特許第6941369号(P6941369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6941369
(24)【登録日】2021年9月8日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】脳からの電気的物質の排出
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/32 20060101AFI20210916BHJP
   A61N 1/05 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   A61N1/32
   A61N1/05
【請求項の数】30
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-521586(P2018-521586)
(86)(22)【出願日】2016年10月27日
(65)【公表番号】特表2018-531729(P2018-531729A)
(43)【公表日】2018年11月1日
(86)【国際出願番号】IL2016051161
(87)【国際公開番号】WO2017072769
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2019年10月11日
(31)【優先権主張番号】14/926,705
(32)【優先日】2015年10月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518143392
【氏名又は名称】レインボー メディカル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RAINBOW MEDICAL LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】フォスティック,ギデオン
(72)【発明者】
【氏名】グロス,ヨシ
(72)【発明者】
【氏名】テンドラー,アレックス
【審査官】 家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0125080(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0324128(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0046540(US,A1)
【文献】 特開2004−321242(JP,A)
【文献】 特表2007−501067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/32
A61N 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)疾患の危険性があり、又は疾患に罹患していると認定された対象者の脳実質(50)に埋め込まれように構成され、又は、(b)前記脳実質(50)の外表面上の又は前記脳実質(50)に接触する部位に埋め込まれるように構成された脳実質電極(30)と、
モ膜下腔(144)からなる前記対象者の脳のCSF充填腔に埋め込まれるように構成されたクモ膜下電極を有する脳脊髄液(CSF)電極(32)と、
前記脳実質電極及び前記CSF電極(30,32)を駆動して、前記脳実質(50)から前記脳の前記CSF充填腔内に物質を排出するように構成された制御回路(34)と、を備える装置。
【請求項2】
(a)疾患の危険性があり、又は疾患に罹患していると認定された対象者の脳実質(50)に埋め込まれるように構成され、又は、(b)前記脳実質(50)の外表面上の又は前記脳実質(50)に接触する部位に埋め込まれるように構成された脳実質電極(30)と、
脳室系(54)とクモ膜下腔(144)とからなる群から選択される前記対象者の脳のCSF充填腔に埋め込まれるように構成された脳脊髄液(CSF)電極(32)と、
上矢状静脈洞(142)内、又はその上方に配置されるように適合された中間面処置電極(150)と、
前記脳実質電極及び前記CSF電極(30,32)を駆動して、前記脳実質(50)から前記脳の前記CSF充填腔内に物質を排出し、前記中間面処置電極(150)と前記CSF電極(32)の間に処置電流を印加することによって、前記物質を前記脳の前記CSF充填腔から前記上矢状静脈洞(142)に排出するように構成された制御回路(34)と、を備える装置。
【請求項3】
前記中間面処置電極(150)は、前記対象者の頭(174)の頭蓋骨(168)の外側で、かつ前記頭蓋骨(168)と電気的に接触して前記上矢状静脈洞(142)の上方に配置されるように適合されることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記中間面処置電極(150)は、前記対象者の頭(174)の頭蓋骨(168)の下で前記上矢状静脈洞(142)の上方に配置されるように適合される、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記脳の前記CSF充填腔が脳室系(54)であり、前記CSF電極(32)が前記脳室系(54)に埋め込まれるように構成された脳室電極である、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記脳の前記CSF充填腔がクモ膜下腔(144)であり、前記CSF電極(32)が、前記クモ膜下腔(144)内に埋め込まれるように構成されたクモ膜下電極である、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記物質はアミロイドβ又はタウタンパク質を含み、前記制御回路(34)は、前記脳実質電極及び前記CSF電極(30,32)を駆動して、前記アミロイドβ又はタウタンパク質を前記脳実質(50)から前記脳の前記CSF充填に排出するようにするように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項8】
前記制御回路は、前記脳実質電極を陰極として構成し、前記CSF電極を陽極として構成するように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項9】
前記制御回路(34)は、前記脳実質電極と前記CSF電極(30,32)の間に非励起電流を印加することによって、前記脳実質電極及び前記CSF電極(30,32)を駆動して前記物質を排出するように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項10】
前記制御回路(34)は、前記脳実質電極と前記CSF電極(30,32)の間に直流を印加することによって、前記脳実質電極及び前記CSF電極(30,32)を駆動して前記物質を排出するように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項11】
前記制御回路(34)は、1〜5mAの平均振幅を有する直流を印加するように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記制御回路(34)は、1.2V未満の平均振幅を有する直流を印加するように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記制御回路(34)は、前記直流を一連のパルスとして印加するように構成される、請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記制御回路(34)は、100ミリ秒〜300秒の平均パルス持続時間を有する一連のパルスとして前記直流を印加するように構成される、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記制御回路は、
前記各パルス中に前記脳実質電極と前記CSF電極(30,32)の間に電圧を印加することによって、前記物質を排出するように前記脳実質電極及び前記CSF電極(30,32)を駆動し、
前記電圧を印加しつつ、前記パルス中に前記電圧を印加することによって生じる電流を測定し、
前記測定された電流が閾値を下回ると前記パルスを終了させるように構成される、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
上矢状静脈洞(142)内、又はその上方に配置されるように適合された中間面処置電極(150)を更に備え、前記制御回路(34)は、前記中間面処置電極(150)と前記CSF電極(32)の間に処置電流を印加することによって、前記物質を前記CSF充填腔から前記上矢状静脈洞に排出するように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項17】
前記中間面処置電極(150)は、前記対象者の頭(174)の頭蓋骨(168)の外側で、かつ前記頭蓋骨(168)と電気的に接触して前記上矢状静脈洞(142)の上方に配置されるように適合されることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記中間面処置電極(150)は、前記対象者の頭(174)の頭蓋骨(168)の下で上矢状静脈洞(142)の上方に配置されるように適合される、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
(a)疾患の危険性があり、又は疾患に罹患していると認定された対象者の脳実質(50)に埋め込まれるように構成され、又は、(b)前記脳実質(50)の外表面上の又は前記脳実質(50)に接触する部位に埋め込まれるように構成された脳実質電極(30)と、
脳室系(54)とクモ膜下腔(144)とからなる群から選択される前記対象者の脳のCSF充填腔に埋め込まれるように構成された第1の脳脊髄液(CSF)電極と、
上矢状静脈洞(142)内又はその上方に配置されるように適合された中間面処置電極(150)と、
前記脳室系(54)及び前記クモ膜下腔(144)からなる群から選択される前記対象者の脳のCSF充填腔に埋め込まれるように構成される第2の脳脊髄液(CSF)電極と、を備え、
前記脳実質電極及び前記第1のCSF電極(30,32)を駆動して、前記脳実質(50)から前記脳の前記CSF充填腔内に物質を排出し、(a)前記中間面処置電極(150)と(b)前記第2のCSF電極の間に処置電流を印加することによって、前記物質を前記脳の前記CSF充填腔から前記上矢状静脈洞へと排出するように構成された制御回路(34)と、を備える装置。
【請求項20】
前記脳の前記CSF充填腔が脳室系(54)であり、前記第1のCSF電極(32)が前記脳室系(54)に埋め込まれるように構成された脳室電極である、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記脳の前記CSF充填腔がクモ膜下腔(144)であり、前記CSF電極(32)が、前記クモ膜下腔(144)内に埋め込まれるように構成されたクモ膜下電極である、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記物質はアミロイドβ又はタウタンパク質を含み、前記制御回路(34)は、前記脳実質電極及び前記CSF電極(30,32)を駆動して、前記アミロイドβ又はタウタンパク質を前記脳実質(50)から前記脳の前記CSF充填腔に排出するようにするように構成される、請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記制御回路は、前記脳実質電極を陰極として構成し、前記CSF電極を陽極として構成するように構成される、請求項19に記載の装置。
【請求項24】
前記制御回路(34)は、前記脳実質電極と前記CSF電極(30,32)の間に非励起電流を印加することによって、前記脳実質電極及び前記CSF電極(30,32)を駆動して前記物質を排出するように構成される、請求項19に記載の装置。
【請求項25】
前記制御回路(34)は、前記脳実質電極と前記CSF電極(30,32)の間に直流を印加することによって、前記脳実質電極及び前記CSF電極(30,32)を駆動して前記物質を排出するように構成される、請求項19に記載の装置。
【請求項26】
前記制御回路(34)は、1〜5mAの平均振幅を有する直流を印加するように構成される、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記制御回路(34)は、1.2V未満の平均振幅を有する直流を印加するように構成される、請求項25に記載の装置。
【請求項28】
前記制御回路(34)は、前記直流を一連のパルスとして印加するように構成される、請求項25に記載の装置。
【請求項29】
前記制御回路(34)は、100ミリ秒〜300秒の平均パルス持続時間を有する一連のパルスとして前記直流を印加するように構成される、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記制御回路は、
前記各パルス中に前記脳実質電極と前記CSF電極(30,32)の間に電圧を印加することによって、前記物質を排出するように前記脳実質電極及び前記CSF電極(30,32)を駆動し、
前記電圧を印加しつつ、前記パルス中に前記電圧を印加することによって生じる電流を測定し、
前記測定された電流が閾値を下回ると前記パルスを終了させるように構成される、請求項28に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、本出願の譲受人に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる、2015年10月29日に出願された米国特許出願第14/926、705号の優先権を主張し、その継続出願である。
【背景技術】
【0002】
本発明は一般に、アルツハイマー病及び/又は脳アミロイド血管障害(CAA)の治療及び予防に関し、特にアルツハイマー病及び/又はCAAの進行の治療、予防、又は遅延のための電気的技術に関する。
【0003】
アルツハイマー病は、認知症を引き起こす慢性神経変性疾患である。脳におけるアミロイドβ及び/又はタウタンパク質のような物質の蓄積は、アルツハイマー病発症の一因になると広く考えられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願の譲受人に譲渡され、参照により本明細書に組み込まれる、Grossへの米国特許出願公開第2014/0324128号は、被験体の第1の解剖学的部位と第2の解剖学的部位間で流体を駆動する装置を記載している。この装置は、(1)被験体の第1の解剖学的部位に結合されるように構成された第1の電極と、(2)被験体の第2の解剖学的部位に結合されるように構成された第2の電極と、(3)(i)第1の解剖学的部位と第2の解剖学的部位間の圧力差を検出するように構成され、また(ii)検出された圧力差に応じて、第1の解剖学的部位と第2の解剖学的部位間に治療用の電圧を印加することによって、第1の解剖学的部位と第2の解剖学的部位間で流体を駆動する制御ユニットと、を備えている。他の実施形態も記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の幾つかの実施形態は、アルツハイマー病及び/又は脳アミロイド血管障害(CAA)を治療するための技術を提供する。本発明の幾つかの用途では、脳実質に脳実質電極が埋め込まれ、脳脊髄液(CSF)電極が、例えば脳室系及びクモ膜下腔から選択された脳のCFS充填腔に埋め込まれる。制御回路が作動されて、脳実質電極及びCSF電極を駆動し、アミロイドβ及び/又はタウタンパク質などの物質を脳実質から脳のCFF充填腔内に排出する。
【0006】
幾つかの用途では、本発明の技術は、脳実質からの物質の排出に加えて、物質をCFS充填腔から脳の上矢状静洞に物質を排出する。
【0007】
したがって、本発明の発明的概念1に従い、
疾患の危険性があり、又は疾患に罹患していると認定された対象者の脳実質に埋め込まれるように構成された脳実質電極と、
脳室系とクモ膜下腔とからなる群から選択される前記対象者の脳のCSF充填腔に埋め込まれるように構成された脳脊髄液(CSF)電極と、
前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動して、前記脳実質から前記脳の前記CSF充填腔に物質を排出するように構成された制御回路と、を備える装置が提供される。
【0008】
更に、本発明の発明的概念2に従い、
疾患の危険性があり、又は疾患に罹患していると認定された対象者の脳実質と電気的に接触して埋め込まれるように構成された脳実質電極と、
脳室系とクモ膜下腔とからなる群から選択される前記対象者の脳のCSF充填腔に埋め込まれるように構成された脳脊髄液(CSF)電極と、
前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動して、前記脳実質から前記脳の前記CSF充填腔に物質を排出するように構成された制御回路と、を備える装置が提供される。
【0009】
<発明的概念3>
前記疾患がアルツハイマー病であり、前記脳実質電極が、アルツハイマー病の危険性があり、又はアルツハイマー病に罹患していると認定された前記対象者に埋め込まれるように構成される、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0010】
<発明的概念4>
前記疾患が脳アミロイド血管障害(CAA)であり、前記脳実質電極が、CAAの危険性があり、又はCAAに罹患していると認定された前記対象者に埋め込まれるように構成される、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0011】
<発明的概念5>
前記脳の前記CSF充填腔が脳室系であり、前記CSF電極が前記脳室系に埋め込まれるように構成された脳室電極である、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0012】
<発明的概念6>
前記脳の前記CSF充填腔がクモ膜下腔であり、前記CSF電極が、前記クモ膜下腔内に埋め込まれるように構成されるクモ膜下電極である、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0013】
<発明的概念7>
前記物質はアミロイドβを含み、前記制御回路は、前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動して、前記アミロイドβを前記脳実質から前記脳の前記CSF充填洞に排出するようにするように構成される、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0014】
<発明的概念8>
前記物質は金属イオンを含み、前記制御回路は、前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動して、前記金属イオンを前記脳実質から前記脳の前記CSF充填洞に排出するように構成される、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0015】
<発明的概念9>
前記物質がタウタンパク質を含み、前記制御回路は、前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動して、前記タウタンパク質を前記脳実質から前記脳の前記CSF充填に排出するように構成される、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0016】
<発明的概念10>
前記脳実質電極が、前記脳の白質に埋め込まれるように構成される、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0017】
<発明的概念11>
前記制御回路は、前記脳実質電極を陽極として構成し、前記CSF電極を陰極として構成するように構成される、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0018】
<発明的概念12>
前記制御回路は、前記脳実質電極を陰極として構成し、前記CSF電極を陽極として構成するように構成される、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0019】
<発明的概念13>
前記制御回路は、前記脳実質電極を用いて深部脳刺激を付加的に印加するように構成される、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0020】
<発明的概念14>
前記制御回路は、前記対象者の皮膚下に埋め込まれるように構成される、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0021】
<発明的概念15>
前記制御回路は、前記脳実質性電極と前記CSF電極との間に非励起電流を印加することによって、前記脳実質性電極及び前記CSF電極を駆動して前記物質を排出するように構成される、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0022】
<発明的概念16>
前記制御回路は、前記脳実質電極と前記CSF電極との間に直流を印加することによって、前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動して前記物質を排出するように構成される、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0023】
<発明的概念17>
前記制御回路は、1〜5mAの平均振幅を有する直流を印加するように構成される、発明的概念16に記載の装置。
【0024】
<発明的概念18>
前記制御回路は、1.2V未満の平均振幅を有する直流を印加するように構成される、発明的概念16に記載の装置。
【0025】
<発明的概念19>
前記制御回路は、前記直流を一連のパルスとして印加するように構成される、発明的概念16に記載の装置。
【0026】
<発明的概念20>
前記制御回路は、100ミリ秒〜300秒の平均パルス持続時間を有する一連のパルスとして前記直流を印加するように構成される、発明的概念19に記載の装置。
【0027】
<発明的概念21>
前記制御回路は、1%〜50%のデューティサイクルを有する一連のパルスとして前記直流を印加するように構成される、発明的概念19に記載の装置。
【0028】
<発明的概念22>
前記制御ユニットは、前記各パルス中に前記脳実質電極と前記CSF電極との間に電圧を印加することによって、前記物質を排出するように前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動し、
前記電圧を印加しつつ、前記パルス中に前記電圧を印加することによって生じる電流を測定し、
前記測定された電流が閾値を下回ると前記パルスを終了させるように構成される、発明的概念19に記載の装置。
【0029】
<発明的概念23>
前記閾値は、前記パルスの開始時に測定される初期電流の大きさに基づく値である、発明的概念22に記載の装置。
【0030】
<発明的概念24>
上矢状洞内、又はその上方に配置されるように適合された中間面処置電極を更に備え、前記制御回路は、前記中間面処置電極と前記CSF電極との間に処置電流を印加することによって、前記物質を前記CSF充填腔から前記上矢状洞に排出するように構成される、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0031】
<発明的概念25>
前記中間面処置電極は、前記上矢状洞の上方に配置されるように適合される、発明的概念24に記載の装置。
【0032】
<発明的概念26>
前記中間面処置電極は、前記対象者の頭の頭蓋骨の外側に、かつ前記頭蓋骨と電気的に接触して前記上矢状洞の上方に配置されることを特徴とする発明的概念25に記載の装置。
【0033】
<発明的概念27>
前記中間面処置電極は、前記対象者の頭の頭蓋骨の下で上矢状洞の上方に配置されるように適合される、発明的概念25に記載の装置。
【0034】
<発明的概念28>
前記中間面処置電極は、前記上矢状洞に埋め込まれるように構成される、発明的概念24に記載の装置。
【0035】
<発明的概念29>
前記CSF電極は、前記対象者の頭蓋骨の矢状面から1cm〜12cmの位置に配置されるように適合していることを特徴とする発明的概念24に記載の装置。
【0036】
<発明的概念30>
脳のCSF充填腔はクモ膜下腔であり、
前記CSF電極は、前記クモ膜下腔内に埋め込まれるように構成されたクモ膜下電極であり、
前記制御回路は、前記物質を前記クモ膜下腔から前記上矢状洞へと排出するように構成される、発明的概念24に記載の装置。
【0037】
<発明的概念31>
前記制御回路は、流体を前記脳の前記CSF充填腔から前記上矢状洞へと電気浸透的に駆動することによって前記物質を排出するように構成される、発明的概念24に記載の装置。
【0038】
<発明的概念32>
前記制御回路は、前記中間面処置電極を陰極として構成し、前記CSF電極を陽極として構成することによって、前記流体を前記脳の前記CSF充填腔から前記上矢状洞へと駆動するように構成される、発明的概念31に記載の装置。
【0039】
<発明的概念33>
前記制御回路は、前記物質を前記脳の前記CSF充填腔から前記上矢状洞へと電気泳動的に駆動することによって排出するように構成される、発明的概念24に記載の装置。
【0040】
<発明的概念34>
前記制御回路は、前記処置電流を直流として印加するように構成される、発明的概念24に記載の装置。
【0041】
<発明的概念35>
前記制御回路は、同時に、
(a)前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動して、前記物質を前記脳実質から前記脳のCSF充填腔へと排出し、
(b)前記中間面処置電極と前記CSF電極との間に前記処置電流を印加して前記物質を前記CSF充填腔から前記上矢状洞へと排出する
ように構成される、発明的概念24に記載の装置。
【0042】
<発明的概念36>
前記制御回路は、前記脳実質電極、前記CSF電極、前記中間面処置電極にそれぞれ第1、第2、第3の電圧を印加するように構成され、前記第3の電圧は、前記第1の電圧よりも正である前記第2の電圧よりも正である、発明的概念35に記載の装置。
【0043】
<発明的概念37>
前記制御回路は、交互に、
(a)前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動して、前記脳実質から前記脳の前記CSF充填腔に前記物質を排出し、
(b)前記中間面処置電極と前記CSF電極との間に前記処置電流を印加して前記物質を前記CSF充填腔から上矢状洞へと排出する
ように構成される、発明的概念24に記載の装置。
【0044】
<発明的概念38>
前記脳脊髄液(CSF)電極が第1の脳脊髄液(CSF)電極であり、
前記装置は更に、
上矢状洞内又はその上方に配置されるように適合された中間面処置電極と、
脳室系及びクモ膜下腔からなる群から選択される前記対象者の脳のCSF充填腔に埋め込まれるように構成される第2の脳脊髄液(CSF)電極と、を備え、
前記制御回路は、(a)前記中間面処置電極と(b)前記第2のCSF電極との間に処置電流を印加することによって、前記物質を前記脳の前記CSF充填腔から前記上矢状洞へと排出するように構成される、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0045】
<発明的概念39>
前記中間面処置電極は、前記上矢状洞の上方に配置されるように適合される、発明的概念38に記載の装置。
【0046】
<発明的概念40>
前記中間面処置電極は、前記対象者の頭の頭蓋骨の外側で前記頭蓋骨と電気的に接触して前記上矢状洞の上方に配置される発明的概念39に記載の装置。
【0047】
<発明的概念41>
前記中間面処置電極は、前記対象者の頭部の頭蓋骨の下で前記上矢状洞の上方に配置されるように適合される、発明的概念39に記載の装置。
【0048】
<発明的概念42>
前記中間面処置電極は、前記上矢状洞に埋め込まれるように構成される、発明的概念38に記載の装置。
【0049】
<発明的概念43>
上矢状洞の上方に配置されるように適合された中間面処置電極と、
前記対象者の頭部の頭蓋骨の矢状中間面から1cm〜12cmの位置に配置されるように適合された側方処置電極と、を備え、
前記制御回路は、(a)の1つ又は複数の前記中間面処置電極と(b)1つ又は複数の前記側方処置電極の間に1つ又は複数の処置電流を印加することによって、前記物質を前記クモ膜下腔から前記上矢状洞へと排出するように構成される、発明的概念1又は2に記載の装置。
【0050】
<発明的概念44>
前記中間面処置電極は、前記対象者の頭の頭蓋骨の外側で前記頭蓋骨と電気的に接触して前記上矢状洞の上方に配置されるように適合される発明的概念43に記載の装置。
【0051】
<発明的概念45>
前記中間面処置電極は、前記対象者の頭の頭蓋骨の下で前記上矢状洞の上方に配置されるように適合される、発明的概念43に記載の装置。
【0052】
<発明的概念46>
前記制御回路は、流体を前記クモ膜下腔から前記上矢状洞へと電気浸透的に駆動することによって前記物質を排出するように適合される、発明的概念43に記載の装置。
【0053】
<発明的概念47>
前記制御回路は、前記中間面処置電極を陰極として構成し、前記側方処置電極を陽極として構成するように構成される、発明的概念46に記載の装置。
【0054】
<発明的概念48>
前記側方処置電極は、(a)前記頭蓋骨の矢状中間面の左に配置されるように適合された左側方処置電極と、(b)前記頭蓋骨の矢状中間面の右に配置されるように適合された右側方処置電極と、を備え、
前記制御回路は、前記中間面処置電極を陰極として構成し、前記左側方処置電極及び前記右側方処置電極をそれぞれ左右の陽極として構成するように構成される発明的概念46に記載の装置。
【0055】
<発明的概念49>
前記制御回路は、前記物質を前記クモ膜下腔から前記上矢状洞へと電気泳動的に駆動することによって前記物質を排出するように構成される、発明的概念43に記載の装置。
【0056】
<発明的概念50>
前記側方処置電極は、(a)前記頭蓋骨の矢状中間面の左に配置されるように適合された左側方処置電極と、(b)前記頭蓋骨の矢状中間面の右に配置されるように適合される右側方処置電極と、を備え、
前記制御回路は、前記中間面処置電極を陽極として構成し、前記左側方処置電極及び前記右側方処置電極をそれぞれ左右の陰極として構成するように構成される、発明的概念49に記載の装置。
【0057】
<発明的概念51>
前記側方処置電極は、前記対象者のクモ膜の下に埋め込まれるように適合される、発明的概念43に記載の装置。
【0058】
<発明的概念52>
前記側方処置電極は、前記クモ膜下腔内に配置されるように適合される、発明的概念51に記載の装置。
【0059】
<発明的概念53>
前記側方処置電極は、前記対象者の脳の灰白質又は白質に配置されるように適合される、発明的概念51に記載の装置。
【0060】
<発明的概念54>
前記制御回路は、前記1つ又は複数の処置電流を直流として印加するように構成される、発明的概念43に記載の装置。
【0061】
更に、本発明の発明的概念55に従い、
疾患の危険性があり、又は疾患に罹患していると認定された対象者の脳実質に脳実質電極を埋め込むステップと、
脳室系とクモ膜下腔とからなる群から選択される前記対象者の脳のCSF充填腔に脳脊髄液(CSF)電極を埋め込むステップと、
前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動して、前記脳実質から前記脳の前記CSF充填腔に物質を排出するように制御回路を駆動するステップを有する方法が提供される。
【0062】
<発明的概念56>
前記疾患がアルツハイマー病であり、脳実質電極を埋め込むステップが、アルツハイマー病の危険性があり、又はアルツハイマー病に罹患していると認定された前記対象者に脳実質電極を埋め込むステップを有する、発明的概念55に記載の装置。
【0063】
<発明的概念57>
前記疾患が脳アミロイド血管障害(CAA)であり、脳実質電極を埋め込むステップが、CAAのリスクがあり、又はCAAに罹患していると認定された前記対象者に脳実質電極を埋め込むステップを有する、発明的概念55に記載の装置。
【0064】
<発明的概念58>
前記脳の前記CSF充填腔が脳室系であり、前記CSF電極が脳室電極であり、前記制御装置を駆動するステップが、前記脳実質電極及び前記脳室系電極を駆動して、前記脳実質から前記脳室系に物質を排出するするステップを有する、発明的概念55に記載の方法。
【0065】
<発明的概念59>
前記脳の前記CSF充填腔がクモ膜下腔であり、前記CSF電極がクモ膜下電極であり、前記制御装置を駆動するステップが、前記脳実質電極及び前記クモ膜下電極を駆動して、前記脳実質から前記クモ膜下腔に物質を排出するステップを有する、発明的概念55に記載の方法。
【0066】
<発明的概念60>
前記物質はアミロイドβを含み、前記制御装置を駆動するステップが、前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動して、前記アミロイドβを前記脳実質から前記脳の前記CSF充填洞に排出するように前記制御装置を駆動するステップを有する、発明的概念55に記載の方法。
【0067】
<発明的概念61>
前記物質は金属イオンを含み、前記制御装置を駆動するステップが、前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動して、前記金属イオンを前記脳実質から前記脳の前記CSF充填洞に排出するように前記制御装置を駆動するステップを有する、発明的概念55に記載の方法。
【0068】
<発明的概念62>
前記物質がタウタンパク質を含み、前記制御装置を駆動するステップが、前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動して、前記タウタンパク質を前記脳実質から前記脳の前記CSF充填に排出するように前記制御装置を駆動するステップを有する、発明的概念55に記載の方法。
【0069】
<発明的概念63>
脳実質に前記脳実質電極を埋め込むステップが、前記脳の白質に脳実質電極を埋め込むステップを有する、発明的概念55に記載の方法。
【0070】
<発明的概念64>
脳実質に前記脳実質電極を埋め込むステップが、前記脳の灰白質に脳実質電極を埋め込むステップを有する、発明的概念63に記載の方法。
【0071】
<発明的概念65>
脳実質に前記脳実質電極及び前記CSF電極を埋め込むステップが、前記物質の蓄積領域が前記脳実質電極及び前記CSF電極の間であるように前記脳実質電極及び前記CSF電極を埋め込むステップを有する、発明的概念63に記載の方法。
【0072】
<発明的概念66>
脳実質に前記脳実質電極及び前記CSF電極を埋め込むステップが、前記脳実質電極及び前記CSF電極を埋め込む前に、前記脳実質における前記物質の蓄積領域を特定するステップを有する、発明的概念65に記載の方法。
【0073】
<発明的概念67>
前記物質の蓄積領域を特定するステップが、前記脳の画像化を実行するステップを有する、発明的概念66に記載の方法。
【0074】
<発明的概念68>
前記脳の画像化を実行するステップが、機能的MRI(fMRI)を実行するステップを有する、発明的概念67に記載の方法。
【0075】
<発明的概念69>
前記脳実質電極を埋め込むステップが、前記物質の蓄積領域が、前記脳実質電極と前記蓄積領域に最も近い前記脳の前記CSF充填腔の間になるように前記脳実質電極を埋め込むステップを有する、発明的概念63に記載の方法。
【0076】
<発明的概念70>
前記脳実質電極を埋め込むステップが、前記脳実質電極を埋め込む前に、前記脳実質における前記物質の前記蓄積領域を特定するステップを有する、発明的概念69に記載の方法。
【0077】
<発明的概念71>
前記物質の前記蓄積領域を特定するステップが、前記脳の画像化を実行するステップを有する、発明的概念70に記載の方法。
【0078】
<発明的概念72>
前記脳の画像化を実行するステップが、機能的MRI(fMRI)を実行するステップを有する、発明的概念71に記載の方法。
【0079】
<発明的概念73>
制御回路を駆動するステップが、前記脳実質電極を陽極として構成し、前記CSF電極を陰極と構成するように制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念55に記載の方法。
【0080】
<発明的概念74>
制御回路を駆動するステップが、前記脳実質電極を陰極として構成し、前記CSF電極を陽極と構成するように制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念55に記載の方法。
【0081】
<発明的概念75>
前記脳実質電極を用いて深部脳刺激を付加的に印加するステップを更に有する、発明的概念55に記載の方法。
【0082】
<発明的概念76>
前記制御回路を前記対象者の皮膚下に埋め込むステップを更に有する、発明的概念55に記載の方法。
【0083】
<発明的概念77>
前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動するように前記制御回路を駆動するステップは、前記脳実質性電極と前記CSF電極との間に非励起電流を印加することによって、前記物質を排出するように前記脳実質性電極及び前記CSF電極を駆動するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念55に記載の方法。
【0084】
<発明的概念78>
前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動するように前記制御回路を駆動するステップは、前記脳実質電極と前記CSF電極との間に直流を印加することによって、前記物質を排出するように前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念55に記載の方法。
【0085】
<発明的概念79>
直流電流を印加するように前記制御回路を駆動するステップは、1〜5mAの平均振幅を有する直流を印加するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念78に記載の方法。
【0086】
<発明的概念80>
直流電流を印加するように前記制御回路を駆動するステップは、1.2V未満の平均振幅を有する直流を印加するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念78に記載の方法。
【0087】
<発明的概念81>
直流電流を印加するように前記制御回路を駆動するステップは、直流を一連のパルスとして印加するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念78に記載の方法。
【0088】
<発明的概念82>
直流を一連のパルスとして印加するように前記制御回路を駆動するステップは、100ミリ秒〜300秒の平均パルス持続時間を有する一連のパルスとして直流を印加するよう前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念81に記載の方法。
【0089】
<発明的概念83>
直流を一連のパルスとして印加するように前記制御回路を駆動するステップは、1%〜50%のデューティサイクルを有する一連のパルスとして前記直流を印加するように前記制御回路を駆動するステップを有する発明的概念81に記載の方法。
【0090】
<発明的概念84>
前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動するように前記制御回路を駆動するステップは、
前記各パルス中に前記脳実質電極と前記CSF電極との間に電圧を印加することによって、前記物質を排出するように前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動し、
前記電圧を印加しつつ、前記パルス中に前記電圧を印加することによって生じる電流を測定し、
前記測定された電流が閾値を下回ると前記パルスを終了させる
ように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念81に記載の方法。
【0091】
<発明的概念85>
前記閾値は、前記パルスの開始時に測定される初期電流の大きさに基づく値である、発明的概念84に記載の方法。
【0092】
<発明的概念86>
上矢状洞内、又はその上方に中間面処置電極を配置するステップを更に備え、
前記制御回路を駆動するステップは、前記中間面処置電極と前記CSF電極との間に処置電流を印加することによって、前記物質を前記CSF充填腔から前記上矢状洞に排出するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念55に記載の方法。
【0093】
<発明的概念87>
中間面処置電極を配置するステップは、前記上矢状洞の上方に中間面処置電極を配置するステップを含む、発明的概念86に記載の方法。
【0094】
<発明的概念88>
中間面処置電極を配置するステップは、前記対象者の頭の頭蓋骨の外側で前記頭蓋骨と電気的に接触して前記上矢状洞の上方に中間面処置電極を配置するステップを有することを特徴とする発明的概念87に記載の方法。
【0095】
<発明的概念89>
中間面処置電極を配置するステップは、前記対象者の頭の頭蓋骨の下で上矢状洞の上方に中間面処置電極を配置するステップを有する、発明的概念87に記載の方法。
【0096】
<発明的概念90>
中間面処置電極を配置するステップは、前記上矢状洞に前記中間面処置電極を埋め込むステップを有する、発明的概念86に記載の方法。
【0097】
<発明的概念91>
前記CSF電極を埋め込むステップは、前記対象者の頭蓋骨の矢状面から1cm〜12cmの位置に前記CSF電極を埋め込むステップを有することを特徴とする発明的概念86に記載の方法。
【0098】
<発明的概念92>
脳のCSF充填腔はクモ膜下腔であり、
前記CSF電極は、クモ膜下電極であり、
前記制御回路を駆動するステップは、前記物質を前記クモ膜下腔から前記上矢状洞へと排出するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念86に記載の方法。
【0099】
<発明的概念93>
前記制御回路を駆動するステップは、流体を前記脳の前記CSF充填腔から前記上矢状洞へと電気浸透的に駆動することによって前記物質を排出するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念86に記載の方法。
【0100】
<発明的概念94>
前記制御回路を駆動するステップは、前記中間面処置電極を陰極として構成し、前記CSF電極を陽極として構成することによって、前記流体を前記脳の前記CSF充填腔から前記上矢状洞へと駆動するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念93に記載の方法。
【0101】
<発明的概念95>
前記制御回路を駆動するステップは、前記物質を前記脳の前記CSF充填腔から前記上矢状洞へと電気泳動的に駆動することによって排出するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念86に記載の方法。
【0102】
<発明的概念96>
前記制御回路を駆動するステップは、前記処置電流を直流として印加するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念86に記載の方法。
【0103】
<発明的概念97>
前記制御回路を駆動するステップは、同時に、(a)前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動して、前記物質を前記脳実質から前記脳のCSF充填腔へと排出し、(b)前記中間面処置電極と前記CSF電極との間に前記処置電流を印加して前記物質を前記CSF充填腔から前記上矢状洞へと排出するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念86に記載の方法。
【0104】
<発明的概念98>
前記制御回路を駆動するステップは、前記脳実質電極、前記CSF電極、前記中間面処置電極にそれぞれ第1、第2、第3の電圧を印加するように前記制御回路を駆動するステップを有し、前記第3の電圧は、前記第1の電圧よりも正である前記第2の電圧よりも正である、発明的概念97に記載の方法。
【0105】
<発明的概念99>
前記制御回路を駆動するステップは、交互に、(a)前記脳実質電極及び前記CSF電極を駆動して、前記脳実質から前記脳の前記CSF充填腔に前記物質を排出し、(b)前記中間面処置電極と前記CSF電極との間に前記処置電流を印加して前記物質を前記CSF充填腔から上矢状洞へと排出するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念86に記載の方法。
【0106】
<発明的概念100>
前記脳脊髄液(CSF)電極が第1の脳脊髄液(CSF)電極であり、
前記方法は更に、
上矢状洞内又はその上方に中間面処置電極を配置するステップと、
脳室系及びクモ膜下腔からなる群から選択される前記対象者の脳のCSF充填腔に第2の脳脊髄液(CSF)電極を埋め込むステップとを備え、
前記制御回路を駆動するステップは、(a)前記中間面処置電極と(b)前記第2のCSF電極との間に処置電流を印加することによって、前記物質を前記脳の前記CSF充填腔から前記上矢状洞へと排出するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念55に記載の方法。
【0107】
<発明的概念101>
前記中間面処置電極を配置するステップは、前記上矢状洞の上方に前記中間面処置電極を配置するステップを有する、発明的概念100に記載の方法。
【0108】
<発明的概念102>
前記中間面処置電極を配置するステップは、前記対象者の頭の頭蓋骨の外側で前記頭蓋骨と電気的に接触して前記上矢状洞の上方に前記中間面処置電極を配置するステップを有する、発明的概念101に記載の方法。
【0109】
<発明的概念103>
前記中間面処置電極を配置するステップは、前記対象者の頭部の頭蓋骨の下で前記上矢状洞の上方に前記中間面処置電極を配置するステップを有する、発明的概念101に記載の方法。
【0110】
<発明的概念104>
前記中間面処置電極を配置するステップは、前記上矢状洞に前記中間面処置電極を埋め込むステップを有する、発明的概念100に記載の方法。
【0111】
<発明的概念105>
上矢状洞の上方に前記中間面処置電極を配置するステップと、
前記対象者の頭部の頭蓋骨の矢状中間面から1cm〜12cmの位置に側方処置電極を配置するステップを備え、
前記制御回路を駆動するステップは、(a)の1つ又は複数の前記中間面処置電極と(b)1つ又は複数の前記側方処置電極の間に1つ又は複数の処置電流を印加することによって、前記物質を前記クモ膜下腔から前記上矢状洞へと排出するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念55に記載の方法。
【0112】
<発明的概念106>
前記中間面処置電極を配置するステップは、前記対象者の頭の頭蓋骨の外側で前記頭蓋骨と電気的に接触して前記上矢状洞の上方に前記中間面処置電極を配置するステップを有する、発明的概念105に記載の方法。
【0113】
<発明的概念107>
前記中間面処置電極を配置するステップは、前記対象者の頭の頭蓋骨の下で前記上矢状洞の上方に前記中間面処置電極を配置するステップを有する、発明的概念105に記載の方法。
【0114】
<発明的概念108>
前記制御回路を駆動するステップは、流体を前記クモ膜下腔から前記上矢状洞へと電気浸透的に駆動することによって前記物質を排出するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念105に記載の方法。
【0115】
<発明的概念109>
前記制御回路を駆動するステップは、前記中間面処置電極を陰極として構成し、前記側方処置電極を陽極として構成するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念108に記載の方法。
【0116】
<発明的概念110>
前記側方処置電極は、左側方処置電極及び右側方処置電極を有し、
前記側方処置電極を配置するステップは、前記左側方処置電極を前記頭蓋骨の矢状中間面の左に配置するステップと、前記右側方処置電極を前記頭蓋骨の矢状中間面の右に配置するステップを有し、
前記制御回路を駆動するステップは、前記中間面処置電極を陰極として構成し、前記左側方処置電極及び前記右側方処置電極をそれぞれ左右の陽極として構成するよう前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念108に記載の方法。
【0117】
<発明的概念111>
前記制御回路を駆動するステップは、前記物質を前記クモ膜下腔から前記上矢状洞へと電気泳動的に駆動することによって前記物質を排出するよう前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念105に記載の方法。
【0118】
<発明的概念112>
前記側方処置電極は、左側方処置電極及び右側方処置電極を有し、
前記側方処置電極を配置するステップは、前記左側方処置電極を前記頭蓋骨の矢状中間面の左に配置するステップと、前記右側方処置電極を前記頭蓋骨の矢状中間面の右に配置するステップを有し、
前記制御回路を駆動するステップは、前記中間面処置電極を陽極として構成し、前記左側方処置電極及び前記右側方処置電極をそれぞれ左右の陰極として構成するよう前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念1111に記載の方法。
【0119】
<発明的概念113>
前記側方処置電極を配置するステップは、前記対象者のクモ膜の下に埋め込むステップを有する、発明的概念105に記載の方法。
【0120】
<発明的概念114>
前記側方処置電極を配置するステップは、前記クモ膜下腔内に前記側方処置電極を配置するステップを有する、発明的概念113に記載の方法。
【0121】
<発明的概念115>
前記側方処置電極を配置するステップは、前記対象者の脳の灰白質又は白質に前記側方処置電極を配置するステップを有する、発明的概念113に記載の方法。
【0122】
<発明的概念116>
前記制御回路を駆動するステップは、前記1つ又は複数の処置電流を直流として印加するように前記制御回路を駆動するステップを有する、発明的概念105に記載の方法。
【0123】
本発明は、図面とともに、以下に述べるその実施形態の詳細な説明からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0124】
図1A〜1C 本発明のそれぞれの用途に応じて、アルツハイマー病を治療するためのシステムの概略図である。
図2A〜2B 本発明の用途に応じて実施された動物実験の結果を示す、ラット脳の断面の概略図である。
図3 本発明の用途に応じて実施されたインビトロ実験の結果を示すグラフである。
図4A〜4G 本発明の用途に応じて実施された図1A〜1Cから図4のシステムの代替構成の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0125】
図1A〜1Cは、本発明のそれぞれの用途に応じて、アルツハイマー病及び/又は脳アミロイド血管障害(CAA)を治療するためのシステム20の概略図である。システム20は、脳実質電極30及び脳脊髄液(CSF)電極32と、通常は脳実質電極及びCSF電極のリード線36及び38によってそれぞれ脳実質電極30及びCSF電極32に電気的に結合された制御回路34とを含む。
【0126】
本発明の幾つかの用途では、図1Aに示された2つの脳実質電極30について示されるように、脳実質電極30は、例えば深部脳刺激の電極用の埋め込みに使用されるものと類似する外科技術を用いて、アルツハイマー病、又はCAAの危険性があるか、又はこれに罹患していると認定された対象者の脳52の実質50に埋め込まれる。あるいは、脳実質電極30は、図1Aに示される中間の脳実質電極30について示されるように、例えば脳の外表面上の、またこれに接触する、対象者の脳の脳実質に電気的に接触する他の部位に埋め込まれる。CSF電極32は、脳52の脳室系54又はクモ膜下腔144(図4A〜4Gに表示される)(例えば、クモ膜下腔144の槽)などの、脳のCSF充填腔に埋め込まれる。例えば、CSF電極32は、然るべき変更を加えた上で、水頭症シャントを埋め込むための既知の技術を用いて埋め込まれ得る。特許請求の範囲を含む本出願で用いられる脳室系54は、側脳室55(左右側方脳室55A及び55B)、第3脳室56、第4脳室57、(図4A図4Gで表示される)中脳水道59、脳室間孔、第4脳室正中口、及び左右外側口を含み、かつこれらに限定される。
【0127】
制御回路34が作動されて、脳実質電極30及びCSF電極32を駆動し、脳実質50から脳室系54などのCSF充填腔内に物質を排出する。幾つかの用途では、この物質は、アミロイドβ、金属イオン、タウタンパク質、及び/又は廃棄物を含む。特許請求の範囲を含む本出願で用いられる、脳実質からの物質の排出は、物質の全てを排出するのではなく、物質の一部を排出することを含むものとして理解されるべきである。一般的には、物質を排出するために、制御回路34は、脳実質電極30とCSF電極32との間に電圧又は電流を印加する(すなわち、制御回路34が電圧又は電流を調整する)。
【0128】
一般的には、医師などの医療従事者は、制御回路34を作動して本明細書に記載される機能を提供する。制御ユニットを作動させることは、(例えば、別個のプログラマ又は外部コントローラの使用など)制御回路のパラメータ及び/又は機能を構成すること、又は制御ユニットを作動させて、制御回路に事前にプログラムされた機能を実施することを含み得る。制御回路34は、一般的には、本明細書に記載の制御回路の機能を提供するように構成された適切なメモリ、プロセッサ、及びハードウェア実施ソフトウェアを備えている。
【0129】
電流は一般に、脳実質電極30とCFS電極32との間に位置する組織を流れ得る。代替として、又は追加として、電流の少なくとも一部は、(a)脳実質電極30と(b)CSF充填腔の脳実質電極30に最も近い領域(例えば脳室系54)との間を流れ得る。発明者らは、脳室系54などのCSF充填腔における脳脊髄液(CSF)の電気抵抗が低いため、脳室はある程度まで電気的に単一の実体であると考えた。したがって、CSF電極32が脳実質電極30から離れた脳室に埋め込まれたとしても、電流の大部分は脳室系54の最も近い部分に流れる。例えば、図1Bに示すように、脳実質電極30Aが脳の右の半球52に埋め込まれると、CSF電極32が左脳室55Aに埋め込まれているとしても、電流の大部分は脳実質電極30Aと右脳室の脳実質電極30Aに最も近い領域との間を流れ得る。
【0130】
幾つかの用途では、物質の粒子の表面と周囲の脳組織液との間の正又は負の電荷帯電界面により、電極間に印加された電圧が電気泳動的に物質を排出し得る。これらの用途では、電極間に印加された電圧は、脳実質50と脳室系54などのCSF充填腔の間の電位差を引き起こし、それによって、脳実質50から、脳室系54などのCSF充填腔への物質の移動を引き起こす。その代替として、又は追加として、幾つかの用途では、電極間に印加された電圧は、脳実質内の流体の正又は負の電荷のために、物質を電気浸透的に排出し得る。これらの用途では、電極間に印加される電圧は、脳実質50と脳室系54などのCSF充填腔の間の電位差を引き起こし、それによって、脳実質50から、脳室系54などのCSF充填腔への物質の移動を引き起こし、ひいては脳実質50から脳室系54などのCSF充填腔への物質の移送が増加する。
【0131】
幾つかの用途では、システム20は、複数の脳実質電極30及び/又は複数のCSF電極32を備えている。脳実質電極30は、脳52の一方又は両方の半球に、及び/又は各々の半球の1つ又は複数の部位に埋め込まれ得る。図1A〜1Cに示されるような幾つかの用途では、システム20は複数の脳実質電極30と、正確に1つのCFS電極32とを備えている。例えば、単一のCSF電極32は、上述のように、かなりの程度まで他の脳室との電気的接続性が良好な側方脳室55又は第3の脳室56のうちの1つに埋め込まれ得る。他の用途(構成は図示せず)では、システム20は、(a)それぞれ左右側方脳室55A及び55Bに埋め込まれる正確に2つのCSF電極32、又は(b)それぞれ左右側方脳室55A及び55B及び第3の脳室56に埋め込まれる正確に3つのCSF電極32を備えている。
【0132】
システム20が複数の脳実質電極30及び/又は複数のCSF電極32を含む用途では、システム20は通常、対応する複数の脳実質電極リード線36及び/又は対応する複数のCSF電極リード線38を含む。各リード線は、別個の電気的絶縁を備え、かつ/又はリード線の一部は、図1A〜1Cに示すように、脳実質電極30のリード線に接合されて共通の電気絶縁を共有し得る。制御回路34は、例えば、別個の回路を使用して脳実質電極30を独立して駆動するように作動され得る。あるいは、脳実質電極30の1つ又は複数を互いに短絡させて、制御回路が短絡した電極を一緒に駆動するようにし得る。制御回路34は、脳実質電極30を同時に、又は別の時間に駆動するように作動され得る。
【0133】
幾つかの用途では、脳実質電極30が埋め込まれる脳実質56は、脳の白質を含む。
【0134】
特許請求の範囲を含む本出願で用いられる「治療する(処置する/treat)」とは、既にアルツハイマー病及び/又はCAAと診断された対象者を(例えば、初期段階で診断された患者の疾患の進行を遅延、遅滞、又は反転させることなどによって)治療することと、疾患と診断されておらず、及び/又は無症候性の対象者のアルツハイマー病及び/又はCAAの発症を予防することの両方を含む。例えば、本明細書に記載の技術は、血液検査又は脊髄穿刺の使用などによる異常なレベルのアミロイドβの検出に応答して、アルツハイマー病及び/又はCAAの発症を予防又は遅延させるために使用され得る。
【0135】
幾つかの用途では、制御回路34は、制御回路を含むハウジングが小さい場合は、対象者の頭蓋骨の皮下などの皮下に、又は制御回路のハウジングが(例えばバッテリを含むため)大きい場合は、上部胸部などの対象者の身体の他の場所に、頸部を通して、又は必要に応じて頭部内にリード線を配して埋め込まれるように構成される。これらの用途では、制御回路34は、一般的には、制御回路34と無線又は有線通信する外部コントローラによって駆動される。幾つかの用途では、外部コントローラは、対象者のベッドに取り付けられ(例えば、マットレス内に配置され)、夜間にのみ、及び/又は対象者が眠っているときにのみ、制御回路34を作動するように構成される。そのような夜間作動は、細胞外腔が覚醒時よりも広くなる睡眠中の物質(例えば、アミロイドβ又はタウタンパク質)排出の自然なタイミングをある程度模倣する場合があり、それによってより多くの間質液(ISF/interstitial fluid)が脳内を流れることが可能になる。他の用途では、制御回路34は対象者の外部に配置されるように適合される。
【0136】
幾つかの用途では、制御回路34が作動されて、脳実質電極30とCSF電極32間に非励起電流を印加することによって脳実質電極30及びCSF電極32を駆動し、物質を排出する。すなわち電流は活動電位の伝播を引き起こさない。したがって、これらの用途では、電流が神経活動に影響を与えないか、又は最小限にしか影響しないように電流のパラメータを設定するように制御回路34が作動される。あるいは、印加された電流は、脳組織をわずかに刺激する。
【0137】
幾つかの用途では、制御回路34が作動されて、脳実質電極30とCSF電極32との間に直流(DC)を印加することによって脳実質電極30及びCSF電極32を駆動し、物質を排出する。特許請求の範囲を含む本出願で用いられる直流は一定の極性を有する電流を意味する。直流の振幅は経時的に変化しても変化しなくてもよく、場合によってはゼロであってもよい。
【0138】
幾つかの用途では、制御回路34が作動されて、少なくとも1mA、5mA以下、及び/又は1〜5mAの平均振幅を有する直流を印加する。代替として、又は追加として、幾つかの用途では、制御回路34が作動されて、1.2V以下の平均振幅(このような振幅は電極の一方又は両方の近傍での電気分解を避け得る)を有する直流を印加する。
【0139】
物質がアミロイドβであるような幾つかの用途では、制御回路34が作動されて、脳実質電極30が陰極であり、CSF電極32が陽極であるように構成する。あるいは、制御回路34が作動されて、脳実質電極30が陽極であり、CSF電極32が陰極であるように構成する。電極間に印加された電圧が物質を電気泳動的に排出する用途の場合、電極の選択された極性は一般に、物質が正又は負の実効電荷を有するかどうかに依存する。同様に、電極間に印加された電圧が電気浸透的に物質を除去する用途では、電極の選択された極性は一般に、流体が正又は負の実効電荷(有効電荷/effective charge)を有するかどうかに依存する。
【0140】
幾つかの用途では、制御回路34が作動されて、一連のパルスとして直流を印加する。幾つかの用途では、一連のパルスは、(a)少なくとも10ミリ秒、100ミリ秒以下、及び/又は10ミリ秒と100ミリ秒の間(b)少なくとも100ミリ秒、300秒以下(例えば、500ミリ秒以下)、及び/又は100ミリ秒と300秒の間(例えば、100ミリ秒と500ミリ秒の間)、(c)少なくとも500ミリ秒、5秒以下、及び/又は500ミリ秒と5秒の間、(d)少なくとも5秒、10秒以下、及び/又は5秒と10秒の間、又は(e)少なくとも10秒、100秒以下、及び/又は10秒と100秒の間などの、少なくとも10ミリ秒、300秒以下、及び/又は10ミリ秒と300秒の間の平均パルス持続時間を有する。幾つかの用途では、パルスは、(a)少なくとも100Hz、1KHz以下、及び/又は100Hzと1KHzの間、(b)少なくとも20Hz、100Hz以下、及び/又は20Hzと100Hzの間、又は(c)少なくとも1Hz、10Hz以下、及び/又は1Hzから10Hzの間などの、少なくとも0.001Hz、1KHz以下、及び/又は0、001KHzと1KHzの間の周波数で印加される。代替として、又は追加として、幾つかの用途では、一連のパルスは、(a)少なくとも1%、5%以下、及び/又は1%と5%の間、(b)少なくとも5%、10%以下、及び/又は5%と10%の間、(c)少なくとも10%、25%以下、及び/又は10%と25%の間、又は(d)少なくとも25%、50%以下、及び/又は25%と50%の間などの、 少なくとも1%、50%以下、及び/又は1%と50%の間のデューティサイクルを有する。必ずしもそうとは限らないが、一般的には、組織内のキャパシタンスがパルス間で放電可能である場合には、所与レベルの印加電圧が組織内でより高い電流を生成するので、デューティサイクルは90%以下である。
【0141】
制御回路34が脳実質電極とCSF電極30、32との間に一連のDCパルスで電圧を印加する幾つかの用途では、結果として生じる電流は組織電解質の影響により減衰する。電流は、各パルスの印加開始後の数十ミリ秒以内に、その初期の大きさの約3分の2だけ減衰し得る。この静電容量効果を克服するために、パルス間の期間(この期間の間にキャパシタンスが放電する)を提供するために断続的に電圧を印加するように制御回路34が作動される。
【0142】
幾つかの用途では、制御回路34が作動されて、予めプログラムされた周波数及び/又はデューティサイクルで間欠的に電圧を印加する。これらのパラメータは、(a)全患者又は患者サブグループに適用可能であり、(b)電極が埋め込まれると較正手順の間に設定され、又は(c)脳実質電極30及び/又はCSF電極32の配置の幾何学的形状に基づいて設定され得る。あるいは、制御回路34は、印加電圧から生じる電流を検出することによって、これらのパラメータをリアルタイムで設定するように構成される。
【0143】
幾つかの用途では、制御回路34が作動されて、印加された各々のパルスの間に印加電圧から生じる電流を測定し、測定された電流の大きさが閾値を下回ったときに印加された各々のパルスを終了させる。例えば、閾値は、予めプログラムされた定数であってもよく、又はそれぞれのパルスの開始時に測定される初期電流の大きさ(例えば、そのパーセンテージ)に基づく値でもよい。制御回路34は放電期間中待機してから次のパルスを印加する。
【0144】
幾つかの用途では、制御回路34が作動されて、脳実質電極30とCSF電極32との間に、
・一次電圧で、また一次平均パルス持続時間に物質を電気泳動的に及び/又は電気浸透的に排出するように選択された一次極性のパルスの一次サブセットの交流(AC)、及び、
・1次電圧未満の2次電圧で、また1次平均パルス持続時間より長い二次平均パルス持続時間に一次極性とは反対の二次極性のパルスの二次サブセットの交流を印加する。
【0145】
二次電圧が低いため、パルスの二次サブセットは、パルスの一次サブセットの印加中に達成される物質の排出を大幅には逆転させない。この技術はまた、一次電圧が、そうでなければ電気分解を引き起こす可能性がある閾値DC電圧(例えば、1.2V)よりも高い場合であっても、電極の一方又は両方の近傍での電気分解を回避するのに役立ち得る。
【0146】
図1Cに示されるような幾つかの用途では、脳実質電極30を蓄積領域に埋め込むのではなく、脳実質電極30及びCSF電極32は、脳内脳実質50内の物質の1つ又は複数の蓄積領域64が電極の間にあるように埋め込まれる。例えば、蓄積領域(1つ又は複数)は、アミロイドプラーク及び/又はタウタンパク質関連の神経組織のもつれを含み得る。この目的のために、一般的には、例えばMRI(例えば、機能的MRI(FMRI))又は脳52のPETイメージングなどの脳52のイメージングを行うことによって、蓄積領域が最初に特定される。上述のように、物質の蓄積領域64が2つ以上存在する場合のように、脳実質電極30及び/又は複数のCSF電極32を埋め込まれ得る。
【0147】
図1Cにも示されるような幾つかの用途では、1つ又は複数の蓄積64の領域が脳実質電極30Aと、蓄積64の最も近い領域である脳室系54などのCSF充填腔のそれぞれの領域80との間にあるように、1つ又は複数の脳実質電極が埋め込まれる。CSF電極32は、領域80の近くに埋め込まれてもよく、近くに埋め込まれなくてもよい。領域80の近くにCSF電極32が埋め込まれない用途では、最も近い領域8が、上述のように脳室系54などのCSF充填腔のCSFを介してCSF電極32と流体連通しているため蓄積64の領域の物質は依然として、脳室系54などのCSF充填腔の最も近い領域80に駆動され得る。上述のように、1つ以上の物質蓄積領域64が存在する場合に、より一般的には、物質のより良好な排出を提供するために、複数の脳実質電極30及び/又は複数のCSF電極32が埋め込まれ得る。
【0148】
幾つかの用途では、脳実質電極30は更に、当技術分野で周知のような深部脳刺激を適用するために使用される。例えば、深部脳刺激は、脳室系などのCSF充填腔に物質を運ぶために電極が駆動されていない場合に適用され得る。当技術分野で周知のように、深部脳刺激は、パーキンソン病などの運動障害のある患者の振戦を減少させ、不随意運動をブロックするため、又はてんかん、クラスター頭痛、トゥレット症候群、慢性疼痛又は大鬱病を治療するために適用され得る。脳実質電極30の埋め込み位置は、特定の状態の治療並びに物質の排出に適するように選択され得る。
【0149】
幾つかの用途では、セッションで脳実質電極32及びCSF電極32を駆動するように制御回路34が作動され、各セッションの持続時間は、数秒又は数分である、又はより長い期間(例えば、30分)連続する。幾つかの用途では、電極は少なくとも1時間の期間は駆動されない。必要ならば、細胞外腔の広がりを利用するように、及び/又は駆動に関連する何らかの感覚を抑制するために、対象者が眠っているときにのみ電極を駆動するように制御回路34が作動される。例えば、制御回路34は、睡眠を検知するために、1つ又は複数の電極をEEG電極として使用するように作動され得る。幾つかの用途では、制御回路34を作動及び/又は充電するための電力は、帽子などの頭部に装着される機器内の無線エネルギ送信機から、又は上述したようなマットレスの中、下、又は上の無線エネルギ送信機から送信される。幾つかの用途では、制御回路34が作動されて、1日に数時間などのデューティサイクルなど、予め選択されたスケジュールに従って電極を駆動する。例えば、制御回路34は、対象者のベッドの中及び/又はその近傍に配置された無線送信機を含む制御回路などの体外制御回路によって制御及び/又は給電されるように構成され得る。幾つかの用途では、制御回路が電極を駆動しない1つ又は複数の休止期間が予め選択されたスケジュールに設けられる。
【0150】
明細書に記載されるどの用途でも、CSF電極32は、脳室系54ではなく、以下の部位のうちの1つに埋め込まれ得る:
・(脳室系54と流体連通する)脊髄の中心管、又は、
・(CSFは脳室系54の孔を経てクモ膜下腔144の槽に排出するため、脳室系54と流体連通する)(図4Aから図Gに標示されている)クモ膜下腔144。
【0151】
幾つかの用途では、CSF電極32を脳室系54に埋め込む代わりに、電極は上矢状洞142に埋め込まれる(図4Aから図4Gに標示)。
【0152】
本明細書に記載されているどの用途でも、脳実質電極30は、脳の脳実質組織50ではなく上矢状洞142に埋め込まれ得る(一般的には、これらの用途では、CSF電極32は脳室系54に埋め込まれる)。
【0153】
再び図1A〜1Cを参照する。幾つかの用途では、制御回路34は、脳実質50とCSF充填腔間の電圧差を検出し、検出された電圧差に応じて脳実質電極30と脳脊髄液(CSF)と電極32間に印加される電圧のレベルを設定するように構成される。
【0154】
次に、本発明の適用に従い実施された動物実験の結果を示す、ラット脳の断面の概略図である図2A〜Bを参照する。ラットが麻酔され、第1の電極130(小型コネクタにはんだ付けされたPT−Irワイヤ)が穴から矢状洞に挿入され、第2の電極132(小型電子コネクタにはんだ付けされたPT−Irワイヤ)が硬膜の穴から右脳室に挿入された。
【0155】
図2Aに示されるように、ブロモフェノールブルー染料が、指定の座標120及び122でラット脳の両半球に定位的に送達された。拡散コントロール(対比例)として左半球を使用することにより、この実験装置は同じ動物内での一対比較を可能にし、それによって脳内での色素の方向性のある運動に影響する可能性のある他の作用を排除する。
【0156】
制御回路は、ブロモフェノールブルー染料が実効的に(負帯電性)アニオン性分子を含むため、第1の電極130を陰極として構成し、第2の電極132を陽極として構成して、第1の電極120と第2の電極132間に右半球のみに一定極性(DC)電流を印加するように制御回路が作動された。電流は、(a)電流が1〜2mAの大きさで5分間連続して印加される第1のモードと、(b)電流が1〜2mAの大きさで、1秒当たり1パルス(すなわち、1Hzのパルス周波数)で10m秒持続するパルスで印加される第2のモードとを反復的に交代して印加された。
【0157】
図2Bは、電流を右半球に印加した後のブロモフェノールブルー色素の変位を示す。図から分かるように、左半球のブロムフェノール青色染料は、分散が最小であり、方向性のある変位を生じなかった。対照的に、右半球では、印加電流はブロムフェノール青色染料を側脳室に向かって移動させた。この色素は平均速度0.28±0.006mm/分で移動し、これは左半球で観察された拡散速度の14倍以上であった。右半球では、色素プロファイル中心の線形変位は約1.9±0.08mmであり、色素プロファイルの前面は注入点の中心から最大で約2.81±0.07mmの距離に達した。
【0158】
この実験の結果は、脳内に埋め込まれた2つの電極を使用してDC電流を印加することによって、色素の分子が脳組織内で移動可能であり、そのような場合は、自然な移動経路が脳室に向かうことを示した。発明者らは、電極間に電流を印加することにより、色素を電気泳動的に移動させることができると確信する。発明者らはまた、実験中に収集されたデータに基づいて、脳実質界面の抵抗が脳実質内で測定された抵抗よりも2倍大きいと計算されたため、第1の電極を上矢状洞ではなく脳実質に直接的に埋め込むことにより、分子の電流駆動運動を更に良好にすることができると確信する。
【0159】
アミロイドβの運動性及び方向性評価
ここで、本発明の適用に従い実施されたインビトロ実験の結果を示すグラフである図3を参照する。この実験は、直流(DC)の印加が、(リン酸緩衝液(PBS)を含む)人工脳脊髄液(aCSF)溶液からアミロイドβペプチドを除去する程度を評価した。Pt−Ir電極がaCSF溶液充填区画に挿入された。フルオロフォア標識アミロイドβペプチドを3つの異なる希釈レベル(2:500,5:500及び10:500)で溶解した。3つの異なる持続時間(5、10、及び15分)の一定DC電流が、1.5Vのアルカリ電池から、フルオロフォア標識アミロイドβペプチドを含むaCSF溶液に印加された。電気泳動を受けるアミロイドβの方向性、及び総合的能力が、各電極の蛍光濃度解析によって評価された。
【0160】
両方の電極で蛍光強度が測定され、蛍光強度比をとって、負に帯電した電極(陰極)に対して正に帯電した電極(陽極)で蛍光強度が正規化された。全ての測定値からデータが平均され、これは図3に平均値及び標準誤差として示されている。
【0161】
図3から分かるように、正の電荷を帯びた電極(陽極)(2:500の希釈レベル)の近傍で、電流−持続時間−依存性の蛍光増強が観察された。陽極と陰極との間の蛍光の差は電流‐持続時間依存の解析にとって統計的に有意であった(片側T検定:P<10Λ−15;t=12.17)。電流持続時間に依存する正に荷電した電極上の蛍光増強の傾向はまた、15分間の電流印加と5分間及び10分間の電流印加を対比して統計的に有意であった(一方向ANOVA:P<0.001、F=8.92;Holm−Sidakポストホック解析:非特異的結合により、15分間と5分間を対比してP=0.01、T=3.37、及び15分間と10分間を対比してT=3.889)。全ての濃度において、対陰極での陽極へのアミロイドβの有意な誘引性が認められた。
【0162】
これらの実験結果は、可溶性の単量体アミロイドβが負の構造でaCSF中で負に荷電され、アミロイドβに負電荷を与えるために両親媒性の界面活性剤を添加する必要なく電界内を移動することができることを実証している。
【0163】
野生型マウス脳実質におけるアミロイドβの電気泳動移動度の評価
本発明の用途に応じて動物実験が実施された。20匹の生後3ヶ月の野生型マウスに麻酔し、可溶性フルオロフォア標識アミロイドβ(1−42)、HiLyte(登録商標)フルオル488標識ヒト(AnaSpec、USA)が脳実質に注入された(AP=−2、ML=0.84、DV=1.2)。脳実質に第1のPT−IR電極を埋め込み(AP=−2.8、ML=0.84、DV=1.5)、第2のPT−IR電極を側脳室に埋め込んだ(AP=−0.5、ML=0.84、DV=1.6)。電極間の電流によって生成された電界が、アミロイドβの注入焦点を覆った。電流印加は、単一パルスの繰り返しによって行われた。以下のパラメータが使用された:電圧:70V;周波数:1Hz。電流印加プロトコルは以下の通りである:(a)1ミリ秒のパルス持続時間で15分間;(b)10ミリ秒のパルス持続時間で15分間;(c)100ミリ秒のパルス持続時間で15分間。周波数は一定に保たれたが、デューティサイクルは増加された。
【0164】
電界中のアミロイドβペプチドの痕跡を視覚化するために、6E10の1−16アミノ酸ストリップ(カタログ番号SIG−39320)に対して向けられた抗体を使用することにより、電界におけるアミロイドβ運動方向性の評価が行われた。DAPI染色により、組織構造及び細胞核が可視化された。アミロイドβ運動軌道が異なる倍率(4倍及び10倍)で評価された。矢状切片が細胞核(青色)及びアミロイドΒ(6E10、緑色)に対する抗体で染色され、蛍光顕微鏡で画像化された。
【0165】
アミロイドβ運動は、電流が印加されたマウスの脳内で視覚化された。側脳室内に挿入された電極は正に帯電されており、図3を参照して上で説明したインビトロ実験と同様に、印加電流はアミロイドβ運動を誘導することができた。
【0166】
これらの実験結果は、アミロイドβペプチドの電気泳動運動が実験で用いられた電流印加プロトコルを用いて脳実質内で可能であることを実証している。アミロイドβペプチドの運動方向性は、図3を参照して上に記載したインビトロ実験で観察されたものと同様であった。
【0167】
本発明のそれぞれの用途に応じた、システム20の代替構成の概略図である図4A〜4Gを参照する。これらの図は、脳52の前面図を示す。これらの用途において、システム20は、物質(例えば、アミロイドβ、金属イオン、タウタンパク質、及び/又は廃棄物質)を脳実質50からCSF充填腔内に排出することに加えて、CSF充填腔(例えば、クモ膜下腔144)から上矢状洞142に物質を排出するように構成される。これらの技術は、上記の技術のいずれかと組み合わせて使用され得る。これらの技術の幾つかでは、制御回路34は、処置電流を直流として印加するように構成される。
【0168】
図4A〜4Gを参照して説明した幾つかの用途では、制御回路34は、(a)脳実質部50からCSF充填腔への物質の排出、及び(b)CSF充填腔から上矢状洞142への物質の排出の両方のために、電極を同時に駆動するように構成される。例えば、制御回路34は、後述する脳実質電極30、CSF電極32、及び中間面処置電極150に異なるそれぞれの電圧を印加するように構成され得る。例えば、制御回路34は、脳実質電極30、CSF電極32、及び中間面処置電極150にそれぞれ第1、第2及び第3の電圧を印加するように構成され、第3の電極は第2の電圧よりも正であり、第2の電圧は第1の電圧よりも正である。第1の電圧と第3の電圧間の電位差は、電極の一方又は両方の近傍での電気分解を避けるため、一般的には1.2Vより大きくない。
【0169】
図4A〜4Gを参照して説明した他の用途では、制御回路34は、(a)脳実質50からの物質をCSF充填腔内に排出するために、複数の第1の期間中に脳実質電極30及びCSF電極32を駆動し、(b)CSF充填腔から物質を上矢状洞内に排出するために、通常は第1の期間と重ならない複数の第2の期間中に、中間面処置電極150及びCSF電極32又は(後述の)別の電極を駆動するなど、電極のセットを交互に駆動するように構成される。
【0170】
図4A〜4Gを参照して説明される幾つかの用途では、制御回路34は、流体をCSF充填腔(例えば、クモ膜下腔144)から上矢状洞142へと電気浸透的に駆動することによって、物質を上矢状洞142に排出するように構成される。幾つかの用途では、制御回路34は、中間面処置電極150を陰極として、またCSF電極32を陽極として構成することによって、流体を脳のCSF充填腔から上矢状洞142へと駆動するように構成される。
【0171】
図4A〜4Gを参照して説明される幾つかの用途では、制御回路34は、物質をCFS充填腔(例えばクモ膜下腔144)から上矢状洞へと電気泳動的に駆動することによって物質を排出するように構成される。幾つかの用途では、処置電流の印加はCSF充填腔と上矢状洞142の電位差を引き起こし、これがCSF充填腔から上矢状洞142への物質の移動を引き起こす。
【0172】
図4Aに示されるような幾つかの用途では、脳実質電極30は脳実質50に埋め込まれ、CSF電極32はCSF充填腔、例えば脳室系54又はクモ膜下腔144に埋め込まれる。中間面処置電極150は、(a)(図4Aに示されるように)上矢状洞142内、又は(b)上矢状洞142の上方(図4Aには示されていないが、図4B〜4Gに示される構成)のいずれかに配置される。第2のCSF電極152は、脳室系54(図4Aには示されていない構成)又は(図4Aに示されるような)クモ膜下腔144などのCSF充填腔に埋め込まれる。制御回路34が作動されて、(a)脳実質電極30とCSF電極32との間に第1の電圧を印加して物質を脳実質50からCSF充填腔へと排出し、(b)中間面処置電極150と第2のCSF電極152との間に第2の電圧を印加して物質をCSF充填腔から上矢状洞142へと排出する。この技術は、然るべき変更を加えた上で、4B〜4G図を参照して以下に記載される技術と組み合わせて使用され得る。
【0173】
あるいは、図4Bに示されるような幾つかの用途では、脳実質電極30は脳実質50に埋め込まれ、CSF電極32は、脳室系54又はクモ膜下腔144などのCSF充填洞に埋め込まれる。中間面処置電極150は、(a)(図4Aに示されるように)上矢状洞142内に、又は(図4B〜4Gに示されるように)上矢状洞142の上方に埋め込まれる。制御回路34が起動されて、(a)脳実質電極30とCSF電極32との間に第1の電圧を印加して、物質を脳実質50からCSF充填腔へと排出し、また(b)CSF電極32と中間面処置電極150との間に第2の電圧を印加して、物質をCSF充填腔から上矢状洞142へと排出する。
【0174】
図4B〜4Cに示されるような幾つかの用途では、中間面処置電極150は、上矢状洞142の上方に配置されるようにされる。これらの用途の幾つかでは、中間面処置電極150は、例えば(硬膜の下の、又は硬膜の外面と接触する)上矢状洞142の外面と接触して、対象者の頭部174の頭蓋骨168の下に配置される。これらの用途の他の例では、中間面処置電極150は、頭蓋骨168の外部で頭蓋骨168と電気的に接触するように配置される。特許請求の範囲を含む本出願で使用される「上矢状洞の上方」という用語は、上矢状洞よりも浅い位置で、すなわち頭部の中心からより遠い位置で上矢状洞と位置合わせされることを意味する。図4B及び4Cに示される構成では、制御回路34は、中間面処置電極150とCSF電極32との間に処置電流を印加することによって、物質をCSF充填腔から上矢状洞142に排出するように構成される。あるいは、図4B及び図4Cに示される中間面処置電極150の配置は、図4Aを参照して上述した構成と組み合わせて使用される。
【0175】
図4Dに示されるような幾つかの用途では、システム20は、少なくとも5個、20個以下、及び/又は5個から20個の中間面処置電極150などの複数の中間面処置電極150を備えている。中間面処置電極は、(a)上矢状洞142内(図4Dには示されていないが、図4Aに示されている構成)、又は(b)(図4D又は図4Bに示されるように)上矢状洞142の上方に配置される。
【0176】
これらに限定されるものではないが、図4A〜4Gを参照して本明細書に記載されたどの用途でも、CSF電極32は、頭蓋骨168の中間矢状面164から1cm〜12cm位置に配置され得る。幾つかの用途では、方法は、CSF電極32を頭蓋骨168の中間矢状面164から1cm〜12cmの位置に埋め込むステップを含み得る。
【0177】
これらに限定されるものではないが、図4A〜4Gを参照して本明細書に記載されたどの用途でも、CSF充填腔はクモ膜下腔144であってよく、CSF電極32は、クモ膜下腔144に埋め込まれるように構成されたクモ膜下電極であってよく、制御回路34は、物質をクモ膜下腔144から上矢状洞142へと排出するように構成され得る。
【0178】
図4Eから図4Gに示されるような幾つかの用途では、システム20は、(a)頭骨洞142の外部で頭蓋骨168と電気的に接触するように上矢状洞142の上方に配置された中間面処置電極150と、(b)頭蓋骨168の中間矢状面164から1〜12cmの距離に配置されるように適合された側方処置電極162とを備えている(距離は、頭蓋骨の湾曲に沿ってではなく、各処置電極の最も近い部分から中間矢状面164まで直線で測定されている)。制御回路34は、1つ又は複数の処置電流を(a)1つ又は複数の中間面処置電極150と(b)1つ又は複数の側方処置電極162間に印加することによって、物質をクモ膜下腔144から上矢状洞142へと排出するように構成される(各々の処置電流は図中の複数の電流線190によって概略的に示されている)。
【0179】
幾つかの用途では、システム20は、5個から20個の側方処置電極162、又は10個から40個の側方処置電極など、少なくとも5個、40個以下、及び/又は20個の側方処置電極162を備えている。幾つかの用途では、各タイプの処置電極の数は、対象者の頭部174のサイズに基づいて決定される。幾つかの用途では、システム20は、中間面処置電極150の2倍の側方処置電極162を備えている。
【0180】
幾つかの用途では、中間面処置電極150及び側部処置電極162を使用して印加される1つ又は複数の処置電流は、上矢状洞142の下外側面170を経てクモ膜下腔144と上矢状洞142との間を通過する。これらの用途の幾つかでは、処置電流の少なくとも40%、例えば少なくとも75%又は少なくとも90%が、上矢状洞142の下外側面170を経てクモ膜下腔144と上矢状洞142との間を通過する。直前に説明した用途では、中間面処置電極150及び/又は側部処置電極162の位置は、一般的には、1つ又は複数の処置電流が下外側面170を通過するように選択される。例えば、図4C〜4Gを参照して説明したように、側方処置電極162が頭蓋骨168の外側に、頭蓋骨168と電気的に接触して配置される構成では、側方処置電極162は、頭蓋骨168の中間矢状面164から少なくとも4cm、12cm以下、及び/又は4〜12cmの距離に配置され得る。図4Cから4Gを参照して説明されるように、側方処置電極162が対象者のクモ膜172の下に埋め込まれる構成の場合には、側方処置電極162は、頭蓋骨168の中間矢状面164の少なくとも1cm、3cm以下、及び/又は1〜3cmの位置に配置され得る。
【0181】
幾つかの用途では、少なくとも5個の中間面処置電極162が上矢状洞142の上方に配置される。代替として、又は追加として、幾つかの用途では、少なくとも5個の側方処置電極162が、頭蓋骨の中間矢状面中間面164から1cm〜12cmの位置に配置される。幾つかの用途では、各々の側方処置電極162は、中間面処置電極150の少なくとも1個から1cm〜12cmの位置に配置される。
【0182】
幾つか用途では、中間面処置電極150は、頭蓋骨168の中間矢状面164から10mm内に配置される。代替として、又は追加として、幾つかの用途では、中間面処置電極150は、中間面処置電極150の少なくとも1個が別の中間面処置電極150から少なくとも5mm、別の中間面処置電極150から20mm以下、及び/又は別の中間面処置電極150から5mm〜150mmであるように配置される。幾つかの用途では、側方処置電極162は、側方処置電極162の別の1個から少なくとも5mmに配置される。
【0183】
図4Eに示されるような幾つかの用途では、中間面処置電極150は頭部174の皮膚176の下に埋め込まれる。図4Fに示されるような他の用途では、中間面処置電極150は、頭部174の外面178上などの頭部174の外側に配置される。
【0184】
幾つかの用途では、システム20は、中間面リード線180を更に備え、これに沿って中間面処置電極150が配置(例えば、固定)される。中間面リード線180は、上矢状洞142の上方に中間面処置電極150を配置するように、頭蓋骨168の外側に配置される。中間面処置電極150が皮膚176の下に埋め込まれる幾つかの用途では、埋め込みは、一般的には頭部の後部部位にある皮膚176を切開し、頭部の前部に向かって、前額の近くに中間面のリード線をトンネリングすることによって実施される。必要があれば、各々の中間面処置電極150は、皮膚176内のそれぞれの切開によって挿入され、中間面のリード線180に接続される。
【0185】
図4E〜4Fに示されるような幾つかの用途では、側方処置電極162は、頭蓋骨168の外部に、頭蓋骨168と電気的に接触して配置される。これらの用途の幾つかでは、例えば図4Eに示されるように、側方処置電極162は、頭部174の皮膚176に埋め込まれる。あるいは、図4Fに示されるように、側方処置電極162は、頭部174の外側表面178などの頭部174の外側に配置される。これらの用途の幾つかでは、側方処置電極162は、頭蓋骨168の中間矢状面164から少なくとも4cm、12cm以下、及び/又は4〜12cmmの位置に配置され得る。(特許請求の範囲を含む本出願では、指定された範囲は全てそれらの端点を含む)そのような位置決めは、上述のように、上矢状洞142の下外側170を経てクモ膜下腔144と上矢状洞142間を通過する1つ又は複数の処置電流を生成し得る。
【0186】
幾つかの用途では、システム20は側方リード182を更に含み、側方処置電極162がそれに沿って配置(例えば、固定)される。側方の処置電極162を配置するために、側方のリード線182は、頭蓋骨168の外側、一般的には頭蓋骨168の中間矢状面164から1cm〜12cmの範囲内に配置される。側方処置電極162が皮膚176の下に埋め込まれる幾つかの用途では、埋め込みは、一般的には頭部の後部部位にある皮膚176を切開し、前頭部の近傍などの頭部の前部に向かって、側方のリード線をトンネリングすることによって実施される。必要に応じて、各々の側方処置電極162は、皮膚176内のそれぞれの切開によって挿入され、中間面のリード線182に接続される。幾つかの用途では、側方リード182を設ける代わりに、側方処置電極162が中間面リード線180に結合される。中間面リード線180は、側方電極が拘束された(折り畳んだ)状態で導入され、側方電極は、解放されると一般的には自動的に、側方に延びるように構成される。この構成は、以下に説明するように、左右の両方の側方電極が設けられている用途にも使用され得る。
【0187】
幾つかの用途では、それぞれの対の中間面処置電極150と側方処置電極162との間に処置電流を別個に印加するように制御回路34が作動される。このような別個の電流の印加は、(例えば、解剖学的変化により)低い抵抗が対の一方の電極間に生じるべきときでも、システム20の継続的な実効的動作を可能にする。これらの用途の幾つかでは、このような別個の電流印加を可能にするために、中間面リード180は、中間面処置電極150の数に対応する複数の導電性ワイヤを含み、中間面リード182は、側方処置電極162の数に対応する複数の導電性ワイヤを含む。あるいは、制御回路34及び電極は、周知のような電気的多重化を実施し、この場合、各々のリードは、単一の導電性ワイヤのみを含むだけでよい。あるいは、幾つかの用途では、中間面処置電極150の全てが(例えば中間面のリード線内の単一の導電性ワイヤによって)互いに電気的に結合され、側方処置電極162の全てが(例えば側方リード線によって)互いに電気的に結合される)。
【0188】
図4Fに示す構成の幾つかの用途では、システム20は、中間面電極と側方電極間の適切な離間と位置合わせとを行うために、側方リード182を中間面リード180に結合する1つ又は複数の細長い支持要素184を更に含む。支持要素184は、一般的には非導電性である。
【0189】
図4A〜4Gを参照して説明した幾つかの用途では、制御回路34は、平均振幅が1〜3ミリアンペアの1つ又は複数の処置電流を印加するように構成される。(結果として得られる電圧は、図4E〜4Fに示される構成では、1つ又は複数の処置電流が頭蓋骨168を2回通過するため、一般的には図4Gに示される構成での電圧よりも高い。)
【0190】
図4A〜4Gを参照して説明した幾つかの用途では、参照すると、制御回路34が作動されて、1つ又は複数の処置電流を直流として、一般的には、例えば500Hz超及び/又は2KHz未満、例えば1KHzで、複数のパルスとして印加する。幾つかの用途では、パルスのデューティサイクルは90%超であり、用途によってはパルスが使用されず、代わりに100%の実効デューティサイクルが利用される。組織内のキャパシタンスがパルス間で放電可能である場合、所定レベルの印加電圧が組織内でより大きな電流を生成するため、デューティサイクルは必ずしもそうとは限らないが、一般的には90%以下である。他の用途では、制御回路34が作動されて、1つ又は複数の処置電流を直流オフセット及び一定の極性を有する交流として印加する。例えば、周波数は少なくとも1Hz、100Hz以下(例えば10Hz)、及び/又は1Hz〜100Hz(例えば1Hz〜10Hz)であってよい。
【0191】
上述したように、幾つかの用途では、制御回路34は、流体をクモ膜下腔144から上矢状静脈洞142へと電気浸透駆動することにより物質を排出するように構成される。幾つかの用途では、制御回路34は、中間面処置電極150を陰極として、また側方処置電極162を陽極として構成するように構成される。代替として、又は追加として、印加電圧の結果としてのクモ膜下腔144を介した脳の脳室系からの脳脊髄液(CSF)の流れの増加は、それ自体がβアミロイドの直接的な排出とは独立に、アルツハイマー病及び/又はCAAを治療し得る。
【0192】
幾つかの用途では、側方処置電極162は、(a)頭蓋骨168の中間矢状面164の左に配置されるように適合された左側方処置電極162A、及び(b)頭蓋骨168の中間矢状面164の右に配置されるように適合された右側方処置電極162Bを含む。幾つかの用途では、制御回路34は、中間面処置電極150を陰極として構成し、左右の側方処置電極162A及び162Bをそれぞれ左右の陽極として構成するように構成される。
【0193】
上述のように、幾つかの用途では、制御回路34は、物質をクモ膜下腔144から上矢状洞142に電気泳動的に駆動することによって物質を排出するように構成される。幾つかの用途では、側方処置電極162は、(a)頭蓋骨168の中間矢状面164の左に配置されるように適合された左側方処置電極162Aと、(b)頭蓋骨168の中間矢状面164の右に配置されるように適合された右側方処置電極162Bとを含む。これらの用途の幾つかでは、制御回路34は、中間面処置電極150を陽極として、また左右の側方処置電極162A及び162Bを、左右の陰極としてそれぞれ構成するように構成される。発明者のために実施された実験では、アミロイドβが正の電極(陽極)に誘引されることが判明した。
【0194】
幾つかの用途では、側方処置電極162は、図4Gに示されるように脳実質115(灰白質、又は白質)内など、又は図4Aに示されるようにクモ膜下腔内などの対象者のクモ膜下172の下に埋め込まれるように適合される。幾つかの用途では、同じ電極が脳実質電極30及び側部処置電極162の両方として機能し、制御回路34によって同時に又は異なる時間のいずれかで駆動される。例えば、側方処置電極162は、当技術分野で知られているような針電極を含んでもよく、必要に応じて、側方処置電極162は、それぞれの近位アンカ188を備えよい。この構成は、然るべき変更を加えた上で、図4A〜4Fを参照して上述した技術のいずれかを実施し得る。
【0195】
これらの用途の幾つかでは、側方処置電極162は、頭蓋骨168の中間矢状面164から少なくとも1cm、3cm以下、及び/又は1〜3cmの位置に配置される。このような配置は、上述のように、上矢状洞142の外側面170を経てクモ膜下腔腔144と上矢状洞142との間を通過する処置電流を生成し得る。幾つかの用途では、各々の側方処置電極162は、中間面処置電極150の少なくとも1つから1〜3cmの位置に配置される。いくつかの用途では、各側方処置電極162は、側方処置電極から最も近い中間面処置電極150の少なくとも1つから1〜3cmの位置に配置される。
【0196】
上述のように、幾つかの用途では、システム20は中間面リード180を更に含み、これに沿って中間面処置電極150が配置(例えば、固定)される。中間面処置電極150を配置するために、中間線リード線180は頭蓋骨168外側に配置される。幾つかの用途では、システム20は、(a)左側方処置電極162Aがこれに沿って配置(例えば、固定)される左側方処置電極182Aと、(b)右側方処置電極162Bがこれに沿って配置(例えば、固定)される右側方リード線182Bとを更に含む。左側方リード186Aは、左側方処置電極162Aを配置するために、頭蓋骨168の外側、一般的には頭蓋骨168の中間矢状面164から1cm〜12cmの範囲内に配置される。右側方リード186Bは、右側方処置電極162Bを配置するために、頭蓋骨168の外側、一般的には、頭蓋骨168の中間矢状面164から1cm〜12cmの範囲内に配置される。
【0197】
再び図4A〜4Gを参照する。幾つかの用途では、制御回路34は、クモ膜下腔144と上矢状洞142との間の電圧差を検出し、検出された電圧差に応じて1つ又は複数の処置電流のレベルを設定するように構成される。
【0198】
上述の技術の幾つかは、流体をクモ膜下腔144から上矢状洞142へと電気浸透的に駆動することによって対象者を治療するものとして説明されてきたが、これらの技術は代替として、又は追加として電気浸透を用いなくても使用され得る。
【0199】
本発明の範囲は、本出願の譲受人に譲渡され、参照として本明細書に組み込まれる以下の出願に記載の実施形態を含む。ある実施形態では、以下の出願の1つ又は複数に木佐愛の技術及び装置は、本明細書に記載の技術及び装置と組みあわされる:
・米国特許出願公開第1024/0324128号として公開されている、2013年
4月20日に出願された米国特許出願第13/872、794号;
・2015年7月8日に出願された米国特許出願第14/794、739号;
・2016年7月7日に出願された国際出願 PCT/IL第2016/050728
号; 及び
・2015年10月29日に出願された米国特許出願第14/926、705号
【0200】
当業者には、本発明が上に特に示され、説明された発明に限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせと準組み合わせの両方、並びに上の説明を読めば当業者が想到する筈の先行技術ではない変更及び修正を含むものである。


図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G