1接続方向(X軸方向)との間の角度の絶対値は、10度以上80度以下である。角度の絶対値は、20度以上70度以下でも良い。角度の絶対値は、30度以上60度以下でも良い。このような角度により、変形部70cの変形に対する電気抵抗の変化率が、安定して高くできる。
【0031】
この例では、第2磁性層20の第2磁化20Mは、第1接続方向(X軸方向)に沿っている。別の例において、第2磁化20Mは、第1接続方向(X軸方向)に対して実質的に垂直でも良い。例えば、第1磁性層10の第1磁化10Mは、第2磁性層20の第2磁化20Mに対して傾斜する。第1磁化10Mと第2磁化20Mとの間の角度の絶対値
は、10度以上80度以下である。角度の絶対値は、20度以上70度以下でも良い。角度の絶対値は、30度以上60度以下でも良い。このような角度により、変形部70cの変形に対する電気抵抗の変化率が、安定して高くできる。
【0032】
実施形態において、例えば、第3磁性層43からの磁気的なバイアスにより、第4磁性層44の磁化が制御される。第4磁性層44の磁化は、例えば、第1接続方向(X軸方向)に対して傾斜する。これにより、第1磁性層10の第1磁化10Mの磁化が制御されると考えられる。
【0033】
第4磁性層44の少なくとも一部の結晶性が、第1磁性層10の結晶性よりも高くすることで、安定した磁気バイアスが得られることが分かった。
【0034】
例えば、第1磁性層10の少なくとも一部は、アモルファスである。一方、第4磁性層44の少なくとも一部は、結晶を含む。例えば、第4磁性層44の少なくとも一部は、結晶部分を含む。
【0035】
例えば、第1磁性層10の結晶性が低い(例えばアモルファス)ことにより、第1磁性層10において、低い保磁力が得られる。これにより、歪み(変形)に対する第1磁化10Mの向きの変化の容易さを得ることができる。
【0036】
一方、結晶性が低い(例えばアモルファス)第1磁性層10だけが設けられ、第4磁性層44が設けられない参考例が考えられる。この場合、第3磁性層43からの磁気的なバイアスが十分に得られないことが分かった。これは、結晶性が低い第1磁性層10の上に第3磁性層43を設けると、第3磁性層43の結晶品質が低くなり、第3磁性層43と第1磁性層との交換結合が発生しない、または、小さいことが原因であると考えられる。
【0037】
実施形態においては、高い結晶性を有する第4磁性層44が設けられる。これにより、第4磁性層44の上に設けられる第3磁性層43において、良好な結晶品質が得られる。これにより、第3磁性層43からの磁気的なバイアスが十分に大きくできる。例えば、第4磁性層44の磁化が、第3磁性層43からの磁気的なバイアスにより、所望の方向に制御できる。制御された第4磁性層44の磁化により、第1磁性層10の第1磁化10Mが所望の向きに制御できる。第1磁化10Mの向きは、例えば、
図1(b)に例示したように、X軸方向と交差する。第1磁化10Mの向きは、X軸方向に対して傾斜しても良い。
【0038】
例えば、磁場中の高温での熱処理により、第4磁性層44の磁化が制御でき、第1磁性層10の第1磁化10Mが所望の向きに制御できる。
【0039】
実施形態においては、第1磁性層10は、高い磁歪係数、及び、低い保磁力を有する。第4磁性層44は、高い磁歪係数、及び、高い保磁力を有する。これにより、変形部70cの変形に応じて、電気抵抗の大きな変化が得易くなる。一方、例えば、磁場を検知する参考例の場合には、磁歪係数は低くても良い。
【0040】
図2は、センサの一部の透過型電子顕微鏡像である。
図2は、センサ110に対応する試料の透過型電子顕微(TEM:Transmission Electron Microscope)像である。試料は、
図1(a)に例示した構成を有する。
【0041】
試料において、変形部70cは、SiO
2膜である。このSiO
2膜は、シリコン基板の上に設けられる。第2電極58bは、Ta/Cu/Taの積層膜である。その上に、Ta膜(厚さが2nm)、Ru膜(厚さが2nm)、及び、Pt
41Mn
59膜(厚さが20nm)が、この順で設けられる。その上に、Co
90Fe
10膜(厚さが2.5nm)、Ru膜(厚さが0.85nm)及びCo
40Fe
40B
20膜(厚さが2.5nm)がこの順で設けられる。例えば、Co
90Fe
10膜(厚さが2.5nm)、Ru膜(厚さが0.85nm)及びCo
40Fe
40B
20膜の積層膜が第2磁性層20と見なされる。例えば、Co
40Fe
40B
20膜が第2磁性層20と見なされても良い。
【0042】
第1中間層30は、MgO膜(厚さが1.8nm)である。中間磁性層15は、Co
40Fe
40B
20膜(厚さ0.5nm)である。第1磁性層10は、Fe
80B
20膜(厚さが8nm)である。第1非磁性層41nは、Cu膜(厚さが0.4nm)である。第4磁性層44は、Fe
50Co
50膜(厚さが1.6nm)である。第2非磁性層42nは、Cu膜(厚さが0.65nm)である。第3磁性層43は、Ir
22Mn
78(厚さが4nm)である。
【0043】
この試料では、第3磁性層43の上に、Ru膜(厚さが2nm)、Ta膜(厚さが2nm)、及び、Ru膜(厚さが21nm)が、この順で設けられる。Ru膜(厚さが21nm)の上に、第1電極58aが設けられる。第1電極58aは、Ta膜/Cu膜/Ta膜の積層膜である。
【0044】
図2から分かるように、第1磁性層10においては、結晶性が低い。第1磁性層10には、実質的にアモルファスである。これに対して、第4磁性層44においては、結晶に対応する縞が観察される。第4磁性層44における縞の明確さ(結晶性)は、第1中間層30における縞の明確さ(結晶性)と実質的に同様である。
【0045】
図2から分かるように、第3磁性層43においても、結晶に対応する縞が観察される。第3磁性層43における結晶性は、第1磁性層10における結晶性よりも高い。
【0046】
このように、第4磁性層44の少なくとも一部の結晶性は、第1磁性層10の結晶性よりも高い。これにより、第3磁性層43において、良好な結晶品質が得られる。これにより、第3磁性層43からの磁気的なバイアスが十分に大きくできる。第4磁性層44の磁化が、所望の方向に安定して制御できる。第4磁性層44からの磁気的なバイアスにより、第1磁性層10の第1磁化10Mが、安定して所望の向きに制御される。例えば、第1磁性層10と第3磁性層43とは、強磁性結合する。
【0047】
第1磁性層10及び第4磁性層44の組は、歪検知層として機能する。
【0048】
実施形態において、第4磁性層44における結晶性が高いため、第4磁性層44の厚さが過度に厚くなると、歪検知層(第1磁性層10と第4磁性層44)の全体としての保磁力が過度に大きくなる場合がある。保磁力が過度に大きくなると、センサの感度が低下する。
【0049】
このため、第4磁性層44の厚さ(第4厚さt4、
図1(a)参照))は、薄いことが好ましい。例えば、第4厚さt4は、第4磁性層44において、良好な結晶性が得られる程度以上の厚さでよい。
【0050】
以下、第4厚さt4を変更したときの磁気的な特性の変化の測定結果の例について説明する。測定においては、以下の試料が作製される。試料において、Si基板/Cu(1nm)/MgO層(1.8nm)/Co
40Fe
40B
20(0.5nm)/Fe
80B
20(8nm)/Co
50Fe
50/Ir
22Mn
78(12nm)/Ru(2nm)/Ta(3nm)の積層体が設けられる。上記の記載において、括弧内の長さは、それぞれの層の厚さである。Cu層は、下地層である。MgO層は、第1中間層30に対応する。Co
40Fe
40B
20層は、中間磁性層15に対応する。Fe
80B
20層は、第1磁性層10に対応する。Co
50Fe
50層は、第4磁性層44に対応する。Ir
22Mn
78は、第3磁性層43に対応する。Ru(2nm)及びTa(3nm)は、第1電極58aに対応する。試料において、第2磁性層20は設けられていない。Fe
80B
20層(第1磁性層10)の厚さ(第1厚さt1)は、8nmで一定である。実験において、Co
50Fe
50層(第4磁性層44)の厚さ(第4厚さt4)が、0.5nm〜4nmの範囲で変更される。このような試料により、歪検知層(第1磁性層10及び第4磁性層44の組)の特性が評価される。
【0051】
評価においては、H−M特性が評価される。
図3は、磁気的特性を例示する模式図である。
図3の横軸は、外部磁場H(Oe)である。縦軸は、歪検知層(第1磁性層10及び第4磁性層44の組)の磁化の程度に対応するパラメータM/Msである。外部磁場H(Oe)は、磁気的なバイアスの方向に沿っている。
【0052】
図3に示すように、H−M特性においてヒステリシスが生じる。第1値H1及び第2値H2が生じる。第1値H1と第2値H2との差の1/2が、保磁力Hcに対応する。第1値H1に対応する外部磁場と、第2値H2に対応する外部磁場と、の中点と、0の外部磁場Hと、の差を値Hinとする。値Hinが、磁気的なバイアスの大きさに対応する。例えば、第4磁性層44が設けられない試料においては、値Hinは0となる。
【0053】
以下、第1〜第4試料についての評価結果について説明する。
【0054】
図4(a)〜
図4(d)は、磁気的特性を例示するグラフ図である。
図4(a)〜
図4(d)は、第1
〜第4試料SP01〜SP04にそれぞれ対応する。第1〜第4試料SP01〜SP04においては、第4厚さt4は、0.5nm、1.0nm、1.6nm及び4.0nmである。
【0055】
第1試料SP01において、保磁力Hcは3Oeであり、値Hinは0Oeである。
第2試料SP02において、保磁力Hcは3Oeであり、値Hinは0Oeである。 第3試料SP03において、保磁力Hcは55Oeであり、値Hinは75Oeである。
第4試料SP04において、保磁力Hcは70Oeであり、値Hinは110Oeである。
【0056】
図5(a)及び
図5(b)は、磁気的特性を例示するグラフ図である。
これらの図の横軸は、厚さ比Rtである。厚さ比Rtは、第4厚さt4の第1厚さt1に対する比(t4/t1)である。
図5(a)の縦軸は、保磁力Hc(Oe)である。
図5(b)の縦軸は、値Hin(Oe)である。これらの図には、上記の第1〜第4試料SP01〜SP04の結果、及び、他の試料の結果が示されている。第1〜第4試料SP01〜SP04において、厚さ比Rtは、それぞれ、0.065、0.125、0.2、及び、0.5である。第1〜第4試料SP01〜SP04、及び、他の試料において、Fe
80B
20層(第1磁性層10)の厚さ(第1厚さt1)は、8nmで、一定である。
【0057】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、厚さ比Rtが0.15を超えると、保磁力Hc及び磁気的なバイアスの値Hinは急激に上昇する。厚さ比Rtが0.175のとき、保磁力Hc及び磁気的なバイアスの値Hinは、明確に大きい。この例では、厚さ比Rtが0.15のときは、第4磁性層44の第4厚さt4が1.2nmである。厚さ比Rtが0.175のときは、第4磁性層44の第4厚さt4が1.4nmである。第4磁性層44の第4厚さt4が1.2nm以下の場合、第4磁性層44の結晶性が不十分であると考えられる。第4磁性層44の第4厚さt4がしきい値(この例では1.4nm)以上になると、第4磁性層44の結晶性が急激に高まると考えられる。このため、保磁力Hc及び磁気的なバイアスHinは急激に上昇すると考えられる。この実験例では、第4厚さt4のしきい値は、1.4nmである。
【0058】
第4磁性層44の第4厚さt4は、例えば、1.4nm以上であることが好ましい。第4厚さt4が1.4nm以上であるときに、十分なバイアスHinの値が得られる。第4磁性層44の製造条件によっては、第4厚さt4が1.2nm以上のときも、第4磁性層44において、適切な結晶性が得られる場合がある。第4厚さt4が1.2nm以上のときに、例えば、十分なバイアスHinが得られる場合がある。実施形態においては、第4磁性層44の第4厚さt4は、1.2nm以上であることが好ましい。
【0059】
例えば、保磁力Hc及び磁気的なバイアスの値Hinは急激に上昇し始める第4厚さt4(例えば厚さのしきい値)は、約1.4nmであると考えられる。この厚さのしきい値は、第1磁性層10と第4磁性層44との間の距離には実質的に影響しないと考えられる。
【0060】
第4磁性層44の第4厚さt4がしきい値以上の場合(この例では、厚さ比Rtが0.175以上の場合)、厚さ比Rtが高くなると、保磁力Hc及び値Hinは、緩やかに大きくなる。
【0061】
上記の実験結果は、Fe
80B
20(8nm)層(第1磁性層10)と、Co
50Fe
50層(第4磁性層44)と、が互いに接しているときの結果であり、これらの層の間の距離が0nmのときの結果である。
【0062】
磁気的なバイアスの値Hinが急激に上昇した後における値Hinの大きさを、「変化後の値Hin」と言うことにする。「変化後の値Hin」は、第1磁性層10と第4磁性層44との間の距離に依存すると考えられる。例えば、第1磁性層10と第4磁性層44との間の距離が短いときの「変化後の値Hin」は、この距離が長いときの「変化後の値Hin」よりも大きい。
【0063】
一方、歪検知層(第1磁性層10及び第4
磁性層44の組)における保磁力Hcは、第1磁性層10と第4磁性層44との間の距離には実質的に依存しないと考えられる。保磁力Hcは、例えば、第1磁性層10(アモルファス)の第1厚さt1と、第4磁性層44(結晶)の第4厚さt4と、の比(厚さ比Rt)に依存すると考えられる。保磁力Hcが小さいことで、高い感度が得られる。
【0064】
従って、厚さのしきい値(値Hinが急激に上昇し始める厚さ)を超える第4厚さt4において、厚さ比Rtが低いことが好ましい。これにより、例えば、小さい保磁力Hcが得られる。厚さ比Rtが低いときに、第1磁性層10と第4磁性層44との間の距離を調節することで、小さい保磁力Hcと、望まれる磁気的なバイアスの値Hinと、が得られる。
【0065】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、この例(第1磁性層10と第4磁性層44との間の距離が0)においては、厚さ比Rtが0.175の場合に、歪検知層の磁気的なバイアスの値Hinの大きさは、十分に大きく、約60Oeであり、保磁力Hcは、約50程度と低い。
【0066】
一方、例えば、第1磁性層10と第4磁性層44との間の距離が長い(例えば2nm)ときの「変化後の値バイアスHin」は、第1磁性層10と第4磁性層44との間の距離が短い(例えば、0nmまたは1nm程度以下)のときの「変化後の値Hin」よりも小さい。従って、望まれる大きさの「変化後の値Hin」を得るために、第4磁性層44の第4厚さt4を厚くする方法が考えられる。しかしながら、第4厚さt4を厚くすると、厚さ比Rtが高くなり、その結果、保磁力HCが大きくなる。
【0067】
実施形態においては、第1磁性層10と第4磁性層44との間の距離が短い(例えば、0nmまたは1nm程度以下)ことが好ましい。これにより、望まれる大きさの「変化後の値Hin」が得やすくなる。その結果、第4磁性層44の第4厚さt4を薄くでき、厚さ比Rtを低くできる。厚さ比Rtは、例えば、0.25以下にできる。こ
れにより、保磁力Hcを低く維持することができる。これにより高い感度が得られる。
【0068】
実施形態において、第4磁性層44の第4厚さt4の第1磁性層10の第1厚さt1に対する比(厚さ比Rt)は、例えば、0.125を超えることが好ましい。これにより、十分に大きい磁気的なバイアスHinが得られる。
【0069】
厚さ比Rtを低くすることで、例えば、保磁力Hcの増加を抑えることができる。厚さ比Rtは、例えば、0.3以下であることが好ましい。厚さ比Rtは、0.25以下であることがより好ましい。例えば、保磁力Hcを約60Oe以下に抑えることができる。例えば、高い感度が得やすくなる。
【0070】
第4磁性層44の第4厚さt4は、例えば、1.2nm以上である。これにより、例えば、第4磁性層44において良好な結晶性が得られ、十分に大きい磁気的なバイアスHinを得ることができる。第1磁性層10の第1厚さt1は、例えば、5nm以上である。これにより、歪検知層の保磁力Hcを低く維持できる。
【0071】
1つの例において、第1磁性層10は、Fe及びBを含む。第4磁性層44は、Fe、Co及びNiを含む。
【0072】
既に説明したように、中間磁性層15(
図1(a)参照)が設けられても良い。例えば、中間磁性層15は、Fe、Co及びBを含む。第1磁性層10に含まれるCoの濃度は、中間磁性層15に含まれるCoの濃度よりも低い。または、第1磁性層10は、Coを含まない。
【0073】
中間磁性層15は、結晶部分を含んでも良い。中間磁性層15は、例えば、第1中間層30(例えば、結晶層)と、第1磁性層10(例えばアモルファス層)と、の間において、結晶性の移行領域として機能する。
【0074】
既に説明したように、第1非磁性層41n(
図1(a)参照)がさらに設けられても良い。第1非磁性層41nは、例えば、Cu、Ru、Au、Ag、Cr、Ir及びMgよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1非磁性層41nの厚さは、0.1nm以上2nm以下である。例えば、第1非磁性層41nは、第1磁性層10及び第4磁性層44と接する。
【0075】
第1非磁性層41nは、例えば、第1磁性層10と第4磁性層44との間の磁気的な結合の強さを制御する。
【0076】
既に説明したように、第2非磁性層42n(
図1(a)参照)がさらに設けられても良い。第2非磁性層42nは、例えば、Cu、Ru、Au、Ag、Cr、Ir及びMgよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2非磁性層42nの厚さは、0.1nm以上2nm以下である。第2非磁性層42nは、例えば、第4磁性層44及び第3磁性層43と接する。
【0077】
第2非磁性層42nは、例えば、第4磁性層44と第3磁性層43との間の磁気的な結合の強さを制御する。
【0078】
例えば、第1非磁性層41n及び第2非磁性層42nを設けることで、例えば、歪検知層に加わる磁気的な結合の大きさを制御することができる。例えば、歪検知層に加わる磁気的なバイアスの大きさHinを所望の値に調節することができる。
【0079】
第2磁性層20は、1つの磁性膜でも良い。この場合、第2磁性層20は、例えば、Co、FeおよびNiよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2磁性層20は、例えば、Co
xFe
100−x合金層(0原子%≦x≦100原子%)である。または、第2磁性層20は、Ni
xFe
100−x合金層(0原子%≦x
≦100原子%)でも良い。これらの材料には、非磁性元素が添加されても良い。第2磁性層20の厚さは、例えば、1.5nm以上5nm以下である。第2磁性層20は、互いに積層された磁性膜及び非磁性膜を含んでも良い。積層された磁性膜及び非磁性膜を含む部分は、磁化を有している。例えば、第2磁性層20に含まれる複数の磁性膜の磁化の向きは、synthetic antiferro magnetic couplingによって、互いに反平行状態である。
【0080】
第1中間層30(
図1(a)参照)は、例えば、Mg、Al、Ti、Zn及びGaよりなる群から選択された少なくとも1つと、酸素と、を含む。第1中間層30の厚さは、例えば、0.6nm以上5nm以下である。
【0081】
第1電極58a及び第2電極58bの少なくともいずれかは、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム銅合金(Al−Cu)、銅(Cu)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、および金(Au)よりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1電極58a及び第2電極58bの少なくともいずれかは、例えば、TaMo、Ti及びTiNよりなる群から選択された少なくとも1つを含んでも良い。
【0082】
実施形態において、複数の検知素子が設けられても良い。
【0083】
図6(a)〜
図6(d)は、実施形態に係るセンサを例示する模式図である。
図6(a)は、斜視図である。
図6(b)は、
図6(a)のA1−A2線断面図である。
図6(c)は、
図6(a)の矢印ARから見た平面図である。
図6(d)は、センサの一部を例示する断面図である。
【0084】
図6(a)に示すように、実施形態に係るセンサ130は、構造体70dと、第1検知素子51と、第2検知素子52と、を含む。
【0085】
第1検知素子51及び第2検知素子52は、構造体70dの変形部70cに固定されている。この例では、第1検知素子51は、変形部70cの第1位置(第1領域)に固定されている。第2検知素子52は、変形部70cの第2位置(第2領域)に固定されている。
【0086】
この例では、複数の第1検知素子51、及び、複数の第2検知素子52が設けられる。この例では、複数の第1検知素子51は、X軸方向に沿って並ぶ。この例では、複数の第2検知素子52は、X軸方向に沿って並ぶ。例えば、複数の第1検知素子51は、互いに直列に接続される。例えば、複数の第2検知素子52は、互いに直列に接続される。実施形態において、第1検知素子51の数は、任意である。第2検知素子52の数は、任意である。
【0087】
変形部70cは、支持部70sに保持される。構造体70dは、外縁70rを有する。外縁70rは、接続部70eに対応する。支持部70sは、外縁70rを保持する。例えば、変形部70c及び支持部70sとなる基板が設けられる。基板は、例えば、シリコン基板である。基板の一部が除去され、基板に空洞70hが設けられる(
図6(b)参照)。基板のうちの薄い部分が変形部70cとなる。基板のうちの厚い部分が支持部70sとなる。
【0088】
図6(b)に示すように、第1検知素子51は、第1磁性膜11aと、第1対向磁性膜11bと、第1中間膜11cと、を含む。第1中間膜11cは、第1磁性膜11aと第1対向磁性膜11bとの間に設けられる。第2検知素子52は、第2磁性膜12aと、第2対向磁性膜12bと、第2中間膜12cと、を含む。第2中間膜12cは、第2磁性膜12aと第2対向磁性膜12bとの間に設けられる。
【0089】
第1磁性膜11a及び第2磁性膜12aは、例えば、第1磁性層10に対応する。第1対向磁性膜11b及び第2対向磁性膜12bは、例えば、第2磁性層20に対応する。第1中間膜11c及び第2中間膜12cは、例えば、第1中間層30に対応する。
【0090】
図6(b)に例示するように、例えば、第1電極58a及び第2電極58bが設けられる。例えば、第1電極58aと第2電極58bとの間に、第1磁性膜11a、第1対向磁性膜11b及び第1中間膜11cが配置される。
【0091】
図6(d)に例示するように、例えば、第3電極58c及び第4電極58dが設けられる。例えば、第3電極58cと第4電極58dとの間に、第2磁性膜12a、第2対向磁性膜12b及び第2中間膜12cが配置される。
【0092】
図6(b)に例示するように、この例では、第1電極58aと構造体70dとの間に絶縁層58iが設けられている。絶縁層58iは、例えば、第1電極58aと第2電極58bとの間にも設けられる。絶縁層58iは、例えば、第3電極58cと第4電極58dとの間にも設けられる。絶縁層58iにより、電極どうしの電気的な絶縁が得られる。
【0093】
図6(c)に示すように、センサ130は、処理部68(例えば処理回路)をさらに含んでも良い。処理部68は、第1検知素子51及び第2検知素子52と電気的に接続される。例えば、処理部68は、第1電極58a、第2電極58b、第3電極58c及び第4電極58dと電気的に接続される。処理部68は、第1検知素子51から得られる信号に応じた信号を出力する。処理部68は、第2検知素子52から得られる信号に応じた信号を出力する。処理部68は、検知素子に生じる電気抵抗の変化に対応する信号を出力する。
【0094】
図6(c)に示すように、この例では、変形部70c(外縁70r)は、実質的に多角形(四角形、具体的には長方形)である。変形部70cの外縁70rは、第1辺70s1と、第2辺70s2と、第3辺70s3と、第4辺70s4と、を含む。
【0095】
変形部70c(外縁70r)には、種々の形状が適用できる。変形部70c(外縁70r)は、例えば、略真円状でも良く、偏平円状(楕円状を含む)でも良く、略正方形状でも良く、長方形状でも良い。例えば、変形部70c(外縁70r)が略正方形状または略長方形状の場合は、4隅の部分(コーナ部)は、曲線状でも良い。
【0096】
第1辺70s1は、第1方向(この例では、X軸方向)に延びる。第2辺70s2は、第2方向において第1辺70s1と離間する。第2方向は、第1方向と交差する。この例では、第2方向は、Y軸方向である。第2辺70s1は、第1方向(X軸方向)に延びる。第3辺70s3は、第2方向(Y軸方向)に延びる。第4辺70s4は、第1方向(X軸方向)において第3辺70s3と離間し、第2方向(Y軸方向)に延びる。
【0097】
この例では、第3辺70s3と第4辺70s4との間の第1方向に沿った距離は、第1辺70s1と第2辺70s2との間の第2方向に沿った距離よりも長い。変形部70cは、実質的に長方形であり、第1辺70s1及び第2辺70s2は、長辺である。第3辺70s3及び第4辺70s4は、短辺である。
【0098】
変形部70cに応力が加わったときに、変形部70cの外縁70rの近傍において、大きな歪(異方性歪)が生じる。検知素子を外縁70rの近傍に配置することで、大きな歪が検知素子に加わり、高い感度が得られる。
【0099】
この例では、複数の第1検知素子51は、第1辺70s1に沿って並ぶ。複数の第2検知素子52は、第2辺70s2に沿って並ぶ。
【0100】
複数の検知素子を直列に接続することで、SN比を改善することができる。実施形態において、圧力が印加されたときに同じ極性の電気信号が得られる複数の検知素子を配置することができる。これにより、SN比が向上する。
【0101】
実施形態は、電子機器を含んでも良い。電子機器は、例えば、上記の実施形態に係るセンサ及びその変形のセンサを含む。電子機器は、例えば、情報端末を含む。情報端末は、レコーダなどを含む。電子機器は、マイクロフォン、血圧センサ、タッチパネルなどを含む。
【0102】
図7は、実施形態に係る電子機器を例示する模式図である。
図7に示すように、本実施形態に係る電子機器750は、例えば、情報端末710である。情報端末710には、例えば、マイクロフォン610が設けられる。
【0103】
マイクロフォン610は、例えば、センサ310を含む。構造体70dは、例えば、情報端末710の表示部620が設けられた面に対して実質的に平行である。構造体70dの配置は、任意である。センサ310には、上記の実施形態に関して説明した任意のセンサが適用される。
【0104】
図8(a)及び
図8(b)は、実施形態に係る電子機器を例示する模式的断面図である。
図8(a)及び
図8(b)に示すように、電子機器750(例えば、マイクロフォン370(音響マイクロフォン))は、筐体360と、カバー362と、センサ310と、を含む。筐体360は、例えば、基板361(例えばプリント基板)と、カバー362と、を含む。基板361は、例えばアンプなどの回路を含む。
【0105】
筐体360(基板361及びカバー362の少なくともいずれか)には、アコースティックホール325が設けられる。
図8(a)に示す例においては、アコースティックホール325は、カバー362に設けられている。
図8(b)に示す例においては、アコースティックホール325は、基板361に設けられている。音329は、アコースティックホール325を通って、カバー362の内部に進入する。マイクロフォン370は、音圧に対して感応する。
【0106】
例えば、センサ310を基板361の上に置き、電気信号線(図示しない)を設ける。センサ310を覆うように、カバー362が設けられる。センサ310の周りに筐体360が設けられる。センサ310の少なくとも一部は、筐体360の中に設けられる。例えば、第1検知素子51及び構造体70dは、基板361とカバー362との間に設けられる。例えば、センサ310は、基板361とカバー362との間に設けられる。
【0107】
図9(a)及び
図9(b)は、実施形態に係る別の電子機器を例示する模式図である。 これらの図の例では、電子機器750は、血圧センサ330である。
図9(a)は、ヒトの動脈血管の上の皮膚を例示する模式的平面図である。
図9(b)は、
図9(a)のH1−H2線断面図である。
【0108】
血圧センサ330においては、センサとしてセンサ310が用いられている。センサ310が動脈血管331の上の皮膚333に接触される。これにより、血圧センサ330は、連続的に血圧測定を行うことができる。
【0109】
図10は、実施形態に係る別の電子機器を例示する模式図である。
この図の例では、電子機器750は、タッチパネル340である。タッチパネル340において、センサ310が、ディスプレイの内部及びディスプレイの外部の少なくともいずれかに設けられる。
【0110】
例えば、タッチパネル340は、複数の第1配線346と、複数の第2配線347と、複数のセンサ310と、制御回路341と、を含む。
【0111】
この例では、複数の第1配線346は、Y軸方向に沿って並ぶ。複数の第1配線346のそれぞれは、X軸方向に沿って延びる。複数の第2配線347は、X軸方向に沿って並ぶ。複数の第2配線347のそれぞれは、Y軸方向に沿って延びる。
【0112】
複数のセンサ310の1つは、複数の第1配線346と複数の第2配線347との交差部に設けられる。センサ310の1つは、検知のための検知要素Esの1つとなる。交差部は、第1配線346と第2配線347とが交差する位置及びその周辺の領域を含む。
【0113】
複数のセンサ310の1つの一端E1は、複数の第1配線346の1つと接続される。複数のセンサ310の1つの他端E2は、複数の第2配線347の1つと接続される。
【0114】
制御回路341は、複数の第1配線346及び複数の第2配線347と接続される。例えば、制御回路341は、複数の第1配線346と接続された第1配線用回路346dと、複数の第2配線347と接続された第2配線用回路347dと、第1配線用回路346d及び第2配線用回路347dと接続された制御信号回路345と、を含む。
実施形態によれば、感度を向上できるセンサを用いた電子機器が提供できる。
【0115】
実施形態は、例えば、以下の構成(例えば技術案)を含む。
(構成1)
変形可能な変形部を含む構造体と、
前記変形部に設けられた第1検知素子と、
を備え、
前記第1検知素子は、第1〜第4磁性層と、第1中間層と、を含み、
前記第1磁性層は、前記第2磁性層と前記第3磁性層との間に設けられ、
前記第4磁性層は、前記第1磁性層と前記第3磁性層との間に設けられ、
前記第1中間層は、前記第2磁性層と前記第1磁性層との間に設けられ、
前記第3磁性層は、第1材料及び第2材料の少なくともいずれかを含み、前記第1材料は、Ir−Mn、Pt−Mn、Pd−Pt−Mn及びRu−Rh−Mnよりなる群から選択された少なくともいずれかを含み、前記第2材料は、CoPt(Coの比率は、50at.%以上85at.%以下)、(Co
xPt
100−x)
100−yCr
y(xは50at.%以上85at.%以下、yは0at.%以上40at.%以下)、及び、FePt(Ptの比率は40at.%以上60at.%以下)の少なくともいずれかを含み、
前記第4磁性層の少なくとも一部の結晶性は、前記第1磁性層の結晶性よりも高い、センサ。
【0116】
(構成2)
前記第1磁性層の少なくとも一部は、アモルファスであり、
前記第4磁性層の前記少なくとも一部は、結晶を含む、構成1記載のセンサ。
【0117】
(構成3)
前記第4磁性層の前記厚さは、1.4nm以上である、構成1または2に記載のセンサ。
【0118】
(構成4)
前記第4磁性層の厚さの前記第1磁性層の厚さに対する比は、0.175以上0.3以下である、構成1〜3のいずれか1つに記載のセンサ。
【0119】
(構成5)
前記第1磁性層と前記第4磁性層との間の距離は、1nm以下である、構成3記載のセンサ。
【0120】
(構成6)
前記第1磁性層の前記厚さは、5nm以上である、構成5記載のセンサ。
【0121】
(構成7)
前記第1磁性層は、Fe及びBを含み、
前記第4磁性層は、Fe、Co及びNiよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1〜6のいずれか1つに記載のセンサ。
【0122】
(構成8)
前記第1検知素子は、前記第1磁性層と前記第1中間層との間に設けられた中間磁性層をさらに含み、
前記中間磁性層は、Fe、Co及びBを含み、
前記第1磁性層に含まれるCoの濃度は、前記中間磁性層に含まれるCoの濃度よりも低い、または、前記第1磁性層はCoを含まない、構成7記載のセンサ。
【0123】
(構成9)
前記第1検知素子は、前記第1磁性層と前記第4磁性層との間に設けられた第1非磁性層をさらに含み、
前記第1非磁性層は、Cu、Ru、Au、Ag、Cr、Ir及びMgよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1〜8のいずれか1つに記載のセンサ。
【0124】
(構成10)
前記第1非磁性層は、前記第1磁性層及び前記第4磁性層と接した、構成9記載のセンサ。
【0125】
(構成11)
前記第1検知素子は、前記第4磁性層と前記第3磁性層との間に設けられた第2非磁性層をさらに含み、
前記第2非磁性層は、Cu、Ru、Au、Ag、Cr、Ir及びMgよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1〜10のいずれか1つに記載のセンサ。
【0126】
(構成12)
前記第2非磁性層は、前記第4磁性層及び前記第3磁性層と接した、構成11記載のセンサ。
【0127】
(構成13)
前記第1中間層は、Mg、Al、Ti、Zn及びGaよりなる群から選択された少なくとも1つと、酸素と、を含む、構成1〜12のいずれか1つに記載のセンサ。
【0128】
(構成14)
前記第1検知素子の電気抵抗は、前記変形部の変形に応じて変化する、構成1〜13のいずれか1つに記載のセンサ。
【0129】
(構成15)
前記第1磁性層の第1磁化は、前記第2磁性層の第2磁化に対して傾斜した、構成1〜14のいずれか1つに記載のセンサ。
【0130】
(構成16)
前記構造体は、支持部をさらに含み、
前記変形部は、前記支持部に接続された接続部を含み、
前記接続部は、第1接続方向に沿い、
前記第1磁性層の第1磁化は、前記第1接続方向に対して、傾斜した、構成1〜14のいずれか1つに記載のセンサ。
【0131】
(構成17)
前記第1磁化と前記第1接続方向との間の角度の絶対値は、10度以上80度以下である、構成1〜16のいずれか1つに記載のセンサ。
【0132】
(構成18)
構成1〜17のいずれか1つに記載のセンサを備えたマイクロフォン。
【0133】
(構成19)
構成1〜17のいずれか1つに記載のセンサを備えた血圧センサ。
【0134】
(構成20)
構成1〜17のいずれか1つに記載のセンサを備えたタッチパネル。
【0135】
実施形態によれば、感度を向上できるセンサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルが提供される。
【0136】
なお、本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0137】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、センサに含まれる構造体、検知素子、磁性層、中間層、膜部、電極、及び、処理部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0138】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0139】
その他、本発明の実施の形態として上述したセンサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルを基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全てのセンサ、マイクロフォン、血圧センサ及びタッチパネルも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0140】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。