(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレーク状封止用樹脂組成物中に含まれる、JIS標準篩を用いた分級により、公称目開き150μmを超え1mm以下の篩を通過するフレーク状封止用樹脂組成物が20質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載のフレーク状封止用樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示について、一実施形態であるフレーク状封止用樹脂組成物、半導体装置及び半導体装置の製造方法を参照しながら詳細に説明する。
[フレーク状封止用樹脂組成物]
本実施形態のフレーク状封止用樹脂組成物(以下、単に封止用樹脂組成物ともいう)は、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)硬化促進剤、および(D)無機充填材を含有するフレーク状封止用樹脂組成物であって、
前記フレーク状封止用樹脂組成物の80質量%以上が、平行な一対の平面を有し、当該一対の平面間の距離が150〜1000μmである平行面含有樹脂組成物であり、
前記フレーク状封止用樹脂組成物中に含まれる、JIS標準篩を用いた分級により、公称目開き150μmの篩を通過するフレーク状封止用樹脂組成物が5質量%以下、及び公称目開き2mmの篩を通過しないフレーク状封止用樹脂組成物が5質量%以下である。
【0014】
ここで、「フレーク状」とは扁平状、薄片状、鱗片状等の形状を含む。本実施形態のフレーク状封止用樹脂組成物は、当該封止用樹脂組成物の80質量%以上が、平行な一対の平面を有し、当該一対の平面間の距離(以下、厚みともいう)が150〜1000μmである平行面含有樹脂組成物である。
ここで、「平行」とは個々の封止用樹脂組成物の平均厚みに対する当該封止用樹脂組成物の最大厚みと最小厚みとの差の割合が5%以下であることを意味する。
上記封止用樹脂組成物の厚みが150μm未満では静電気の影響を受け凝集しやすくなる。凝集した封止用樹脂組成物は、熱が均一に伝わりにくく溶け性が低下するおそれがある。また、当該封止用樹脂組成物の厚みが1000μmを超えると熱が均一に伝わりにくく溶け性が低下するおそれがある。このような観点から、封止用樹脂組成物の厚みは、150〜700μmであってもよく、150〜500μmであってもよく、200〜400μmであってもよい。
なお、上記フレーク状封止用樹脂組成物の厚みは、例えば、光学顕微鏡(倍率:200倍)を用いて50個の封止用樹脂組成物の厚みを測定し、その平均値として求めることができる。
【0015】
また、本実施形態のフレーク状封止用樹脂組成物中に含まれる上述の形状を有する封止用樹脂組成物(平行面含有樹脂組成物)の割合は、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
なお、本実施形態のフレーク状封止用樹脂組成物は、フレーク状ではない樹脂組成物、上述の形状を有さない樹脂組成物を含んでもよい。本実施形態のフレーク状封止用樹脂組成物がフレーク状ではない樹脂組成物、上述の形状を有さない樹脂組成物を含む場合、その含有量は、当該フレーク状封止用樹脂組成物全量に対し20質量%以下であってもよく、10質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよく、含まなくてもよい。
【0016】
本実施形態のフレーク状封止用樹脂組成物中に含まれる、JIS標準篩(JIS Z8801−1:2006規定)を用いた分級により、公称目開き150μmの篩を通過するフレーク状封止用樹脂組成物(以下、封止用樹脂組成物aともいう)が5質量%以下、及び公称目開き2mmの篩を通過しないフレーク状封止用樹脂組成物(以下、封止用樹脂組成物bともいう)が5質量%以下である。封止用樹脂組成物aの含有量が5質量%を超えると、圧縮成形用金型に供給する際に、当該封止用樹脂組成物aが舞い上がりやすく、飛散した当該封止用樹脂組成物aによる汚染や、計量不良等が生ずるおそれがある。このような観点から、フレーク状封止用樹脂組成物中に含まれる封止用樹脂組成物aは、3質量%以下であってもよく、2質量%以下であってもよい。また、封止用樹脂組成物bの含有量が5質量%を超えると、成形時にワイヤの変形および破損が生じるおそれがあり、また、硬化物にボイドが発生するおそれがある。このような観点から、フレーク状封止用樹脂組成物中に含まれる封止用樹脂組成物bは、3質量%以下であってもよく、2質量%以下であってもよい。
【0017】
また、本実施形態のフレーク状封止用樹脂組成物は、JIS標準篩(JIS Z8801−1:2006規定)を用いた分級により、公称目開き150μmを超え2mm以下の篩を通過するフレーク状封止用樹脂組成物を含んでもよく、JIS標準篩(JIS Z8801−1:2006規定)を用いた分級により、公称目開き150μmを超え1mm以下の篩を通過するフレーク状封止用樹脂組成物(以下、封止用樹脂組成物cともいう)を含んでもよい。ここで、公称目開き150μmを超え1mm以下の篩を通過するフレーク状封止用樹脂組成物とは、公称目開き150μmの篩を通過せず、公称目開き1mmの篩を通過するフレーク状封止用樹脂組成物のことである。封止用樹脂組成物cの含有量としては、20質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよく、60質量%以上であってもよい。封止用樹脂組成物cを20質量%以上含有すると充填性が良好となり、硬化物にボイド等の発生を低減することができる。また、上限値は特に限定されず、100質量%であってもよく、90質量%であってもよい。
【0018】
本実施形態のフレーク状封止用樹脂組成物中に含まれる、JIS標準篩(JIS Z8801−1:2006規定)を用いた分級により、公称目開き1mmを超え2mm以下の篩を通過するフレーク状封止用樹脂組成物(以下、封止用樹脂組成物dともいう)の含有量は、充填性を高め、ボイドの発生を低減する観点から、10〜75質量%であってもよく、15〜50質量%であってもよく、18〜40質量%であってもよい。
【0019】
〔(A)エポキシ樹脂〕
本実施形態で用いられる(A)成分のエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、分子構造、分子量等に制限されることなく一般に電子部品の封止材料として使用されているものを広く用いることができる。
(A)成分のエポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂等の複素環型エポキシ樹脂、スチルベン型二官能エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂などが挙げられる。なかでも、ビフェニル型エポキシ樹脂であってもよい。
これらのエポキシ樹脂は1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
(A)成分のエポキシ樹脂の軟化点は、封止用樹脂組成物のハンドリング性、および成形時の溶融粘度の観点から、40〜130℃であってもよく、50〜110℃であってもよい。
なお、本明細書における軟化点とは、「環球式軟化点」を指し、ASTM D36に準拠して測定された値をいう。
【0021】
(A)成分のエポキシ樹脂の市販品を例示すると、例えば、三菱ケミカル(株)製のYX−4000(エポキシ当量185、軟化点105℃)、同YX−4000H(エポキシ当量193、軟化点105℃)、日本化薬(株)製のNC−3000(エポキシ当量273、軟化点58℃)、同NC−3000H(エポキシ当量288、軟化点91℃)(以上、いずれも商品名)等が挙げられる。
【0022】
〔(B)フェノール樹脂硬化剤〕
本実施形態で用いられる(B)成分のフェノール樹脂硬化剤は、1分子当たり2個以上のフェノール性水酸基を有し、上記(A)成分のエポキシ樹脂を硬化させることができるものである。電子部品の封止材料として一般に用いられるものであれば特に制限されることなく使用できる。
(B)成分のフェノール樹脂硬化剤としては、具体的には、フェノール、アルキルフェノール等のフェノール類とホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドを反応させて得られるフェノールノボラック樹脂やクレゾールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、これらのノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化又はブチル化した変性ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、パラキシレン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、多官能型フェノール樹脂などが挙げられる。なかでも、フェノールアラルキル樹脂、フェノールノボラック樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂が好ましい。これらのフェノール樹脂硬化剤は1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0023】
(B)成分のフェノール樹脂硬化剤の含有量は、上記(A)成分のエポキシ樹脂が有するエポキシ基数(a)に対する(B)成分のフェノール樹脂硬化剤が有するフェノール性水酸基数(b)の比(b)/(a)が0.3以上1.5以下となる範囲であってもよく、0.5以上1.2以下となる範囲であってもよい。比(b)/(a)が0.3以上であると硬化物の耐湿信頼性が向上し、1.5以下であると硬化物の強度が向上する。
【0024】
また、封止用樹脂組成物中における(A)成分のエポキシ樹脂及び(B)成分のフェノール樹脂硬化剤の合計含有量は、5〜20質量%であってもよく、10〜15質量%であってもよい。
【0025】
〔(C)硬化促進剤〕
本実施形態で用いられる(C)成分の硬化促進剤は、(A)成分のエポキシ樹脂と、(B)成分のフェノール樹脂硬化剤との硬化反応を促進する成分である。(C)成分の硬化促進剤は、上記作用を奏するものであれば、特に制限されることなく公知の硬化促進剤を使用することができる。
【0026】
(C)成分の硬化促進剤としては、具体的には、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のジアザビシクロ化合物及びこれらの塩;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン類;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン等の有機ホスフィン化合物などが挙げられる。これらのなかでも、流動性及び成形性が良好であるという観点から、イミダゾール類であってもよい。これらの硬化促進剤は1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0027】
(C)成分の硬化促進剤の含有量は、封止用樹脂組成物全量に対し、0.1〜5質量%の範囲であってもよく、0.1〜1質量%の範囲であってもよい。(C)成分の硬化促進剤の含有量が0.1質量%以上であると硬化性の促進効果が得られ、5質量%以下であると成形時にワイヤの変形および破損を抑制し、充填性を良好にすることができる。
【0028】
〔(D)無機充填材〕
本実施形態で用いられる(D)成分の無機充填材は、この種の樹脂組成物に一般的に使用されている公知の無機充填材であれば、特に制限されることなく使用することができる。
(D)成分の無機充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、破砕シリカ、合成シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム等の酸化物粉末;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物粉末;窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物粉末などが挙げられる。これらの無機充填材は、1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0029】
(D)成分の無機充填材は、本実施形態の封止用樹脂組成物の取り扱い性および成形性を高める観点から、上記例示したなかでもシリカ粉末であってもよく、溶融シリカであってもよく、球状溶融シリカであってもよい。また、溶融シリカと溶融シリカ以外のシリカを併用することもでき、その場合、溶融シリカ以外のシリカの割合はシリカ粉末全体の30質量%未満としてもよい。
【0030】
(D)成分の無機充填材は、平均粒径が0.5〜40μmであってもよく、1〜30μmであってもよく、5〜20μmであってもよい。また、(D)成分の無機充填材の最大粒径は55μm以下であってもよい。平均粒径が0.5μm以上であると、封止用樹脂組成物の流動性および成形性を向上させることができる。一方、平均粒径が40μm以下であると、封止用樹脂組成物を硬化して得られる成形品の反りが抑制され、寸法精度を向上させることができる。また、最大粒径が55μm以下であると、封止用樹脂組成物の成形性を向上させることができる。
なお、本明細書において、(D)成分の無機充填材の平均粒径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置により求めることができ、平均粒径は、同装置で測定された粒度分布において積算体積が50%になる粒径(d50)である。
【0031】
(D)成分の無機充填材の含有量は、封止用樹脂組成物全量に対し、70〜95質量%の範囲であってもよく、75〜90質量%の範囲であってもよい。(D)成分の無機充填材の含有量が70質量%以上であると、封止用樹脂組成物の線膨張係数が増大しすぎることがなく、当該封止用樹脂組成物を硬化して得られる成形品の寸法精度、耐湿性、機械的強度等を向上させることができる。また、(D)成分の無機充填材の含有量が95質量%以下であると、封止用樹脂組成物を成形して得られる樹脂シートを割れにくくすることができる。また、封止用樹脂組成物の溶融粘度が増大しすぎることがなく、流動性および成形性を向上させることができる。
【0032】
本実施形態の封止用樹脂組成物には、以上の各成分の他、本実施形態の効果を阻害しない範囲で、この種の樹脂組成物に一般に配合される成分、例えば、カップリング剤;合成ワックス、天然ワックス、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩等の離型剤;カーボンブラック、コバルトブルー等の着色剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力付与剤;ハイドロタルサイト類;イオン捕捉剤などを配合することができる。
【0033】
カップリング剤としては、エポキシシラン系、アミノシラン系、ウレイドシラン系、ビニルシラン系、アルキルシラン系、有機チタネート系、アルミニウムアルコレート系等のカップリング剤を使用することができる。これらのカップリング剤は1種を使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。なかでも、成形性、難燃性、硬化性等の観点から、アミノシラン系カップリング剤が好ましく、特に、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等が好ましい。
【0034】
カップリング剤の含有量は、封止用樹脂組成物全量に対し、0.01〜3質量%の範囲であってもよく、0.1〜1質量%の範囲であってもよい。カップリング剤の含有量が0.01質量%以上であると、封止用樹脂組成物の成形性を向上させることができ、3質量%以下であると封止用樹脂組成物の成形時に発泡が低減でき、成形品にボイド又は表面膨れ等の発生を低減することができる。
【0035】
本実施形態の封止用樹脂組成物は、ブロッキングを抑制する観点から、溶剤を含まなくてもよい。また、当該封止用樹脂組成物が溶剤を含まない場合、半導体素子を封止する際に、溶剤残りによる信頼性低下を招くおそれがない。
【0036】
本実施形態の封止用樹脂組成物は、公知の封止用樹脂組成物の製造方法により得ることができ、例えば、次のように調製できる。まず、上記(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)無機充填材、及び上述した必要に応じて配合される各種成分をミキサー等によって十分に混合(ドライブレンド)した後、熱ロール又はニーダ等の混練装置により溶融混練し、加圧部材間で圧縮してシート状に成形する。より具体的には、封止用樹脂組成物を加熱軟化させながらロールあるいは熱プレスにより150〜1000μmの厚みに圧延する。
なお、封止用樹脂組成物を圧延する際の加熱温度は、通常、60〜150℃程度である。加熱温度が60℃以上であると圧延しやすくなり、150℃以下であると硬化反応が適度に進行し、成形性を良好にすることができる。
【0037】
次いで、得られたシートを冷却した後、適当な大きさに粉砕する。
シートの厚みは150〜1000μmであり、150〜700μmであってもよく、150〜500μmであってもよく、200〜400μmであってもよい。シートの厚みが上記範囲内であると、当該シートを粉砕することで、前述の特定の形状を有するフレーク状の封止用樹脂組成物を得ることができる。また、当該シートを粉砕した際に、JIS標準篩(JIS Z8801−1:2006規定)を用いた分級により、公称目開き150μmの篩を通過する微粉を生じにくくすることができる。本実施形態のフレーク状封止用樹脂組成物中に含まれる前述の封止用樹脂組成物aを5質量%以下に低減することができる。
なお、上記シートの厚みは、例えば、マイクロメーターを用いて当該シートの厚みを50点測定し、その平均値として求めることができる。
【0038】
粉砕方法は、特に制限されず、一般的な粉砕機、例えば、スピードミル、カッティングミル、ボールミル、サイクロンミル、ハンマーミル、振動ミル、カッターミル、グラインダーミル等を用いることができる。なかでも、スピードミルを用いることができる。
また、押出機を用いて封止用樹脂組成物を平紐状に成形し、カッター等で所定の長さに切断するホットカット法で粉砕してもよい。
粉砕物は、その後、篩い分級又はエアー分級等によって所定の粒度分布を持つフレーク状の集合体として、特性を整えて調製することができる。
【0039】
このようにして得られるフレーク状封止用樹脂組成物は、下記式(1)で表される隙間率を60%以下とすることができ、50%以下とすることができ、40%以下とすることができる。
隙間率(%)={1−(樹脂供給面積/キャビティ面積)}×100・・・式(1)
ここで、隙間率はキャビティ内へ封止用樹脂組成物を供給した時の、当該封止用樹脂組成物により被覆されていない面積比率を表す。キャビティ面積は成形金型の底部の有効面積であり、樹脂供給面積は封止用樹脂組成物によって被覆されている面積を示す。
上記隙間率が60%以下であると、封止用樹脂組成物の溶け性が良好となり、充填性が向上し硬化物にボイド等の発生を低減することができる。また、ワイヤ流れを十分に低減することができる。
【0040】
[半導体装置]
本実施形態の半導体装置は、上記フレーク状封止用樹脂組成物を用いて圧縮成形により半導体素子を封止することにより製造することができる。以下、その方法の一例を説明する。
まず、圧縮成形用金型の上型に、半導体素子を実装した基板を供給した後、下型のキャビティ内に上記封止用樹脂組成物を供給する。次に、上型及び下型を所要の型締圧力にて型締めをし、下型キャビティで加熱溶融した封止用樹脂組成物に半導体素子を浸漬する。次に、下型キャビティ内の加熱溶融した封止用樹脂組成物をキャビティ底面部材で押圧し、減圧下で、所要の圧力を加えて圧縮成形する。成形条件は、温度120℃以上200℃以下、圧力2MPa以上20MPa以下とすることができる。
【0041】
図1は、このようにして得られた本開示の半導体装置の一例を示したものであり、銅フレーム等のリードフレーム1と半導体素子2の間に、接着剤層3が介在されてもよい。また、半導体素子2上の電極4とリードフレーム1のリード部5とがボンディングワイヤ6により接続されており、さらに、これらが本開示の封止用樹脂組成物の硬化物(封止樹脂)7により封止されている。
【0042】
本実施形態の半導体装置は、前述の特定の形状を有する封止用樹脂組成物により半導体素子が封止されているので、成形時のワイヤ流れ等の発生が低減される。また、成形性も向上して、高い信頼性を有する半導体装置とすることができる。
また、前述の特定の形状を有する封止用樹脂組成物を用いると、半導体装置の半導体素子上の封止材の厚みを200μm以下としてもよく、150μm以下としてもよく、100μm以下とすることができる。
【0043】
さらに、封止用樹脂組成物として、前述の特定の形状を有するものを使用した場合には、封止用樹脂組成物を下型のキャビティに供給する際の飛散又は、減圧下で加熱溶融した樹脂が飛散する、いわゆる「樹脂漏れ」が低減されるため、高い信頼性を有する半導体装置を得ることができる。
【0044】
なお、本開示の半導体装置において封止される半導体素子は、特に限定されるものではなく、例えば、IC、LSI、ダイオード、サイリスタ、トランジスタ等が例示される。封止後の厚みが0.1mm以上1.5mm以下であるワイヤ流れの生じやすい半導体装置の場合に、本発明は有用である。
【実施例】
【0045】
次に実施例により、本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、表1中、空欄は配合なしを表す。
【0046】
(実施例1〜7、及び比較例1〜4)
表1に記載の種類及び配合量の各成分を常温(25℃)でミキサーを用いて混合し、次いで、熱ロールを用いて80〜130℃で加熱混練した。樹脂温度60〜110℃において、ロールを用い圧延、冷却し、表1に示す厚みのシートを得た。
得られたシートを、スピードミルを用いて粉砕し、JIS標準篩(JIS Z8801−1:2006規定)3種類(目開き150μm、1mm、2mm)を用い封止用樹脂組成物を調製した。
さらに、得られた封止用樹脂組成物を用いて半導体チップの封止を行った。すなわち、50mm×50mm×0.54mmのFBGA(Fine pitch Ball Grid Array)を、封止用樹脂組成物を用いて、金型温度175℃、成形圧力8.0MPa、硬化時間2分間の条件で圧縮成形した後、175℃、4時間の後硬化を行い、半導体装置を製造した。
【0047】
〔粉砕前のシートの厚み(d
ave.)、最大厚み(d
max)、最小厚み(d
min)の測定〕
マイクロメーターを用いて得られたシートの厚みを50点測定し、最大厚み(d
max)、最小厚み(d
min)を求め、さらに、測定した50点の平均値をシートの厚み(d
ave.)とした。
また、シートの厚み(d
ave.)に対する当該シートの最大厚み(d
max)と最小厚み(d
min)との差の割合を算出した。
【0048】
〔封止用樹脂組成物の厚みの測定〕
光学顕微鏡(倍率:200倍)を用いて得られた封止用樹脂組成物の厚みを50点測定し、測定した50点の平均値を封止用樹脂組成物の厚みとした。
また、実施例1〜7、及び比較例1、4で得られた封止用樹脂組成物50個を光学顕微鏡(倍率:200倍)により観察したところ、いずれも厚み方向に破断されており、当該封止用樹脂組成物の80質量%以上が、平行な一対の平面を有し、当該一対の平面間の距離(厚み)が150〜1000μmの範囲内であることを確認した。
【0049】
封止用樹脂組成物の調製に使用した表1に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
【0050】
(A)エポキシ樹脂
・エポキシ樹脂1:NC−3000(日本化薬(株)製、商品名;エポキシ当量:273、軟化点:58℃)
・エポキシ樹脂2:YX−4000H(三菱ケミカル(株)製、商品名;エポキシ当量:193、軟化点:105℃)
【0051】
(B)フェノール樹脂硬化剤
・フェノール樹脂1:MEH−7800M(明和化成(株)製、商品名;水酸基当量:175)
・フェノール樹脂2:BRG−557(昭和電工(株)製、商品名;水酸基当量:104)
【0052】
(C)硬化促進剤
・イミダゾール:2P4MHZ(四国化成(株)製、商品名)
【0053】
(D)無機充填材
・溶融シリカ1:MSR−8030((株)龍森製、商品名;平均粒径:12μm)
・溶融シリカ2:SC−4500SQ((株)アドマテックス製、商品名;平均粒径:1μm)
【0054】
(その他添加剤)
・シランカップリング剤:Z−6883(東レ・ダウコーニング(株)製、商品名;γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン)
・着色剤:MA−600(三菱ケミカル(株)製、商品名;カーボンブラック)
【0055】
また、上記各実施例及び各比較例で得られた封止用樹脂組成物及び半導体装置(製品)について、以下に示す方法で各種特性を評価した。その結果を表1に併せて示した。
【0056】
<評価項目>
(封止用樹脂組成物)
(1)スパイラルフロー
EMMI規格に準じた金型を用いて、温度175℃、圧力9.8MPaでトランスファ成形し、測定した。
【0057】
(2)ゲルタイム
JIS C 2161(2010)の7.5.1に規定されるゲル化時間A法に準じて、約1gの封止用樹脂組成物を175℃の熱盤上に塗布し、かき混ぜ棒にてかき混ぜ、ゲル状になりかき混ぜられなくなるまでの時間を測定した。
【0058】
(成形性)
(1)隙間率
TOWA(株)製、圧縮成形機 PMC1040−Dを用い、66mm×232mmのキャビティ内に実施例及び比較例のフレーク状または粉粒状の封止用樹脂組成物3g(封止後素子上の樹脂厚み100μm相当)を0.3g/sの速度で供給し、封止用樹脂組成物表面を上部からキャビティ底面に向けデジタルカメラで撮影し画像化した。得られた画像を二値化し、封止用樹脂組成物の面積を計測し、隙間率を下記式(1)により算出した。
隙間率(%)=(1−(樹脂供給面積/キャビティ面積))×100・・・式(1)
ここで、隙間率はキャビティ内へ封止用樹脂組成物を供給した時の、当該封止用樹脂組成物により被覆されていない面積比率を表し、キャビティ面積は成形金型の底部の有効面積であり、樹脂供給面積は封止用樹脂組成物によって被覆されている面積を示す。
なお、実施例1の隙間率を算出した際の二値化画像を
図2に、比較例3の隙間率を算出した際の二値化画像を
図3に示す。
【0059】
(2)充填性
TOWA(株)製、圧縮成形機 PMC1040−Dを用い、66mm×232mmのキャビティ内に実施例及び比較例のフレーク状または粉粒状の封止用樹脂組成物3g(封止後素子上の樹脂厚み100μm相当)を0.3g/sの速度で供給し、金型温度175℃、成形圧力5.0MPa、硬化時間2分間で圧縮成形した後、得られた成形品の未充填の有無を目視で確認した。未充填部分が無いものを「良好」、未充填部分があるものを「未充填」と評価した。
【0060】
(3)ボイド
TOWA(株)製、圧縮成形機 PMC1040−Dを用い、66mm×232mmのキャビティ内に実施例及び比較例のフレーク状または粉粒状の封止用樹脂組成物3g(封止後素子上の樹脂厚み100μm相当)を0.3g/sの速度で供給し、金型温度175℃、成形圧力5.0MPa、硬化時間2分間で圧縮成形し成形品を得た。得られた成形品のボイドを超音波探傷装置(日立建機ファインテック(株)製、FS300II)で観察し、下記の基準によって評価した。
A:ボイドの発生なし
B:ボイドの数が5個未満
C:ボイドの数が5個以上
【0061】
(4)ワイヤ流れ率
50mm×50mm×0.54mmのFBGAを、封止用樹脂組成物を用いて、金型温度175℃、成形圧力8.0MPa、硬化時間2分間の条件で圧縮成形した後、得られた成形品(FBGA)内部の金ワイヤ(直径18μm、長さ5mm)をX線観察装置((株)島津製作所製、SMX−1000)で観察し、最大変形部のワイヤ流れ率(封止前のワイヤの位置と封止後のワイヤの位置との最大距離のワイヤの長さに対する比率(%))を求めた。
【0062】
(半導体装置(製品))
(1)耐リフロー性(MSL試験)
半導体装置に対し、85℃、85%RHにて72時間吸湿処理した後、260℃の赤外線リフロー炉中で90秒間加熱する試験(MSL試験:Level 3)を行い、不良(剥離及びクラック)の発生率を調べた(試料数=20)。
【0063】
(2)耐湿信頼性(プレッシャクッカー試験:PCT)
半導体装置を、プレッシャクッカー内で、127℃、0.25MPaの条件下、72時間吸水させた後、260℃、90秒間のベーパーリフローを行い、不良(オープン不良)の発生率を調べた(試料数=20)。
【0064】
(3)高温放置信頼性(高度加速寿命試験:HAST)
半導体装置を、180℃の恒温槽中に1000時間放置し、不良(オープン不良)の発生率を調べた(試料数=20)。
【0065】
【表1】
【0066】
表1から明らかなように、本実施例の封止用樹脂組成物は、成形時の充填性が良好でワイヤ流れが極めて低かった。実施例と比較例においてスパイラルフローの値に差がないが、実施例は比較例よりも隙間率が低いことがわかる。なお、
図2に実施例1の隙間率を算出した際の二値化画像を、
図3に比較例3の隙間率を算出した際の二値化画像を示す。
図2及び
図3において白色部分はキャビティ内で封止用樹脂組成物により被覆されていない部分を示し、黒色部分はキャビティ内で封止用樹脂組成物により被覆されている部分を示す。
図2及び
図3から実施例1は比較例3よりもキャビティ内で封止用樹脂組成物が均一に充填されており隙間率が低いことがわかる。
本発明の封止用樹脂組成物は、フレーク形状のため金型内へ薄くかつ均一に供給することができるため、圧縮成形時の樹脂流動が少なくなり、良好な充填性と低いワイヤ流れ率を得られるものである。
また、当該封止用樹脂組成物を用いて製造された半導体装置は、MSL試験、プレッシャクッカー試験、高度加速寿命試験のいずれの試験においても良好な結果が得られており、樹脂封止型半導体装置として高い信頼性を有するものであることが確認できた。