(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1補機群は、外部から流入するガス、水及び空気に対して流量の調整をそれぞれ行うガスポンプ、改質水ポンプ及び空気ブロワと、改質ガスを生成する第1改質器と、前記第1改質器に接続され、前記第1スタック及び前記第2スタックに改質ガスを供給する第1分岐配管と、を含む、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の燃料電池装置。
前記第2補機群は、外部から流入するガス、水及び空気に対して流量の調整をそれぞれ行うガスポンプ、改質水ポンプ及び空気ブロワと、改質ガスを生成する第2改質器と、前記第2改質器に接続され、前記第3スタック及び前記第4スタックに改質ガスを供給する第2分岐配管と、を含む、
請求項6又は7に記載の燃料電池装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一実施形態について、添付の図面を参照して説明する。添付の図面において、電力が流れるラインを実線で示し、制御信号又は各種情報等が伝達するラインを破線で示し、熱、水、ガス又は空気等が流れるラインを一点鎖線で示す。初めに、本開示の一実施形態に係る燃料電池装置1を含む発電システムSの構成を説明する。
【0011】
図1は、一実施形態に係る燃料電池装置1を含む発電システムSの構成を概略的に示す機能ブロック図である。
【0012】
図1に示すように、発電システムSは、貯湯タンクTと、負荷Lと、商用電源(grid)Gと、に接続されている。
図1に示すように、発電システムSは、外部から供給されるガス(都市ガス、プロパンガス等であり、以下、ガスと称する)、水及び空気に基づいて発電する。発電システムSは、発電した電力を負荷L等に供給する。特に、発電システムSは、交流電力としての出力を制御して、負荷L等に当該交流電力を供給する。
【0013】
発電システムSは、燃料電池装置1と、インバータ2と、排熱回収処理部3と、循環水処理部4と、を有する。
【0014】
インバータ2は、燃料電池装置1に接続されている。インバータ2は、燃料電池装置1が発電した直流電力を交流電力に変換する。インバータ2から出力される交流電力は、分電盤等を介して、負荷Lに供給される。負荷Lは、分電盤等を介して、インバータ2から出力された交流電力を受電する。
図1において、負荷Lは、1つのブロックとして図示されているが、これに限定されない。負荷Lは、任意の個数の各種電気機器により構成されてもよい。負荷Lは、分電盤等を介して、商用電源Gから受電することもできる。
【0015】
排熱回収処理部3は、燃料電池装置1の発電により生じる排気から、排熱を回収する。排熱回収処理部3は、例えば熱交換器等により構成されてもよい。排熱回収処理部3は、循環水処理部4及び貯湯タンクTに接続されている。
【0016】
循環水処理部4は、貯湯タンクTから排熱回収処理部3へ水を循環させる。排熱回収処理部3に供給された水は、排熱回収処理部3で回収された熱によって加熱され、貯湯タンクTに戻る。排熱回収処理部3は、排熱を回収した排気を外部に排出する。排熱回収処理部3で回収された熱は、外部から供給されるガス、水又は空気の加熱等に用いることができる。
【0017】
貯湯タンクTは、排熱回収処理部3及び循環水処理部4に接続されている。貯湯タンクTは、燃料電池装置1から回収された排熱を利用して生成される湯を貯えることができる。
【0018】
図2は、一実施形態に係る燃料電池装置1の構成を概略的に示す機能ブロック図である。
図2は、
図1に示した発電システムSにおいて、燃料電池装置1を示し、その他の機能部を省略している。以下では、燃料電池装置1の構成について詳細に説明する。
【0019】
燃料電池装置1は、制御部10と、記憶部20と、第1補機群30aと、第2補機群30bと、発電部40と、コンバータ部50と、を有する。
【0020】
燃料電池装置1は、以下にさらに詳細に述べるように、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、制御部10として少なくとも1つのプロセッサを含む。種々の実施形態によれば、少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(IC)として、又は複数の通信可能に接続されているIC及びディスクリート回路(discrete circuits)の少なくとも一方として構成されてもよい。少なくとも1つのプロセッサは、種々の既知の技術に従って構成されてもよい。
【0021】
一実施形態において、プロセッサは、1以上のデータ計算手続又は処理を実行するために構成された、1以上の回路又はユニットを含んでもよい。例えば、制御部10は、1以上のプロセッサ、コントローラ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号処理装置、プログラマブルロジックデバイス、フィールドプログラマブルゲートアレイ又はこれらのデバイス若しくは構成の任意の組み合わせを含んでもよい。制御部10は、他の既知のデバイス又は構成の任意の組み合わせを含んでもよい。以上のような構成により、制御部10は、後述する機能を実行してもよい。
【0022】
制御部10は、記憶部20と、第1補機群30aと、第2補機群30bと、発電部40と、コンバータ部50と、に通信接続されている。制御部10は、これらの各機能部をはじめとして燃料電池装置1全体を制御及び管理する。制御部10は、記憶部20に記憶されているプログラムを取得して、当該プログラムを実行する。これにより、制御部10は、燃料電池装置1の各部に係る種々の機能を実現する。制御部10から他の機能部に制御信号又は各種情報等を送信する場合、制御部10と他の機能部とは、有線又は無線により通信接続されていればよい。制御部10によって行われる、一実施形態に係る燃料電池装置1の特徴的な制御については、さらに後述する。一実施形態において、制御部10は、燃料電池装置1に含まれる発電部40の稼働時間(例えば、発電時間)を計測するなど、所定の時間を計測してもよい。
【0023】
記憶部20は、例えば半導体メモリ又は磁気ディスク等により構成される。記憶部20は、これらに限定されず、任意の記憶装置によって構成されてもよい。例えば、記憶部20は、光ディスクのような光学記憶装置によって構成されてもよいし、又は光磁気ディスク等によって構成されてもよい。記憶部20は、制御部10から取得した情報を記憶する。記憶部20は、制御部10によって実行されるプログラム等を記憶する。その他、記憶部20は、例えば制御部10による演算結果などの各種データも記憶する。記憶部20は、制御部10が動作する際のワークメモリ等も含んでもよい。
【0024】
燃料電池装置1は、例えば、2つの第1補機群30a及び第2補機群30bを有する。以下、第1補機群30aと第2補機群30bとを特に区別しない場合、単に、補機群30のように総称する。第1補機群30a及び第2補機群30bには、外部から供給されるガス、水及び空気それぞれが、1つの供給源から2つの経路に分岐された状態で流入する。補機群30は、流入するガス、水及び空気に対して流量の調整を行う。補機群30は、ガス配管、改質水配管、空気配管及び改質ガスの分岐配管等の配管部、さらにガス流量計、空気流量計も含む。
【0025】
第1補機群30aは、一例としてガスポンプ31a、改質水ポンプ32a、空気ブロワ33a、第1改質器34a及び第1分岐配管35aを有する。同様に、第2補機群30bは、一例としてガスポンプ31b、改質水ポンプ32b、空気ブロワ33b、第2改質器34b及び第2分岐配管35bを有する。第1補機群30a及び第2補機群30bそれぞれに含まれる構成要素を特に区別しない場合、単に、ガスポンプ31、改質水ポンプ32、空気ブロワ33、改質器34及び分岐配管35のように総称する。
【0026】
ガスポンプ31は、燃料電池装置1内部のガスラインにおいて、例えば改質器34の前段に配置される。ガスポンプ31は、改質器34に対してガスを供給する。ガスポンプ31は、改質器34にガスを送出できるものであれば、任意のものを採用することができる。このとき、ガスポンプ31は、制御部10からの制御信号に基づいて、改質器34に供給するガスの量を制御してもよい。このように、ガスポンプ31は、発電部40が発電する際の電気化学反応に用いられるガスを供給する。燃料電池装置1は、内部のガスラインにおいてガスポンプ31の前段で、ガスの脱硫処理を行ってもよいし、ガスを予備的に加熱してもよい。燃料電池装置1は、ガスを加熱する熱源として、排熱回収処理部3によって回収された排熱を利用してもよい。ガスは、例えば、都市ガス又はLPG等であるが、これらに限定されない。例えば、ガスは、燃料電池に応じて、天然ガス又は石炭ガス等であってもよい。
【0027】
改質水ポンプ32は、燃料電池装置1内部の改質水ラインにおいて、例えば改質器34の前段に配置される。改質水ポンプ32は、改質器34に対して水蒸気を供給する。改質水ポンプ32は、改質器34に水蒸気を送出できるものであれば、任意のものを採用することができる。このとき、改質水ポンプ32は、制御部10からの制御信号に基づいて、改質器34に供給する水蒸気の量を制御してもよい。燃料電池装置1は、内部の改質水ラインにおいて改質水ポンプ32の前段で、外部からの水に基づいて水蒸気を生成する。燃料電池装置1は、発電部40の排気から回収された水を原料として水蒸気を生成してもよい。燃料電池装置1は、水蒸気を生成する熱源として、排熱回収処理部3によって回収された排熱を利用してもよい。
【0028】
空気ブロワ33は、燃料電池装置1内部の空気ラインにおいて、例えば発電部40の前に配置される。空気ブロワ33は、発電部40に対して空気を供給する。空気ブロワ33は、発電部40に空気を送出できるものであれば、任意のものを採用することができる。このとき、空気ブロワ33は、制御部10からの制御信号に基づいて、発電部40に供給する空気の量を制御してもよい。このように、空気ブロワ33は、発電部40が発電する際の電気化学反応に用いられる空気を供給する。燃料電池装置1は、内部の空気ラインにおいて空気ブロワ33の前段で、外部から取り込んだ空気を予備的に加熱する。燃料電池装置1は、空気を加熱する熱源として、排熱回収処理部3によって回収された排熱を利用してもよい。
【0029】
改質器34は、ガスポンプ31から供給されるガス及び改質水ポンプ32から供給される水蒸気を用いて、水素を含む改質ガスを生成する。改質器34は、生成された改質ガスを分岐配管35を介して発電部40に供給する。
【0030】
発電部40は、4つの第1スタック41a、第2スタック41b、第3スタック41c及び第4スタック41dを有する。一例として、4つの第1スタック41a、第2スタック41b、第3スタック41c及び第4スタック41dは、共通の格納部に格納される。第1改質器34aは、流入側においてガスポンプ31a及び改質水ポンプ32aと接続され、供給側において第1スタック41a及び第2スタック41bと接続されている。同様に、第2改質器34bは、流入側においてガスポンプ31b及び改質水ポンプ32bと接続され、供給側において第3スタック41c及び第4スタック41dと接続されている。以下、第1スタック41a、第2スタック41b、第3スタック41c及び第4スタック41dを特に区別しない場合、単に、スタック41のように総称する。
【0031】
スタック41は、改質器34で生成された改質ガスと、空気ブロワ33から供給され発電部40の内部に充満する空気に含まれる酸素と、を反応させることにより発電する。すなわち、燃料電池のスタック41は、電気化学反応により発電する。当該電気化学反応に伴って、スタック41は、発電部40において発熱する。改質器34は、水蒸気改質を行う改質器であるものとして説明したが、これに限定されない。改質器34は、酸素を含む空気等を用いて水素を生成する部分酸化改質(Partial Oxidation(POX))を行う改質器等であってもよい。
【0032】
より具体的には、第1改質器34aでは、ガスポンプ31a及び改質水ポンプ32aからガス及び水蒸気がそれぞれ流入する。第1改質器34aは、第1スタック41a及び第2スタック41bに対して、改質ガスを第1分岐配管35aにより2つのラインに分岐させて供給する。換言すると、第1分岐配管35aは、第1改質器34aに接続され、第1スタック41a及び第2スタック41bに改質ガスを供給する。このように、ガスポンプ31aからのガスは、第1改質器34aにおいて改質された後、第1スタック41a及び第2スタック41bに共通して供給される。同様に、ガスポンプ31bからのガスは、第2改質器34bにおいて改質された後、第2分岐配管35bを介して第3スタック41c及び第4スタック41dに共通して供給される。一方で、空気ブロワ33からの空気は、第1スタック41a、第2スタック41b、第3スタック41c及び第4スタック41dを含む発電部40全体に充満する。
【0033】
このように、第1補機群30aは、第1スタック41a及び第2スタック41bに対して共通に作用する。同様に、第2補機群30bは、第3スタック41c及び第4スタック41dに対して共通に作用する。これにより、燃料電池装置1は、1つのスタックに対して1つの補機群が作用する場合と比較して機器の数が減少するので、コスト削減に寄与できる。燃料電池装置1は、制御及び管理する補機群の数が減少するので、制御部10における処理負荷の軽減にも寄与できる。したがって、制御部10は、通常の制御において生じる処理負荷に対して十分な処理能力を有するので、何らかの緊急事象が生じた場合であっても任意の機能部に処理を割り当てて的確に対応することが可能である。燃料電池装置1は、分岐配管35によって改質ガスを分岐させることで、対応する2つのスタック41における改質ガスの流量を互いに容易に近づけることができる。したがって、燃料電池装置1は、後述の制御において、対応する2つのスタック41からの出力電流の実測値を容易に近づけることができる。
【0034】
スタック41は、一例としてSOFC(固体酸化物形燃料電池)により構成される。しかしながら、これに限定されず、スタック41は、例えば固体高分子形燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell(PEFC))、りん酸形燃料電池(Phosphoric Acid Fuel Cell(PAFC))又は溶融炭酸塩形燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cell(MCFC))等のような燃料電池で構成されてもよい。スタック41は、1つ以上の燃料電池セルを含む。燃料電池装置1は、例えば単体で700W程度の発電ができるスタック41を4つ有している。この場合、発電部40は、全体として3kW程度の電力を出力できる。しかしながら、これに限定されず、燃料電池装置1は、所望する発電部40からの出力電力に合わせて、任意の電力を発電できる任意の数のスタック41を有してもよい。スタック41は、発電した直流電力をコンバータ部50に出力する。
【0035】
コンバータ部50は、4つの電流センサ51a、51b、51c及び51dと、4つの第1コンバータ52a、第2コンバータ52b、第3コンバータ52c及び第4コンバータ52dと、を有する。以下、4つの電流センサ51a、51b、51c及び51dを特に区別しない場合、単に、電流センサ51のように総称する。同様に、以下、第1コンバータ52a、第2コンバータ52b、第3コンバータ52c及び第4コンバータ52dを特に区別しない場合、単に、コンバータ52のように総称する。
【0036】
電流センサ51aは、第1スタック41aと第1コンバータ52aとの間に配置される。電流センサ51aは、第1スタック41aから出力される直流電流を計測する。電流センサ51aは、第1スタック41aからの出力電流を適切に計測できるのであれば、任意の素子によって構成されてもよい。同様の構成及び機能は、電流センサ51b、51c及び51dにも適用される。電流センサ51によって計測されたスタック41からの出力電流の実測値は、制御部10に出力される。制御部10は、当該実測値に関するデータを必要に応じて記憶部20に格納する。
【0037】
第1コンバータ52aは、第1スタック41aと電気的に接続され、第1スタック41aから出力された直流電力を受電する。第1コンバータ52aは、第1スタック41aから出力された直流電力を、電圧を変換した状態で、インバータ2へと供給する。すなわち、第1コンバータ52aは、一例として、DC/DCコンバータであってもよい。以下では、特に、第1コンバータ52aは、昇圧コンバータであるものとして説明する。このように、第1コンバータ52aは、第1スタック41aからの出力電流が入力され、所定の出力電圧(中間リンク電圧)を出力する。第1コンバータ52aからの出力電圧は、例えばパルス幅変調方式(Pulse Width Modulation(PWM))又は周波数可変変調方式(Variable Frequency Modulation(VFM))等の任意の方式を用いて制御部10により制御される。同様の構成及び機能は、第2コンバータ52b、第3コンバータ52c及び第4コンバータ52dにも適用される。
【0038】
以下では、一実施形態に係る燃料電池装置1の動作を説明する。特に、制御部10によって行われる第1コンバータ52a及び第2コンバータ52bの制御について主に説明する。以下の説明は、第3コンバータ52c及び第4コンバータ52dの制御に対しても同様に適用されるものと理解されたい。
【0039】
制御部10は、第1スタック41aからの出力電流の実測値が第2スタック41bからの出力電流の実測値に近づくように、第1コンバータ52a及び第2コンバータ52bを制御する。より具体的には、制御部10は、第1スタック41a及び第2スタック41bそれぞれの出力電流の目標値及び実測値を取得して、実測値が目標値に近づくように対応するコンバータ52の出力電圧を制御する。例えば、制御部10は、第1コンバータ52a及び第2コンバータ52bのデユーティー比を制御する。
【0040】
より具体的には、制御部10は、第1スタック41aからの出力電流の第1目標値と、第2スタック41bからの出力電流の第2目標値との差分が第1所定値以下となるように制御する。第1所定値とは、例えば、第1スタック41aからの出力電流の実測値が第2スタック41bからの出力電流の実測値に近づくように定められる目標値の範囲を意味する。制御部10は、第1スタック41a及び第2スタック41bからの出力電流の実測値が第1目標値及び第2目標値にそれぞれ近づくように、第1コンバータ52a及び第2コンバータ52bを制御する。例えば、制御部10は、第1スタック41aからの出力電流の実測値と第2スタック41bからの出力電流の実測値とが略同一になるように、第1コンバータ52a及び第2コンバータ52bを制御する。
【0041】
出力電流の目標値は、例えば燃料電池装置1の設置作業者によって予め定められてもよいし、ユーザによって適宜定められてもよいし、又はその他の任意のタイミングで任意の方法により定められてもよい。出力電流の目標値は、第1スタック41aと第2スタック41bとの間で略同一の値に設定されるとよい。制御部10は、取得した出力電流の目標値に関するデータを必要に応じて記憶部20に格納する。
【0042】
制御部10は、上述したとおり、電流センサ51によって計測された出力電流の実測値を取得する。制御部10は、予め設定された一定の周期で定期的に出力電流の実測値を取得してもよいし、又はその他の任意のタイミングで出力電流の実測値を取得してもよい。
【0043】
制御部10は、第1スタック41a及び第2スタック41bそれぞれの出力電流の目標値及び実測値が互いに略同一であるか否かを判定する。制御部10は、目標値と実測値とが異なる場合、対応するコンバータ52の出力電圧を制御する。
【0044】
より具体的には、制御部10は、実測値が目標値よりも小さい場合、対応するコンバータ52からの出力電圧を低下させることで、対応するスタック41からの出力電流を増加させる。例えば、制御部10は、PWM方式において、パルス周期T
Pに対するパルス幅t
Pの比(t
P/T
P)、すなわちデユーティー比を小さくすることで、対応するコンバータ52からの出力電圧を低下させる。
【0045】
一方で、制御部10は、実測値が目標値よりも大きい場合、対応するコンバータ52からの出力電圧を増加させることで、対応するスタック41からの出力電流を低下させる。例えば、制御部10は、PWM方式において、上記のt
P/T
Pを大きくすることで、対応するコンバータ52からの出力電圧を増加させる。
【0046】
制御部10は、目標値と実測値との差分が第2所定値を超えた場合、異常であると判定してもよい。第2所定値とは、例えば、スタック41に供給される発電用のガスの量とスタック41からの出力電流の値とが適切に対応している範囲内の値を意味する。すなわち、仮に実測値が目標値に比べて非常に小さい場合、スタック41において発電に用いられなかった余剰ガスが大量に発生する恐れがある。これにより、余剰ガスによる発熱が原因となってスタック41が劣化する恐れもある。逆に、実測値が目標値に比べて非常に大きい場合、スタック41において発電用のガスが不足する恐れがある。これにより、スタック41における発電が停止する恐れもある。第2所定値とは、このような事態が生じないような目標値と実測値との差分を意味する。例えば、第2所定値は、第1所定値よりも大きい。一例として、制御部10は、目標値と実測値との差分が一定の閾値を超えた場合、異常であると判定してもよい。
【0047】
制御部10は、目標値と実測値との差分が第2所定値を超えて異常であると判定した場合、視覚的方法若しくは聴覚的方法又はこれらの組み合わせ等を含む任意の方法によって、スタック41の出力状態を報知してもよい。
【0048】
制御部10は、スタック41からの出力電流の目標値に基づいて補機群30の動作を制御してもよい。例えば、制御部10は、第1スタック41a及び第2スタック41bの共通する出力電流の第1目標値及び第2目標値に基づいて、第1補機群30aを制御してもよい。より具体的には、制御部10は、第1スタック41a及び第2スタック41bからの出力電流の実測値が共通の第1目標値及び第2目標値にある程度近似するように、第1補機群30aを制御して外部から流入するガス、水及び空気の流量を調整してもよい。例えば、制御部10は、第3スタック41c及び第4スタック41dの共通する出力電流の第3目標値及び第4目標値に基づいて、第2補機群30bを同様に制御してもよい。
【0049】
図3は、一実施形態に係る燃料電池装置1の動作を示すフローチャートである。
【0050】
制御部10は、スタック41からの出力電流の目標値を取得する(ステップS101)。このとき、制御部10は、例えば第1スタック41aからの出力電流の第1目標値と、第2スタック41bからの出力電流の第2目標値との差分が第1所定値以下となるように制御する。
【0051】
制御部10は、電流センサ51によってスタック41からの出力電流の実測値を取得する(ステップS102)。
【0052】
制御部10は、取得した出力電流の目標値と実測値とが互いに略同一であるか否かを判定する(ステップS103)。制御部10は、略同一であると判定した場合、フローを終了する。制御部10は、略同一でないと判定した場合、ステップS104に進む。
【0053】
ステップS104以降において、制御部10は、スタック41からの出力電流の実測値が目標値に近づくように、コンバータ52を制御する。
【0054】
制御部10は、目標値と実測値とが互いに略同一でないと判定した場合、それらの差分が第2所定値を超えたか否かを判定する(ステップS104)。制御部10は、超えたと判定した場合、ステップS105に進む。制御部10は、超えていないと判定した場合、ステップS106に進む。
【0055】
制御部10は、目標値と実測値との差分が第2所定値を超えたと判定した場合、異常であると判定し任意の方法によりスタック41の出力状態を報知する(ステップS105)。
【0056】
制御部10は、目標値と実測値との差分が第2所定値を超えていないと判定した場合、実測値が目標値よりも小さいか否かを判定する(ステップS106)。制御部10は、実測値が目標値よりも小さいと判定した場合、ステップS107に進む。制御部10は、実測値が目標値よりも大きいと判定した場合、ステップS108に進む。
【0057】
制御部10は、実測値が目標値よりも小さいと判定した場合、対応するコンバータ52からの出力電圧を低下させることで、対応するスタック41からの出力電流を増加させる(ステップS107)。その後、制御部10は、再度ステップS102に戻る。
【0058】
制御部10は、実測値が目標値よりも大きいと判定した場合、対応するコンバータ52からの出力電圧を増加させることで、対応するスタック41からの出力電流を低下させる(ステップS108)。その後、制御部10は、再度ステップS102に戻る。
【0059】
以上のような一実施形態に係る燃料電池装置1は、第1スタック41a及び第2スタック41bそれぞれの出力電流の値が略同一となるように第1コンバータ52a及び第2コンバータ52bを制御する。燃料電池装置1は、出力電流の値が略同一であるので、補機群30を共通化しても第1スタック41a及び第2スタック41bの運転を安定化し得る。例えば、スタック41からの出力電流の目標値として10Aが設定されている場合において、燃料電池装置1が、第1スタック41aから8Aの電流を出力させ、第2スタック41bから12Aの電流を出力させることを考える。この場合、第1スタック41aにおいては、発電に用いられなかった余剰ガスが大量に発生する恐れがある。これにより、余剰ガスによる発熱が原因となって第1スタック41aが劣化する恐れもある。逆に、第2スタック41bに関しては、第2スタック41bにおいて発電用のガスが不足する恐れがある。これにより、第2スタック41bにおける発電が停止する恐れもある。一実施形態に係る燃料電池装置1は、2つのスタック41からの出力電流の値を互いに略同一とすることで、このような事態を避けることができる。すなわち、燃料電池装置1は、2つのスタック41からの出力電流の値に応じた適切な量のガスをそれぞれのスタック41に供給でき、ガスを効率的に発電に利用できる。このように、一実施形態に係る燃料電池装置1によれば、発電効率を向上できる。燃料電池装置1は、第1スタック41a及び第2スタック41b間で第1補機群30aを共通して用いることで製造コストの低減に寄与しながら、上述のとおり発電効率を向上できる。
【0060】
燃料電池装置1は、スタック41からの出力電流の目標値及び実測値を取得して、実測値が目標値に近づくように対応するコンバータ52の出力電圧を制御することで、より精度の高い制御を可能とする。すなわち、燃料電池装置1は、2つのスタック41からの出力電流の値をより精度良く略同一に合わせることができる。これにより、燃料電池装置1は、スタック41の劣化を抑制し、安定的な運転を継続できる。燃料電池装置1は、目標値を適宜定めることで、使用環境に合わせた最適な発電を可能とする。これにより、燃料電池装置1は、より長期にわたって安定した運転を可能とし、製品としての信頼性を向上できる。
【0061】
燃料電池装置1は、目標値と実測値との差分が第2所定値を超えた場合に異常であると判定することで、スタック41の出力状態をユーザ等に対して報知できる。換言すると、燃料電池装置1は、スタック41の出力状態の異常をユーザに対して認知させることができる。
【0062】
燃料電池装置1は、コンバータ部50の制御に加えて、補機群30の動作を制御することで、2つのスタック41からの出力電流の値をより精度良く略同一に合わせることができる。例えば、燃料電池装置1は、補機群30の制御によってスタック41におけるガスの流量を調整し、出力電流の実測値を目標値におおまかに合わせることができる。燃料電池装置1は、コンバータ部50の制御によってスタック41からの出力電流の実測値を目標値に正確に合わせることができる。このように、燃料電池装置1は、スタック41からの出力電流に対して、例えば、補機群30によりおよその調整を行い、コンバータ部50により精度のより高い調整を行うことも可能である。
【0063】
燃料電池装置1は、補機群30がガスポンプ31、改質水ポンプ32及び空気ブロワ33を含むことで、外部から流入するガス、水及び空気に対して流量の調整を容易に行うことができる。これにより、燃料電池装置1は、スタック41に対して適切な量のガスを供給できる。したがって、燃料電池装置1は、発電効率を向上できる。
【0064】
燃料電池装置1は、1つの補機群30と2つのスタック41との構成を2組有することで、発電効率を維持した状態で、大きな発電量の電力を供給できる。すなわち、燃料電池装置1は、対となる2つのスタック41の間で出力電流の値を略同一に合わせることで、各スタック41の劣化の抑制及び安定的な運転の継続を可能としながら、発電量を向上できる。
【0065】
燃料電池装置1は、4つの第1スタック41a、第2スタック41b、第3スタック41c及び第4スタック41dを共通の格納部に格納することで、各スタック41において発電に必要な温度を適切に維持できる。これにより、燃料電池装置1は、製品としての信頼性を向上できる。
【0066】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は、本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段又は各ステップ等に含まれる機能等は、論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0067】
例えば、一実施形態に係る発電部40及びスタック41は、上述のような構成に限定されるものではなく、種々の構成を採用することができる。燃料電池装置1は、ガスを利用して発電を行うスタック41を少なくとも2つ有していればよい。スタック41は、単体の燃料電池セルによって構成されてもよい。