特許第6941756号(P6941756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6941756
(24)【登録日】2021年9月8日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】コーキングドラム用支持スカート
(51)【国際特許分類】
   C10B 29/04 20060101AFI20210916BHJP
   C10B 57/04 20060101ALI20210916BHJP
   C10G 9/14 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   C10B29/04
   C10B57/04 101
   C10G9/14
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2021-518551(P2021-518551)
(86)(22)【出願日】2019年4月12日
(65)【公表番号】特表2021-524540(P2021-524540A)
(43)【公表日】2021年9月13日
(86)【国際出願番号】US2019027205
(87)【国際公開番号】WO2020027886
(87)【国際公開日】20200206
【審査請求日】2021年4月1日
(31)【優先権主張番号】62/713,836
(32)【優先日】2018年8月2日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521047915
【氏名又は名称】エイゼットゼット ダブリューエスアイ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スキャンドローリ、トニー
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭59−29939(JP,Y2)
【文献】 特表2002−508798(JP,A)
【文献】 特表2002−515089(JP,A)
【文献】 米国特許第2802596(US,A)
【文献】 中国実用新案第201704279(CN,U)
【文献】 中国実用新案第204193915(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 29/04
C10B 57/04
C10G 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムシェルを有するディレードコーキングドラムの熱機械的応力耐性を改善するための装置であって、
地面の上の前記コーキングドラムに取り付けて前記コーキングドラムを支持するのを補助するように構成された支持スカートセクションと、
前記支持スカートセクションを前記ドラムシェルの外側部分に接合するための接合縁部と、
前記支持スカートセクションに形成されT字型スロットと、
を備える、装置。
【請求項2】
前記T字型スロットは、側面によって形成された垂直セクションを有する垂直スロット部分と、水平セクションによって分離された左右の端部を有する第1の水平スロット部分とによって形成され、前記水平セクションは、肩部によって前記垂直セクションの前記側面に接合された左右の第1の水平面と、前記第1の水平面の対向に位置する第2の水平面とを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記垂直スロット部分の前記垂直セクションが、前記第1の水平スロット部分の前記左右の端部間の中心にある、請求項に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の水平スロット部分の前記左右の端部のうちの少なくとも1つが湾曲している、請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の水平スロット部分の前記左右の端部の両方が湾曲している、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記第1の水平スロット部分の対向に位置する前記垂直スロット部分の前記垂直セクションの一端が湾曲している、請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記左右の第1の水平面の両方が平坦である、請求項に記載の装置。
【請求項8】
前記第2の水平面が平坦である、請求項に記載の装置。
【請求項9】
前記第2の水平面が湾曲している、請求項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の水平スロットの対向に、前記垂直スロットの前記垂直セクションに接合された第2の水平スロットをさらに備える、請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記T字型スロットの垂直高さHが、前記スロットの水平幅Wよりも大きい、請求項に記載の装置。
【請求項12】
前記支持スカートセクションを横切って横方向に間隔を置いて配置された複数のT字型スロットをさらに備え、前記支持スカートが前記ドラムシェルに取り付けられたときに、前記複数のT字型スロットが前記コーキングドラムの少なくとも一部を取り囲む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
コーキングドラムのドラムシェルに取り付けるように構成され、前記コーキングドラム内の熱機械的応力耐性を改善するように構成された支持スカートセクションの一部を形成するための方法であって、前記方法は、
支持スカートセクションを提供するステップと、
前記支持スカートセクション内にT字型スロットを形成するステップであって、前記T字型スロットが、垂直セクションを有する垂直スロット部分と、水平セクションによって分離された左右の端部を有する第1の水平スロット部分とを含むステップと、
を含んでおり、前記水平セクションが、前記垂直スロット部分の前記垂直セクションを形成する側面に肩部によって接合された左右の第1の水平面と、前記第1の水平面の対向に位置する第2の水平面とを含む、
方法。
【請求項14】
前記垂直スロット部分及び水平スロット部分は、平坦なプレートである支持スカートセクション内に形成され、
前記垂直スロット部分及び水平スロット部分が形成された後、前記平坦なプレートが、前記支持スカートセクションを前記ドラムシェルに取り付けるのに適した所望の曲率を備えている、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
1つ又は複数の支持スカートセクションを提供することと、
前記1つ又は複数の支持スカートセクションのそれぞれで垂直スロット部分及び水平スロット部分を提供することと、
支持スカートを形成するために、前記1つ又は複数の支持スカートセクションをその端部で互いに固定的に接合することと、
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
既存の支持スカートを有するインサイチュ・コーキングドラムを提供するステップと、
前記既存の支持スカートの少なくとも一部を、前記T字型の開口部を有する前記支持スカートセクションと取り替えるステップと、
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
インサイチュ・コーキングドラムに取り付けられた支持スカート内の熱機械的応力耐性を改善するための方法であって、前記方法は、
前記支持スカートの1つのセクション内にT字型スロットを形成するステップであって、前記T字型スロットが、垂直セクションを有する垂直スロット部分と、水平セクションによって分離された左右の端部を有する第1の水平スロット部分とを含むステップを含んでおり、前記水平セクションは、前記垂直スロット部分の前記垂直セクションを形成する側面に肩部によって接合された左右の第1の水平面と、前記第1の水平面の対向に位置する第2の水平面とを含む、
方法。
【請求項18】
前記支持スカートが既存の垂直スロット部分を含み、前記T字型スロットが、前記既存の垂直スロット部分に接合される前記支持スカート内に水平スロット部分を提供することによって形成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の水平面から離れて湾曲する第2の水平面を有するT字型スロットを提供することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2018年8月2日に出願され、「IMPROVED SUPPORT SKIRT FOR COKING DRUM」と題された米国仮特許出願第62/713836号の利益を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、ディレードコーキングに関する。より具体的には、本発明は、コーキングサイクルの間の熱機械的負荷から生じるディレードコーキングドラム支持スカートの応力を低減するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
ディレードコーキングは、石油精製産業で、重質残油をより軽質の留分生成物及びコークスに転化、又はアップグレードするために、一般的に使用されるプロセスである。ディレードコーキングでは、重質残油は、最初は炉内で熱分解が始まる温度まで加熱される。プロセスの「装入」段階では、加熱された供給物が炉から大きなコーキングドラムに送られ、そこで分解が長期間にわたって進行する。分解プロセスは、より軽質(すなわち、供給物よりも低分子量)かつ蒸気の形態の炭化水素の生成をもたらす。これらの蒸気は、コーキングドラムの最上部まで上昇し、下流の生成物回収ユニットに送られる。供給物の熱分解の間にコークスも生成され、コーキングドラム内に徐々に蓄積される。コーキングドラム内のコークスの高さが所定の限界に達すると、コーキングドラムへの新たな供給物の導入は停止する。その時点でコーキングドラムに残留している蒸気状の生成物は、蒸気を使用してコーキングドラムからパージされる。そのパージプロセスの後、蓄積されたコークスは水で急冷される。次に、コーキングドラム内のコークスは、通常、油圧噴射を使用するか、高圧水ジェットで切削して粉砕される。次に、コーキングドラムの下端が開放され、粉砕されたコークスが底部シュートを介してコーキングドラムから排出される。その時点で、コーキングドラム及びその様々な構成要素は、さらに処理(例えば、すすぎ)などが行われてもよく、ディレードコーキングプロセスが繰り返される。
【0004】
図1を最初に参照すると、ディレードコーキングプロセスで使用されるタイプの典型的なコーキングドラム100(又は単に「ドラム」)の一部が示されている。ドラム100は、直径が3〜10数m、高さが10〜30数mの大型容器であることが多い。ドラム100は、典型的には、ライニングされていない鋼又はクラッド鋼でできた、約10〜30mmの厚みの外側シェルを含む。外側シェルは、上部円筒部102と、より小さな直径を有する下部円筒形セクション105で終端する下部円錐台形部104とを含む。シェルの下部104の円筒形セクション105は、典型的には、底部閉鎖ディスク106又は機械弁によって閉鎖される。前述の排出プロセスの間、この閉鎖ディスク106が開かれて、粉砕されたコークスがドラム100から流出することが可能になる。ドラム100は、多くの場合、シェルの下部外側部分に取り付けられた支持スカート108によって、地面G上で支持される。この具体的事例では、図1の詳細部に示されるように、溶接部110は、支持スカート108の上端をドラムシェルの上部円筒部102の底部と接合する。
【0005】
ほとんどのディレードコーキング操作では、セミバッチプロセスを提供するために、コーキングドラムがペアで交互に動作する。コーキングドラムの各ペアは、これまで説明された、装入−急冷−排出のサイクルを順次進行する。したがって、一方のコーキングドラムが、加熱された供給物を装入されている間、他方は急冷され、半連続プロセスで排出される。これにより、各コーキングドラムが繰り返し加熱及び冷却される。この加熱及び冷却の繰り返しにより、ドラム100とその支持スカート108との間の接合部の領域に高い金属応力が発生する。これは、例えば、急冷水がドラムに導入されてコークスを急冷するときに発生する。急冷水が導入されると、ドラム外側はドラム内の急冷水よりもはるかに高温になり、ドラム内側とドラム外側の温度差により大きな温度勾配が生じる。これらの温度勾配は、高い金属応力を引き起こす。その結果、スカート−シェル接合溶接部110及び隣接する領域は、厳しい熱機械的繰り返し応力による疲労破壊の影響を受けやすい。亀裂は、支持スカート108がドラム100に取り付けられている領域に発生することが多い。特定の深刻な事例では、これらの亀裂の結果として、ドラム100が支持スカート108から完全に離れ、非常に危険な状態となる。
【0006】
この問題に対処するための初期の業界の慣習の1つは、スカート−シェル接合溶接部110の近くの局所的な剛性及び応力を低減することであった。これは、例えば、支持スカート108内に単純な垂直スロットを配置することによって達成することができた。これらの垂直スロットの最も初期のバージョンには、特別な幾何学的形状にならずに終端し、機械加工が簡単な四角い端部があった。これらのスロットは、スカート取付け部の寿命及び性能を適度に改善することが分かった。その後、図2及び図3に示すように、これらの単純なスロットは、スロットの両端により大きな直径の穴(鍵穴114とも呼ばれる)を持つスロット112に置き換えられた。これらのスロット112及び鍵穴114は、スカート−シェル接合溶接部110の近くの局所的な剛性及び応力をさらに低減することが分かった。しかしながら、これらの方法は両方とも、ある程度の成功しか収めていない。一例では、このタイプの従来のスロットを有する支持スカートの有限要素解析の結果は、耐用寿命が1.8年未満であることを示した。他の場合の耐用寿命は変動するが、従来のスロット112などによって提供される寿命よりも長い耐用寿命が望まれる。
【0007】
したがって、必要とされるのは、コーキングドラムのスカート−シェル接合部における熱機械的繰り返し応力による疲労亀裂に対する耐性を改善する方法及び装置である。
【0008】
構造に関する注記
本発明の実施形態を説明する文脈における「a」、「an」、「the」という用語及び同様の用語の使用は、本明細書で別段の指示がない限り、又は文脈によって明確に矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」という用語は、特に明記しない限り、非限定的な用語(すなわち、「〜を含むが、これに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。「実質的に」、「一般的に」及び他の程度を表す用語は、そのように変更された特性からの許容可能な変動を示すことを意図した、相対的な修飾語である。本発明の物理的又は機能的特性を説明する際のこのような用語の使用は、このような特性をその用語が修飾する絶対値に限定することを意図するのではなく、むしろこのような物理的又は機能的特性の値の近似値を提供することを意図する。
【0009】
「取り付けられた」、「接続された」及び「相互接続された」などの取付けや結合などに関する用語は、本明細書で明示されていない限り、又は文脈によって様々な関係があると明確に示されていない限り、構造物が、介在する構造物を介して直接的もしくは間接的に互いに固定されるか又は取り付けられる関係、並びに可動式及び固定式の両方での取付け又は関係を指す。「動作可能に接続された」という用語は、関連する構造物がその関係によって意図した通りに動作することを可能にするような取り付け、結合、又は接続のことである。
【0010】
本明細書における任意及びすべての例又は例示的な言葉(例えば、「など」及び「好ましくは」)の使用は、本発明及びその好ましい実施形態の理解をより容易にすることを意図しているに過ぎず、本発明の範囲に制限を設けることを意図していない。明細書のいかなる内容も、具体的に述べられていない限り、本発明の実施に不可欠な要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0011】
「セクション」という用語は、本明細書に開示されるT字型スロットを有する支持スカートの一部を含み得る。「セクション」という用語は、T字型スロットを備えた支持スカート全体であってもよい。
【発明の概要】
【0012】
上記及び他の必要性は、ドラムシェルを有するディレードコーキングドラムにおける熱機械的応力耐性を改善するための装置によって満たされる。この装置は、地面の上のコーキングドラムに取り付けてコーキングドラムを支持するのを補助するように構成された支持スカートセクションを含む。接合縁部は、支持スカートセクションをドラムシェルの外側部分に接合する。T字型スロットは、支持スカートセクション内に形成され、接合縁部の近くに位置している。T字型スロットは、互いに接合された垂直スロット部分及び水平スロット部分によって、1つのスロットとして形成されてもよい。特定の実施形態では、スロットの垂直高さHは、スロットの水平幅Wよりも大きい。
【0013】
場合によっては、T字型スロットは、側面によって形成された垂直セクションを有する垂直スロット部分と、水平セクションによって分離された左右の端部を有する第1の水平スロット部分とによって形成される。その場合、水平セクションには、肩部によって垂直セクションの側面に接合された左右の第1の水平面が含まれる。また、第2の水平面は、第1の水平面の対向に位置している。垂直スロット部分の垂直セクションは、第1の水平スロット部分の左右の端部間の中心にあってもよい。特定の実施形態では、第2の水平スロットは、第1の水平スロットに対向して垂直スロットの垂直直線部分に接合される。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の水平スロット部分の左右の端部の少なくとも1つは湾曲している。他の場合には、第1の水平スロット部分の左右の端部は両方とも湾曲している。場合によっては、第1の水平スロット部分の対向に位置する垂直スロット部分の垂直セクションは湾曲している。場合によっては、左右の第1の水平面は両方とも平坦である。特定の実施形態では、第2の水平面は平坦である。他の実施形態では、第2の水平面は湾曲している。特定の実施形態によれば、複数のT字型スロットは、支持スカートセクションを横切って横方向に間隔を置いて配置され、その結果、支持スカートがドラムシェルに取り付けられたときに、複数のT字型スロットは、コーキングドラムの少なくとも一部を取り囲む。
【0015】
本発明のさらなる利点は、図面と併せて検討した場合の詳細な説明を参照することによって明らかである。これらの図面は、細部をより明確に示すために縮尺されておらず、同様の参照番号は、いくつかの図を通して同様の要素を表している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】コーキングドラム及びそのコーキングドラムに取り付けられた支持スカートの上部円筒部及び下部円錐台形部を部分的に示す。
図2】コーキングドラムに取り付けられた従来技術のスロット付き支持スカートの正面図である。
図3図2の線3−3に沿った断面図である。
図4】本発明の第1実施形態によるT字型スロットを有する支持スカートセクションの正面図である。
図5】コーキングドラムに取り付けられた図4の支持スカートセクションを示す斜視図である。
図6】本発明の代替実施形態によるT字型スロットを有する支持スカートセクションの正面図である。
図7】コーキングドラムに取り付けられた図6の支持スカートセクションを示す斜視図である。
図8】複数のT字型スロットが形成された支持スカートセクションの正面図である。
図9】支持スカート全体を形成するために互いに接合されている本発明の一実施形態による複数の支持スカートセクションを示す。
図10】既存の(インサイチュの)支持スカートに形成された開口部に後付けされる本発明の一実施形態による支持スカートセクションを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好ましい実施形態のこの説明は、添付の図面と関連して読まれることを意図しており、これらの図面は本発明の記載された説明全体の一部と見なされるべきである。図面は必ずしも縮尺どおりではなく、本発明の特定の特徴は、明確性及び簡潔性のために、縮尺が誇張されて示されているか、又はいくらか概略的な形態で示されていてもよい。
【0018】
ここで図4及び図5を参照すると、本発明の第1実施形態によるドラムシェルを有するディレードコーキングドラムにおいて、熱機械的負荷から生じる応力を再分散及び低減させるため、かつ、熱機械的応力による亀裂に対する耐性を改善するための装置が提供される。図示されているのは、大文字の「T」に似たスロット202を備えた、支持スカート108に取り付けられるか、又は支持スカートの一部として形成されている支持スカートセクション200である。支持スカートセクション200の最上部の近くに位置する接合縁部203は、溶接部110を介して、コーキングドラムの上部円筒部102に接続されている。支持スカートセクション200は、上部円筒部102又は下部円錐台形部104のいずれかに取り付けられ得る。支持スカートセクション200は、スカート108と、さらに重要なことには、改善された熱機械的応力耐性を有するスカート−シェル接合溶接部110とを提供する。以下でさらに詳述するように、支持スカートセクション200は、支持スカートの一部又は全体を形成することができ、それは、新規の設置物の一部として、又は既存の支持スカートへの後付け部品の一部としてドラムシェルに取り付けられてもよい。
【0019】
スロット202は、第1の水平スロット部分206と互いに接合された垂直スロット部分204によって形成されている。垂直スロット部分204は、端部210で終端する垂直セクション208を含む。第1の水平スロット部分206は、対向する左右の端部212を含む。前述の円形の鍵穴114とは対照的に、スロット部分206の左右の端部212は、(従来技術で説明されている円形の鍵穴に対して細長いカプセル形状の鍵穴を形成するために)端部212の間に位置する水平セクション214によって分離されている。そのカプセル形状を確実なものにするために、第1の水平スロット部分206の垂直高さは、第1の水平スロット部分の水平幅よりも小さくなっている。水平セクション214は、垂直セクション208の左右の側面に隣接している第1の水平面216を含む。この特定の実施形態では、左右の第1の水平面216は、水平セクション114に平坦な底部を提供し、丸みを帯びた肩部219によって垂直セクションの側面217に接合される。好ましい実施形態では、肩部219は、垂直スロット部分204と水平スロット部分206との間の移行が円滑になるように丸みを帯びている。水平セクション214はまた、水平セクションの平坦な最上部を形成して第1の水平面216の対向に位置する第2の水平面218を含む。
【0020】
好ましくは、垂直スロット部分204は、左右の端部212の間で中心となるように、第1の水平スロット部分206の中心から下向きに延在する。しかしながら、他の実施形態では、垂直スロット部分204は、水平スロット部分206の全長に沿った任意の位置(両側の端部212の端から端までを含む)に、左又は右にオフセットされていてもよい。他の実施形態では、垂直スロット部分204は、第1の水平スロット206の第2の水平面218から上向きに延在してもよい(すなわち、逆「T」字形)。いくつかの実施形態では、スロット202は、大文字の「I」又はI型鋼の外形に似ていてもよい。その場合、第2の水平スロット221が、(図4の破線で示されているように)垂直スロット部分204の垂直セクション208の閉鎖端210に置き換わる。
【0021】
好ましい実施形態では、垂直スロット部分204の端部210は、鋭利な角部をなくすために、また、スロット202のその先端部における応力集中を最小限にするために、丸みを帯びているか又は湾曲している。同様に、水平スロット部分206の左右の端部212も、これらの位置での応力集中を最小限にするために、丸みを帯びているか又は湾曲している。これらの様々な場所での応力集中を最小限にすることで、熱機械的応力下での亀裂に対するスロット202の耐性が向上する。端部を丸くすることは、初期の長方形のスロットデザインの単純な四角い端部に対する改善点である。しかしながら、垂直スロット部分204及び水平スロット部分206の両方の端部が丸みを帯びているにもかかわらず、実験結果は、応力に起因する亀裂が第1の水平スロット部分206の両端部212で時々起こることを示した。
【0022】
したがって、図6及び図7を参照すると、熱機械的応力に対する耐性が改善された支持スカートセクション220の代替的なデザインが開示されている。代替的な支持スカートセクション220は、支持スカートセクション200に非常に似ている。支持スカートセクション200と同様に、代替的な支持スカートセクション220は、大文字の「T」に似たスロット222を含み、このスロットは、第1の水平スロット部分226と互いに接合された垂直スロット部分224によって形成されている。垂直スロット部分224は、端部230で終端する垂直セクション228を含む。第1の水平スロット部分226は、対向する左右の端部232を含む。スロット部分226の左右の端部232は、それらの間に位置する水平セクション234によって分離されている。水平セクション234は、左右の第1の水平面236を含み、これらは、肩部237によって垂直スロット部分224の垂直セクション228の側面235に接合されている。さらに、水平セクション234はまた、第1の水平面236の対向に位置する第2の上面238を含む。
【0023】
しかしながら、スロット202とは異なり、スロット222の第2の上面238は平坦ではない。代わりに、上面238は曲面を備えており、これは、繰り返し応力に対する支持スカートセクション220の耐性をさらに改善することが分かっている。好ましくは、上面238は、湾曲した左右の端部232とつながっており、その結果、第1の水平スロット部分226の少なくとも最上部面に沿って、鋭利な角部や移行部などがない。この連続的な曲線を提供することにより、応力に起因する亀裂は、端部232において丸みを帯びた接線点223で形成される可能性が低いこと、むしろ、応力に起因する亀裂は、第2の上面238の中心に位置するまさにただ1つの開始部位225で始まる可能性が高いことが分かってきた。いくつかの実施形態では、第1の水平面236も、前述の連続的に湾曲した表面をさらに拡張するために湾曲していてもよい。しかしながら、そのカプセル形状を確実なものにするために、第1の水平スロット部分226の垂直高さは、第1の水平スロット部分の水平幅よりも小さくなっている。
【0024】
スロット222(及びスロット202)は、高さHと幅Wとを有する。特定の場合には、高さHと幅Wとは互いに等しい。しかしながら、より好ましくは、より「T」形状に近似するために、垂直スロット部分224の高さは、第1の水平スロット部分226の幅よりも大きく、高さHは、幅Wよりも大きい。例えば、図4に示される実施形態では、スロット202は、約16インチに等しい高さHと、約6インチに等しい幅Wとを有する。図6に示される実施形態では、スロット222は、第2の上面238が上方向に丸みを帯びているために、わずかに高く、約16.47インチに等しい高さHと、約6インチに等しい幅Wとを有する。
【0025】
したがって、本発明によれば、従来技術の支持スカートに多く見られる従来のスロット112及び鍵穴114は、T字型(又はI字型)のスロット202又はスロット222に置き換えられる。鍵穴114の有無にかかわらず、垂直スロット112をT字型スロット202又はスロット222と置き換えることにより、コーキングドラムのスカート−シェル接合溶接部110に近接した熱機械的繰り返し応力が大幅に減少し、溶接部の寿命が大幅に改善されることが分かっている。スロット112や鍵穴114の特徴のような、従来の応力緩和デザインを備えた従来の支持スカートの実験的な有限要素解析の結果、耐用寿命は1.8年未満であった。やや意外なことに、本発明のT字型スロット202の使用によって、支持スカートの耐用寿命の実質的増加がもたらされた。T字型スロットを使用すると、耐用寿命が2倍になる場合があった。また、ここに開示されているT字型スロットデザインを使用することにより、支持スカートの耐用寿命が5倍以上延長された場合もあった。
【0026】
ここで図8を参照すると、本明細書で論じられる1つ又は複数のT字型スロット222(又はスロット202)は、1つの支持スカートセクション220に間隔を置いて形成され得る。スロット222の正確な寸法及び間隔は、様々な動作条件、構成材料、スカート−シェル取付け構成などにより、コーキングドラムごとに異なる。大きさ及び寸法は、必要に応じて既知の方法に従って最適化できる。これには、例えば、有限要素解析手法を使用して反復応力解析を実行することも含まれる。この解析では、スロットの最上部及び端部での応力集中を最小限にするために、スカートの厚さ、スロットの寸法、スロットの間隔などを含む、いくつかの要因を考慮することによって、作動サイクルの間にコーキングドラムの熱機械的負荷によって亀裂が発生し始める前に、スロット222の寿命を最大化する。これらの要因を変化させると、支持スカートセクション220の特性が変化し、多くの場合、スロット位置の応力レベルに直接的な影響を与え、スロット222の寿命に影響を与える。スロットの寸法変化によってドラムスカートの寿命に影響を与えることに加えて、コーキングドラムの構造的安定性を考慮する必要がある。
【0027】
スロット222は、図2に示されるスロット112のような、従来の長方形のスロット、又は鍵穴を有するスロットを備えたものを含む、インサイチュ又は所定位置の支持スカートに形成されてもよい。その場合、スロット112は、既存の垂直スロットに接合される既存の支持スカート内の1つ又は複数の水平スロット部分を提供することによって、本明細書に開示される「T」又は「I」字型のスロットの1つに変更されてもよい。しかしながら、他の場合には、製造プロセスを単純化するために、スロット222は、レーザー又はウォータージェットを使用する切断を含む既知の機械加工方法を使用して別個の平坦なプレートに形成されてもよく、その後、そのプレートは、支持スカートに追加される。その場合、一旦スロット222が形成されると、プレートは、コーキングドラムへの取付けに適したプレートにするために、所望の曲率に丸められる。図9に示すように、1つ又は複数の支持スカートセクション220は、その端部で互いに接合されて、支持スカート全体を形成し得る。この方法は、例えば、新しいコーキングドラムの初期設置のために使用することができる。あるいは、図10に示すように、1つの支持スカートセクション220を使用して、支持スカート108の一部だけを取り替えることができる。これは、例えば、インサイチュ・コーキングドラムに取り付けられた支持スカートの修理又はメンテナンスの際に有用な場合がある。
【0028】
この説明は多くの詳細を含むが、これらは本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、単に本発明の好ましい実施形態のいくつかの例示を提供するだけであり、本発明を実施するために発明者によって企図される最良の態様を提供するものとして解釈されるべきである。本明細書に記載されているように、本発明は、本発明が関係する当業者によって理解されるように、様々な改変及び適応が可能である。
図1
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図8
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図10