【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、この目的は、強磁性シールド体をクライオスタット内に配置していることを特徴とする、冒頭で紹介した超伝導磁石装置によって達成される。
【0018】
本発明は、望ましくないか、または危険でさえある漂遊磁場から周囲環境を保護する強磁性シールド体を、クライオスタット内に入れることを提案する。その結果、「フィールドクーリング」による励磁手順中に励磁用電磁石の磁場(または磁束密度)を印加する場合、この磁場は強磁性シールドを貫通する必要があるが、この場合、励磁手順中に強磁性シールド体を設けていない状況と比較して、低下した磁場強度が超伝導バルク磁石において存在することになる。したがって、クライオスタット内に強磁性シールド体を設けていない状況と比較して、同じ捕捉磁場強度を達成するために、励磁用電磁石はやや強い磁場(または磁束強度)をもたらす必要がある。これに対して、クライオスタット内に強磁性シールド体を入れることは、励磁手順の後にクライオスタットの周りに強磁性シールド体を配置することと比較して、本発明により利用可能となる多くの利点を有する。
【0019】
まず、励磁した超伝導バルク磁石の周りに強磁性シールド体を後で配置する場合は、大きな機械力を制御する必要があり、これはなぜなら、超伝導バルク磁石の外側に捕捉された磁場(または磁束密度)が強磁性シールド体を引き付けようとするためである。強磁性シールド体をクライオスタット内に配置する場合(したがって、強磁性シールド体を励磁開始前に配置しておく場合)、この厄介なステップを完全に回避することができる。
【0020】
また、強磁性シールド体は捕捉された磁場(または磁束密度)に影響を与え、その結果、超伝導ボア内に捕捉された磁場(または磁束密度)の均一性に影響を与えることになる。クライオスタットの周りに強磁性シールド体を後で配置する場合、磁力の存在下でこの取り付けを行わなければならないため、通常、取り付け時の精度が比較的低くなる。これに対して、クライオスタット内に強磁性シールド体を配置する場合は、これを永久的に固定でき、その際も、超伝導磁石装置の製造中は通常、磁力による妨害がないため、正確に位置合わせすることができる。この理由から、本発明により、より高い均一性が簡便に得られるようになる。
【0021】
また、捕捉された磁場の安定性は、強磁性シールド体の温度変動の影響を受けることになる。強磁性シールド体をクライオスタット内に配置することにより、強磁性シールド体の温度が自動的に安定する。
【0022】
本発明により提供される、超伝導バルク磁石からの強磁性シールド体の軸方向の延出、および強磁性シールド体と超伝導バルク磁石の超伝導ボアとの断面積比により、十分な遮蔽効果、すなわち漂遊磁場からの周囲環境の保護を確実に実現することができ、本発明の装置を、たとえば実験室や病院において、別途保護手段を設けずに使用することができる。本発明によれば、S
fb≧2.5
*S
bo、および典型的には、S
fb≧4*S
boまたはS
fb≧10
*S
boも適用される。さらに、強磁性シールド体は、典型的には各々の軸方向端部で、少なくともOD
bm/3だけ、好ましくは少なくともOD
bm/2だけ、また同様に典型的には少なくとも1
*(OD
bm−ID
bm)だけ、好ましくは少なくとも2
*(OD
bm−ID
bm)だけ軸方向に超伝導バルク磁石から延出しており、この場合、ID
bmは超伝導バルク磁石の最小内径である。
【0023】
したがって要約すると、本発明によれば、捕捉された磁場(または磁束密度)の良好な均一性および安定性を簡便に達成することができ、これはなぜなら、強磁性シールド体を正確に位置合わせして永久的に固定することができ、またその温度を、典型的には制御装置を別途設ける必要なく、超伝導バルク磁石とともにクライオスタット内で適切に制御することができるためである。なお、超伝導バルク磁石および強磁性シールド体は、冷却装置(コールドヘッド)および/または熱輸送構造体に対する配置に応じて、クライオスタット内で同じ温度であってもよいし、異なる温度であってもよい。
【0024】
典型的には、この超伝導バルク磁石と強磁性シールド体とを、少なくとも略円筒壁形状に設計している。クライオスタット、強磁性シールド体、および超伝導バルク磁石(ならびに励磁に使用する励磁用電磁石)を、超伝導バルク磁石の回転対称軸zに沿って、概して同軸に配置している。超伝導バルク磁石の回転対称(中心)軸zによって決まる軸方向に垂直となるように、断面をとっている。
【0025】
この超伝導バルク磁石にはコルセット構造、具体的には金属(鋼、アルミニウムまたは銅など)製の複数の外側リングを、機械的補強として装備してもよい。
【0026】
この強磁性シールド体は一体として形成されていてもよいが、互いに固定された部品により構成されてもよい。なお、通常は、強磁性シールド体の外側の漂遊磁場を最小限に抑えるために、強磁性シールド体内に間隙を設けないようにしているが、ただし、小さな間隙、たとえば局所的な壁の半径方向厚さの5分の1よりも小さな間隙であれば、許容され得る。なお、この強磁性シールド体は、クライオスタット内で放射シールドとして機能してもよい。
【0027】
室温ボアには両側から(貫通孔)、または片側からのみ接触することができる。調査を行うために、室温ボアの内部に試料を配置してもよい。
【0028】
超伝導バルク磁石は、典型的にはReBCOなどのHTS材料、具体的にはYBCO、またはMgB
2などの材料で作製されている。強磁性シールド体を、クライオスタットの外壁から距離を置いてクライオスタット内に配置しており、典型的には、強磁性シールド体はクライオスタットの外壁と空間により隔てられている。典型的には、超伝導バルク磁石および強磁性シールド体の両方を、クライオスタット内に不動状態で固定している。
【0029】
超伝導バルク磁石は、超伝導リングの積層体を備えていてもよい。典型的には、これら超伝導リングを軸方向に順に積層している。ただし、同心の超伝導リングを径方向に順に積層することもできる(「入れ子リング」)。超伝導バルク磁石は概して閉じたリング状であり、単一の超伝導リング構造、または複数のディスクもしくは基板(金属薄板または箔など)上の複数のコーティングなどの複数のリング状の超伝導サブ構造で構成され、この複数のリング状のサブ構造を同軸に配置し、かつ軸方向かつ/または径方向に積層し、またこれらのサブ構造を構造的に接続することにより、いわゆる「複合バルク」へと統合してもよい。本発明によれば、これらの変形形態はすべて、超伝導バルク磁石を構成する。超伝導バルク磁石の構造またはサブ構造を融液から成長させていてもよく、その際、「複合バルク」へと統合されるサブ構造を、典型的には基板をコーティングすることによって作製している。本発明による超伝導バルク磁石により、その超伝導ボア内の磁場(または磁束密度)を捕捉することが可能になり、この場合、概して超伝導バルク磁石に電流源を設けず、代わりにこれを誘導励磁用に設計している。
【0030】
発明の好ましい実施形態
本発明の超伝導磁石装置の好ましい一実施形態では、超伝導バルク磁石の最小内径ID
bmには、ID
bm≧20mm、好ましくはID
bm≧30mm、最も好ましくはID
bm≧40mmが適用される。そのような寸法を用いることにより、超伝導ボア内の試料に接触できるように室温ボアを作製するにあたり、十分な空間が得られ、たとえばNMR実験の調査対象の試料を簡便に配置することが可能になる。典型的には、クライオスタットの室温ボアの最小直径は10mm以上、好ましくは20mm以上である。
【0031】
また、超伝導バルク磁石が回転対称軸zの方向に軸方向長L
bmを有する一実施形態も好ましく、この場合、L
bm≧2.5
*ID
bmとなり、ID
bmは超伝導バルク磁石の最小内径である。そのような長さL
bmを有することから、超伝導バルク磁石は、均一性が良好な超伝導ボア内の残留磁束密度B
boを達成することができる。
【0032】
有益な一実施形態では、強磁性シールド体は、各々の軸方向端部において超伝導バルク磁石の半径方向厚さの少なくとも一部を覆って半径方向内側に向かって延在する強磁性端部キャップを備える。これらの端部キャップを備えることにより、シールド機能の向上および/またはよりコンパクトな設計を実現することができる。2つの軸方向端部に設けた端部キャップ(上部端部キャップと下部端部キャップ)は、典型的には磁石の中央面に対して対称である。他の実施形態では、強磁性シールド体は強磁性端部キャップを1つのみ、たとえば室温ボアへの接触側とは反対の側に備えていてもよく、この端部キャップは、片方の軸方向端部において超伝導バルク磁石の半径方向厚さの少なくとも一部を覆って半径方向内側に向かって延在していてもよい。必要に応じて、端部キャップのそれぞれを強磁性シールド体の主要(円筒)部分からスペーサで分離してもよい。
【0033】
クライオスタットが、強磁性シールド体の温度を制御するための制御装置を含む一実施形態が好ましい。制御装置を含むことにより、強磁性シールド体の温度の熱安定性をより高いレベルで達成することができ、これにより、超伝導バルク磁石または試料体積の磁気中心における、磁束密度の経時安定性が向上することになる。この制御装置は、クライオスタットの冷却装置(パルス管冷凍機など)の制御部であってもよい。典型的には、この制御装置は、クライオスタット内に配置され、具体的には強磁性シールド装置に取り付けられた、温度センサを含む。
【0034】
別の好ましい一実施形態では、強磁性シールド体を、
−軸方向に沿って外径および/または内径が変化し、具体的には、軸方向に沿って半径方向厚さが変化し、かつ/または
−方位角位置の関数として半径方向厚さが変化し、具体的には、軸方向に沿った複数の溝を有し、かつ/または
−複数のボアホールを有する、
円筒壁形状、または略円筒壁形状を有するように設計している。少なくとも略円筒壁形状の強磁性シールド体を使用することで、捕捉された磁束密度の均一性を良好なレベルで達成することができる。強磁性シールド体を特別に成形することにより、超伝導バルク磁石によって保存される残留磁束密度の均一性を向上させることができる。なお概して、本発明によれば、超伝導磁石ボア内に捕捉された磁場(または磁束密度)は(励磁用磁石から本装置を取り外した後に)、室温ボア内の少なくとも5mm
3の試料体積において典型的には100ppmまたはそれより良い均一性を達成し、または、別途シミング手段(室温ボア内に配置されたシミング装置を使用した、動的シミングなど)を設けない状態で、室温ボア内の少なくとも1mm
3の試料体積において10ppmまたはそれより良い均一性を達成する。この試料体積は、概して超伝導バルク磁石の磁気中心に位置する。
【0035】
超伝導バルク磁石が励磁状態であり、残留磁束強度B
boが超伝導バルク磁石によってその磁気中心で保存される一実施形態が、とりわけ好ましい。励磁状態において、本発明の装置は、典型的には使用場所へと搬送され、調査対象の試料に(典型的には、比較的高い強度と高い均一性の)残留磁束密度B
boを安価に供給する用途で使用される。こうした励磁状態では、超伝導円電流が抵抗損失なしに超伝導バルク磁石を流れ、またこの超伝導バルク磁石は、その臨界温度T
critよりも十分に低い温度T
bmに維持される(典型的には、T
bm≦2/3
*T
critまたはT
bm≦0.5
*T
critでもそうなり、その際の温度はケルビンである)。なお、超伝導バルク磁石(また、より一般的には超伝導磁石装置)の磁気中心は、概して回転対称軸(z)上であって、回転対称軸(z)上の点から±0.1*L
bmの位置にあり、かつ超伝導バルク磁石の上部および下部から等距離の位置にある点である。
【0036】
上記実施形態の好ましい一発展形態では、B
bo≧3.5テスラ、好ましくはB
bo≧5.0テスラ、最も好ましくはB
bo≧7.0テスラである。そのような高い磁束密度を他の手段によって供給する際、費用の点で比較的高価になるため、本発明はこの発展形態においてとりわけ有利である。磁気中心において(または試料体積内で)B
boを測定するが、ただし、超伝導ボア内の磁場の変動は典型的には小さい。なお、他の実施形態では、B
boはB
bo≧1.5テスラまたはB
bo≧2.5テスラの範囲にあってもよい。
【0037】
室温ボアの外側、およびクライオスタットの外側のいずれであっても漂遊磁場が15ガウス以下、好ましくは5ガウス以下の大きさを有するように、超伝導磁石装置、具体的には強磁性シールド体を構成している一発展形態がとりわけ好ましい。クライオスタット内に強磁性シールド体を入れることにより、別途手段を設けることなく、概して、クライオスタットの外側に低漂遊磁場、具体的には5ガウス以下の漂遊磁場をもたらすことができる。なお、クライオスタットまたはクライオスタットの外壁などのクライオスタットの部分を、鉄などの強磁性材料で作製することで、漂遊磁場を低減してもよい。クライオスタットの外側の漂遊磁場が5ガウスよりも少し高い範囲(最大15ガウスなど)にある場合は、クライオスタットの周りに簡素な温かい鉄製シールド筐体(金属薄板製など)を配置することにより、温かい鉄製シールド筐体の外側における漂遊磁場が、5ガウス以下となるようにしている。
【0038】
好ましい一発展形態では、強磁性シールド体は、その最大磁化の少なくとも70%の磁化になっている。磁化の程度が不均一である場合、この磁化の程度を強磁性シールド体全体にわたって平均化してもよい。強磁性シールド体をそこまで高度に使用する(磁化する)ことにより、コンパクトで軽量な設計を実現することができる。
【0039】
また、本発明の範囲内にある励磁装置は、
−励磁ボアを有する励磁用電磁石と、
−上記の本発明の超伝導磁石装置とを備え、
本超伝導磁石装置の少なくとも一部を励磁ボア内に配置している。本発明の励磁装置により、コンパクトなシールド超伝導磁石装置をフィールドクーリング手順に用いることができ、この場合、強磁性シールド体を所定の位置に配置するために強い機械力を制御する必要がなく、また、超伝導ボア内に捕捉された磁束密度の良好な均一性および安定性を簡便に達成することができる。
【0040】
さらに、本発明の範囲内にあるのは、上記の本発明の超伝導磁石装置の使用であって、試料を室温ボア内に配置し、また超伝導バルク磁石によってその磁気中心に保存される前記残留磁束密度B
boにこの試料を晒し、室温ボア内の試料にNMR測定を実行することを特徴とする。これは、調査対象の試料に対してNMR実験を行うための簡便かつ安価な方法である。
【0041】
超伝導バルク磁石を励磁するための本発明の方法
さらに、本発明の範囲内に、超伝導磁石装置内の超伝導バルク磁石を励磁する方法があり、前記超伝導磁石装置は、
−超伝導ボアを有する超伝導バルク磁石であって、この超伝導バルク磁石は回転対称軸z、およびこの回転対称軸zに垂直な平面内の最大外径OD
bmを有し、超伝導ボアは、回転対称軸zに垂直な平面内の最小断面積S
boを有する、超伝導バルク磁石と、
−室温ボアを有するクライオスタットであって、超伝導バルク磁石をこのクライオスタット内に配置し、室温ボアを超伝導ボア内に配置している、クライオスタットと、
−シールドボアを有する強磁性シールド体であって、超伝導バルク磁石をこの強磁性シールド体のシールドボア内に配置し、この強磁性シールド体は、各々の軸方向端部で回転対称軸zに対して、少なくともOD
bm/3だけ超伝導バルク磁石から延出している、強磁性シールド体とを備え、
さらに、回転対称軸zに垂直であり、強磁性シールド体と交差しているすべての平面内における強磁性シールド体の断面積の平均として定義される、強磁性シールド体の平均断面積S
fbに対して、S
fb≧2.5
*S
boが適用され、
この強磁性シールド体をクライオスタット内に配置し、具体的には前記超伝導磁石装置を、上記の本発明の超伝導磁石装置として設計し、
前記方法は、
励磁用電磁石の励磁ボア内に、前記励磁用電磁石の少なくとも一部を配置するステップa)と、
少なくとも1つの電流を励磁用電磁石に印加することによって、励磁ボア内で磁束密度を発生させ、その結果超伝導バルク磁石の磁気中心(MC)に印加磁束密度B
appが存在するようにするステップb)であって、
この場合、超伝導バルク磁石の温度T
bmは、超伝導バルク磁石の臨界温度T
critを超えている、ステップb)と、
この温度T
bmを
、T
crit未満に下げるステップc)と、
励磁用電磁石における少なくとも1つの電流をオフにするステップd)であって、その際T
bm<T
critとすることにより、残留磁束密度B
boが磁気中心に保存されるようにする、ステップd)と、
励磁ボアから前記超伝導磁石装置を取り外して、T
bm<T
critを維持するステップe)とを含む。
【0042】
本発明によれば、強磁性シールド体を介して超伝導バルク磁石を励磁しており、この強磁性シールド体をクライオスタット内に配置している。これにより、超伝導バルク磁石に対して強磁性シールド体を後で位置決めすることが回避されることになり、この位置決めは厄介(機械力の制御が必要)であり、正確に行うのは困難である(概して、保存された磁束密度の均一性を損なうものである)。また、クライオスタット内に強磁性シールド体を入れることにより、強磁性シールド体固有の温度制御が達成され、その結果磁場を安定させることになる。さらに、とりわけ本超伝導磁石装置を卓上用途で使用するのに適した、コンパクトな設計が可能になる。
【0043】
なお概して、励磁用磁石、クライオスタット、強磁性シールド体、および超伝導バルク磁石を、超伝導バルク磁石の回転対称軸zに沿って同軸に配置している。
【0044】
B
appはB
boにほぼ対応しており、ここでB
boは、励磁用磁石オフになった後に超伝導バルク磁石によって保存される、超伝導ボア内の磁気中心における残留磁束密度である。ただし、具体的には超伝導バルク磁石の長さが有限であり、励磁中と励磁完了後の強磁性シールド体の磁化が変動することにより、B
boは実際にはB
appからわずかに逸脱する。なお、試料体積内に均一な(より均一な)B
boを確立するために、多くの場合、いくぶん不均一性を伴った状態のB
appを選択する必要がある。典型的には、超伝導バルク磁石および強磁性シールド体の両方を、クライオスタット内に不動状態で固定している。
【0045】
励磁用磁石の(すなわち内部の)磁束密度を、強磁性シールド体を確実に貫通するよう、十分大きくなるように選択している。なお、励磁用磁石の磁束密度は、最終的に磁束密度の最大値に達するまで、典型的にはたとえば線形に上昇していく。
【0046】
好ましくは、励磁用磁石に印加される少なくとも1つの電流を、B
app<(S
fb*B
sat)/S
bo、最も好ましくはB
app≦0.9
*(S
fb*B
sat)/S
boとなるように選択しており、その際、B
satは強磁性シールド体が磁気飽和する磁束密度である。このようにして、励磁後の強磁性シールド体が、クライオスタットの周囲環境を不要な漂遊磁場から確実かつ良好に保護できるようになる。なお、本超伝導磁石装置の構造、具体的にはS
fbおよびS
bo、ならびに強磁性シールド材料も同様に、上記の条件に合うよう意図的に選択してもよい。なお、典型的にはB
app>2.5
*B
satであるが、B
app>4
*B
satであってもよい。
【0047】
なお、ここではB
z(軸方向に沿った磁束密度成分)のみを考慮している。
【0048】
本発明の方法の好ましい一変形形態では、ステップb)において、少なくとも1つの電流をB
app≧3.5テスラ、好ましくはB
app≧5.0テスラ、最も好ましくはB
app≧7.0テスラとなるように選択している。また、結果として得られるB
boも、基本的には3.5テスラ以上、あるいは5.0テスラ以上、もしくは7.0テスラ以上になる。こうした高磁束密度化は費用がかかる上、他の手段で達成するのが困難であるため、本発明による利点がとりわけ顕著である。
【0049】
さらに好ましいのが、
−超伝導バルク磁石の形状および/または強磁性シールド体の形状を選択することにより、
−かつステップe)の後、クライオスタット内の強磁性シールド体の温度を制御することにより、
磁気中心(MC)に対して+5mmから−5mmまでの位置における回転対称軸(z)上の磁束密度を、ステップe)の後、B
boが100ppm以内になるよう維持している一変形形態である。その後、室温ボアにおいて、NMR測定などのとりわけ精密な測定を、超伝導ボア内における磁気中心にある試料体積に対して実行してもよい。
【0050】
さらなる利点を本明細書と添付の図面とから導き出すことができる。上記および下記の特徴を、本発明に従って個々に、または任意の組み合わせで集合的に使用することができる。言及した実施形態、網羅的な列挙としてではなく、むしろ、本発明を説明するための特徴の例示として理解されるべきである。
【0051】
本発明を以下の図面に示す。