特許第6941637号(P6941637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6941637電極用結着剤組成物、電極用塗料組成物、蓄電デバイス用電極、および蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6941637
(24)【登録日】2021年9月8日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】電極用結着剤組成物、電極用塗料組成物、蓄電デバイス用電極、および蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20210916BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20210916BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20210916BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20210916BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20210916BHJP
【FI】
   H01M4/62 Z
   H01M4/139
   H01M4/13
   H01G11/06
   H01G11/38
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-80600(P2019-80600)
(22)【出願日】2019年4月22日
(65)【公開番号】特開2020-177849(P2020-177849A)
(43)【公開日】2020年10月29日
【審査請求日】2021年2月4日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 綾乃
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 聡哉
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 恭輝
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/135353(WO,A1)
【文献】 特開2018−116820(JP,A)
【文献】 特開2015−153714(JP,A)
【文献】 特開2014−146519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/62
H01M 4/139
H01M 4/13
H01G 11/06
H01G 11/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)フッ素系ポリマー、ブタジエン系ポリマー、および熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれた一種類または二種以上のポリマー成分、(B)平均繊維径が0.5nm以上20nm以下、平均繊維長が0.5μm以上1mm以下の繊維状ナノカーボン材料、(C)セルロース材料、(D)ナノセルロース繊維、ならびに(E)水を含有する電極用結着剤組成物と、活物質と、分散剤を含有する電極用塗工液組成物であって、
上記成分(A)と(B)の質量比が(A)/(B)=60/40〜98/2であり、
上記(C)成分と(D)成分の質量比が(C)/(D)=30/70〜98/2の間であり、
上記(A)成分が上記電極塗工液組成物固形分に対して0.1質量%以上10質量%以下 、
上記(B)成分が前記電極塗工液組成物固形分に対して0.06質量%以上2質量%以下 、
上記(C)成分が前記電極塗工液組成物固形分に対して0.06質量%以上3質量%以下 であることを特徴とする、電極用塗工液組成物
【請求項2】
上記(C)セルロース材料の1質量%水溶液粘度(25℃)が500mPa・s以下であることを特徴とする請求項に記載の電極塗工液組成物
【請求項3】
請求項1または2に記載の電極用塗工液組成物を使用して製造された蓄電デバイス用電極。
【請求項4】
請求項に記載された蓄電デバイス用電極を備えることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極用結着剤組成物、該電極用結着剤組成物を用いて作製された電極用塗料組成物、該塗料組成物を用いて作製された蓄電デバイス用電極、および該電極を備える蓄電デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の駆動用電源として電圧が高く、高いエネルギー密度を有する蓄電デバイスが要求されている。特にリチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタなどは、高電圧、高エネルギー密度の蓄電デバイスとして期待されている。このように蓄電デバイスに使用される電極は、通常は、電極活物質粒子、導電材粒子、結着剤との混合物を集電体表面へ塗布・乾燥することにより製造される。蓄電デバイスの一例として、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどが挙げられる。これらの蓄電デバイスは、主に電極、非水電解液、およびセパレータなどの部材から構成される。
【0003】
このうち蓄電デバイス用電極は、例えば電極活物質と導電材を結着剤とともに有機溶剤または水に分散させた蓄電デバイス用電極合剤液を、集電体表面である金属箔上に塗布し、乾燥させることにより形成される。蓄電デバイスの特性は、使われる電極粒子材料、電解質、集電体などの主要構成材料によって大きく左右されることはもちろんであるが、添加剤として用いられる結着剤や増粘安定剤、分散剤によっても大きく左右される。
【0004】
特に、電極の場合は、電極活物質、集電体及びそれらの間に接着力を付与する結着剤が特性に与える影響が大きい。例えば、使われる活物質の量及び種類が、活物質と結合できるリチウムイオンの量を決定するために、活物質の量が多いほど、そして固有容量の大きい活物質を使用するほど、高容量の電池を得ることができる。また、結着剤が上記活物質間、及び活物質と集電体との間で優れた接着力を有する場合、電極内で電子及びリチウムイオンの移動が円滑になされ、電極の内部抵抗が減少するので、高効率の充放電が可能になる。そして、高容量電池の場合には、アノード活物質として、カーボン及び黒鉛、カーボン及びケイ素のような複合系電極が必要になり、充放電時に、活物質の体積膨脹及び収縮が大きく起こるので、上記結着剤は、優れた接着力を有するのみならず、優れた弾性を有し、電極体積が相当の膨脹及び収縮を繰り返しても、本来の接着力及び復原力を維持できるものでなければならない。あわせて、電極体積の変化がおこっても電子伝導経路を保持できるよう、導電剤を均一に分散させておくことが望ましい。
【0005】
Siを含む体積変化の大きな活物質を用いた場合、特許文献1に示すようなアクリル系のポリマーを結着剤として用いる例が報告されている。一般的に、これらの強度の高いバインダーを用いた電極は、活物質の体積変化でも電極が破断しないという特徴を持つが、電極の柔軟性を保持することが難しく、電極加工時の剥離などが起こりやすことが問題となっている。また、電極材料の分散性やレオロジーコントロール性がアクリル系のポリマーのみでは難しいと言われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2015/163302号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、体積変化の大きな活物質を用いた場合でも、高い耐久性を示す電極が得られる電極用結着剤組成物、それを用いて作製された電極用塗料組成物、それを用いて作成された蓄電デバイス用電極、およびその蓄電デバイス用電極を備える蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、所定の要件を満たすポリマー成分と繊維状ナノカーボン材料の組み合わせに着目し、当該ポリマー成分と繊維状ナノカーボン材料を一定の割合で組み合わせる事で、所期の課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
【0009】
本発明はすなわち以下の[1]ないし[]を提供するものである。
[1](A)フッ素系ポリマー、ブタジエン系ポリマー、および熱可塑性エラストマーからなる 群から選ばれた一種類または二種以上のポリマー成分、(B)平均繊維径が0.5nm以上20nm以下、平均繊維長が0.5μm以上1mm以下の繊維状ナノカーボン材料、(C)セルロース材料、(D)ナノセルロース繊維、ならびに(E)水を含有する電極用結着剤組成物と、活物質と、分散剤を含有する電極用塗工液組成物であって、
上記成分(A)と(B)の質量比が(A)/(B)=60/40〜98/2であり、
上記(C)成分と(D)成分の質量比が(C)/(D)=30/70〜98/2の間であり、
上記(A)成分が上記電極塗工液組成物固形分に対して0.1質量%以上10質量%以下 、
上記(B)成分が前記電極塗工液組成物固形分に対して0.06質量%以上2質量%以下 、
上記(C)成分が前記電極塗工液組成物固形分に対して0.06質量%以上3質量%以下 であることを特徴とする、電極用塗工液組成物
]上記(C)成分のセルロース材料の2質量%水溶液粘度(25℃)が500mPa・s以下であることを特徴とする[]に記載の電極塗工液組成物。
[1]または[2]に記載の電極用塗工液組成物を使用して製造された蓄電デバイス用電極。
][]に記載された蓄電デバイス用電極を備えることを特徴とする蓄電デバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電極用結着剤組成物は、柔軟性と体積変化に対する追随性を有しているため、本発明の電極用結着剤組成物を用いた電極は加工時に剥離しにくい特徴を有し、さらに得られる該蓄電デバイスは高い放電性能とサイクル安定性を有する。さらに、本発明の電極用結着剤組成物を用いた電極塗工液組成物は分散安定性が高く、レオロジー制御性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0012】
本発明の電極用結着剤組成物は(A)フッ素系ポリマー、ブタジエン系ポリマー、および熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる一種類または二種以上のポリマー成分と、(B)平均繊維径が0.5nm以上20nm以下、繊維長が0.5μm以上1mm以下のカーボンナノチューブ、(C)セルロース材料、(D)ナノセルロース繊維、ならびに(E)水を少なくとも含有する。
【0013】
上記フッ素系ポリマー,ブタジエン系ポリマーおよび熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる一種類または二種以上のポリマー成分としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンやパーフルオロメチルビニルエーテル及びテトラフルオロエチレンとの共重合体などのポリフッ化ビニリデン共重合体樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴムなどのフッ素系ポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのブタジエン系ポリマー、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、およびエポキシ樹脂などの熱可塑性エラストマーが使用可能であるが、これに限定されるものではない。これらのポリマー成分は単独で又は二種類以上の併用、あるいは二種類以上の樹脂複合型を使用してもよい。これらのポリマー成分は水溶性及び/又は水分散性を有する高分子化合物が好ましい。
【0014】
(B)繊維状ナノカーボン材料
上記繊維状ナノカーボン材料は、平均繊維径が0.5nm以上20nm以下、平均繊維長が0.5μm以上1mm以下の繊維状ナノカーボン材料から構成されることが特徴である。平均繊維径が0.5nm未満の場合、後述する繊維状ナノカーボン材料の分散体の粘度が高くなりすぎるため、電極用塗工組成物の調製が困難となる可能性があり、20nmを超える場合は、繊維状ナノカーボン材料の柔軟性が低下するため作製される電極合材層の耐久性が低下し、電池とした際のサイクル特性が低下する 可能性がある。繊維長が0.5μm未満の場合、得られる電極合材層が十分な耐久性が得られない可能性があり、得られる電池のサイクル寿命が低下する可能性がある。また繊維長が1mmを超える場合は繊維状ナノカーボン材料の分散体のレオロジー制御が困難となる可能性がある。上記平均繊維長および平均繊維幅は、例えば透過電子顕微鏡写真、走査型プローブ型顕微鏡写真で無作為に選んだ繊維状ナノカーボン材料100個の長軸径を測定し、その算術平均として算出される個数平均粒子径として算出できる。上記繊維状ナノカーボン材料の例としては、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)などが挙げられ、添加量に対する効果の点で、SWCNTが好適に使用することができる。(B)成分としては、上記化合物を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0015】
上記繊維状ナノカーボン材料は、所定の媒体に分散された状態で用いることが好ましい。上記分散体は原料となる繊維状ナノカーボン材料を公知の手法でナノサイズまで媒体中に分散させることで作製される。媒体については通常、水が用いられるが、アルコール、ケトン系溶媒などの極性溶媒、またはそれらの極性有機溶媒と水の混合溶媒も使用できる。
【0016】
上記繊維状ナノカーボン材料分散体は、(C)成分であるセルロース材料および(D)成分であるナノセルロース繊維を分散剤、レオロジー制御剤として添加することでより効率的に分散体を得ることができる。
【0017】
セルロース材料の例としては、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びそのアルカリ金属塩、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセルロース類が使用できる。中でも特にカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩が特に好適に使用することができる。また、ナノセルロース繊維の例としては、例えば特許5626828号、特許5921960号に記載のようなセルロースナノファイバーが特に好適に使用することができる。上記繊維状ナノカーボン材料分散体の製造装置としては、例えばジェットミル、高圧分散装置、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。
【0018】
カルボキシメチルセルロース塩としては、粘度の低いものを用いることで、上記ナノセルロース繊維と組み合わせたときに、より優れた分散性を付与でき、レオロジー制御が容易となるほか、繊維状ナノカーボンの機能を向上させることができるため好ましい。詳細には、カルボキシメチルセルロース塩の2質量%水溶液粘度が500mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは100以下mPa・s以下でもよい。1質量%水溶液粘度の下限としては、例えば5mPa・s以上でもよい。
【0019】
ここで、カルボキシメチルセルロース塩の2質量%水溶液粘度は、次のようにして測定される。すなわち、カルボキシメチルセルロース塩 (約4.4g)を共栓付き300ml三角フラスコに入れて精秤する。ここに、計算式「試料(g)×(98−水分量(質量%)/2)」により算出される量の水を加えて12時間静置し、さらに5分間混合する。得られた溶液を用いて、単一円筒型回転粘度計を用いてJIS Z8803に準じて25℃における粘度を測定する。
【0020】
上記(C)セルロース材料および(D)ナノセルロース繊維の質量比は、(C)/(D)=30/70〜98/2が好ましく、50/50〜90/10がより好ましい。上記質量比が30/70未満の場合、、繊維状ナノカーボン材料分散体の粘度、チクソ性が高くなりすぎるために電極用塗料組成物の塗工制御が難しくなるおそれがあり、上記質量比が90/10を超える場合、、繊維状ナノカーボン材料の分散性が低下するおそれがある。
【0021】
本発明の電極用結着剤組成物は、上記(A)ポリマー成分と(B)繊維状ナノカーボン材料の質量比が(A)/(B)=60/40〜98/2である。上記質量比が60/40未満の場合、電極合材層の柔軟性、結着性が低下するおそれや、電極用塗工液組成物の粘度が非常に高くなり、電極形成に不具合が発生するおそれがある。また、上記質量比が98/2を超える場合、電極合材層の密着性が低下するおそれや、電極の抵抗が上昇するため電池特性の低下につながるおそれがある。
【0022】
繊維状ナノカーボン材料に対する上記(C)セルロース材料および(D)ナノセルロース繊維の添加量の合計量は、繊維状ナノカーボン100質量部に対して5質量部以上150質量部以下が好ましい。上記添加量の範囲内においては、繊維状ナノカーボン材料の分散性、分散安定性が向上し、また電極を作製するための電極用塗工組成物の粘度を適度に調整することが可能となり、電極作製が容易となる。
【0023】
本発明の電極塗工液組成物は、上記電極用結着剤組成物、後述する活物質、導電助剤、および分散剤を含有する。本発明の電極塗工液組成物において、(A)ポリマー成分が上記電極塗工液組成物固形物質量に対して0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。(A)ポリマー成分が上記範囲内である場合、電極合材層の結着性と電極の電子伝導性が両立できるという優れた点がある。また、(B)繊維状ナノカーボン材料は、電極塗工液組成物固形物に対して0.06質量%以上2質量%以下であることが好ましい。(B)繊維状ナノカーボン材料の含有量が上記範囲内である場合、電極塗工液組成物のレオロジー特性、および電極合材層の結着性と電極の電子伝導性が両立できるという優れた点がある。さらに、(C)セルロース材料が前記電極塗工液組成物固形物に対して0.06質量%以上3質量%以下であることが好ましい。(C)セルロース材料の含有量が上記範囲内である場合、電極塗工液組成物のレオロジー特性、および電極の電子伝導性が両立できるという優れた点がある。また、上記分散剤と電極用結着剤組成物の合計量は、電極塗工液組成物固形分に対し0.5質量%以上10質量%以下含有することが好ましい。用いる活物質の性質にもよるが、一般的に含有量が上記範囲の場合、活物質や導電助剤の分散性に優れ、適切なチクソ性を有する電極塗工液組成物を得ることができる。上記含有量は1質量%以上が好ましく1.5質量%以上がより好ましい。また、8質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0024】
本発明の電極用塗工液組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で上記(C)成分、(D)成分とは別に分散剤が添加される。上記分散剤は、分散機能を有する添加剤が一種以上含まれていることが好ましい。上記分散機能を有する添加剤としては公知のものを使用することができ、特に制限されないが具体的には、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びそのアルカリ金属塩、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロースなどのセルロース類;特許5626828号、特許5921960号に記載のような化学変性セルロースナノファイバーのようなセルロースナノファイバー類; ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダなどのポリカルボン酸系化合物; ポリビニルピロリドンなどのビニルピロリドン構造を有する化合物; ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリルアマイド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、アルギン酸ソーダ、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、カンテン、デンプンなどから選択された1 種又は2 種以上が使用可能である。なかでも、カルボキシメチルセルロース塩が好適に使用できる。
【0025】
本発明の電極用塗工液組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で導電助剤が添加される。該導電助剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば使用することができる。通常、アセチレンブラックやケッチンブラック等のカーボンブラックが使用されるが、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛など)、人造黒鉛、カーボンウイスカー、炭素繊維や金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金等)粉末、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料でもよい。これらは1 種又は2 種以上の混合物として使用することができる。その添加量は活物質量に対して0.1〜30重量%が好ましく、特に0.2〜20重量%が好ましい。なお、本発明の結着剤組成物の構成成分である繊維状ナノカーボン材料は導電助剤としても機能することができる。
【0026】
なお、本発明の蓄電デバイスの電極用塗工液組成物は、上記電極材料の混合の方法・順序等は特に限定されず、例えば、導電助剤と分散剤と結着剤組成物をあらかじめ混合して用いる事も可能である。組成物の混合・分散処理に用いる混合・分散装置としては、特に限定されず、例えば、ホモディスパー、プラネタリーミキサー、プロペラミキサー、ニーダー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、コロイドミル、ビーズミル、サンドミル、高圧ホモジナイザー等を用いることができる。
【0027】
本発明の蓄電デバイスとしては、公知の蓄電デバイスを挙げることができるが、特に限定されないが具体的にはリチウム二次電池、リチウムイオンキャパシタ等が挙げられる。
【0028】
上記リチウム二次電池の正極に使用する正極活物質としては、リチウムイオンの挿入、脱離が可能であるものであれば、特に制限されることはない。例としては、CuO、CuO、MnO、MoO、V、CrO、MoO、Fe、Ni、CoO等の金属酸化物、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiFePO等のリチウムと遷移金属との複合酸化物や、TiS、MoS、NbSe等の金属カルコゲン化物、ポリアセン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子化合物等が挙げられる。
【0029】
上記の中でも、一般に高電圧系と呼ばれる、コバルト、ニッケル、マンガン等の遷移金属から選ばれる1種以上とリチウムとの複合酸化物がリチウムイオンの放出性や、高電圧が得られやすい点で好ましい。コバルト、ニッケル、マンガンとリチウムとの複合酸化物の具体例としては、LiCoO、LiMnO、LiMn、LiNiO、LiNiCo(1−x)、LiMnNiCo(a+b+c=1)などが挙げられる。
【0030】
また、これらのリチウム複合酸化物に、少量のフッ素、ホウ素、アルミニウム、クロム、ジルコニウム、モリブデン、鉄などの元素をドーブしたものや、リチウム複合酸化物の粒子表面を、炭素、MgO、Al、SiO等で表面処理したものも使用できる。上記正極活物質は2種類以上を併用することも可能である。
【0031】
上記リチウム二次電池の負極に使用する負極活物質としては、金属リチウム又はリチウムイオンを挿入/脱離することができるものであれば公知の活物質を特に限定なく用いることができる。たとえば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素などの炭素材料を用いることができる。また、金属リチウムや合金、スズ化合物などの金属材料、リチウム遷移金属窒化物、結晶性金属酸化物、非晶質金属酸化物、ケイ素化合物、導電性ポリマー等を用いることもでき、具体例としては、LiTi12、NiSi等が挙げられる。
【0032】
本発明の蓄電デバイスとして、例えば電気二重層キャパシタ用電極に用いる電極活物質としては、通常、炭素の同素体が用いられる。炭素の同素体の具体例としては、活性炭、ポリアセン、カーボンウイスカー及びグラファイト等が挙げられ、これらの粉末または繊維を使用することができる。好ましい電極活物質は活性炭であり、具体的にはフェノール樹脂、レーヨン、アクリロニトリル樹脂、ピッチ、およびヤシ殻等を原料とする活性炭を挙げることができる。
【0033】
上記リチウムイオンキャパシタ用電極に用いる電極活物質には、リチウムイオンキャパシタ用電極の正極に用いる電極活物質としては、リチウムイオンと、例えばテトラフルオロボレートのようなアニオンとを可逆的に担持できるものであれば良い。具体的には、通常、炭素の同素体が用いられ、電気二重層キャパシタで用いられる電極活物質が広く使用できる。
【0034】
上記リチウムイオンキャパシタ用電極の負極に用いる電極活物質は、リチウムイオンを可逆的に担持できる物質である。具体的には、リチウムイオン二次電池の負極で用いられる電極活物質が広く使用できる。好ましくは、黒鉛、難黒鉛化炭素等の結晶性炭素材料、上記正極活物質としても記載したポリアセン系物質(PAS)等を挙げることができる。これらの炭素材料及びPASは、フェノール樹脂等を炭化させ、必要に応じて賦活され、次いで粉砕したものが用いられる。
【0035】
本発明の電極塗工液組成物における電極活物質の含有量は、特に制限されないが全固形分100質量%中60質量%以上97質量%以下である。
【0036】
本発明の蓄電デバイスに使用される電極活物質の集電体としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば何でも使用可能である。例えば、正極用集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅等の表面を、カーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。また、負極用集電体としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金等の他に、接着性、導電性、耐酸化性向上の目的で、銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理したものを用いることができる。これらの集電体材料は表面を酸化処理することも可能である。また、その形状については、フォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされた物、ラス体、多孔質体、発泡体等の成形体も用いられる。厚みは特に限定はないが、1〜100μmのものが通常用いられる。
【0037】
本発明の蓄電デバイスの電極は、例えば電極活物質、導電助剤、電極活物質の集電体、及び電極活物質並びに導電助剤を集電体に結着させる結着剤等を混合してスラリー状の電極材料を調製し、集電体となるアルミ箔或いは銅箔等に塗布して分散媒を揮発させることにより製造することができる。
【0038】
上記電極材料の混合の方法・順序等は特に限定されず、例えば、活物質と導電助剤は予め混合して用いることが可能であり、その場合の混合には、乳鉢、ミルミキサー、遊星型ボールミル又はシェイカー型ボールミルなどのボールミル、メカノフュージョン等を用いることができる。
【0039】
本発明の蓄電デバイスに使用するセパレータは、通常の蓄電デバイスに用いられるセパレータを特に限定なしに使用でき、その例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン等よりなる多孔質樹脂、セラミック、不織布などが挙げられる。
【0040】
本発明の蓄電デバイスに使用する電解液は、通常の蓄電デバイスに用いられる電解液であればよく、有機電解液およびイオン液体等の一般的なものを使用することができる。本発明の蓄電デバイスに使用する電解質塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCl、LiBr、LiCFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiI、LiAlCl、NaClO、NaBF、NaI等を挙げることができ、特に、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsFなどの無機リチウム塩、LiN(SO2x+1)(SO2y+1)で表される有機リチウム塩を挙げることができる。ここで、xおよびyは0又は1〜4の整数を表し、また、x+yは2〜8である。有機リチウム塩としては、具体的には、LiN(SOF)、LiN(SOCF)(SO)、LiN(SOCF)(SO)、LiN(SOCF)(SO)、LiN(SO、LiN(SO)(SO)、LiN(SO)(SO)等が挙げられる。中でも、LiPF、LiBF、LiN(CFSO、LiN(SOF)、LiN(SOなどを電解質
に使用すると、電気特性に優れるので好ましい。上記電解質塩は1種類用いても2種類以上用いても良い。このようなリチウム塩は、通常、0.1〜2.0moL/L、好ましくは0.3〜1.5moL/Lの濃度で、電解液に含まれていることが望ましい。
【0041】
本発明の蓄電デバイスに使用する電解質塩を溶解させる有機溶媒としては、蓄電デバイスの非水電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されず、例えば、カーボネート化合物、ラクトン化合物、エーテル化合物、スルホラン化合物、ジオキソラン化合物、ケトン化合物、ニトリル化合物、ハロゲン化炭化水素化合物等を挙げることができる。詳しくは、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレングリコールジメチルカーボネート、プロピレングリコールジメチルカーボネート、エチレングリコールジエチルカーボネート、ビニレンカーボネート等のカーボネート類、γ−ブチルラクトン等のラクトン類、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル類、スルホラン、3−メチルスルホラン等のスルホラン類、1,3−ジオキソラン等のジオキソラン類、4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、アセトニトリル、ピロピオニトリル、バレロニトリル、ベンソニトリル等のニトリル類、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、その他のメチルフォルメート、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、イミダゾリウム塩、4級アンモニウム塩などのイオン性液体等を挙げることができる。さらに、これらの混合物であってもよい。これらの有機溶媒のうち、特に、カーボネート類からなる群より選ばれた非水溶媒を一種類以上含有することが、電解質の溶解性、誘電率および粘度において優れているので好ましい。
【0042】
本発明の蓄電デバイスにおいて、ポリマー電解質または高分子ゲル電解質に用いる場合は、高分子化合物であるエーテル、エステル、シロキサン、アクリロニトリル、ビニリデンフロライド、ヘキサフルオロプロピレン、アクリレート、メタクリレート、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、オキセタンなどの重合体またはその共重合体構造を有する高分子またはその架橋体などが挙げられ、高分子は一種類でも二種類以上でもよい。高分子構造は特に限定されるものではないが、ポリエチレンオキサイドなどのエーテル構造を有する高分子が特に好ましい。また、金属酸化物などの無機物を併用する事もできる。金属酸化物の例としては、蓄電デバイスに用いられるものであれば特に限定されないが、SiO、Al、AlOOH、MgO、CaO、ZrO、TiO、LiLaZr12、及びLixaLayaTiO〔xa=0.3〜0.7、ya=0.3〜0.7〕、BaTiOなどが挙げられる。
【0043】
本発明の蓄電デバイスとして、液系の電池は電解液、ゲル系の電池はポリマーを電解液に溶解したプレカーサー溶液、固体電解質電池は電解質塩を溶解した架橋前のポリマーを電池容器内に収容する。
【0044】
本発明に係る蓄電デバイスは、円筒型、コイン型、角型、ラミネート型、その他任意の形状に形成することができ、電池の基本構成は形状によらず同じであり、目的に応じて設計変更して実施することができる。例えば、円筒型では、負極集電体に負極活物質を塗布してなる負極と、正極集電体に正極活物質を塗布してなる正極とを、セパレータを介して捲回した捲回体を電池缶に収納し、非水電解液を注入し上下に絶縁板を載置した状態で密封して得られる。また、コイン型電池に適用する場合では、円盤状負極、セパレータ、円盤状正極、およびステンレスの板が積層された状態でコイン型電池缶に収納され、非水電解液が注入され、密封される。
【実施例】
【0045】
つぎに、実施例について比較例とあわせて説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、例中、「%」とあるのは、特に限定のない限り質量基準を意味する。
【0046】
〔ポリマー成分(水系樹脂エマルジョン)の合成〕
(合成例1−2)スチレンブタジエンゴムエマルション(SBRエマルション)A−1の合成
撹拌機、還流冷却器および温度計を備えたフラスコに、調製水51質量部に、ドデシルベンゼンスルフォン酸塩0.2質量部を仕込み、40℃に昇温した。また、別途、予備乳化液の組成をアクリロニトリル5質量部、メチルメタクリレート8質量部、スチレン55質量部、1,3−ブタジエン32質量部、アルキルベンゼンスルフォン酸塩0.95質量部、を調製水40質量部に乳化分散させ、予備乳化液を調製した。この予備乳化液を滴下ロートより、上記フラスコに4時間かけて滴下すると共に、重合開始剤として、過硫酸ナトリウム開始剤を10%水溶液として0.4質量部添加し、重合を開始した。65℃の反応温度を4時間維持した後、80℃に昇温して、引き続き2時間反応を継続し、SBRエマルションA−1を得た。
【0047】
〔繊維状ナノカーボン材料分散体の作製〕
(合成例2−1)繊維状ナノカーボン材料分散体B−1(実施例用)の作製
SWCNT(OCSiAL社製 TUBALL BATT、CNT純度 >93%、平均径、1.6±0.5nm)1.0gとカルボシキメチルセルロース塩(第一工業製薬株式会社製、セロゲン 7A、2wt%水溶液粘度(25℃):12〜18mPa・s、表2においてC−1)の2wt%水溶液45g およびセルロースナノファイバー(第一工業製薬製、レオクリスタI−2SX―LDS、表2においてD−1)2wt%水溶液5g をビーカー中で混合、攪拌後、超音波ホモジナイザー US−600T (株)日本精機製作所、循環ユニット、およびチューブポンプを接続し、スラリーを循環させながら100uAの出力で90分間分散させて繊維状ナノカーボン材料分散体B−1を得た。
【0048】
(合成例2−2)繊維状ナノカーボン材料分散体B−2(実施例用)の作製
カルボシキメチルセルロース塩(第一工業製薬株式会社製、セロゲン 7A)の2wt%水溶液をカルボシキメチルセルロース塩(第一工業製薬株式会社製、WS−C、表2においてC−2)の2wt%水溶液に変更した以外は合成例2−1に準じて繊維状ナノカーボン材料分散体B−2を作製した。
【0049】
(合成例2−3)繊維状ナノカーボン材料分散体B−3(実施例用)の作製
超音波ホモジナイザーの処理条件を100uA、120分間に変更した以外は合成例2−1に準じて繊維状ナノカーボン材料分散体B−3を作製した。
【0050】
(合成例2−4)繊維状ナノカーボン材料分散体B’−1(比較例用)の作製
超音波ホモジナイザーの処理条件を200uA、240分間に変更した以外は合成例2−1に準じて繊維状ナノカーボン材料分散体B’−1を作製した。
【0051】
(合成例2−5)繊維状ナノカーボン材料分散体B’−2(実施例用)の作製
添加するカルボシキメチルセルロース塩(第一工業製薬株式会社製、セロゲン 7A)の2wt%水溶液45g、セルロースナノファイバー(第一工業製薬製、レオクリスタI−2SX―LDS)2wt%水溶液5gを、カルボシキメチルセルロース塩(第一工業製薬株式会社製、セロゲン 7A)50gのみに変更した以外は合成例2−1に準じて繊維状ナノカーボン材料分散体B’−2を作製した。
【0052】
(合成例2−6)繊維状ナノカーボン材料分散体B’−3(実施例用)の作製
カルボシキメチルセルロース塩(第一工業製薬株式会社製、セロゲン 7A)の2wt%水溶液45gを10g、 およびセルロースナノファイバー(第一工業製薬製、レオクリスタI−2SX―LDS)2wt%水溶液5gを40g に変更した以外は合成例2−1に準じて繊維状ナノカーボン材料分散体B’−3を作製した。
【0053】
[繊維状ナノカーボン材料分散体の評価]
繊維状ナノカーボン材料分散体の平均繊維幅、平均繊維長を、走査型プローブ顕微顕微鏡(SPM)(日本電子社製、AFM−5300E)を用いて観察した。すなわち、各繊維状ナノカーボン分散体を固形分濃度0.01wt%まで希釈後、マイカ基板上にキャストし、乾燥したサンプルのAFM像を観察し、先に述べた方法に従い、平均繊維幅、平均繊維長を算出した。また、これらの値を用いてアスペクト比を下記の式1に従い算出した。
【0054】
アスペクト比=平均繊維長(nm)/平均繊維幅(nm)…(式1)
【0055】
測定結果を表1に示す。実施例用の繊維状ナノカーボン材料分散体B−1〜B−3は、平均繊維幅が1〜200nmの範囲内であり、平均繊維長は0.5μm以上であった。これに対し、比較例用の繊維状ナノカーボン材料分散体B’−1は平均繊維長が上記範囲外であった。
【0056】
【表1】
【0057】
[塗料・電極の作製]
(負極1)
負極活物質として、SiO(平均粒径4.5μm、比表面積5.5m/g)とグラファイト(平均粒径18μm、比表面積3.2m/g)を95部(含有比率20/80)、 導電助剤としてアセチレンブラック(デンカ社製、Li−400、表2においてF−1とする) 2部と分散剤兼結着剤としてカルボキシメチルセルロース塩(第一工業製薬株式会社製、WS−C、表2においてG−1とする)を0.8部、ポリマー成分としてSBRエマルションA−1(表2においてA−1とする)を2部(固形分部数)と繊維状ナノカーボン材料分散体B−1を0.2部(固形分部数)の混合物をホモディスパーにて攪拌処理を行い、固形分40%になるように負極スラリーを調製した。この負極スラリーをロールコーター(サンクメタル製、製品名チビコーター)で厚み10μmの電解銅箔上にコーティングを行い、120℃で乾燥後、ロールプレス処理を行い、負極活物質7〜8mg/cmの負極1を得た。
【0058】
(負極2、3)
繊維状ナノカーボン材料分散体B−1をそれぞれ表1に記載のB−2、B−3に変更した以外は負極1と同様の方法で作製した。
【0059】
(負極4)
負極活物質として、SiO(平均粒径4.5μm、比表面積5.5m/g)とグラファイト(平均粒径18μm、比表面積3.2m/g) を96部(含有比率10/90)、導電助剤としてアセチレンブラックを1.5部、ポリマー成分としてSBRエマルションA−1を1.5部(固形分部数)に変更した以外は負極3と同様の方法で負極活物質重量8〜9mg/cmの負極4を作製した。
作製した。
【0060】
(負極5)
負極活物質を、SiO(平均粒径4.5μm、比表面積5.5m2/g)とグラファイト(平均粒径18μm、比表面積3.2m/g) を92部(含有比率30/70)、導電助剤としてアセチレンブラックを2.5部、分散剤兼結着剤としてカルボキシメチルセルロース塩を1.3部、ポリマー成分としてSBRエマルションA−1を4部(固形分部数)に変更した以外は負極3と同様の方法で負極活物質重量5〜6mg/cmの負極5を作製した。
【0061】
(負極6)
負極活物質を、SiO(平均粒径7μm、比表面積2.2m/g)とグラファイト(平均粒径18μm、比表面積3.2m/g)を92部(含有比率20/80)、分散剤兼結着剤としてカルボキシメチルセルロース塩を1.8部、ポリマー成分としてSBRエマルションA−1を4部(固形分部数)に変更した以外は負極3と同様の方法で作製した。
【0062】
(負極7)
負極活物質を、Si(平均粒径2.6μm、比表面積 m/g)とグラファイト(平均粒径18μm、比表面積3.2m/g)を94部(含有比率10/90)、ポリマー成分としてSBRエマルションA−1を3部(固形分部数)に変更した以外は負極3と同様の方法で負極活物質重量5〜6mg/cmの負極7を作製した。
【0063】
(負極8)
負極活物質を、Si(平均粒径10nm、比表面積 m/g)とグラファイト(平均粒径18μm、比表面積3.2m/g)を93部(含有比率10/90)、導電助剤としてアセチレンブラックを2.3部、分散剤兼結着剤としてカルボキシメチルセルロース塩を1.0部、ポリマー成分としてSBRエマルションA−1を3.5部(固形分部数)に変更した以外は負極3と同様の方法で負極活物質重量5〜6mg/cmの負極8を作製した。
【0064】
(比較例用)
(負極9)
負極活物質を、SiO(平均粒径4.5μm、比表面積5.5m/g)とグラファイト(平均粒径18μm、比表面積3.2m/g) を90.5部(含有比率20/80)、導電助剤としてアセチレンブラックを1.3部、分散剤兼結着剤としてカルボキシメチルセルロース塩を1.3部、ポリマー成分としてSBRエマルションA−1 1.5部(固形分部数)をポリアクリル酸ナトリウム塩 A’−1(分子量Mw=13万)6部に変更した以外は負極4と同様の方法で作製した。
【0065】
(負極10)
繊維状ナノカーボン材料B−1を表1に記載のB’−1に変更した以外は負極1と同様の方法で作製した。
【0066】
(負極11)
繊維状ナノカーボン材料分散体B’−1を使用しない条件へと変更し、導電助剤としてアセチレンブラックを2.1部、分散剤兼結着剤としてカルボキシメチルセルロース塩を0.9部に変更した以外は負極10と同様の方法で作製した。
【0067】
(負極12、13)
繊維状ナノカーボン分散体B’−1をそれぞれ表1に記載のB’−2、B’−3に変更した以外は負極10と同様の方法で作製した。
【0068】
(塗料物性評価)
(粘度評価と塗工性評価)
上記で得られた各負極スラリーの作製直後の粘度を回転粘度計(製品名:東機産業製 TVB−10M)で測定し、測定開始後2分経過時点での粘度値を読み取った。(評価時の回転数:6rpm)上記で得られた塗料をロールコーターで塗工した際の塗工均一性を下記の基準で評価した。評価結果を下記表2に示す。
【0069】
評価基準:
○ :塗料粘度が8000mPa以下であり、膜厚が均一な塗工が可能
△ :塗料粘度が8000mPa以上であり、膜厚が不均一(スジが入る、など)
× :塗料粘度が8000mPa以上であり、塗工が不可能
【0070】
[電極の導電性]
上記で得られた負極スラリーをPETシートに塗工・乾燥し、ロールプレス機(サンクメタル製)で1.2 g/cm3まで密度を高めた電極を作製した。得られた電極について、抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製、ロレスタGP)を用いて導電率を測定し、比較例2の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど導電性が高いことを示す。評価結果を表2に示す。
【0071】
[電池性能の評価]
(評価用正極の作製)
正極活物質であるLiNi0.8Co0.15Al0.05(NCA)を100質量部、導電助剤としてアセチレンブラック(デンカ社製、Li−400)を7.8質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデン6質量部、分散媒としてN−メチル−2−ピロリドン61.3質量部を遊星型ミキサーで混合し、固形分65%になるように正極スラリーを調製した。この正極スラリーを塗工機で厚み15μmのアルミニウム箔上にコーティングを行い、130℃で乾燥後、ロールプレス処理を行い、正極活物質22mg/cmの正極を得た。
【0072】
[リチウム二次電池の作製]
上記で得られた正極、負極を下記表2のように組み合わせて、電極間にセパレータとしてポリオレフィン系(PE/PP/PE)セパレータを挟んで積層し、各正負極に正極端子と負極端子を超音波溶接した。この積層体をアルミラミネート包材に入れ、注液用の開口部を残しヒートシールした。正極面積18cm2、負極面積19.8cm2とした注液前電池を作製した。次にエチレンカーボネートとジエチルカーボネート(30/70vol比)とを混合した溶媒にLiPF6(1.0mol/L)を溶解させた電解液を注液し、開口部をヒートシールし、評価用電池を得た。
【0073】
[電池性能の評価]
作製したリチウム二次電池について、20℃における性能試験を行った。試験方法は下記の通りである。試験結果を表2に示す。
【0074】
(充放電サイクル特性)
充放電サイクル特性は、以下の条件で測定した。0.5C相当の電流密度で4.2VまでCC(定電流)充電を行い、続いて4.2VでCV(定電圧)充電に切り替え、1.5時間充電したのち、0.5C相当の電流密度で2.7VまでCC放電するサイクルを20℃で300サイクル行い、このときの初回1C放電容量に対する300サイクル後1C放電容量比を1C充放電サイクル保持率とした。
【0075】
【表2】
【0076】
表2より、実施例1から8で使用した負極1〜8に対し、平均繊維長が短い繊維状ナノカーボン材料であるB‘−1を使用した負極10は電極の導電性に劣り、また結着性も悪いことからこれらを使用した比較例2に示すリチウム2次電池の充放電サイクル特性が悪化することが分かる。また、ポリマー成分をポリアクリル酸ナトリウムに変更した負極20も結着性が悪化し、これを使用した比較例5に示すリチウム2次電池の充放電サイクル特性が悪化することが分かる。
【0077】
また、繊維状ナノカーボン材料を使用していない負極11は電極の結着性、電極の導電性が悪化し、これらを使用した比較例3に示すリチウム2次電池の電池性能も実施例1から15の電池性能に対し大きく劣ることが分かる。
【0078】
また、繊維状ナノカーボン分散体にナノセルロース繊維を使用していない負極12は塗料物性が悪化し、繊維状ナノカーボン分散体に対するナノセルロース繊維の含有量が多すぎる負極13は電極塗料組成物のチクソ性が高くなりすぎるため、正常な塗工ができず、均一な電極を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の電極用結着剤組成物は、蓄電デバイスの活物質等の結着剤として利用でき、それから製造された電極は各種蓄電デバイスの製造に用いられる。得られた蓄電デバイスは、携帯電話、ノートパソコン、携帯情報端末(PDA)、ビデオカメラ、デジタルカメラなどの各種携帯型機器や、更には電動自転車、電気自動車などに搭載する中型又は大型蓄電デバイスに使用することが出来る。