(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6941372
(24)【登録日】2021年9月8日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】バルブおよび半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/44 20060101AFI20210916BHJP
F16K 1/32 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
F16K31/44 C
F16K1/32 B
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-556241(P2018-556241)
(86)(22)【出願日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】JP2017039671
(87)【国際公開番号】WO2018110132
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2019年7月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-240079(P2016-240079)
(32)【優先日】2016年12月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100183380
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹野 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】柳田 保昌
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】
西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−092825(JP,A)
【文献】
特開2015−108380(JP,A)
【文献】
特開平06−172767(JP,A)
【文献】
特開2006−097896(JP,A)
【文献】
特開平06−050430(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/168112(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00 − 1/54
F16K 31/44 − 31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路が形成され、弁座を備えたボディと、
駆動力を発生する駆動手段と、
前記駆動力を増幅させる倍力機構と、
前記弁座に対し当接および離間して前記流体通路を開閉可能な弁体と、
前記倍力機構により増幅された力を受けて、前記ボディに対し前記弁体を当接および離間可能に設けられたステムと、を備え、
前記倍力機構は、
支持部と、
前記支持部に両端が支持される軸部と、
前記軸部により揺動可能に支持され、前記駆動力を受ける一端部と前記ステムに対し前記駆動力を増幅して伝える他端部とを有する揺動部と、を備え、
前記揺動部、前記軸部、および前記支持部において、前記揺動部の揺動により摺動する摺動部の少なくとも一部に、炭素材料が使用され、
前記炭素材料は、炭素繊維複合材料であり、前記炭素繊維複合材料の繊維方向と、前記摺動部の摺動方向が一致している、バルブ。
【請求項2】
前記倍力機構を収容するケーシングを備え、
前記ケーシングは、下ケーシングと、中間ケーシングと、上ケーシングとを有し、
前記支持部の周縁部は、前記下ケーシングと前記中間ケーシングとに接して挟持されている、請求項1に記載のバルブ。
【請求項3】
前記揺動部、前記軸部、および前記支持部における、前記摺動部の少なくとも一部以外の残りの部分は、ステンレスにより構成されている、請求項1から請求項2のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項4】
前記支持部は、前記軸部を回転可能に支持する軸受を有し、
前記軸受は炭素材料により構成されている、請求項3に記載のバルブ。
【請求項5】
前記摺動部は、2つの部材により構成され、前記2つの部材は直接接触している、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバルブ。
【請求項6】
チャンバと、
前記チャンバ内に配置された請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のバルブと、を備える、半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブおよびそれを備える半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高温対応のバルブとして、駆動圧(例えば、圧縮空気)による駆動力を増幅させる倍力機構を備え、倍力機構を介して、ステムおよび弁体を作動させ、流体通路を開閉するバルブが提案されている(例えば、特許文献1参照)。倍力機構は、支持部材と、支持部材に支持される軸部材と、軸部材に回転可能に支持される回転部材とにより構成されており、これらの部材のうち、回転部材の回転に伴って互いに摺動する2つの部材の間に通常は焼き付き防止のためグリスが塗布されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−139648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、バルブを高温下で長期間使用した場合には、高温対応のグリスを使用したとしても、グリスが枯れてしまうことにより焼き付き等が発生し、バルブが作動不良を起こすことがあった。また、グリスからの放出ガスによりチャンバ内を汚染することがあった。
【0005】
そこで本発明は、高温使用においても焼き付き等が発生することなく長期間使用可能であり、チャンバ内を汚染することがないバルブおよび半導体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決するために、本発明の一態様であるバルブは、流体通路が形成され、弁座を備えたボディと、駆動力を発生する駆動手段と、前記駆動力を増幅させる倍力機構と、前記弁座に対し当接および離間して前記流体通路を開閉可能な弁体と、前記倍力機構により増幅された力を受けて、前記ボディに対し前記弁体を当接および離間可能に設けられたステムとを備え、前記倍力機構は、支持部と、前記支持部に両端が支持される軸部と、前記軸部により揺動可能に支持され、前記駆動力を受ける一端部と前記ステムに対し前記駆動力を増幅して伝える他端部とを有する揺動部と、を備え、前記揺動部、前記軸部、および前記支持部において、前記揺動部の揺動により生じる摺動部の少なくとも一部に、炭素材料が使用されている。
【0007】
また、前記炭素材料は、炭素繊維複合材料であってもよい。
【0008】
また、前記炭素繊維複合材料の繊維方向と、前記摺動部の摺動方向が一致していてもよい。
【0009】
また、前記揺動部、前記軸部、および前記支持部における、前記摺動部の少なくとも一部以外の残りの部分は、ステンレスにより構成されてもよい。
【0010】
また、前記支持部は、前記軸部を回転可能に支持する軸受を有し、前記軸受は炭素材料により構成されてもよい。
【0011】
また、前記摺動部は、2つの部材により構成され、前記2つの部材は直接接触していてもよい。
【0012】
本発明の一態様である半導体製造装置は、チャンバと、前記チャンバ内に配置された上記のバルブと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高温使用下においても焼き付き等が発生することなく長期間使用可能であり、チャンバ内を汚染することがないバルブおよび半導体製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態における閉状態にあるバルブの縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態によるバルブについて、図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本実施形態における閉状態にあるバルブ1の縦断面図を示している。
図1に示すように、バルブ1は、ダイヤフラムバルブであり、例えば、半導体製造装置のチャンバ内において使用される。バルブ1は、ボディ2と、ボンネット部10と、アクチュエータ部20とを備える。なお、以下の説明において、バルブ1の、アクチュエータ部20を上側、ボディ2側を下側として説明する。なお、本実施形態のバルブ1を構成する各部材は、特に言及しない限りステンレスにより構成されているものとする。
【0017】
ボディ2には、弁室2aと、弁室2aに連通する流入路2bおよび流出路2cとが形成されている。ボディ2の流入路2bと弁室2aとが連通する箇所の周縁(流入路2bの開口部)には、ボンネット部10に向かって突出する円環状の弁座2Dが設けられている。また、ボディ2は、上方に延びるように設けられ、円筒状をなし、外周部に雄ねじ部が形成された円筒部2Eを有する。
【0018】
ボンネット部10は、ダイヤフラム11と、ボンネット12と、押さえアダプタ13と、ディスク14と、ダイヤフラム押さえ15とを有する。
【0019】
弁体であるダイヤフラム11は、例えばニッケル−コバルト合金からなり、複数枚のダイヤフラムにより構成され、環状の押さえアダプタ13により、その外周縁部が狭圧され、ボディ2に対し保持されている。弁体であるダイヤフラム11は、略球殻状をなし、上に凸の略円弧状が自然状態となっている。ダイヤフラム11が弁座2Dに対し当接および離間することによって、流入路2bと流出路2cとの間の連通または遮断が行われる。バルブ1が閉状態にあるときには、ダイヤフラム11が弁座2Dに当接し、流入路2bと流出路2cとが遮断される。
【0020】
ボンネット12は、略円筒状をなし、ボディ2の円筒部2Eに上側から挿入され、押さえアダプタ13に対し上側から当接している。
【0021】
ディスク14およびダイヤフラム押さえ15は、一体に構成されて略円柱状をなし、ボンネット12内に挿入されて上下方向に移動可能に支持され、ダイヤフラム11の中央部を押圧可能である。
【0022】
アクチュエータ部20は、ケーシング21と、ベローズ22と、ピストン23と、ピストンリング24と、倍力機構30と、第1ステム25と、第2ステム26と、皿バネ27とを備える。
【0023】
ケーシング21は、下ケーシング21Aと、中間ケーシング21Bと、上ケーシング21Cとを有し、倍力機構30等を収容する収容室21gを形成する。
【0024】
下ケーシング21Aは、円盤部21A1と、下突出部21A2と、上突出部21A3とを有する。円盤部21A1は、円盤状をなし、その中央部に貫通孔21dが形成されている。下突出部21A2は、円筒状をなし、円盤部21A1の下面から下方に突出している。下突出部21A2の内周面には雌ねじ部が形成され、当該雌ねじ部がボディ2の円筒部2Eの雄ねじ部に螺合されている。これにより、ボンネット12が円盤部21A1によって下方に押され、押さえアダプタ13がダイヤフラム11の外周縁部を押圧する。上突出部21A3は、円筒状をなし、円盤部21A1の上面から上方に突出している。上突出部21A3の外周面には雄ねじ部が形成されている。
【0025】
中間ケーシング21Bは、円筒状をなし、その上端部および下端部の内周面に、それぞれ雌ねじ部が形成されている。当該下端部の雌ねじ部が下ケーシング21Aの上突出部21A3の雄ねじ部に螺合されることにより、中間ケーシング21Bは下ケーシング21Aに対し固定されている。また、中間ケーシング21Bの内周面であって上突出部21A3の上側には、内方へ突出する突出部21Eが設けられている。
【0026】
上ケーシング21Cは、略円盤状をなし、その外周部には雄ねじ部が形成され、その中央部に貫通孔21fが形成されている。当該雄ねじ部が中間ケーシング21Bの上端部の雌ねじ部に螺合されることにより、上ケーシング21Cは中間ケーシング21Bに対し固定されている。貫通孔21fには、駆動圧導入用継手28が取り付けられている。なお、本実施形態では、駆動圧導入用継手28は上ケーシング21Cに対し溶接により取り付けられている。
【0027】
ベローズ22は、全体として円筒状をなし、その上端部の外縁が上ケーシング21Cの下面に密着するように固定されている。ベローズ22は、いわゆる溶接ベローズであり、円環状の複数の金属板の内径部と外径部を交互に溶接しながら繋ぎ合わせて作成される。
【0028】
ピストン23は、略円盤状をなし、その上面の外周には、ベローズ22の下端部の外縁が密着するように固定されている。このように、上ケーシング21C、ベローズ22、およびピストン23は、一体化され、駆動圧導入室23aを形成する。
【0029】
ピストンリング24は、環状をなし、ピストン23の下面の外周部に固定されている。
【0030】
次に、倍力機構30について
図1〜
図3を参照して説明する。
【0031】
図2は、倍力機構30の一部断面を示した斜視図である。
図3は、倍力機構30の平面図を示している。
【0032】
倍力機構30は、リテーナ31と、6つの軸受32と、3本のシャフト33と、3つのアーム34と、3つの平行ピン35と、6つのワッシャ36と、3つの止め輪37とを有する。
【0033】
リテーナ31は、円盤状の底部31Aと、底部31Aから上方に突出するピン支持部31Bとを有する。底部31Aおよびピン支持部31Bには、上下方向に貫通するステム孔31cが形成されている。底部31Aの外周縁は、突出部21Eと上突出部21A3とに挟持され、これによりリテーナ31は、ケーシング21に固定されている。ピン支持部31Bには、径方向に延びる3つの溝部31dが円周方向に等間隔(120°間隔)に形成されている。また、ピン支持部31Bの外周部には、3つの溝部31dの間に切り欠き31eが形成されている。また、ピン支持部31Bにおける溝部31dを挟むように位置する部分には、それぞれ軸受孔31fが形成されている。各軸受孔31fの両端は、それぞれ溝部31dおよび切り欠き31eに開口する。
【0034】
各軸受32は、炭素繊維複合材料(C/Cコンポジット)により構成され、円筒状をなしている。軸受32を構成する炭素繊維複合材料の繊維方向は、軸受32の円周方向(摺動方向に相当)と同方向に構成されている。また、軸受32は、軸受孔31fに挿入されている。リテーナ31および軸受32により、支持部が構成される。
【0035】
軸部である各シャフト33は、溝部31dを挟むように位置する一対の軸受32を貫通している。
【0036】
揺動部である各アーム34は、その長手方向に直行する方向に貫通するピン孔34aが形成されている。各アーム34は、溝部31dに配置され、ピン孔34aにシャフト33が貫通され、揺動可能に支持されている。各シャフト33は、アーム34のピン孔34aに対し圧入されており、アーム34の揺動によりシャフト33も回転するように構成されている。各アーム34は、シャフト33の径方向において内端部34Bと外端部34Cとを有し、内端部34Bには、ピン溝34dが形成されている。内端部34Bは、ステム孔31c内において第1ステム25の後述のフランジ部25Bの下側に位置し、外端部34Cは、ピストンリング24の下側に位置し、ピストンリング24の下面に当接可能である。
【0037】
各平行ピン35は、アーム34のピン溝34dに嵌入されている。平行ピン35は、第1ステム25の後述のフランジ部25Bの下面に当接可能である。各シャフト33の中心軸は、外端部34Cのピストンリング24に対する当接部分と平行ピン35のフランジ部25Bに対する当接部分との中間位置よりも、内端部34B側に位置するように構成されている。
【0038】
このように、シャフト33の中心軸が、外端部34Cよりも内端部34B側に位置しているので、外端部34Cに作用する力は、内端部34Bにおいて増幅され、増幅された力が第1ステム25に作用する。なお、おおよそ増幅率は、(シャフト33の中心軸からアーム34の外端部34Cのピストンリング24に対する当接部分までの距離)/(シャフト33の中心軸から平行ピン35のフランジ部25Bに対する当接部分までの距離)となっている。
【0039】
各ワッシャ36は、各シャフト33の両端に設けられている。各止め輪37は、各シャフトの一端に設けられ、各シャフト33がリテーナ31から抜けるのを防止する。
【0040】
図1に示すように、第1ステム25は、上下方向に延びる本体部25Aと、本体部25Aから外方に突出するフランジ部25Bとを備える。本体部25Aの下端部には雄ねじ部が形成されている。フランジ部25Bは、リテーナ31のステム孔31cに挿入されており、第1ステム25はステム孔31c内において上下方向に移動可能である。フランジ部25Bは、3つのアーム34の内端部34Bの上側に位置している。
【0041】
第2ステム26は、略円柱状をなし、基部26Aと、上端部26Bと、フランジ部26Cと、下端部26Dとを有する。基部26Aおよび上端部26Bには、雌ねじ部が形成され、当該雌ねじ部に第1ステム25の雄ねじ部が螺合されることにより、第1ステム25と第2ステム26とが一体化されている。上端部26Bは、ステム孔31cに挿入されている。フランジ部26Cは、基部26Aと下端部26Dとの間から外方に突出している。下端部26Dは、下ケーシング21Aの貫通孔21dに挿入され、ディスク14に対し上側から当接している。第2ステム26は、その上端部26Bがステム孔31cに挿入され、その下端部26Dが貫通孔21dに挿入されることにより、上下方向に移動可能に支持されている。このように、第1ステム25および第2ステム26は、ボディ2に対し近接および離間可能に構成される。
【0042】
皿バネ27は、リテーナ31の底部31Aと、第2ステム26のフランジ部26Cとの間に複数枚配置され、第1ステム25および第2ステム26を常に下向きに付勢している。
【0043】
図1に示すようにバルブ1が閉状態にある場合には、第1ステム25および第2ステム26が皿バネ27により下方に付勢され、第2ステム26がディスク14およびダイヤフラム押さえ15を押圧することにより、ダイヤフラム11が押圧されて弁座2Dに当接し、流入路2bと流出路2cとの連通が遮断されている。また、第1ステム25のフランジ部25Bは、平行ピン35を下方に押圧しており、アーム34の外端部34Cは、内端部34Bよりも上側に位置している。
【0044】
駆動圧を駆動圧導入用継手28を介して、駆動圧導入室23aに導入することにより、ピストン23に対し下向きの力が働く。ピストン23が下方に移動すると、ピストンリング24によりアーム34の外端部34Cが下方に押される。アーム34がシャフト33の軸心を中心に揺動して、アーム34の内端部34Bが上方へ移動する。アーム34の内端部34B(平行ピン35)の上向きの力と流入路2bを流れるガスがダイヤフラム11を押す力が、皿バネ27の付勢力よりも大きくなると、第1ステム25および第2ステム26が上方に移動し、ディスク14およびダイヤフラム押さえ15を下向きに押す力が小さくなる。これにより、ダイヤフラム11が流体の圧力により押し上げられ、弁座2Dから離間し、弁が開かれる。
【0045】
アーム34の揺動によりシャフト33が回転し、各シャフト33の両端部は軸受32に対して摺動する。本実施形態では、各シャフト33の両端部と軸受32とにより摺動部が構成され、各シャフト33と軸受32とは、グリス等の潤滑剤を介さず、直接接触している。
【0046】
以上のように、本実施形態のバルブ1によれば、アーム34、シャフト33、および軸受32を備えるリテーナ31のうち、アーム34の揺動により生じる摺動部の一部に、炭素材料が使用されている。すなわち、摺動部を構成する各シャフト33の両端部と軸受32とのうち、軸受32は炭素繊維複合材料により構成されている。かかる構成によれば、炭素繊維複合材料は、高い耐熱性、耐摩耗性、摺動性を有するので、バルブ1を高温(例えば300℃以上)で使用したとしても、摺動部において焼き付き等が発生することなく長期間使用可能となり、高耐久性を実現することができる。また、摺動部に潤滑剤であるグリスを必要としないので、半導体製造装置のチャンバ内で使用したとしても、チャンバ内を汚染することがない。
【0047】
また、炭素繊維複合材料により構成された軸受32の繊維方向と、シャフト33の回転方向(軸受の円周方向、摺動方向)とが一致するように構成されているので、摺動部における摺動性を向上させることができる。
【0048】
また、倍力機構30において、摺動部の一部である軸受32以外の残りの部分である、リテーナ31、シャフト33、およびアーム34は、ステンレスにより構成されているので、摺動部の摺動性を高めつつ、倍力機構30の強度を確保することができる。
【0049】
また、ステンレスを摺動部に用いた場合、あそびの設計に際して熱膨張性を検討する必要があるが、炭素繊維複合材料は、熱膨張性がステンレスに比べて低いので、軸受32とシャフト33との間のあそびの制御が容易となる。
【0050】
また、本実施形態のバルブ1をチャンバ内に配置して使用する半導体製造装置では、グリスを使用していないため、グリスからの放出ガスによるチャンバ内の汚染を防止することができる。
【0051】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【0052】
例えば、上記の実施形態において、軸受32を構成する炭素材料に、炭素繊維複合材料を用いたが、例えば、グラファイトを用いてもよい。また、摺動部は、各シャフト33の両端部と軸受32により構成さていたが、例えば、アーム34と当該アーム34に接するシャフト33の中央部分とにより構成され、少なくとも一部が炭素材料により構成されていてもよい。各シャフト33の両端部が炭素材料により構成されていてもよい。また、倍力機構30全体が炭素材料により構成されていてもよい。
【0053】
また、倍力機構30は、上記の実施形態の構成に限らず、他の構成であってもよい。駆動手段は、駆動圧により駆動力を発生する構成であったが、例えば、ソレノイドにより駆動力を発生する構成であってもよい。また、バルブ1を構成する各部材は、ステンレスにより構成されていたが、高温(例えば300℃以上)で使用可能であれば、他の材料であってもよい。アーム34の数は、3つであったが、2つ以上であれば何個であってもよく、リテーナ31の構成およびシャフト33の数は、アーム34の数に応じて変更してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1:バルブ、 2:ボディ、 2b:流入路、 2c:流出路、 2D:弁座、
11:ダイヤフラム、 25:第1ステム、 26:第2ステム、 30:倍力機構、
31:リテーナ、 32:軸受、 シャフト:ピン、 34:アーム