特許第6941335号(P6941335)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ステラケミファ株式会社の特許一覧

特許6941335二次電池用非水電解液及びそれを備えた二次電池
<>
  • 特許6941335-二次電池用非水電解液及びそれを備えた二次電池 図000033
  • 特許6941335-二次電池用非水電解液及びそれを備えた二次電池 図000034
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6941335
(24)【登録日】2021年9月8日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】二次電池用非水電解液及びそれを備えた二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20210916BHJP
【FI】
   H01M10/0567
【請求項の数】17
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2016-114390(P2016-114390)
(22)【出願日】2016年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-4947(P2017-4947A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2019年5月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-116787(P2015-116787)
(32)【優先日】2015年6月9日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000162847
【氏名又は名称】ステラケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】坂口 紀敬
(72)【発明者】
【氏名】近 壮二郎
(72)【発明者】
【氏名】桂 静郁
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅士
(72)【発明者】
【氏名】西田 哲郎
【審査官】 佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−022332(JP,A)
【文献】 特開2014−022333(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/002186(WO,A1)
【文献】 特開平08−138733(JP,A)
【文献】 特開2007−165125(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/079565(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/092815(WO,A1)
【文献】 特開平08−321313(JP,A)
【文献】 電気化学会電池技術委員会 編集,電池ハンドブック,第一版第一刷,株式会社オーム社,2010年02月10日,第533頁−第546頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
10/36−10/39
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒と電解質とを含む二次電池用非水電解液であって、
前記非水溶媒及び電解質とは別に、下記成分(A)及び成分(B)を含み、
前記成分(A)の添加量は、前記二次電池用非水電解液の全質量に対し、0.05質量%〜5質量%であり、
前記成分(B)の添加量は、前記二次電池用非水電解液の全質量に対し、0.05質量%〜5質量%である二次電池用非水電解液。
成分(A):下記一般式(1)〜(4)の何れかで表される、少なくとも1種のリン化合物(但し、一般式(2)で表されるリン化合物に於いてはLiPFを除く。);
成分(B):ジエチルリン酸リチウム及びビス(2,2,2−トリフルオロエチル)リン酸リチウムの少なくとも何れか1種
【化1】
(式中、前記Mn+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。前記A及びAは、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。前記X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数が1〜20のアルキル基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基を表す。あるいは、前記XとXは、前記炭素数が1〜20のアルキル基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基の何れかであって、相互に結合して環状構造を形成する。前記nは価数を表す。)
【化2】
(式中、前記Mn+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。前記X〜Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が1〜20のアルコキシ基、炭素数が1〜20のアルキルチオ基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基を表す。あるいは、前記X〜Xは、任意に選択される少なくとも1つの組合せが、−OOC−Y−COO−、−OOC−Y−O−又は−O−Y−O−の環状構造を形成しており、その場合の前記Yは、炭素数が1〜20の炭化水素基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子、不飽和結合若しくは環状構造の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。前記nは価数を表す。)
【化3】
(式中、前記Aは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。前記X〜X11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基を表す。あるいは、前記X〜X11のうち任意に選択される少なくとも1つの組合せが、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基の何れかであって、相互に結合して環状構造を形成する。)
【化4】
(式中、前記X12〜X14は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基を表す。あるいは、前記X12〜X14のうち任意に選択される少なくとも1つの組合せが、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基の何れかであって、相互に結合して環状構造を形成する。)
【請求項2】
さらに少なくとも1種の下記成分(C)を含む請求項1に記載の二次電池用非水電解液。
成分(C):下記一般式(6)で表されるホウ素錯体塩、ホウ酸エステル、酸無水物、不飽和結合を有する環状カーボネート、ハロゲン原子を有する環状カーボネート、環状スルホン酸エステル及び下記一般式(7)で表され、かつ、アセトアセチル基を有するアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物
【化5】
(式中、前記Mn+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。前記X15〜X18は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数が1〜20の範囲内であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルキル基、又は炭素数が1〜20の範囲内であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルコキシ基を表す。あるいは、前記X15〜X18は、任意に選択される少なくとも1つの組合せが、−OOC−Z−COO−、−OOC−Z−O−又は−O−Z−O−の環状構造を形成しており、その場合の前記Zは、炭素数が1〜20の炭化水素基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子、不飽和結合若しくは環状構造の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。前記nは価数を表す。)
【化6】
(式中、前記R及びRは、それぞれ独立して、炭素数が1〜20の炭化水素基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合を有する炭化水素基を表す。)
【請求項3】
非水溶媒と電解質とを含む二次電池用非水電解液であって、
前記非水溶媒及び電解質とは別に、下記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含み、
前記成分(A)の添加量は、前記二次電池用非水電解液の全質量に対し、0.05質量%〜5質量%であり、
前記成分(B)の添加量は、前記二次電池用非水電解液の全質量に対し、0.05質量%〜5質量%である
前記成分(C)の添加量は、前記二次電池用非水電解液の全質量に対し、0.05質量%〜5質量%である二次電池用非水電解液。
成分(A):下記一般式(1)〜(4)の何れかで表される、少なくとも1種のリン化合物;
成分(B):下記一般式(5)で表される、少なくとも1種のリン酸ジエステル塩;
成分(C):下記一般式(6)で表されるホウ素錯体塩(但し、リチウムビスオキサボレートを除く。)、ホウ酸エステル、酸無水物、環状スルホン酸エステル及び下記一般式(7)で表され、かつ、アセトアセチル基を有するアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物
【化7】
(式中、前記Mn+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。前記A及びAは、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。前記X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数が1〜20のアルキル基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基を表す。あるいは、前記XとXは、前記炭素数が1〜20のアルキル基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基の何れかであって、相互に結合して環状構造を形成する。前記nは価数を表す。)
【化8】
(式中、前記Mn+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。前記X〜Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が1〜20のアルコキシ基、炭素数が1〜20のアルキルチオ基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基を表す。あるいは、前記X〜Xは、任意に選択される少なくとも1つの組合せが、−OOC−Y−COO−、−OOC−Y−O−又は−O−Y−O−の環状構造を形成しており、その場合の前記Yは、炭素数が1〜20の炭化水素基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子、不飽和結合若しくは環状構造の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。前記nは価数を表す。)
【化9】
(式中、前記Aは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。前記X〜X11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基を表す。あるいは、前記X〜X11のうち任意に選択される少なくとも1つの組合せが、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基の何れかであって、相互に結合して環状構造を形成する。)
【化10】
(式中、前記X12〜X14は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基を表す。あるいは、前記X12〜X14のうち任意に選択される少なくとも1つの組合せが、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基の何れかであって、相互に結合して環状構造を形成する。)
【化11】
(式中、前記Mn+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。前記R及びRは、それぞれ独立して、炭素数が1〜20の炭化水素基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。あるいは、前記RとRは、前記炭素数が1〜20の炭化水素基、又は前記炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基の何れかであって、相互に結合して環状構造を形成する。前記nは価数を表す。)
【化12】
(式中、前記Mn+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。前記X15〜X18は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数が1〜20の範囲内であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルキル基、又は炭素数が1〜20の範囲内であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルコキシ基を表す。あるいは、前記X15〜X18は、任意に選択される少なくとも1つの組合せが、−OOC−Z−COO−、−OOC−Z−O−又は−O−Z−O−の環状構造を形成しており、その場合の前記Zは、炭素数が1〜20の炭化水素基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子、不飽和結合若しくは環状構造の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。前記nは価数を表す。)
【化13】
(式中、前記R及びRは、それぞれ独立して、炭素数が1〜20の炭化水素基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合を有する炭化水素基を表す。)
【請求項4】
前記成分(C)の添加量は、前記二次電池用非水電解液の全質量に対し、0.05質量%〜5質量%である請求項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項5】
前記一般式(1)で表されるリン化合物がジフルオロリン酸リチウム又はジフルオロリン酸ナトリウムである請求項1〜の何れか1項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項6】
前記一般式(2)で表されるリン化合物がリチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート、ナトリウムジフルオロビスオキサレートホスフェート、リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート又はナトリウムテトラフルオロオキサレートホスフェートである請求項1〜の何れか1項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項7】
前記一般式(3)で表されるリン化合物がリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)又はビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホン酸である請求項1〜の何れか1項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項8】
前記一般式(4)で表されるリン化合物がトリメチルホスフィン又はメチルジフェニルホスフィンである請求項1〜の何れか1項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項9】
前記一般式(5)で表されるリン酸ジエステル塩が、ジエチルリン酸リチウム又はビス(2,2,2−トリフルオロエチル)リン酸リチウムである請求項3に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項10】
前記一般式(6)で表されるホウ素錯体塩がリチウムビス[1,2’−ベンゼンジオラート(2)−O,O’]ボレート、リチウムビスサリチラートボレート又はリチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロボレートである請求項2〜4の何れか1項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項11】
前記ホウ酸エステルがホウ酸トリメチルである請求項2〜4又は10の何れか1項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項12】
前記酸無水物が無水マレイン酸である請求項2〜4、10又は11の何れか1項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項13】
前記不飽和結合を有する環状カーボネートがビニレンカーボネートである請求項2に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項14】
前記ハロゲン原子を有する環状カーボネートがフルオロエチレンカーボネートである請求項2又は1に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項15】
前記環状スルホン酸エステルが1,3−プロパンスルトンである請求項2〜4、又は10〜14の何れか1項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項16】
前記一般式(7)で表されるアセトアセチル基を有するアミン類がN,N−ジメチルアセトアセトアミドである請求項2〜4、又は10〜15の何れか1項に記載の二次電池用非水電解液。
【請求項17】
請求項1〜1の何れか1項に記載の二次電池用非水電解液、正極及び負極を少なくとも備えた二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度負荷環境下で保存後の充放電特性の低下と内部抵抗の上昇が少ない二次電池用非水電解液及びそれを備えた二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池を始めとする二次電池の応用分野は、携帯電話やパソコン、デジタルカメラ等の電子機器から車載への用途拡大に伴い、出力密度やエネルギー密度の向上ならびに容量損失の抑制等、さらなる高性能化が進められている。車載用途では使用環境温度が高温側、低温側ともに従来以上の耐久性が求められている。特に高温環境については、セルが大型化されると、使用環境のみならず自己発熱によって定常的に比較的高い温度にさらされることになり、高温耐久性の向上は非常に重要である。更に、高温環境下で保存すると、電極や電解液、電解質の劣化に伴いセルの内部抵抗が上昇し、低温環境下での内部抵抗に起因するエネルギーロスが著しくなる。
【0003】
従来の一般的なリチウム二次電池には、正極活物質及び負極活物質にLiイオンを可逆的に挿入できる材料が用いられている。例えば、正極活物質には、LiNiO、LiCoO、LiMn、又はLiFePO等の化合物が使用されている。また、負極活物質には、リチウム金属、その合金、炭素材料、又は黒鉛材料等が使用されている。更に、リチウム二次電池に用いられる電解液には、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート等の混合溶媒にLiPF、LiBF等の電解質を溶解させたものが使用されている。
【0004】
電極活物質と電解液の界面では、リチウムイオン伝導性はあるが電子導電性のない安定な皮膜(Solid Electrolyte Interface)が形成されるという解釈が一般的になされている。電極活物質へのリチウムイオンの挿入脱離過程は可逆性に優れているが、高温環境下で充放電を繰り返すと、その安定界面に亀裂や溶解・分解が生じ、充放電特性が低下したり、インピーダンスが増加したりする傾向がある。
【0005】
こうした問題点に対し、温度負荷環境下に於ける二次電池の保存特性を改善する試みが数多く報告されている。例えば、下記特許文献1ではジフルオロリン酸塩を添加することが提案されており、当該特許文献1によれば、高温サイクル特性と入出力特性の向上が図られるとしている。しかしながら、ジフルオロリン酸塩を添加するだけでは、内部抵抗の上昇等が問題となる。
【0006】
また、下記特許文献2には、ジフルオロリン酸塩とオキサラトボレート型化合物を添加剤として含有する非水電解液を用いることによって、リチウム二次電池の初期の負極抵抗の上昇が抑制可能とされている。しかしながら、正極抵抗が高く、また、負極抵抗も十分に抑制されているとはいえないことから、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−31079号公報
【特許文献2】特開2014−11065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、温度負荷環境下で保存後の充放電特性の低下と内部抵抗の上昇が少ない二次電池用非水電解液及びそれを備えた二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の二次電池用非水電解液は、前記の課題を解決する為に、二次電池に用いられる二次電池用非水電解液であって、下記成分(A)及び成分(B)を含むことを特徴とする。
成分(A):下記一般式(1)〜(4)の何れかで表される、少なくとも1種のリン化合物;
成分(B):下記一般式(5)で表される、少なくとも1種のリン酸ジエステル塩
【0010】
【化1】
(式中、前記Mn+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。前記A及びAは、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。前記X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数が1〜20のアルキル基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基を表す。あるいは、前記XとXは、前記炭素数が1〜20のアルキル基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基の何れかであって、相互に結合して環状構造を形成する。前記nは価数を表す。)
【0011】
【化2】
(式中、前記Mn+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。前記X〜Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が1〜20のアルコキシ基、炭素数が1〜20のアルキルチオ基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基を表す。あるいは、前記X〜Xは、任意に選択される少なくとも1つの組合せが、−OOC−Y−COO−、−OOC−Y−O−又は−O−Y−O−の環状構造を形成しており、その場合の前記Yは、炭素数が0〜20の炭化水素基、又は炭素数が0〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子、不飽和結合若しくは環状構造の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。前記nは価数を表す。)
【0012】
【化3】
(式中、前記Aは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。前記X〜X11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基を表す。あるいは、前記X〜X11のうち任意に選択される少なくとも1つの組合せが、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基の何れかであって、相互に結合して環状構造を形成する。)
【0013】
【化4】
(式中、前記X12〜X14は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基を表す。あるいは、前記X12〜X14のうち任意に選択される少なくとも1つの組合せが、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキルチオ基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基、炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基の何れかであって、相互に結合して環状構造を形成する。)
【0014】
【化5】
(式中、前記Mn+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。前記R及びRは、それぞれ独立して、炭素数が1〜20の炭化水素基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。あるいは、前記RとRは、前記炭素数が1〜20の炭化水素基、又は前記炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基の何れかであって、相互に結合して環状構造を形成する。前記nは価数を表す。)
【0015】
前記構成に於いては、さらに少なくとも1種の下記成分(C)を含んでいてもよい。
成分(C):下記一般式(6)で表されるホウ素錯体塩、ホウ酸エステル、酸無水物、不飽和結合を有する環状カーボネート、ハロゲン原子を有する環状カーボネート、環状スルホン酸エステル及び下記一般式(7)で表され、かつ、アセトアセチル基を有するアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物
【0016】
【化6】
(式中、前記Mn+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。前記X15〜X18は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数が1〜20の範囲内であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルキル基、又は炭素数が1〜20の範囲内であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルコキシ基を表す。あるいは、前記X15〜X18は、任意に選択される少なくとも1つの組合せが、−OOC−Z−COO−、−OOC−Z−O−又は−O−Z−O−の環状構造を形成しており、その場合の前記Zは、炭素数が1〜20の炭化水素基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子、不飽和結合若しくは環状構造の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。前記nは価数を表す。)
【0017】
【化7】
(式中、前記R及びRは、それぞれ独立して、炭素数が1〜20の炭化水素基、又は炭素数が1〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合を有する炭化水素基を表す。)
【0018】
前記構成に於いて、前記成分(A)の添加量は、前記二次電池用非水電解液の全質量に対し、0.05質量%〜5質量%であり、前記成分(B)の添加量は、前記二次電池用非水電解液の全質量に対し、0.05質量%〜5質量%であることが好ましい。
【0019】
また、前記構成に於いて、前記成分(C)の添加量は、前記二次電池用非水電解液の全質量に対し、0.05質量%〜5質量%であることが好ましい。
【0020】
前記の構成に於いては、前記一般式(1)で表されるリン化合物がジフルオロリン酸リチウム又はジフルオロリン酸ナトリウムであることが好ましい。
【0021】
前記の構成に於いては、前記一般式(2)で表されるリン化合物がリチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート、ナトリウムジフルオロビスオキサレートホスフェート、リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート又はナトリウムテトラフルオロオキサレートホスフェートであることが好ましい。
【0022】
前記の構成に於いては、前記一般式(3)で表されるリン化合物がリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)又はビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホン酸であることが好ましい。
【0023】
前記の構成に於いては、前記一般式(4)で表されるリン化合物がトリメチルホスフィン又はメチルジフェニルホスフィンであることが好ましい。
【0024】
前記の構成に於いては、前記一般式(5)で表されるリン酸ジエステル塩が、ジエチルリン酸リチウム又はビス(2,2,2−トリフルオロエチル)リン酸リチウムであることが好ましい。
【0025】
前記の構成に於いては、前記一般式(6)で表されるホウ素錯体塩がリチウムビス[1,2’−ベンゼンジオラート(2)−O,O’]ボレート、リチウムビスサリチラートボレート又はリチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロボレートであることが好ましい。
【0026】
前記の構成に於いては、前記ホウ酸エステルがホウ酸トリメチルであることが好ましい。
【0027】
前記の構成に於いては、前記酸無水物が無水マレイン酸であることが好ましい。
【0028】
前記の構成に於いては、前記不飽和結合を有する環状カーボネートがビニレンカーボネートであることが好ましい。
【0029】
前記の構成に於いては、前記ハロゲン原子を有する環状カーボネートがフルオロエチレンカーボネートであることが好ましい。
【0030】
前記の構成に於いては、前記環状スルホン酸エステルが1,3−プロパンスルトンであることが好ましい。
【0031】
前記の構成に於いては、前記一般式()で表されるアセトアセチル基を有するアミン類がN,N−ジメチルアセトアセトアミドであることが好ましい。
【0032】
また、本発明の二次電池は、前記の課題を解決する為に、前記に記載の二次電池用非水電解液、正極及び負極を少なくとも備えたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、二次電池用非水電解液に、前記一般式(1)〜(4)の何れかで表される、少なくとも1種のリン化合物(成分(A))と、前記一般式(5)で表される、少なくとも1種のリン酸ジエステル塩(成分(B))とを添加することにより、これを備えた二次電池を高温環境下で長期間保管しても、充放電特性の低下を抑制できると共に、内部抵抗の上昇も抑制することができる。そのメカニズムについては明らかではないが、前記成分(A)及び成分(B)の添加により電極活物質の表面に皮膜が形成され、この皮膜が備えている熱安定性や膜質等の効能に起因しているものと推定される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施の一形態に係る二次電池用非水電解液を備えたリチウムイオン二次電池の概略を示す断面模式図である。
図2】本発明の二次電池用非水電解液を備えた電気化学特性評価セルの概略を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(二次電池用非水電解液)
本実施の形態に係る二次電池用非水電解液(以下、「非水電解液」という。)は、電解質を溶解させた有機溶媒(非水溶媒)に、後述の成分(A)及び成分(B)を添加剤として添加したものである。
【0036】
初期の充電の際に非水電解液の分解という不可逆反応が、電極と非水電解液の界面で生じる。電極活物質、非水電解液中の非水溶媒や電解質及び添加剤の種類、充放電条件に応じて形成される皮膜の性質、例えば熱安定性やイオン伝導性、モフォロジー、緻密さ等の性質は大きく変化すると考えられる。本実施の形態に於いても、非水電解液に成分(A)及び成分(B)を添加することで、電極活物質の表面に皮膜が形成され、この皮膜の性質、即ち、熱安定性や膜質等の効能に起因して、二次電池の高温環境下(例えば、40℃〜60℃)での保存特性の改善が図られると考えられる。
【0037】
<成分(A)>
前記成分(A)は、非水電解液中に少なくとも1種含まれており、具体的には、下記一般式(1)〜(4)の何れかで表されるリン化合物である。
【0038】
先ず、下記一般式(1)で表されるリン化合物について説明する。
【0039】
【化8】
【0040】
前記一般式(1)に於いて、前記Mn+はアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン又はオニウムイオンを表す。
【0041】
前記アルカリ金属イオンとしては特に限定されず、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0042】
前記アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0043】
前記遷移金属イオンとしては特に限定されず、例えば、マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、クロムイオン、銅イオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、バナジウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0044】
前記オニウムイオンとしては、アンモニウムイオン(NH4+)、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオン、第4級アンモニウムイオン、第4級ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン等が挙げられる。
【0045】
前記第1級アンモニウムイオンとしては特に限定されず、例えば、メチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、プロピルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0046】
前記第2級アンモニウムイオンとしては特に限定されず、例えば、ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、ジプロピルアンモニウムイオン、ジブチルアンモニウムイオン、エチルメチルアンモニウムイオン、メチルプロピルアンモニウムイオン、メチルブチルアンモニウムイオン、プロピルブチルアンモニウムイオン、ジイソプロピルアンモニウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0047】
前記第3級アンモニウムイオンとしては特に限定されず、例えば、トリメチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、トリプロピルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、エチルジメチルアンモニウムイオン、ジエチルメチルアンモニウムイオン、トリイソプロピルアンモニウムイオン、ジメチルイソプロピルアンモニウムイオン、ジエチルイソプロピルアンモニウムイオン、ジメチルプロピルアンモニウムイオン、ブチルジメチルアンモニウムイオン、1−メチルピロリジニウムイオン、1−エチルピロリジニウムイオン、1−プロピルピロリジニウムイオン、1−ブチルプロピルピロリジニウムイオン、1−メチルイミダゾリウムイオン、1−エチルイミダゾリウムイオン、1−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチルイミダゾリウムイオン、ピラゾリウムイオン、1−メチルピラゾリウムイオン、1−エチルピラゾリウムイオン、1−プロピルピラゾリウムイオン、1−ブチルピラゾリウムイオン、ピリジニウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0048】
前記第4級アンモニウムイオンをなす第4級アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、脂肪族4級アンモニウム類、イミダゾリウム類、ピリジニウム類、ピラゾリウム類、ピリダジニウム類等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0049】
更に、前記脂肪族4級アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトライソプロピルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルイソプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、トリメチルペンチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、1−エチル−1−メチル−ピロリジニウム、1−ブチル−1−メチルピロリジニウム、1−エチル−1−メチル−ピペリジニウム、1−ブチル−1−メチルピペリジニウム等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0050】
前記イミダゾリウム類としては特に限定されず、例えば、1.3ジメチル−イミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−n−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−n−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0051】
前記ピリジニウム類としては特に限定されず、例えば、1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−n−プロピルピリジニウム等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0052】
前記ピラゾリウム類としては特に限定されず、例えば、1,2−ジメチルピラゾリウム、1−メチル−2−エチルピラゾリウム、1−プロピル−2−メチルピラゾリウム、1−メチル−2−ブチルピラゾリウム、1−メチルピラゾリウム、3−メチルピラゾリウム、4−メチルピラゾリウム、4−ヨードピラゾリウム、4−ブロモピラゾリウム、4−ヨードー3−メチルピラゾリウム、4−ブロモ−3−メチルピラゾリウム、3−トリフルオロメチルピラゾリウムが挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0053】
前記ピリダジニウム類としては特に限定されず、例えば、1−メチルピリダジニウム、1−エチルピリダジニウム、1−プロピルピリダジニウム、1−ブチルピリダジニウム、3−メチルピリダジニウム、4−メチルピリダジニウム、3−メトキシピリダジニウム、3,6−ジクロロピリダジニウム、3,6−ジクロ−4−メチルピリダジニウム、3−クロロ−6−メチルピリダジニウム、3−クロロ−6−メトキシピリダジニウムが挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0054】
前記第4級ホスホニウムイオンをなす第4級ホスホニウムとしては特に限定されず、例えば、ベンジルトリフェニルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0055】
前記スルホニウムイオンとしては特に限定されず、例えば、トリメチルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリエチルスルホニウム等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0056】
前記Mn+の例示として列挙したもののうち、入手の容易さの観点からは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオンが好ましい。
【0057】
前記A及びAは、それぞれ独立して、酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。
【0058】
前記一般式(1)に於いて、前記X及びXは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、又はハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキル基」という。)を表す。アルキル基、及びハロゲン原子等を有するアルキル基の炭素数は1〜20の範囲であり、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4である。また、前記不飽和結合の数は1〜10の範囲が好ましく、1〜5の範囲がより好ましく、1〜3の範囲が特に好ましい。
【0059】
前記ハロゲン原子としては、ヨウ素、臭素、塩素、フッ素を表す。
【0060】
前記アルキル基又はハロゲン原子等を有するアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、2−ヨードエチル基、2−ブロモエチル基、2−クロロエチル基、2−フルオロエチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、2,2−ジヨードエチル基、2,2−ジブロモエチル基、2,2−ジクロロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリブロモエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ヘキサフルオロー2−プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基、2−ヨードシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、2−クロロシクロヘキシル基、2−フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の鎖状アルケニル基、2−シクロペンテニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基等の鎖状アルキニル基、フェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基等のフェニル基、2−ヨードフェニル基、2−ブロモフェニル基、2−クロロフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−ヨードフェニル基、3−ブロモフェニル基、3−クロロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−ヨードフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3,5−ジヨードフェニル基、3,5−ジブロモフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、3−アミノ−2−ナフチル基等のナフチル基等が挙げられる。
【0061】
尚、前記ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素の原子を意味する。また、前記ヘテロ原子とは、酸素、窒素又は硫黄等の原子を意味する。前記ハロゲン原子等を有するアルキル基において、前記ハロゲン原子及びヘテロ原子は、当該アルキル基中の水素の一部又は全部がこれらのハロゲン原子及び/又はヘテロ原子の何れかで置換されていてもよい。
【0062】
また、前記XとXは、前記アルキル基、又はハロゲン原子等を有するアルキル基の何れかが、相互に結合して環状構造を形成するものであってもよい。この場合、前記XとXにおけるアルキル基又はハロゲン原子等を有するアルキル基は、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基等の直鎖アルキレン基、ヨードメチレン基、ジヨードメチレン基、ブロモメチレン基、ジブロモメチレン基、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ヨードエチレン基、1,1−ジヨードエチレン基、1,2−ジヨードエチレン基、トリヨードエチレン基、テトラヨードエチレン基、クロロエチレン基、1,1−ジクロロエチレン基、1,2−ジクロロエチレン基、トリクロロエチレン基、テトラクロロエチレン基、フルオロエチレン基、1,1−ジフルオロエチレン基、1,2−ジフルオロエチレン基、トリフルオロエチレン基、テトラフルオロエチレン基等の含ハロゲン直鎖アルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、ベンジレン基、ナフチレン基、アントラシレン基、ナフタシレン基、ペンタシレン基のような環状炭化水素基及びその一部又は全部をハロゲン原子等に置き換えたものとなる。
【0063】
前記XとXは、前記に例示した官能基群に於いて、同種でもよく相互に異なっていてもよい。また前記に例示した官能基群は単なる例示に過ぎず、これらに限定されるものではない。
【0064】
尚、前記一般式(1)に於いて、前記nは価数を表す。例えば、前記Mが1価のカチオンである場合はn=1であり、2価のカチオンである場合はn=2であり、3価のカチオンである場合はn=3である。
【0065】
前記一般式(1)で表されるリン化合物の具体例としては、例えば、入手が容易なジフルオロリン酸リチウムやジフルオロリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0066】
次に、下記一般式(2)で表されるリン化合物について説明する。但し、前記一般式(1)で表されるリン化合物において説明したものと同一のものについては、その説明を省略する。
【0067】
【化9】
【0068】
前記一般式(2)に於いて、前記Mn+及び価数n、前記一般式(1)で述べたのと同様である。
【0069】
前記一般式(2)に於いて、前記X〜Xは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキル基」という。)、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルコキシ基」という。)、又はハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキルチオ基」という。)を表す。前記アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子等を有するアルキル基、ハロゲン原子等を有するアルコキシ基及びハロゲン原子等を有するアルキルチオ基の炭素数は1〜20の範囲であり、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4である。また、不飽和結合の数は1〜10の範囲が好ましく、1〜5の範囲がより好ましく、1〜3の範囲が特に好ましい。
【0070】
前記ハロゲン原子及びヘテロ原子は、前記一般式(1)で述べたのと同様である。また、前記ハロゲン原子等を有するアルキル基、ハロゲン原子等を有するアルコキシ基及びハロゲン原子等を有するアルキルチオ基において、前記ハロゲン原子及びヘテロ原子は、これらの官能基中の水素の一部又は全部がこれらのハロゲン原子及び/又はヘテロ原子の何れかで置換されていてもよい。
【0071】
前記X〜Xは、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、ヨードメチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、ジヨードメチル基、ジブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリヨードメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2−ヨードエチル基、2−ブロモエチル基、2−クロロエチル基、2−フルオロエチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、2,2−ジヨードエチル基、2,2−ジブロモエチル基、2,2−ジクロロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリブロモエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ヘキサフルオロ−2−プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基、2−ヨードシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、2−クロロシクロヘキシル基、2−フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の鎖状アルケニル基、2−シクロペンテニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基等の鎖状アルキニル基、フェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基等のフェニル基、2−ヨードフェニル基、2−ブロモフェニル基、2−クロロフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−ヨードフェニル基、3−ブロモフェニル基、3−クロロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−ヨードフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3,5−ジヨードフェニル基、3,5−ジブロモフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等の鎖状アルコキシ基、シクロペントキシ基、シクロヘキソキシ基等の環状アルコキシ基、2−ヨードエトキシ基、2−ブロモエトキシ基、2−クロロエトキシ基、2−フルオロエトキシ基、1,2−ジヨードエトキシ基、1,2−ジブロモエトキシ基、1,2−ジクロロエトキシ基、1,2−ジフルオロエトキシ基、2,2−ジヨードエトキシ基、2,2−ジブロモエトキシ基、2,2−ジクロロエトキシ基、2,2−ジフルオロエトキシ基、2,2,2−トリブロモエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、ヘキサフルオロ−2−プロポキシ基等の鎖状含ハロゲンアルコキシ基、2−ヨードシクロヘキソキシ基、2−ブロモシクロヘキソキシ基、2−クロロシクロヘキソキシ基、2−フルオロシクロヘキソキシ基等の環状含ハロゲンアルコキシ基、2−プロペノキシ基、イソプロペノキシ基、2−ブテノキシ基、3−ブテノキシ基等の鎖状アルケニルアルコキシ基、2−シクロペンテノキシ基、2−シクロヘキセノキシ基、3−シクロヘキセノキシ基等の環状アルケニルアルコキシ基、2−プロピノキシ基、1−ブチノキシ基、2−ブチノキシ基、3−ブチノキシ基、1−ペンチノキシ基、2−ペンチノキシ基、3−ペンチノキシ基、4−ペンチノキシ基等の鎖状アルキニルアルコキシ基、フェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、3,5−ジメチルフェノキシ基等のフェノキシ基、2−ヨードフェノキシ基、2−ブロモフェノキシ基、2−クロロフェノキシ基、2−フルオロフェノキシ基、3−ヨードフェノキシ基、3−ブロモフェノキシ基、3−クロロフェノキシ基、3−フルオロフェノキシ基、4−ヨードフェノキシ基、4−ブロモフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、4−フルオロフェノキシ基、3,5−ジヨードフェノキシ基、3,5−ジブロモフェノキシ基、3,5−ジクロロフェノキシ基、3,5−ジフルオロフェノキシ基等の含ハロゲンフェノキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、イソプロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等のアルキルチオ基等が挙げられる。
【0072】
また、前記X〜Xは、任意に選択される少なくとも1つの組合せが、−OOC−Y−COO−、−OOC−Y−O−又は−O−Y−O−の環状構造の何れかを形成していてもよい。前記X〜Xが2以上の環状構造を形成する場合、当該環状構造は相互に同一でもよく、異なっていてもよい。また、前記Yは、炭素数が0〜20の炭化水素基、又は炭素数が0〜20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子、不飽和結合若しくは環状構造の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。また、不飽和結合の数は1〜10の範囲が好ましく、1〜5の範囲がより好ましく、1〜3の範囲が特に好ましい。
【0073】
前記Yとしては特に限定されず、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基等の直鎖アルキレン基、ヨードメチレン基、ジヨードメチレン基、ブロモメチレン基、ジブロモメチレン基、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ヨードエチレン基、1,1−ジヨードエチレン基、1,2−ジヨードエチレン基、トリヨードエチレン基、テトラヨードエチレン基、クロロエチレン基、1,1−ジクロロエチレン基、1,2−ジクロロエチレン基、トリクロロエチレン基、テトラクロロエチレン基、フルオロエチレン基、1,1−ジフルオロエチレン基、1,2−ジフルオロエチレン基、トリフルオロエチレン基、テトラフルオロエチレン基等の含ハロゲン直鎖アルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、ベンジレン基、ナフチレン基、アントラシレン基、ナフタシレン基、ペンタシレン基のような環状炭化水素基及びその一部又は全部をハロゲンに置き換えたもの等が挙げられる。
【0074】
例えばYの炭素数が0の場合、−OOC−Y−COO−は−OOC−COO−であり、オキサレート基を表す。また、前記Yが1,2−フェニレン基である場合、−O−Y−O−はベンゼンジオラート基を表し、−O−Y−COO−はサリチラート基を表す。
【0075】
尚、前記一般式(2)で表されるリン化合物としては、例えば、入手が容易なリチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート、ナトリウムジフルオロビスオキサレートホスフェート、リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート、ナトリウムテトラフルオロオキサレートホスフェート等が挙げられる。
【0076】
次に、下記一般式(3)で表されるリン化合物について説明する。但し、前記一般式(1)及び(2)で表されるリン化合物において説明したものと同一のものについては、その説明を省略する。
【0077】
【化10】
【0078】
前記Aは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子を表す。
【0079】
前記X〜X11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキル基」という。)、ハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルコキシ基」という。)、又はハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキルチオ基」という。)を表す。前記アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子等を有するアルキル基、ハロゲン原子等を有するアルコキシ基及びハロゲン原子等を有するアルキルチオ基の炭素数は1〜20の範囲であり、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4である。また、不飽和結合の数は1〜10の範囲が好ましく、1〜5の範囲がより好ましく、1〜3の範囲が特に好ましい。
【0080】
前記X〜X11は特に限定されず、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、ヨードメチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、ジヨードメチル基、ジブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリヨードメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2−ヨードエチル基、2−ブロモエチル基、2−クロロエチル基、2−フルオロエチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、2,2−ジヨードエチル基、2,2−ジブロモエチル基、2,2−ジクロロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリブロモエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ヘキサフルオロ−2−プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基、2−ヨードシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、2−クロロシクロヘキシル基、2−フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の鎖状アルケニル基、2−シクロペンテニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基等の鎖状アルキニル基、フェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基等のフェニル基、2−ヨードフェニル基、2−ブロモフェニル基、2−クロロフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−ヨードフェニル基、3−ブロモフェニル基、3−クロロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−ヨードフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3,5−ジヨードフェニル基、3,5−ジブロモフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等の鎖状アルコキシ基、シクロペントキシ基、シクロヘキソキシ基等の環状アルコキシ基、2−ヨードエトキシ基、2−ブロモエトキシ基、2−クロロエトキシ基、2−フルオロエトキシ基、1,2−ジヨードエトキシ基、1,2−ジブロモエトキシ基、1,2−ジクロロエトキシ基、1,2−ジフルオロエトキシ基、2,2−ジヨードエトキシ基、2,2−ジブロモエトキシ基、2,2−ジクロロエトキシ基、2,2−ジフルオロエトキシ基、2,2,2−トリブロモエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、ヘキサフルオロ−2−プロポキシ基等の鎖状含ハロゲンアルキル基、2−ヨードシクロヘキソキシ基、2−ブロモシクロヘキソキシ基、2−クロロシクロヘキソキシ基、2−フルオロシクロヘキソキシ基等の環状含ハロゲンアルキル基、2−プロペキシ基、イソプロペキシ基、2−ブテキシ基、3−ブテキシ基等の鎖状アルケニルアルコキシ基、2−シクロペンテキシ基、2−シクロヘキセキシ基、3−シクロヘキセキシ基等の環状アルケニルアルコキシ基、2−プロピキシ基、1−ブチキシ基、2−ブチキシ基、3−ブチキシ基、1−ペンチキシ基、2−ペンチキシ基、3−ペンチキシ基、4−ペンチキシ基等の鎖状アルキニルアルコキシ基、フェノキシ基、3−メトキシ基、フェノキシ基、4−メトキシ基、フェノキシ基、3,5−ジメトキシ基、フノキシ基等のフェノキシ基、2−ヨードフェノキシ基、2−ブロモフェノキシ基、2−クロロフェノキシ基、2−フルオロフェノキシ基、3−ヨードフェノキシ基、3−ブロモフェノキシ基、3−クロロフェノキシ基、3−フルオロフェノキシ基、4−ヨードフェノキシ基、4−ブロモフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、4−フルオロフェノキシ基、3,5−ジヨードフェノキシ基、3,5−ジブロフェノキシ基、3,5−ジクロロフェノキシ基、3,5−ジフルオロフェノキシ基等の含ハロゲンフェノキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、イソプロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等のアルキルチオ基等が挙げられる。
【0081】
また、前記X〜X11は、任意に選択される少なくとも1つの組合せにより、前記アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子等を有するアルキル基、ハロゲン原子等を有するアルコキシ基又はハロゲン原子等を有するアルキルチオ基の何れかが、相互に結合して環状構造を形成するものであってもよい。この場合、前記X〜X11における前記アルキル基等が、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基等の直鎖アルキレン基、ヨードメチレン基、ジヨードメチレン基、ブロモメチレン基、ジブロモメチレン基、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ヨードエチレン基、1,1−ジヨードエチレン基、1,2−ジヨードエチレン基、トリヨードエチレン基、テトラヨードエチレン基、クロロエチレン基、1,1−ジクロロエチレン基、1,2−ジクロロエチレン基、トリクロロエチレン基、テトラクロロエチレン基、フルオロエチレン基、1,1−ジフルオロエチレン基、1,2−ジフルオロエチレン基、トリフルオロエチレン基、テトラフルオロエチレン基等の含ハロゲン直鎖アルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、ベンジレン基、ナフチレン基、アントラシレン基、ナフタシレン基、ペンタシレン基のような環状炭化水素基及びその一部又は全部をハロゲン原子等に置き換えたものとなる。
【0082】
前記ハロゲン原子及びヘテロ原子は、前記一般式(1)で述べたのと同様である。また、前記ハロゲン原子等を有するアルキル基、ハロゲン原子等を有するアルコキシ基及びハロゲン原子等を有するアルキルチオ基において、前記ハロゲン原子及びヘテロ原子は、それらの官能基中の水素の一部又は全部がこれらのハロゲン原子及び/又はヘテロ原子の何れかで置換されていてもよい。
【0083】
前記一般式(3)で表されるリン化合物の具体例としては、例えば、入手が容易なリン酸トリメチル、リン酸トリエチルやリン酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスホン酸等が挙げられる。
【0084】
次に、下記一般式(4)で表されるリン化合物について説明する。但し、前記一般式(1)〜(3)で表されるリン化合物において説明したものと同一のものについては、その説明を省略する。
【0085】
【化11】
【0086】
前記X12〜X14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキル基」という。)、ハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルコキシ基」という。)、又はハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキルチオ基」という。)を表す。前記アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子等を有するアルキル基、ハロゲン原子等を有するアルコキシ基及びハロゲン原子等を有するアルキルチオ基の炭素数は1〜20の範囲であり、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4である。また、不飽和結合の数は1〜10の範囲が好ましく、1〜5の範囲がより好ましく、1〜3の範囲が特に好ましい。
【0087】
前記X12〜X14は特に限定されず、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、ヨードメチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、ジヨードメチル基、ジブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリヨードメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2−ヨードエチル基、2−ブロモエチル基、2−クロロエチル基、2−フルオロエチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、2,2−ジヨードエチル基、2,2−ジブロモエチル基、2,2−ジクロロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリブロモエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ヘキサフルオロ−2−プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基、2−ヨードシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、2−クロロシクロヘキシル基、2−フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の鎖状アルケニル基、2−シクロペンテニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基等の鎖状アルキニル基、フェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基等のフェニル基、2−ヨードフェニル基、2−ブロモフェニル基、2−クロロフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−ヨードフェニル基、3−ブロモフェニル基、3−クロロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−ヨードフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3,5−ジヨードフェニル基、3,5−ジブロモフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等の鎖状アルコキシ基、シクロペントキシ基、シクロヘキソキシ基等の環状アルコキシ基、2−ヨードエトキシ基、2−ブロモエトキシ基、2−クロロエトキシ基、2−フルオロエトキシ基、1,2−ジヨードエトキシ基、1,2−ジブロモエトキシ基、1,2−ジクロロエトキシ基、1,2−ジフルオロエトキシ基、2,2−ジヨードエトキシ基、2,2−ジブロモエトキシ基、2,2−ジクロロエトキシ基、2,2−ジフルオロエトキシ基、2,2,2−トリブロモエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、ヘキサフルオロ−2−プロポキシ基等の鎖状含ハロゲンアルキル基、2−ヨードシクロヘキソキシ基、2−ブロモシクロヘキソキシ基、2−クロロシクロヘキソキシ基、2−フルオロシクロヘキソキシ基等の環状含ハロゲンアルキル基、2−プロペキシ基、イソプロペキシ基、2−ブテキシ基、3−ブテキシ基等の鎖状アルケニルアルコキシ基、2−シクロペンテキシ基、2−シクロヘキセキシ基、3−シクロヘキセキシ基等の環状アルケニルアルコキシ基、2−プロピキシ基、1−ブチキシ基、2−ブチキシ基、3−ブチキシ基、1−ペンチキシ基、2−ペンチキシ基、3−ペンチキシ基、4−ペンチキシ基等の鎖状アルキニルアルコキシ基、フェノキシ基、3−メトキシ基、フェノキシ基、4−メトキシ基、フェノキシ基、3,5−ジメトキシ基、フノキシ基等のフェノキシ基、2−ヨードフェノキシ基、2−ブロモフェノキシ基、2−クロロフェノキシ基、2−フルオロフェノキシ基、3−ヨードフェノキシ基、3−ブロモフェノキシ基、3−クロロフェノキシ基、3−フルオロフェノキシ基、4−ヨードフェノキシ基、4−ブロモフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、4−フルオロフェノキシ基、3,5−ジヨードフェノキシ基、3,5−ジブロフェノキシ基、3,5−ジクロロフェノキシ基、3,5−ジフルオロフェノキシ基等の含ハロゲンフェノキシ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、イソプロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等のアルキルチオ基等が挙げられる。
【0088】
また、前記X12〜X14は、任意に選択される1つの組合せにより、前記アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子等を有するアルキル基、ハロゲン原子等を有するアルコキシ基又はハロゲン原子等を有するアルキルチオ基の何れかが、相互に結合して環状構造を形成するものであってもよい。この場合、前記X12〜X14における前記アルキル基等が、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基等の直鎖アルキレン基、ヨードメチレン基、ジヨードメチレン基、ブロモメチレン基、ジブロモメチレン基、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ヨードエチレン基、1,1−ジヨードエチレン基、1,2−ジヨードエチレン基、トリヨードエチレン基、テトラヨードエチレン基、クロロエチレン基、1,1−ジクロロエチレン基、1,2−ジクロロエチレン基、トリクロロエチレン基、テトラクロロエチレン基、フルオロエチレン基、1,1−ジフルオロエチレン基、1,2−ジフルオロエチレン基、トリフルオロエチレン基、テトラフルオロエチレン基等の含ハロゲン直鎖アルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、ベンジレン基、ナフチレン基、アントラシレン基、ナフタシレン基、ペンタシレン基のような環状炭化水素基及びその一部又は全部をハロゲン原子等に置き換えたものとなる。
【0089】
前記一般式(4)で表されるリン化合物の具体例としては、例えば、入手が容易なトリメチルホスフィンやメチルジフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0090】
前記成分(A)の添加量は、非水電解液の全質量に対し0.05質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましく、0.1質量%〜3質量%の範囲内であることがより好ましく、0.5質量%〜2質量%の範囲内であることが更に好ましい。前記添加量を0.05質量%以上にすることにより、二次電池の高温環境下でのサイクル特性を一層改善することができる。その一方、前記添加量を5質量%以下にすることにより、非水電解液中の電解質の非水電解液溶媒に対する溶解性が低下するのを抑制することができる。
【0091】
また、本実施の形態に於いて、成分(A)は、少なくとも1種類のリン化合物が非水電解液中に含まれていればよい。但し、含有させる成分(A)の種類の数は5種類以下であることが好ましく、より好ましくは3種類以下、特に好ましくは2種類以下である。前記成分(A)の種類を5種類以下にすることにより、非水電解液の製造の際に於ける工程の複雑化を抑制することができる。
【0092】
<成分(B)>
前記成分(B)は、非水電解液中に少なくとも1種含まれており、具体的には、下記一般式(5)で表されるリン酸ジエステル塩である。
【0093】
【化12】
【0094】
前記一般式(5)に於いて、前記Mn+及び価数n、前記一般式(1)で述べたのと同様である。
【0095】
前記一般式(5)に於いて、前記R及びRは、それぞれ独立して、炭化水素基、又はハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基(以下、「ハロゲン原子等を有する炭化水素基」という。)を表す。前記炭化水素基の炭素数は1〜20であり、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4である。また、ハロゲン原子等を有する炭化水素基の炭素数は1〜20であり、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜4である。また、不飽和結合の数は1〜10の範囲が好ましく、1〜5の範囲がより好ましく、1〜3の範囲が特に好ましい。
【0096】
前記炭化水素基又はハロゲン原子等を有する炭化水素基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、2−ヨードエチル基、2−ブロモエチル基、2−クロロエチル基、2−フルオロエチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、2,2−ジヨードエチル基、2,2−ジブロモエチル基、2,2−ジクロロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリブロモエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ヘキサフルオロー2−プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基、2−ヨードシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、2−クロロシクロヘキシル基、2−フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の鎖状アルケニル基、2−シクロペンテニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基等の鎖状アルキニル基、フェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基等のフェニル基、2−ヨードフェニル基、2−ブロモフェニル基、2−クロロフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−ヨードフェニル基、3−ブロモフェニル基、3−クロロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−ヨードフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3,5−ジヨードフェニル基、3,5−ジブロモフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、3−アミノ−2−ナフチル基等のナフチル基等が挙げられる。
【0097】
尚、前記ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素の原子を意味する。また、前記ヘテロ原子とは、酸素、窒素又は硫黄等の原子を意味する。前記ハロゲン原子等を有する炭化水素基において、前記ハロゲン原子及びヘテロ原子は、前記炭化水素基中の水素の一部又は全部がこれらのハロゲン原子及び/又はヘテロ原子の何れかで置換されていてもよい。
【0098】
前記RとRは、前記に例示した官能基群に於いて、同種でもよく相互に異なっていてもよい。また前記に例示した官能基群は単なる例示に過ぎず、これらに限定されるものではない。
【0099】
更に、前記RとRは、前記炭化水素基、又は前記ハロゲン原子等を有する炭化水素基の何れかであって、相互に結合して環状構造を形成していてもよい。この場合、前記炭化水素基又はハロゲン原子等を有する炭化水素基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基等の直鎖アルキレン基、ヨードメチレン基、ジヨードメチレン基、ブロモメチレン基、ジブロモメチレン基、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ヨードエチレン基、1,1−ジヨードエチレン基、1,2−ジヨードエチレン基、トリヨードエチレン基、テトラヨードエチレン基、クロロエチレン基、1,1−ジクロロエチレン基、1,2−ジクロロエチレン基、トリクロロエチレン基、テトラクロロエチレン基、フルオロエチレン基、1,1−ジフルオロエチレン基、1,2−ジフルオロエチレン基、トリフルオロエチレン基、テトラフルオロエチレン基等の含ハロゲン直鎖アルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、ベンジレン基、ナフチレン基、アントラシレン基、ナフタシレン基、ペンタシレン基のような環状炭化水素基及びその一部又は全部をハロゲン原子等に置き換えたもの等が挙げられる。
【0100】
前記一般式(5)で表されるリン化合物の具体例としては、例えば、入手が容易なジエチルリン酸リチウム、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)リン酸リチウム等が挙げられる。
【0101】
前記成分(B)の添加量は、非水電解液の全質量に対し0.05質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましく、0.1質量%〜3質量%の範囲内であることがより好ましく、0.5質量%〜2質量%の範囲内であることが更に好ましい。前記添加量を0.05質量%以上にすることにより、二次電池の高温環境下でのサイクル特性を一層改善することができる。その一方、前記添加量を5質量%以下にすることにより、非水電解液中の電解質の非水電解液溶媒に対する溶解性が低下するのを抑制することができる。
【0102】
また、本実施の形態に於いて、前記成分(B)は、少なくとも1種類が非水電解液中に含まれていればよいが、含有させる成分(B)の種類の数は、好ましくは5種類以下であり、より好ましくは3種類以下であり、特に好ましくは2種類以下である。前記成分(B)の種類を5種類以下にすることにより、非水電解液の製造の際に於ける工程の複雑化を抑制することができる。
【0103】
<成分(C)>
本実施の形態の非水電解液においては、さらに少なくとも1種の下記成分(C)を含んでいてもよい。
【0104】
前記成分(C)は、ホウ素錯体塩、ホウ酸エステル、酸無水物、不飽和結合を有する環状カーボネート、ハロゲン原子を有する環状カーボネート、環状スルホン酸エステル及びアセトアセチル基を有するアミン類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0105】
前記ホウ素錯体塩は、具体的には、下記一般式(6)で表される化合物である。
【0106】
【化13】
【0107】
前記一般式(6)に於いて、前記Mn+及び価数n、前記一般式(1)で述べたのと同様である。
【0108】
前記一般式(6)に於いて、前記X15〜X18は、それぞれ独立しており、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルキル基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキル基」という。)、又はハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルコキシ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルコキシ基」という。)を表す。または、任意に選択される1又は2つの組合せが、−OOC−Z−COO−、−O−Z−O−又は−OOC−Z−O−の環状構造を形成したものを表す。その場合の前記Zは、炭素数が0〜20、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5の炭化水素基、又は炭素数が0〜20、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5の範囲であって、ヘテロ原子、不飽和結合若しくは環状構造を有する炭化水素基を表す。前記X15〜X18が前記−OOC−Z−COO−、−O−Z−O−、−OOC−Z−O−の環状構造の何れか1つを2組み有する場合、それぞれのZは異なっていてもよい。尚、ヘテロ原子とは、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を意味する。
【0109】
前記Zとしては特に限定されず、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基等の直鎖アルキレン基、ヨードメチレン基、ジヨードメチレン基、ブロモメチレン基、ジブロモメチレン基、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ヨードエチレン基、1,1−ジヨードエチレン基、1,2−ジヨードエチレン基、トリヨードエチレン基、テトラヨードエチレン基、クロロエチレン基、1,1−ジクロロエチレン基、1,2−ジクロロエチレン基、トリクロロエチレン基、テトラクロロエチレン基、フルオロエチレン基、1,1−ジフルオロエチレン基、1,2−ジフルオロエチレン基、トリフルオロエチレン基、テトラフルオロエチレン基等の含ハロゲン直鎖アルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、ベンジレン基、ナフチレン基、アントラシレン基、ナフタシレン基、ペンタシレン基のような環状炭化水素基及びその一部又は全部をハロゲンに置き換えたもの等が挙げられる。
【0110】
更に、前記Zの炭素数が0の場合、−OOC−Z−COO−は−OOC−COO−であり、オキサレート基を表す。また、前記Zが1,2−フェニレン基である場合、−O−Z−O−はベンゼンジオラート基を表し、−O−Z−COO−はサリチラート基を表す。
【0111】
また、前記X15〜X18は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルキル基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキル基」という。)、又はハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するアルコキシ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルコキシ基」という。)を表す。前記アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等を有するアルキル基及びハロゲン原子等を有するアルコキシ基の炭素数は0〜20の範囲であり、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5である。また、不飽和結合の数は1〜10の範囲が好ましく、1〜5の範囲がより好ましく、1〜3の範囲が特に好ましい
【0112】
前記ハロゲン原子及びヘテロ原子は、前記一般式(1)で述べたのと同様である。また、前記ハロゲン原子等を有するアルキル基及びハロゲン原子等を有するアルコキシ基において、前記ハロゲン原子及びヘテロ原子は、それらの官能基中の水素の一部又は全部がこれらのハロゲン原子及び/又はヘテロ原子の何れかで置換されていてもよい。
【0113】
前記X15〜X18は特に限定されず、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、ヨードメチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、ジヨードメチル基、ジブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリヨードメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2−ヨードエチル基、2−ブロモエチル基、2−クロロエチル基、2−フルオロエチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、2,2−ジヨードエチル基、2,2−ジブロモエチル基、2,2−ジクロロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリブロモエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ヘキサフルオロ−2−プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基、2−ヨードシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、2−クロロシクロヘキシル基、2−フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の鎖状アルケニル基、2−シクロペンテニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基等の鎖状アルキニル基、フェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基等のフェニル基、2−ヨードフェニル基、2−ブロモフェニル基、2−クロロフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−ヨードフェニル基、3−ブロモフェニル基、3−クロロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−ヨードフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3,5−ジヨードフェニル基、3,5−ジブロモフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等の鎖状アルコキシ基、シクロペントキシ基、シクロヘキソキシ基等の環状アルコキシ基、2−ヨードエトキシ基、2−ブロモエトキシ基、2−クロロエトキシ基、2−フルオロエトキシ基、1,2−ジヨードエトキシ基、1,2−ジブロモエトキシ基、1,2−ジクロロエトキシ基、1,2−ジフルオロエトキシ基、2,2−ジヨードエトキシ基、2,2−ジブロモエトキシ基、2,2−ジクロロエトキシ基、2,2−ジフルオロエトキシ基、2,2,2−トリブロモエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、ヘキサフルオロ−2−プロポキシ基等の鎖状含ハロゲンアルキル基、2−ヨードシクロヘキソキシ基、2−ブロモシクロヘキソキシ基、2−クロロシクロヘキソキシ基、2−フルオロシクロヘキソキシ基等の環状含ハロゲンアルキル基、2−プロペキシ基、イソプロペキシ基、2−ブテキシ基、3−ブテキシ基等の鎖状アルケニルアルコキシ基、2−シクロペンテキシ基、2−シクロヘキセキシ基、3−シクロヘキセキシ基等の環状アルケニルアルコキシ基、2−プロピキシ基、1−ブチキシ基、2−ブチキシ基、3−ブチキシ基、1−ペンチキシ基、2−ペンチキシ基、3−ペンチキシ基、4−ペンチキシ基等の鎖状アルキニルアルコキシ基、フェノキシ基、3−メトキシ基、フェノキシ基、4−メトキシ基、フェノキシ基、3,5−ジメトキシ基、フノキシ基等のフェノキシ基、2−ヨードフェノキシ基、2−ブロモフェノキシ基、2−クロロフェノキシ基、2−フルオロフェノキシ基、3−ヨードフェノキシ基、3−ブロモフェノキシ基、3−クロロフェノキシ基、3−フルオロフェノキシ基、4−ヨードフェノキシ基、4−ブロモフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、4−フルオロフェノキシ基、3,5−ジヨードフェノキシ基、3,5−ジブロフェノキシ基、3,5−ジクロロフェノキシ基、3,5−ジフルオロフェノキシ基等の含ハロゲンフェノキシ基等が挙げられる。
【0114】
尚、前記一般式(6)で表されるホウ素錯体塩の具体的としては、例えば、入手が容易なリチウムビス[1,2’−ベンゼンジオラート(2)−O,O’]ボレート、リチウムビスサリチラートボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロボレート等が挙げられる。
【0115】
前記成分(C)に於けるホウ酸エステルとしては、本実施の形態の非水電解液及びそれを用いた二次電池の特性を損なうものでない限り、特に限定されない。具体的には、例えば、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリペンチル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリへプチル、ホウ酸トリフェニル、2ホウ酸トリス(2,2,2−ヨードエチル)、ホウ酸トリス(2,2,2−トリブロモエチル)、ホウ酸トリス(2,2,2−トリクロロエチル)ホウ酸トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホウ酸トリス(4−ヨードフェニル)、ホウ酸トリス(4−ブロモフェニル)、ホウ酸トリス(4−クロロフェニル)、ホウ酸トリス(4−フルオロフェニル)、ホウ酸ジエチルメチル、ホウ酸エチルジメチル等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0116】
前記成分(C)に於ける酸無水物としては、本実施の形態の非水電解液及びそれを用いた二次電池の特性を損なうものでない限り、特に限定されない。具体的には、例えば、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、吉草酸無水物、ヘキサン酸無水物、へプタン酸無水物、オクタン酸無水物、ノナン酸無水物、デカン酸無水物、エイコサン酸無水物、ドコサン酸無水物、安息香酸無水物、4−メトキシ安息香酸無水物、ジフェニル酢酸無水物、クロトン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、エライジン酸無水物、イソ酪酸無水物、イソ吉草酸無水物、ラウリン酸無水物、リノール酸無水物、ミリスチン酸無水物、アンゲリカ酸無水物、クロロジフルオロ酢酸無水物、トリクロロ酢酸無水物、ジフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、4−トリフルオロメチル安息香酸無水物等の直鎖カルボン酸無水物、フタル酸無水物、3−アセトアミドフタル酸無水物、4,4’−カルボニルジフタル酸無水物、4,4’−ビフタル酸無水物、3−ヨードフタル酸無水物、3−ブロモフタル酸無水物、3−クロロフタル酸無水物、3−フルオロフタル酸無水物、4−ヨードフタル酸無水物、4−ブロモフタル酸無水物、4−クロロフタル酸無水物、4−クロロフタル酸無水物、4,5−ジヨードフタル酸無水物、4,5−ジブロモフタル酸無水物、4,5−ジクロロフタル酸無水物、4,5−ジフルオロフタル酸無水物、4,4’−スルホニルジフタル酸無水物、3−ニトロフタル酸無水物、4−ニトロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシヘキサヒドロフタル酸無水物、exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物、テトラヨードフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、テトラフルオロフタル酸無水物、4−tert−ブチルフタル酸無水物、4−エチニルフタル酸無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、コハク酸無水物、(R)−(+)−2−アセトキシコハク酸無水物、(S)−(−)−2−アセトキシコハク酸無水物、2−ブテン−1−イルコハク酸無水物、ブチルコハク酸無水物、デシルコハク酸無水物、2,3−ジメチルコハク酸無水物、2−ドデセン−1−イルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、オクタデセニコハク酸無水物、(2,7−オクタジエン−1−イル)コハク酸無水物、n−オクチルコハク酸無水物、ヘキサデシルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイン酸無水物、2−(−2−カルボキシエチル)−3−メチル−マレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、2,3−ジフェニルマレイン酸無水物、フェニルマレイン酸無水物、4−ペンテン−1,2−ジカルボン酸無水物、2,3−アントラセンジカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、4−ブロモ−1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、(±)−trans−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、2,5−ジブロモ−3,4−チオフェンジカルボン酸無水物、5,6−ジヒドロ−1,4−ジチイン−2,3−ジカルボン酸無水物、2,2’−ビフェニルジカルボン酸無水物、4−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、3−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水物、3,4−チオフェンジカルボン酸無水物、1,8−ナフタレンジカルボン酸無水物、5−ノルボネン−2,3−ジカルボン酸無水物、1,2−シクロプロパンジカルボン酸無水物、グルタル酸無水物、3,3−ペンタメチレングルタル酸無水物、2,2−ジメチルグルタル酸無水物、3,3−ジメチルグルタル酸無水物、3−メチルグルタル酸無水物、2−フタルイミドグルタル酸無水物、3,3−テトラメチレングルタル酸無水物、N−メチルイサト酸無水物、4−ヨードイサト酸無水物、4−ブロモイサト酸無水物、4−クロロイサト酸無水物、4−フルオロイサト酸無水物、5−ヨードイサト酸無水物、5−ブロモイサト酸無水物、5−クロロイサト酸無水物、5−フルオロイサト酸無水物、イタコン酸無水物、カロン酸無水物、シトラコン酸無水物、ジグリコール酸無水物、1,2−ナフタル酸無水物、ピロメリット酸無水物、ヘット酸無水物、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタン二酸無水物等の環状カルボンサン無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸無水物等の直鎖スルホン酸無水物、2−スルホ安息香酸無水物、テトラヨード−O−スルホ安息香酸無水物、テトラブロモ−O−スルホ安息香酸無水物、テトラクロロ−O−スルホ安息香酸無水物、テトラフルオロ−O−スルホ安息香酸無水物等の環状スルホン酸無水物、ジフェニルホスフィン酸等の鎖状ホスフィン酸無水物、1−プロパンホスホン酸無水物等の環状ホスホン酸無水物、3.4−ジヨードフェニルボロン酸無水物、3,4−ジブロモフェニルボロン酸無水物、3,4−ジクロロフェニルボロン酸無水物、3,4−ジフルオロフェニルボロン酸無水物、4−ヨードフェニルボロン酸無水物、4−ブロモフェニルボロン酸無水物、4−クロロフェニルボロン酸無水物、4−フルオロフェニルボロン酸無水物、(m−ターフェニルボロン酸無水物、3,4,5−トリヨードフェニルボロン酸無水物、3,4,5−トリブロモフェニルボロン酸無水物、3,4,5−トリクロロフェニルボロン酸無水物、3,4,5−トリフルオロフェニルボロン酸無水物等が挙げられる。
【0117】
前記成分(C)に於ける不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、本実施の形態の非水電解液及びそれを用いた二次電池の特性を損なうものでない限り、特に限定されない。不飽和結合の数は1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、具体的には、例えば、ビニレンカーボネート、ヨードビニレンカーボネート、ブロモビニレンカーボネート、クロロビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、1,2−ジヨードビニレンカーボネート、1,2−ジブロモビニレンカーボネート、1,2−ジクロロビニレンカーボネート、1,2−ジフルオロビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ヨードメチルビニレンカーボネート、ブロモメチルビニレンカーボネート、クロロメチルビニレンカーボネート、フルオロメチルビニレンカーボネート、ジクロロメチルビニレンカーボネート、ジブロモメチルビニレンカーボネート、ジクロロメチルビニレンカーボネート、ジフルオロメチルビニレンカーボネート、トリヨードメチルビニレンカーボネート、トリブロモメチルビニレンカーボネート、トリクロロメチルビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、プロピルビニレンカーボネート、ブチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ジプロピルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0118】
前記成分(C)に於けるハロゲン原子を有する環状カーボネートとしては、本実施の形態の非水電解液及びそれを用いた二次電池の特性を損なうものでない限り、特に限定されない。具体的には、例えば、ヨードエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,2−ジヨードエチレンカーボネート、1,2−ジブロモエチレンカーボネート、1,2−ジクロロエチレンカーボネート、1,2−ジフルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。尚、ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
【0119】
前記成分(C)に於ける環状スルホン酸エステルとしては、本実施の形態の非水電解液及びそれを用いた二次電池の特性を損なうものでない限り、特に限定されない。具体的には、例えば、1,3−プロパンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,4−ブタンスルトン、エチレンサルファイト等が挙げられる。
【0120】
前記成分(C)に於けるアセトアセチル基を有するアミン類は、具体的には、下記一般式(7)で表される化合物である。
【0121】
【化14】
【0122】
前記R及びRは、それぞれ独立して、炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5の炭化水素基、又は炭素数が1〜20、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合を有する炭化水素基(以下、「ハロゲン原子等を有する炭化水素基」という。)を表す。
【0123】
ここで、前記ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。また、ヘテロ原子とは、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を意味する。また、前記ハロゲン原子等を有する炭化水素基において、前記ハロゲン原子及びヘテロ原子は、炭化水素基中の水素の一部又は全部がこれらのハロゲン原子及び/又はヘテロ原子の何れかで置換されていてもよい。
【0124】
前記R及びRとしては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基、2−ヨードエチル基、2−ブロモエチル基、2−クロロエチル基、2−フルオロエチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,2−ジフルオロエチル基、2,2−ジヨードエチル基、2,2−ジブロモエチル基、2,2−ジクロロエチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリブロモエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、ヘキサフルオロー2−プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基、2−ヨードシクロヘキシル基、2−ブロモシクロヘキシル基、2−クロロシクロヘキシル基、2−フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基、2−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の鎖状アルケニル基、2−シクロペンテニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基等の鎖状アルキニル基、フェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基等のフェニル基、2−ヨードフェニル基、2−ブロモフェニル基、2−クロロフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−ヨードフェニル基、3−ブロモフェニル基、3−クロロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−ヨードフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3,5−ジヨードフェニル基、3,5−ジブロモフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、3−アミノ−2−ナフチル基等のナフチル基等が挙げられる。
【0125】
尚、前記一般式(7)で表されるアセトアセチル基を有するアミン類の具体的としては、例えば、入手が容易なN,N−ジメチルアセトアセトアミド等が挙げられる。
【0126】
前記成分(C)の添加量は、非水電解液の全質量に対し0.05質量%〜5質量%の範囲内であることが好ましく、0.1質量%〜3質量%の範囲内であることがより好ましく、0.5質量%〜2質量%の範囲内であることが特に好ましい。前記添加量を0.05質量%以上にすることにより、添加剤としての効果、即ち、電極表面に安定した皮膜の形成を可能にする。その一方、前記添加量を5質量%以下にすることにより、非水電解液中の電解質の非水電解液溶媒に対する溶解性が低下するのを抑制することができる。
【0127】
また、本実施の形態に於いて、前記成分(C)は、少なくとも1種類が非水電解液中に含まれていればよいが、含有させるホウ素錯体塩等の化合物の種類の数は、好ましくは5種類以下であり、より好ましくは3種類以下であり、特に好ましくは2種類以下である。前記成分(C)の種類を低減することにより、非水電解液の製造の際に於ける工程の複雑化を抑制することができる。
【0128】
<電解質>
前記電解質としては、従来公知のものを採用することができる。例えば、リチウムイオン電池用の場合はリチウム塩が用いられ、ナトリウムイオン電池用の場合はナトリウム塩が用いられる。従って、二次電池の種類に応じて電解質の種類は適宜選択すればよい。
【0129】
また、前記電解質としては、フッ素を含有するアニオンを含有するものが好ましい。その様なフッ素含有のアニオンの具体例としては、例えばBF、PF、BFCF、BF、CFSO、CSO、CSO、CSO、N(SOF)、N(CFSO、N(CSO、N(CFSO)(CFCO)、N(CFSO)(CSO、C(CFSO等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。フッ素含有アニオンのうち、非水電解液の安全性・安定性、電気伝導率やサイクル特性の向上の観点からは、BF、PF、N(CFSOが好ましく、BF、PFが特に好ましい。
【0130】
前記電解質の前記有機溶媒に対する濃度は特に限定されず、通常は0.1〜2M、好ましくは0.15〜1.8M、より好ましくは0.2〜1.5M、特に好ましくは0.3〜1.2Mである。濃度を0.1M以上にすることにより、非水電解液の電気伝導率が不十分となるのを防止することができる。その一方、濃度を2M以下にすることにより、非水電解液の粘度上昇により電気伝導率が低下するのを抑制し、二次電池性能が低下するのを防止することができる。
【0131】
<有機溶媒>
前記非水電解液に用いられる前記有機溶媒(非水溶媒)としては特に限定されず、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、リン酸エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、ラクトン化合物、鎖状エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン化合物等が挙げられる。これらの有機溶媒のうち、リチウム二次電池用有機溶媒として一般的に使用される点からは、炭酸エステルが好ましい。
【0132】
前記環状炭酸エステルとしては特に限定されず、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。これらのうち、リチウム二次電池の充電効率を向上させる点からは、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネートが好ましい。前記鎖状炭酸エステルとしては特に限定されず、例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち、リチウム二次電池の充電効率を向上させる点からは、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートが好ましい。前記リン酸エステルとしては特に限定されず、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル等が挙げられる。前記環状エーテルとしては特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。前記鎖状エーテルとしては特に限定されず、例えば、ジメトキシエタン等が挙げられる。前記ラクトン化合物としては特に限定されず、例えば、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。前記鎖状エステルとしては特に限定されず、例えば、メチルプロピオネート、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルホルメート等が挙げられる。前記ニトリル化合物としては特に限定されず、例えば、アセトニトリル等が挙げられる。前記アミド化合物としては特に限定されず、例えば、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。前記スルホン化合物としては特に限定されず、例えば、スルホラン、メチルスルホラン等が挙げられる。また、前記有機溶媒分子中に含まれる炭化水素基の水素を少なくとも一部フッ素で置換したものも好適に用いることができる。これらの有機溶媒は一種単独で又は二種以上を混合して用いてもよい。
【0133】
また、前記有機溶媒としては、入手の容易さや性能の観点から、炭酸エステルを用いるのが好ましい。
【0134】
<非水電解液の製造>
本実施の形態の非水電解液は、例えば、前記の有機溶媒(非水溶媒)に前記電解質の塩を加えた後に、前記一般式(1)で表される、少なくとも1種類の成分(A)を添加する。更に、成分(B)を一種類以上添加する。また、さらに前記成分(C)を含有させる場合には、前記成分(B)の添加後に添加する。
【0135】
但し、各成分の添加の順序については特に限定されない。この際、前記有機溶媒や電解質の塩、及び成分(A)〜成分(C)としては、製造効率を低下させない範囲内で予め精製等して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。尚、前記成分(A)及び成分(C)を複数種用いる場合、それらの添加の順序は適宜必要に応じて設定することができる。
【0136】
<その他>
本実施の形態に係る非水電解液には、従来公知のその他の添加剤が添加されていてもよい。
【0137】
(二次電池)
次に、本実施の形態の二次電池として、リチウムイオン二次電池を例にして以下に説明する。図1は、前記非水電解液を備えたリチウムイオン二次電池の概略を示す断面模式図である。
【0138】
本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池は、図1に示すように、正極缶4と負極缶5とで形成される内部空間に、正極缶4側から正極1、セパレータ3、負極2、スペーサー7の順に積層された積層体が収納された構造を有している。負極缶5とスペーサー7との間にスプリング8を介在させることによって、正極1と負極2を適度に圧着固定している。
【0139】
本実施の形態の成分(A)〜成分(C)を含有する非水電解液は、正極1、セパレータ3及び負極2の間に含浸されている。正極缶4及び負極缶5の間にガスケット6を介在させた状態で、正極缶4及び負極缶5を挟持させることによって両者を結合し、前記積層体を密閉状態にしている。
【0140】
前記正極1に於ける正極活物質層の材料としては特に限定されず、例えば、リチウムイオンが拡散可能な構造を持つ遷移金属化合物、又はその遷移金属化合物とリチウムの酸化物が挙げられる。具体的には、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiMnO+LiMeO(Me=Mn、Co、Ni)固溶体、LiFePO、LiCoPO、LiMnPO4、LiFePOLiNiCoMn(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)、LiNiCoyAl(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)LiFeF、TiO、V、MoO等の酸化物、TiS、FeS等の硫化物、あるいはポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、及びポリピロール等の導電性高分子、活性炭、ラジカルを発生するポリマー、カーボン材料等が使用される。
【0141】
正極1は、前記に列挙した正極活物質を、公知の導電助剤や結着剤と共に加圧成型することにより、又は正極活物質を公知の導電助剤や結着剤と共にピロリドン等の有機溶剤に混合し、ペースト状にしたものをアルミニウム箔等の集電体に塗工後、乾燥することにより得ることができる。
【0142】
前記負極2に於ける負極活物質層の材料としては、リチウムを吸蔵、放出することが可能な材料であれば特に限定されず、例えば、金属複合酸化物、例えば、LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1−xMe(Me=Mn、Fe、Pb、Geであり、Me=Al、B、P、Si、周期律表の1、2又は3族元素、ハロゲンであり、0<x≦1、1≦y≦3、1≦z≦8)を用いることができる。更に、リチウム金属、リチウム合金、ケイ素やケイ素系合金、スズ系合金、金属酸化物、例えばSnO、SnO、SiO(0<x<2)、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、又はBi、導電性重合体、例えばポリアセチレン、又はLi−Co−Ni系材料、天然黒鉛、人造黒鉛、ホウ素化黒鉛、フッ化黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維黒鉛化物又はカーボンナノチューブ、ハードカーボン、フラーレン等の炭素材料等が挙げられる。
【0143】
負極2は、前記電極材料の箔状のものや粉末状のものを使用できる。粉末状の場合は、公知の導電助剤及び結着剤と共に加圧成型することにより、又は公知の導電助剤及び結着剤と共にピロリドン等の有機溶剤に混合し、ペースト状にしたものを銅箔等の集電体に塗工後、乾燥することにより得ることができる。
【0144】
本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池には、正極1と負極2の短絡を防止するために、両者の間に通常、セパレータ3が介在される。セパレータ3の材質や形状は特に制限されないが、上述の非水電解液が通過しやすく、絶縁体で、化学的に安定な材質であるものが好ましい。例えば、各種の高分子材料からなる微多孔性のフィルム、シート等が挙げられる。高分子材料の具体例としては、ナイロン(登録商標)、ニトロセルロース、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系高分子が用いられる。電気化学的な安定性・化学的安定性の観点からは、ポリオレフィン系高分子が好ましい。
【0145】
本実施の形態のリチウムイオン二次電池の最適な使用電圧は、正極1と負極2の組み合わせによって異なり、通常は、2.4〜4.6Vの範囲内で使用可能である。
【0146】
本実施の形態のリチウムイオン二次電池の形状については特に制限はないが、図1に示すコイン型セルの他に、例えば、円筒型、角型、ラミネート型等が挙げられる。
【0147】
本実施の形態に係る二次電池であると、高温環境下に於いても優れたサイクル特性を示すことができ、本実施の形態の非水電解液は、例えばリチウムイオン二次電池に好適に用いることができる。但し、図1に示すリチウムイオン二次電池は、本発明の二次電池の一態様を例示的に示したものであり、本発明の二次電池はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0148】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
【0149】
(実施例1)
<非水電解液の作製>
露点が−70℃以下のアルゴン雰囲気ドライボックス内で、エチレンカーボネート(EC)及びジメチルカーボネート(DMC)からなる混合溶媒(体積比率でEC:DMC=1:1、キシダ化学株式会社製、リチウムバッテリーグレード)に対し、LiPFの濃度が1.0モル/リットルとなる様に調製した。
【0150】
次に、LiPF添加後の前記混合溶媒に、ジフルオロリン酸リチウムを添加濃度が0.5質量%、ジエチルリン酸リチウムを添加濃度が0.5質量%となる様に混合した。これにより、本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0151】
(実施例2)
本実施例に於いては、LiPF添加後の前記混合溶媒に対し、ジフルオロリン酸リチウム及びジエチルリン酸リチウムの添加後に、さらにリチウムビス(オキサラト)ボレートを添加した。また、リチウムビス(オキサラト)ボレートの添加濃度は、0.5質量%とした。それ以外は、実施例1と同様にして、本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0152】
(実施例3)
本実施例においては、実施例1におけるLiPF添加後の前記混合溶媒に対し、さらにホウ酸トリメチルを添加濃度が0.5質量%となる様に混合した。それ以外は、実施例1と同様にして、本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0153】
(実施例4)
本実施例においては、実施例1におけるLiPF添加後の前記混合溶媒に対し、さらにビニレンカーボネートを添加濃度が0.5質量%となる様に混合した。それ以外は、実施例1と同様にして、本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0154】
(実施例5)
本実施例においては、実施例1におけるLiPF添加後の前記混合溶媒に対し、さらにフルオロエチレンカーボネートを添加濃度が0.5質量%となる様に混合した。それ以外は、実施例1と同様にして、本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0155】
(実施例6)
本実施例においては、実施例1におけるLiPF添加後の前記混合溶媒に対し、さらに1,3−プロパンスルトンを添加濃度が0.5質量%となる様に混合した。それ以外は、実施例1と同様にして、本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0156】
(実施例7)
本実施例においては、実施例1におけるLiPF添加後の前記混合溶媒に対し、さらにN,N−ジメチルアセトアセトアミドを添加濃度が0.5質量%となる様に混合した。それ以外は、実施例1と同様にして、本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0157】
(実施例8)
本実施例においては、実施例2におけるジフルオロリン酸リチウムに代えて、リチウムジフルオロビスオキサレートホスフェートを添加濃度が0.5質量%となる様に混合した。それ以外は、実施例2と同様にして、本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0158】
(実施例9)
本実施例においては、実施例2におけるジフルオロリン酸リチウムに代えて、リン酸トリメチルを添加濃度が0.5質量%となる様に混合した。それ以外は、実施例2と同様にして、本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0159】
(実施例10)
本実施例においては、実施例2におけるジフルオロリン酸リチウムの添加濃度を2.5質量%に変更し、ジエチルリン酸リチウムの添加濃度を5.0質量%に変更した。それ以外は、実施例2と同様にして、本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0160】
(実施例11)
本実施例においては、実施例2におけるジフルオロリン酸リチウムの添加濃度を0.05質量%に変更し、ジエチルリン酸リチウムの添加濃度を0.05質量%に変更した。それ以外は、実施例2と同様にして、本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0161】
(実施例12)
本実施例においては、実施例2におけるリチウムビス(オキサラト)ボレートの添加濃度を0.05重量%に変更した。それ以外は、実施例2と同様にして、本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0162】
(実施例13)
本実施例においては、実施例2におけるリチウムビス(オキサラト)ボレートの添加濃度を2.5重量%に変更した。それ以外は、実施例2と同様にして、本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0163】
(実施例14)
本実施例に於いては、実施例2におけるLiPF添加後の前記混合溶媒に対し、さらに無水マレイン酸を添加濃度が0.5質量%となる様に混合した。それ以外は、実施例2と同様にして、本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0164】
(実施例15)
本実施例においては、実施例2におけるジフルオロリン酸リチウムの添加濃度を0.2質量%に変更した。また、LiPF添加後の前記混合溶媒に対し、さらにリチウムジフルオロビスオキサレートホスフェートを添加濃度が0.05質量%になる様に混合し、無水マレイン酸を添加濃度が0.5重量%となる様に混合した。それ以外は、実施例2と同様にして、本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0165】
(比較例1)
本比較例に於いては、実施例1のジエチルリン酸リチウムを添加せず、ジフルオロリン酸リチウムを添加濃度が1.0質量%となる様に混合したこと以外は、実施例1と同様にして、本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0166】
(比較例2)
本比較例に於いては、実施例1のジエチルリン酸リチウムを混合せず、ジフルオロリン酸リチウムを添加濃度が1.0質量%、リチウムオキサラトボレートを0.5質量%となる様に混合したこと以外は、実施例1と同様にして、本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0167】
(比較例3)
本比較例においては、実施例2のジエチルリン酸リチウムを混合せず、ジフルオロリン酸リチウムを添加濃度が1.0重量%、無水マレイン酸を0.5重量%となる様に混合したこと以外は、実施例2と同様にして、本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0168】
(比較例4)
本比較例においては、実施例8のジエチルリン酸リチウムを混合しなかったこと以外は、実施例8と同様にして、本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0169】
(比較例5)
本比較例においては、実施例15のジエチルリン酸リチウム、リチウムビス(オキサラト)ボレート及び無水マレイン酸を混合しなかったこと以外は、実施例15と同様にして、本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0170】
(比較例6)
本比較例においては、実施例15のリン酸ジエステルリチウム及び無水マレイン酸を混合しなかったこと以外は、実施例15と同様にして、本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0171】
(電気化学特性の評価)
続いて、各実施例及び比較例の非水電解液の電気化学特性の評価を行った。当該評価においては、図2に示す3電極式の評価セルを用いた。同図に示す評価セルにおけるテフロン(登録商標)製蓋14を備えたガラス製容器15には、各実施例及び比較例で得られた非水電解液を満たした。作用極17は作用極用のステンレス製支持棒11、参照極18は参照極用のステンレス製支持棒12、対極19は対極用のステンレス製支持棒13によって支持させた。
【0172】
<リチウムイオン電池の正極材料評価> 作用極7として、LiNiCoMnO(パイオトレック株式会社製)を1cm角に切り出したものを用いた。また、参照極18および対極19としては、リチウム箔を用いた。
【0173】
作用極用のステンレス製支持棒11、参照極用のステンレス製支持棒12および対極用のステンレス製支持棒13は、テフロン製蓋14を介して固定し、非水電解液16をいれたガラス製容器15にテフロン製蓋をとりつけると同時に、当該非水電解液16に作用極17、参照極18、対極19をそれぞれ同時に浸漬させた。
【0174】
また、ガラス製容器15を、温度制御可能なアルミニウム製ブロック10の内部に嵌挿することにより、当該ガラス製容器15の内部の温度を調整した。
【0175】
電気化学測定装置としてはメトロームオートラボ社製PGSTAT302Nを使用し、サイクリックボルタンメトリ測定および交流インピーダンス測定を実施した。尚、評価セルの組み立てから測定までは、全て露点−70℃以下のアルゴングローブボックス内で行った。
【0176】
<リチウムイオン電池の正極放電容量の評価> 非水電解液を25℃に恒温し、浸漬電位から4500mVの間を0.5mV/秒の挿引速度にて前記のサイクリックボルタンメトリ測定を行った。比較例1の非水電解液を用いたときの5サイクル目の放電容量を100として、各実施例及び各比較例の各非水電解液を用いたときの5サイクル目に於ける放電容量の比率を表1に示す。
【0177】
【表1】
【0178】
<リチウムイオン電池の正極内部抵抗の評価> 続いて、非水電解液を60℃に恒温し、4200mVの定電位にて5時間保持した。その後、交流インピーダンス測定により電極の内部抵抗を比較評価した。60℃5時間後に於ける比較例1の非水電解液を用いたときの抵抗を100として、各実施例及び各比較例の各非水電解液を用いたときの抵抗の比率を表2に示す。
【0179】
【表2】
【0180】
(サイクル特性の評価)
<コインセルの作製>
図1に示すようなコイン型のリチウム二次電池を作製し、各実施例及び比較例の非水電解液の電気化学特性を評価した。
【0181】
即ち、正極に、直径9mmφに切り出したLiNi1/3Co1/3Mn1/3(パイオトレック株式会社製)を用い、セパレータにポリエチレン製セパレータを用い、負極に、直径10mmφに切り出した天然黒鉛シート(パイオトレック株式会社製)を用いた。さらに、正極、セパレータ及び負極の順に積層して積層体とし、各実施例又は比較例で調製した非水電解液を含浸させた後、当該積層体を密閉して、コインセルをそれぞれ作製した。コインセルの組み立ては、全て露点−70℃以下のアルゴングローブボックス内で行った。
【0182】
<慣らし充放電>
作製したコインセルは、25℃の恒温槽内で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3.0V、0.2C(定格容量を1時間で充電もしくは放電する電流値を1Cとする)の定電流定電圧法にて5サイクル充放電した。
【0183】
<高温保存特性の評価>
慣らし充放電の終了したコインセルを、25℃の環境下で、0.2Cの電流値で4.2Vまで充電させたのち、60℃の恒温槽内で18日間保持した。18日経過後、コインセルを25℃の恒温槽へ移し替え、充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3.0V、0.2Cの定電流定電圧法にて2サイクル充放電した。2サイクル目の放電容量を比較評価した。下記表3及び表4に、比較例3を100としたときの、実施例1〜15および比較例3〜6の放電容量の比率を示す。
【0184】
【表3】
【0185】
【表4】
【0186】
前記表3及び表4から明らかなように、実施例1〜15の非水電解液を用いたコインセルでは、比較例3〜6に比べ、60℃の高温環境下で18日間経過後であっても、容量が高く、高温保存特性に優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0187】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 正極缶
5 負極缶
6 ガスケット
7 スペーサー
8 スプリング
10 アルミニウム製ブロック
11 作用極用のステンレス製支持棒
12 参照極用のステンレス製支持棒
13 対極用のステンレス製支持棒
14 テフロン製蓋
15 ガラス製容器
16 非水電解液
17 作用極
18 参照極
19 対極
図1
図2