【実施例】
【0059】
ポビドンヨードおよびブデソニドを含有する本発明の組成物を、鼻腔内における組成物の滞留時間を延長できる多糖類などのイオン感受性インサイチュゲル形成材料を1種以上用いて製剤化した。25℃で疑似鼻汁(SNF)添加の前後、および疑似鼻汁添加後の生理的条件下(34℃−SNF)において、組成物の粘度とゲルマトリックスの濃度の関係を調べることによって、ポビドンヨードおよびブデソニドを用いて組成を最適化した。ゲル形成マトリックスは、SNFの添加後の34℃における粘度が、SNF添加前の25℃における粘度よりも高いことが必要である。このようなゲルマトリックスのみが、インサイチュでゲルを形成する可能性を持ち得る。
【0060】
実施例1 製剤中の好適なPVP−I濃度のスクリーニング
0.064%(w/w)のブデソニドおよび0.25%(w/w)のNaClが組成物に含まれ、ジェランガム濃度はそれぞれ0.1%、0.3%、0.5%(w/w)であり、PVP−I濃度はそれぞれ0.2%、0.5%、0.8%、1.0%(w/w)に設定した。異なる濃度のジェランガムおよびPVP−Iを別々に混合して、本発明の組成物の基本特性を調査した。
【0061】
【表1】
【0062】
高剪断速度(100/s)で25℃、および低剪断速度(0.1/s)で34℃において、疑似鼻汁(SNF)と混合する前および後の試料粘度を調べた。これは、試料が鼻腔内に噴霧され、薬剤が疑似鼻汁と接触する前後での粘度の変化をシミュレートするため、並びに試料の噴霧能力および疑似鼻汁と混合されたときのゲル形成能力を比較するために実施した。低剪断速度(0.1/s)、34℃でSNFと混合した後の試料粘度と、高剪断速度(100/s)、25℃の試料粘度との差を、Δη1(Pa・s)と表示し;低剪断速度(0.1/s)、34℃でSNFと混合した後の試料粘度と、低剪断速度(0.1/s)、34℃の資料粘度との差を、Δη2(Pa・s)と表示した。
【0063】
【表2】
【0064】
実験結果を表3および表4に示し、表3のデータに基づいて
図1を作成した。具体的には、
図1は異なる組成物の粘度を示す。
図1、A、B、Cは、それぞれDGG0.1%、DGG0.3%、DGG0.5%の組成物の粘度を示し、A、B、Cにおいて、黒、灰色、および薄灰色は、それぞれ高剪断速度(100/s)で25℃、低剪断速度(0.1/s)で34℃の混合前、および低剪断速度(0.1/s)で34℃の混合後を表す。D、E、Fは、それぞれ、0.1%のDGG、0.3%のDGG、0.5%のDGGを有する組成物の粘度(Δη1値)を示す。
【0065】
疑似鼻汁(SNF)を添加する前と後の粘度変化および試料特性を比較することで、PVP−Iは、確かに、疑似鼻汁(SNF)との混合の前後で試料粘度を改善したと判断できる。以下の実施例では、組成物中の適切なPVP−I濃度として0.5%および0.8%を選択したが、これらの2種類の組成物の粘度は、疑似鼻汁(SNF)添加後に低下した。したがって試料粘度を最適化するためにNaCl濃度を変更することが必要であった。粘度変化に基づき、斜体で記載された組成物はインサイチュでゲルを形成しないことから除外し、太字の組成物は、潜在的に良好なインサイチュゲル形成組成物であることから、好ましい組成物である。
【0066】
【表3】
【0067】
【表4-1】
【表4-2】
【0068】
実施例2 製剤中のDGGおよびNaCl量の配合スクリーニング
秤量した微粉化ブデソニドおよびグリセリンを十分に混合し、2%PVP−I溶液および純水を、ジェランガム重量を除く試料の全量に加えた。1%ジェランガム溶液を、撹拌下で全量に加えた。トロメタミンおよび塩酸を用いて、pHを4〜5.5に調整した。各群の母液を、表5に示す組成に従って(NaClなし)で調製し、異なる濃度のNaCl溶液50μLを、母液2mLに加えて、組成物中のNaClの最終濃度を0%〜0.6%の範囲にした。NaCl濃度が異なる試料溶液を表6に示す。
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
高剪断速度(100/s)で25℃および低剪断速度(0.1/s)で34℃においてSNFと混合する前および後の試料粘度を求めた。これは、試料が鼻腔内に噴霧される前後の粘度の変化をシミュレートするため、並び試料噴霧能力およびSNFと接触したときのゲル形成能力を比較するために実施した。低剪断速度(0.1/s)、34℃でSNFと混合した後の試料粘度と、高剪断速度(100/s)、25℃の試料粘度との差を、Δη1(Pa・s)と表示し;低剪断速度(0.1/s)、34℃でSNFと混合した後の試料粘度と、低剪断速度(0.1/s)、34℃の資料粘度との差を、Δη2(Pa・s)と表示した。50μLの試料(SNFと混合する前および後)が、垂直に置いた15mL遠心管の12mLの目盛線から1.5mLの目盛線まで流れる時間を測定した。(太字の組成物は、より好適な製剤を示す)
【0072】
【表7】
【0073】
【表8】
【0074】
【表9】
【0075】
【表10】
【0076】
図2は、DGGの濃度が異なる各種組成物(すべて0.8%のPVP−Iを含有)の、SNFと混合する前および後のゲル形成状態を示す。0.1%のDGGおよび0.3%のDGGを含有する組成物については、図は、左から右へ、0.1%〜0.6%のNaClの結果を示す。0.5%のDGGを含有する組成物については、図は、左から右へ、0.0125〜0.3%のNaClの結果を示す。
【0077】
図3は、0.8%のPVP−Iを含有する組成物の振とう後の物理的状態を示す(A:DGG0.3%、B:DGG0.5%)。
【0078】
図4は、0.5%のPVP−Iを含有し、NaCl濃度が異なる組成物の粘度を示す(1は、25℃および100s
-1における粘度測定を表し;2は34℃および0.1s
-1における粘度測定を表し;3は、SNFと混合した後の、34℃、0.1s
-1における粘度測定を表す)。
【0079】
図5は、0.8%のPVP−Iを含有し、NaCl濃度が異なる組成物の粘度を示す(1は、25℃および100s
-1における粘度測定を表し;2は34℃および0.1s
-1における粘度測定を表し;3は、SNFと混合した後の、34℃、0.1s
-1における粘度測定を表す)。
【0080】
疑似鼻汁(SNF)と混合する前後の粘度変化および組成物特性を比較することによって、組成物を、表11に記載の配合に従って最適化した。粘度は疑似鼻汁(SNF)の添加後に上昇し、粘度は混合前に適切である。分布実験を行う2つの群を選択する。(太字で標識)
【0081】
【表11】
【0082】
実施例3 組成物−粘度曲線の調査
【0083】
【表12】
【0084】
この研究の目的は、製剤中のNaCl濃度の差が試料のゲル化特性をいかに変えるかを調べることである。
【0085】
プロセス
【0086】
1)溶液調製
【0087】
溶液1(1.0%DGG溶液):
29.7gの超純水を、50mLビーカーに入れた;次いで、0.3gのDGGを、撹拌下のビーカーにゆっくりと添加して、分散させた。次いで、溶液を90℃の水浴に入れ、1時間撹拌して、ジェランガム溶液を十分に膨潤させた。1時間後、撹拌を停止し、ビーカーを水浴から取り出して、撹拌を続けて溶液を室温(25℃)まで冷却した後、撹拌を停止した。この溶液を、溶液1と表示した。
【0088】
溶液2(2%ポビドンヨード水溶液):
溶液1の冷却を開始したときに、2%ポビドンヨード水溶液を調製する必要がある。
【0089】
39.2gの超純水を50mLビーカーに入れ、ビーカーを磁気撹拌機の上に置いて、一定速度で撹拌を開始した。更に、0.8gのポビドンヨードを撹拌下のビーカーにゆっくりと添加し、一定速度で約10分間撹拌した。この溶液を、溶液2と表示した。
【0090】
溶液3
微粉化ブデソニド0.064g、グリセリン2.3gおよび塩化ナトリウム0.1gまたは0.15gまたは0.20gを、すべて100mLビーカーに入れ、十分に撹拌して溶液3を得た。
【0091】
溶液4
溶液2を、撹拌下で溶液3にゆっくりと添加した。均一に分散した後、25gの超純水を加え、十分に混合されるまで撹拌した。次に、冷却した溶液1を加え、十分に混合されるまで撹拌した。次に、0.5M Tris水溶液を用いてpHを4〜5.5に調整し、十分に混合し、総重量が100gになるまで超純水を加えて、最終溶液として使用する。
【0092】
試験方法:
1.1試験条件:
1.1.1 SNFと混合する前の試験条件:初期温度:25℃、昇温速度:2℃/分、最終温度:34℃;剪断速度:0.1/s;ギャップ:1000μm
1.1.2 SNFと混合した後の試験条件:一定温度:34℃;剪断速度:0.1/s;ギャップ:1000μm
【0093】
結果:
下の表13の結果のまとめに加えて、
図6〜11にも、様々な組成物の、NaCl溶液と混合する前または後の、ある時間にわたる粘度変化を示す。具体的には、
図6は、0.1%のNaClと混合する前の、ある時間にわたる組成物1の粘度を示し;
図7は、0.15%のNaClと混合する前の、ある時間にわたる組成物2の粘度を示し;
図8は、0.2%のNaClと混合する前の、ある時間にわたる組成物3の粘度を示し;
図9は、0.1%のNaClと混合した後の、ある時間にわたる組成物1の粘度を示し;
図10は、0.15%のNaClと混合した後の、ある時間にわたる組成物2の粘度を示し;
図11は、0.2%のNaClと混合した後の、ある時間にわたる組成物3の粘度を示す。
【0094】
【表13】
【0095】
結論
0.1%NaClおよび0.15%NaClを用いた組成物は、混合前の溶液粘度曲線で、ゆっくりと低下する傾向を示した。この現象は、DGGの特性と一致し、温度上昇につれて粘度が低下する。0.2%NaClを用いた組成物はこの現象を示さず、温度上昇につれて粘度も上昇する。したがって、0.2%NaClを用いた組成物は、インサイチュゲル形成組成物として本特許発明の1つとみなすことができる。驚くべきことに、組成物は、イオン感受性および温度感受性のいずれでもあることも発見された。
【0096】
0.15%のNaClを含有する組成物の混合前(約34℃)および混合後の粘度データは、2.55655Pa.sから12.3283Pa.sへの突然の粘度上昇を示し、これはゲル形成の可能性を意味する。0.2%NaCl組成物の混合前(約34℃)および混合後の粘度データは、8.73697Pa.sから9.85096へのわずかな粘度上昇を示す。換言すれば、混合後に、0.15%のNaClを含有する組成物の最終粘度は、0.2%NaCl製剤の最終粘度よりもわずかに高かった。しかし、これら2種類の製剤の最終粘度は、比較的高く、持続放出要件に適合し得る。
【0097】
実施例4:PVP−I、プロピオン酸フルチカゾン懸濁液、1.0mgの調製
PVP−I濃度が約0.8重量%以上の範囲のブデソニド懸濁液を、本明細書に記載のように調製した。非限定例として、組成物を、約0.8%のPVP−Iを用いて調製し、微粉化プロピオン酸フルチカゾン(0.064%)、グリセリン(2.3%)、DGG(0.25%)、塩化ナトリウム(0.2%)、および純水と合わせ;トロメタミン/HClを添加して、pHを標的である4〜6の範囲に調整した。この等張混合物を、1日で完全に投与する場合、1.0mgのプロピオン酸フルチカゾンを全日間用量として、副鼻腔スプレーにより送達した。
【0098】
実施例5:PVP−I、モメタゾン懸濁液、1.0mgの調製
PVP−I濃度が約0.8重量%以上の範囲のブデソニド懸濁液を、本明細書に記載のように調製した。非限定例として、組成物を、約0.8%のPVP−I製品を用いて調製し、微粉化モメタゾン0.064%、グリセリン2.3%、DGG0.25%、塩化ナトリウム0.2%、および純水と合わせ;トロメタミン/HClを添加して、pHを標的である4〜6に調節した。この等張混合物を、1日で完全に投与する場合、1.0mgのプロピオン酸フルチカゾンを全日間用量として、副鼻腔スプレーにより送達した。
【0099】
実施例6:PVP−I防腐ステロイド溶液の抗菌活性
非限定例では、PVP−I防腐ステロイド溶液を、実施例1〜5に記載の方法に従って調製した。これらの溶液を、次いで、インビトロ微生物活性について試験した。微生物活性は、例えば、口内に存在する細菌(P.ジンジバリス(P.gingivalis)に対して、またはその他の細菌に対して、試験することができる。別の実施例では、死滅時間試験を、ゲンタマイシン耐性緑膿菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、大腸菌(E.coli)、クラミジア・トラコーマなどの一連のグラム陰性およびグラム陽性生物、並びにアデノウイルスおよびライノウイルスなどの選択されたウイルスの対数期培養を用いて実施した。使用した対照は、市販の抗微生物製品のステロイド調剤を含み得る。細菌試料を、30秒、1、2、5、10および15分で採取し、ヨウ素不活性化剤を含有する培地に移した。同様に、ウイルス死滅時間試験は、1分間で試料採取し、不活性化培地に移した。実験試料で得られた結果を、対照試料と比較して、本発明の組成物の抗菌活性レベルを評価した。
【0100】
実施例7:鼻用ステロイド調剤におけるPVP−Iの抗微生物防腐剤有効性試験
非限定例では、PVP−I防腐ステロイド溶液を、実施例1〜5に記載の方法に従って調製した。次いで、これらの溶液の防腐剤有効性を、米国薬局方(United States Pharmacopeia)、総則(General Chapter)51に記載の標準手順に従って試験した。実施例1〜5で調製したヨードフォア防腐剤を、同じく米国薬局方総則51の記載に従って、防腐剤有効性のすべての要件を満足する方法で用いた。
【0101】
実施例8:クロルヘキシジン持続放出性インサイチュゲル形成製剤
インサイチュゲル形成クロルヘキシジングルコン酸塩組成物は、1つ以上のイオン活性化インサイチュゲル形成材料を用いて製剤化できる。ポリマーインサイチュゲル形成剤には、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、多糖ゲル、Gelrite(登録商標)、アルギン酸塩、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのようなセルロースポリマー、およびアクリル酸のポリマーまたはコポリマーなどのカルボキシ含有ポリマー、並びに他のポリマー粘滑剤が含まれ得るが、これらに限定されない。1種以上のインサイチュゲル形成剤を組成物において選択することができる。好ましいポリマーインサイチュゲル形成剤は、脱アセチル化ジェランガム(Gelrite(登録商標))であり得る。
【0102】
実施例9:放射性分布実験
表13に従って、微粉化ブデソニドおよびグリセリンを十分に混合し、この混合物にジェランガム、次いで純水を添加して、2mLの製剤を調製した。60μLの放射性PVP−I
125(2mg/mL)を、90μLのPVP−I非含有試料に加え、ピペット操作により混合して、本発明の放射性組成物を調製した。
【0103】
SDラット(約160g)に、麻酔のため、2%ペントバルビタール400μLを筋肉注射した。このようにして作製した放射性組成物10μLを、右鼻孔内に投与し、放射性核種I
125分布を、投与から0、0.5、1、2、3、4、5、6、8時間後にガンマカメラで撮影し、10μLの試料を用いて較正した。
【0104】
【表14】
【0105】
ガンマカメラ定量的結果:試料群および対照群のI
125鼻腔残留率を計算し、結果を表15に示した。
図12は、表15のデータから作成したものであり、試料および対照群のI
125鼻腔残留率分布−時間曲線を示す(統計的結果:0.1%DGGおよび対照、**、P<0.01;0.3%DGGおよび対照、***、P<0.001)。
【0106】
【表15】
【0107】
図13は、ガンマカメラ分布結果を示し、図中、1,2、および3はそれぞれ、組成物1、2、および3を表す。3群において、第2のラットでは、明らかなシグナルは認められず、これは一部の組成物が噴出すること、および組成物を投与したときに流動性が高すぎて滞留せず、直接飲み込まれることに起因すると考えられる。
【0108】
遡及的I
125鼻腔分布研究は、ラット鼻腔滞留能力は、DGG0.3%の群>DGG0.1%の群>DGGなしの群であったことを示す。この結果は統計的に差があった。したがって、0.3%のDGGを有する組成物は、0.1%のDGGを有する組成物よりも優れており、これを放出実験に使用した。
【0109】
実施例10:インビトロ溶解実験
4mLの本発明の組成物(0.3%のDGG、0.2%のNaCl、および0.8%のPVP−Iを含有)を、14KDa透析バッグに入れて、34.5℃に予め加温した100mLのSNFに入れた。組成物を水浴振とう器で100rpmで振とうした。特定の時点(0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、6時間)で50mLの放出媒体を取り出し、同量の放出媒体(34.5℃に予め加温)を速やかに添加した。チオ硫酸ナトリウム滴定(0.01M)によって利用可能なヨウ素濃度を求め、滴定終点で消費されたチオ硫酸ナトリウム溶液の体積を用いて、その累積放出量を計算した(n=3)。累積放出試験結果を、以下に表16として示す。
図14は、表16のデータを累積放出曲線として示す。
【0110】
【表16】
【0111】
結果は、0.3%のDGGを含有する組成物の放出速度は、対照群よりも遅いことを示した。当該組成物は、持続放出効果も有し、6時間継続的に放出した。
【0112】
組成物の最適化
試料調製プロセス:表16に記載の組成に従い、微粉化ブデソニドおよびグリセリンを十分に混合し、次いで、2%PVP−I溶液およびNaClを当該混合物に添加した後、ジェランガムを含まない混合物に純水を添加した。次いで、1%ジェランガム溶液を撹拌下で混合物に加えた後、組成物のpHをトロメタミンおよび塩酸を用いて4〜5.5の範囲に調整した。表17に、最終組成を示す。
【0113】
【表17】
【0114】
実施例11 安定性研究
上記の調製方法に従って500gの試料溶液を調製し、1本につき10gずつ50本の瓶に分けた。次いで、瓶を、25±2℃、RH60%±5%の恒温恒湿室に置き、安全性試験の時間点として0日、3日、7日および10日を設定した。表18に、試験結果を記載する。
【0115】
【表18】
【0116】
結果は、この試験に使用した組成物には塊があったこと、PVP−Iおよびブデソニドは組成物中で非常に安定であったこと、および組成物は4.60のpHレベルで10日間を超える試験期間にわたって非常に安定であったことを示す。
【0117】
実施例12:インビトロ抗菌および抗真菌性バイオフィルム研究
黄色ブドウ球菌、緑膿菌、およびカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)の確立されたバイオフィルムに対する本発明の組成物のインビトロ効果を研究するため、これらのバイオフィルムを、別々の円錐管内の固体表面に、所望の生物を接種したトリプシンソイブロスまたはサブローデキストロース寒天から展開させた。インキュベーションの後、バイオフィルムを回収し、計数した。各固体表面バイオフィルムに、次いで、本発明の組成物または滅菌生理食塩水の対照を負荷した。中和後、すべての試料を回収し、計数した。処置したバイオフィルムから回収した緑膿菌および黄色ブドウ球菌の生菌中の滅菌生理食塩水対照に対する平均曝露後対数減少、および処置したバイオフィルムから回収したC.アルビカンスの生菌中の滅菌生理食塩水対照に対する平均曝露後対数減少は、真菌類(C.アルビカンス)並びに黄色ブドウ球菌および緑膿菌のいずれの細菌についても、確立されたバイオフィルムを排除するインビトロ研究において、本発明の組成物で10分後に、少なくとも3logの減少(99.9%超が死滅)が測定された。
【0118】
実施例13:抗菌性研究
本発明の組成物、標識薬剤(ブデソニド鼻用スプレー(AstraZeneca plc、バッチ:VAXA)および自作の対照用ブランクマトリックス。
1.試験試料の調製
2.1、本発明の組成物関する実施例3のプロセスに従う。
2.2、自作の対照用の薬剤非含有マトリックス
【0119】
溶液1(1%DGG溶液):
29.7gの超純水を、50mLビーカーに入れ、次いで、0.3gのDGGを加えた。DGGは、撹拌下のビーカーにゆっくりと添加して、分散させた。次いで、溶液を90℃の水浴に入れ、1時間撹拌して、ジェランガム溶液を十分に膨潤させた。1時間後、撹拌を停止し、ビーカーを水浴から取り出して、撹拌を再開して溶液を室温(25°C)まで冷却した後、撹拌を停止した。この溶液を、溶液1として使用した。
【0120】
溶液2:
2.3gのグリセリンおよび0.20gの塩化ナトリウムを100mLビーカーに入れ、十分に混合して溶液2を得た。
【0121】
溶液3:
40gの超純水を、撹拌下でゆっくりと溶液2に添加した。均一に分散した後、更に25gの超純水を添加し、十分に混ざるまで混合物を撹拌した。冷却した溶液1を加え、十分に混ざるまで混合物を撹拌した。特定量の0.5M Tris水溶液を加え、十分に混合した後、最終総重量が100gになるまで超純水を加えた。得られた溶液を、試験の最終溶液として使用した。
【0122】
3.試験方法および結果
【0123】
3.1 試験方法
抗菌効力試験は、中国薬局方(Pharmacopoeia of People’s Republic of China)2015年版、第4巻、総則(General Rule)1121に従って実施し、これを参照により本明細書に援用する。試験工程を、下表に記載する:
【0124】
【表19】
【0125】
結果:
【0126】
黄色ブドウ球菌:上記の本発明の組成物、先発医薬品、および薬剤非含有ブランクマトリックスを接種した後、3つのバイオフィルム試料の初期濃度は、すべて1.06×10
7cfu/mLであった。抗菌効力試験の2日目に、各群から試料を採取して、上記試験方法に従って検査した。各試料の細菌数は、試験した本発明の組成物で処理した群は10cfu/mL未満であり、先発医薬品で処理した群は60cfu/mLであり、薬剤非含有ブランクマトリックスについては計数不可で、lg減少値は、それぞれ7.0、5.2、および0であった。結果は、試験した本発明の組成物および先発医薬品はいずれも、強力な抗菌効力を有したことから、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性が認められることを示すが、試験した本発明の組成物は、先発医薬品よりもはるかに強力かつ有効であり、薬剤非含有ブランクマトリックスは、黄色ブドウ球菌に対して抑制効果がなかった。
【0127】
【表20】
表19 黄色ブドウ球菌
【0128】
緑膿菌:本発明の試験組成物、先発医薬品、および薬剤非含有ブランクマトリックスを接種した後、3つのバイオフィルム試料の初期濃度は、すべて0.74×10
7cfu/mLであった。抗菌効力試験の2日目に、各バイオフィルムの試料を採取して、上記試験方法に従って検査した。各バイオフィルム試料の細菌数は、組成物で処理した試料は20cfu/mLであり、先発医薬品で処理した試料は10cfu/mLであり、薬剤非含有ブランクマトリックスについては計数不可で、lg減少値は、それぞれ5.6、5.9、および0であった。結果は、本発明の試験組成物および先発医薬品はいずれも、強力な抗菌効力を有したことから、緑濃菌に対する抗菌活性が認められることを示し、本発明の試験組成物の方が抗菌効果が強く、薬剤非含有ブランクマトリックスは、緑膿菌に対して抑制効果がなかった。
【0129】
【表21】
【0130】
実施例14:沈降比試験
1.方法
【0131】
【表22】
【0132】
1)試料溶液調製
実施例3のプロセスを参照
【0133】
2)対照溶液調製(DGGなし)
【0134】
溶液1(2%ポビドンヨード水溶液)
39.2gの超純水を50mLビーカーに入れ、ビーカーを磁気撹拌機の上に置いて、一定速度で撹拌した。次いで、0.8gのポビドンヨードを、一定の撹拌速度で約10分間撹拌しながら、ゆっくりとビーカーに加えた。この溶液を、溶液1として使用した。
【0135】
溶液2:
0.064gの微紛化ブデソニド、2.3gのグリセリンおよび0.20gの塩化ナトリウムをすべて100mLビーカーに入れ、十分に混合して溶液2を得た。
【0136】
溶液3:
溶液1を溶液2にゆっくりと加え、均一に分散するまで撹拌した。次いで、55gの超純水を混合物に加え、十分に混ざるまで撹拌した。0.5M Tris水溶液を用いてpHを4〜5.5の範囲の標的に調節し、混合物を十分に混合した後、総重量が100gに達するまで超純水を添加した。この溶液を、最終溶液として使用した。
【0137】
データ:
中国薬局方、2015年版、第4巻、総則0105(これを参照により本願に援用する)に定められた沈降比試験方法を、本明細書の試験に用いた。
【0138】
沈降比:懸濁点眼液(微粉末を含有する点眼液を除く)を下記の方法によって検査した、沈降比は0.90未満であってはならない。
【0139】
検査プロトコル:特記のない限り、50mLの試験試料を、密栓された混合シリンダーに回収し、試料を1分間激しく振とうした。懸濁液の出発高さ(H
O)を測定し、懸濁液を3時間静置した後、懸濁液の最終高さHを記録した。沈降比(H/H
O)は以下のように計算した:
【0140】
【表23】
【0141】
結果および結論
【0142】
【表24】
【0143】
結論:試料バイオフィルム溶液は、24時間後にほとんど沈降を示さなかった。これは、薬局方で規定された限度よりもはるかに長く、系の物理的安定性が非常に良好であったことを示す;DGGを含まないブランク対照は、3時間後にほとんどがシリンダーの底に沈んだ。沈降比は0.90未満であり、薬局方に定められた限度に達しなかった。これは、試料溶液製剤が沈降比の要件に適合し、薬局方に定められた限度よりもはるかに高かったことを示す。安定性サイクルが長いことで、溶液系の物理的安定性が大幅に向上した。
【0144】
実施例15:その他のゲルマトリックスのスクリーニング
1.実験プロセス
特定量の塩化ナトリウムを、85gの超純水に、撹拌下でゆっくりと、かつ均一に添加し、溶解するまで撹拌した。次いで、ゲル形成剤を、溶液に撹拌下でゆっくりと、かつ均一に添加し、溶解するまで撹拌した。次いで、溶液を90℃の水浴に入れ、1時間撹拌して、十分に膨潤させた。次いで、溶液を室温まで冷却した。溶液を撹拌しながら、ポビドンヨードをゆっくりと添加し、完全に溶解させた。Tris−HCl水溶液(0.5mol/L)を溶液に加えて、pHを約5.5に調整し、次いで溶液を均一に撹拌した後、水を加えて総重量を100gとした。
【0145】
【表25】
【0146】
【表26】
【0147】
【表27】
【0148】
2.試験結果を下の表に要約する。
【0149】
アルギン酸ナトリウムの結果
【0150】
【表28】
【0151】
【表29】
【0152】
【表30】
【0153】
【表31】
【0154】
【表32】
【0155】
【表33】
【0156】
【表34】
【0157】
【表35】
【0158】
キサンタンの結果
【0159】
【表36】
【0160】
【表37】
【0161】
【表38】
【0162】
【表39】
【0163】
【表40】
【0164】
【表41】
【0165】
【表42】
【0166】
【表43】
【0167】
カラギーナンの結果
【0168】
【表44】
【0169】
【表45】
【0170】
【表46】
【0171】
【表47】
【0172】
【表48】
【0173】
【表49】
【0174】
【表50】
【0175】
【表51】
【0176】
3.結果および結論
これら3種のゲルマトリックスのうち、相転移特性を示したものはなく、その粘度はあまり増加せず、懸濁液の物理的安定性の改善を満たすことはできなかった。いずれも、ゲル持続放出の効果を達成しなかった。