(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記それぞれの第1および第2の表面電極、電解質層およびSALを支持する基板をさらに含み、前記基板が、絶縁セラミック、絶縁材料で被覆した金属、および絶縁材料で被覆したサーメットからなる群から選択され、前記SALが、前記電解質層と前記基板との間に位置する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のセンサ。
前記それぞれの第1および第2の表面電極、電解質層およびSALを支持する基板をさらに含み、前記基板が、絶縁セラミック、絶縁材料で被覆した金属、および絶縁材料で被覆したサーメットからなる群から選択され、前記SALが、前記電解質層の中に位置する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のセンサ。
ガス試料またはガス流中の2以上の標的ガス種の濃度を測定するためのアンペロメトリック電気化学センサシステムであって、前記センサシステムが、請求項1〜16のいずれか一項に記載の電気化学セルである第1の電気化学セルと、第1および第2の表面電極を電解質層の上に含む第2の電気化学セルを含む、センサシステム。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図面は、本発明の範囲を制限するよりもむしろそれを例示することを意図する。本発明の実施形態は、必ずしも図面に示されていない方法で実行されてもよい。従って、図面は本発明の説明において単に補助となることを意図する。従って、本発明は図面に示される正確な配置に制限されない。
【0039】
以下の詳細な説明は、当該分野の当業者が本発明を作製し使用することを可能にする目的のためだけに、本発明の実施形態の例を記載する。従って、これらの実施形態の詳細な説明および例示は、本質的に全くの例証であり、本発明の範囲、またはその保護をいかなる方法によっても決して制限するものではない。また、図面は縮尺通りではなく、特定の例では本発明の理解に必要でない細部が省略されていることも当然理解される。
【0040】
本開示は、アンペロメトリック電気化学センサ、ならびにそのようなセンサを用いるセンサシステムおよびガス種検出方法を提供し、それらのセンサは、電解質の上に位置する2つ(またはそれ以上)の表面電極、ならびに受動的な導電性信号増幅層を含む。信号増幅層は、電解質と接触して、表面電極の下にそれとは接触せずに配置される(例えば、電解質層の中に封入されているかまたはそのすぐ下にある)。信号増幅層は、電解質層によって表面電極から離れているにもかかわらず、信号強度を増幅し、場合によって1以上のガス種に関するセンサ選択性に望ましく影響を及ぼす。本明細書においてさらに考察される一研究では、信号増幅層を電解質層の底面とセンサ基板との間に加えることにより、センサの信号強度は10倍以上に増加し、NO、NO
XおよびNH
3に対するセンサの感度も大幅に増加した。理論に縛られることを望むものではないが、信号増幅層が横方向の電流路を提供し、活性電極および対電極の領域を効果的に増加させると考えられる。この知見は、電気が通常、酸素イオンだけによって電解質層を通ってまたはその表面に沿って電極間で伝導されるという点で意外である。信号増幅層が存在すると、通常は電解質層を通って電極間で伝導される酸素イオンの一部が、電解質層と信号増幅層の界面で電子に変わると考えられる。これらの電子は、次に信号増幅層を通って運ばれ、その後、信号増幅層と電解質層の界面で酸素と反応して酸素イオンを形成する。たとえこれが2つのさらなる電気化学反応を必要とするとしても、信号増幅層は、電極間の電荷担体の輸送のためのより速い経路を提供する。この知見は、表面電極(相互嵌合した電極を含む)を有する多様なアンペロメトリックセンサに応用することができるが、それは、信号増幅層に使用される材料よりもはるかに低い導電率をもつ材料の上に電極層が積層されているその他の種類のセンサに特に有用である。また、信号増幅層は表面電極間の間隔をより大きくすることができ、それによりセンサの製造を単純化することができる。
【0041】
2016年4月5日に交付された、参照により本明細書に組み込まれる(以降、「Dayら」)米国特許第9,304,102号は、アンペロメトリックセンサを記載し、それには少なくとも1つのモリブデン酸塩またはタングステン酸塩化合物を含む導電性活性電極が含まれる。Dayらに記載されたセンサは、望ましい温度(例えば、500〜600℃)でNO
Xレベルに高応答性であり、一部の例ではNO
XとNH
3の両方に高応答性である。Dayらに記載されたモリブデン酸塩およびタングステン酸塩活性電極組成物は、酸素イオン(O2
−)伝導性電解質に適用されると、NO
XおよびNH
3の存在下で、O
2還元に対して高い触媒活性を示す。Dayらのセンサは、ガス試料またはガス流中の酸素の還元が活性電極の表面のNO
XとNH
3種の存在によって触媒される触媒効果によってNO
XおよびNH
3を検出する。また、Dayらのセンサは、ディーゼル排気流のさらなる構成要素である蒸気、二酸化炭素および硫黄酸化物(SO
X)の存在下でもNO
XおよびNH
3に応答性である。
【0042】
さらに、2016年3月17日に公開され、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2016/077044号に記載されるように、1または複数の活性電極で使用されたモリブデン酸塩および/またはタングステン酸塩化合物の選択、ならびに/あるいは1または複数の活性電極の上に適用された1または複数の集電体層の選択を用いてセンサを調整して、例えば、ガス試料中のNO
XとNH
3の濃度(すなわち、NO
XとNH
3の合計量よりもむしろ、NO
Xの量とNH
3の量)をそれを用いて求めることができる。
【0043】
一部の例では、電極が電解質の反対の面の上に位置するのではなく電解質膜の同じ面の上に位置しているセンサを作製することが望ましい。そのような「表面電極」の配置では、電極は1または複数の電解質層に対してセンサの同じ面の上に位置する。電極(例えば、対電極)は電解質の下に埋設されていない。一般に、そのような表面電極は、分析されているガス状の分析物の試料または流れに両方が曝露されるように、電解質層の上面の上に位置する。
【0044】
本開示は、一部分、アンペロメトリックセンサの表面電極の下に位置するが接触していない受動的な導電性信号増幅層(以降、「SAL」)が、意外にも信号強度と、場合によって1以上のガス種に関するセンサ選択性を増強するという意外な発見に基づく。例として、センサ電極は電解質の上面の上に位置することができ、SALは電解質の中または下に位置することができる。本開示の代替実施形態では、アンペロメトリックセンサの電極の一方または両方は、電解質層の上に位置する集電層を含み、触媒層は集電層の上方に位置する。
【0045】
本明細書に記載されるアンペロメトリック電気化学センサ、センサシステムおよび検出方法の実施形態は、表面電極配置を用いてガス状の分析物の試料または流れにおいて標的ガス種を検出するのに適合している。従って、1または複数の電解質層に対して電極がセンサの反対の面の上に位置する代わりに、電極は1または複数の電解質層に対してセンサの同じ面の上に位置する。一部の実施形態では、受動的な導電性信号増幅層、すなわちSAL(本明細書でさらに記載される)も、センサから離れて提供される。SALは電解質層と導電接触していて、例えば、電解質層の、電極の面と反対の面に位置することができる(例えば、電解質層とセンサ基板との間)。SALは、電解質層と基板との間に完全に封入されるか(例えば、
図1参照)、または(例えば、SALの外縁が電解質または基板によって覆われていないように)部分的にだけ封入されることができる。さらに別の代替形態として、SALは、その上に電解質層が位置する基板とSALが接触しないように、電解質層の上面と下面の両方から離れて、電解質層の中に完全に封入されることができる。一部の例では、SALによって提供される利点は、SALと電極との距離が、電極とSALの間に短絡が起こるほど小さくならずに最小となるときに、より大きい。
【0046】
信号増幅層は、センサ、バイアス源または電流測定装置との直接電気接続または接触がないという点で受動的である。実際、一部の実施形態では、SALは電解質層および基板(一般に非導電性である)との直接の導電性接触でのみ存在する。電極とSALとの間の全ての伝導性は、センサの電解質層を通るものであり、他のいかなる電流または電気バイアスもSALに加えられない。その受動的な性質にも関わらず、信号増幅層が信号強度および場合によって特定のガス種に対するセンサ感度を意外にも大幅に増強することを本発明者らは見出した。
【0047】
本開示はSALをその中に組み込んでいるアンペロメトリックセンサを記載するが、受動的な導電性信号増幅層の使用は、表面電極を用いる多様なその他のアンペロメトリックセンサおよびセンサシステム、ならびに混成電位センサおよびセンサシステムに応用することができる。これには、例えば、表題「Amperometric electrochemical cells and sensors」の米国特許第8,974,657号、2009年9月3日公開の米国特許出願公開第2009/0218220号、およびDayら(米国特許第9,304,102号)に記載されるセンサおよびセンサシステムが含まれる。前述の参考文献の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
SALは、センサの製造に適した多様な導電性材料のいずれかで作製することができる。適した材料としては、例えば、Pt、Pd、Au、Ag、前述の金属の合金(例えば、PtとPd、Auおよび/またはAuの合金)、およびその他の導電性金属導電性セラミックまたはサーメットが挙げられる。白金が特に有用である。
【0049】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるアンペロメトリック電気化学センサ、センサシステムおよび検出方法は、ガス状の分析物の試料または流れにおいて1以上の標的ガス種を検出するのに適合している。1つのガス種を検出するための実施形態では(NO
Xの存在および/または濃度などの2以上の関連ガス種の組合せを検出することを含む)、センサは、少なくとも1個の電気化学セルを含む。2以上のガス種を検出するための、特に個々のガス種の濃度の決定に用いるための実施形態では、センサには通常少なくとも2個の電気化学セルが含まれる。例として、2個の電気化学セルを備えるセンサは、セルの一方が目的のガス種に対して付加的応答を示し、もう一方のセルが少なくとも1つのガス種に対して選択的応答を示すように構成することができる。あるいは、本明細書にさらに記載されるように、1個の電気化学セルを備えるセンサは、2以上の応答特性を得るために2以上の別々の条件(例えば、順バイアスおよび逆バイアス)下で動作させることができる。一部の実施形態では、センサの2個(以上)の電気化学セルは、完全に分離した構造であり、一方その他の実施形態ではセンサの2個(以上)の電気化学セルは、1以上の構成要素、例えば共通の電解質層、SAL、基板、対電極または活性電極などを共有する。
【0050】
一般に、本開示の実施形態によるアンペロメトリック表面電極センサの各々の電気化学セルには、導電性活性電極、導電性対電極(場合によって第2の活性電極と呼ばれる)、電解質層、およびSALが含まれる。活性電極および対電極は、酸素イオンが電解質層の表面および内部を通って伝導されるように、電解質層の同じ面の上に、間隔を置いた関係で位置する。一部の例では、活性電極および対電極は、電解質層上で並んで配置される。あるいは、活性電極および対電極は、相互に嵌合した配置(例えば、
図4Gに示される通り)で形成されることができる。一部の実施形態では、活性電極と電気的に連絡している(例えば、それと接触している)集電体層も含められ、同様に、一部の例では、対電極(または第2の活性電極)と電気的に連絡している集電体層も含められる。下で考察されるように、1または複数の集電体層は、電極の上部に適用されることができる。あるいは、1または複数の集電体層は、これも下で考察されるように、電極と電解質層との間に位置することができる。
【0051】
単なる例として、本明細書に記載されるアンペロメトリックセンサ、システムおよび方法は、少なくとも一部分、電界触媒作用を用いる、燃焼した炭化水素燃料排気の酸素含有環境中のNO
Xおよび/またはNH
3などの標的ガス種を検出するために使用することができる。より具体的な例として、NO
XとNH
3の両方に対して感度が大幅に強化された、アンペロメトリックセンサ、センサシステムおよび検出方法は、燃焼排気流(例えば、車両のディーゼルエンジンからの排気ガス)において動作することができる。一部の例では、センサは、NO
XおよびNH
3の濃度の分化および定量化を可能にするように構成することができる。
【0052】
本明細書に記載される電気化学センサ、センサシステムおよび方法の実施形態は、標的ガス(例えば、NO
X)濃度を検知するために、そのガス種の分解(例えば、NO
Xの接触分解)に頼るよりもむしろ、2つの電極間に印加されたバイアスの影響下で、吸着したガス種(例えば、NO
X)がセンサの活性電極での酸素還元の割合を変える場合に予測可能な方法で反応する電流測定装置/方法として構成される。吸着されたNO
Xの存在に起因する、酸素還元電流の変化は、酸素を含むガス試料またはガス流中のNO
Xの存在および/または濃度を検出するために用いられる。この機構は非常に速く、NO
Xの還元だけから可能であるよりも大きい電流を生成する。さらに、この触媒手法は、NH
3にも及ぶことが実証された。
【0053】
一部の実施形態では、アンペロメトリックセラミック電気化学センサの各々の電気化学セルは、約400〜700℃の動作温度でイオン伝導する材料の連続的なネットワークを含む電解質層;約400〜700℃の動作温度で導電性である対電極層;および約400〜700℃の動作温度で導電性である活性電極層を含む。活性電極層は、1以上の標的ガス種の存在下での電荷移動の変化を示すように動作可能であり、モリブデン酸塩またはタングステン酸塩化合物を、一般に電解質および金属などのその他の材料と組み合わせて含む。電極層は電解質層の同じ面の上に位置するが、互いに物理的に接触していない(すなわち、それらは離間している)。電気化学セルの実施形態は、約400〜700℃の動作温度で酸素イオンの伝導性を示すように動作可能である。電極間にバイアスが印加される場合、1または複数個の電気化学セルは、酸素ポンピング電流の不在下の酸素を含むガス流中の標的ガス濃度の関数として、電気信号を生成する。
【0054】
一部の実施形態では、1または複数個の電気化学セルは、約400〜700℃の動作温度で導電性である集電体層をさらに含み、該集電体層は、1または複数の活性電極層と電気的に連絡している(例えば、その表面の上に位置している)。集電体層は、特に約400〜700℃の動作温度で活性電極層よりも導電性が高い。集電体層の目的は、活性電極の導電率を増加させることである。しかし、一部の実施形態では、集電体層は、それが活性電極で生じる触媒反応および電気化学反応を操作もし、それによって1以上の目的のガス種(例えば、NO、NO
2またはNH
3)に対する感度を低下または強化させるように選択することもできる。これらの実施形態では、活性電極と集電体層の組合せは2層活性電極とみなすことができる。
【0055】
本明細書に記載されるセンサは、例えばNO、NO
2およびNH
3を検出し(3ppmと低いレベルでの検出を含む)、かつ/あるいは50msと速い応答時間を示す能力を有するように作製し、良好なシステム制御またはエンジンフィードバック制御さえも可能にすることができる。400〜700℃の温度範囲で動作するように構成された場合、一部の実施形態のNO
XおよびNH
3の応答は、変化しやすいバックグラウンド排気ガスに対する感度よりも大きい。
【0056】
本明細書に記載されるセンサ、センサシステムおよび検出方法は、大型トラックおよび静止型発電機に見出される排気装置を含むディーゼル排気装置におけるNO
Xの検出に適用性を有するが、特に酸素を含むガス流または試料中で、低レベルのNO
Xおよび/またはNH
3に対する迅速な応答が望まれる広範囲のその他の用途においても有用である。例には、ディーゼル発電設備、大規模静止型発電装置、タービンエンジン、天然ガス燃焼ボイラーが、さらに特定の電化製品(例えば、天然ガスを動力源とする炉、温水器、ストーブ、オーブンなどが)でさえ含まれる。センサ、センサシステムおよび検出方法は、固定または変動濃度のその他のガス、例えばO
2、CO
2、SOx(SOおよび/またはSO
2)、H
2O、およびNH
3などの存在下で低レベルのNO
Xを検知する際に特に有用である。
【0057】
特定の電解質、電極、集電体およびSAL組成に言及することにより、様々な電気化学センサ、センサシステムおよび検出方法が本明細書に記載される。しかし、本明細書に記載される電気化学センサ、センサシステムおよび検出方法は、広範囲の材料で有益な結果をもたらすであろう。図面に表示される厚さは非常に誇張されているので、縮尺通りであるものでないことが理解されるであろう。その上、文脈が別に示す場合を除いて、用語「検出する」、「検出」、および「検出すること」は、標的種の存在の検出だけでなく、標的種の量または濃度を検知または測定することも包含することが意図される。
【0058】
2個以上の電気化学セルを有する一部の実施形態では、標的ガス種が、その濃度に比例する第1の電気化学セル内で還元される酸素の量を変えるように、第1の電気化学セルの活性電極および/または集電体層は、2以上の標的ガス種(例えば、NO
XとNH
3)に曝露される。結果として、ガス試料またはガス流中の標的ガス種の総濃度は、任意の所与の印加電圧バイアスおよびセンサ温度で第1の電気化学セルを通る酸素イオン電流と相関させることができる。この例のセンサの第1の電気化学セルの応答は、所与の電圧バイアスおよび温度で測定された電流が、標的ガス種(例えば、NO
XとNH
3)の合わせた総濃度と相関することができるという点で「付加的」である。第2の電気化学セルの活性電極および/または集電体層も、2以上の標的種に曝露される。しかし、第2の電気化学セルは、標的ガス種の第1のガス種(例えば、NO
X)が第2のセル内で還元される酸素の量を測定できる程度に変え、標的ガス種の第2のガス種(例えば、NH
3)の第2のセル内で還元される酸素の量への影響(存在する場合)が大幅に小さいように、構成および/または動作する。従って、第2の電気化学セルを通る測定電流は第1の標的ガス種(例えば、NO
X)の濃度と相関させることができるが、第2の標的ガス種の濃度の変化は第2の電気化学セルを通る測定電流に認識できるほど影響(仮にある場合)を及ぼさないという点で、第2の電気化学セルは標的ガス種の第1のガス種に関して「選択的」である。このように、標的ガス種の濃度を求めることができる。当然、例えば、2以上のガス種を検出するために、任意の数の電気化学セルを1つのセンサの一部として提供することができる。
【0059】
図1は、1個の電気化学セル(20)(すなわちセンサ)ならびにバイアス源(40)および電流測定装置(50)を含む回路を含む例示的なアンペロメトリックセンサシステム(10)を示す。本明細書に記載されるセンサシステムの一部の実施形態は少なくとも2個の電気化学セルを含む。そのため
図1のセンサシステムはそのようなセンサシステムの半分しか描写していないことは理解されるであろう。例えば、
図4Fは、一般に2個の電気化学セルを含むセンサを表す。各々のセルは
図1に示されるセンサの個々のセル(20)と構造が類似し、共通の基板(428)の上に積層されている。
【0060】
電気化学セル(20)には、活性電極(22)、対電極(26)、および電極(22、26)がその上に位置している酸素イオン伝導性の電解質層(24)が含まれる。例として、導電性活性電極(22)は、少なくとも1つのモリブデン酸塩またはタングステン酸塩化合物を含む。示されるように、受動的な導電性信号増幅層(すなわちSAL)(27)は、電解質膜(24)の下に位置し、非導電性基板(28)がSAL(27)を支持している。この実施形態では、SAL(27)が電解質層(24)および基板(28)によって完全に封入されている。バイアス源(40)は、2つの電極(22、26)間にバイアス電圧を印加するように構成され、電流測定装置(50)は、センサ(20)を通る、結果として生じる電流を測定するように構成されている。バイアス源(40)は、活性電極(22)と対電極(26)の間にバイアスを印加するのに適した多様な電源、またはその他の装置のいずれかから成ることができる。
図1の電流測定装置(50)は、当業者に公知の(または今後に開発される)多様な構造および装置のいずれか、例えば電流計などから成ることができる。当業者に周知のように、電流計は、シャント抵抗器および電圧計の組合せによって提供されることができる(
図3に示される通り)。
【0061】
図2は、追加のいくつかの構成要素を含む、
図1に類似の電気化学センサの分解組立図である。
図2のセンサは、絶縁基板(すなわち
図2中の一番上のAl
2O
3層)の上に以下の層を順次積層することによって作製される:信号増幅層(「Pt−B」);SALの上に積層される1つの共通の電解質層(「GDC」);電解質層の上面の一部分に積層される活性電極層(「AE」);活性電極から間隔を置いて、電解質層の上面の異なる一部分に積層される対電極層(CE);および活性電極層の上面に積層される第1の集電体層(「CC」)。所望であれば、第2の集電体層を対電極層の上面に積層することができる。
図2に示される実施形態では、センサには、基板層の間に埋設された白金抵抗ヒータ(「Pt−H」)、および第2の基板層の底面に積層された白金測温抵抗体(センサ温度をモニターするための「Pt−RTD」)とともに、第2の絶縁Al
2O
3基板層が含まれる。電極および集電体のリード線(「Pt−L」)も示され、Pt−HおよびPt−RTDのリード線も描写される。
【0062】
図1に戻ると、集電体(36)が酸素を含むガスに曝露され、電圧バイアスが電極(22、26)の間に印加され、電気化学セル(20)は適した動作温度に加熱されると、活性電極(22)で酸素分子が還元される。1以上の標的ガス種(例えば、NO
Xおよび/またはNH
3)の存在は、活性電極(22)で還元される酸素の量(標的種濃度に比例)に影響を及ぼす。結果として生じる酸素イオンは、電解質膜(24)を横切って通って対電極(26)に伝導され、そこで酸素イオンは酸化してO
2を再形成し、測定可能な電流を生じる。SAL(27)は、電子輸送のための横方向の電流路を電解質の下で提供する。上で説明したように、SAL(27)は一方の電極から他方の電極への酸素イオンの輸送を強化すると考えられる。順バイアス下で、SAL(27)は、電解質層との界面を提供し、そこで活性電極(22)からの酸素イオンが電子に変換される。これらの電子は、次にSAL(27)を通って対電極(26)の下の領域に運ばれ、その後、SAL/電解質界面で酸素と反応して酸素イオンを形成する。これらの酸素イオンは、次に電解質層を通って対電極(26)に輸送される。従って、SAL(27)は、電解質を通して一方の電極から他方の電極まで酸素イオンを輸送するためのさらなる(そしてより速い)経路を提供する。しかし、SALを通して輸送されるのは電子であって酸素イオンではないことは理解されるべきである。
【0063】
一部のセンサ実施形態では(本明細書にさらに記載される例で使用されるものを含む)、電解質層は多孔質である。その他の実施形態では、電解質層は高密度である(貫通多孔性でない)。
図1に示される実施形態では、SAL(27)が電解質膜(24)と基板(28)との間に完全に封入されているように、電解質膜(24)は、SAL(27)の両端に広がる。その他の実施形態、例えば
図7および8などでは、SALは完全に封入されていない。そのため、
図1の実施形態で完全に封入されているSAL(27)は、
図7および8に示されるSAL配置(すなわち、電解質がSALの周囲全体に広がっていない)に置き換えることができることが理解される。本明細書において、「完全に封入されている」とは、SALが電解質層と基板によって取り囲まれているか、または電解質層だけに取り囲まれている(すなわち、SALは基板と接触しておらず(not in contract with)、むしろ電解質層の一部がSALと基板との間に位置している)ことを意味する。
【0064】
本明細書に記載されるセンサの実施形態には基板が含まれ、その基板の上に1または複数個の電気化学セルが作製されるか、または別の場合には支持され、それによりセンサへの機械的支持を提供する。基板は通常非導電性である(すなわち絶縁している)。基板は、絶縁セラミック材料(例えば、酸化アルミニウム)などの任意の適した絶縁材料あるいは絶縁材料で被覆した金属またはサーメット材料を含んでよい。一実施形態では、センサには、ジルコニア基板、より具体的にはイットリウム安定化ジルコニア(YSZ)基板が含まれる。
【0065】
あるいは、基板はケイ素または炭化ケイ素などの半導体材料を含んでよく、1または複数個の電気化学セルの構成要素が半導体製造技術を用いて基板の表面に作製される。
【0066】
活性電極がモリブデン酸塩および/またはタングステン酸塩化合物を含む実施形態では、多様なモリブデン酸塩および/またはタングステン酸塩化合物のいずれかを使用することができる。適した化合物としては、式A
X(Mo
(1−Z)W
Z)
YO
(X+3Y)(式中、XおよびYは、各々独立に1〜5の整数から選択され、0≦Z≦1であり、Aは、Moおよび/またはWと二元化合物を形成する1以上のイオンである)を有する化合物が挙げられる。より具体的な例として、Aは、Mg、Zn、Ni、Co、Fe、Mn、Cu、Ca、Sr、Ba、およびPbの1以上である。一部の実施形態では、XおよびYは両方が1であり、Zは0である。そのようなモリブデン酸塩化合物の特定の例としては、MgMoO
4、ZnMoO
4、NiMoO
4、CoMoO
4、FeMoO
4、MnMoO
4、CuMoO
4、CaMoO
4、SrMoO
4、BaMoO
4、およびPbMoO
4が挙げられる。その他の実施形態では、XおよびYは両方が1であり、Zは1である。そのようなタングステン酸塩化合物の特定の例としては、MgWO
4、ZnWO
4、NiWO
4、CoWO
4、FeWO
4、MnWO
4、CuWO
4、CaWO
4、SrWO
4、BaWO
4、およびPbWO
4が挙げられる。
【0067】
少なくとも1つのモリブデン酸塩またはタングステン酸塩化合物を含む活性電極は、多様な特定の組成を有することがあり、それには例えば以下が含まれる:
(a)例えば、30%超、50%超、80%超または90%超(体積による)のモリブデン酸塩またはタングステン酸塩化合物を含む活性電極をはじめとするモリブデン酸塩化合物(A
XMo
YO
(X+3Y))またはタングステン酸塩化合物(A
XW
YO
(X+3Y));
(b)式A
X(Mo
(1−Z)W
Z)
YO
(X+3Y)、(式中、XおよびYは、各々独立に1〜5の整数から選択され、0<Z<1であり、Aは、Mg、Zn、Ni、Co、Fe、Mn、Cu、Ca、Sr、Ba、およびPbの1以上である)を有する1以上の化合物;
(c)モリブデン酸塩およびタングステン酸塩化合物からなる群から選択される2以上の化合物の複合混合物、例えば少なくとも1つのモリブデン酸塩化合物および少なくとも1つのタングステン酸塩化合物の複合混合物など;
(d)1以上のセラミック電解質材料と1以上の(a)〜(c)の複合混合物;
(e)(a)〜(d)の1以上を含むセラミック相、および金属相(例えば、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムまたはそれらの合金もしくは混合物)で作製される複合材料;あるいは
(f)(a)〜(e)の2以上の混合物。
上記実施形態の一部では、1以上の添加剤またはその他の材料が製造中に活性電極組成物に添加されてよいが、その他の実施形態では、そのような添加剤は含められない。
【0068】
上記のモリブデン酸塩およびタングステン酸塩化合物、ならびにモリブデン酸塩およびタングステン酸塩化合物の上記の固溶体は、1以上の金属でドープされてよい。その上、または代わりに、1以上の酸化物、例えば酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化錫、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ルテニウム、酸化インジウム、酸化チタン、および酸化ジルコニウムなどが添加されてよい。用いる場合、これらの酸化物添加剤は、活性電極層中約0.1〜10体積%の間、または活性電極層中約1〜3体積%の間の量で存在してよい。
【0069】
上記のように、一部の実施形態では1または複数の活性電極は、(a)モリブデン酸塩および/またはタングステン酸塩を含有するセラミック相(例えば、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩とタングステン酸塩の固溶体または複合混合物、あるいは前述の1以上と電解質の複合混合物);ならびに(b)金属相(Ag、Au、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、またはそれらの合金もしくは混合物):の多相複合材料を含む。そのような複合材料のタングステン酸塩/モリブデン酸塩セラミック相は、それ自体が2以上の相、例えば1以上のモリブデン酸塩および/またはタングステン酸塩化合物と電解質の複合混合物を含むことがあることに留意するべきである。
【0070】
上記の多相セラミック/金属複合材料に関して、金属相の量は、約0.1%〜10重量%または約30〜70体積%の範囲であり得る。低レベルの金属相(例えば、約0.1%〜10%、または約1%〜5
重量%)を有する多相セラミック/金属複合材料では、Pt、Pd、Rh、Ru、またはIr(またはそれらの混合物の合金)が特に有用である。それよりも高いレベルの金属相(例えば、約30%〜70%、または約40%〜60
体積%)には、Ag、Au、Pt、Pd、Rh、Ru、またはIr(またはそれらの合金もしくは混合物)を、導電率を改善するために(感度が幾らか犠牲になることがあるが)使用してよい。
【0071】
上記のように、一部の実施形態では、1または複数の活性電極は、(a)1以上のセラミック電解質材料(例えば、ガドリニウムをドープしたセリア、「GDC」、またはサマリウムをドープしたセリア、「SDC」);(b)1以上のモリブデン酸塩および/またはタングステン酸塩化合物;および、所望により、(c)金属相(例えば、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、またはそれらの合金もしくは混合物)の複合混合物を含む。これらの実施形態では、活性電極(22)中の1または複数のセラミック電解質材料は、電解質膜(24)について下に記載される電解質のいずれか、または酸素イオンの伝導によって電気を伝導する別のセラミック電解質材料(すなわち電子伝導性ではなくイオン伝導性)であってよい。例として、活性電極での使用に適したセラミック電解質としては、
(a)Ca、Sr、Sc、Y、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはLaの1以上でドープした酸化セリウム;
(b)Ca、Mg、Sc、Y、またはCeの1以上でドープした酸化ジルコニウム;および
(c)Sr、Mg、Zn、Co、またはFeの1以上でドープした酸化ランタンガリウム
が挙げられる。
より具体的な実施形態では、活性電極で使用されるセラミック電解質は、Ca、Sr、Sc、Y、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、またはLaの1以上でドープした酸化セリウムを含む。例えば、GDCまたはSDCは、場合によってPtと組み合わせて金属相として用いられる。
【0072】
前段落に記載される複合混合物中のセラミック電解質および1以上のモリブデン酸塩/タングステン酸塩化合物の相対量は、とりわけ、適用の性質(例えば、分析物のガス流/試料および周囲環境)、センサおよび/またはセンサシステムの構成、所望の感度、1または複数の標的ガスの同一性などに応じて変化することがある。一部の実施形態では、1または複数のセラミック電解質と1または複数のモリブデン酸塩/タングステン酸塩化合物の活性電極中の体積比は、約1:9〜9:1の間である。その他の実施形態では、この比は約2.5:7.5〜7.5:2.5の間、または約4:6〜6:4の間である。さらにその他の実施形態では、この比は約1:1である。前述の体積比が、問題の活性電極層におけるセラミック電解質の全体積と、モリブデン酸塩およびタングステン酸塩化合物の全体積の比に基づくことは指摘されるべきである。前段落に記載される複合混合物に金属相が含まれる場合、金属相の性質および量は、以前に記載した様々な金属および量のいずれかであってよい。
【0073】
SALを用いるなおさらなる実施形態では、活性電極材料は、既に参照により本明細書に組み込まれている出願人の以前のセンサの特許および公開特許出願に記載される材料のいずれであってもよい。活性電極材料は、電子伝導性またはイオン伝導性であり得る。一部の例では、活性電極材料は、集電体層が最適の信号強度を実現するために必要ないほど導電性が高くてもよいし、集電体層が最適の信号強度を実現するために必要であるほど導電性が最小または適度であってもよい。(信号強度は、バイアス電圧が印加される場合に生じる電流として定義される)。
【0074】
さらなる例として、モリブデン酸塩またはタングステン酸塩化合物を含む上記の組成物の代わりとして、信号強度を増加させるためにSALと組み合わせて用いる適した活性電極材料としては、Ca、Sr、Ba、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mgまたはその混合物でドープしたランタニドマンガン酸塩ペロブスカイト材料;Ca、Sr、Ba、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Mgまたはその混合物でドープしたランタニドフェライトペロブスカイト材料;Ca、Sr、Ba、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mgまたはその混合物でドープしたランタニド輝コバルト鉱ペロブスカイト材料;Ca、Sr、Ba、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Mgまたはその混合物でドープしたランタニドニッケル酸塩ペロブスカイト材料;Ca、Sr、Ba、Mn、Fe、Co、Ni、またはその混合物でドープしたランタニド銅酸化物ペロブスカイト材料;セラミックと金属相の混合物(サーメット)を含む複合材料(ここでセラミック相は、セラミック電解質材料、例えば、ジルコニア系電解質材料、セリア系電解質材料、酸化ビスマス系電解質材料または酸化ランタンガリウム系電解質材料、またはその混合物であり、金属相は、Ag、Pt、Pd、Rh、Ru、Irまたはその合金もしくは混合物を含む);セラミックと金属相の混合物を含む複合材料(この際、セラミック相は酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、または別の絶縁セラミック材料などの絶縁体であり、金属相はAg、Pt、Pd、Rh、Ru、Irまたはその合金もしくは混合物を含む);Ag、Pt、Pd、Rh、Ru、Irまたはその合金もしくは混合物を含む金属電極材料;あるいは上述の検知電極材料のいずれかの2以上を含む混合物が挙げられる。
【0075】
一部の実施形態では、集電体層は、1または複数個の電気化学セルの1または複数の活性電極層のために設けられ、所望により、1または複数の対電極層のために設けられる。集電体層は、活性電極層よりも導電性が高いので、信号強度が高くなるように活性電極の電気伝導率を増加させる。さらに、一部の実施形態では、集電体層は、1以上の目的のガス種(例えば、NO、NO
2またはNH
3)に対する感度の低下または強化をもたらすように、下にある電極で生じる触媒および電気化学反応も操作する。
【0076】
例えば、
図1の電気化学セル(20)には、集電体層(36)が含まれる。活性電極層(22)は電解質膜(24)に隣接するが、集電体層(36)は活性電極層(22)の上方に位置する。集電体層(36)の導電率は活性電極層(22)よりも高い。この特定の実施形態では、集電体層は、活性電極層(22)の上面の少なくとも約90%を覆うという点で全体を覆う集電体として構成されている。代替実施形態、特に集電体が標的ガス種に対する感度を低下または強化させるために触媒および電気化学反応を操作するように構成されていない実施形態では、米国特許出願公開第2016/077044号にさらに記載されるように、活性電極の表面の約10〜25%を覆うように集電体を構成することができる。
【0077】
集電体層の組成に関して、集電体が下にある電極で触媒および/または電気化学反応を操作するよりも単に活性電極の導電率を増加させるために用いられる場合は、集電体層は、貴金属、例えば白金、パラジウム、金、銀、または任意のその他の貴金属など、2以上の貴金属の合金、1以上の貴金属と1以上の卑金属の合金、または貴金属とセラミック電解質材料のサーメットを含み得る。
【0078】
あるいは、集電体層は、金属(例えば、白金または金)とセラミック相、例えばGDC、SDC、ジルコニウムをドープしたセリア(「ZDC」)、イットリウム安定化ジルコニア(「YSZ」)、スカンジウム安定化ジルコニア(「ScSZ」)、または活性電極での使用に適しているとして言及されるその他のセラミック電解質の1つなど、を含むサーメットを含み得る。そのようなサーメット集電体層の金属含有量は、集電体層の導電率を下にある電極層の導電率よりも高くするために十分でなければならない。本明細書においてさらに考察されるように、そのようなサーメット集電体は、センサの1または複数個の電気化学セルの触媒および/または電気化学反応を操作するために(例えば、1以上の目的のガス種に対する感度を低下または強化させるために)使用することができる。
【0079】
例えば、一部の実施形態では、1または複数のサーメット集電体は、NO
XおよびNH
3に関して付加的挙動をもたらすために白金およびセラミック電解質(例えば、ScSz)を含むのに対し、金およびセラミック電解質(例えば、GDC)を含む1または複数のサーメット集電体は、NH
3の存在下でNO
Xに関して選択的挙動をもたらす。サーメット集電体、特に電気化学セルの応答を操作するために使用されるサーメット集電体の例では、集電体は、約40〜80体積%、または約50〜70体積%の金属相(例えば、PtまたはAu)を含み、残りはセラミック電解質相(例えば、GDCまたはScSz)であり得る。
【0080】
本明細書に記載されるセンサの電気化学セルの対電極は、一部分、1または複数個の電気化学セルの構成に応じて、多様な材料のいずれかを含むことができる。例えば、対電極は、集電体に関して上に記載される組成のいずれか、例えば白金または金などの金属材料、または金属(例えば、白金または金)とセラミック相(GDC、SDC、ZDC、YSZまたはScSZ)を含む導電性サーメットを含むことができる。対電極は、活性電極について上で同定された材料のいずれかであってもよい。本明細書に記載されるセンサの対電極に適したその他の材料としては、
(a)Ag、Au、Pt、Pd、Rh、Ru、またはIrを含む金属、あるいは前述のいずれかの合金、混合物またはサーメット(例えば、1以上のこれらの金属、特にPt、およびYSZ、ScSZ、GDCまたはSDCを含むサーメット);および
(b)センサの製造に適した様々なその他の導電性材料、特に、酸素イオンの分子酸素への再酸化を触媒する材料(例えば、導電性ペロブスカイト、例えば(La,Sr)MnO
3、(La,Sr)CoO
3、(La,Sr)(Co,Fe)O
3、La(Ni,Fe)O
3、La(Ni,Co)O
3、および関連ペロブスカイトなど、およびブラウンミラライト型構造の材料が含まれる)が挙げられる。
【0081】
SALを用いるなおさらなる実施形態では、対電極材料は、既に参照により本明細書に組み込まれている出願人の以前のセンサの特許および公開特許出願に記載される材料のいずれであってもよい。例えば、米国特許第8,974,657号に記載されるように、信号強度を増強するためにSALと組み合わせて使用するのに適した対電極材料としては、Ca、Sr、Ba、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mgまたはその混合物でドープしたランタニドマンガン酸塩ペロブスカイト材料;Ca、Sr、Ba、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Mgまたはその混合物でドープしたランタニドフェライトペロブスカイト材料;Ca、Sr、Ba、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mgまたはその混合物でドープしたランタニド輝コバルト鉱ペロブスカイト材料;Ca、Sr、Ba、Mn、Fe、Co、Cu、Zn、Mgまたはその混合物でドープしたランタニドニッケル酸塩ペロブスカイト材料;Ca、Sr、Ba、Mn、Fe、Co、Ni、またはその混合物でドープしたランタニド銅酸化物ペロブスカイト材料;あるいはNi、Fe、Cu、Ag、Au、Pd、Pt、Rh、またはIrを含む金属材料、あるいはその合金、混合物またはサーメットが挙げられる。
【0082】
大部分の例において、個々の電気化学セルの活性電極および対電極が異なる組成を有すること、ならびに/あるいは、そのそれぞれの集電体層が異なる組成を有することは理解されるであろう。例えば、一部の実施形態では、活性電極層および対電極層は同一である、しかし、そのそれぞれの集電体層は異なる組成を有する。個々の電気化学セル(call)の集電体層は、セルの触媒および/または電気化学反応を操作するために選択することができるので、一部の例では電気化学セルの各「電極」は、活性(または「機能」)電極層と集電層(存在する場合)の組合せであると考えることができる。例えば、センサの1つの電気化学セルは、各々が活性(または「機能」)層および集電層を有する、第1および第2の2層電極を含むことができ、第1の電極の層の少なくとも1つの組成は第2の電極の対応する層とは異なる。従って、第1および第2の電極は、検出するガス種に対するその触媒および/または電子触媒応答に関して異なっている。
【0083】
代替実施形態では、第1の電極は、活性電極層と上にある集電層の組合せであるか、活性電極層のみであるか、または集電層のみ(すなわち伝統的な対電極)であり、第2の電極は、異なる組合せの活性電極層および/または集電層である。
【0084】
本明細書に記載されるセンサで使用される電気化学セルのイオン伝導電解質膜に関して、適した材料としては、ドープセリア電解質およびドープジルコニア電解質が挙げられる。より具体的な例としては、ガドリニウムをドープしたセリア(Ce
1−XGd
XO
2−X/2、式中、Xは約0.05〜0.40の範囲である)、サマリウムをドープしたセリア(Ce
1−XSm
XO
2−X/2、式中、Xは約0.05〜0.40の範囲である)、イットリウムをドープしたセリア(YDC)、その他のランタニド元素でドープした酸化セリウム、および2以上のランタニド元素または希土類元素でドープした酸化セリウムが挙げられる。さらにその他の適した電解質材料としては、全部または一部分ドープされた酸化ジルコニウム(限定されるものではないが、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)およびスカンジウムドープジルコニア(ScSZ)を含む);主に酸素イオンの輸送によって電気を伝導するその他のセラミック材料;混合伝導性セラミック電解質材料;ならびに前述の2以上の混合物が挙げられる。その上、GDC、SDCまたは別の適した電解質材料の界面層を電解質膜と、活性電極および対電極の一方もしくは両方との間に設けてよい。特に適した電解質材料としては、GDC、SDC、YSZおよびScSZが挙げられる。
【0085】
さらに別の代替形態として、セラミック電解質材料は、βアルミナ、リン酸ジルコニウムナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸リチウムアルミニウム、または任意のアルカリイオン伝導性電解質材料であり得る。
【0086】
既に述べたように、本明細書に記載されるセンサおよびセンサシステムの一部の実施形態は、通常、少なくとも2個の電気化学セルを含み、この際、第1のセルは、目的の2以上の標的ガス種(例えば、NO
XおよびとNH
3)に関して付加的応答をもたらすように構成され(または動作し)、第2のセルは、標的ガス種の2番目のガス種ではなく標的ガス種の最初のガス種に関して選択的応答をもたらすように構成される(または動作する)。例えば、上記の活性電極材料を使用する、NO
XとNH
3の検知に関して、センサは、異なる活性電極を有する2個の電気化学セル、つまりNO
XとNH
3の両方に対して高感度であるセルと、NO
Xだけに高感度であるセル(NH
3に対する感度はほとんどまたは全くない)で組み立てることができる。NO
XとNH
3の総濃度は、第1の電気化学セルにバイアスを印加する際に電流を測定することによって定量化することができ、NO
X濃度は、第2の電気化学セルにバイアスを印加する際に電流を測定することによって定量化することができ、NH
3濃度は、引き算によって計算することができる(NO
XとNH
3の総濃度−NO
X濃度)。従って、NO
XとNH
3の両方を1つのセンサで測定することができる。これらの2個の電気化学セルは、1つの構造に(例えば、共通の電解質層、共通のSAL、共通の基板および、所望により共通の対電極を有して)物理的に統合することができる、または、2個の物理的に分離した電気化学セルを作製してもよい。
【0087】
さらに別の代替形態として、センサは、一方のセルがNO
XとNH
3の両方に対して高感度であり、他方のセルがNO
Xだけに高感度であるように、異なる集電体材料および同じまたは異なる活性電極材料を有する2個の電気化学セルで組み立てることができる。NO
XとNH
3の総濃度は、第1の電気化学セルにバイアスを印加する際に電流を測定することによって定量化することができ、NO
X濃度は、第2の電気化学セルにバイアスを印加する際に電流を測定することによって定量化することができ、NH
3濃度は、引き算によって計算することができる。従って、NO
XとNH
3の両方を1つのセンサで測定することができる。既に述べたように、これらの2個の電気化学セルは、1つの構造に物理的に統合することができる、または、2個の物理的に分離した電気化学セルを用いてもよい。
【0088】
さらに別の代替形態は、同じまたは類似の組成の関連する集電体を含むまたは含まない、同じまたは類似の組成の活性電極を有する2個の電気化学セルで組み立てられたセンサであり、このセンサは、一方の電気化学セルに印加される順バイアス(すなわち活性電極から対電極)で動作してNO
XとNH
3の合計を検出および定量することができ、さらに、第2の電気化学セルに印加される逆バイアス(すなわち対電極から活性電極)で動作してNO
XかまたはNH
3のいずれかを検出および定量することができる(他方の濃度は引き算によって計算される)。従って、NO
XとNH
3の両方を1つのセンサで測定することができる。既に述べたように、これらの2個の電気化学セルは、1つの構造に物理的に統合することができる、または、2個の物理的に分離した電気化学セルを用いてもよい。同様に、一部の実施形態では1つの電気化学セルは、順バイアスおよび逆バイアスで(例えば、2つを交互に行って)動作し、この際、応答特性は2つのバイアスモードで異なる(例えば、1つのバイアス方向で付加的、他方で選択的である)。
【0089】
別の代替実施形態では、センサは、同じまたは類似の組成の関連する集電体を含むまたは含まない、同じまたは異なる組成の活性電極を各々が有する2個の電気化学セルで組み立てることができ、このセンサは、一方のセルが順バイアス(すなわち活性電極から対電極)で動作して総NO
Xを検出および定量し、第2のセルが逆バイアス(すなわち対電極から活性電極)で動作してNH
3を検出および定量するように動作することができる。この例では、一方のセルはNO
Xに対して選択的であり、他方のセルはNH
3に対して選択的である。従って、NO
XとNH
3の両方を1つのセンサで測定することができる。既に述べたように、これらの2個の電気化学セルは、1つの構造に物理的に統合することができる、または、2個の物理的に分離した電気化学セルを用いてもよい。
【0090】
既に述べたように、特定の集電体層は、1以上の目的のガス種(例えば、NO、NO
2またはNH
3)に対する感度の低下または強化を電気化学セルで達成するように、センサで生じる触媒および電気化学反応を操作するのに適合している。これは、全体を覆う(90%以上)集電体が少なくとも活性電極層の上にある、1または複数個の電気化学セルに表面電極配置が用いられる場合に特に有用である。しかし、2以上の電気化学セルを有するそのような実施形態では、共通の基板および、一部の例では、共通の電解質層および/または共通の対電極層を共有するようにセルを構成することができる。
図4A〜Hは、そのようなセンサ配置を表す。しかし、
図4A〜Hに示される配置は、活性電極の材料だけが電気化学セルの挙動を制御する実施形態にも使用されることができることが理解されるであろう。これらの例では、集電体層は省略することができる(活性電極層が十分に導電性である場合)、あるいは集電体層は全体を覆わない集電体(例えば、格子またはメッシュ)として構成することができる。バイアス源および電流測定装置が
図4A〜Hに含まれていないことに留意されたい。
【0091】
図4Aおよび4Bに示される例では、2個の電気化学セルを備えるセンサは、適切な絶縁基板(428)の上に必要な層:1つの共通するSAL(427);
SALの上に積層される1つの共通する電解質層(424);電解質層表面の一部に積層される第1の活性電極層(422A);電解質層表面の異なる部分に積層される第2の活性電極層(422B);第1および第2の電極層に非常に近接している(例えば、第1および第2の活性電極層の間の)電解質層の異なる部分に積層され、従って2個の電気化学セルの境界を定める1つの共通する対電極層(426);第1の活性電極層に積層される第1の集電体層(436A);および第2の活性電極層に積層される第2の集電体層(436B)を順次積層することによって作製される。
【0092】
図4Cおよび4Dに示される例では、2個の電気化学セルを備えるセンサは、適切な絶縁基板(428)の上に必要な層:絶縁基板の1つの領域の上に積層される第1のSAL(427A);絶縁基板の第2の領域の上に積層される第2のSAL(427B);第1のSAL(427A)の上に積層される第1の電解質層(424A);第2のSAL(427B)の上に積層される第2の電解質層(424B);第1の電解質層の一部分の上に積層される第1の活性電極層(422A);第2の電解質層の一部分の上に積層される第2の活性電極層(422B);第1および第2の電解質層の両方(および第1および第2の電解質層の間の絶縁基板の領域)の上に、第1のおよび第2の電極層に非常に近接して、第1のおよび第2の電極層の間に積層される(従って2個の電気化学セルの境界を定める)1つの共通する対電極層(426);第1の活性電極層の上に積層される第1の集電体層(436A);および第2の活性電極層の上に積層される第2の集電体層(436B)を順次積層することによって作製される。
【0093】
図4Eおよび4Fに示される例では、2個の電気化学セルを備えるセンサは、適切な絶縁基板(428)の上に必要な層:絶縁基板の1つの領域の上に積層される第1のSAL(427A);絶縁基板の第2の領域の上に積層される第2のSAL(427B);第1のSAL(427A)の上に積層される第1の電解質層(424A);第2のSAL(427B)の上に積層される第2の電解質層(424B);第1の電解質層の一部分の上に積層される第1の活性電極層(422A);第2の電解質層の一部分の上に積層される第2の活性電極層(422B);第1の電極層に非常に近接している第1の電解質層の上に積層される(従って第1の電気化学セルの境界を定める)第1の対電極層(426A);第2の電極層に非常に近接している第2の電解質層の上に積層される(従って第2の電気化学セルの境界を定める)第2の対電極層(426B);第1の活性電極層の上に積層される第1の集電体層(426A);および第2の活性電極層の上に積層される第2の集電体層(436B)を順次積層することによって作製される。
【0094】
図4Gおよび4Hに示される例は、
図4Cおよび4Dの例に類似している。
しかし、
図4Gおよび4Hの実施形態では、活性電極および対電極は相互嵌合している、それにより、表面電極の実効面積を増加させる一方で電極間の隙間を最小にする。
【0095】
図5〜11はさらなるセンサ実施形態(縮尺通りではない)を示し、1個のセンス素子(すなわち1個の電気化学セル)のこれらの例では、その各々がSAL(527、627、727、827、927、1027、1127)を含む。
図5および6では、SAL(527、627)は、電解質膜(524、624)と基板(528、628)の間に完全に封入されている。
図7〜11では、SAL(727、827、927、1027、1127)は、電解質層(724、824、924、1024、1124)と基板(728、828、928、1028、1128)との間に完全に封入されていない。代わりに、SALは単に電解質層と基板との間に位置しており、SALの一部は露出している。
図5および6のセンサにおいてSALはこの同じ方法で構成されることができ、
図7〜11のセンサにおいてSALはその代わりに、
図5および6の場合のように完全に封入されることができることが理解されるであろう。
【0096】
図5では、センス素子は、絶縁基板(528)、導電性信号増幅層(527)、多孔質または高密度であり得るセラミック電解質層(524)、活性電極層(522)、対電極層(526)、および活性電極層および対電極層の上面の少なくとも約90%をそれぞれ覆う集電体層(536、537)を含む。活性電極層および対電極層(522、526)は、同じまたは異なる組成であり得る。同様に、集電体層(536、537)は、同じまたは異なる組成であり得る。一般に、
図5〜8の実施形態の活性電極層および対電極層が同じ組成である場合、集電体層は異なる組成である(すなわち互いに異なっているか、または集電体層の1つが省かれている)。同様に、集電体層が同じ組成である場合、活性電極層および対電極層は異なる組成である(すなわち互いに異なっている)。
図5で示されるように、バイアス電圧は2つの集電体層の間に印加され、結果として集電層の間に生じる電流を測定する。
【0097】
図6では、センス素子は、絶縁基板(628)、導電性信号増幅層(627)、多孔質または高密度であり得るセラミック電解質層(624)、1つの活性電極層(622)、および1つの活性電極層(622)の上に間隔を置いた関係で位置する2つの集電体層(636、637)を含む。2つの集電体層(636、637)は異なる組成である。例えば、一実施形態では、第1の集電体層(636)は、Auとセラミック相(GDC、SDC、ジルコニウムをドープしたセリア(ZDC)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジウム安定化ジルコニア(ScSZ)、または活性電極での使用に適していると言及したその他のセラミック電解質の1つ)のサーメットを含み、第2の集電体層(637)は、Ptとセラミック相(GDC、SDC、ジルコニウムをドープしたセリア(ZDC)、イットリウム安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジウム安定化ジルコニア(ScSZ)、または活性電極での使用に適していると言及したその他のセラミック電解質の1つ)のサーメットを含む。具体例として、一方の集電体はAu/GDCを含み、他方はPt/ScSzを含む。
図6に示される構成では、集電体層(636、637)の一方と、その下の活性電極層(622)の一部は、ともに活性電極を提供し、他方の集電体層と、その下の活性電極層(622)の一部は、ともに対電極(または第2の活性電極)を提供する。
図6で示されるように、バイアス電圧は2つの集電体層の間に印加され、結果として集電層の間に生じる電流を測定する。
【0098】
図7では、センス素子は
図5のものに類似し、SALが電解質層と基板との間に完全に封入されない点だけが異なる。従って、
図7のセンス素子は、絶縁基板(728)、導電性信号増幅層(727)、多孔質または高密度であり得るセラミック電解質層(724)、活性電極層(722)、対電極層(726)、および活性電極層および対電極層の上面の少なくとも約90%をそれぞれ覆う集電体層(736、737)を含む。
図5の配置のように、活性電極層および対電極層(722、726)は、同じまたは異なる組成であり得、集電体層(736、737)は、同じまたは異なる組成であり得る。
図5とは異なり、
図7に示される実施形態では、SAL(727)は、電解質膜(724)と基板(728)との間に完全に封入されていない。代わりに、示されるように、SAL層(727)は単に電解質膜層と基板層との間に位置している。
【0099】
図8では、センス素子は
図6のものに類似し、完全に封入されていないSALの使用だけが異なる。従って、センス素子は、絶縁基板(828)、導電性信号増幅層(827)、多孔質または高密度であり得るセラミック電解質層(824)、1つの活性電極層(822)、および1つの活性電極層(822)の上に間隔を置いた関係で位置する2つの集電体層(836、837)を含む。2つの集電体層(836、837)は、異なる組成であり、例えば、
図6に関して上に記載される組成であってよい。
図8に示される構成では、SAL(827)は、電解質膜(824)と基板(828)との間に完全に封入されていない。代わりに、SAL層(827)は単に電解質膜層と基板層との間に位置している。
【0100】
本明細書に記載されるセンサ実施形態において一方の電極を「対電極」と呼び、他方を「活性電極」と呼ぶことは、一部の例では、任意であることは指摘されるべきである。例えば、電子およびイオン電流が2つの電極間を流れる方向は、一方のバイアス方向を他方に切り替えることによって変えることができる。従って、
図5〜8中の対電極は、存在する場合、第2の活性電極層と特徴づけることもできる。
【0101】
図5〜8に示される実施形態の様々な層は、本明細書に記載される様々な組成のいずれかであり得る。具体例として、基板はアルミナであり、SALはPt、そして電解質層はGDCであり得る。活性電極は、電解質(例えば、GDC)および金属(例えば、Pt)と組み合わせたモリブデン酸塩またはタングステン酸塩化合物(例えば、MgWO
4またはBaWO
4)であり得る。対電極は、金属(例えば、PtまたはAu)、電解質(例えば、GDCまたはScSZ)と金属(例えば、PtまたはAu)のサーメット、あるいは電解質(例えば、GDC)および金属(例えば、Pt)と組み合わせたモリブデン酸塩またはタングステン酸塩化合物(例えば、MgWO
4またはBaWO
4)であり得る。集電体は、同様に、金属(例えば、PtまたはAu)、または電解質(例えば、GDCまたはScSZ)と金属(例えば、PtまたはAu)のサーメットであり得る。一部の例では、集電体は対電極の上に設けられない。より具体的な実施形態では、活性電極の上の集電体は、Au/GDC、Pt/GDC、およびPt/ScSZから選択されるサーメットを含み;(上にある集電体がない)対電極は、Au/GDC、Pt/GDC、およびPt/ScSZから選択されるサーメットを含み、この際、対電極のサーメットで用いられる金属(AuまたはPt)は、活性電極の集電体のサーメットで用いられる金属(PtまたはAu)とは異なる。
【0102】
なおさらなる代替実施形態では、SALは、活性/対電極と集電層の組合せよりもむしろ1つの層電極の使用を可能にすることができる。さらに、改質された電解質層が相当な量のセラミック電解質材料(例えば、約60体積パーセントよりも多いか、または電解質材料がそのパーコレーション限界を上回り、非電解質材料がパーコレーション限界を下回るほど十分な量)を含み、その結果、改質された電解質層活性が酸素イオンを介して主に電気を伝導するのであれば、SALによって、活性電極および電解質層の特定の構成要素が組み合わせされるように使用することができる(あるいは電極の一方または両方の下の電解質層が除去されていることを特徴とすることができる)。この例では、2つの異なる集電体材料を有することによって電極間に差別化をもたらすことができる。
図9は、SAL(927)を用いるセンス素子のそのような実施形態を示す。
【0103】
図9では、センス素子は、絶縁基板(928)、導電性信号増幅層(927)、多孔質または高密度であり得るセラミック電解質層(924)、電解質層(924)の上面の一部分の上に位置する第1の電極層(922)、および、第1の電極層(922)に隣接して、電解質層(924)の上面の別の部分の上に位置する第2の電極層(926)を含む。第1および第2の電極(922、926)(例えば、活性電極および対電極)は異なる組成を有し、活性電極、対電極または集電体のための本明細書に記載される様々な組成のいずれかを含むことができる。
【0104】
電解質層(924)は、例えば、ドープセリアまたはドープジルコニア電解質であり得るが、その代わりにそれは少なくとも約60体積%のドープセリアまたはドープジルコニア電解質(例えば、GDC、SDC、ZDC、YSZ、またはScSZ)を、本明細書において既に記載されるモリブデン酸塩またはタングステン酸塩化合物の1以上(例えば、MgWO
4またはBaWO
4);および/または1以上の金属、例えばPt、Pd、Rh、Ru、またはIrなど(あるいはそれらの合金または混合物)と組み合わせて含む、改質された電解質材料であり得る。一具体例として、改質された電解質層は、約60体積%〜約95体積%のドープセリアまたはドープジルコニア電解質(例えば、GDC、SDC、ZDC、YSZ、またはScSZ);および約5%〜約40%の、Pt、Pd、Rh、Ru、およびIrからなる群から選択される金属と組み合わせたモリブデン酸塩またはタングステン酸塩化合物を含む。
【0105】
改質した電解質層を
図9の実施形態で使用することにより、モリブデン酸塩/タングステン酸塩化合物の利益をさらなる電極層よりもむしろ電解質層で活用することができる。そのような改質した電解質層が
図9の実施形態で使用される場合、電極(922、926)は、異なる組成を有するべきである。例えば、1つの電極は、白金および電解質(GDC、SDC、YSZ、ScSZ)を含有するサーメットを含み得るが、他方の電極は金および電解質(GDC、SDC、YSZ、ScSZ)を含有するサーメットを含む。
【0106】
さらなる実施形態では、SALは、各々が1つの表面電極の下に位置する、2つの隣接する層に電解質を分岐させることができる。これらの例では、バイアス下での電極間の横導通は、完全にSALを通る。通常、電解質層を通して電極間で伝導される酸素イオンは、第1の電解質層とSALの界面で電子に変換される。次に、これらの電子は、SALを通って輸送され、その後SALと第2の電解質層の界面で酸素と反応して酸素イオンを形成する。
図10は、センス素子が、絶縁基板(1028)、導電性信号増幅層(1027)、SALの一部分の上に位置する第1のセラミック電解質層(1024A)、第1の電解質層(1024A)に隣接するSALの別の部分の上に位置する第2のセラミック電解質層(1024B)、第1のセラミック電解質層(1024A)の上に位置する第1の電極層(1022)、および第2のセラミック電解質層(1024B)の上に位置する第2の電極層(1026)を含む、1つのそのような実施形態を示す。第1および第2の電極(1022、1026)(例えば、活性電極および対電極)は異なる組成を有し、活性電極、対電極または集電体のための本明細書に記載される様々な組成のいずれかを含むことができる。第1および第2の電解質層は同じまたは異なる組成であってよく、例えばドープセリアまたはドープジルコニア電解質を含むか、または代わりに、
図9に関して上に記載されるような改質した電解質材料を含むことができる。
【0107】
図11は、分岐した電解質層を用いるセンス素子のさらに別の代替実施形態を示す。
図11では、センス素子は、絶縁基板(1128)、導電性信号増幅層(1127)、SALの一部分の上に位置する第1のセラミック電解質層(1124A)、第1の電解質層(1124A)に隣接するSALの別の部分の上に位置する第2のセラミック電解質層(1124B)、第1のセラミック電解質層(1024A)に位置する第1の電極層(1122)、第1の電極層(1122)の上に位置する集電体層(1136)、および第2のセラミック電解質層(1124B)の上に位置する第2の電極層(1126)を含む。第1および第2の電極(1122、1126)(例えば、活性電極および対電極)は同じまたは異なる組成を有し、活性電極、対電極または集電体のための本明細書に記載される様々な組成のいずれかを含むことができる。第1および第2の電解質層は同じまたは異なる組成であってよく、例えばドープセリアまたはドープジルコニア電解質を含むか、または代わりに、
図9に関して上に記載されるような改質した電解質材料を含むことができる。例として、第1の電解質層(1124A)はドープセリアまたはドープジルコニア電解質を含むが、第2の電解質層は、
図9に関して上に記載されるような改質された電解質材料を含む(例えば、モリブデン酸塩化合物をGDCまたはSDCとともに含む)。
【0108】
本明細書に記載されるセンサの実施形態は、通常、機械的な支持をもたらすために、記載される電気化学セルと組み合わせて基板を含む。基板は、任意の適した絶縁材料、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、ムライト、ステアタイト、またはコーディエライトなどの絶縁セラミック材料を含んでよい。酸化アルミニウムは、基板材料として特に有用である。装置は、基板材料として(絶縁材料の代わりに)金属または合金で組み立てることもできる。これらの例では、金属基板自体は、信号増幅層として機能する。これは、電解質層、活性電極層および集電体層の積層の間に界面で絶縁層が作製されないような方法で電解質材料(または活性電極材料を含有する電解質)を金属基板の上に直接積層することを必要とする。例えば、スパッタリングプロセス(または同類のもの)を用いて様々な層を積層することができる。
【0109】
本明細書のセンサおよびセンサシステムは、様々な適用環境に適合するように構成されることができ、それには、構造的頑強性、センサ温度を制御するための1以上の加熱器の追加、ならびに/あるいは、温度を測定し、温度制御のために電子制御装置にフィードバックする測温抵抗体(「RTD」)、サーミスタ、熱電対またはその他の装置の追加をもたらすために変更された基板を含むことができる。特定の周波数での電解質層のインピーダンスの使用に基づく、代わりとなる温度測定手法も使用することができる(この手法は、センサ装置構造に特定の機能を付加することを必要とすることになる)。変更は、全体のセンササイズおよび形状、センサを収容し保護する外装および遮蔽、ならびにセンサ信号を外部装置またはアプリケーションに伝達する適切なリード線および配線にも行うことができる。
【0110】
センサは、所望により電解質および電極から電気的に絶縁した加熱器を含むことができる。一部の実施形態では、加熱器は、例えば、限定されるものではないが白金、パラジウム、銀、または同類のものなどの導電性金属から形成される抵抗加熱器を含む。加熱器は、例えば、基板に適用または埋設されてもよいし、さらなる絶縁層(例えば、酸化アルミニウム)などの別の絶縁層によってセルに適用されてもよい。さらにその他の実施形態では、温度測定機構をセンサに適用して、温度を測定し、それを電子制御装置にフィードバックして閉ループ温度制御を可能にする。例えば、温度測定機構は、抵抗温度係数の高い導電性金属または金属/セラミック複合材料(例えば、白金または白金系サーメット)で作製された測温抵抗体(RTD)である。
【0111】
図2に示されるような特定の実施形態では、電気化学センサは、多層セラミックキャパシタおよび多層セラミック基板の製造中に一般に使用されるテープキャスティングおよびスクリーン印刷技術を用いて作製される。このプロセスの第1の部分は、酸化アルミニウムシート(またはテープ)のテープキャスティングを伴う。グリーン状態で、レーザーカッターまたはパンチを用いて基板にビアホールが切り込まれ、埋設された加熱器またはその他の構造から、セラミック素子の外面上のコンタクトパッドまでの電気経路接続を提供する。白金(または白金系材料)を、グリーンの酸化アルミニウムテープの片面に、焼結後に加熱器となり得るパターンにスクリーン印刷する。また、グリーン状態の、SALがグリーンの酸化アルミニウムテープの片面の上にスクリーン印刷される。
【0112】
本明細書に記載される様々な実施形態では、SALは、通常、2つの電極間の隙間の下に広がることを含む、表面電極の少なくとも約50%の下に広がるように構成される連続した導電層である。言い換えれば、SALは、表面電極の下に位置し、表面電極を合わせた大きさ(電極間の隙間を含む)の約50%〜約120%の大きさを有する。例えば、
図7に示されるように、SAL(727)の断面の長さ(L)は、電極(722、726)の端から端までの幅(W)の約120%である。
図5および6では、SALの大きさは、電極面積とほぼ同じである(表面電極間の隙間を含む)。
【0113】
SALは、センサの製造に適した多様な導電性材料で作製することができる。適した材料としては、Pt、Pd、Au、Ag、前述の金属の合金(例えば、PtとPd、Auおよび/またはAuの合金)、またはその他の導電性金属もしくはセラミック材料が挙げられる。白金が特に有用である。
【0114】
図2の実施形態に戻ると、SAL層の形成後、スクリーン印刷した加熱器層が中央にあり、SALが反対の面にあるように、グリーンの酸化アルミニウムテープの複数の層を整列させ、積み重ねる。その後、積み重ねたグリーンのアルミナテープを、わずかに高い温度で一軸圧力を加えることによって積層する。ビアホールに、白金などの導電性インクを充填し、積層体を高温で焼結させて、酸化アルミニウム基板を固化する。その後、多孔質セリア系電解質(GDCまたはSDC)層(またはその他の電解質材料)を、スクリーン印刷および焼結によって、SALの上および基板周囲の表面上に適用する。白金(または白金ベース材料)を、焼結素子の外面に、焼結後に温度測定を可能にするRTDとなり得るパターンにスクリーン印刷する。あるいは、別のRTDに適した材料を、酸化アルミニウム基板の焼結の前にグリーン状態で適用し、それと共焼結させてもよい。ガラス層をRTDの上に適用し、硬化させて適用時にRTDを保護してよい。あるいは、加熱器とRTD層の両方をグリーン状態の基板および白金ビアで作製した接続部の中に埋設してよく(上記の通り)、または白金RTDだけを基板の中に埋設し、加熱器層を外面に印刷してガラス層で保護してよい。あるいは、RTDを省略してもよく、温度測定および制御のための別の手段を使用してよい。
【0115】
電気化学セルまたはセンサの製造は、次に、活性電極層および対電極層(本明細書に記載される組成物のいずれかで作製)を電解質層の上にスクリーン印刷した後、電極層をアニールして接着を促進するために電極層を焼結することによって完了する。次に(than)、集電体層を同様の方法で適用することができる。多孔質セラミックコーティング、例えばゼオライトまたはガンマアルミナなどをさらに電極/集電体の上に適用して適用時にこれらの層を保護し、か焼して接着を向上させることができる。注目すべきは、複数の電気化学セルまたはセンサを、アレイ処理によって上記のプロセスで同時に作製することができることである。
【0116】
センサシステムは、例えば、本明細書に記載される1以上のセンサと1以上の電子制御装置を接続することによって形成され、この電子制御装置は、制御可能にバイアス電圧を印加し、(例えば、制御装置に提供されるセンサ温度測定に基づいて、ヒータへの入力電圧のパルス幅を変調することによって)温度を制御するように構成されている。一部の実施形態では、制御装置は、調節されたセンサ出力、例えば較正されたかまたは線形化された出力などを提供するように構成されている。
【0117】
本明細書に記載される様々なセンサおよびセンサシステムのいずれかを用いて、NO
Xおよび/またはNH
3などの1以上の標的ガス種の濃度を検出し、検知し、かつ/またはモニターする方法も提供される。これらの方法では、バイアス電圧をセンサの電気化学セルに印加し、結果として生じる電流を測定する。測定電流は、以前に収集したセンサデータに基づいてセンサ温度で標的ガス種と関連付けられる。一般に、測定電流は、ガス試料またはガス流中の標的ガス種の濃度が増加するにつれて変化する。任意の所与のセンサ動作温度および印加バイアス電圧の、所定のセンサ応答データを使用することにより、標的ガス種を、センサセルを通る生成電流に基づいて決定することができる。
【0118】
本明細書に記載されるセンサ、センサシステムおよび方法は、多様なその他のガス種を検出するためにも適合させることができ、それには一酸化炭素(CO)、メタン(CH
4)、エタノール(C
2H
6)、硫化水素(H
2S)、硫黄酸化物(SOx)、水素(H
2)、冷媒、酸素(O
2)、揮発性有機化合物(VOC)およびその他の炭化水素が含まれる。アンペロメトリックセンサ、センサシステムおよび方法の多様なさらなる特徴および利点は、後述する実施例で説明される装置および得られる結果から明らかになるであろう。
【0119】
前に述べたように、NO
X濃度とNH
3濃度の両方の測定を提供するために、センサは、2つの活性電極で組み立てることができ、2個の異なる電気化学セルを効果的に提供することができる。試験のために、例示的なセンサを1個の電気化学セルとして作製し、複数の電気化学セルを有するデュアルNO
X/NH
3センサの設計を可能にする条件下で試験した。この試験によって、出願人らはNO
XとNH
3の両方の濃度を測定するためのセンサを作製するための複数のアプローチを見出した。これらのアプローチは、通常、1個の電気化学セルを、そのセルがNO
XおよびNH
3に関して付加的応答を示す(すなわち、3つの種全てに対して同一の応答を示す)ように作製し動作させること、および第2の電気化学セルを、そのセルがNH
3の存在下でNO
Xに関して選択的反応を示す(すなわち、NOおよびNO
2に対して同一の応答を示し、NH
3に対して減少した応答を示すかまたは応答を示さない)ように作製し動作させることを伴う。
【0120】
付加的応答とは、電気化学セルにより提供される信号の大きさが、分析されるガス試料またはガス流中の分析物(例えば、NO、NO
2およびNH
3)の合計濃度に比例することを意味する。従って、本明細書に記載されるアンペロメトリックセンサでは、NO、NO
2およびNH
3に対して付加的応答を示すセンサの個々の電気化学セルは、NO、NO
2およびNH
3の合計濃度に比例する信号をもたらすであろう。言い換えれば、センサの電気化学セルは、所与濃度のNO、NO
2およびNH
3に曝露されるとほぼ同じ電流が生成される(例えば、電気化学セルが20ppm NO、20ppm NO
2または20ppm NH
3に曝露されるとほぼ同じ電流が生成される)ように、NO、NO
2およびNH
3に対してほぼ等しい応答を示す。特に、センサの個々の電気化学セルは、2以上の分析種の各々に対する感度が、10〜200ppmの範囲内の所与濃度のガス分析種に対して±20%の範囲内である場合に、これらの分析種に関して付加的と考えられる。本明細書において、感度は、分析種の不在下の電流信号と比較した電流信号の変化率である。一部の実施形態では、付加的電気化学セルの2以上の分析種に対する感度は、±10%、またはさらに±5%の範囲内である。
【0121】
センサの一方の電気化学セルは、2以上の標的ガス種(例えば、NO
XおよびNH
3)に対する付加的応答を示すが、センサの他方の電気化学セルは標的ガス種の1つ(例えば、NO
XかまたはNH
3のいずれか)に対して最小応答性または非応答性である、すなわち選択的応答である。選択性は、第2の電気化学セルの構成(例えば、活性電極材料および/または集電体の選択)および/または第2の電気化学セルの動作様式(例えば、バイアスの方向)のいずれかによって与えられる。センサの電気化学セルは、特定の分析物に対する感度が、10〜200ppmの範囲内の所与濃度で、その他の1または複数の目的の分析物に対する感度の20%未満である場合、この特定の分析物に関して最小応答性(すなわち選択的)である。一部の実施形態では、1つの分析物に対する感度は、その他の1または複数の分析物に対する感度の10%未満、または5%未満でさえある。特定の一実施形態では、センサの第1の電気化学セルがNO
XおよびNH
3に関して付加的であり、センサの第2の電気化学セルがNO
Xに応答性であるがNH
3に対して最小の応答性しかないか、または非応答性である場合、第2の電気化学セルは、NOおよびNO
2に関して付加的な特性を示すことが好ましい。
【0122】
本発明者らは、付加的および選択的なセンサ応答を得るために(例えば、デュアルNO
X/NH
3検出および定量化を可能にするために)、2個のセルの集電体を調整することによって、1つが2以上の標的ガス種に対する付加的応答を有し、1つが少なくとも1つの標的ガス種に対する選択的応答を有する2個の電気化学セルを提供することができることを見出した。信号強度と、一部の例では選択性もSALによって増強される。これらの発見は、集電体が活性電極の表面を完全に覆う装置(被覆率>約90%)を作製すること、および対電極と活性電極の両方が電解質の同じ面の上に間隔を置いた関係で積層される装置構造を利用することによって達成された。本明細書においてさらに報告される試験によって実証されるように、本発明者らは、電気化学的検知反応がこの代替配置の集電体によって制御されるようになることを見出した。例えば、同じ活性電極(MgWO
4またはBaWO
4に基づく)を有する電気化学セルにおいて、付加的センサ応答は、白金系集電体を活性電極の上に組み込むセルで実現され、選択的応答は、金系集電体を活性電極の上に組み込むセルで実現される。これは、本明細書においてさらに記載される実施例によってより明白になる。
【0123】
図21〜24は、電極の一方または両方が、電解質層の上に位置する集電層を含み、触媒層が集電層の上方に位置し、集電層の上面の少なくとも約90%を覆う(
図22および24)か、または集電体層を触媒層と電解質層の間に完全に封入する(
図21および23)、本開示のセンス素子のさらなる代替実施形態を示す。示されるように、SALも
図21〜25の実施形態に提供される。
【0124】
図21〜24の実施形態では、集電体層は、触媒層よりも高い導電率を有する。触媒層は、活性電極層として使用するための、本明細書において以前に記載した材料のいずれか、特にモリブデン酸塩またはタングステン酸塩を含む組成物(例えば、上記のように、電解質材料および金属と組み合わせた、モリブデン酸塩またはタングステン酸塩化合物)であってよい。集電体層は、集電体層として使用するための、本明細書において以前に記載した材料のいずれか、特に金属(例えば、PtまたはAu)または電解質と金属のサーメット(例えば、Au/GDC、Pt/GDC、またはPt/ScSZ)であってよい。示されるように、バイアス電圧は集電体層間に印加され、結果として生じる信号は集電体層間からも得られるが、触媒層は、触媒/集電体界面に存在するNO、NO
2およびNH
3の濃度を操作し、それによりバイアスが印加されるときに(触媒層が存在しない場合の電流の量と比較して)電流の量を変えると考えられる。
【0125】
図21では、センス素子は、絶縁基板(2028)、導電性信号増幅層(2027)、多孔質または高密度であり得るセラミック電解質層(2024)、電解質層(2024)の上面の一部分の上に位置する第1の集電体層(2036)、および、第1の集電体層(2036)に隣接して、電解質層(2024)の上面の別の部分の上に位置する第2の集電体層(2037)を含む。第1の触媒層(2022)は第1の集電体層(2036)を封入し(すなわち触媒と電解質との間にある)、第2の触媒層(2026)は第2の集電体層(2037)を封入する。2つの集電体層(2036、2037)は、同じまたは異なる組成であってよく、2つの触媒層(2022、2026)は、同じまたは異なる組成であってよい。しかし、集電体層かまたは触媒層の少なくとも一方は、他方の集電体層または触媒層とは異なる組成を有するべきである(すなわち2036は、2037とは異なる組成を有し、かつ/あるいは2022は2026とは異なる組成を有する)。また、示されるように、SAL(2027)が所望により部分的に封入されているよりもむしろ完全に封入されていることも理解されるであろう(
図22〜24のセンス素子にも当てはまる)。
【0126】
図22のセンス素子は
図21のものに類似している、しかし、この実施形態では、触媒層(2122、2126)は、下にある集電体層(2136、2137)を完全に封入していない。
図22のセンス素子も、前と同じように絶縁基板(2128)、導電性信号増幅層(2127)、および多孔質または高密度であり得るセラミック電解質層(2124)を含む。この場合も、2つの集電体層(2136、2137)は同じまたは異なる組成であってよく、2つの触媒層(2122、2126)は、同じまたは異なる組成であり得る。しかし、集電体層かまたは触媒層の少なくとも一方は、他方の集電体層または触媒層とは異なる組成を有するべきである(すなわち2136は、2137とは異なる組成を有し、かつ/あるいは2122は2126とは異なる組成を有する)。
【0127】
図23の実施形態では、センス素子は、絶縁基板(2228)、導電性信号増幅層(2227)、多孔質または高密度であり得るセラミック電解質層(2224)、電解質層(2224)の上面の一部分の上に位置する集電体層(2236)、集電体層(2236)に隣接して、電解質層(2224)の上面の別の部分の上に位置する対電極層(2226)を含む。触媒層(2222)は、集電体層(2236)を封入する(すなわち触媒と電解質の間にある)。対電極層2226は、対電極として、または集電体として用いるための本明細書に記載される組成のいずれかを含むことができる。
【0128】
図24のセンス素子は
図23のものに類似している、しかし、この実施形態では、触媒層(2322)は、下にある集電体層(2336)を完全に封入していない。
図24のセンス素子も、前と同じように絶縁基板(2328)、導電性信号増幅層(2327)、多孔質または高密度であり得るセラミック電解質層(2324)、および対電極層(2326)を含む。
【0129】
最後に、
図25のセンス素子には、集電体層(2436)を封入する(すなわち触媒と電解質(2424)の間にある)触媒層(2422)が含まれる。しかし、この実施形態では、第2の(対)電極(2426)は、対電極(2426)が電解質層(2424)と基板(2422)の間に位置するように、電解質層(2424)の下に埋設されている。従って、
図25のセンス素子には、SALが含まれない。
【実施例】
【0130】
実施例1および2
信号増幅層のセンサ性能への効果を、電解質層と基板との間に封入されているSALを含む1つのセンサを除いて構造が同一のセンサを用いて確定した。
図12および13に示されるように、
図1に示されるセンサと同様の2つのセンサが組み立てられた。従って、両方のセンサには、Al
2O
3基板、同一のPt−BaWO
4/GDC活性電極層ならびにPt/GDC集電体および対電極層が含まれた。同一の処理方法が、これらの層の準備および積層に使用された。実施例1のセンサは、白金信号増幅層を含まずに作製したが、実施例2のセンサにはGDC電解質層と基板の間に白金信号増幅層が含められ、SALは完全に封入されていた(
図13に見られる通り)。
図12および13に示されるセンサ構造の寸法は縮尺通りではないことに留意する必要がある。電解質表面上の活性電極と対電極の間の隙間は約500ミクロンであったが、GDC電解質層の厚さ(および従って活性電極と埋設されている白金層との間の隙間)は約30ミクロンであった。
【0131】
実施例1および2のセンサを、センサを525℃の温度で維持して、77体積%のN
2、10体積%のO
2、8体積%のCO
2、5体積%のH
2Oおよび1ppmのSO
2のベースラインの模擬ディーゼル排気ガス雰囲気に曝した。200mVの順(正)バイアスをPt/GDC集電体からPt/GDC対電極層に印加して、生じる電流を100オームのシャント抵抗器の両端の電圧を測定することによって求めた。ベースライン信号(ベースラインの模擬ディーゼル排気ガスだけに曝露)を測定し、同様に100ppmのNO、NO
2およびNH
3を模擬排気ガスに添加した場合の信号(すなわち電流)も測定した。NO、NO
2およびNH
3の100ppm曝露に対する感度を、分析物が存在する場合の電流信号の変化率として求めた。これらの試験の結果は
図12および13に示され、その図では白金信号増幅層がベースライン信号を0.28から3.8μΑに増加させたことが分かる(10倍以上の増加)。その上、試験したガス種の各々に対する感度も大幅に増加し、それにより著しくより有用なセンサをもたらした。SALは横方向の電流路をもたらし、活性電極および対電極の領域を効果的に増加させた。従って、たとえ2つのさらなる電気化学的反応(GDC/Pt−SAL界面での酸素イオンの電子への変換およびPt−SAL/GDC界面での電子を酸素イオンに戻す変換)が起こらなければならないとしても、白金によって提供される横方向の電流路が電荷担体のより速い経路であることを想到することができる。
【0132】
実施例3〜10
電極および集電体層の組成を変えることによってセンサの応答特性を調整する能力を、様々なセンサを作製し、模擬ディーゼル排気(ベースライン)ならびに100ppmのNO、NO
2またはNH
3を含む模擬排気中でその性能を決定することによって実証した。実施例3〜10のセンサを、実施例2(すなわち、完全に封入されているPt SALを含む
図1の構造)について上に記載されるように作製した。従って、共通の電解質層(24)はGDCであり、活性電極(22)、集電体(36)および対電極(26)層を、下の表1に報告されるように変化させた。集電体(36)から対電極(26)層に印加される順(正)バイアスでセンサを試験した。センサを、実施例1および2について上に記載されるように、525℃の温度で200mVのバイアス電圧で試験した。ベースラインガス雰囲気は、8体積%のCO
2、5%体積%のH
2O、1ppmのSO
2、10体積%のO
2、および77体積%のN
2からなり、それに添加された100ppmのNO、100ppmのNO
2、または100ppmのNH
3の分析物を含むベースライン雰囲気への曝露についてセンサ応答を測定した。結果は表2に要約され、その後の段落で説明される。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
Pt−MgWO
4/GDC活性電極、Au/GDC集電体およびPt/ScSZ対電極を備える実施例3のセンサについて得た試験データを表2および
図14に示す。200mVバイアスを525℃の温度で印加されて、このセンサは8.9μAのベースライン電流信号と、NOおよびNO
2に対する選択的検知挙動を示した(100ppmのNOおよび100ppmのNO
2に対して、それぞれ33%および43%の感度、そして100ppmのNH
3に対してわずか2%の感度)。NH
3に対する感度の欠如は
図14にも見られ、図中、信号は、100ppmのNH
3がベースライン模擬ディーゼル排気に添加された場合に、ベースライン信号よりもごくわずかに高かった(8.9μAに対して9.1μA)。
【0136】
Pt−MgWO
4/GDC活性電極、Pt/SCSZ集電体およびPt/ScSZ対電極を備える実施例4のセンサについて得た試験データを表2および
図15に示す。200mVバイアスを525℃の温度で印加されて、このセンサは6.5μAのベースライン電流信号と、NO、NO
2およびNH
3に対する付加的検知挙動を示した(100ppmのNO、100ppmのNO
2および100ppmのNH
3に対して、それぞれ39%、31%および33%の割合の感度)。
【0137】
Pt−BaWO
4/GDC活性電極、Au/GDC集電体およびPt/ScSZ対電極を備える実施例5のセンサについて得た試験データを表2および
図16に示す。200mVバイアスを525℃の温度で印加されて、このセンサは5.4μAのベースライン電流信号と、NOおよびNO2に対する名目上選択的な検知挙動を示した(NH
3に対する49%の感度と比較して、それぞれ91%および108%の割合の感度)。従って、このセンサの活性電極のMgWO
4をBaWO
4で置き換えることにより、NO
X感度の相当な増加がもたらされたが、著しいNH
3応答も観察された。選択的NO
X検出についてこのセンサの有用性を改善するために、例えば活性電極および集電体層の厚さおよび/または多孔性を変更することによるか、または集電体層の組成を変えることなどによって、NH
3応答を減らす必要がある、
【0138】
Pt−BaWO
4/GDC活性電極、Pt/SCSZ集電体およびPt/ScSZ対電極を備える実施例6のセンサについて得た試験データを表2および
図17に示す。200mVバイアスを525℃の温度で印加されて、このセンサは3.8μAのベースライン電流信号と、NO、NO
2およびNH
3に対する付加的検知挙動を示した(100ppmのNO、100ppmのNO
2および100ppmのNH
3に対して、それぞれ167%、164%および164%の感度)。従って、この付加的センサの活性電極のMgWO
4をBaWO
4で置き換えることにより、NO
XおよびNH
3感度の4倍の増加がもたらされた。
【0139】
MgWO
4/GDC活性電極(活性電極に白金を含まない)、Pt/SCSZ集電体およびPt/ScSZ対電極を備える実施例7のセンサについて得た試験データを表2に示す。200mVバイアスを525℃の温度で印加されて、このセンサは0.85μAの非常に低いベースライン電流信号と、比較的低い最適よりも低い付加的感度を示した(100ppmのNO、100ppmのNO
2および100ppmのNH
3に対して、それぞれ21%、13%および21%の感度)。データは、より望ましいNO
XおよびNH
3検知挙動を得るために、白金(または別の金属)を活性電極に含めることの利点を示す。
【0140】
Pt−MgWO
4/GDC活性電極、白金集電体および白金対電極(集電体または対電極にScSZまたはGDCを含まない)を備える実施例8のセンサについて得た試験データを表2に示す。200mVバイアスを525℃の温度で印加されて、このセンサは、0.14μΑの非常に減少したベースライン電流信号と、100ppmのNO、100ppmのNO
2および100ppmのNH
3に対して、それぞれ6%、7%および1%の非常に低い感度を示した。データは、電解質材料(例えば、ScSZまたはGDC)を集電体および対電極層に含めることの(少なくともこの特定のセンサ構成および活性電極材料に関しての)利点を示す。
【0141】
Pt−MgWO
4/GDC活性電極、Au/GDC集電体およびAu/GDC対電極を備える実施例9のセンサについて得た試験データを表2に示す。200mVバイアスを525℃の温度で印加されて、このセンサは、9.4μΑの比較的高いベースライン電流信号と、100ppmのNO、100ppmのNO
2および100ppmのNH
3に対して、それぞれ23%、45%および30%の感度を示した。従って、対電極のPt/ScSZをAu/GDCで置き換えることにより、実施例3と比較して選択性が低下し、従って、センサ応答を操作する目的でサーメット対電極に使用される金属を変えることの効果、ならびにこの特定のセンサ構成および活性電極材料に関して、サーメット対電極に金よりもむしろ白金を使用することの利点を示した。
【0142】
Pt−MgWO
4/GDC活性電極、Pt/ScSZ集電体およびAu/GDC対電極を備える実施例10のセンサについて得た試験データを表2に示す。200mVバイアスを525℃の温度で印加されて、このセンサは、4.7μΑのベースライン電流信号と、100ppmのNO、100ppmのNO
2および100ppmのNH
3に対して、それぞれ95%、108%および181%の割合の感度を示した。従って、対電極のPt/ScSZをAu/GDCで置き換えることにより、付加的挙動が失われ、この特定のセンサ構成および活性電極材料に関して、白金(金ではない)がサーメット対電極に存在することが好ましいことを再び確認した。
【0143】
実施例11および12
本明細書に記載されるセンサがどのようにアンモニア検出に適合させることができるかの証明が実施例11および12に説明される。センサを、実施例2(すなわち、完全に封入されているPt SALを含む
図1の構造)について上に記載されるように作製した。
図18および19に示されるように、センサは、Al
2O
3基板、Pt−MgWO
4/GDC活性電極層、Au/GDC集電体層およびPt/GDC対電極層を用いた。また、以前の実施例と比較して、Pt−MgWO
4/GDC、Pt/GDCおよびAu/GDC層をより高い表面積の構成要素およびより高いアニーリング温度で作製し、これによりこれらの層の密度(および耐久性)が増加した。
【0144】
センサを525℃で8体積%のCO
2、5%体積%のH
2O、1ppmのSO
2、2〜20体積%のO
2、および67〜85体積%のN
2からなるベースラインガス雰囲気中で試験し、センサ応答も100ppmのNO、100ppmのNO
2、または100ppmのNH
3の分析物への曝露について−200から+200mVに及ぶバイアス電圧で観察した。200mVの順バイアスによって得たデータを
図18に示す。順バイアスモード(すなわち、酸素イオンが活性電極で生成され、電解質を通って対電極に伝導される)で試験した場合、センサは酸素に対して交差感受性が高く、NOおよびNO
2に対する応答は正の数であって同じでなく(それぞれ33%および108%の割合)、NH
3に対する応答は大きい負の数であり(−86%)、酸素含有量は5体積%であった。
【0145】
−200mVの逆バイアスによって得たデータを
図19に記載する。逆バイアスモード(すなわち、酸素イオンが対電極で生成され、電解質を通って活性電極に伝導される)で試験した場合、センサは酸素に対してわずかに交差感受性であり、酸素、NOおよびNO
2応答はわずかに正の数であり(それぞれ、31%および25%)、NH
3応答も大きい正の数であった(267%)。
【0146】
異なる逆バイアス電圧での(525℃での)、酸素含有量のNO
XおよびNH
3応答への影響を
図20に示す。低いバイアス電圧(−30および−80mV)で、NH
3応答は酸素に対してわずかに交差感受性であり、酸素含有量が高いほど信号強度は低かった。しかし、高いバイアス電圧(−140および−200mV)では、NH
3感度は酸素含有量に対して非感受性であった。NH
3に対する非常に高い感度(NO
Xと比較)と酸素に対する非感受性を組み合わせることは、独立型NH
3センサとして、またはデュアルNO
X/NH
3センサのNH
3選択的セルとしての使用に有利である。
【0147】
センサの様々な実施形態、ならびにセンサの製造および使用方法が上で詳細に説明されたが、構成要素、特徴および構成、ならびに装置を製造する方法および本明細書に記載される方法は、本明細書に記載される特定の実施形態に制限されないことは当然理解される。例えば、上の1つの実施形態の状況において説明される構成要素、特徴、構成、および製造または使用方法は、その他の実施形態のいずれにも組み込まれてよい。さらに、下に記載されるさらなる説明に限定されないが、追加および代わりの適した構成要素、特徴、構成、および装置を使用する方法、ならびに本明細書の教示を組み合わせて交換する様々な方法は、本明細書の教示を考慮すれば当業者には明らかであろう。
【0148】
本開示において様々な実施形態を示し、説明してきたが、本明細書に記載される方法、システムおよび装置のさらなる変更および適合化は、本開示の範囲を逸脱することなく当業者によって達成されてよい。そのような可能な変更のいくつかは言及され、そしてその他は当業者に明白であろう。従って、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲に関して考慮されるべきであり、明細書および図面に示され、説明される構造および動作の詳細に制限されないことが理解される。