特許第6942022号(P6942022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6942022
(24)【登録日】2021年9月9日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/71 20110101AFI20210916BHJP
   H01R 24/60 20110101ALN20210916BHJP
【FI】
   H01R12/71
   !H01R24/60
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-195039(P2017-195039)
(22)【出願日】2017年10月5日
(65)【公開番号】特開2019-67726(P2019-67726A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】内藤 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 公覚
【審査官】 藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−197591(JP,A)
【文献】 特開2016−012420(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0250508(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00−12/91
13/56−13/72
24/00−24/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向において回路基板の上面に搭載され、前記上下方向と直交する前後方向において相手側コネクタと嵌合するコネクタであって、
前記コネクタは、複数のコンタクトと、保持部材と、シェルとを備えており、
前記コンタクトの夫々は、被保持部と、前記回路基板に固定される被固定部とを有しており、
前記保持部材は、前記被保持部を保持する保持部と、前側被規制部と、後側被規制部とを有しており、
前記シェルには、少なくとも一つの前側規制部と、少なくとも一つの開口部と、前記少なくとも一つの開口部内に延びる少なくとも一つの後側規制部とが形成されており、
前記少なくとも一つの開口部は、前記前後方向と直交する方向において前記シェルを貫通しており、該開口部を規定する縁部はシェルの表面上で全領域に渡って連続しており、
前記少なくとも一つの前側規制部は、前記前側被規制部の前側に位置し、前記前側被規制部の前方への移動を規制しており、
前記少なくとも一つの後側規制部は、前記後側被規制部の後側に位置し、前記後側被規制部の後方への移動を規制しており、
少なくとも一部の前記コンタクトの前記被固定部は、前記少なくとも一つの開口部を通して視認可能である
コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記少なくとも一つの開口部は、2つあり、
前記少なくとも一つの後側規制部は、2つあり、前記開口部に夫々設けられており、
前記少なくとも一つの前側規制部は、2つあり、前記後側規制部に一対一に対応しており、
少なくとも一部の前記コンタクトの前記被固定部は、前記開口部のいずれかを通して視認可能である
コネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のコネクタであって、
前記シェルには、更に、付加的な開口部が形成されており、
前記コンタクトの前記被固定部は、前記開口部及び前記付加的な開口部のいずれかを通して視認可能である
コネクタ。
【請求項4】
請求項2又請求項3に記載のコネクタであって、
前記後側規制部は、前記前後方向と直交しかつ前記上下方向と斜交する方向に延びている
コネクタ。
【請求項5】
請求項2から請求項4までのいずれか一つに記載のコネクタであって、
前記保持部材には、前記上下方向において前記保持部材を貫通する内側開口部が形成されており、
前記内側開口部は、前記上下方向において前記コネクタを上方から見た場合に、前記開口部と少なくとも部分的に重なっている
コネクタ。
【請求項6】
請求項5に記載のコネクタであって、
前記内側開口部には、梁部が形成されている
コネクタ。
【請求項7】
請求項2から請求項6までのいずれか一つに記載のコネクタであって、
前記コネクタは、付加的なコンタクトを更に備えており、
前記コンタクトは下段のコンタクトであり、前記付加的なコンタクトは上段のコンタクトである
コネクタ。
【請求項8】
請求項2から請求項7までのいずれか一つに記載のコネクタであって、
前記前側規制部の夫々と、それに対応する前記後側規制部は、前記前後方向に延びる仮想的な直線上に並んでいる
コネクタ。
【請求項9】
請求項8に記載のコネクタであって、
前記前側規制部の夫々は、それに対応する前記後側規制部が設けられている前記開口部の前側の縁に設けられており、
前記前側被規制部及び前記後側被規制部は、前記前後方向において、前記前側規制部と前記後側規制部との間に挟まれている
コネクタ。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一つに記載のコネクタであって、
前記コネクタを前記上下方向に沿って見た場合に、少なくとも一部の前記コンタクトの前記被固定部は、前記少なくとも一つの開口部を通して視認可能である
コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ関し、特に回路基板上に搭載される表面実装型のコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
図18を参照すると、特許文献1に記載されたコネクタ90は、複数のコンタクト92と、コンタクト92を保持する保持部材94と、保持部材94を少なくとも部分的に収容するシェル96とを備えている。シェル96には、保持部材94をシェル96に固定するための爪960が形成されている。また、シェル96には、コネクタ90が回路基板(図示せず)の一面上に搭載されたとき、コンタクト92の被固定部(図示せず)が回路基板上の固定部(図示せず)に確実に固定されているか否かを目視できるように、覗き孔962が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2016−0101520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコネクタ90において、シェル96に形成された爪960は、そのサイズが小さい。そのため、爪960が保持部材94の所定箇所に掛かり難く、保持部材94をシェル96に確実に固定することが難しいという問題点がある。この問題点を解決するために、爪960のサイズを大きくすることが考えられるが、単純に爪960のサイズを大きくしようとすると、シェル96のサイズも大きくせざるを得なくなる。その一方で、シェル96に関しては、そのサイズを大きくしたくないという要請もある。
【0005】
そこで、本発明は、シェルのサイズを大きくすることなく、保持部材を固定する爪を大きくしたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1のコネクタとして、上下方向において回路基板の上面に搭載され、前記上下方向と直交する前後方向において相手側コネクタと嵌合するコネクタであって、
前記コネクタは、複数のコンタクトと、保持部材と、シェルとを備えており、
前記コンタクトの夫々は、被保持部と、前記回路基板に固定される被固定部とを有しており、
前記保持部材は、前記被保持部を保持する保持部と、前側被規制部と、後側被規制部とを有しており、
前記シェルには、少なくとも一つの前側規制部と、少なくとも一つの開口部と、前記少なくとも一つの開口部内に延びる少なくとも一つの後側規制部とが形成されており、
前記少なくとも一つの開口部は、前記シェルの表面上においては閉じているが、前記前後方向と直交する方向において前記シェルを貫通しており、
前記少なくとも一つの前側規制部は、前記前側被規制部の前側に位置し、前記前側被規制部の前方への移動を規制しており、
前記少なくとも一つの後側規制部は、前記後側被規制部の後側に位置し、前記後側被規制部の後方への移動を規制しており、
少なくとも一部の前記コンタクトの前記被固定部は、前記少なくとも一つの開口部を通して視認可能である
コネクタを提供する。
【0007】
また、本発明は第2のコネクタとして、第1のコネクタであって、
前記少なくとも一つの開口部は、2つあり、
前記少なくとも一つの後側規制部は、2つあり、前記開口部に夫々設けられており、
前記少なくとも一つの前側規制部は、2つあり、前記後側規制部に夫々対応しており、
少なくとも一部の前記コンタクトの前記被固定部は、前記開口部のいずれかを通して視認可能である
コネクタを提供する。
【0008】
また、本発明は第3のコネクタとして、第2のコネクタであって、
前記シェルには、更に、付加的な開口部が形成されており、
前記コンタクトの前記被固定部は、前記開口部及び前記付加的な開口部のいずれかを通して視認可能である
コネクタを提供する。
【0009】
また、本発明は第4のコネクタとして、第2又は第3のコネクタであって、
前記後側規制部は、前記前後方向と直交しかつ前記上下方向と斜交する方向に延びている
コネクタを提供する。
【0010】
また、本発明は第5のコネクタとして、第2から第4までのコネクタのうちのいずれか一つであって、
前記保持部材には、前記上下方向において前記保持部材を貫通する内側開口部が形成されており、
前記内側開口部は、前記上下方向において前記コネクタを上方から見た場合に、前記開口部と少なくとも部分的に重なっている
コネクタを提供する。
【0011】
また、本発明は第6のコネクタとして、第5のコネクタであって、
前記内側開口部には、梁部が形成されている
コネクタを提供する。
【0012】
また、本発明は第7のコネクタとして、第2から第6までのコネクタのうちのいずれか一つであって、
前記コネクタは、付加的なコンタクトを更に備えており、
前記コンタクトは下段のコンタクトであり、前記付加的なコンタクトは上段のコンタクトである
コネクタを提供する。
【0013】
また、本発明は第8のコネクタとして、第2から第7までのコネクタのうちのいずれか一つであって、
前記前側規制部の夫々と、それに対応する前記後側規制部は、前記前後方向に延びる仮想的な直線上に並んでいる
コネクタを提供する。
【0014】
さらに、本発明は第9のコネクタとして、第8のコネクタであって、
前記前側規制部の夫々は、それに対応する前記後側規制部が設けられている前記開口部の前側の縁に設けられており、
前記前側被規制部及び前記後側被規制部は、前記前後方向において、前記前側規制部と前記後側規制部との間に挟まれている
コネクタを提供する。
【0015】
さらにまた、本発明は第10のコネクタとして、第1から第9までのコネクタのうちのいずれか一つであって、
前記コネクタを前記上下方向に沿って見た場合に、少なくとも一部の前記コンタクトの前記被固定部は、前記少なくとも一つの開口部を通して視認可能である
コネクタを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコネクタにおいて、シェルには、少なくとも一つの開口部が形成されるとともに、開口部内に延びる後側規制部が形成されている。開口部は、後側規制部を形成するために必然的に形成される部分を含み、少なくとも一部のコンタクトの被固定部を視認することができるように形成されている。換言すると、本発明のコネクタには、コンタクトの被固定部を視認するための専用の開口部が設けられていない。これにより、本発明のコネクタは、シェルのサイズを大きくすることなく、保持部材をシェルに固定する爪(後側規制部)のサイズを大きくすることができ、それによって、保持部材をシェルにしっかり固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態によるコネクタを示す斜視図である。コネクタは組立途中の状態にあり、コネクタ本体とシェルとは互いに分離されている。上部後側規制部及び連結部は、未だ折り曲げられていない。
図2図1のコネクタを示す正面図である。
図3図1のコネクタを示す平面図である。
図4図1のコネクタを示す底面図である。
図5図1のコネクタを示す右側面図である。
図6図1のコネクタに含まれるコンタクトを示す斜視図である。
図7図1のコネクタを示す斜視図である。コネクタは組立途中の状態にあり、コネクタ本体はシェル内に収容されている。上部後側規制部及び連結部は、未だ折り曲げられていない。
図8図7のコネクタを示す斜視図である。コネクタは組立完了後の状態にあり、上部後側規制部及び連結部は折り曲げられている。
図9図8のコネクタを示す正面図である。
図10図8のコネクタを示す平面図である。
図11図8のコネクタを示す底面図である。
図12図8のコネクタを示す右側面図である。
図13図10のコネクタを示すA−A線断面図である。
図14図10のコネクタを示すB−B線断面図である。
図15図10のコネクタを示すC−C線断面図である。
図16】本発明の一実施の形態によるコネクタの変形例を示す斜視図である。
図17】本発明の一実施の形態によるコネクタの別の変形例を示す斜視図である。
図18】特許文献1に記載されたコネクタを示す斜視図である。コネクタは組立途中の状態にある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図8に示されるように、本発明の一実施の形態によるコネクタ10は、回路基板70の一面に搭載される表面実装型のコネクタである。本実施の形態において、コネクタ10は、上下方向において回路基板70の上面に搭載されている。また、コネクタ10は、上下方向と直交する前後方向において、相手側コネクタ(図示せず)と嵌合及び抜去可能なコネクタである。本実施の形態において、上下方向はZ方向であり、+Z方向が上方、−Z方向が下方である。また、前後方向はX方向であり、+X方向が後方、−X方向が前方である。
【0019】
図1を参照すると、コネクタ10は、コネクタ本体20と、コネクタ本体20を内部に収容するシェル30とを備えている。また、コネクタ本体20は、複数のコンタクト40と、複数のコンタクト40を保持する保持部材50とを有している。
【0020】
図6に示されるように、コンタクト40は、下段のコンタクト42(コンタクト)と上段のコンタクト44(付加的なコンタクト)を含んでいる。また、コンタクト40は、信号用コンタクトと電源用コンタクトとを含んでいる。コンタクト40は、互いにサイズや形状が異なっていても、その基本構成は同じである。即ち、コンタクト40は、夫々、接触部400と、被保持部402と、被固定部404とを有している。接触部400は、相手側コンタクト(図示せず)の被接触部(図示せず)に接触する部位である。被保持部402は、保持部材50に保持される部位である。被固定部404は、コネクタ10が回路基板70(図8参照)に搭載されたとき、回路基板70の接続パッド(図示せず)に接続固定される部位である。但し、本発明はこれに限定されない。コンタクト40は、接触部400に代えて、接点と接点を支持する弾性変形可能な支持部とを備えるものであってもよい。本実施の形態において、下段のコンタクト42は、一枚の金属板を打ち抜き加工及び曲げ加工して形成することができる。同様に、上段のコンタクト44は、一枚の金属板を打ち抜き加工及び曲げ加工して形成することができる。
【0021】
図1及び図3から図5までの図から理解されるように、保持部材50は、嵌合部52と、保持部54とを有している。保持部54は、前保持部56と、後保持部58とを有している。嵌合部52は、上面520及び下面522を有し、舌状の形状を有している。嵌合部52は、前保持部56から前方へ突出している。前保持部56は嵌合部52の後方に位置している。上下方向において、前保持部56のサイズは、嵌合部52のサイズよりも大きい。前保持部56は、嵌合部52を支持する支持部として機能する。後保持部58は、前保持部56の後方に位置している。後保持部58のサイズは、上下方向及び上下方向と直交する横方向において、前保持部56のサイズよりも大きい。後保持部58は、シェル30に固定される被固定部として機能する。なお、本実施の形態において、横方向はY方向である。また、本実施の形態において、保持部材50は、下段のコンタクト42と一体成型される第1絶縁樹脂部と、上段のコンタクト44と一体成型される第2絶縁樹脂部と、第1樹脂部及び第2樹脂部と一体成型される第3絶縁樹脂部とから構成されている。但し、本発明はこれに限定されない。保持部材50は単一の絶縁樹脂部により形成されてもよい。
【0022】
図2から図5までの図から理解されるように、コンタクト40が保持部材50に保持された状態において、コンタクト40の接触部400は上下方向に二列に並んでいる。詳しくは、上段のコンタクト44の接触部400は、嵌合部52の上面520に並べられている。上段のコンタクト44の接触部400は、部分的に嵌合部52内に埋め込まれ、一部が外部に露出している。また、下段のコンタクト42の接触部400は、嵌合部52の下面522に並べられている。下段のコンタクト42の接触部400も、部分的に嵌合部52内に埋め込まれ、一部が外部に露出している。
【0023】
図3から図5までの図に示されるように、コンタクト40が保持部材50に保持された状態において、コンタクト40の被固定部404は、前後方向に二列に並んでいる。前後方向において、下段のコンタクト42の被固定部404は、上段のコンタクト44の被固定部404の前方に位置している。図5に示されるように、被固定部404は後保持部58から下方へ突出し、さらに後方へ延びている。
【0024】
図3及び図4から理解されるように、後保持部58には、後保持部58を上下方向に貫通する開口部(内側開口部)580が形成されている。開口部580は、横方向に長い形状を有している。詳しくは、開口部580は、上下方向において上方から見た場合に、下段のコンタクト42の全ての被固定部404を視認できるように形成されている。保持部材50を成型する際の樹脂の流動性を考慮して、開口部580には前後方向に延びる梁部582が形成されている。本実施の形態では、梁部582の数は二つである。梁部582の存在により、開口部580は、三つに分割されている。但し、本発明はこれに限られず、開口部580は、単一のものでもあってもよく、あるいは、二つ又は四つ以上の部分に分割されたものであってもよい。
【0025】
図1及び図3に示されるように、後保持部58は、また、その上部に上側被規制壁584を備えている。本実施の形態において、上側被規制壁584は、二つある。上側被規制壁584は、前面586と後面588とを有している。前面586は、上側前窪み590を部分的に規定し、後面588は、上側後窪み592を部分的に規定する。即ち、上側被規制壁584は、前後方向において、上側前窪み590と上側後窪み592との間に位置している。図14及び図15を参照して後述するように、上側被規制壁584の前面586は前側被規制部として機能し、後面588は後側被規制部として機能する。このように、保持部材50は、前側被規制部586と後側被規制部588とを有している。但し、本発明は、これに限られない。上側前窪み590及び上側後窪み592の一方又は両方は省略されてもよい。また、二つの上側被規制壁584に代えて、単一の(連続する)上側被規制壁を有していてもよい。
【0026】
図4に示されるように、後保持部58は、また、その下部に下側被規制壁594を備えている。下側被規制壁594には、下側窪み596が形成されている。本実施の形態において、下側窪み596は、二つある。下側被規制壁594は、下側窪み596を部分的に規定する、前方へ向いた内壁面598を有している。また、下側被規制壁594は、後方へ向いた後面600を有している。但し、本発明は、これに限られない。下側被規制壁594には、下側窪み596が形成されていなくてもよい。
【0027】
図1から図5までの図から理解されるように、シェル30は、筒状部32と、四つの脚部36と、後板部38とを有している。本実施の形態において、シェル30は、一枚の金属板を加工して形成されている。
【0028】
図1及び図2から理解されるように、筒状部32は、上下方向のサイズに比べて上下方向及び前後方向の双方と直交する横方向のサイズが大きい扁平の形状を有している。図2から図4までの図に示されるように、筒状部32は、また、上下方向に位置する上面部320及び下面部322と、これらを接続する側面部324,326とを有している。上面部320及び下面部322の形状は平らであり、側面部324、326の形状は湾曲している。図8及び図9に示されるように、筒状部32は、その内部にコネクタ本体20を収容し、収容したコネクタ本体20とともに相手側コネクタ(図示せず)の嵌合部(図示せず)を受容する受容部328を規定する。
【0029】
図1及び図2に示されるように、脚部36は、筒状部32の側面部324、326から下方へ延びている。脚部36は、図8から理解されるように、コネクタ10が回路基板70に搭載されたとき、回路基板70に固定されるとともに電気的に接続される。
【0030】
図1及び図3から図5までの図に示されるように、後板部38は、連結部380を介して筒状部32の上部後縁に連結されている。図7及び図8から理解されるように、シェル30にコネクタ本体20を収容した後、連結部380は折り曲げられ、それによって、後板部38は前後方向においてコネクタ本体20を後方から覆う。
【0031】
図1及び図3に示されるように、シェル30の上面部320には、少なくとも一つの上部前側規制部(前側規制部)330と、少なくとも一つの開口部332と、少なくとも一つの上部後側規制部(後側規制部)334とが形成されている。本実施の形態において、上部前側規制部330、開口部332及び上部後側規制部334の数は、夫々二つである。ここで、上面部320は、シェル30の比較的大きな部分を占めている。それゆえ、上部後側規制部334を上面部320に形成することで、そのサイズを大きくすることができる。
【0032】
図1及び図3から理解されるように、本実施の形態において、上部前側規制部330と上部後側規制部334とは、夫々互いに対応している。詳しくは、上部前側規制部330の夫々と対応する上部後側規制部334とは、前後方向に沿って延びる仮想的な直線上に並んでいる。但し、本発明はこれに限られない。上部前側規制部330の夫々と対応する上部後側規制部334とは、前後方向に沿って延びる仮想的な直線上に並んでいなくてもよい。また、上部後側規制部334は、開口部332に夫々対応している。上部後側規制部334の夫々は、対応する開口部332に設けられ、対応する開口部332内に延びている。
【0033】
図1及び図3に示されるように、シェル30の上面部320には、さらに、付加的な開口部336と、一対の押圧部338が形成されている。
【0034】
図1及び図3から理解されるように、開口部332は、上部後側規制部334を形成するように、上面部320の一部を打ち抜いて形成される。換言すると、上部後側規制部334は、開口部332を形成することによって形成される。開口部332は、シェル30の表面において閉じており、シェル30の上面部320を上下方向に貫通している。但し、本発明はこれに限られない。開口部332は、その一部が側面部324,326に達するように形成されてもよい。その場合、開口部332は、前後方向と直交する方向においてシェル30を貫通する。いずれにしても、開口部332は、シェル30の表面において閉じているので、シェル30の縁部に切り取り部を形成する場合に比べて、シェル30の強度低下を抑え、高い強度を維持することができる。また、本実施の形態において、開口部332は、上下方向において上方から見たとき、概ねU型の形状を有している。また、本実施の形態において、開口部332は、前後方向において、上部後側規制部334よりも後の部分の長さL1が、上部後側規制部334よりも前の部分の長さL2よりも長い。
【0035】
図1及び図3から理解されるように、付加的な開口部336は、シェル30の上面部320を上下方向に貫通している。また、付加的な開口部336は、横方向において、二つの開口部332の間に位置している。さらに、付加的な開口部336は、前後方向において、二つの開口部332と部分的に重なる位置にある。
【0036】
図1及び図3から理解されるように、上部後側規制部334は、片持ち梁状に形成され、横方向において内側に延びている。図7及び図8から理解されるように、上部後側規制部334は、コネクタ本体20をシェル30内に収容した後、折り曲げられる。詳しくは、上部後側規制部334は、前後方向と直交しかつ上下方向と斜交する方向に延びるように、筒状部32の内側へ折り曲げられる。
【0037】
図3に示されるように、上部前側規制部330は、対応する上部後側規制部334が形成されている開口部332の前縁に設けられている。図1及び図2から理解されるように、上部前側規制部330は、シェル30の上面部320の一部を下方へ突出させて形成される。上部前側規制部330を形成するため、上面部320には、開口部332の前縁から所定の距離離れた位置に横方向に延びるスリットが形成される。上面部320のスリットより前方の部分が下方へ押し出され、上部前側規制部330を構成する。
【0038】
図1及び図3から理解されるように、押圧部338は、片持ち梁状に形成され、後方へ延びている。図14に示されるように、押圧部338は、その一部が下方へ突出するように湾曲している。
【0039】
図4に示されるように、シェル30の下面部322には、一対の下部前側規制部340と、一対の下部後側規制部342と、一対の凹部344が形成されている。
【0040】
図2及び図4から理解されるように、下部前側規制部340は、シェル30の下面部322の一部を上方へ突出させて形成される。下部前側規制部340を形成するため、下面部322には、二対のスリットが形成される。各対のスリットは前後方向において所定の距離離れており、横方向に延びている。下面部322の各対のスリットの間に位置する部分が、上方へ押し出され下部前側規制部340を構成する。図2図9図14及び図15から理解されるように、本実施の形態において、下部前側規制部340は、上下方向に沿って見たとき、上部前側規制部330と重なる位置に形成されている。
【0041】
図4に示されるように、下部後側規制部342は、下面部322の後縁に沿って形成されている。下部後側規制部342は、横方向において、下部前側規制部340よりも内側に位置している。下部後側規制部342は、片持ち梁状に形成され、横方向において内側に延びている。下部後側規制部342は、コネクタ本体20をシェル30内に収容した後、折り曲げられる。詳しくは、下部後側規制部342は、前後方向と直交しかつ上下方向と斜交する方向に延びるように、筒状部32の内側へ折り曲げられる。
【0042】
図14から理解されるように、凹部344は、下面部322から筒状部32の内側へ突出する突出部346を形成した結果、形成されるものである。図2図9及び図14から理解されるように、突出部346は、上下方向において、押圧部338と対向している。コネクタ10が相手側コネクタ(図示せず)と嵌合したとき、相手側コネクタの嵌合部(図示せず)は、押圧部338と突出部346とによって挟まれる。詳しくは、押圧部338は、その弾性変形による反発力によって、相手側コネクタの嵌合部(図示せず)を突出部346へ押し付ける。これによって、押圧部338と突出部346は、相手側コネクタの嵌合部を保持する。
【0043】
図1図3から図5まで、及び図7から理解されるように、コネクタ本体20は、シェル30の後方から筒状部32内へ挿入される。コネクタ本体20をシェル30の筒状部32内に収容した状態で、上部後側規制部334は、図8に示されるように、前後方向と直交する面内において、シェル30の内部へ向けて折り曲げられる。同様に、下部後側規制部342も、前後方向と直交する面内において、シェル30の内部へ向けて折り曲げられる。その結果、上部後側規制部334は、前後方向と直交しかつ上下方向と斜交する斜め下方向へ延びる。また、下部後側規制部342は、前後方向と直交しかつ上下方向と斜交する斜め上方向へ延びる。さらに、図7図8及び図10から図12に示されるように、後板部38が前後方向と直交するように、連結部380は折り曲げられる。こうして、コネクタ10の組み立てが完了する。
【0044】
図10に示されるように、組立完了後のコネクタ10において、上側被規制壁584は、前後方向において、上部前側規制部330と上部後側規制部334との間に挟まれている。換言すると、前側被規制部586と後側被規制部588は、前後方向において、前側規制部330と後側規制部334との間に挟まれている。このとき、図14及び図15に示されるように、上部前側規制部330は、上側前窪み590に少なくとも部分的に収容されており、上部後側規制部334は、上側後窪み592に少なくとも部分的に収容されている。この状態で、上部前側規制部330は、上側被規制壁584の前面586の前側に位置し、上側被規制壁584の前面586の前方への移動を規制している。また、上部後側規制部334は、上側被規制壁584の後面588の後側に位置し、上側被規制壁584の後面588の後方への移動を規制している。こうして、保持部材50は、上部前側規制部330と上部後側規制部334とによって、シェル30にしっかり固定される。
【0045】
図14及び図15に示されるように、組立完了後のコネクタ10において、下側被規制壁594の下側窪み596には、下部前側規制部340が少なくとも部分的に収容される。下部前側規制部340は、前後方向において、下側窪み596の内壁面598の前側に位置し、下側被規制壁594の前方への移動を規制する。また、図11及び図13に示されるように、下部後側規制部342は、前後方向において、下側被規制壁594の後面600の後方に位置している。下部後側規制部342は、下側被規制壁594の後面600の後側に位置し、下側被規制壁594の後面600の後方への移動を規制する。こうして、保持部材50は、下部前側規制部340と下部後側規制部342とによって、シェル30にしっかり固定される。
【0046】
図10に示されるように、組立完了後のコネクタ10において、上下方向において上方から見たとき、シェル30の開口部332は、保持部材50の開口部580と少なくとも部分的に重なっている。これにより、上下方向において上方から見たとき、開口部332の夫々を通して、下段のコンタクト42のうち少なくとも一部のコンタクト42の被固定部404を視認することができる。本実施の形態において、各開口部332を通して、四本の下段のコンタクト42の被固定部404を部分的に視認することができる。視認される被固定部404の夫々について、少なくとも後端の一部を含む二辺が視認可能である。また、本実施の形態では、シェル30の付加的な開口部336も、上下方向において上方から見たとき、保持部材50の開口部580と少なくとも部分的に重なっている。これにより、上下方向において上方から見たとき、付加的な開口部336を通して、下段のコンタクト42のうちの一部のコンタクト42の被固定部404を視認することができる。本実施の形態において、付加的な開口部336を通して、四本の下段のコンタクト42の被固定部404を部分的に視認することができる。視認される被固定部404の夫々について、少なくとも後端の一部を含む二辺が視認可能である。その結果、本実施の形態において、上下方向において上方から見たとき、開口部332及び付加的な開口部336を通して、下段のコンタクト42のすべての被固定部404を目視することができる。換言すると、下段のコンタクト42の夫々の被固定部404は、開口部332及び付加的な開口部336のいずれかを通して目視可能である。よって、コネクタ10が回路基板70に搭載された状態において、下段のコンタクト42の被固定部404が回路基板70上の接続パッドに適切に固定接続されているか否かを目視確認することができる。なお、本実施の形態では、上下方向において上方から見たときに下段のコンタクト42のすべての被固定部404を目視できるようにしたが、本発明はこれに限られない。上方及び斜め上方の複数の視点から開口部332及び付加的な開口部336を通してみたときに、下段のコンタクト42のすべての被固定部404を目視することができればよい。なお、本実施の形態において、上段のコンタクト42の被固定部404は、コネクタ10が回路基板70に搭載された状態で、斜め後上方から視認することが可能である。
【0047】
上述したように、本実施の形態によるコネクタ10において、上部後側規制部334は、シェル30の上面部320に形成されているので、その大型化が可能である。また、開口部332は、上部後側規制部334を形成するために必然的に形成される部分を含んでいるので、上部後側規制部334の大型化に伴うシェル30の大型化を回避することができる。こうして、本実施の形態のコネクタ10は、シェル30を大型化することなく、保持部材50をシェル30に固定する爪(後側規制部334)のサイズを大きくすることができ、それによって、保持部材50をシェル30にしっかり固定することができる。
【0048】
以上、本発明について、実施の形態を掲げて説明してきたが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変形、変更が可能である。たとえば、上記実施の形態では、上部前側規制部330が開口部332の前縁に形成されていたが、図16に示されるように、上部前側規制部330Aを開口部332から離れた位置に設けるようにしてもよい。このような上部前側規制部330Aは、下部前側規制部340の形成と同様の方法で形成することができる。また、上記実施の形態では、上部後側規制部334に夫々対応する二つの上部前側規制部330が形成されていたが、図17に示されるように、上部前側規制部330Bを一つだけ設けてもよい。この場合、開口部332に代えて単一の開口部332Bを形成し、開口部332Bの前縁中央部に上部前側規制部330Bを形成することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 コネクタ
20 コネクタ本体
30 シェル
32 筒状部
320 上面部
322 下面部
324,326 側面部
328 受容部
330,330A,330B 上部前側規制部(前側規制部)
332,332B 開口部
334 上部後側規制部(後側規制部)
336 付加的な開口部
338 押圧部
340 下部前側規制部
342 下部後側規制部
344 凹部
346 突出部
36 脚部
38 後板部
380 連結部
40 コンタクト
400 接触部
402 被保持部
404 被固定部
42 下段のコンタクト(コンタクト)
44 上段のコンタクト(付加的なコンタクト)
50 保持部材
52 嵌合部
520 上面
522 下面
54 保持部
56 前保持部
58 後保持部
580 開口部(内側開口部)
582 梁部
584 上側被規制壁
586 前面(前側被規制部)
588 後面(後側被規制部)
590 上側前窪み
592 上側後窪み
594 下側被規制壁
596 下側窪み
598 内壁面
600 後面
70 回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図18