特許第6941232号(P6941232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6941232周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージングシーケンス及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6941232
(24)【登録日】2021年9月7日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージングシーケンス及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20210916BHJP
【FI】
   A61B5/055 311
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-522811(P2020-522811)
(86)(22)【出願日】2019年9月3日
(65)【公表番号】特表2021-503316(P2021-503316A)
(43)【公表日】2021年2月12日
(86)【国際出願番号】CN2019104183
(87)【国際公開番号】WO2020078131
(87)【国際公開日】20200423
【審査請求日】2020年4月22日
(31)【優先権主張番号】201811210428.3
(32)【優先日】2018年10月17日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲イー▼
(72)【発明者】
【氏名】劉 瑞斌
(72)【発明者】
【氏名】張 洪錫
(72)【発明者】
【氏名】呉 丹
【審査官】 姫島 あや乃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−016333(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0256567(US,A1)
【文献】 特表2015−512317(JP,A)
【文献】 特表2007−526787(JP,A)
【文献】 Thomas Benner et al.,Real-Time Rf Pulse Adjustment for B0 Drift Correction,Magnetic Resonance in Medicine,2006年,Vol. 56,pp. 204-209
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴化学交換飽和移動(CEST)イメージングシーケンスは、
ステップ1であって、周波数安定化モジュールに、フリップ角が90°未満の無線周波数パルスで目標層面を励起し、それぞれt1、t2、t3の3つの異なる時刻で3行の非位相エンコードk空間データを収集し、t2-t1<t3-t2<2(t2-t1)であるステップ1と、
ステップ2であって、第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差を計算することにより、主磁界周波数ドリフトの精確推定値を取得し、精確推定値の計算が以下の方法に従って行い、
まず、第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の単一データサンプリング点の位相差を平均し、第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差を取得し、さらに、位相と周波数との関係から、主磁界周波数ドリフトの精確推定値Δffineを計算し、計算プロセスが以下の式に基づくものであり、
【数1】
ΔTE2-1はt1、t2時刻の時間間隔であり、
は第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差であり、計算式が以下の通りであり、
【数2】
は第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間のi個目のデータサンプリング点の位相差であり、nは行ごとの非位相エンコード空間データサンプリング点の数であるステップ2と、
ステップ3であって、第2、第3行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差と第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差との差を計算することにより、主磁界周波数ドリフトの概略推定値を取得し、概略推定値の計算は、以下の方法に従って行い、
第2、第3行の非位相エンコード空間データの行間の位相差と第1、第2行の非位相エンコード空間データの行間の位相差との差を計算し、主磁界周波数ドリフトの概略推定値Δfcoarseを取得し、計算プロセスは以下の式に基づくものであり、
【数3】
τはt2、t3時刻の間の空白時間間隔であり、τ=(t3-t2)-(t2-t1)であり、
は第2、第3行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差であり、計算式が以下の通りであり、
【数4】
は第2、第3行の非位相エンコードk空間データの行間のi個目のデータサンプリング点の位相差であるステップ3と、
ステップ4であって、概略推定値と精確推定値との差を閾値と比較し、概略推定値と精確推定値との差が閾値より小さい場合には、精確推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、そうでない場合には、概略推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、主磁界周波数ドリフトの値の特定は以下の方法に従って行い、
(Δfcoarse−Δffine)<fthresholdであると、精確推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、そうでないと、概略推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、ここで、閾値
であるステップ4と、
ステップ5であって、主磁界周波数ドリフトの値に基づいて、無線周波数パルスの中心周波数を調整した後、さらに調整後の無線周波数パルスの中心周波数に基づいて、磁気共鳴CESTイメージングを行うステップ5と、を含むことを特徴とする周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージングシーケンス。
【請求項2】
前記ステップ1において、フリップ角は10°より小さいことを特徴とする請求項1に記載の周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージングシーケンス。
【請求項3】
周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴化学交換飽和移動(CEST)イメージング装置であって、周波数安定化モジュールとCESTイメージングモジュールとを含み、
前記周波数安定化モジュールは、
ステップ1であって、周波数安定化モジュールに、フリップ角が90°未満の無線周波数パルスで目標層面を励起し、それぞれt1、t2、t3の3つの異なる時刻で3行の非位相エンコードk空間データを収集し、t2-t1<t3-t2<2(t2-t1)であるステップ1と、
ステップ2であって、第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差を計算することにより、主磁界周波数ドリフトの精確推定値を取得するステップ2と、
ステップ3であって、第2、第3行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差と第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差との差を計算することにより、主磁界周波数ドリフトの概略推定値を取得するステップ3と、
ステップ4であって、概略推定値と精確推定値との差を閾値と比較し、概略推定値と精確推定値との差が閾値より小さい場合には、精確推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、そうでない場合には、概略推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択するステップ4と、
ステップ5であって、主磁界周波数ドリフトの値に基づいて、無線周波数パルスの中心周波数を調整した後、CESTイメージングモジュールを用いて調整後の無線周波数パルスの中心周波数に基づいて、磁気共鳴CESTイメージングを行うステップ5と、を実行するためのものであり、
前記周波数安定化モジュールにおいて、前記ステップ2において精確推定値の計算が以下の方法に従って行い、
まず、第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の単一データサンプリング点の位相差を平均し、第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差を取得し、さらに、位相と周波数との関係から、主磁界周波数ドリフトの精確推定値Δffineを計算し、計算プロセスが以下の式に基づくものであり、
【数1】
ΔTE2-1はt1、t2時刻の時間間隔であり、
は第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差であり、計算式が以下の通りであり、
【数2】
は第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間のi個目のデータサンプリング点の位相差であり、nは行ごとの非位相エンコード空間データサンプリング点の数であり、
前記周波数安定化モジュールにおいて、前記ステップ3において概略推定値の計算が以下の方法に従って行い、
第2、第3行の非位相エンコード空間データの行間の位相差と第1、第2行の非位相エンコード空間データの行間の位相差との差を計算し、主磁界周波数ドリフトの概略推定値Δfcoarseを取得し、計算プロセスが以下の式に基づくものであり、
【数3】
τはt2、t3時刻間の空白時間間隔であり、τ=(t3-t2)-(t2-t1)であり、
は第2、第3行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差であり、計算式が以下の通りであり、
【数4】
は第2、第3行の非位相エンコードk空間データの行間のi個目のデータサンプリング点の位相差であり、
前記周波数安定化モジュールにおいて、前記ステップ4において主磁界周波数ドリフトの値の特定が以下の方法に従って行い、
(Δfcoarse−Δffine)<fthresholdであると、精確推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、そうでないと、概略推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、ここで、閾値
であることを特徴とする周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージング装置。
【請求項4】
前記周波数安定化モジュールにおいて、前記ステップ1において、フリップ角は10°より小さいことを特徴とする請求項に記載の周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は磁気共鳴の技術分野に関し、特に磁気共鳴CESTイメージングの周波数ドリフトの補正の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴CEST(Chemical Exchange Saturation Transfer)イメージングは、重要な分子磁気共鳴イメージング技術であり、生体内の内因性細胞質で遊離したタンパク質及びポリペプチドを検出することができる。磁気共鳴CESTイメージングはゴム質腫瘍において過剰発現されたタンパク質及びポリペプチド情報を取得できるため、腫瘍検出及び腫瘍の分級に用いられる。しかし、磁気共鳴CESTイメージングは、主磁界周波数ドリフトに非常に敏感であるため、主磁界周波数ドリフトが補正されないと、磁気共鳴CESTイメージングの性能に大きく影響する。磁気共鳴CESTイメージング性能に対する主磁界周波数ドリフトの干渉に基づいて、一部の研究者は、データ後処理において主磁界周波数ドリフトの補正を実現する方法を提案しており、データ後処理方法は、主磁界周波数の補正を好適に実現することができるが、脂肪信号を効果的に抑制することを保証することができないため、CEST画像において高すぎる脂肪信号が正常な組織信号をカバーしやすくなる。周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージングシーケンスは、主磁界周波数ドリフトをリアルタイムに補正することができるだけでなく、脂肪信号を効果的に抑制し、磁気共鳴CESTイメージングの性能を向上させることもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージングシーケンスを提供し、主磁界周波数ドリフトをリアルタイムに補正することを実現し、脂肪信号を効果的に抑制することを保証し、磁気共鳴CESTイメージングの性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的に達成するために、本発明は、以下の技術案を採用することによって実現される。
周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージングシーケンスは、
ステップ1であって、周波数安定化モジュールに、フリップ角が90°未満の無線周波数パルスで目標層面を励起し、それぞれt1、t2、t3の3つの異なる時刻で3行の非位相エンコードk空間データを収集し、t2-t1<t3-t2<2(t2-t1)であるステップ1と、
ステップ2であって、第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差を計算することにより、主磁界周波数ドリフトの精確推定値を取得するステップ2と、
ステップ3であって、第2、第3行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差と第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差との差を計算することにより、主磁界周波数ドリフトの粗略推定値を取得するステップ3と、
ステップ4であって、粗略推定値と精確推定値との差を閾値と比較し、粗略推定値と精確推定値との差が閾値より小さい場合には、精確推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、そうでない場合には、粗略推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択するステップ4と、
ステップ5であって、主磁界周波数ドリフトの値に基づいて、無線周波数パルスの中心周波数を調整した後、調整後の無線周波数パルスの中心周波数に基づいて、磁気共鳴CESTイメージングを行うステップ5と、を含む。
本発明の更なる改善は、前記ステップ2において精確推定値の計算が以下の方法に従って行うことにある。
まず、第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の単一データサンプリング点の位相差を平均し、第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差を取得し、さらに、位相と周波数との関係から、主磁界周波数ドリフトの精確推定値Δffineを計算し、計算プロセスは以下の式に基づくものである。
【数1】
ただし、ΔTE2-1はt1、t2時刻の時間間隔であり、
は第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差であり、計算式は以下の通りである。
【数2】
ただし、
は第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間のi個目のデータサンプリング点の位相差であり、nは行ごとの非位相エンコード空間データサンプリング点の数である。
本発明の更なる改善は、前記ステップ3において粗略推定値の計算が以下の方法に従って行うことにある。
第2、第3行の非位相エンコード空間データの行間の位相差と第1、第2行の非位相エンコード空間データの行間の位相差との差を計算し、主磁界周波数ドリフトの粗略推定値を取得し、計算プロセスは以下の式に基づくものである。
【数3】
ただし、τはt2、t3時刻の間の空白時間間隔(blank interval、即ち、周波数安定化モジュールにおいてt2時刻とt3時刻の間に周波数エンコード勾配が印加されない時間間隔)であり、τ=(t3-t2)-(t2-t1)であり、
は第2、第3行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差であり、計算式は以下の通りである。
【数4】
ただし、
は第2、第3行の非位相エンコードk空間データの行間のi個目のデータサンプリング点の位相差である。
本発明の更なる改善は、前記ステップ4において主磁界周波数ドリフトの値の特定が以下の方法に従って行うことにある。
(Δfcoarse−Δffine)<fthresholdであると、精確推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、そうでないと、粗略推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、ここで、閾値
である。
【0005】
本発明の更なる改善は、前記ステップ1においてフリップ角が10°未満であることが好ましいことにある。
【0006】
本発明の更なる改善は、前記空白時間間隔τ=0であることにある。
【0007】
本発明は、上記イメージングシーケンスに対応する周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージング装置を提供し、当該装置が周波数安定化モジュールとCESTイメージングモジュールとを含むことを他の目的とする。
前記周波数安定化モジュールは、
ステップ1であって、周波数安定化モジュールに、フリップ角が90°未満の無線周波数パルスで目標層面を励起し、それぞれt1、t2、t3の3つの異なる時刻で3行の非位相エンコードk空間データを収集し、t2-t1<t3-t2<2(t2-t1)であるステップ1と、
ステップ2であって、第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差を計算することにより、主磁界周波数ドリフトの精確推定値を取得するステップ2と、
ステップ3であって、第2、第3行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差と第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差との差を計算することにより、主磁界周波数ドリフトの粗略推定値を取得するステップ3と、
ステップ4であって、粗略推定値と精確推定値との差を閾値と比較し、粗略推定値と精確推定値との差が閾値より小さい場合には、精確推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、そうでない場合には、粗略推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択するステップ4と、
ステップ5であって、主磁界周波数ドリフトの値に基づいて、無線周波数パルスの中心周波数を調整した後、CESTイメージングモジュールを用いて調整後の無線周波数パルスの中心周波数に基づいて、磁気共鳴CESTイメージングを行うステップ5とを実行するためのものである。
【0008】
本発明では、ステップ5において、磁気共鳴CESTイメージングが通常の磁気共鳴CESTイメージングを用いることができる。一般的に、通常の磁気共鳴CESTイメージングシーケンスは、CEST飽和、スペクトル事前飽和反転回復脂肪抑制、高速スピンエコー収集の3つのモジュールを含む。
【0009】
本発明における上述した装置に対する更なる改善は、前記周波数安定化モジュールにおいて、ステップ2において精確推定値の計算が以下の方法に従って行うことにある。
まず、第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の単一データサンプリング点の位相差を平均し、第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差を取得し、さらに、位相と周波数との関係から、主磁界周波数ドリフトの精確推定値Δffineを計算し、計算プロセスは以下の式に基づくものである。
【数1】
ただし、ΔTE2-1はt1、t2時刻の時間間隔であり、
は第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差であり、計算式が以下の通りである。
【数2】
ただし、
は第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間のi個目のデータサンプリング点の位相差であり、nは行ごとの非位相エンコード空間データサンプリング点の数である。
【0010】
本発明における上述した装置に対する更なる改善は、前記周波数安定化モジュールにおいて、ステップ3において粗略推定値の計算が以下の方法に従って行う。
第2、第3行の非位相エンコード空間データの行間の位相差と第1、第2行の非位相エンコード空間データの行間の位相差との差を計算し、主磁界周波数ドリフトの粗略推定値Δfcoarseを取得し、計算プロセスは以下の式に基づくものである。
【数3】
ただし、τはt2、t3時刻の間の空白時間間隔であり、τ=(t3-t2)-(t2-t1)であり、
は第2、第3行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差であり、計算式は以下の通りである。
【数4】
ただし、
は第2、第3行の非位相エンコードk空間データの行間のi個目のデータサンプリング点の位相差である。
【0011】
本発明における上述した装置に対する更なる改善は、前記周波数安定化モジュールにおいて、ステップ4において主磁界周波数ドリフトの値の特定が以下の方法に従って行うことにある。
(Δfcoarse−Δffine)<fthresholdであると、精確推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、そうでないと、粗略推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、ここで、閾値
である。
【0012】
本発明における上述した装置に対する更なる改善は、前記周波数安定化モジュールにおいて、ステップ1においてフリップ角が10°未満であることが好ましいことにある。
【0013】
本発明の更なる改善は、前記空白時間間隔τ=0であることにある。
【発明の効果】
【0014】
従来技術に対して、本発明は、以下の良好な効果を奏することができる。本発明は、周波数安定化モジュールにおいて3行の非位相エンコードk空間データを収集し、非位相エンコードk空間データの行間の位相差を計算し、位相と周波数との関係を利用し、主磁界周波数ドリフトの粗略推定値及び精確推定値を取得し、主磁界周波数ドリフトの粗略推定値と精確推定値との差を閾値と比較することにより、位相2π周期性効果を除去して、正確な主磁場周波数ドリフトの値を取得する。主磁界周波数ドリフトの計算結果に基づいて、無線周波数パルスの中心周波数を調整することで、脂肪信号を効果的に抑制することを保証することができるとともに、主磁界周波数ドリフトのリアルタイムな補正を実現することができて、磁気共鳴CESTイメージングの性能を向上させ、後続のCEST信号の量子化解析の精度に対して信頼性を提供しており、これによって本発明は、非常に重要な臨床応用価値を有するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージングシーケンスのブロック図である。
図2】周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージングシーケンスと周波数安定化モジュールが印加されていない通常の磁気共鳴CESTイメージングシーケンスをそれぞれ用いて水モデルを走査する実験のCEST画像の比較である。
図3】周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージングシーケンスと周波数安定化モジュールが印加されていない通常の磁気共鳴CESTイメージングシーケンスをそれぞれ用いて人間の脳を走査する実験のCEST画像の比較である。
図4】周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージングシーケンスと周波数安定化モジュールが印加されていない通常の磁気共鳴CESTイメージングシーケンスをそれぞれ用いて人間の脳を走査する実験のCEST画像上の関心領域のCEST平均値の比較である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、本発明の1つの好適な実施例では、周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージングシーケンスを提供し、この方法は、以下のステップ1〜ステップ5を含む。
【0017】
ステップ1:フリップ角が90°未満(好ましくは10°未満である)の無線周波数パルスで目標層面を励起し、それぞれt1、t2、t3の3つの異なる時刻で3行の非位相エンコードk空間データを収集し、t1、t2、t3時刻はt2-t1<t3-t2<2(t2-t1)を満たす必要がある。t2、t3の間の空白時間間隔はτであり、τ=(t3-t2)-(t2-t1)である。
【0018】
ステップ2:まず、第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の単一データサンプリング点の位相差を平均し、第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差を取得し、さらに、位相と周波数との関係から、主磁界周波数ドリフトの精確推定値を計算し、計算プロセスは以下の式に基づくものである。
【数5】
ただし、
は第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間のi個目のデータサンプリング点の位相差であり、nは行ごとの非位相エンコード空間データサンプリング点の数であり、
は第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差であり、ΔTE2-1はt1、t2時刻の時間間隔であり、Δffineは主磁界周波数ドリフトの精確推定値である。
【0019】
ステップ3:第2、第3行の非位相エンコード空間データの行間の位相差と第1、第2行の非位相エンコード空間データの行間の位相差との差を計算し、主磁界周波数ドリフトの粗略推定値を取得し、計算プロセスは以下の式に基づくものである。
【数6】
式(4)から式(3)を減算して差分値を取得することにより、以下の式が得られる。
【数7】
ただし、
は第1、第2行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差であり、ΔTE2-1はt1、t2時刻の時間間隔であり、ΔTE3-2はt2、t3時刻の時間間隔であり、τはt2、t3時刻の間の空白時間間隔であり、Δfcoarseは主磁界周波数ドリフトの粗略推定結果であり、
は第2、第3行の非位相エンコードk空間データの行間の位相差であり、その計算方法は、
と類似する。
【数8】
ただし、
は第2、第3行の非位相エンコードk空間データの行間のi個目のデータサンプリング点の位相差である。
【0020】
ステップ4:位相に2π周期性があるため、位相の2π周期性効果を除去するために、主磁界周波数ドリフトの粗略推定値と精確推定値との差を閾値と比較する必要があり、閾値は、主磁界周波数ドリフトを精確に推定する値域の極大値である。具体的に、以下の通りである。
(Δfcoarse−Δffine)<fthresholdであると、精確推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、即ち、Δf=Δffineであり、そうでないと、粗略推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、即ち、Δf=Δfcoarseである。
閾値fthresholdの計算プロセスは、以下のとおりである。
【数9】
ただし、Δffineは主磁界周波数ドリフトの精確推定値であり、Δfcoarseは主磁界周波数ドリフトの粗略推定値であり、fthresholdは閾値であり、Δfは主磁界周波数ドリフトの値である。
【0021】
ステップ5:計算された主磁界周波数ドリフトの値に基づいて、無線周波数パルスの中心周波数を調整して、脂肪信号を効果的に抑制することを保証し、主磁界周波数ドリフトのリアルタイムな補正を実現する。
【0022】
上記ステップ1〜ステップ5を完了すると、調整後の無線周波数パルスの中心周波数に基づいて、磁気共鳴CESTイメージングを行うことができる。ここでの磁気共鳴CESTイメージングは、通常の磁気共鳴CESTイメージングを用いることができ、本発明の主眼ではないため、簡単に説明する。通常の磁気共鳴CESTイメージングシーケンスは、CEST飽和、スペクトル事前飽和反転回復脂肪抑制、高速スピンエコー収集の3つのモジュールを含む。
【0023】
(1)CEST飽和モジュール:当該モジュールは、4つの矩形飽和パルスを含み、それぞれの飽和パルスの後に1つの損害勾配が続く。
【0024】
(2)スペクトル事前飽和反転回復脂肪抑制モジュール:当該モジュールは、フリップ角が90度より大きい無線周波数パルスを含み、無線周波数パルスの後に1つの損害勾配が続く。
【0025】
(3)高速スピンエコー収集モジュール:当該モジュールは、目標層面を励起する1つの無線周波数パルスを含み、当該無線周波数パルスの後にm個のリフォーカス無線周波数パルスが続き、即ち、各繰り返し周期において、m行のk空間データ(mは加速因子)を収集し、各リフォーカス無線周波数パルスを印加すると同時に層面選択勾配エンコードを行い、さらに位相勾配エンコードを行い、最後に周波数勾配エンコードを行い、そして周波数勾配エンコードと同時にk空間データの収集を行う。
【0026】
これによりわかるように、本発明における周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージング方法は、3行の非位相エンコードk空間データを収集し、主磁界周波数ドリフトを計算し、主磁界周波数ドリフトの値から無線周波数パルスの中心周波数を調整することにより、主磁界周波数ドリフトのリアルタイムな補正を実現し、磁気共鳴CESTイメージングの性能を向上させる。
【0027】
なお、上述した空白時間間隔τについて、その定義によればτ≧0を満たし、その実際の値は0であってもよい。τ=0であると、fthreshold=∞であり、このとき、精確推定値を主磁界周波数ドリフトの値として選択し、即ち、Δf=Δffineであり、粗略推定値を計算しなくてもよい。
【0028】
上述したイメージングシーケンスに対応して、周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージング装置を提供することもでき、装置には、周波数安定化モジュールとCESTイメージングモジュールが含まれる。周波数安定化モジュールは、主磁界周波数ドリフトのリアルタイムな補正を完了させて、脂肪信号を効果的に抑制することを保証するために、ステップ1〜ステップ5を実行するためのものである。CESTイメージングモジュールは、調整後の無線周波数パルスの中心周波数に基づいて通常の磁気共鳴CESTイメージングを行うためのものである。
【0029】
当業者であれば理解できるように、本発明に係る各モジュールや機能は、回路、その他のハードウェア、または実行可能なプログラムコードによってなされてもよく、対応する機能を実現できればよい。コードが採用されると、コードが記憶装置に記憶され、計算装置における対応する素子によって実行される。本発明の実現は任意の特定のハードウェアとソフトウェアの組み合わせに限定されない。本発明における各ハードウェア型番はいずれも市販の製品を用いることができ、実際のユーザのニーズに応じて選択することができる。もちろん、磁気共鳴CESTイメージングシーケンス及び装置においても、他の必要なハードウェア又はソフトウェアとも連携する必要があり、ここでは詳述しない。
【0030】
以下では、当業者が本発明の本質をよく理解できるように、上記の方法に基づいて実施例を結合してその具体的な技術的効果を示す。
【0031】
実施例
上述した周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージングシーケンスをそれぞれ1つの水モデルと26例の被験脳の磁気共鳴CESTイメージング実験において試験を行い、周波数安定化モジュールが印加されていない通常の磁気共鳴CESTイメージングシーケンスがそれぞれ水モデルと被験脳において行われた磁気共鳴CESTイメージングの実験結果と比較した。具体的な方法は、上述したステップ1〜ステップ5を参照すればよく、ここで繰り返し説明しない。以下、ここでの具体的なパラメータのみを説明する。本実施例では、フリップ角が3度である無線周波数パルスを用いて目標層面を励起し、それぞれt1=2.54ms、t2=5.12ms、t3=8.33ms時刻で3行の非位相エンコードk空間データを収集し、t2、t3の間の空白時間間隔τ=0.64msである。行ごとの非位相エンコード空間データサンプリング点の数n=128である。fthreshold=387.60Hzである。
【0032】
本実施例では、通常の磁気共鳴CESTイメージングシーケンスの3つのモジュールは、具体的に以下の通りである。
(1)CEST飽和モジュール:当該モジュールは、4つの矩形飽和パルスを含み、各飽和パルスは、持続時間が200msであり、幅が2μTであり、各飽和パルスの後に1つの損害勾配が続、損害勾配は、持続時間が10msであり、強度が10mT/mである。
(2)スペクトル事前飽和反転回復脂肪抑制モジュール:当該モジュールは、フリップ角が110度である1つの無線周波数パルスを含み、無線周波数パルスの後に1つの損害勾配が続く。
(3)高速スピンエコー収集モジュール:当該モジュールは、フリップ角が90度である1つの無線周波数パルスを含み、当該90度の無線周波数パルスの後ろに42個の180度のリフォーカス無線周波数パルスが続き、即ち、各繰り返し周期において、42行のk空間データ(加速因子は42である)を収集し、各180度のリフォーカス無線周波数パルスを印加すると、同時に層面選択勾配エンコードを行い、さらに位相勾配エンコードを行い、最後に周波数勾配エンコードを行い、また、周波数勾配エンコードと同時にk空間データ収集を行う。
【0033】
本実施例における比較実験結果は、図2図3図4に示される。
【0034】
図2図3から見られるように、水モデルと被験脳の磁気共鳴CESTイメージング実験のいずれにおいても、周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージングシーケンスのCEST画像品質は良好であることに対して、周波数安定化モジュールが印加されていない通常の磁気共鳴CESTイメージングシーケンスのCEST画像では、主磁界周波数ドリフトによる画像アーチファクトが多いことによって、画像品質が劣化し、CEST画像強度が激しく変化するものである。このことは、本発明の有効性を示している。
【0035】
図4から見られるように、周波数安定化モジュールに基づく磁気共鳴CESTイメージングシーケンスのCEST画像の関心領域CESTにおける平均値が非常に安定していることに対して、周波数安定化モジュールが印加されていない通常の磁気共鳴CESTイメージングシーケンスが人間の脳を走査する実験のCEST画像の関心領域のCEST平均値が大きく変動する。このことも、本発明の有効性をさらに証明している。
【0036】
なお、上述した実施例は、本発明の好適な技術案であり、本発明を限定するものではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々に変更したり代替態様を採用したりすることが可能なことは、当業者に明らかである。従って、等価置換又は等価変換により得られる技術案は、いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4