(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
自動車のドアの周縁部に設けられ、該ドアの周縁部と車体の開口部の周縁部との間をシールする弾性材からなるドア用ウエザーストリップのドアフレームへの取付構造であって、
上記ウエザーストリップは、上記車体の開口部の周縁部に接触して弾性変形する中空状シール部と、該中空状シール部から車室外側に離れて配置され、上記車体の開口部の周縁部における上記中空状シール部よりも車室外側に接触して弾性変形するシールリップ部を有するとともに該中空状シール部よりも車室外側に配置される取付基部とが一体成形されてなり、上記中空状シール部における上記ドアフレーム側の面には貼り付け材が設けられ、
上記ドアフレームには、上記貼り付け材が貼り付けられる貼り付け面と、該貼り付け面よりも車室外側において突設された突出部とが設けられ、
上記ウエザーストリップの上記中空状シール部と上記取付基部との間には、上記中空状シール部の車室外側の端部から上記取付基部の車室内側の端部まで延び、上記中空状シール部及び上記取付基部を連結するための連結部が設けられ、
上記取付基部及び上記連結部における上記ドアフレーム側の部分を構成する材料は、上記シールリップ部を構成する材料よりも硬い材料であり、
上記取付基部には、上記シールリップ部よりも硬い材料からなる部分に、上記突出部に嵌合する嵌合部が設けられ、
上記ウエザーストリップにおける上記中空状シール部と上記連結部との境界部には、変形の起点となる変形起点部が設けられていることを特徴とするウエザーストリップの取付構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の
図2に開示されている構造の場合、中空状シール部と、シールリップ部を有する取付基部とが別部品で構成されているので部品点数が増加し、このため取付に要する工数も増加することになるので、特許文献1の
図1に開示されているように、中空状シール部と、シールリップ部を有する取付基部とを一体成形し、取付基部を両面接着テープで貼り付けるようにする構造が好ましい場合がある。
【0006】
中空状シール部と取付基部とを一体成形した場合、ドアフレームへの取付が問題となることがある。すなわち、取付基部を両面接着テープで貼り付ける構造の場合は、両面接着テープで一旦貼り付けてしまうと、仮に貼り付け位置が正規の位置からずれてしまっていて位置調整を行おうとすると、両面粘着テープを剥がさなければならず、その際に取付基部が損傷したり、両面接着テープの再利用ができなくなって貼り替えが必要になることがあり、作業が煩雑になる。
【0007】
そこで、両面接着テープで中空状シール部を貼り付ける前に、取付基部をドアフレームに対して位置決めしておき、取付基部を基準にして両面接着テープの貼り付け作業を行う方法が考えられる。具体的には、特許文献1の
図1の構造では、取付基部の下面に凹部が形成されているので、この凹部に、ドアフレームの凸部を嵌合させることで取付基部の位置決めが可能になる。
【0008】
しかしながら、取付基部はシールリップ部を一体成形する必要があることから弾性材で構成されていて、ドアフレームの凸部を凹部に嵌合させたとしても取付基部における凹部近傍が容易に弾性変形してしまい、このことで取付基部の位置がずれ、ひいては中空状シール部も位置がずれた状態で貼り付けられるおそれがある。取付基部及び中空状シール部の取付位置が車幅方向(車室内外方向)にずれると、ウエザーストリップが蛇行したような状態になり、見栄えが悪化するとともにシール不良の発生原因となる。
【0009】
また、ドアフレームにガーニッシュのような樹脂製部品が取り付けられる場合がある。この場合、ウエザーストリップの一部を樹脂製部品に突き当てて位置決めを行う方法も考えられるが、そのときに基準となる樹脂製部品にガタつきがあったり、ドアフレームに対する樹脂製部品の組み付けバラツキもあるので、ウエザーストリップの位置が正規の位置に定まり難く、このこともウエザーストリップの蛇行を招く原因となる。
【0010】
さらに、ウエザーストリップの一部を樹脂製部品に突き当てた際に、ウエザーストリップの一部が弾性変形して樹脂製部品を乗り上げてしまう懸念もあり、ウエザーストリップを正規の位置に取り付けること自体が難しい。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、中空状シール部と、シールリップ部を有する取付基部とを一体成形してウエザーストリップを構成する部品点数を削減する場合に、ウエザーストリップの取付作業性を良好にしながら、取付位置の精度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明では、取付基部におけるドアフレームへの嵌合部の硬度をシールリップ部よりも高めることでドアフレームに対する取付基部の位置決め精度を高め、この取付基部と中空状シール部との間に変形の起点となる部分を設けることで、取付基部を位置決めした後に、中空状シール部を所定位置に正確にかつ容易に貼り付けることができるようにした。
【0013】
第1の発明は、自動車のドアの周縁部に設けられ、該ドアの周縁部と車体の開口部の周縁部との間をシールする弾性材からなるドア用ウエザーストリップのドアフレームへの取付構造であって、上記ウエザーストリップは、上記車体の開口部の周縁部に接触して弾性変形する中空状シール部と、該中空状シール部
から車室外側に
離れて配置され、上記車体の開口部の周縁部における上記中空状シール部よりも車室外側に接触して弾性変形するシールリップ部を有するとともに該中空状シール部よりも車室外側に配置される取付基部とが一体成形されてなり、上記中空状シール部における上記ドアフレーム側の面には貼り付け材が設けられ、上記ドアフレームには、上記貼り付け材が貼り付けられる貼り付け面と、該貼り付け面よりも車室外側において突設された突出部とが設けられ、
上記ウエザーストリップの上記中空状シール部と上記取付基部との間には、上記中空状シール部の車室外側の端部から上記取付基部の車室内側の端部まで延び、上記中空状シール部及び上記取付基部を連結するための連結部が設けられ、上記取付基部及び上記連結部における上記ドアフレーム側の部分を構成する材料は、上記シールリップ部を構成する材料よりも硬い材料であり、上記取付基部には、上記シールリップ部よりも硬い材料からなる部分に、上記突出部に嵌合する嵌合部が設けられ、上記ウエザーストリップにおける上記中空状シール部と上記
連結部との
境界部には、変形の起点となる変形起点部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、中空状シール部と、シールリップ部を有する取付基部とが一体成形されているのでウエザーストリップの部品点数が削減される。このウエザーストリップの取付時には、取付基部の嵌合部をドアフレームの突出部に嵌合させることによって取付基部がドアフレームに対して位置決めされる。このとき、取付基部の嵌合部はシールリップ部よりも硬いので、シールリップ部を十分に軟らかくして車体の開口部の周縁部への追従性を良好にしておきながら、ドアフレームへの位置決め時においては嵌合部の変形が抑制されて取付基部のドアフレームに対する位置決め精度が向上する。よって、取付状態にあるウエザーストリップの蛇行が抑制される。
【0015】
また、中空状シール部と取付基部との間に変形起点部があるので、取付基部の嵌合部が硬くても、該取付基部を位置決めした状態で中空状シール部をドアフレームから離れる方向に容易に変位させることが可能になる。これにより、貼り付け材の離型紙を簡単に剥がすことができ、離型紙を剥がした後は、中空状シール部をドアフレームに接近する方向に移動させて貼り付け材をドアフレームの貼り付け面に貼り付けることで中空状シール部がドアフレームに取り付けられる。よって、ウエザーストリップの取付作業性が良好になる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、上記ドアフレームは、ドアフレーム本体と、該ドアフレーム本体に固定され、該ドアフレーム本体に沿って延びるモール部材とを有し、上記突出部が上記モール部材に設けられていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、モール部材によってドアフレームの意匠性が高まる。このモール部材にウエザーストリップの取付基部の嵌合部を嵌合させることができる。
【0018】
第3の発明は、第2の発明において、上記取付基部の上記嵌合部は、上記突出部が差し込まれる溝で構成されており、上記突出部は、上記モール部材の車室内側から上記ドアフレームの外方へ突出するように設けられていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、突出部がドアフレームの外方へ突出しているので、取付基部の溝に差し込まれた状態で該溝から抜け難くなる。
【0020】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、上記変形起点部は、上記取付基部の厚みよりも薄く形成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、変形起点部が容易に形成される。また、取付基部に対して中空状シール部を小さな力で変位させることが可能になる。
【0022】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、上記シールリップ部は発泡材で構成され、上記嵌合部は非発泡材で構成されていることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、シールリップ部が軽量かつ柔軟な構成となる。また、嵌合部を硬くして取付基部の位置決め精度が向上する。
【0024】
第6の発明は、第1から5のいずれか1つの発明において、上記取付基部には、上記嵌合部よりも車室外側に上記ドアフレームに係合する係合部が設けられ、該係合部は上記シールリップ部よりも硬い材料からなる部分を有していることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、取付基部の車室外側が係合部によってドアフレームに係合する。このとき、係合部が、シールリップ部よりも硬い材料からなる部分を有しているので、ドアフレームから外れにくくなる。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明によれば、中空状シール部と、シールリップ部を有する取付基部とを一体成形したことでウエザーストリップの部品点数を削減できる。そして、ドアフレームの突出部に嵌合する取付基部の嵌合部をシールリップ部よりも硬くしてウエザーストリップの取付位置の精度を高めることができ、さらに、中空状シール部と取付基部との間に変形起点部を設けることで、取付基部の嵌合部が硬くても中空状シール部を貼り付け材によってドアフレームの貼り付け面に貼り付ける作業を容易にすることができ、よって、ウエザーストリップの取付作業性を良好にすることができる。
【0027】
第2の発明によれば、ドアフレーム本体に固定されるモール部材に突出部を設けたので、ドアフレームの意匠性を高めるモール部材にウエザーストリップの取付基部の嵌合部を嵌合させることができる。
【0028】
第3の発明によれば、取付基部の嵌合部を溝で構成し、突出部は、モール部材の車室内側からドアフレームの外方へ突出するように設けられているので、突出部を取付基部の溝に差し込んだ状態で該溝から抜け難くなり、嵌合状態を維持することができる。
【0029】
第4の発明によれば、変形起点部を取付基部の厚みよりも薄くしたので、容易に形成することができるとともに、取付基部に対して中空状シール部を小さな力で変位させることができる。
【0030】
第5の発明によれば、シールリップ部を発泡材で構成したので軽量かつ柔軟にすることができる。また、嵌合部を非発泡材とすることで取付基部の位置決め精度を向上させることができる。
【0031】
第6の発明によれば、取付基部の嵌合部よりも車室外側にドアフレームに係合する係合部を設け、この係合部がシールリップ部よりも硬い材料からなる部分を有しているので、取付基部の車室外側をドアフレームに確実に係合させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0034】
図1は、本発明の実施形態に係るウエザーストリップの取付構造が適用された自動車100の前側の右側面図である。この自動車100は、右側部及び左側部(図示せず)に、それぞれドア101が設けられている。ドア101は、車体102に形成された開口部103(
図2に示す)を開閉するための部材であり、この実施形態では、車体102の前側かつ右側に設けられたドア101について説明するが、車体102の後側や左側にも形状は異なるが構造としては同様なドア(図示せず)を設けることができる。
【0035】
車体102は、少なくとも、自動車100の屋根を構成するルーフ部102aと、ドアミラー104付近のドアミラー近傍部102bとを有している。ルーフ部102aは、車両の前後方向に延びるとともに、車室内外方向(車幅方向)にも延びている。
図2及び
図3は、車体102のルーフ部102aに相当する断面であり、
図4及び
図5は、車体102のドアミラー近傍部102bに相当する断面である。ルーフ部102aに相当する断面と、ドアミラー近傍部102bに相当する断面とは殆ど同じであるが、開閉時におけるドア101のドアフレーム105の進入軌跡が異なっている。
【0036】
尚、この実施形態の説明では、説明の便宜を図るために、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両右側を単に「右」といい、車両左側を単に「左」というものとする。
【0037】
(ドア101の構成)
図1に示すように、ドア101は、該ドア101の略下半部を構成するドア本体部106と、該ドア101の略上半部を構成するドアフレーム105と、ドアガラス107とを少なくとも有している。ドア本体部106の内部には、図示しないが、ドアガラス107を昇降自在に保持するレールや、ドアガラス107を昇降動作させるためのウインドレギュレータ等が収容されている。ドア本体部106の前端部には、上下方向に延びる回動軸を有するヒンジ機構(図示せず)が設けられており、ドア101はこの回動軸周りに回動することによって
図1、
図2及び
図4に示す閉状態と、
図3及び
図5に示す開状態とに切り替えられる。
図3及び
図5ではドア101が僅かに開いた状態を示しており、
図3及び
図5に示す開度以上にドア101を開くことができるようになっている。
【0038】
図3及び
図5では、ドア101の開度は同じであるが、
図3はルーフ部102aに相当する断面であり、
図5はドアミラー近傍部102bに相当する断面であり、これらに示すように、ドア101が同じ開度であったとしても、車体102とドアフレーム105との相対的な位置関係は異なることになる。
【0039】
ドアフレーム105は、ドアガラス107の周縁部を保持するための部材であり、ドア本体部106から上方へ突出するように設けられ、該ドア本体部106に固定されている。ドアフレーム105はサッシュと呼ぶこともできる。
【0040】
ドアフレーム105は、車体102のルーフ部102aに沿って前後方向に延びており、ドアフレーム105の前側は、車体102のドアミラー近傍部102bまで延びている。ドアフレーム105の前側にドアミラー104が取り付けられるようになっている。
【0041】
図2に示すように、ドアフレーム105は、ドアフレーム本体110と、ドアフレーム本体110に固定され、該ドアフレーム本体110に沿って延びるモール部材120とを備えている。ドアフレーム本体110は、ドアガラス107の周縁部に沿って延びる枠状に形成されている。一方、モール部材120は、ドアフレーム本体110の上縁部に沿って前後方向に延びる長尺状部材である。ドアフレーム本体110及びモール部材120は金属材で構成することができ、モール部材120を構成する金属材と、ドアフレーム本体110を構成する金属材とは異なっており、モール部材120を構成する金属材は、意匠性を持たせるため、光沢のある金属材とするのが好ましい。つまり、モール部材120は光モールとすることができる。
【0042】
図2に示すように、ドアフレーム本体110は、車室内側傾斜板部111と、中間傾斜板部112と、車室外側板部113とを備えており、車室内側傾斜板部111、中間傾斜板部112及び車室外側板部113は鋼板等の板材をプレス成形することによって得ることができる。車室内側傾斜板部111は、ドアフレーム本体110の車室内側から車室外側へ向かい、車室外側へ行くほど上に位置するように傾斜しながら延びている。車室内側傾斜板部111の上面は、後述する両面接着テープTが貼り付けられる貼り付け面111aとされている。この貼り付け面111aも車室内側傾斜板部111と同様に傾斜した面である。中間傾斜板部112は、車室内側傾斜板部111の車室外側の端部から車室外側へ向かい、車室外側へ行くほど上に位置するように傾斜しながら延びている。中間傾斜板部112の傾斜角度は、車室内側傾斜板部111の傾斜角度よりもきつく設定されている。すなわち、車室内側傾斜板部111と水平面とのなす角度αは、中間傾斜板部112と水平面とのなす角度βよりも小さく設定されている。
【0043】
車室外側板部113は、中間傾斜板部112の車室外側の端部から車室外側へ向かって延びている。車室外側板部113も車室外側へ行くほど上に位置するように傾斜させることができるが、車室外側板部113は、車室内側傾斜板部111及び中間傾斜板部112に比べて水平面に対する傾斜角度が小さくなるようにする。上記角度α及び角度βは任意に設定することができるが、車室外側板部113が車室内側傾斜板部111よりも上に位置していて、車室外側板部113と車室内側傾斜板部111との間には、車室内側傾斜板部111が下に位置するような段差ができるようにしておく。車室外側板部113は、図示するように板材が折り曲げられて2枚重なった構造にすることができるが、1枚だけで構成することもできる。
【0044】
モール部材120は、ドアフレーム本体110に固定される固定板部121と、車室外側に臨むように配置される外側板部122とを備えており、固定板部121及び外側板部122は一体化されている。固定板部121は、ドアフレーム本体110の車室外側板部113の上面に沿って延び、該車室外側板部113の上面に固定される中間板部123と、突出部124と、外側板部122に接続される接続板部125とを備えている。中間板部123は、車室外側板部113の上面に対して溶接やリベット止め等のようなガタつきが生じない固定方法によって固定されている。よって、モール部材120とドアフレーム本体110との相対的な位置ずれが抑制される。
【0045】
突出部124は、中間板部123の車室内側、即ち、モール部材120の車室内側から上方へ突出している。この突出部124の突出方向は、ドアフレーム105の外方となる。この実施形態では、突出部124の突出方向が、車室外側板部113の上面に対して略直交する方向となっているが、突出部124の突出方向と車室外側板部113の上面とが交差する関係にあってもよい。
【0046】
接続板部125は、中間板部123の車室外側から上方へ延びている。接続板部125は、その上下方向中間部が上端部及び下端部よりも車室外側に位置するように車室外側へ向けて屈曲している。これにより、接続板部125には、車室内側へ向けて開放する凹部125aが形成される。接続板部125の上端部は、外側板部122の上端部と接続されている。外側板部122は、接続板部125との接続部分から下方へ延びている。この外側板部122の車室外面が自動車100の外観として現れる部分である。
【0047】
(ウエザーストリップ10の構成)
図2に示すウエザーストリップ10は、自動車100のドア101の周縁部に設けられており、該ドア101の周縁部と車体102の開口部103の周縁部との間をシールする弾性材からなるドア用ウエザーストリップである。このウエザーストリップ10は、ドア101のドアフレーム105の周縁部において車体102のルーフ部102aからドアミラー近傍部102bまで連続した略直線形状をなしており、この実施形態では、ウエザーストリップ10の上側部分をドアフレーム105に取り付ける取付構造について詳細に説明する。
【0048】
ウエザーストリップ10の下側部分をドア本体部106に取り付ける構造については従来から周知の構造を適用することができるので、詳細な説明ついては省略する。
【0049】
ウエザーストリップ10は、中空状シール部11と、取付基部12とを少なくとも備えており、中空状シール部11と、取付基部12とが一体成形されてなる部材である。この実施形態では、中空状シール部11と取付基部12との間に連結板部13を設けている。
【0050】
中空状シール部11は、ドア101が閉状態にあるときに
図2及び
図4に示すように車体102の開口部103の周縁部に接触して弾性変形し、これによってドア101の周縁部と車体102の開口部103の周縁部との間をシールすることができる。中空状シール部11の断面形状は任意の形状にすることができ、図示しているような矩形に近い形状の他、円形、楕円形等にすることができる。
図2はルーフ部102aに相当する断面であり、
図4はドアミラー近傍部102bに相当する断面であり、これらに示すように、ドア101が閉状態にあるときの中空状シール部11の弾性変形した状態の断面形状は部位によって異なることになる。従って、ルーフ部102aとドアミラー近傍部102bとでは、中空状シール部11に作用する力の大きさやその方向が異なることになる。
【0051】
中空状シール部11におけるドアフレーム105側の面11aには両面接着テープT(貼り付け材)が設けられている。両面接着テープTは、従来から使用されているテープを用いることができ、中空状シール部11の面11aに予め貼り付けておくことができる。両面接着テープTの代わりに各種接着材等を使用することもできる。
【0052】
中空状シール部11の面11aの車室内側には、凸部11bが下方へ突出するように形成されている。凸部11bは、両面接着テープTよりも車室内側に位置しており、凸部11bによって両面接着テープTの車室内側面を覆うことができるようになっている。また、凸部11bの突出高さは、両面接着テープTによる中空状シール部11の接着を阻害しないように設定されている。
図2等における符号Aで示す部材は、ドアフレーム105の車室内側を覆うように形成されたガーニッシュと呼ばれる樹脂製部材である。
【0053】
取付基部12は、中空状シール部11よりも車室外側に配置される部分である。この取付基部12は、シールリップ部12aを有している。シールリップ部12aは、中空状シール部11の車室外側に配置されており、車体102の開口部103の周縁部における中空状シール部11よりも車室外側に接触して弾性変形する。シールリップ部12aが車体102の開口部103の周縁部に接触して弾性変形することにより、ドア101の周縁部と車体102の開口部103の周縁部との間をシールすることができる。シールリップ部12aの突出方向は上方であり、上側へ行くほど車室外側に位置するように傾斜している。
【0054】
中空状シール部11と取付基部12との間には、中空状シール部11及び取付基部12を連結するための連結板部13が設けられている。連結板部13は、中空状シール部11の車室外側の端部から上方へ向かってドアフレーム本体110の中間傾斜板部112に沿うように延びている。連結板部13の上端部には、取付基部12が連なっている。このように連結板部13を傾斜させることで、取付基部12を中空状シール部11の下壁部よりも上に配置することでき、ウエザーストリップ10の断面形状を、ドアフレーム本体110の段差形状に対応するような形状にすることができる。また、取付基部12は、モール部材120の中間板部123に沿って車室外側へ向けて延びる板状をなしている。
【0055】
連結部13及び取付基部12は、発泡材で構成された発泡部14と、非発泡のソリッド材で構成されたソリッド部15との2層構造となっている。すなわち、連結部13及び取付基部12の厚み方向中間部には、材質の境界面(発泡部14とソリッド部15との境界面)があり、この境界面を符号Lで示している。境界面Lよりも下側がソリッド部15であり、境界面Lよりも上側が発泡部14である。発泡部14とソリッド部15は、共にEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)やTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)等のように、弾性を有する材料を使用することができるが、発泡部14とソリッド部15とで材料を変えることもできる。ソリッド部15は、発泡部14よりも硬い部分となる。尚、ソリッド部15の代わりに発泡材を使用してもよい。この場合、ソリッド部15の代わりとなる発泡材が、上記発泡部14よりも硬くなるように発泡倍率を設定する。
【0056】
シールリップ部12aは発泡部14に一体成形されているので、発泡材で構成されている。また、発泡部14は、中空状シール部11と連なっており、中空状シール部11も発泡材で構成されている。尚、発泡材の表面には薄いスキン層を形成することができる。また、発泡部14の表面には、塗料を付着させることもできる。発泡部14の表面に気泡が存在している場合には塗料が剥がれにくくなるので好ましい。
【0057】
境界面Lは、連結部13及び取付基部12の厚み方向中央部よりも上に位置しており、従って、ソリッド部15の方が発泡部14よりも厚くなっている。取付基部12には、ドアフレーム105の突出部124に嵌合する嵌合部12cが設けられている。この嵌合部12cは、突出部124が差し込まれる溝や凹部で構成することができる。嵌合部12cは、取付基部12におけるソリッド部15で構成された部分に設けられているので、シールリップ部12aよりも硬い材料からなる部分に設けられることになる。硬い材料からなる嵌合部12cにドアフレーム105の突出部124を差し込むことになるので、取付基部12をドアフレーム105に対して正確に位置決めすることができる。
【0058】
ウエザーストリップ10における中空状シール部11と取付基部12との間には、該ウエザーストリップ10の変形の起点となる変形起点部16が設けられている。変形起点部16は、取付基部12の厚みよりも薄く形成されている。この変形起点部16は、中空状シール部11と連結部13との境界部に設けられた溝状をなしており、例えば取付基部12を固定した状態で中空状シール部11を上下方向に容易に傾動させるための部分である。変形起点部16は、溝以外にも、例えば孔、取付基部12よりも軟らかい材料で構成した部分、材質境界面等で構成することができる。
【0059】
取付基部12には、嵌合部12cよりも車室外側にドアフレーム105に係合する係合部12dが設けられている。係合部12dは、車室外側へ向けて突出してモール部材120の凹部125a内に達しており、この凹部125aの内面に対して引っ掛かるように係合する。係合部12dは、シールリップ部12aよりも硬い材料からなる部分、即ちソリッド部15を有している。よって、係合部12dが凹部125aの内面に係合した状態で凹部125aから離脱しにくくなる。
【0060】
(ウエザーストリップ10の取付要領)
次に、上記のように構成されたウエザーストリップ10をドアフレーム105に取り付ける要領について
図6に基づいて説明する。まず、ウエザーストリップ10の中空状シール部11におけるドアフレーム105側の面11aには両面接着テープTを貼り付けておく。そして、ウエザーストリップ10の取付基部12の嵌合部12cにドアフレーム105の突出部124を差し込むことによって該嵌合部12cを突出部124に嵌合させる。また、係合部12dを凹部125aに入れておき、係合部12dが凹部125aの内面に係合可能な状態にしておく。
【0061】
嵌合部12cを突出部124に嵌合させることで取付基部12をドアフレーム105に対して位置決めすることができる。このとき、嵌合部12cがシールリップ部12aよりも硬いソリッド部15に形成されているので、突出部124に嵌合した状態で弾性変形し難く、嵌合部12cの変形が抑制されて取付基部12のドアフレーム105に対する位置決め精度が向上する。よって、取付状態にあるウエザーストリップ1の蛇行が抑制されるので、見栄えが良好になるとともに、シール性が良好になる。
【0062】
取付基部12をドアフレーム105に位置決めした後、変形起点部16を起点として、中空状シール部11を上方へ向けて傾動させる。取付基部12の嵌合部12cが硬くても、変形起点部16が設けられていることで、取付基部12を位置決めした状態で中空状シール部11をドアフレーム105から離れる方向に容易に変位させることが可能になる。これにより、両面接着テープTの離型紙を簡単に剥がすことができ、離型紙を剥がした後は、中空状シール部11をドアフレーム105に接近する方向に移動させて両面接着テープTをドアフレーム105の貼り付け面111aに貼り付けることで中空状シール部11がドアフレーム105に取り付けられる。
【0063】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、中空状シール部11と、シールリップ部12aを有する取付基部12とを一体成形したことでウエザーストリップ10の部品点数を削減できる。そして、ドアフレーム105の突出部124に嵌合する取付基部12の嵌合部12cをシールリップ部12aよりも硬くしてウエザーストリップ10の取付位置の精度を高めることができ、さらに、中空状シール部11と取付基部12との間に変形起点部16を設けることで、取付基部12の嵌合部12cが硬くても中空状シール部11を両面接着テープTによってドアフレーム105の貼り付け面111aに貼り付ける作業を容易にすることができ、よって、ウエザーストリップ10の取付作業性を良好にすることができる。
【0064】
また、ドアフレーム本体110に固定されるモール部材120に突出部124を設けたので、ドアフレーム105の意匠性を高めるモール部材120にウエザーストリップ10の取付基部12の嵌合部12cを嵌合させることができる。
【0065】
また、取付基部12の嵌合部12cを溝で構成し、突出部124は、モール部材120の車室内側からドアフレーム105の外方へ突出するように設けられているので、突出部124を取付基部12の嵌合部12cに差し込んだ状態で該嵌合部12cから抜け難くなり、嵌合状態を維持することができる。
【0066】
また、変形起点部16を取付基部12の厚みよりも薄くしたので、変形起点部16を容易に形成することができるとともに、取付基部12に対して中空状シール部11を小さな力で変位させることができる。
【0067】
また、シールリップ部12aを発泡材で構成したので軽量かつ柔軟にすることができる。さらに、嵌合部12cをソリッド材とすることで弾性変形し難くなり、取付基部12の位置決め精度を向上させることができる。
【0068】
また、取付基部12の嵌合部12cよりも車室外側にドアフレーム105に係合する係合部12dを設け、この係合部12dがシールリップ部12aよりも硬い材料からなる部分を有しているので、取付基部12の車室外側をドアフレーム105に確実に係合させることができる。
【0069】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。