(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6942250
(24)【登録日】2021年9月9日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】バイオセンシング素子及びその製造方法及び生体分子の検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/30 20060101AFI20210916BHJP
G01N 27/02 20060101ALI20210916BHJP
G01N 33/553 20060101ALI20210916BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20210916BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20210916BHJP
G01N 27/327 20060101ALI20210916BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20210916BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20210916BHJP
C12Q 1/25 20060101ALI20210916BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20210916BHJP
【FI】
G01N27/30 F
G01N27/02 D
G01N33/553
G01N33/483 F
G01N33/543 525U
G01N27/327
C12M1/34 A
C12M1/34 B
C12Q1/02
C12Q1/25
C12Q1/68 100Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-523481(P2020-523481)
(86)(22)【出願日】2018年7月12日
(65)【公表番号】特表2020-527243(P2020-527243A)
(43)【公表日】2020年9月3日
(86)【国際出願番号】CN2018095440
(87)【国際公開番号】WO2019011296
(87)【国際公開日】20190117
【審査請求日】2020年2月20日
(31)【優先権主張番号】201710566313.7
(32)【優先日】2017年7月12日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520476433
【氏名又は名称】瑞禾生物科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ユアン チウン−ジェ
(72)【発明者】
【氏名】リエン チュン−ルン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ ポール シー.−ピー.
【審査官】
櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−242135(JP,A)
【文献】
特開2006−337273(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/184465(WO,A1)
【文献】
特開2005−114427(JP,A)
【文献】
特開2013−160557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を提供する工程と、
上面を有する金属導電層を前記基板の上に形成する工程と、
複数の作用電極であって、各前記作用電極は前記金属導電層を超えて突出する0.05ミクロンから0.6ミクロンの範囲の第1の高さ及び幅を有するとともに、0.125から2.5の範囲の前記第1の高さ及び前記幅のアスペクト比を有する複数の前記作用電極を前記金属導電層の前記上面に形成して、前記金属導電層の前記上面よりも高い頂面を各前記作用電極に持たせる工程と、
前記金属導電層を覆い且つ前記作用電極を囲む絶縁層を形成し、前記絶縁層の上面が前記頂面と前記金属導電層の前記上面との間にあるので、前記作用電極を前記絶縁層の前記上面から突出させる工程と、
を含むことを特徴とするバイオセンシング素子の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁層を形成する工程は、
絶縁材料層を前記金属導電層及び前記作用電極の上に堆積する工程と、
前記絶縁材料層に対して平坦化プロセスを実行して、平坦化された絶縁材料層を形成する工程と、
前記平坦化された絶縁材料層をエッチングして、前記絶縁層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
核酸、細胞、抗体、酵素、ポリペプチド、又はそれらの組み合わせである生物学的プローブを、前記作用電極に接続させる工程を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
基板と、
前記基板の上に配置され、且つ上面を有する金属導電層と、
前記金属導電層の前記上面の上に配置され、それぞれ前記金属導電層の前記上面よりも高い頂面を含む複数の作用電極であって、各前記作用電極は前記金属導電層を超えて突出する0.05ミクロンから0.6ミクロンの範囲の第1の高さ及び幅を有するとともに、0.125から2.5の範囲の前記第1の高さ及び前記幅のアスペクト比を有する複数の前記作用電極と、
前記金属導電層を覆い且つ前記作用電極を囲む絶縁層であって、その上面が前記頂面と前記金属導電層の前記上面との間にあるので、前記作用電極を前記絶縁層の前記上面から突出させる絶縁層と、
を含むことを特徴とするバイオセンシング素子。
【請求項5】
各前記作用電極は、前記絶縁層の前記上面から突出する第2の高さを有し、且つ前記第2の高さが0.01ミクロン〜0.5ミクロンであることを特徴とする請求項4に記載のバイオセンシング素子。
【請求項6】
前記作用電極に接続させる生物学的プローブであって、核酸、細胞、抗体、酵素、ポリペプチド、又はそれらの組み合わせである前記生物学的プローブを更に備えることを特徴とする請求項4又は5に記載のバイオセンシング素子。
【請求項7】
標的分子を含むサンプルを提供する工程と、
請求項4〜6のいずれか一項に記載のバイオセンシング素子を提供する工程と、
生物学的プローブを前記作用電極に接続する工程と、
電圧を前記作用電極に印加して、前記作用電極を囲む電界を前記作用電極に発生させる工程と、
前記サンプルと前記生物学的プローブを接触させて、前記サンプルにおける前記標的分子と前記生物学的プローブとを結合させて、更に、前記作用電極に信号を発生させる工程と、
を備えることを特徴とする生体分子の検出方法。
【請求項8】
前記電圧を前記作用電極に印加する工程は、電圧を前記作用電極に印加して、電界の最大強度が各前記作用電極の前記頂面に現れるようにし、かつ75%の前記電界の最大強度が各前記作用電極の前記頂面から前記絶縁層の前記上面に向かって前記第2の高さの27%〜40%の箇所に現れるようにする工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオセンシング素子及びその製造方法、及び上記バイオセンシング素子による生体分子の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な疾患の診断、生理学的代謝に関する研究、又は環境要因の監視等を行うために、様々な異なる生体分子の検出方法は開発されている。微小電気機械システム(Micro−electromechanical Systems;MEMS)は、その開発が大きな注目を集めており、半導体プロセス技術と精密機械技術を組み合わせて、光学、化学、生体分子又は他の特性のマイクロチップを検出するための半導体装置を製造することができる。しかし、半導体業界がより高い装置密度、高性能、低コストを求めるようにナノテクノロジープロセスノードに進むことにつれて、製造及び設計からの挑戦が3D設計の開発を推進している。これにより、高性能で低コストのバイオセンシングチップの開発は、早急に解決しようとする課題となる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一態様は、基板を提供する工程と、上面を有する金属導電層を基板の上に形成する工程と、複数の作用電極を金属導電層の上面の上に形成して、金属導電層の上面よりも高い頂面を各作用電極に持たせる工程と、金属導電層を覆い且つ前記作用電極を囲む絶縁層を形成し、絶縁層の上面が前記頂面と金属導電層の上面との間にあるので、前記作用電極を絶縁層の上面から突出させる工程と、を含むバイオセンシング素子の製造方法を提供する。
【0004】
本発明のいくつかの実施形態によれば、各作用電極は、約0.125〜約7.5であるアスペクト比を有する。
【0005】
本発明のいくつかの実施形態によれば、絶縁層を形成する工程は、絶縁材料層を金属導電層及び前記作用電極の上に堆積する工程と、絶縁材料層に対して平坦化プロセスを実行して、平坦化された絶縁材料層を形成する工程と、平坦化された絶縁材料層をエッチングして、絶縁層を形成する工程と、を含む。
【0006】
本発明のいくつかの実施形態によれば、バイオセンシング素子の製造方法は、核酸、細胞、抗体、酵素、ポリペプチド、又はそれらの組み合わせである生物学的プローブを前記作用電極に接続させる工程を更に備える。
【0007】
本発明の一態様は、基板と、基板の上に配置され、且つ上面を有する金属導電層と、金属導電層の上面の上に配置され、それぞれ金属導電層の上面よりも高い頂面を含む複数の作用電極と、金属導電層を覆い且つ前記作用電極を囲み、上面が前記頂面と金属導電層の上面との間にあるので、前記作用電極を絶縁層の上面から突出させる絶縁層と、を含むバイオセンシング素子を提供する。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態によれば、各作用電極は、約0.125〜約7.5であるアスペクト比を有する。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態によれば、各作用電極は、上面の第2の高さから突出し、且つ第2の高さが
0.01ミクロン〜0.5ミクロンである。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によれば、バイオセンシング素子は、核酸、細胞、抗体、酵素、ポリペプチド、又はそれらの組み合わせである生物学的プローブを前記作用電極に接続させる工程を更に備える。
【0011】
本発明の一態様は、標的分子を含むサンプルを提供する工程と、本開示の実施態様に記載のバイオセンシング素子を提供する工程と、生物学的プローブを前記作用電極に接続する工程と、電圧を前記作用電極に印加して、前記作用電極を囲む電界を前記作用電極に発生させる工程と、サンプルと生物学的プローブを接触させて、サンプルにおける標的分子と生物学的プローブを結合させて、更に、前記作用電極に信号を発生させる工程と、を備える生体分子の検出方法を提供する。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、電圧を前記作用電極に印加する工程は、電圧を前記作用電極に印加して、75%の電界の最大強度が絶縁層の上面から27%〜40%の第2の高さの箇所に現れるようにする工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の実施例は、添付図面に合わせて以下の詳細な説明に基づいて読まれる。
【
図1】本発明のいくつかの実施形態によるバイオセンシング素子を示す断面図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による、プロセスの各段階にあるバイオセンシング素子を示す断面図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、プロセスの各段階にあるバイオセンシング素子を示す断面図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による、プロセスの各段階にあるバイオセンシング素子を示す断面図である。
【
図5】本発明のいくつかの実施形態による、プロセスの各段階にあるバイオセンシング素子を示す断面図である。
【
図6】本発明のいくつかの実施形態による、プロセスの各段階にあるバイオセンシング素子を示す断面図である。
【
図7】本発明のいくつかの実施形態による、プロセスの各段階にあるバイオセンシング素子を示す断面図である。
【
図8】本発明のいくつかの実施形態による、プロセスの各段階にあるバイオセンシング素子を示す断面図である。
【
図9】本発明のいくつかの実施形態による、プロセスの各段階にあるバイオセンシング素子を示す断面図である。
【
図10】本発明のいくつかの実施形態による、プロセスの各段階にあるバイオセンシング素子を示す断面図である。
【
図11】本発明のいくつかの実施形態による、プロセスの各段階にあるバイオセンシング素子を示す断面図である。
【
図12】本発明のいくつかの実施形態による、プロセスの各段階にあるバイオセンシング素子を示す断面図である。
【
図13】本発明のいくつかの実施形態によるバイオセンシング装置を示す平面図である。
【
図14A】本発明のいくつかの実施形態によるバイオセンシング装置のAA線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、下記で、本開示における異なる特徴を実施するために、多数の異なる実施形態又は実施例を提供する。以下、本開示を簡略化するために、各特定の実施例における構成及び配置については下記で説明する。これらの実施例は、単なる例示であり、本開示を限定するためのものではない。例えば、第1の素子が第2の素子「の上方」又は「の上」に形成されることは、実施例における第1の素子と第2の素子とが直接接触することを含んでもよいし、また、第1の素子と第2の素子との間に追加の素子があるので第1の素子と第2の素子とが直接接触しないことを含んでもよい。また、本開示の様々な異なる例示において、素子記号及び/又は文字を繰り返して使用することができる。この繰返しは、簡略化し明瞭にするためのものであり、その自体が様々な実施例及び/又は構造配置の間の関係を決定しない。
【0015】
また、「の下」「下方」、「低い」、「上方」、「高い」、及び他の類似的な相対的空間関係は、添付図面におけるある素子又は特徴と他の素子又は特徴との関係を説明するために、ここに使用されることができる。これらのペース相対用語は、添付図面に示す方向以外の、装置の使用又は操作中の様々な異なる方向を含もうとする。上記装置は、他の形態で配向され(90度回転して又は他の方位に向かう)てもよく、この時の相対的空間関係は上記形態によって解釈されてもよい。
【0016】
図1は本発明のいくつかの実施形態によるバイオセンシング素子を示す断面図である。
図1に示すように、バイオセンシング素子100は、基板103と、金属導電層106と、第2の絶縁層108と、複数の作用電極110と、生物学的プローブ112と、を備える。ある実施例において、基板103は、基材102と、第1の絶縁層104と、を含む。基板103は、例えば、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、ゲルマニウム又はそれらの組み合わせのような他の半導体材料を含むが、それらに限定されない。基材102は、例えばシリコン基材であってよい。技術分野における設計要求に応じて、基材102は、様々な異なるドープ構成を含んでよい。一実施例において、基材102は、重ドープされた、低抵抗率の半導体基材であってよい。別の実施例において、基板103は、第1の絶縁層104を有しないガラス基板である。
【0017】
第1の絶縁層104は、基材102の上に配置される。一実施例において、第1の絶縁層104は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素のような酸化物、窒化物、酸窒化物又はそれらの組み合わせを含んでよいが、それらに限定されない。第1の絶縁層104は、バイオセンシング素子100に良好な絶縁性質を持たせるように、低誘電率(low−K)の材料を使用してよい。ある実施例において、第1の絶縁層104の厚さは、約0.02ミクロン(μm)〜約0.25ミクロン、例えば約0.10ミクロン、約0.15ミクロン、又は、約0.20ミクロンである。
【0018】
金属導電層106は基板103の上に配置され、且つ側壁107及び頂面105を有し、側壁107が頂面105に隣接し、且つ第2の絶縁層108が側壁107を覆う。一実施例において、金属導電層106はチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅アルミニウム合金(AlCu)、銅アルミニウムシリコン合金(AlSiCu)又はそれらの組み合わせを含んでよいが、それらに限定されない。一実施例において、金属導電層106の厚さは、約0.02ミクロン〜約0.7ミクロン、例えば約0.1ミクロン、0.2ミクロン、0.3ミクロン、0.4ミクロン、約0.5ミクロン、又は、約0.6ミクロンである。
【0019】
各作用電極110は金属導電層106の頂面105の上に配置され、且つそれぞれ頂面109及び側壁111を有する。各頂面109が金属導電層106の頂面105の上よりも高く、各側壁111が各頂面109に隣接し、且つ第2の絶縁層108がただ各側壁111の一部を覆う。各作用電極110は金属導電層106の上から突出した第1の高さH1を有する。いくつかの実施例において、各作用電極110の第1の高さH1は、約0.05ミクロン〜約0.6ミクロン、例えば約0.05ミクロン、0.1ミクロン、0.2ミクロン、約0.3ミクロン、又は、約0.4ミクロンである。いくつかの実施例において、各作用電極110の幅は、約0.08ミクロン〜約0.4ミクロン、例えば約0.08ミクロン、0.1ミクロン、0.2ミクロン、又は、約0.3ミクロンである。一実施例において、各作用電極110は、約0.125〜約7.5の間の、例えば約0.2又は約0.3のアスペクト比(aspect ratio)を有する。
【0020】
本発明部分実施例において、これらの作用電極110の形は、円筒体、正三角柱体、正四角柱体、正五角柱体、正六角柱体又は正八角柱体であってよい。いくつかの実施形態において、これらの作用電極110はタンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、銅(Cu)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タングステン(W)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅アルミニウム合金(AlCu)、銅アルミニウムシリコン合金(AlSiCu)又はそれらの組み合わせを含んでよいが、それらに限定されない。いくつかの実施形態において、これらの作用電極110の材料は、窒化チタン(TiN)であることが好ましい。
【0021】
生物学的プローブ112は、様々な既存の方法により、これらの作用電極110に修飾して接続されることができる。本発明様々な実施形態によれば、生物学的プローブ112は核酸、細胞、抗体、酵素又はそれらの組み合わせを含んでよいが、それらに限定されない。説明すべきなのは、上記の生物学的プローブ112は様々な生物性分子を認識することができる。例として、生物学的プローブ112が抗体である場合、サンプルにおける標的分子(即ち抗原)に結合し、様々な既存の技術で標的分子の存在を検出することができる。
【0022】
第2の絶縁層108は金属導電層106を覆い且つ前記作用電極110を囲み、第2の絶縁層108の上面113がこれらの作用電極110の頂面109及び金属導電層106の頂面105との間にあるので、前記作用電極110を第2の絶縁層108の上面113から突出させる。上記突出部は各前記頂面109から第2の絶縁層108の上面113までの垂直距離である第2の高さH2を有する。いくつかの実施例において、第2の高さH2は、約0.01ミクロン〜約0.5ミクロン、例えば約0.05ミクロン、0.15ミクロン、約0.3ミクロン、又は、約0.45ミクロンである。これにより、電圧がこれらの作用電極110に印加されると、この作用電極110に前記突出した作用電極110を囲む電界を発生させる。電界の被覆範囲はこれらの作用電極110の側壁111に伸びてこれらの作用電極110の頂面109に限定されなく、電気化学反応を大幅に向上させ、更に信号の強度を強める。同じ電圧を印加する場合、3次元構造を有する作用電極110は既存の平面作用電極よりも感度が高い。
【0023】
いくつかの実施例において、第2の絶縁層108は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素のような酸化物、窒化物、酸窒化物又はそれらの組み合わせ又はその化合物を含んでよいが、それらに限定されない。いくつかの実施例において、第1の絶縁層104の材料と第2の絶縁層108とは材料が同じである。いくつかの実施例において、第1の絶縁層104の材料と第2の絶縁層108とは材料が異なる。
【0024】
また、電圧を作用電極110に印加して背景ノイズ(ノイズ)を発生させて検出結果が乱れ、背景ノイズの発生は電極の断面積に関係する。電極の断面積が大きいほど、背景ノイズの強度が高くなる。本発明のいくつかの実施形態によれば、電圧を作用電極110に印加する場合、作用電極110による電界被覆範囲は、従来の平面作用電極の被覆範囲よりも広い。電界の被覆範囲は、これらの作用電極110の側壁111に伸びてこれらの作用電極110の頂面109に限定されない。従って、有効電界被覆範囲が同じ場合、これらの作用電極110の幅は従来の平面作用電極の幅よりも小さくてよい。したがって、本発明の実施形態による作用電極110の幅は従来の平面作用電極の幅よりも小さくてもよく、更に従来の平面作用電極よりも小さい断面積を有し、背景ノイズの発生を低下させる。
【0025】
上記のように、ある実施形態において、各作用電極110の第1の高さH1は、約0.05ミクロン〜約0.6ミクロンである。各作用電極110の第1の高さH1が0.05ミクロンよりも小さい場合、各作用電極110突出部の第2の高さH2を0.01ミクロンよりも小さくする。この場合、電圧を作用電極110に印加して、有効電界範囲の増加程度は限りがあるため、生物学的プローブ112の電気化学反応を向上させる効果は明らかはない。これにより、作用電極110突出部が高いほど、その有効電界の被覆範囲が広くなり、電気化学反応もよくなることがわかる。作用電極110のアスペクト比は、約0.125〜約7.5であることに留意すべきである。作用電極110のアスペクト比が7.5よりも大きい場合、作用電極の構造に欠陥を生じさせ、装置全体の信頼性を低下させることは容易である。
【0026】
図2〜
図12は本発明のいくつかの実施形態による製造バイオセンシング素子の各プロセスの段階にある方法を示す断面図である。
図2〜
図3に示すように、基板203を提供する。いくつかの実施形態において、基板203は基材202及び第1の絶縁層204を含み、第1の絶縁層204が基材202の上に形成される。第1の絶縁層204は原子層堆積(ALD)、物理気相堆積(PVD)、化学気相堆積(CVD)、化学酸化、熱酸化、及び/又は他の適切な方法により形成されることができる。一実施例において、第1の絶縁層204は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素のような酸化物、窒化物、酸窒化物又はそれらの組み合わせを含んでよいが、それらに限定されない。いくつかの実施例において、形成された第1の絶縁層204の厚さは、約0.02ミクロン〜約0.25ミクロン、例えば約0.10ミクロン、約0.15ミクロン、又は、約0.20ミクロンである。
【0027】
図4を引き続き参照して、この工程において、金属導電層206を第1の絶縁層204の上に形成する。いくつかの実施形態において、金属導電層206はPVD、CVD、電子ビーム蒸着(Electron Beam Evaporation)、スパッタリング、めっき及び/又は他の適切なプロセスにより形成されることができる。一実施例において、金属導電層206はチタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅アルミニウム合金(AlCu)、銅アルミニウムシリコン合金(AlSiCu)又はそれらの組み合わせを含んでよいが、それらに限定されない。一実施例において、金属導電層206を形成する厚さは、約0.3ミクロン〜約0.5ミクロン、例えば約0.3ミクロン、約0.4ミクロン、又は、約0.5ミクロンである。
【0028】
今
図5を参照して、この工程において、導電層208を金属導電層206上に堆積する。いくつかの実施形態において、導電層208はPVD、CVD、電子ビーム蒸着(Electron Beam Evaporation)、スパッタリング、めっき及び/又は他の適切なプロセスにより形成されることができる。いくつかの実施形態において、導電層208はタンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、銅(Cu)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タングステン(W)又はそれらの組み合わせを含んでよいが、それらに限定されない。いくつかの実施例において、導電層208の厚さは、約0.05ミクロン〜約0.6ミクロン、例えば約0.1ミクロン、約0.2ミクロン、約0.3ミクロン、又は、約0.4ミクロンである。
【0029】
今
図6〜
図7を参照して、導電層208に対してパターニングプロセスを行って、複数の作用電極212(例示的に単一の作用電極を示す)を形成する。
図6に示すように、フォトマスク210及びリソグラフィプロセスにより導電層208の上方にパターン化フォトレジスト層(図示せず)を形成して、このフォトレジスト層は、例えばポジ型フォトレジスト又はネガ型フォトレジストである。次に
図7に示すように、パターン化フォトレジスト層により導電層208に対してエッチングプロセスを行って、複数の作用電極212を形成し、金属導電層206の上面205を露出させる。各作用電極212は第1の高さH1を有する。各作用電極212は頂面209及び側壁211を有する。各頂面209は金属導電層206の上面205の上よりも高い。各側壁211は各頂面209に隣接する。
【0030】
図8〜
図9を引き続き参照して、金属導電層206に対してパターン化プロセスを行う。
図8に示すように、フォトマスク214及びリソグラフィプロセスにより作用電極212及び金属導電層206の上方にパターン化フォトレジスト層(図示せず)を形成し、このフォトレジスト層は、例えばポジ型フォトレジスト又はネガ型フォトレジスト。次に
図9に示すように、パターン化フォトレジスト層により金属導電層206に対してエッチングプロセスを行って、下方第1の絶縁層204の部分上面を露出させて、これにより金属導電層206は上面205及び下方が露出した第1の絶縁層204の一部の上面に隣接する側壁207を有する。
【0031】
図10を参照して、絶縁材料層216を第1の絶縁層204、金属導電層206及び前記作用電極212の上に堆積する。この工程において、絶縁材料層216は、例えば第1の絶縁層204、金属導電層206及び前記作用電極212をコンフォーマルに覆うことができる。いくつかの実施形態において、絶縁材料層216は、複数の層であってもよく、層の材料が互いに異なる。いくつかの実施形態において、絶縁材料層216は、複数の層であってもよく、層の材料が互いに同じである。いくつかの実施形態において、絶縁材料層はPVD、CVD、プラズマ強化化学蒸着(Plasma enhanced CVD、 PECVD)及び/又は他の適切なプロセスにより形成されることができる。
【0032】
一実施例において、絶縁材料層216は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素のような酸化物、窒化物、酸窒化物又はそれらの組み合わせを含んでよいが、それらに限定されない。一実施例において、絶縁材料層216はテトラエトキシシランである。
【0033】
図11を引き続き参照して、絶縁材料層216に対して平坦化プロセスを実行して第2の絶縁層218を形成する。この工程において、上記絶縁材料層216に対して平坦化プロセスを実行して、実質的に平らな上面を有する第2の絶縁層218が得られる。一実施例において、平坦化プロセスは化学機械平坦化(CMP)及び/又は他の適切なプロセスであってよい。いくつかの実施例において、絶縁材料層216は複数層の絶縁材料層であり、層の材料が互いに異なるため、平坦化プロセスの効率が良い。
【0034】
最後に
図12を参照して、適切なエッチングプロセスにより一部の第2の絶縁層218を取り除いて、第2の絶縁層218の上面213を金属導電層206の上面205とこれらの作用電極212の頂面209との間に介在させる。従って、これらの作用電極212は第2の絶縁層218の上面213から突出し、上記突出部が各前記頂面209から第2の絶縁層218の上面213までの垂直距離である第2の高さH2を有する。いくつかの実施例において、第2の高さH2は、約0.01ミクロン〜約0.5ミクロン、例えば約0.05ミクロン、0.15ミクロン、約0.3ミクロン、又は、約0.45ミクロンである。いくつかの実施例において、生物学的プローブがこれらの作用電極212の頂面209に接続されるように、更に生物学的プローブをこれらの作用電極212の上に修飾することができる。
【0035】
本発明の様々な実施形態によって製造されたバイオセンシング素子は、様々なバイオセンシング装置と互換性がある。
図13は本発明のある実施形態のバイオセンシング装置300の平面図であり、
図14Aは
図13におけるAA線に沿う断面図である。
図13及び
図14Aに示すように、バイオセンシング装置300は基板303、金属導電層306a、金属導電層306b、第2の絶縁層308、複数の作用電極310、対電極312、生物学的プローブ314、信号検出ユニット316及びワイヤ318を含む。
【0036】
各作用電極310及び対電極312は1つ又は複数のワイヤ318により電気的に信号検出ユニット316に接続されることができる。これにより、
図14Aに示すように、電圧を前記作用電極310に印加する場合、これらの電極310に対応的な作用電極310を囲むそれぞれの電界Eを発生させる。この時、続いて前記生物学的プローブ314と接触するための被テストサンプルを提供する。被テストサンプルにおける標的分子が生物学的プローブ314に結合される場合、これらの作用電極310は信号を発生させ、この信号がワイヤ318により信号検出ユニット316に伝送されて、更に標的分子の存在を検出する。
【0037】
図14Aを引き続き参照して、金属導電層306bは第1の絶縁層304の上に配置される。対電極312は金属導電層306bの上に配置される。いくつかの実施例において、金属導電層306bの材料と金属導電層306aとは材料が同じである。いくつかの実施例において、金属導電層306bの材料と金属導電層306aとは材料が異なる。基板303、金属導電層306a、第2の絶縁層308、これらの作用電極310、生物学的プローブ314は、上記の基板103、金属導電層106、第2の絶縁層108、複数の作用電極110、生物学的プローブ112と同じであってよく、ここに説明しない。
【0038】
図14Aによるその部分拡大模式図である
図14Bを引き続き参照されたい。電圧を前記作用電極310に印加する場合、これらの作用電極310をそれぞれの電界を発生させる。例示的に、電界E75は空間における各点の75%最大電界強度により連結されてなる電界線を示す。言い換えれば、電界E75によって覆われた範囲「内」のその各点の電界強度はいずれも75%最大電界強度よりも大きい。例示的に、電界E50は空間における各点の50%最大電界強度により連結されてなる電界線を示す。言い換えれば、電界E50によって覆われた範囲「内」のその各点の電界強度のいずれも50%最大電界強度よりも大きい。いくつかの実施形態によれば、電圧を前記作用電極310に印加する場合、75%最大電界強度(即ち最大電界強度に0.75を掛けたもの)を頂面311から下方へ約第2の高さH2の27−40%変位する箇所(即ち電界E75により連結されてなる電界線とこれらの作用電極310が交差する箇所)に現れさせ、言い換えれば、75%最大電界強度は上面313上方の約60−73%の第2の高さH2の箇所に現れる。いくつかの実施形態によれば、電圧を前記作用電極310に印加する場合、50%最大電界強度(即ち最大電界強度に0.5を掛けたもの)は頂面311から下方へ約第2の高さH2の80−93%変位する箇所(即ち電界E50により連結されてなる電界線とこれらの作用電極310が交差する箇所)に現れ、言い換えれば、50%最大電界強度は上面313の上方の約7−20%の第2の高さH2の箇所に現れる。
電界分析シミュレーション
【0039】
本試験はCOMSOL Multiphysics 4.4シミュレーション分析ソフトウェアにより、電界強度のシミュレーション分析を行う。下記表1に示すように、作用電極が円形の場合、実施例1は0.05ミクロンの半径を有する円形作用電極であり、最大電界値が2.86x10
6(v/m)であり、実施例2は0.1ミクロンの半径を有する円形作用電極であり、最大電界値が1.85x10
6(v/m)であり、実施例3は0.2ミクロンの半径を有する円形作用電極であり、最大電界値が7.75x10
5(v/m)である。
表1
【表1】
【0040】
上記から分かるように、作用電極の半径が減少する場合、最大電界値は向上する。そして、下の表2に示すように、作用電極の突出部の電界の被覆範囲及び強度をシミュレーションする。作用電極は伝統的な平面作用電極である場合、高さが0ミクロンであるため、側壁がなく、100%、75%又は50%最大電界強度がいずれも作用電極の表面上に現れる。そして、下記表2に示すように、作用電極の第2の高さH2が0.15ミクロンである場合、作用電極の頂面から下方の絶縁層に向かって計算すると、75%最大電界強度は作用電極の頂面から0.05ミクロン離れる箇所に現れるが、50%最大電界強度は作用電極の頂面から0.13ミクロン離れる箇所に現れる。
表2
【表2】
【0041】
要するに、本発明の様々な実施形態によれば、バイオセンシング素子は絶縁層から突出した作用電極を有する。電気化学反応において、電界が大きいほど帯電した物体の動きは速くなる。その結果、電流密度が高くなる。
【0042】
既存の電気化学反応式(ElectrochemicalMethods: FundamentalsandApplications.AllenJ.Bard,LarryR.Faulkner,Wiley.ISBN:0471043729)は以下の通りである。
【数1】
【0043】
JA(x,t)は帯電した物体Aの位置x、時間tの時の電流密度を示す。z
Aは帯電した物体Aの原子価を示す。D
Aは帯電した物体Aの拡散係数を示す。C
A(x,t)は帯電した物体Aの位置x、時間tの時の濃度を示す。ε(x)は帯電した物体Aが位置xで受けられた電界を示す。この突出した作用電極により電界被覆範囲を広くし、当該広い電界被覆範囲により、帯電した物体の移動が影響され、電気化学反応の効率の向上に寄与し、更に信号の強度を強める。これにより、本発明の実施形態による作用電極幅は従来の平面電極よりも面積が小さく、更に感度を向上させる。
【0044】
上記は、複数の実施例の特徴的な構造を概述したが、当業者が本開示の態様をよりよく理解できるようにする。当業者が了解すべきなのは、本文に紹介された実施例の同じ目的を実施すること及び/又は同じメリットを実現するために、本開示をその他のプロセス及び構造を設計したり修正したりする基礎として容易に使用することができることである。当業者が了解すべきなのは、このような等価的な構造は本開示の精神及びカテゴリーから逸脱しなく、且つ、本開示の精神及カテゴリーから逸脱しない場合に、本開示に各種の変化、取り替え及び変更を行うことができることでもある。
【符号の説明】
【0045】
100、200 バイオセンシング素子
102、103、202、203、302、303 基板
104、204、304 第1の絶縁層
105、109、113、205、209、213、307、311、313 上面
106、206 金属導電層
107、207、211、305、309、111 側壁
108、218、308 第2の絶縁層
110、212、310 作用電極
112、314 生物学的プローブ
208 導電層
210、214 フォトマスク
216 絶縁材料層
300 バイオセンシング装置
306a、306b 金属層
312 対電極
316 信号検出ユニット
318 ワイヤ
H1 第1の高さ
H2 第2の高さ
E、E75、E50 電界