(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記変速動作を行う場合、前記変速動作を開始してから前記回転体の位相変化量が所定値に達するまで前記モータの出力を低下させる、請求項2に記載の自転車用制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記自転車用制御装置では、変速動作時のモータの出力の制御に関して、自転車の運転状態を考慮していないため、モータの出力の制御に関してなお改善の余地がある。
本発明の目的は、自転車の推進をアシストするモータの出力を適切に制御できる自転車用制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う自転車用制御装置は、自転車の推進をアシストするモータを制御する制御部を含み、ディレーラが複数のスプロケットの間においてチェーンを掛け替える変速動作を行う場合に、前記複数のスプロケットと同期し、かつ、前記複数のスプロケットの回転軸心とは異なる回転軸心まわりに回転可能な回転体の回転位相および回転速度の少なくとも一方に応じて、前記制御部が前記モータの出力を制御する。
前記第1側面に従えば、前記自転車用制御装置は、スプロケットの状態に応じて、モータの出力を適切に制御することができる。スプロケットの回転位相および回転速度などを直接検出するのではなく、スプロケットに同期する回転体の回転位相および回転速度の少なくとも一方を用いることによって、検出に用いるセンサの配置の自由度を向上させることができる。
【0006】
本発明の第2側面に従う自転車用制御装置は、自転車の推進をアシストするモータを制御する制御部を含み、リアディレーラが複数のスプロケットの間においてチェーンを掛け替える変速動作を行う場合に、前記複数のスプロケットと同期して回転する回転体の回転位相および回転速度の少なくとも一方に応じて、前記制御部が前記モータの出力を制御し、前記回転体は、後輪を含む。
前記第2側面に従えば、前記自転車用制御装置は、スプロケットの状態に応じて、モータの出力を適切に制御することができる。スプロケットの回転位相および回転速度などを直接検出するのではなく、スプロケットに同期する後輪の回転位相および回転速度の少なくとも一方を用いることによって、検出に用いるセンサの配置の自由度を向上させることができる。
【0007】
前記第2側面に従う第3側面の自転車用制御装置において、前記自転車の前記複数のスプロケットと前記後輪との間の動力伝達経路には、ワンウェイクラッチが設けられない。
前記第3側面に従えば、ライダーがペダリングしていなくても、スプロケットと後輪とが常に同期して回転するため、ワンウェイクラッチが設けられる場合に比較して、モータの出力をより適切に制御できる。
【0008】
前記第1側面に従う第4側面の自転車用制御装置において、前記複数のスプロケットは、複数のリアスプロケットを含み、前記回転体は、クランク、および、フロントスプロケットの少なくとも一方を含む。
前記第4側面に従えば、前記自転車用制御装置は、リアスプロケット間でチェーンを掛け替える場合、クランクおよびフロントスプロケットの少なくとも一方の、回転位相および回転速度の少なくとも一方に応じて、モータの出力を適切に制御することができる。
【0009】
前記第1側面に従う第5側面の自転車用制御装置において、前記複数のスプロケットは、複数のフロントスプロケットまたは複数のリアスプロケットを含み、前記回転体は、前輪を含む。
前記第5側面に従えば、前記自転車用制御装置は、フロントスプロケット間またはリアスプロケット間でチェーンを掛け替える場合、前輪の回転位相および回転速度の少なくとも一方に応じて、モータの出力を適切に制御することができる。
【0010】
本発明の第6側面に従う自転車用制御装置は、自転車の推進をアシストするモータを制御する制御部を含み、ディレーラが複数のスプロケットの間においてチェーンを掛け替える変速動作を行う場合に、回転体の状態に応じて、前記制御部が前記モータの出力を制御し、前記回転体は、チェーンを含む。
前記第6側面に従えば、前記自転車用制御装置は、チェーンの状態に応じて、モータの出力を適切に制御することができる。
【0011】
前記第6側面に従う第7側面の自転車用制御装置において、前記回転体の状態は、前記チェーンの回転位相および移動速度の少なくとも一方を含む。
前記第7側面に従えば、前記自転車用制御装置は、チェーンの回転位相および移動速度の少なくとも一方に応じて、モータの出力を適切に制御することができる。
【0012】
前記第1〜第7側面のいずれか1つに従う第8側面の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記変速動作を行う場合、前記モータの出力を低下させる。
前記第8側面に従えば、変速動作を行う場合に、モータの出力が低下するので、変速を行いやすくなる。
【0013】
前記第8側面に従う第9側面の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記変速動作を行う場合、前記変速動作を開始してから前記回転体の位相変化量が所定値に達するまで前記モータの出力を低下させる。
前記第9側面に従えば、回転体の位相変化量が所定値に達するまではモータの出力が低下したままになるので、変速を行いやすくなる。
【0014】
前記第9側面に従う第10側面の自転車用制御装置において、前記所定値は、前記複数のスプロケットに設けられる変速領域に関する情報に応じて決定される。
前記第10側面に従えば、スプロケット間でチェーンを掛け替えるために必要な回転体の位相変化量を適切に設定することができる。
【0015】
前記第10側面に従う第11側面の自転車用制御装置において、前記所定値は、前記回転体の回転速度と前記複数のスプロケットの回転速度との比に応じて決定される。
前記第11側面に従えば、回転体の回転速度と複数のスプロケットの回転速度とが異なっていても、スプロケット間でチェーンを掛け替えるために必要な回転体の位相変化量を適切に設定することができる。
【0016】
前記第10または第11側面に従う第12側面の自転車用制御装置において、前記変速動作は、前記ディレーラによるシフトアップのための第1変速動作を含み、前記変速領域は、前記第1変速動作のための第1変速領域を含み、前記所定値は、前記第1変速動作に対応する第1所定値を含み、前記制御部は、前記第1変速動作を行う場合、前記変速動作を開始してから前記回転体の位相変化量が前記第1所定値に達するまで前記モータの出力を低下させる。
前記第12側面に従えば、シフトアップ変速を行う場合に、モータの出力を適切に制御することができる。
【0017】
前記第10〜第12側面のいずれか1つに従う第13側面の自転車用制御装置において、前記変速動作は、前記ディレーラによるシフトダウンのための第2変速動作を含み、前記変速領域は、前記第2変速動作のための第2変速領域を含み、前記所定値は、前記第2変速動作に対応する第2所定値を含み、前記制御部は、前記第2変速動作を行う場合、前記変速動作を開始してから前記回転体の位相変化量が前記第2所定値に達するまで前記モータの出力を低下させる。
前記第13側面に従えば、シフトダウン変速を行う場合に、モータの出力を適切に制御することができる。
【0018】
前記第8側面に従う第14側面の自転車用制御装置において、前記制御部は、前記変速動作を行う場合、前記変速動作を開始してから所定期間にわたり前記モータの出力を低下させる。
前記第14側面に従えば、変速動作の開始から所定期間の間モータの出力を低下させることにより、ディレーラが複数のスプロケットの間においてチェーンを掛け替えやすくすることができる。
【0019】
前記第14側面に従う第15側面の自転車用制御装置において、前記所定期間は、前記回転体の回転速度と、前記複数のスプロケットに設けられる変速領域に関する情報とに応じて決定される。
前記第15側面に従えば、スプロケット間でチェーンを掛け替えるために必要な所定期間に設定することができる。
【0020】
前記第15側面に従う第16側面の自転車用制御装置において、前記所定期間は、前記回転体の回転速度と前記複数のスプロケットの回転速度との比に応じて決定される。
前記第16側面に従えば、回転体の回転速度と複数のスプロケットの回転速度とが異なっていても、スプロケット間でチェーンを掛け替えるために必要な所定期間を設定することができる。
【0021】
前記第15または第16側面に従う第17側面の自転車用制御装置において、前記変速動作は、前記ディレーラによるシフトアップのための第1変速動作を含み、前記変速領域は、前記第1変速動作のための第1変速領域を含み、前記所定期間は、前記第1変速動作に対応する第1所定期間を含み、前記制御部は、前記第1変速動作を行う場合、前記変速動作を開始してから前記第1所定期間に達するまで前記モータの出力を低下させる。
前記第17側面に従えば、シフトアップ変速を行う場合に、モータの出力を適切に制御することができる。
【0022】
前記第15〜第17側面のいずれか1つに従う第18側面の自転車用制御装置において、前記変速動作は、前記ディレーラによるシフトダウンのための第2変速動作を含み、前記変速領域は、前記第2変速動作のための第2変速領域を含み、前記所定期間は、前記第2変速動作に対応する第2所定期間を含み、前記制御部は、前記第2変速動作を行う場合、前記変速動作を開始してから前記第2所定期間に達するまで前記モータの出力を低下させる。
前記第18側面に従えば、シフトダウン変速を行う場合に、モータの出力を適切に制御することができる。
【0023】
前記第10〜第13および第15〜第18側面のいずれか1つに従う第19側面の自転車用制御装置は、前記変速領域に関する情報を記憶する記憶部を含む。
前記第19側面に従えば、記憶部に記憶された変速領域に関する情報に基づいて、スプロケット間でチェーンを掛け替えるために必要な回転体の位相変化量、または、所定期間を決定できる。
【0024】
前記第19側面に従う第20側面の自転車用制御装置において、前記変速領域に関する情報は、前記変速領域の周方向の間隔に関する情報および前記変速領域の数に関する情報の少なくとも一方を含む。
前記第20側面に従えば、変速領域の周方向の間隔に関する情報および変速領域の数に関する情報の少なくとも一方により、スプロケット間でチェーンを掛け替えるために必要な回転体の位相変化量、または、所定期間を決定できる。
【0025】
前記第19または第20側面に従う第21側面の自転車用制御装置において、前記記憶部は、前記変速領域に関する情報を変更可能に記憶している。
前記第20側面に従えば、記憶部に記憶された変速領域に関する情報を変更できるため、スプロケットを交換しても、モータの出力を適切に制御することができる。
【0026】
前記第19または第20側面に従う第22側面の自転車用制御装置において、前記複数のスプロケットは、第1のスプロケットと、第2のスプロケットとを含み、前記変速領域に関する情報は、第1のスプロケットの前記変速領域に関する第1の情報と、第2のスプロケットの前記変速領域に関する第2の情報とを含み、前記制御部は、前記第1の情報および前記第2の情報を選択的に用いる。
前記第21側面に従えば、第1のスプロケットにチェーンを移動させる場合、第2のスプロケットにチェーンを移動させる場合のそれぞれにおいて、モータの出力を適切に制御することができる。
【0027】
前記第1〜第22側面のいずれか1つに従う第23側面の自転車用制御装置において、前記回転体の回転位相および回転速度の少なくとも一方を検出する第1検出部をさらに含む。
前記第22側面に従えば、第1検出部によって、回転体の回転位相および回転速度の少なくとも一方を検出できる。
【発明の効果】
【0028】
本自転車用制御装置によれば、自転車の推進をアシストするモータの出力を適切に制御できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施形態)
図1に示すように、自転車10は、自転車本体12、車輪16、駆動機構22、自転車用コンポーネント32、モータ40、ハウジング44、自転車用制御装置46、ワンウェイクラッチ52A、ワンウェイクラッチ52B、回転体54、および、複数のスプロケット56を含む。自転車用コンポーネント32は、バッテリ32A、チェーン32B、操作部32C、および、ディレーラ34のうちの少なくともいずれか1つを含む。自転車用制御装置46は、制御部48を含む。自転車用制御装置46は、記憶部50をさらに含むことが好ましい。
【0031】
自転車本体12は、フレーム14、フレーム14に接続されるフロントフォーク12A、および、フロントフォーク12Aにステム12Bを介して着脱可能に接続されるハンドルバー12Cを備えている。フロントフォーク12Aは、フレーム14に支持される。フレーム14は、ヘッドチューブ14A、トップチューブ14B、ダウンチューブ14C、シートチューブ14D、シートステー14E、チェーンステー14F、および、リアエンド14Gを含む。
【0032】
車輪16は、前輪18および後輪20を含む。前輪18の車軸18Aは、フロントフォーク12Aの端部に接続される。後輪20の車軸20Aは、フレーム14のリアエンド14Gに接続される。
【0033】
駆動機構22は、クランク24およびペダル26を含む。クランク24は、クランク軸24Aおよびクランクアーム24Bを含む。駆動機構22は、ペダル26に加えられた人力駆動力を後輪20に伝達する。駆動機構22は、クランク軸24Aにワンウェイクラッチ52Aを介して結合されたフロント回転体28を含む。ワンウェイクラッチ52Aは、クランク24が前転した場合に、フロント回転体28を前転させ、クランク24が後転した場合に、フロント回転体28を後転させないように構成される。
【0034】
フロント回転体28は、複数のフロントスプロケット28Aを含む。本実施形態では、フロント回転体28は、2つのフロントスプロケット28Aを含むが、フロントスプロケット28Aは2つに限られず、1つのみ含んでいてもよい。駆動機構22は、例えば、チェーン32Bを介して、クランク24の回転を後輪20に結合されるリア回転体30に伝達するように構成される。
【0035】
図示される例では、複数のスプロケット56は、複数のリアスプロケット30Aを含む。リア回転体30は、リアスプロケット30Aを含む。リア回転体30と後輪20との間の動力伝達経路には、ワンウェイクラッチ52Bが設けられている。ワンウェイクラッチ52Bは、リア回転体30が前転した場合に、後輪20を前転させ、後輪20が後転した場合に、リア回転体30を後転させないように構成される。フロント回転体28に結合されたワンウェイクラッチ52Aおよびリア回転体30に結合されたワンウェイクラッチ52Bの少なくとも一方は、省略されてもよい。
【0036】
操作部32Cは、ユーザが操作可能に構成される。操作部32Cは、第1操作部32D、および、第2操作部32Eを含む。第1操作部32Dは、自転車10のディレーラ34の変速段を変更するように構成され、変速信号を送信する。第2操作部32Eは、自転車10の推進をアシストするモータ40のモードを変更するように構成される。モータ40のモードの変更は、人力駆動力をアシストするアシストモードの変更、および、アシストモードとウォークモードとを切り替える変更の少なくとも一方を含む。これら操作部32Cは、自転車本体12のハンドルバー12Cに取り付けられる。操作部32Cは、自転車用制御装置46の制御部48と通信可能である。操作部32Cは、制御部48と有線または無線によって通信可能に接続されている。操作部32Cは、例えばPLC(Power Line Communication)によって制御部48と通信可能である。ユーザによって操作部32Cが操作されることによって、操作部32Cは、制御部48に出力信号を送信する。第1操作部32Dは、ディレーラ34の変速段を変更するための1つ以上の操作部材を含む。操作部32Cは、モータ40のモードを変更するための1つ以上の操作部材を含む。各操作部材は、プッシュスイッチ、レバー式スイッチ、または、タッチパネルによって構成される。操作部32Cは、例えば操作部材(図示略)と、操作部材の動きを検出するセンサ(図示略)と、センサの出力信号に応じて、制御部48と通信を行う電気回路(図示略)とを含む。
【0037】
図2に示されるように、第1操作部32Dは、リアディレーラ38を操作するためのリアディレーラ操作部32Gと、フロントディレーラ36を操作するためのフロントディレーラ操作部32Fとを含むことが好ましい。フロントディレーラ操作部32Fおよびリアディレーラ操作部32Gは、シフトアップのためのシフトアップ操作部32Hと、シフトダウンのためのシフトダウン操作部32Iとを、それぞれ含むことが好ましい。リアディレーラ38と、フロントディレーラ36とは共通の操作部32Cによって操作されてもよい。
【0038】
ディレーラ34は、複数のスプロケット56の間においてチェーン32Bを掛け替える変速動作を行う。ディレーラ34は、フロントディレーラ36およびリアディレーラ38の少なくとも一方を含む。
図1に示される例では、ディレーラ34は、フロントディレーラ36およびリアディレーラ38を含む。フロントディレーラ36は、複数のフロントスプロケット28Aの間でチェーン32Bを移動させる。
【0039】
図3に示されるように、複数のスプロケット56は、第1のスプロケット56Aと、第2のスプロケット56Bとを含む。第1のスプロケット56Aは、複数のスプロケット56のうちの任意の1つである。第2のスプロケット56Bは、複数のスプロケット56のうちの第1のスプロケット56A以外の任意の1つである。リアディレーラ38は、複数のリアスプロケット30Aの間でチェーン32Bを移動させる。チェーン32Bが巻き掛けられたフロントスプロケット28Aとリアスプロケット30Aとにより、変速比rが決定される。リアディレーラ38の変速段は、各リアスプロケット30Aに対応する。リアディレーラ38は、自転車10のフレーム14に取り付けられる第1ベース部材38A、第1ベース部材38Aに連結される第2ベース部材38C、第2ベース部材38Cに対して移動可能な可動部材38F、第2ベース部材38Cと可動部材38Fとを連結する連結部材38B、および、アクチュエータ38Dを備える。リアディレーラ38は、平行リンク機構を有する。アクチュエータ38Dは、例えば電気モータである。アクチュエータ38Dは、バッテリ32A(
図1参照)と電気的に接続されて、バッテリ32Aから電力が供給される。
【0040】
第1ベース部材38Aは、ディレーラハンガ14Hに取り付けられる。第2ベース部材38Cは、ハブ軸の軸線に平行な回転軸線まわりに回転可能に第1ベース部材38Aに連結される。第2ベース部材38Cは、連結部材38Bの一端に連結される。可動部材38Fは、連結部材38Bの他端に連結される。可動部材38Fは、チェーンガイド38Eを支持する。チェーンガイド38Eは、ハブ軸に平行な回転軸まわりにピポット可能に可動部材38Fに連結されている。チェーンガイド38Eには、一対のプーリ30Bが取り付けられる。一対のプーリ30Bにはチェーン32Bが巻き掛けられる。
【0041】
アクチュエータ38Dは、リアディレーラ38を動作させて、変速比rを変更する。具体的には、アクチュエータ38Dは、連結部材38Bおよび可動部材38Fを第1ベース部材38Aに対して移動させる。リアディレーラ38は、アクチュエータ38Dの駆動により、複数のリアスプロケット30Aの間でチェーン32Bを掛け替え、変速比rを変更する。変速動作は、ディレーラ34によるシフトアップのための第1変速動作を含む。変速動作は、ディレーラ34によるシフトダウンのための第2変速動作を含む。
【0042】
図1に示されるように、フロントディレーラ36は、複数のフロントスプロケット28Aの間でチェーン32Bを移動させる。チェーン32Bが巻き掛けられたフロントスプロケット28Aとリアスプロケット30Aとにより、変速比rが決定される。フロントディレーラ36の変速段は、各フロントスプロケット28Aに対応する。フロントディレーラ36は、自転車10のフレーム14に取り付けられるベース部材、ベース部材に対して移動可能な可動部材、ベース部材と可動部材とを連結する連結部材、および、アクチュエータを備える(いずれも図示略)。フロントディレーラ36は、平行リンク機構を有する。アクチュエータは、例えば電気モータである。アクチュエータは、バッテリ32Aと電気的に接続されて、バッテリ32Aから電力が供給される。ベース部材は、シートチューブ14Dに取り付けられる。可動部材は、チェーンガイドを含む。アクチュエータは、フロントディレーラ36を動作させて、変速比rを変更する。具体的には、フロントディレーラ36は、アクチュエータの駆動により、複数のフロントスプロケット28Aの間でチェーン32Bを掛け替え、変速比rを変更する。
【0043】
フロントディレーラ36は、フロントディレーラ36の変速段に関する情報を制御部48に出力する。リアディレーラ38は、リアディレーラ38の変速段に関する情報を制御部48に出力する。制御部48は、フロントディレーラ36およびリアディレーラ38からの変速段に関する情報を受け取ることによって、現在の変速段から変速比を演算することができる。なお、フロントディレーラ36は省略されてもよい。フロントディレーラ36が省略された場合、フロントスプロケット28Aは1つのみ設けられる。
【0044】
図4に示されるように、リアスプロケット30Aは、変速領域30Cおよび歯30Fを含む。図示される例では、リアスプロケット30Aには42個の歯30Fが設けられる。別の例では、リアスプロケット30Aには42個よりも少ない数、または、42個よりも多い数の歯30Fが設けられてもよい。変速領域30Cは、リアスプロケット30Aのうち直径の小さいリアスプロケット30Aに対向する面を含む第1側面に形成される凹部を含む。凹部はリアスプロケット30Aの外周部に形成され、歯30Fの側面を含んでいてもよい。変速領域30Cは、相互に隣接するリアスプロケット30A間で、チェーンを円滑に移動させるために形成されている。変速領域30Cは、第1変速動作のための第1変速領域30Dを含む。変速領域30Cは、第2変速動作のための第2変速領域30Eを含む。第1変速領域30Dは、ディレーラ34のシフトアップ動作においてチェーン32Bをリアスプロケット30Aからスムーズに離脱させるために、リアスプロケット30Aに1または複数個設けられる。第2変速領域30Eは、ディレーラ34のシフトダウン動作において、チェーン32Bをリアスプロケット30Aからスムーズに離脱させるために、リアスプロケット30Aに1または複数個設けられる。
【0045】
複数の第1変速領域30Dは、例えば、リアスプロケット30Aの回転軸心まわりに等間隔に設けられる。図示される例では、第1変速領域30Dは5個設けられており、第1変速領域30Dの間の角度は72°である。第2変速領域30Eは5個設けられており、第2変速領域30Eの間の角度は72°である。なお、フロントスプロケット28Aも、リアスプロケット30Aと同様の構造である。第1変速領域30Dと第2変速領域30Eとは、リアスプロケット30Aの回転軸心まわりに交互に設けられることが好ましい。また、第1変速領域30Dおよび第2変速領域30Eの数は同数でなくてもよい。
【0046】
図1に示される回転体54は、複数のスプロケット56と同期して回転し、かつ、複数のスプロケット56の回転軸心とは異なる回転軸心まわりに回転可能である。図示される例では、複数のスプロケット56の回転軸心は、後輪20の車軸20Aの軸心に等しい。回転体54の回転軸心は、クランク軸24Aの回転軸心に等しい。好ましくは、回転体54は、クランク24、および、フロントスプロケット28Aの少なくとも一方を含む。
【0047】
図2に示される制御部48は、自転車10の推進をアシストするモータ40を制御する。自転車用制御装置46は、第1検出部58を含む。第1検出部58は、回転体54の回転位相および回転速度の少なくとも一方を検出する。第1検出部58と自転車用制御装置46の制御部48とは、例えば、電気ケーブルで接続される。自転車10は、人力駆動力を検出する第2検出部60、車速を検出する第3検出部62を含むことが好ましい。第2検出部60は、例えばクランク軸から回転体54までの駆動力伝達経路に設けられる。第2検出部60は、磁歪センサ、歪センサ、などを含む。第3検出部62は、例えばフレーム14に設けられて、車輪16に設けられる磁石を検出するリードスイッチ、磁界センサなどを含む。第2検出部60および第3検出部62と、自転車用制御装置46の制御部48とは、例えば、電気ケーブルで接続される。制御部48は、第2検出部60および第3検出部62の少なくとも一方の出力信号に応じて、モータ40を制御する。例えば、制御部48は、アシストモードにおいて、車速が予め定める速度以下の場合に、人力駆動力とモータ40からの補助力との比率が、所定の比率になるようにモータ40を制御する。
【0048】
第1検出部58は、クランク24の回転角度を検出する。第1検出部58は、自転車10のフレーム14またはハウジング44に取り付けられる。第1検出部58は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石が、クランク軸24Aまたはクランク軸24Aからフロント回転体28までの間の動力伝達経路に設ける。磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを用いることによって、1つのセンサで、クランク24の回転速度およびクランク24の回転角度を検出することができ、構成および組立を簡略化することができる。第1検出部58は、クランク24の回転角度に加えて、クランク24の回転速度を検出することもできる。
【0049】
第1検出部58は、磁気センサに代えて、クランク軸24Aまたはクランクアーム24Bに設けられる加速度センサを含んでいてもよい。加速度センサの出力は、加速度センサの傾斜角度を含む。制御部48は、加速度センサの傾斜角度に応じてクランク24の回転角度およびクランク24の回転速度の少なくとも一方を演算する。第1検出部58、第2検出部60、第3検出部62は、それぞれ無線通信によって、制御部48に出力信号を送信してもよい。
【0050】
モータ40は、ペダル26から後輪20までの人力駆動力の伝達経路に回転を伝達するように設けられる。モータ40は、自転車10のフレーム14、または、後輪20に設けられる。一例では、モータ40は、クランク軸24Aからフロント回転体28までの動力伝達経路に結合される。本実施形態では、モータ40および駆動回路42は、同一のハウジング44に設けられる。ハウジング44は、クランク24を回転可能に支持し、フレーム14に取り付けられている。モータ40は、電気モータを含む。モータ40は、いわゆるブラシレスモータである。駆動回路42は、インバータ回路を含み、制御部48の指令に基づいて、バッテリ32Aからモータ40に供給される電力を制御する。ハウジング44には、モータ40および駆動回路42以外の構成が設けられてもよく、例えばモータ40の回転を減速して出力する減速機が設けられてもよい。
【0051】
制御部48は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部48は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。制御部48は、さらに時計を含む。制御部48は、各検出部58、60、62の出力信号に応じて各種制御を実行する。制御部48は、操作部32Cからの変速信号に応じて、フロントディレーラ36およびリアディレーラ38を制御する。
【0052】
記憶部50は、変速領域30C(
図4参照)に関する情報を記憶する。好ましくは、記憶部50は、変速領域30Cに関する情報を変更可能に記憶している。変速領域30Cに関する情報は、変速領域30Cの周方向の間隔に関する情報および変速領域30Cの数に関する情報の少なくとも一方を含む。また、記憶部50には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部50は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。制御部48および記憶部50は、例えば、ハウジング44に収容される。制御部48および記憶部50は、フレーム14に設けられてもよい。
【0053】
図5〜
図8を参照して、自転車用制御装置46によるモータ40の制御動作を説明する。ディレーラ34が複数のスプロケット56の間においてチェーン32Bを掛け替える変速動作を行う場合に、複数のスプロケット56と同期し、かつ、複数のスプロケット56の回転軸心とは異なる回転軸心まわりに回転可能な回転体54の回転位相および回転速度の少なくとも一方に応じて、制御部48は、モータ40の出力を制御する。好ましくは、制御部48は、変速動作を行う場合、モータ40の出力を低下させる。
【0054】
図5に示される回転体54の回転位相に応じてモータ40の出力を制御する動作を説明する。制御部48は、アシストモードにおいて、人力駆動力に応じてモータ40が自転車10の推進アシストを開始すると、ステップS1に移る。制御部48は、
図5のフローチャートの処理を実行しているときに、モータ40が停止すると、処理の途中であっても、
図5のフローチャートを終了する。ここでは、リアディレーラ38によって変速する場合の制御について説明する。
【0055】
ステップS1において、制御部48は、変速信号が検出され、かつ、変速可能かを判定する。変速信号は、シフトアップ信号またはシフトダウン信号を含む。変速可能とは、シフトアップ信号が検出され、現在の変速段が最小径のリアスプロケット30Aに対応する変速段ではない場合、または、シフトダウン信号が検出され、現在の変速段が最大径のリアスプロケット30Aに対応する変速段ではない場合である。ステップS1の判定結果が肯定判定の場合、制御部48は、ステップS2の処理を実行する。ステップS1の判定結果が否定判定の場合、制御部48は、ステップS1の処理を再び実行する。
【0056】
ステップS2において、制御部48は、検出された変速信号が、シフトアップ動作のための信号か否かを判定する。ステップS2の判定結果が肯定判定の場合、制御部48は、ステップS3の処理を実行する。ステップS2の判定結果が否定判定の場合、検出された変速信号は、シフトダウン動作のための信号であり、制御部48は、ステップS9の処理を実行する。
【0057】
ステップS3において、制御部48は、第1所定値を決定する。制御部48は、変速動作を行う場合、変速動作を開始してから回転体54の位相変化量が所定値に達するまでモータ40の出力を低下させる。所定値は、第1変速動作に対応する第1所定値を含む。所定値は、第2変速動作に対応する第2所定値を含む。また、所定値は、複数のスプロケット56に設けられる変速領域30Cに関する情報に応じて決定される。変速領域30Cに関する情報は、例えば、変速領域30Cの数、変速領域30Cの間の角度である。変速領域30Cの数は、第1変速領域30Dの数、第2変速領域30Eの数を含む。変速領域30Cの間の角度は、第1変速領域30Dの間の角度、第2変速領域30Eの間の角度を含む。例えば、変速領域30Cに関する情報は、第1のスプロケット56A(
図3参照)の変速領域30Cに関する第1の情報と、第2のスプロケット56B(
図3参照)の変速領域30Cに関する第2の情報とを含む。制御部48は、第1の情報および第2の情報を選択的に用いる。
【0058】
図6のテーブルに示される第1所定値に関する情報は、記憶部50に記憶される。テーブルの第1列は、チェーン32Bが巻き掛けられているフロントスプロケット28Aの歯の数を示す。テーブルの第2列は、変速動作前において、チェーン32Bが巻き掛けられているリアスプロケット30Aの歯30Fの数を示す。テーブルの第3列は、変速動作後において、チェーン32Bが巻き掛けられているリアスプロケット30Aの歯30Fの数を示す。テーブルの第4列は、変速動作前において、チェーン32Bが巻き掛けられているリアスプロケット30Aの第1変速領域30Dの数である。テーブルの第5列は、変速領域30Cの間の角度である。テーブルの第6列は、第1所定値である。
【0059】
図7のテーブルに示される第2所定値に関する情報は、記憶部50に記憶される。テーブルの第1列は、チェーン32Bが巻き掛けられているフロントスプロケット28Aの歯の数を示す。テーブルの第2列は、変速動作前において、チェーン32Bが巻き掛けられているリアスプロケット30Aの歯30Fの数を示す。テーブルの第3列は、変速動作後において、チェーン32Bが巻き掛けられているリアスプロケット30Aの歯30Fの数を示す。テーブルの第4列は、変速動作後において、チェーン32Bが巻き掛けられているリアスプロケット30Aの第2変速領域30Eの数である。テーブルの第5列は、第2変速領域30Eの間の角度である。テーブルの第6列は、第2所定値である。
【0060】
好ましくは、所定値は、回転体54の回転速度と複数のスプロケット56の回転速度との比に応じて決定される。回転体54の一例であるフロントスプロケット28Aの回転速度と、スプロケット56の一例であるリアスプロケット30Aの回転速度との比は、フロントスプロケット28Aの歯の数の逆数と、リアスプロケット30Aの歯30Fの数の逆数との比と等しい。第1変速領域30Dの間の角度は、360°を第1変速領域30Dの数で除算した角度である。第2変速領域30Eの間の角度は、360°を第2変速領域30Eの数で除算した角度である。
図6に示されるフロントスプロケット28Aの歯の数とリアスプロケット30Aの歯30Fの数との比と、第1変速領域30Dの間の角度とから、第1所定値を決定することができる。
図7に示されるフロントスプロケット28Aの歯の数とリアスプロケット30Aの歯30Fの数との比と、第2変速領域30Eの間の角度とから、第2所定値を決定することができる。第1所定値および第2所定値は、予め計算して、記憶部50に記憶しておくことが好ましいが、制御部48が計算して求めてもよい。また、フロントスプロケット28Aの回転速度とリアスプロケット30Aの回転速度との比は、フロントスプロケット28Aの歯の逆数とリアスプロケット30Aの歯の逆数との比以外から求めることができる。例えば、クランク24の回転速度と、後輪20の回転速度との比から求めることができる。
【0061】
現在の変速段に関する情報に応じて、変速動作前にどのリアスプロケット30A、および、フロントスプロケット28Aにチェーン32Bが係合しているのか分かるので、制御部48は、現在の変速段に関する情報に応じて、現在の変速段から1段シフトアップした場合に対応する第1所定値を決定する。例えば、
図6において、現在の変速段が、歯数が21個のリアスプロケット30Aに対応し、歯数が24個のフロントスプロケット28Aに対応している場合、制御部48は第1所定値を143°に設定する。
【0062】
ステップS4において、制御部48は、モータ40の出力を制限する。制御部48は、モータ40の出力トルクを低下させることが好ましい。制御部48は、例えばモータ40の出力トルクが制限値よりも大きい場合、モータ40の出力トルクを低下させる。制御部48は、人力駆動力に対する補助力の比率が、小さくなるようにモータ40の出力トルクを低下させてもよい。制御部48は、人力駆動力に対する補助力の比率が、第1の比率になるようにモータ40の出力トルクを制限してもよい。第1比率は、例えば0.1〜0.5の範囲で選ばれる。制御部48は、モータ40を停止させてもよい。
【0063】
ステップS5において、制御部48は、回転体54の回転位相の検出を開始する。制御部48は、第1検出部58が検出した回転体54の回転位相の初期値を記憶部50に記憶させる。回転体54の回転位相の初期値は、モータ40の出力が低下し始めたときの回転体54の回転位相であってもよく、モータ40の出力が制限値以下に低下したときの回転体54の回転位相を検出してもよい。同時に、制御部48は、リアディレーラ38に第1変速動作を行わせる。
【0064】
ステップS6において、制御部48は、回転体54の回転位相を検出して、回転体54の位相変化量が第1所定値に達したかを判定する。回転体54の位相変化量は、第1検出部58が検出した回転位相と、ステップS5において記憶部50に記憶させた回転位相との差により算出される。ステップS6の判定結果が肯定判定の場合、制御部48は、ステップS7の処理を実行する。ステップS6の判定結果が否定判定の場合、制御部48は、ステップS6の処理を再び実行する。
【0065】
ステップS7において、制御部48は、回転体54の回転位相の検出を終了する。
ステップS8において、制御部48は、モータ40の出力の制限を解除する。制御部48は、人力駆動力に対する補助力の比率が、モータ40の出力を低下させる前の比率になるように、人力駆動力に応じて、モータ40を制御する。そして、制御部48は、モータ40の出力を制御する動作を終了する。
【0066】
ステップS9において、制御部48は、第2所定値を決定する。第2所定値を決定する方法は、ステップS3において第1所定値を決定する方法と同様である。
ステップS10において、制御部48は、モータ40の出力を制限する。
【0067】
ステップS11において、制御部48は、回転体54の回転位相の検出を開始する。制御部48は、第1検出部58が検出した回転体54の回転位相の初期値を記憶部50に記憶させる。同時に、制御部48は、リアディレーラ38に第2変速動作を行わせる。
【0068】
ステップS12において、制御部48は、回転体54の回転位相を検出して、回転体54の位相変化量が第2所定値に達したかを判定する。回転体54の位相変化量は、第1検出部58が検出した回転位相と、ステップS11において記憶部50に記憶させた回転位相との差により算出される。ステップS12の判定結果が肯定判定の場合、制御部48は、ステップS13の処理を実行する。ステップS12の判定結果が否定判定の場合、制御部48は、ステップS12の処理を再び実行する。
【0069】
ステップS13において、制御部48は、回転体54の回転位相の検出を終了する。
ステップS14において、制御部48は、モータ40の出力の制限を解除する。そして、制御部48は、モータ40の出力を制御する動作を終了する。
【0070】
ステップS4〜S8、および、S10〜S14に示すように、制御部48は、第1変速動作を行う場合、変速動作を開始してから回転体54の位相変化量が第1所定値に達するまでモータ40の出力を低下させることができる。好ましくは、制御部48は、第2変速動作を行う場合、変速動作を開始してから回転体54の位相変化量が第2所定値に達するまでモータ40の出力を低下させることができる。
【0071】
制御部48は、回転体54の回転位相に応じてモータ40の出力を制御するのではなく、回転体54の回転速度に応じてモータ40の出力を制御してもよい。
図8に示される回転体54の回転速度に応じてモータ40の出力を制御する動作を説明する。
図8は、回転体54の回転速度を用いる点において
図5とは異なる。制御部48は、アシストモードにおいて、人力駆動力に応じてモータ40が自転車10の推進アシストを開始すると、ステップS21に移る。制御部48は、
図8のフローチャートの処理を実行しているときに、モータ40が停止すると、処理の途中であっても、
図8のフローチャートを終了する。ここでは、リアディレーラ38によって変速する場合の制御について説明する。
【0072】
ステップS21において、制御部48は、変速信号が検出され、かつ、変速可能かを判定する。ステップS21の判定結果が肯定判定の場合、制御部48は、ステップS22の処理を実行する。ステップS21の判定結果が否定判定の場合、制御部48は、ステップS21の処理を再び実行する。
【0073】
ステップS22において、制御部48は、検出された変速信号が、シフトアップ動作のための信号か否かを判定する。ステップS22の判定結果が肯定判定の場合、制御部48は、ステップS23の処理を実行する。ステップS22の判定結果が否定判定の場合、検出された変速信号は、シフトダウン動作のための信号であり、制御部48は、ステップS29の処理を実行する。
【0074】
ステップS23において、制御部48は、第1所定期間を決定する。制御部48は、変速動作を行う場合、変速動作を開始してから所定期間にわたりモータ40の出力を低下させる。所定期間は、第1変速動作に対応する第1所定期間を含む。所定期間は、第2変速動作に対応する第2所定期間を含む。また、所定期間は、回転体54の回転速度と、複数のスプロケット56に設けられる変速領域30Cに関する情報とに応じて決定される。
【0075】
図9のテーブルに示される第1所定期間に関する情報は、記憶部50に記憶される。テーブルの第1列は、チェーン32Bが巻き掛けられているフロントスプロケット28Aの歯の数を示す。テーブルの第2列は、変速動作前において、チェーン32Bが巻き掛けられているリアスプロケット30Aの歯30Fの数を示す。テーブルの第3列は、変速動作後において、チェーン32Bが巻き掛けられているリアスプロケット30Aの歯30Fの数を示す。テーブルの第4列は、変速動作後において、チェーン32Bが巻き掛けられているリアスプロケット30Aの第1変速領域30Dの数である。テーブルの第5列は、回転体54の回転速度が10rpmの場合の第1所定期間である。テーブルの第6列は、回転体54の回転速度が60rpmの場合の第1所定期間である。テーブルの第7列は、回転体54の回転速度が120rpmの場合の第1所定期間である。
【0076】
図10のテーブルに示される第2所定期間に関する情報は、記憶部50に記憶される。テーブルの第1列は、チェーン32Bが巻き掛けられているフロントスプロケット28Aの歯の数を示す。テーブルの第2列は、変速動作前において、チェーン32Bが巻き掛けられているリアスプロケット30Aの歯30Fの数を示す。テーブルの第3列は、変速動作後において、チェーン32Bが巻き掛けられているリアスプロケット30Aの歯30Fの数を示す。テーブルの第4列は、変速動作後において、チェーン32Bが巻き掛けられているリアスプロケット30Aの第2変速領域30Eの数である。テーブルの第5列は、回転体54の回転速度が10rpmの場合の第2所定期間である。テーブルの第6列は、回転体54の回転速度が60rpmの場合の第2所定期間である。テーブルの第7列は、回転体54の回転速度が120rpmの場合の第2所定期間である。
【0077】
好ましくは、所定期間は、回転体54の回転速度と複数のスプロケット56の回転速度との比に応じて決定される。回転体54の一例であるフロントスプロケット28Aの回転速度と、スプロケット56の一例であるリアスプロケット30Aの回転速度との比は、フロントスプロケット28Aの歯の数の逆数と、リアスプロケット30Aの歯30Fの数の逆数との比と等しい。
図9に示されるフロントスプロケット28Aの歯の数とリアスプロケット30Aの歯30Fの数との比と、回転体54の回転速度とから、第1所定期間を決定することができる。
図10に示されるフロントスプロケット28Aの歯の数とリアスプロケット30Aの歯30Fの数との比と、回転体54の回転速度とから、第2所定期間を決定することができる。第1所定期間および第2所定期間は、予め計算して、記憶部50に記憶しておくことが好ましいが、制御部48が計算して求めてもよい。
【0078】
現在の変速段に関する情報に応じて、変速動作前にどのリアスプロケット30A、および、フロントスプロケット28Aにチェーン32Bが係合しているのか分かるので、制御部48は、現在の変速段に関する情報および回転体54の回転速度に応じて、現在の変速段から1段シフトアップした場合に対応する第1所定期間を決定する。例えば、
図9において、現在の変速段が、歯数が21個のリアスプロケット30Aおよび歯数が24個のフロントスプロケット28Aに対応し、かつ、回転体54の回転速度が60rpmの場合、制御部48は第1所定期間を0.396秒に設定する。
【0079】
ステップS24において、制御部48は、モータ40の出力を制限する。制御部48は、モータ40の出力トルクを低下させることが好ましい。
ステップS25において、制御部48は、計測時間の計測を開始する。計測時間は、変速動作を開始してからの時間である。制御部48は、現在時刻を記憶部50に記憶させる。同時に、制御部48は、リアディレーラ38に第1変速動作を行わせる。
【0080】
ステップS26において、制御部48は、計測時間が第1所定期間に達したかを判定する。計測時間は、現在時刻と、ステップS25において記憶部50に記憶させた時刻との差により算出される。ステップS26の判定結果が肯定判定の場合、制御部48は、ステップS27の処理を実行する。ステップS26の判定結果が否定判定の場合、制御部48は、ステップS26の処理を再び実行する。
【0081】
ステップS27において、制御部48は、計測時間の計測を終了する。
ステップS28において、制御部48は、モータ40の出力の制限を解除する。そして、制御部48は、モータ40の出力を制御する動作を終了する。
【0082】
ステップS29において、制御部48は、第2所定期間を決定する。第2所定期間を決定する方法は、ステップS23において第1所定期間を決定する方法と同様である。
ステップS30において、制御部48は、モータ40の出力を制限する。
【0083】
ステップS31において、制御部48は、計測時間の計測を開始する。制御部48は、現在時刻を記憶部50に記憶させる。同時に、制御部48は、リアディレーラ38に第2変速動作を行わせる。
【0084】
ステップS32において、制御部48は、計測時間が第2所定期間に達したかを判定する。計測時間は、現在時刻と、ステップS31において記憶部50に記憶させた時刻との差により算出される。ステップS32の判定結果が肯定判定の場合、制御部48は、ステップS33の処理を実行する。ステップS32の判定結果が否定判定の場合、制御部48は、ステップS32の処理を再び実行する。
【0085】
ステップS33において、制御部48は、計測時間の計測を終了する。
ステップS34において、制御部48は、モータ40の出力の制限を解除する。そして、制御部48は、モータ40の出力を制御する動作を終了する。
【0086】
ステップS24〜S28、および、S30〜S34に示すように、制御部48は、第1変速動作を行う場合、変速動作を開始してから第1所定期間に達するまでモータ40の出力を低下させる。好ましくは、制御部48は、第2変速動作を行う場合、変速動作を開始してから第2所定期間に達するまでモータ40の出力を低下させる。
【0087】
(変形例)
上記実施形態に関する説明は本発明に従う自転車用制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う自転車用制御装置は実施形態以外に例えば以下に示される上記実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0088】
・回転体54の構成は、任意に変更可能である。
図11に示されるように、第1変形例の回転体54は、複数のスプロケット56と同期して回転し、後輪20を含む。制御部48は、リアディレーラ38が複数のスプロケット56の間においてチェーン32Bを掛け替える変速動作を行う場合に、回転体54の回転位相および回転速度の少なくとも一方に応じて、モータ40の出力を制御する。図示される例では、自転車10の複数のスプロケット56と後輪20との間の動力伝達経路には、ワンウェイクラッチ52Bが設けられている。第1変形例において、自転車10の複数のスプロケット56と後輪20との間の動力伝達経路には、ワンウェイクラッチ52Bが設けられなくてもよい。第1変形例では、第1検出部58(
図2参照)は、後輪20の回転位相および回転速度の少なくとも一方を検出するように構成される。例えば後輪20のハブシェルに環状の磁石を設け、フレーム14に第1検出部58を配置する。少なくとも人力駆動力によって自転車10が推進している場合、リアスプロケット30Aと後輪20との回転速度は等しいので、所定値は変速領域30C(
図4参照)の間の角度とすることができ、所定期間は変速比を考慮することなく決定することができる。
図12に示されるように、第2変形例の回転体54は、前輪18を含む。複数のスプロケット56は、複数のフロントスプロケット28Aまたは複数のリアスプロケット30Aを含む。第2変形例では、第1検出部58(
図2参照)は、前輪18の回転位相および回転速度の少なくとも一方を検出するように構成される。例えば前輪18のハブシェルに環状の磁石を設け、フレーム14に第1検出部58を配置する。少なくとも人力駆動力によって自転車10が推進している場合、リアスプロケット30Aと前輪18との回転速度は等しいので、リアスプロケット30Aでチェーン32Bを掛け替える場合、所定値は変速領域30C(
図4参照)の間の角度とすることができ、所定期間は変速比を考慮することなく決定することができる。
図13に示されるように、第3変形例の回転体54は、チェーン32Bを含む。制御部48は、ディレーラ34が複数のスプロケット56の間においてチェーン32Bを掛け替える変速動作を行う場合に、回転体54の状態に応じて、モータ40の出力を制御する。好ましくは、回転体54の状態は、チェーン32Bの回転位相および移動速度の少なくとも一方を含む。チェーン32Bの回転位相とは、チェーン32Bがスプロケット56に巻き掛けられた場合において、スプロケット56の周方向に沿う方向の回転位相である。チェーン32Bの回転位相および回転速度は、例えばチェーン32Bを所定の間隔で着磁しておき、着磁された部分を磁気センサによって検出することによって求めることができる。チェーン32Bは、フロントスプロケット28Aおよびリアスプロケット30Aに同期して回転するので、チェーン32Bの回転位相が分かれば、フロントスプロケット28Aおよびリアスプロケット30Aの回転位相がわかり、チェーン32Bの回転速度が分かれば、フロントスプロケット28Aおよびリアスプロケット30Aの回転速度がわかる。チェーン32Bの回転位相および回転速度から、所定値および所定期間を決定することができる。
【0089】
・
図14に示されるように、第4変形例の回転体54は、後輪20、リアスプロケット30A、および、チェーン32Bの少なくとも1つを含む。複数のスプロケット56は、複数のフロントスプロケット28Aを含む。
【0090】
・
図15に示されるように、第5変形例の自転車用制御装置46は、第4検出部64をさらに含む。第5変形例では、操作部32Cとディレーラ34とがワイヤ等で接続され、機械式変速を行う点において、
図2と異なる。第4検出部64は、操作部32C、ワイヤ、ディレーラ34の少なくともいずれかの動作を検出する。第4検出部64は、さらにディレーラ34の変速段を検出することができることが好ましい。第4検出部64と操作部32C、および、第4検出部64と制御部48とは、有線または無線で接続される。制御部48は、第4検出部64の出力に応じて、モータ40の制御を開始してもよい。
【0091】
・制御部48は、操作部32Cの操作に応じて変速を行っているが、制御部48は、例えば自転車10の速度、クランク24の回転数の少なくとも一方に応じて、自動で変速を行ってもよい。この場合、
図5のステップS1において、制御部48は、変速に関する所定の条件を満たしたか、かつ変速可能かを判定する。変速に関する所定の条件は、たとえば、クランク24のケイデンスが予め定める範囲に入っていない場合を含む。