(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記出力処理手段は、母集団の肌サンプルデータを用いた重回帰分析により予め取得された重回帰式であって、前記歪度及び前記尖度を説明変数とし肌の滑らかさ度合を目的変数とする重回帰式を用いて、前記肌の滑らかさ度合を決定する、
請求項5に記載の肌評価装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施形態の例(以降、単に本実施形態と略称する)について説明する。以下に挙げる各実施形態はそれぞれ例示であり、本発明は以下の各実施形態の構成に限定されない。
【0009】
[第一実施形態]
第一実施形態に係る肌評価方法について
図1を用いて説明する。
図1は、第一実施形態に係る肌評価方法を示すフローチャートである。
第一実施形態に係る肌評価方法は、
図1に示されるように、工程(S11)、工程(S13)、工程(S15)、及び工程(S17)を含む。
【0010】
工程(S11)は、対象肌又は対象肌のレプリカから計測される等の肌表面の凹凸情報を取得する工程である。
工程(S11)で取得される凹凸情報は、肌表面の高さ情報を少なくとも含んでいればよく、高さ情報を含む三次元情報、肌の断面形状を示す波形情報など、その具体的なデータ形式等は制限されない。当該凹凸情報は、肌表面の位置情報と高さ情報との二次元情報である凹凸波形データであってもよいし、高さを輝度で示す画像データであってもよい。例えば、共焦点レーザ顕微鏡等を用いて対象肌又は対象肌のレプリカを計測することで、肌表面の三次元形状を示すデータを得ることもでき、そのデータ中において所望のラインを指定することで、そのライン上の凹凸形状プロファイル(凹凸波形データ)を得ることもできる。凹凸情報を取得することが可能な機器、すなわち工程(S11)で用いることができる機器は、共焦点レーザ顕微鏡に限らず、光学系の三次元測定器、接触式又は非接触式の表面粗さ測定器等、様々な測定器が存在するが、空間周波数分解能が1/20(cycle/μm)以上、高さ方向の分解能(検出能)が0.05μm以下の機器を用いることが好ましい。
【0011】
図2は、肌表面の凹凸情報の例を示す図である。
図2の例では、被験者の頬から肌表面形状が転写されたレプリカを採取し、そのレプリカからレーザ顕微鏡により計測された画像(三次元情報)が上部に示されている。更に、その画像上で所望のラインが指定され、そのライン上における位置情報及び高さ情報からなる凹凸波形データが下部に示されている。
図2の例では、肌表面の凹凸情報が肌のレプリカから計測されたが、肌から直接計測されてもよい。
【0012】
肌のレプリカは、評価対象となる部位の肌表面から採取される。当該レプリカは、肌表面の凹凸形状が転写されていればよく、その生成手法は限定されない。例えば、シリコン印象材などの剤を肌表面に押し当てることで、レプリカを生成することができる。
また、
図2の例では、肌表面の凹凸情報として、高さ情報を含む三次元情報(画像)から取得された凹凸波形データが用いられるが、その三次元情報(画像)がそのまま肌表面の凹凸情報として利用されてもよい。
【0013】
工程(S13)は、工程(S11)で取得された凹凸情報から所定の空間周波数帯域の凹凸情報を抽出する分解工程である。
ここで「所定の空間周波数帯域」とは、工程(S13)の実行前に既に決められている空間周波数帯域を意味する。
「空間周波数帯域」とは、肌表面の凹凸形状に適した単位長(例えば、1μm)当たりの高さ変動の回数の範囲を意味する。
所定の空間周波数帯域として、肌の評価指標と相関が認められる空間周波数帯域が設定されることが望ましい。また、肌の表面形状の多重構造を形成する或る凹凸要素の寸法(スケール)に対応する空間周波数帯域が設定されてもよい。肌は部位によって凹凸形状のスケールが異なるため、測定したい部位の形状特徴に合わせて、適宜、空間周波数帯域を選定する。例えば、顔の肌表面の凹凸形状におけるキメや皮丘といった凹凸要素に対応する空間周波数帯域として、1/800(cycle/μm)から1/60(cycle/μm)の少なくとも一部の帯域が設定されてもよいし、二次レリーフの凹凸要素に対応する空間周波数帯域として、1/100(cycle/μm)から1/20(cycle/μm)の少なくとも一部の帯域が設定されてもよいし、それら凹凸要素よりも更に大きい寸法の凹凸要素に対応する空間周波数帯域として、1/400(cycle/μm)以下が設定されてもよい。
【0014】
工程(S13)において所定の空間周波数帯域の凹凸情報を抽出する手法には、様々な手法を利用することができる。例えば、工程(S11)で取得された凹凸情報をフーリエ変換等を用いて空間周波数領域に変換し、空間周波数領域においてフィルタを適用した後、逆フーリエ変換等を用いて元の空間領域に戻すことで、所定の空間周波数帯域の凹凸情報を抽出することができる。また、ウェーブレット変換や2CRフィルタ、位相補償形ディジタルフィルタ(ガウシアンフィルタ)など他の周波数解析手法を用いて所定の空間周波数帯域の凹凸情報を抽出することもできる。
【0015】
工程(S15)は、工程(S13)で抽出された所定の空間周波数帯域の凹凸情報から凹凸形状に関する統計値を算出する算出工程である。
工程(S15)で算出される統計値は、肌表面の高さ方向の偏差に基づくパラメータであり、平均、標準偏差、分散、歪度、若しくは尖度、又は、それらのいずれか複数の組合せである。
平均として例えば算術平均粗さ(Ra)が算出される。算術平均粗さ(Ra)は、粗さ曲線の基準長さにおける平均線からの偏差の絶対値の平均値で示される。
標準偏差或いは分散として例えば二乗平均平方根粗さ(Rq)が算出される。二乗平均平方根粗さ(Rq)は、粗さ曲線の基準長さにおける平均線からの偏差の二乗を平均して平方根を取った値で示される。
歪度としては例えば二乗平均平方根粗さ(Rq)の三乗によって無次元化した基準長さにおける凹凸波形の三乗平均であるスキューネス(Rsk)が算出される。このスキューネス(Rsk)によれば、肌表面の凹凸の対称性が示される。
尖度としては例えば二乗平均平方根粗さ(Rq)の四乗によって無次元化した基準長さにおける凹凸波形の四乗平均であるクルトシス(Rku)が算出される。このクルトシス(Rku)によれば、肌表面の凹凸の尖り度が示される。
【0016】
工程(S17)は、工程(S15)で算出された統計値を用いて対象肌を評価する評価工程である。
本発明者らは、様々な手法で取得可能な肌表面の凹凸情報の中の、或る特定の空間周波数帯域の凹凸情報に着目して、その凹凸情報における或る特定種の統計値と肌の或る特定の評価指標との間に高い相関があることを見出した。これは、肌の評価指標が肌の表面形状の多重構造を形成する凹凸要素群の中の或る特定の凹凸要素の状態に強く影響を受けているということもできる。
例えば、後述の実施例で記載するように、肌の触感と、空間周波数帯域(1/500(cycle/μm)以上1/80(cycle/μm)未満)の凹凸形状の歪度との相関が高いことが見出されている。また、空間周波数帯域(1/500(cycle/μm)未満)の算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq)と肌の見た目との相関が高いことが見出されている。
【0017】
これにより、工程(S17)では、上述の所定の空間周波数帯域の凹凸形状の統計値を用いることで、その統計値と高い相関を示す評価指標(例えば、触感、見た目など)で、対象肌を評価することができる。例えば、空間周波数帯域(1/500(cycle/μm)以上1/80(cycle/μm)未満)の凹凸情報から算出された歪度を用いて、対象肌の触感を評価することができる。また、空間周波数帯域(1/500(cycle/μm)未満)の凹凸情報から算出された算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq)を用いて、対象肌の見た目の印象を評価することができる。もちろん、見た目及び触感のように複数の評価指標で肌が評価されてもよい。また、肌の評価指標は、これら触感及び見た目のみに限定されない。
【0018】
工程(S17)の実行主体は、人であってもよいし、コンピュータであってもよい。
例えば、工程(S11)、工程(S13)及び工程(S15)がコンピュータにより実行され、工程(S15)で算出された統計値がそのコンピュータから表示装置や印刷装置等を介して出力される。この場合、人がその出力された統計値を参照し、その統計値と比較表とを見比べて、対象肌の評価を行うことができる。比較表は、例えば、肌の或る評価指標の評価結果の分類(例えば、見た目が良い、標準及び悪いといった3分類、きれい及びきれいではないといった2分類など)ごとに統計値の範囲が設定された表であってもよい。この比較表は、年齢ごと、性別ごと、模範となり得る有名人ごとにそれぞれ生成することもでき、予め印刷されていてもよいし、コンピュータから出力されてもよい。
他の例として、工程(S17)がコンピュータにより実行される場合には、コンピュータが工程(S15)で算出された指標値から評価スコアを算出し、その評価スコアを出力してもよい。評価スコアは、良し悪しの2値であってもよいし、3値以上の数値であってもよいし、評価値に対応する文字列(「良い」、「悪い」、「標準」、「きれい」など)であってもよい。コンピュータによる評価スコアの算出手法については後述する。
【0019】
このように、第一実施形態では、肌又は肌のレプリカから計測された肌表面の凹凸情報が取得され、その凹凸情報から抽出された所定の空間周波数帯域の凹凸情報の統計値を用いて、肌が評価される。つまり、第一実施形態によれば、肌の表面形状の多重構造を形成する凹凸要素群の中の或る特定の凹凸要素の特徴を限定的に参照することができる。
従って、多重構造を有する肌表面形状に関して、或る特定の凹凸要素に着目することにより、肌を高精度に評価することができる。
【0020】
[第二実施形態]
上述の第一実施形態では、特定の空間周波数帯域の凹凸情報が用いられたが、第二実施形態では、当該肌表面の凹凸情報から多重分解された複数の空間周波数帯域の凹凸情報が用いられる。以下、第二実施形態に係る肌評価方法について
図3を用いて説明する。
図3は、第二実施形態に係る肌評価方法を示すフローチャートである。
第二実施形態に係る肌評価方法は、
図3に示されるように、工程(S31)、工程(S33)、工程(S35)、及び工程(S37)を含む。
工程(S31)は、上述の工程(S11)と同様である。
【0021】
工程(S33)は、工程(S31)で取得された凹凸情報を複数の空間周波数帯域へと分解する工程である。即ち、工程(S33)で分解する所定の空間周波数帯域は少なくとも2帯域とされる。
ここで、肌又は肌のレプリカから計測された凹凸情報を複数の空間周波数帯域の凹凸情報に分解することを「多重分解」と表記する場合もある。
当該複数の空間周波数帯域は、工程(S33)の実行前に予め決められている。当該複数の空間周波数帯域には、第一実施形態で述べた所定の空間周波数帯域が含まれていてもよい。また、当該複数の空間周波数帯域には、他の空間周波数帯域と一部が重複する空間周波数帯域が含まれていてもよい。
当該複数の空間周波数帯域は、肌の表面形状の多重構造を形成するいずれか複数の凹凸要素の代表寸法(代表スケール)に基づいて定めることもできる。また、空間周波数帯域の区分けを変えながら肌の評価指標との相関を調査し、その評価指標との相関の高さに基づいて、当該複数の空間周波数帯域が定められてもよい。
【0022】
図4は、肌表面の多重構造を示す図である。
図5は、第二実施形態における肌表面の凹凸情報の多重分解を示す図である。
図5の例では、工程(S31)で取得された肌表面の凹凸情報が
図5の最上部に凹凸波形データとして示されている。工程(S33)でその凹凸波形データが多重分解されることにより、4つの空間周波数帯域の凹凸波形データ(凹凸情報)が抽出されている。具体的には、1/28(cycle/μm)以上の空間周波数帯域、1/80(cycle/μm)以上1/28(cycle/μm)未満の空間周波数帯域、1/500(cycle/μm)以上1/80(cycle/μm)未満の空間周波数帯域、1/500(cycle/μm)未満の空間周波数帯域の4つの空間周波数帯域に多重分解されている。なお、
図5の各グラフは、空間周波数帯域に対応する波長範囲で示されている。
【0023】
ここで、肌表面の多重構造を形成する凹凸要素には、
図4に示されるように、皮丘及び皮溝からなるキメ、キメよりも大寸法のキメの集合体や毛穴、及びキメよりも小寸法の二次レリーフが少なくとも含まれる。これら3つの凹凸要素を考慮した場合、
図5に例示される4つの凹凸波形のうち、1/28(cycle/μm)未満1/80(cycle/μm)以上の空間周波数帯域の凹凸波形を二次レリーフの代表寸法に対応付け、1/80(cycle/μm)未満1/500(cycle/μm)以上の空間周波数帯域の凹凸波形をキメの代表寸法に対応付け、1/500(cycle/μm)未満の空間周波数帯域の凹凸波形はキメの集合体や毛穴の代表寸法に対応付けることができる。
これにより、
図5に示される多重分解の例では、肌表面の多重構造を形成する各凹凸要素に対応する凹凸情報が抽出されていると考えることができる。
【0024】
工程(S35)は、工程(S33)で多重分解されたいずれか複数の空間周波数帯域の凹凸情報から複数種の統計値を算出する工程である。
工程(S35)で算出される複数種の統計値は、第一実施形態と同様に、肌表面の高さ方向の偏差に基づくパラメータである。ここでは、平均、標準偏差、分散、歪度、又は尖度のいずれか複数の組合せが複数種の統計値として算出される。
また、算出される当該複数種の統計値は、工程(S33)で多重分解された全ての空間周波数帯域の凹凸情報から算出されてもよいし、一部の複数の空間周波数帯域の凹凸情報から算出されてもよい。つまり、工程(S35)では、平均、標準偏差、分散、歪度、又は尖度を多重分解された各帯域のうち一部の帯域において求めてもよい。
また、各統計値は、統計値の種別ごとに異なる空間周波数帯域の凹凸情報からそれぞれ算出されてもよい。例えば、所定の第一空間周波数帯域の凹凸情報から歪度が算出され、第一空間周波数帯域とは少なくとも一部の帯域が異なる所定の第二空間周波数帯域の凹凸情報から平均、分散(又は標準偏差)、尖度が算出されてもよい。但し、算出される当該複数種の統計値の一部は、共通の空間周波数帯域の凹凸情報から算出されてもよい。
【0025】
本発明者らは、実施例で例示するように、肌の複数の評価指標の各々について、どの空間周波数帯域のどの種の統計値と相関が高いかを調査し、肌の評価指標と高い相関を示す所定の複数の空間周波数帯域の複数種の統計値の存在を明らかにした。
これにより、第二実施形態では、このように見出された肌評価指標と各空間周波数帯域の凹凸情報の統計値との相関性に基づいて、どの空間周波数帯域の凹凸情報からどの種の統計値を算出すべきかが定められることが望ましい。
具体的には、実施例によれば、1/500(cycle/μm)以上1/80(cycle/μm)未満の空間周波数帯域の凹凸波形データから歪度が算出され、1/500(cycle/μm)未満の空間周波数帯域の凹凸波形データから平均、分散(又は標準偏差)が算出される。この例で示されるように、工程(S35)で複数種の統計値の算出に用いられるいずれか複数の空間周波数帯域は、上限周波数と下限周波数との比率が相互に異なることが望ましい。
【0026】
工程(S37)は、工程(S35)で算出された複数種の統計値を用いて対象肌を評価する工程である。工程(S37)における評価手法や実行主体は、複数種の統計値を用いることを除き、第一実施形態における工程(S17)と同様である。例えば、上述の比較表が統計値の種別ごとに設けられていればよい。
また、工程(S37)では、複数種の統計値を用いて一つの評価指標で対象肌を評価してもよいし、複数の評価指標で対象肌を評価してもよい。前者の場合、例えば、母集団の肌サンプルデータを用いた重回帰分析により予め取得された重回帰式であって、複数種の統計値(例えば、歪度及び尖度)を説明変数とし肌の評価スコア(例えば、滑らかさ度合)を目的変数とする重回帰式に、工程(S35)で算出された複数種の統計値を代入することで、肌の評価スコアを算出することができる。
後者の場合、例えば、統計値の種別ごとに肌の評価指標の種別が対応付けられていることで、複数種の指標値を用いて複数の指標で対象肌を評価することができる。
【0027】
このように、第二実施形態では、対象肌又はそのレプリカから計測された肌表面の凹凸情報が複数の空間周波数帯域に多重分割され、いずれか複数の空間周波数帯域の凹凸情報から算出される複数種の統計値を用いて対象肌が評価される。つまり、第二実施形態によれば、多重構造を有する肌の表面形状を複数の凹凸要素の特徴に分解してそれらを個別に参照することができる。そのように個別に参照した凹凸要素の各特徴に基づいて肌評価することで、肌の評価精度を向上させることができる。
【0028】
第一実施形態及び第二実施形態に係る肌評価方法は、次のような肌評価装置により実行され得る。以下、肌評価装置について
図6及び
図7を用いて説明する。
図6は、肌評価装置10のハードウェア構成例を概念的に示す図であり、
図7は、肌評価装置10の処理構成例を概念的に示す図である。
【0029】
肌評価装置10は、いわゆるコンピュータであり、例えば、バスで相互に接続される、CPU(Central Processing Unit)11、メモリ12、入出力インタフェース(I/F)13、通信ユニット14等を有する。肌評価装置10を形成する各ハードウェア要素の数はそれぞれ制限されず、これらハードウェア要素は情報処理回路と総称することもできる。また、肌評価装置10は、
図6に図示されないハードウェア要素を含んでもよく、そのハードウェア構成は制限されない。
【0030】
CPU11は、一般的なCPU以外に、特定用途向け集積回路(ASIC)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等で構成してもよい。
メモリ12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、補助記憶装置(ハードディスク等)である。
入出力I/F13は、出力装置15、入力装置16等のユーザインタフェース装置と接続可能である。出力装置15は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイのような、CPU11等により処理された描画データに対応する画面を表示する装置、印刷装置などの少なくとも一つである。入力装置16は、キーボード、マウス等のようなユーザ操作の入力を受け付ける装置である。出力装置15及び入力装置16は一体化され、タッチパネルとして実現されてもよい。
通信ユニット14は、他のコンピュータとの通信網を介した通信や、他の機器との信号のやりとり等を行う。通信ユニット14には、可搬型記録媒体等も接続され得る。また、通信ユニット14には、対象肌又はそのレプリカから凹凸情報を計測する計測器(レーザ顕微鏡など)が接続されてもよい。
また、肌評価装置10は、その計測器を内蔵する機器であってもよい。
【0031】
肌評価装置10は、取得部21、分解部22、算出部23、出力処理部24等を有する。これらは、ソフトウェア要素であり、例えば、メモリ12に格納される評価プログラム19がCPU11にロードされ実行されることにより実現される。この評価プログラム19は、例えば、CD(Compact Disc)、メモリカード等のような可搬型記録媒体やネットワーク上の他のコンピュータから入出力I/F13又は通信ユニット14を介してインストールされ、メモリ12に格納されてもよい。
【0032】
取得部21は、工程(S11)又は工程(S31)を実行する。
取得部21は、対象肌又はそのレプリカから計測された肌表面の凹凸情報を計測器、外部のコンピュータ、可搬型記録媒体などから入出力I/F13又は通信ユニット14を介して取得することができる。また、取得部21が計測器として実現されている場合、取得部21が計測しその凹凸情報を生成してもよい。
【0033】
分解部22は、工程(S13)又は工程(S33)を実行する。分解部22による所定の空間周波数帯域の凹凸情報の抽出手法及び多重分解手法については上述したとおりである。
算出部23は、工程(S15)又は工程(S35)を実行する。算出部23による統計値の算出手法などについても上述したとおりである。
【0034】
出力処理部24は、算出部23により算出された一種以上の統計値を用いて肌の評価情報を出力する。例えば、出力処理部24は、工程(S17)又は工程(S37)を実行する。出力処理部24により出力される評価情報の具体的内容及びその生成手法は制限されない。
例えば、出力処理部24は、母集団の肌サンプルデータを用いた回帰分析により取得された単回帰式又は重回帰式を保持していてもよい。単回帰式は、いずれか一種の統計値を説明変数とし肌の評価スコアを目的変数とする回帰式であればよく、重回帰式は、複数種の統計値を説明変数とし肌の評価スコアを目的変数とする回帰式であればよい。例えば、出力処理部24は、歪度及び尖度を説明変数とし肌の滑らかさ度合を目的変数とする重回帰式を保持することができる。出力処理部24は、このような回帰式に算出部23により算出された統計値を代入することで、肌の評価スコアを算出し、その評価スコアを肌の評価情報として出力することができる。もちろん、出力される評価情報は、数値ではなく或いは数値に加えて、その数値に対応する評価文字列(「良い」、「悪い」など)や図柄などであってもよい。
また、出力処理部24は、算出部23により算出された統計値と上述の比較表とを肌の評価情報として出力することもできる。この場合には、実際に肌の評価を行うのは、出力された評価情報を参照した人である。
【0035】
[変形例]
上述の実施形態では、対象肌に関する凹凸形状の一以上の統計値を用いて肌が評価されたが、統計値の変化に基づいて肌の状態変化(状態改善、状態悪化など)を評価することもできる。
実施例で例示されるように、本発明者らは、統計値の変化と肌の或る評価指標における状態変化と間に相関があることを見出している。
そのため、皮膚外用剤の継続使用に伴い、対象肌又はそのレプリカから計測された凹凸情報をそれぞれ取得し、上述の実施形態と同様に一以上の統計値を算出し、その統計値の差に基づいて、肌状態の変化状況を評価することができる。例えば、予めサンプル肌に基づいて肌状態の変化状況(改善、悪化、変化無し)ごとに統計値差の範囲を求めておき、被験者の対象肌に関して得られた統計値差がどの範囲に属するかによって、改善した、悪化した、又は変化無しというように対象肌の変化状況を決定することができる。肌状態の変化状況は、改善、悪化、変化無しといった3値のみでなく、改善及び悪化の2値、或いは、4値以上の変化スコアとして算出されてもよい。
【0036】
よって、上述の実施形態に係る肌評価方法を用いて、化粧料、医薬品、医薬部外品などの皮膚外用剤又は医療機器や美容機器等の効果を評価する方法を実現することもできる。言い換えれば、皮膚外用剤を適用する前後の肌又は肌のレプリカから計測された肌表面の凹凸情報をそれぞれ取得する工程と、取得された凹凸情報から所定の空間周波数帯域の凹凸情報を抽出する分解工程と、抽出された所定の空間周波数帯域の凹凸情報から凹凸形状に関する統計値を算出する算出工程と、皮膚外用剤を適用する前後に関して算出された当該統計値の差を算出する工程と、算出された差を用いて皮膚外用剤を適用する前後の肌を評価する評価工程と、を含む皮膚外用剤の効果を評価する方法を実現することができる。
【0037】
また、上述の説明で用いた複数のフローチャートでは、複数の工程(処理)が順番に記載されているが、各工程の実行順序は、その記載の順番に制限されない。図示される工程の順番を内容的に支障のない範囲で変更することができる。
【0038】
上述の内容の一部又は全部は、次のようにも特定され得る。但し、上述の内容が以下の記載に制限されるものではない。
【0039】
<1>肌又は肌のレプリカから計測された肌表面の凹凸情報を取得する工程と、
前記取得された凹凸情報から所定の空間周波数帯域の凹凸情報を抽出する分解工程と、
前記抽出された所定の空間周波数帯域の凹凸情報から凹凸形状に関する統計値を算出する算出工程と、
前記算出された統計値を用いて前記肌を評価する評価工程と、
を含む肌評価方法。
【0040】
<2>前記算出工程で算出される前記統計値は、少なくとも歪度又は尖度を含み、
前記評価工程では、前記算出工程で算出された少なくとも歪度又は尖度を用いて前記肌を評価する、
<1>に記載の肌評価方法。
<3>前記分解工程では、前記所定の空間周波数帯域を少なくとも2帯域とし、
前記算出工程では、平均、標準偏差、分散、歪度、又は尖度を各帯域ごとに求める、
<1>に記載の肌評価方法。
<4>前記分解工程では、前記所定の空間周波数帯域を含む異なる複数の空間周波数帯域に、前記取得された凹凸情報を多重分解し、
前記算出工程では、前記多重分解されたいずれか複数の空間周波数帯域の凹凸情報から複数種の統計値を算出し、
前記評価工程では、前記算出された複数種の統計値を用いて前記肌を評価する、
<1>から<3>のいずれか一つに記載の肌評価方法。
<5>前記分解工程では、異なる所定の第一空間周波数帯域及び所定の第二空間周波数帯域を含む前記複数の空間周波数帯域に、前記取得された凹凸情報を多重分解し、
前記算出工程では、前記所定の第一空間周波数帯域の凹凸情報から歪度を算出し、前記所定の第二空間周波数帯域の凹凸情報から尖度を算出し、
前記評価工程では、前記算出された歪度及び尖度を用いて、前記肌を評価する、
<4>に記載の肌評価方法。
<6>前記評価工程では、母集団の肌サンプルデータを用いた重回帰分析により予め取得された重回帰式であって、前記歪度及び前記尖度を説明変数とし肌の滑らかさ度合を目的変数とする重回帰式を用いて、前記肌の滑らかさ度合を決定する、
<5>に記載の肌評価方法。
<7>前記算出工程で前記複数種の統計値の算出に用いられる前記いずれか複数の空間周波数帯域は、上限周波数と下限周波数との比率が相互に異なる、
<4>から<6>のいずれか一つに記載の肌評価方法。
<8>肌又は肌のレプリカから計測された肌表面の凹凸情報を取得する取得手段と、
前記取得された凹凸情報から所定の空間周波数帯域の凹凸情報を抽出する分解手段と、
前記抽出された所定の空間周波数帯域の凹凸情報から凹凸形状に関する統計値を算出する算出手段と、
前記算出された統計値を用いて前記肌の評価情報を出力する出力処理手段と、
を備える肌評価装置。
<9>前記算出手段は、前記統計値として凹凸形状の少なくとも歪度又は尖度を算出し、
前記出力処理手段は、前記算出手段により算出された少なくとも歪度又は尖度を用いて前記肌の評価情報を生成する、
<8>に記載の肌評価装置。
<10>前記分解手段は、前記所定の空間周波数帯域を含む異なる複数の空間周波数帯域に、前記取得された凹凸情報を多重分解し、
前記算出手段は、前記多重分解されたいずれか複数の空間周波数帯域の凹凸情報から複数種の統計値を算出し、
前記出力処理手段は、前記算出された複数種の統計値を用いて前記肌の評価情報を生成する、
<8>又は<9>に記載の肌評価装置。
<11>前記分解手段は、異なる所定の第一空間周波数帯域及び所定の第二空間周波数帯域を含む前記複数の空間周波数帯域に、前記取得された凹凸情報を多重分解し、
前記算出手段は、前記所定の第一空間周波数帯域の凹凸情報から歪度を算出し、前記所定の第二空間周波数帯域の凹凸情報から尖度を算出し、
前記出力処理手段は、前記算出された歪度及び尖度を用いて、前記肌の評価情報を生成する、
<10>に記載の肌評価装置。
<12>前記出力処理手段は、母集団の肌サンプルデータを用いた重回帰分析により予め取得された重回帰式であって、前記歪度及び前記尖度を説明変数とし肌の滑らかさ度合を目的変数とする重回帰式を用いて、前記肌の滑らかさ度合を決定する、
<11>に記載の肌評価装置。
<13>前記算出手段で前記複数種の統計値の算出に用いられる前記いずれか複数の空間周波数帯域は、上限周波数と下限周波数との比率が相互に異なる、
<10>から<12>のいずれか一つに記載の肌評価装置。
【0041】
以下に実施例を挙げ、上述の内容を更に詳細に説明する。但し、以下の実施例の記載は、上述の内容に何ら限定を加えるものではない。
【実施例】
【0042】
本実施例では、上述の実施形態の効果を検証すべく、複数人の被験者の肌をサンプル肌として、各サンプル肌のレプリカからそれぞれ計測された凹凸情報に基づいて、各サンプル肌の見た目(外観)及び触感と肌の凹凸形状に関する統計値との関係について調査された。
【0043】
各サンプル肌のレプリカは、親水性ビニルシリコン印象剤を各被験者の鼻横から頬にかけての部位に押し付けることで生成された。このため、各サンプル肌のレプリカには、各被験者の対象部位の皮膚表面の凹凸形状が反転された状態で転写された。
このように採取された各サンプル肌のレプリカの肌転写面の三次元形状をレーザ顕微鏡で10倍の倍率でそれぞれ計測し、各サンプル肌に関し高さ情報(凹凸情報)を色で表す肌画像がそれぞれ生成された。更に、各サンプル肌の肌画像に対して約7mmのラインを指定して、そのライン上の高さと位置との関係を示す凹凸波形データが取得された。
【0044】
図8は、3つのサンプル肌の肌画像と各肌画像から比較例として取得された凹凸形状に関する統計値との関係を示す図である。
比較例では、上述の実施形態のような多重分解を行うことなく、全体の凹凸波形データから凹凸形状に関する統計値が算出された。具体的には、サンプル肌A、B及びCの各肌画像に対して20本のラインをそれぞれ指定することで、サンプル肌ごとに20個の凹凸波形データを取得し、各凹凸波形データの統計値の平均値が
図8に示されている。統計値としては、
図8に示されるとおり、算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq)、歪度(スキューネス)(Rsk)、尖度(クルトシス)(Rku)が算出された。
比較例として算出された統計値と各サンプル肌の肌画像とを比較すると、いずれの統計値においても肌の凹凸形状を的確には指標化できていないことが分かる。特に、肌画像で示されているように、サンプル肌Aとサンプル肌Bとは明らかに表面形状が異なっているにも関わらず、いずれの統計値もそのような表面形状の違いを表しているとは言えない。
【0045】
本実施例では、上述の複数人の被験者に共通の皮膚外用剤を利用させ、皮膚外用剤の使用前の肌と使用後の肌とをそれぞれサンプル肌とし、各サンプル肌のレプリカから上述したとおりレーザ顕微鏡により凹凸波形データがそれぞれ取得された。そして、各サンプル肌の凹凸波形データを4つの空間周波数帯域に多重分解することで、4つの各空間周波数帯域の凹凸波形データを抽出し、空間周波数帯域ごとに4種の指標値(Ra、Rq、Rsk、Rku)が算出された。その上で、皮膚外用剤の使用前のサンプル肌と使用後のサンプル肌とに関してそれぞれ算出された指標値の差が被験者ごとに算出された。結果として、各被験者について、4つの空間周波数帯域の各々における4種の指標値差がそれぞれ取得された。
4つの空間周波数帯域は、1/28(cycle/μm)以上の空間周波数帯域、1/80(cycle/μm)以上1/28(cycle/μm)未満の空間周波数帯域、1/500(cycle/μm)以上1/80(cycle/μm)未満の空間周波数帯域、1/500(cycle/μm)未満の空間周波数帯域である。
【0046】
一方で、本実施例では、当該複数の被験者における皮膚外用剤の使用前の肌と使用後の肌とについて官能評価により見た目(外観)及び触感がスコア化された。
見た目の評価は、専門の評価者がサンプル肌を目視することで、小じわの目立ち具合を10段階(小じわスコアと表記される)で官能評価する方法で行われた。ここでの「小じわ」とは、保湿を加えると消えるようなシワを意味する。
触感の評価は、専門の評価者がサンプル肌を触診し、滑らかさ度合を5段階(触感スコアと表記される)で官能評価する方法で行われた。
更に、同一被験者にける皮膚外用剤の使用前の肌の評価スコアと使用後の肌の評価スコアとの間の差が算出された。具体的には、使用前の肌の小じわスコアと使用後の肌の小じわスコアとの差が算出され、使用前の肌の触感スコアと使用後の肌の触感スコアとの差が算出された。
【0047】
図9(a)は、4つの空間周波数帯域の凹凸成分及び全ての凹凸成分の各々に関する算術平均粗さ(Ra)と小じわとの関係を示すグラフであり、
図9(b)は、4つの空間周波数帯域の凹凸成分及び全ての凹凸成分の各々に関する二乗平均平方根粗さ(Rq)と小じわとの関係を示すグラフである。
図9(a)及び
図9(b)には、皮膚外用剤の使用後の肌に関する情報が示されている。
図9において、横軸は4つの空間周波数帯域の凹凸成分(対応する波長範囲を表記)と全ての凹凸成分(「全体」と表記)を示し、縦軸は各統計値を示す。「良い」の棒グラフは小じわが標準より目立たない被験者の群を示し、「標準」の棒グラフは小じわの目立ちが標準であった被験者の群を示し、「悪い」の棒グラフは小じわが標準より目立つ被験者の群を示す。各棒グラフの長さが被験者群ごとの統計値の平均を示し、各棒グラフに重畳されている縦線は被験者群ごとの統計値の標準誤差を示す。
【0048】
図9(a)及び
図9(b)によれば、1/500(cycle/μm)未満の空間周波数帯域の凹凸成分に関する、算術平均粗さ(Ra)、二乗平均平方根粗さ(Rq)が小じわの目立ちやすさと相関があることが確認される。
これにより、1/500(cycle/μm)未満の空間周波数帯域の凹凸成分に関する、算術平均粗さ(Ra)及び二乗平均平方根粗さ(Rq)の統計値差により、被験者の肌の見た目の変化を推定できることが実証されている。
【0049】
図10は4つの空間周波数帯域の凹凸成分及び全ての凹凸成分の各々に関する歪度(Rsk)と触感(滑らかさ)との関係を示すグラフである。
図10には、皮膚外用剤の使用後の肌に関する情報が示されている。
図10において、横軸は4つの空間周波数帯域の凹凸成分(対応する波長範囲を表記)と全ての凹凸成分(「全体」と表記)を示し、縦軸は各統計値を示す。「良い」の棒グラフは触感(滑らかさ)が標準より優れる被験者の群を示し、「標準」の棒グラフは触感(滑らかさ)が標準であった被験者の群を示し、「悪い」の棒グラフは触感(滑らかさ)が標準より悪い被験者の群を示す。各棒グラフの長さが被験者群ごとの統計値の平均を示し、各棒グラフに重畳されている縦線は被験者群ごとの統計値の標準誤差を示す。
【0050】
図10によれば、1/80(cycle/μm)未満1/500(cycle/μm)以上の空間周波数帯域の凹凸成分に関する歪度が触感スコアと相関があることが確認される。
これにより、1/500(cycle/μm)以上1/80(cycle/μm)未満の空間周波数帯域の凹凸成分に関する歪度により、被験者の肌の触感(滑らかさ)を推定できることが実証されている。
更に言えば、1/500(cycle/μm)以上1/80(cycle/μm)未満の空間周波数帯域の凹凸成分に関する歪度が小さい程、触感(滑らかさ度合)は良くなるということも新たに見出されている。但し、歪度が大きいからといって必ずしも触感が良いと判断できない可能性もある。よって、肌の凹凸形状に他の統計値(例えば、平均、分散(及び標準偏差)、尖度など)を更に考慮したほうがより高精度に触感を評価できる場合がある。
【0051】
図11(a)は4つの空間周波数帯域の凹凸成分及び全ての凹凸成分の各々に関する歪度(Rsk)の変化と触感の変化との関係を示すグラフであり、
図11(b)は4つの空間周波数帯域の凹凸成分及び全ての凹凸成分の各々に関する尖度(Rku)の変化と触感の変化との関係を示すグラフである。
図11において、横軸は4つの空間周波数帯域の凹凸成分(対応する波長範囲を表記)と全ての凹凸成分(「全体」と表記)を示し、縦軸は各統計値の差(使用後の統計値から使用前の統計値を減算した値)を示す。「+」の棒グラフは触感(滑らかさ)が改善した被験者群を示し、「±」の棒グラフは触感の変化がなかった被験者群を示し、「−」の棒グラフは触感が悪化した被験者群を示す。各棒グラフの長さが被験者群ごとの統計値差の平均を示し、各棒グラフに重畳されている縦線は被験者群ごとの統計値差の標準誤差を示す。
【0052】
図11(a)及び
図11(b)によれば、1/80(cycle/μm)未満1/500(cycle/μm)以上の空間周波数帯域の凹凸成分に関する歪度の変化、及び、1/500(cycle/μm)未満の空間周波数帯域の凹凸成分に関する尖度の変化が触感スコアの変化と相関があることが確認される。
歪度(Rsk)の統計値差については、触感が改善した被験者群が負の値を示しており、触感が悪化した被験者群が正の値を示している。これは、触感が改善した被験者群については、皮膚外用剤の使用後に歪度が小さくなっていることを示し、触感が悪化した被験者群については、逆に歪度が大きくなっていることを示している。即ち、肌表面の凹凸形状の歪度が小さい程、滑らかさは向上するという論理に即した結果が得られている。
一方で、尖度(Rku)の統計値差については、歪度の逆の状態となっている。即ち、触感が改善した被験者群については、皮膚外用剤の使用後に尖度が大きくなっていることを示し、触感が悪化した被験者群については、逆に尖度が小さくなっていることを示している。
これにより、1/500(cycle/μm)以上1/80(cycle/μm)未満の空間周波数帯域の凹凸成分に関する歪度の変化、及び、1/500(cycle/μm)未満の空間周波数帯域の凹凸成分に関する尖度の変化により、被験者の肌の触感の変化を高精度に推定できることが実証されている。
更に言えば、1/500(cycle/μm)以上1/80(cycle/μm)未満の空間周波数帯域の凹凸成分に関する歪度が小さい程、触感(滑らかさ度合)は良くなり、1/500(cycle/μm)未満の空間周波数帯域の凹凸成分に関する尖度が大きい程、触感(滑らかさ度合)は良くなるということも新たに見出されている。但し、尖度が大きいからといって必ずしも触感が良いと判断できない可能性もある。よって、肌の凹凸形状に関する尖度で触感を評価する場合には、他の統計値(例えば、Rqや分散値、歪度など)を更に考慮したほうがより高精度に触感を評価できる場合がある。
更に、当該尖度の変化[Rku(500μm−)]及び当該歪度の変化[Rsk(80−500μm)]と触感スコアの変化との関係を重回帰分析することにより、触感スコアの変化を当該尖度の変化と当該歪度の変化とで推定できることが確認された。その重回帰分析により次のような重回帰式が算出された(決定係数:0.146)。
触感スコアの変化=4.01×[Rsk(80−500μm)]−0.73×[Rku(500μm−)−0.25
【0053】
本実施例では、1/28(cycle/μm)未満1/80(cycle/μm)以上の空間周波数帯域の凹凸波形を二次レリーフの代表寸法に対応付け、1/80(cycle/μm)未満1/500(cycle/μm)以上の空間周波数帯域の凹凸波形をキメの代表寸法に対応付け、1/500(cycle/μm)未満の空間周波数帯域の凹凸波形はキメの集合体や毛穴の代表寸法に対応付けている。これらの空間周波数帯域を分けて、平均、標準偏差、分散、歪度、若しくは尖度で表現することで、各寸法の肌の形状を評価することができることが検証された。