(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
内燃機関のシリンダブロックとして、筒孔にシリンダスリーブを圧入することによりシリンダボアを構成する構造のものが知られている。シリンダブロックとシリンダスリーブに用いられる材質の組み合わせとして、シリンダブロックには軽量なアルミニウム合金を用い、シリンダスリーブには、耐摩耗性の高い鋳鉄を用いる場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
アルミニウム合金と鋳鉄の線膨張係数を比較すると、アルミニウム合金の線膨張係数のほうが鋳鉄よりも大きい。このため、アルミニウム合金製のシリンダブロックに、鋳鉄製のシリンダスリーブを用いた場合、内燃機関の稼働中の熱によってシリンダスリーブよりもシリンダブロックのほうが膨張しやすい。このため、アルミニウム合金製のシリンダブロックに、鋳鉄製のシリンダスリーブを用いる場合、シリンダブロックの筒孔にシリンダスリーブを圧入(締り嵌め)して組み付けなければ、内燃機関の稼働中の熱により、シリンダブロックの筒孔とシリンダスリーブの間に間隙が生じるという問題があった。
【0004】
一方、シリンダブロックおよびシリンダスリーブをどちらもアルミニウム合金製とした場合、線膨張係数の差異が小さくなるため、内燃機関の稼働中の熱が伝達されやすい内側のシリンダスリーブのほうが外側のシリンダブロックよりも熱膨張しやすくなる。このため、シリンダブロックにシリンダスリーブを圧入でなく隙間嵌めによって組み付けても、内燃機関の稼働中の熱によってシリンダスリーブが熱膨張してシリンダブロックの筒孔内に密着することとなり、シリンダブロックとシリンダスリーブの間の間隙は生じなくなる。
【0005】
また、鋳鉄製のシリンダスリーブは、シリンダブロックの筒孔に対して隙間嵌めではなく嵌め合い代をもうけた圧入をせざるを得ず、圧入によるシリンダスリーブ内径の変化が生じる。このため、圧入後に仕上げボーリング・ホーニングの工程が必要となる。一方、シリンダブロックにシリンダスリーブを隙間嵌めによって組み付ける場合には、圧入によるシリンダスリーブ内径の変化が生じないため、仕上げボーリング・ホーニングの工程を行う必要がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、シリンダブロックにシリンダスリーブを圧入でなく隙間嵌めによって組み付ける場合、内燃機関の組み立て作業中において、シリンダブロックに対するシリンダスリーブの位置がずれる場合がある。
【0008】
シリンダブロックに対するシリンダスリーブの位置のずれを抑制するため、シリンダスリーブの上部に設けられている鍔部のみを、シリンダブロック側の環状凹部に圧入することが考えられる。しかしながら、シリンダスリーブの一部であっても、圧入によって組み付けることにより、シリンダスリーブ内径が変化して、シリンダボア径の精度が低下するおそれがある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、圧入によるシリンダスリーブ内径の変化を防止するとともに、内燃機関の組み立て時におけるシリンダブロックに対するシリンダスリーブの位置のずれを防止することができるシリンダスリーブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のシリンダスリーブは、
内燃機関のシリンダブロックに設けられた筒孔に組み付けられてシリンダボアを構成する、シリンダスリーブであって、
スリーブ本体と、
前記スリーブ本体とは別体に構成されるストッパーリングと、
を備え、
前記スリーブ本体は、
筒状部と、
前記筒状部の一方の端部側に形成され、前記筒状部の外径よりも大きい外径を有する鍔部と、
を有し、
前記シリンダブロックは、
前記筒状部が挿入される前記筒孔と、
前記筒孔の一方の開口部の周囲に形成され、前記筒孔の内径よりも大きい内径を有するとともに、前記鍔部および前記ストッパーリングが挿入される環状凹部と、
を有し、
前記筒状部は、前記筒孔に隙間嵌めされる外径を有し、
前記鍔部は、前記環状凹部に隙間嵌めされる外径を有し、
前記ストッパーリングは、前記環状凹部に締まり嵌めされる外径を有し、
前記筒状部が前記筒孔に挿入されるとともに、前記鍔部が前記環状凹部に挿入され、その状態において、前記ストッパーリングが前記環状凹部に挿入されることにより、前記シリンダブロックに組み付けられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシリンダスリーブによれば、スリーブ本体はシリンダブロックに対して隙間嵌めされるため、圧入によるシリンダスリーブ内径の変化を防止することができる。また、スリーブ本体は、環状凹部に圧入されるストッパーリングによってシリンダブロックに対して固定されるため、内燃機関の組み立て時におけるシリンダブロックに対するシリンダスリーブの位置のずれを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態にかかるシリンダスリーブは、
内燃機関のシリンダブロックに設けられた筒孔に組み付けられてシリンダボアを構成する、シリンダスリーブであって、
スリーブ本体と、
前記スリーブ本体とは別体に構成されるストッパーリングと、
を備え、
前記スリーブ本体は、
筒状部と、
前記筒状部の一方の端部側に形成され、前記筒状部の外径よりも大きい外径を有する鍔部と、
を有し、
前記シリンダブロックは、
前記筒状部が挿入される前記筒孔と、
前記筒孔の一方の開口部の周囲に形成され、前記筒孔の内径よりも大きい内径を有するとともに、前記鍔部および前記ストッパーリングが挿入される環状凹部と、
を有し、
前記筒状部は、前記筒孔に隙間嵌めされる外径を有し、
前記鍔部は、前記環状凹部に隙間嵌めされる外径を有し、
前記ストッパーリングは、前記環状凹部に締まり嵌めされる外径を有し、
前記筒状部が前記筒孔に挿入されるとともに、前記鍔部が前記環状凹部に挿入され、その状態において、前記ストッパーリングが前記環状凹部に挿入されることにより、前記シリンダブロックに組み付けられる(第1の構成)。
【0014】
上記構成によれば、筒状部が筒孔に隙間嵌めされるとともに、鍔部が環状凹部に隙間嵌めされ、その状態において、ストッパーリングが環状凹部に締まり嵌めされることにより、シリンダスリーブがシリンダブロックに組み付けられる。これにより、スリーブ本体はシリンダブロックに対して隙間嵌めされるため、圧入によるシリンダスリーブ内径の変化を防止することができる。
また、スリーブ本体は、環状凹部に圧入されるストッパーリングによってシリンダブロックに対して固定されるため、内燃機関の組み立て時におけるシリンダブロックに対するシリンダスリーブの位置のずれを防止することができる。
【0015】
上記第1の構成において、
前記筒状部の外径は、前記内燃機関の稼働中における熱膨張によって前記筒孔の内面に接触するように設定されてもよい(第2の構成)。
【0016】
上記構成によれば、筒状部の外径は、内燃機関の稼働中における熱膨張によって筒孔の内面に接触するように設定されている。このため、内燃機関の稼働中において、シリンダブロックとシリンダスリーブの間に間隙が生じることを防止することができる。
【0017】
上記第1または第2の構成において、
前記シリンダブロックおよび前記スリーブ本体は、それぞれアルミニウムを含む合金で形成されていてもよい(第3の構成)。
【0018】
上記構成によれば、シリンダブロックおよびスリーブ本体は、それぞれアルミニウムを含む合金で形成されている。このため、線膨張係数が実質的に同一になるとともに、内側のシリンダスリーブのほうが外側のシリンダブロックよりも熱膨張しやすくなる。これにより、隙間嵌めによってシリンダブロックに組み付けたシリンダスリーブが、内燃機関の稼働中の熱によって筒孔内に密着することとなり、シリンダブロックとシリンダスリーブの間の間隙は生じなくなる。
【0019】
上記第3の構成において、
前記スリーブ本体および前記ストッパーリングは、アルミニウムを含む合金で形成されていてもよい(第4の構成)。
【0020】
上記構成によれば、スリーブ本体およびストッパーリングは、アルミニウムを含む合金で形成されている。このため、線膨張係数が実質的に同一になり、ストッパーリングでスリーブ本体を確実に固定することができる。
【0021】
上記第1から第4のいずれかの構成において、
前記ストッパーリングは、
外周面において周方向に形成される突条を有し、
前記環状凹部は、前記突条が嵌合される嵌合部を有してもよい(第5の構成)。
【0022】
上記構成によれば、環状凹部にストッパーリングが圧入された状態で、ストッパーリングの外周面の突条が環状凹部の嵌合部に嵌合される。このため、環状凹部に対してストッパーリングを精度よく圧入できるとともに、ストッパーリングを環状凹部に対して確実に固定することができる。
【0023】
本発明の一実施形態にかかるシリンダブロックは、
上記第1から第5のいずれかに記載のシリンダスリーブを備える(第6の構成)。
【0024】
上記構成によれば、スリーブ本体はシリンダブロックに対して隙間嵌めされるため、圧入によるシリンダスリーブ内径の変化を防止することができ、シリンダボア径の精度を向上させることができる。
また、スリーブ本体は、環状凹部に圧入されるストッパーリングによってシリンダブロックに対して固定されるため、内燃機関の組み立て時におけるシリンダブロックに対するシリンダスリーブの位置のずれを防止することができる。
【0025】
[実施形態1]
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係るシリンダスリーブ100およびシリンダブロック200について詳しく説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るシリンダスリーブ100を組み付ける前の状態におけるシリンダブロック200の平面図である。
【0026】
以下の図では、矢印Uはシリンダスリーブ100およびシリンダブロック200の上方向、矢印Dは下方向を示す。矢印Rはシリンダスリーブ100およびシリンダブロック200の右方向、矢印Lは左方向を示す。矢印Fはシリンダスリーブ100およびシリンダブロック200の前方向、矢印Bは後方向を示す。
【0027】
以下の図では同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。なお、説明を分かりやすくするために、以下で参照する図面においては、構成が簡略化または模式化して示されたり、一部の構成部材が省略されたりしている。また、各図に示された構成部材間の寸法比は、必ずしも実際の寸法比を示すものではない。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係るシリンダブロック200は、自動二輪車用の4気筒エンジンを構成するシリンダブロックである。
図1のシリンダブロック200は、シリンダスリーブ100を組み付けていない状態を示している。シリンダブロック200は、アルミニウムを含む合金で形成されており、ブロック本体201、筒孔220、および環状凹部230を有している。
【0029】
筒孔220は、各気筒を構成するためにブロック本体201に設けられている貫通孔である。本実施形態では、筒孔220は、ブロック本体201に対して直列に4本設けられている。筒孔220の内面221の断面形状は円形であり、上面側の開口部222から下面側の開口部223(
図2参照)まで一定の内径LA1を有している。
【0030】
環状凹部230は、各筒孔220の上面側の開口部222の周囲に形成されている凹部である。環状凹部230は、平面視における形状は円形であり、筒孔220の内径LA1よりも大きい内径LA2を有している。環状凹部230は、筒孔220と同軸になるように形成されている。
【0031】
図2は、
図1のA―A線におけるシリンダブロック200の側面断面図である。
図2に示すように、筒孔220は、ブロック本体201を上下方向に貫通する貫通孔である。筒孔220の内径はLA1であり、環状凹部230の内径はLA2である。環状凹部230は、所定の深さDA1を有している。
【0032】
図3は、本発明の第1実施形態に係るシリンダスリーブ100の側面図である。シリンダスリーブ100は、シリンダブロック200の各筒孔220に挿入されて、各気筒のシリンダボア280を構成するものである。
図3に示すように、シリンダスリーブ100は、スリーブ本体10およびストッパーリング50を有している。スリーブ本体10およびストッパーリング50は、それぞれアルミニウムを含む合金で形成されており、それぞれ別体に構成されている。スリーブ本体10およびストッパーリング50を形成するアルミニウム合金として、例えばA6061−T6を用いることができる。
【0033】
スリーブ本体10は、筒状部20、第1縮径部21、第2縮径部22、および鍔部30を有している。
【0034】
筒状部20は、円筒状の部分であり、外周面27は、一定の外径LB1を有している。
【0035】
第1縮径部21は、筒状部20の上部と鍔部30の間に形成されている部分であり、筒状部20の外径LB1よりも小さい外径を有している。
【0036】
第2縮径部22は、筒状部20の下部に連続するように形成されている部分であり、筒状部20の外径LB1よりも小さい外径を有している。
【0037】
鍔部30は、筒状部20の上部の端部側、具体的には第1縮径部21の上部に連続するようにフランジ状に形成されている。鍔部30は、平面視で円形であり、筒状部20の外径LB1よりも大きい外径LB2を有している。鍔部30は、肉厚がTB1に設定されている。
【0038】
スリーブ本体10の内側には、筒状部20、第1縮径部21、第2縮径部22、および鍔部30を通じて一定の内径LB3を有する第1貫通孔25が形成されている。第1貫通孔25は、スリーブ本体10がシリンダブロック200に組み付けられた状態で、シリンダボア280を構成する(
図4参照)。第2縮径部22の内側の下端部には、第1貫通孔25の内径LB3よりも徐々に内径が拡大するテーパー部26が形成されている。第1貫通孔25の表面には、対磨耗性を備えるためのコーティングが施されている。コーティングとして、例えばニッケルシリコンカーバイドメッキを行うことができる。
【0039】
ストッパーリング50は、環状の部材であり、外径LC1を有している。ストッパーリング50の上面および下面は切削により平坦に形成されている。ストッパーリング50の内側には、第2貫通孔55が形成されている。第2貫通孔55の内径はLC2である。第2貫通孔55の内径LC2は、スリーブ本体10の第1貫通孔25の内径LB3と同等となるように設定されている。第2貫通孔55は、ストッパーリング50がシリンダブロック200に組み付けられた状態で、シリンダボア280を構成する(
図4参照)。ストッパーリング50は、肉厚がTC1に設定されている。
【0040】
ここで、シリンダスリーブ100は、シリンダブロック200の各筒孔220に挿入されて、各気筒のシリンダボア280を構成するものであるが、シリンダスリーブ100を構成するスリーブ本体10およびストッパーリング50の各部の寸法と、シリンダブロック200の筒孔220および環状凹部230の各部の寸法は、それぞれ以下の関係を有するように設定されている。
【0041】
筒状部20の外径LB1は、筒孔220の内面221に対して隙間嵌めされる寸法に設定されている。すなわち、筒状部20の外径LB1と筒孔220の内径LA1との寸法差は、エンジンの稼働中におけるシリンダスリーブ100の熱膨張によって筒孔220の内面221に筒状部20の外周面27が密着するように設定されている。具体的には、筒状部20の外径LB1は、筒孔220の内径LA1よりも例えば0.04〜0.01mm小さくなるように設定されている。
【0042】
鍔部30の外径LB2と、環状凹部230の内径LA2は、鍔部30が環状凹部230に隙間嵌めされる寸法に設定されている。具体的には、鍔部30の外径LB2は、環状凹部230の内径LA2よりも例えば0.04〜0.01mm小さくなるように設定されている。
【0043】
ストッパーリング50の外径LC1と、環状凹部230の内径LA2は、ストッパーリング50が環状凹部230に締まり嵌めされる寸法に設定されている。具体的には、ストッパーリング50の外径LC1は、環状凹部230の内径LA2よりも例えば0.05〜0.08mm大きくなるように設定されている。
【0044】
ストッパーリング50の肉厚TC1およびスリーブ本体10の鍔部30の肉厚TB1は、ストッパーリング50の肉厚TC1と鍔部30の肉厚TB1の和が環状凹部230の深さDA1と同等となるように設定されている。
【0045】
図4は、シリンダブロック200にシリンダスリーブ100を組み付けた状態における側面断面図である。
図4に示すように、シリンダブロック200にシリンダスリーブ100を組み付ける場合、まずスリーブ本体10の筒状部20を筒孔220に挿入するとともに、鍔部30を環状凹部230に挿入する。続いて、鍔部30の上からストッパーリング50を環状凹部230に圧入することにより、シリンダスリーブ100がシリンダブロック200に組み付けられる。
【0046】
[実施形態1の効果]
以上説明した本実施形態に係るシリンダスリーブ100およびシリンダブロック200によれば、筒状部20が筒孔220に隙間嵌めされるとともに、鍔部30が環状凹部230に隙間嵌めされ、その状態において、ストッパーリング50が環状凹部230に締まり嵌めされることにより、シリンダスリーブ100がシリンダブロック200に組み付けられる。これにより、スリーブ本体10はシリンダブロック200に対して隙間嵌めされるため、圧入によるシリンダスリーブ100の第1貫通孔25の内径LB3の変化を防止することができる。
【0047】
また、スリーブ本体10は、環状凹部230に圧入されるストッパーリング50によってシリンダブロック200に対して固定されるため、エンジンの組み立て時におけるシリンダブロック200に対するシリンダスリーブ100の位置のずれを防止することができる。
【0048】
筒状部20の外径LB1は、エンジンの稼働中における熱膨張によって外周面27が筒孔220の内面221に密着するように設定されている。このため、エンジンの稼働中において、シリンダブロック200とシリンダスリーブ100の間に間隙が生じることを防止することができる。
【0049】
シリンダブロック200およびスリーブ本体10は、それぞれアルミニウムを含む合金で形成されている。このため、線膨張係数が実質的に同一になるとともに、内側のシリンダスリーブ100のほうが外側のシリンダブロック200よりも熱膨張しやすくなる。これにより、隙間嵌めによってシリンダブロック200に組み付けたシリンダスリーブ100が、エンジンの稼働中の熱によって筒孔220の内面221に密着することとなり、シリンダブロック200とシリンダスリーブ100の間の間隙は生じなくなる。
【0050】
スリーブ本体10およびストッパーリング50は、アルミニウムを含む合金で形成されている。このため、線膨張係数が実質的に同一になり、ストッパーリング50でスリーブ本体10を確実に固定することができる。
【0051】
[実施形態2]
実施形態2のシリンダスリーブ100Aは、ストッパーリング50Aに突条57Aが形成され、環状凹部230Aに嵌合部235Aが形成されている点が実施形態1に係るシリンダスリーブ100と異なっている。以下の説明において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる構成についてのみ説明する。
【0052】
図5は、本発明の第2実施形態に係るシリンダスリーブ100A、およびシリンダブロック200Aの環状凹部230Aの形状を示す拡大断面図である。
図5に示すように、ストッパーリング50Aの外周面には、突条57Aが形成されている。突条57Aは、ストッパーリング50Aの外周面において周方向に形成されている。
【0053】
環状凹部230Aには、シリンダブロック200Aにシリンダスリーブ100Aを組み付けた状態で、突条57Aが嵌合される嵌合部235Aが形成されている。
【0054】
図6は、実施形態2の変形例に係るシリンダスリーブ100A、およびシリンダブロック200Aの環状凹部230Aの形状を示す拡大断面図である。
図6に示すように、突条57Aをストッパーリング50Aの外周面の最下部に設けてもよい。この場合、突条57Aを形成するための加工性が向上する。
【0055】
[実施形態2の効果]
本実施形態に係るシリンダスリーブ100Aおよびシリンダブロック200Aによれば、環状凹部230Aにストッパーリング100Aが圧入された状態で、ストッパーリング100Aの外周面の突条57Aが環状凹部230Aの嵌合部235Aに嵌合されるため、環状凹部230Aに対してストッパーリング100Aを精度よく圧入できるとともに、ストッパーリング100Aを環状凹部230Aに対して確実に固定することができる。
【0056】
[変形例]
本発明に係るシリンダスリーブおよびシリンダブロックは、上記説明した本実施形態に限定されない。例えば本実施形態では、ストッパーリング50は、スリーブ本体10と同様にアルミニウムを含む合金で形成されているが、これに限定されない。例えば、ストッパーリング50をスリーブ本体10と異なる素材、たとえば真鍮で形成するようにしてもよい。
【0057】
本実施形態では、ストッパーリング50の肉厚TC1は、鍔部30の肉厚TB1よりも厚く設定されている。しかしながら、ストッパーリング50の肉厚TC1と鍔部30の肉厚TB1が同一に設定されてもよく、ストッパーリング50の肉厚TC1よりも、鍔部30の肉厚TB1が厚く設定されていてもよい。
【0058】
また、本実施形態で説明したシリンダスリーブおよびシリンダブロックの形状は一例であり、本発明は種々の内燃機関のシリンダスリーブおよびシリンダブロックに適用することができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
【解決手段】シリンダスリーブ100のスリーブ本体10は、筒状部20と鍔部30とを有し、シリンダブロック200は、筒孔220と、鍔部30およびストッパーリング50が挿入される環状凹部230とを有する。筒状部220は、筒孔220に隙間嵌めされる外径LB1を有し、鍔部30は、環状凹部230に隙間嵌めされる外径LB2を有し、ストッパーリング50は、環状凹部230に締まり嵌めされる外径LC1を有する。筒状部20が筒孔220に挿入されるとともに、鍔部30が環状凹部230に挿入され、その状態において、ストッパーリング50が環状凹部230に挿入されることにより、シリンダブロック200に組み付けられる。