特許第6942403号(P6942403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6942403二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6942403
(24)【登録日】2021年9月10日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/023 20060101AFI20210916BHJP
   F16F 9/53 20060101ALI20210916BHJP
   F16F 6/00 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   F16F15/023 Z
   F16F9/53
   F16F6/00
【請求項の数】10
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2021-84693(P2021-84693)
(22)【出願日】2021年5月19日
【審査請求日】2021年5月19日
(31)【優先権主張番号】202011254769.8
(32)【優先日】2020年11月11日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】202022601591.1
(32)【優先日】2020年11月11日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲とく▼才
(72)【発明者】
【氏名】李 倩
(72)【発明者】
【氏名】王 玉明
(72)【発明者】
【氏名】韓 鵬棟
【審査官】 児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103122960(CN,A)
【文献】 特開平3−89038(JP,A)
【文献】 特開2018−96500(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101713225(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00− 9/58
15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパーであって、
キャビティを画定し、第1の方向において対向する第1の壁面及び第2の壁面を有する筐体と、
複数の永久磁石及び少なくとも1つの第1の多孔質媒体部材であって、前記少なくとも1つの第1の多孔質媒体部材と複数の前記永久磁石が第1の方向に沿って前記キャビティ内に交互に配置され、各前記第1の多孔質媒体部材が、前記第1の方向において隣接する2つの前記永久磁石の間に位置し、各前記第1の多孔質媒体部材が対応する隣接する2つの前記永久磁石のうちの一方に設けられ、各前記第1の多孔質媒体部材の空隙に第1の磁性流体が充填されている複数の永久磁石及び少なくとも1つの第1の多孔質媒体部材と、
複数の前記永久磁石に1対1で嵌合されて、前記永久磁石に第2の方向の復元力を加える複数の復帰部であって、前記第1の方向において隣接する2つの前記永久磁石が受ける前記復元力が等しくない複数の復帰部と、を含み、
複数の前記永久磁石は、第1の永久磁石及び第2の永久磁石を含み、複数の前記復帰部は、第1の復帰部及び第2の復帰部を含み、前記第1の復帰部が前記第1の永久磁石に嵌合され、前記第2の復帰部が前記第2の永久磁石に嵌合される、
ことを特徴とする二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー。
【請求項2】
複数の前記永久磁石は、さらに、少なくとも1つの第3の永久磁石を含み、前記少なくとも1つの第3の永久磁石が、前記第1の方向において前記第1の永久磁石と前記第2の永久磁石との間に位置し、複数の前記復帰部は、さらに、少なくとも1つの第3の復帰部を含み、前記少なくとも1つの第3の復帰部が前記少なくとも1つの第3の永久磁石に1対1で嵌合される、
ことを特徴とする請求項1に記載の二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー。
【請求項3】
前記第1の復帰部は第1の弾性部材であり、前記第2の復帰部は第2の弾性部材であり、前記第1の弾性部材と前記第2の弾性部材はそれぞれ前記キャビティ内に位置する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー。
【請求項4】
前記第1の弾性部材は第1のスクロールスプリングであり、前記第1のスクロールスプリングが前記第1の永久磁石の少なくとも一部に嵌められ、前記第2の弾性部材は第2のスクロールスプリングであり、前記第2のスクロールスプリングが前記第2の永久磁石の少なくとも一部に嵌められる、
ことを特徴とする請求項3に記載の二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー。
【請求項5】
前記第1の復帰部は第1の溝であり、前記第2の復帰部は第2の溝であり、前記第1の壁面に前記第1の溝が形成され、前記第2の壁面に前記第2の溝が形成され、前記第1の溝の開口部の第2の方向におけるサイズが前記第1の溝の底部より大きく、前記第2の溝の開口部の第2の方向におけるサイズが前記第2の溝の底部より大きく、前記第1の溝と前記第1の永久磁石との間に第2の磁性流体が充填され、前記第2の磁性流体が前記第1の永久磁石に吸着し、前記第2の磁性流体が前記第1の溝と接触し、前記第2の溝と前記第2の永久磁石との間に第3の磁性流体が充填され、前記第3の磁性流体が前記第2の永久磁石に吸着し、前記第3の磁性流体が前記第2の溝と接触し、
前記第1の溝は、前記第2の方向において対向する第1の側壁及び第2の側壁を有し、前記第1の側壁が前記第2の方向において第1の端及び第2の端を有し、前記第2の側壁が前記第2の方向において第3の端及び第4の端を有し、前記第2の端が前記第1の溝の底部に近接し、前記第3の端が前記第1の溝の底部に近接し、前記第1の端が前記第2の端の内側に位置し、前記第4の端が前記第3の端の内側に位置し、前記第1の永久磁石が、前記第2の方向において前記第1の端と前記第4の端との間に位置し、
前記第2の溝は、前記第2の方向において対向する第3の側壁及び第4の側壁を有し、前記第3の側壁が前記第2の方向において第5の端及び第6の端を有し、前記第4の側壁が前記第2の方向において第7の端及び第8の端を有し、前記第6の端が前記第2の溝の底部に近接し、前記第7の端が前記第2の溝の底部に近接し、前記第5の端が前記第6の端の内側に位置し、前記第8の端が前記第7の端の内側に位置し、前記第2の永久磁石が、前記第2の方向において前記第5の端と前記第8の端との間に位置する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー。
【請求項6】
前記第1の溝は、円錐形または円錐台形であり、前記第2の溝は、円錐形または円錐台形である、
ことを特徴とする請求項5に記載の二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー。
【請求項7】
前記第1の復帰部及び前記第2の復帰部のうちの一方はスクロールスプリングであり、前記第1の復帰部及び前記第2の復帰部のうちの他方は溝であり、前記第1の壁面及び前記第2の壁面のうちの一方に前記溝が形成され、スクロールスプリング部材が前記キャビティ内に位置し、前記スクロールスプリングが前記第1の永久磁石及び前記第2の永久磁石のうちの一方の少なくとも一部に嵌められ、前記溝の開口部の第2の方向におけるサイズが前記溝の底部より大きく、前記溝と、前記第1の永久磁石及び前記第2の永久磁石のうちの他方との間に磁性流体が充填され、前記磁性流体が前記第1の永久磁石及び前記第2の永久磁石のうちの他方に吸着し、前記磁性流体が前記溝と接触し、
前記溝は円錐形または円錐台形である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー。
【請求項8】
各前記第3の復帰部は第3の弾性部材であり、各前記第3の復帰部が前記キャビティ内に位置し、前記第3の弾性部材は第3のスクロールスプリングであり、前記第3のスクロールスプリングが対応する前記第3の永久磁石の少なくとも一部に嵌められる、
ことを特徴とする請求項2に記載の二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー。
【請求項9】
第2の多孔質媒体部材であって、前記第1の永久磁石が前記第1の多孔質媒体部材と前記第1の壁面との間に位置し、前記第2の多孔質媒体部材が前記第1の永久磁石と前記第1の壁面との間に位置し、前記第2の多孔質媒体部材が前記第1の永久磁石に設けられ、前記第2の多孔質媒体部材の空隙に第2の磁性流体が充填される第2の多孔質媒体部材と、
第3の多孔質媒体部材であって、前記第2の永久磁石が前記第1の多孔質媒体部材と前記第2の壁面との間に位置し、前記第3の多孔質媒体部材が前記第2の永久磁石と前記第2の壁面との間に位置し、前記第3の多孔質媒体部材が前記第2の永久磁石に設けられ、前記第3の多孔質媒体部材の空隙に第3の磁性流体が充填される第3の多孔質媒体部材と、をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー。
【請求項10】
前記第1の多孔質媒体部材、前記第2の多孔質媒体部材及び前記第3の多孔質媒体部材は、スポンジ、発泡カーボン、及び発泡銅のうちの少なくとも1つにより作製される、
ことを特徴とする請求項9に記載の二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械工学振動の分野に関し、具体的には、二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙飛行の分野において、宇宙船は、エネルギーの制約を受けるため、パッシブダンパーの採用が非常に適切であり、特に宇宙船内の長くて真っ直ぐな物体によって発生する低周波数・小振幅の振動、例えば、アンテナやソーラーパネルの振動は、振動吸収にとって難しい課題である。磁性流体ダンパーは、エネルギー消費がゼロで、慣性力に敏感で、構造がシンプルで、振動吸収速度が速く、耐用年数が長いという特徴があり、低周波数・小振幅の振動に適したパッシブダンパーであるため、特に宇宙飛行の分野における長く真っ直ぐな物体の低周波数・小振幅の振動に適している。また、磁性流体ダンパーは、防振テーブル、高出力アンテナの振動吸収など、地上システムでも広い応用の見通しがある。
【0003】
従来の磁性流体ダンパーは、二次浮力の原理ダンパーを主とし、主な形態は、振動吸収質量ブロックが永久磁石であり、永久磁石と磁性流体の相対運動により流体剪断を発生させて、粘性によってエネルギーを消費するという役割を達成し、例えば、文献1(公開番号CN104074903Aの出願特許)、文献2(公開番号CN102032304Aの出願特許)、文献3(公開番号CN103122960A)などであり、従来の磁性流体の二次浮力の原理ダンパーの多くは以下のような欠点を有する。1.永久磁石材料の脆性が高いにもかかわらず、宇宙船が発射中に加速度が極めて大きい過程を経験し、衝突を引き起こして、永久磁石が破砕される可能性がある。2.ダンパー効果の改善は通常、永久磁石の形状などの変化に基づくものであるが、永久磁石が加工しにくい。3.振動吸収効果を奏する摩擦面が少なく、振動吸収効果が悪いなど。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、関連技術における技術的課題の少なくとも1つをある程度解決することを目的とする。そのため、本発明の実施例は、二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパーを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施例に係る二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパーは、
キャビティを画定し、第1の方向において対向する第1の壁面及び第2の壁面を有する筐体と、
複数の永久磁石及び少なくとも1つの第1の多孔質媒体部材であって、前記少なくとも1つの第1の多孔質媒体部材と複数の前記永久磁石が第1の方向に沿って前記キャビティ内に交互に配置され、各前記第1の多孔質媒体部材が、前記第1の方向において隣接する2つの前記永久磁石の間に位置し、各前記第1の多孔質媒体部材が対応する隣接する2つの前記永久磁石のうちの一方に設けられ、ここで、各前記第1の多孔質媒体部材の空隙に第1の磁性流体が充填されている複数の永久磁石及び少なくとも1つの第1の多孔質媒体部材と、
複数の前記永久磁石に1対1で嵌合されて、前記永久磁石に第2の方向の復元力を加える複数の復帰部であって、ここで、前記第1の方向において隣接する2つの前記永久磁石が受ける前記復元力が等しくない複数の復帰部と、を含む。
【0006】
本発明の実施例に係る二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパーは、振動吸収効果が良く、振動吸収効果が安定しているという利点がある。
【0007】
一部の実施例において、複数の前記永久磁石は、第1の永久磁石及び第2の永久磁石を含み、複数の前記復帰部は、第1の復帰部及び第2の復帰部を含み、前記第1の復帰部が前記第1の永久磁石に嵌合され、前記第2の復帰部が前記第2の永久磁石に嵌合される。
【0008】
一部の実施例において、複数の前記永久磁石は、さらに、少なくとも1つの第3の永久磁石を含み、前記少なくとも1つの第3の永久磁石が、前記第1の方向において前記第1の永久磁石と前記第2の永久磁石との間に位置し、複数の前記復帰部は、さらに、少なくとも1つの第3の復帰部を含み、前記少なくとも1つの第3の復帰部が前記少なくとも1つの第3の永久磁石に1対1で嵌合される。
【0009】
一部の実施例において、前記第1の復帰部は第1の弾性部材であり、前記第2の復帰部は第2の弾性部材であり、前記第1の弾性部材と前記第2の弾性部材はそれぞれ前記キャビティ内に位置する。
【0010】
一部の実施例において、前記第1の弾性部材は第1のスクロールスプリング(scroll spring)であり、前記第1のスクロールスプリングが前記第1の永久磁石の少なくとも一部に嵌められ、前記第2の弾性部材は第2のスクロールスプリングであり、前記第2のスクロールスプリングが前記第2の永久磁石の少なくとも一部に嵌められる。
【0011】
一部の実施例において、前記第1の復帰部は第1の溝であり、前記第2の復帰部は第2の溝であり、前記第1の壁面に前記第1の溝が形成され、前記第2の壁面に前記第2の溝が形成され、前記第1の溝の開口部の第2の方向におけるサイズが前記第1の溝の底部より大きく、前記第2の溝の開口部の第2の方向におけるサイズが前記第2の溝の底部より大きく、前記第1の溝と前記第1の永久磁石との間に第2の磁性流体が充填され、前記第2の磁性流体が前記第1の永久磁石に吸着し、前記第2の磁性流体が前記第1の溝と接触し、前記第2の溝と前記第2の永久磁石との間に第3の磁性流体が充填され、前記第3の磁性流体が前記第2の永久磁石に吸着し、前記第3の磁性流体が前記第2の溝と接触し、選択可能に、前記第1の溝は、前記第2の方向において対向する第1の側壁及び第2の側壁を有し、前記第1の側壁が前記第2の方向において第1の端及び第2の端を有し、前記第2の側壁が前記第2の方向において第3の端及び第4の端を有し、前記第2の端が前記第1の溝の底部に近接し、前記第3の端が前記第1の溝の底部に近接し、前記第1の端が前記第2の端の内側に位置し、前記第4の端が前記第3の端の内側に位置し、前記第1の永久磁石が、前記第2の方向において前記第1の端と前記第4の端との間に位置し、
前記第2の溝は、前記第2の方向において対向する第3の側壁及び第4の側壁を有し、前記第3の側壁が前記第2の方向において第5の端及び第6の端を有し、前記第4の側壁が前記第2の方向において第7の端及び第8の端を有し、前記第6の端が前記第2の溝の底部に近接し、前記第7の端が前記第2の溝の底部に近接し、前記第5の端が前記第6の端の内側に位置し、前記第8の端が前記第7の端の内側に位置し、前記第2の永久磁石が、前記第2の方向において前記第5の端と前記第8の端との間に位置する。
【0012】
一部の実施例において、前記第1の溝は、円錐形または円錐台形であり、前記第2の溝は、円錐形または円錐台形である。
【0013】
一部の実施例において、前記第1の復帰部及び前記第2の復帰部のうちの一方はスクロールスプリングであり、前記第1の復帰部及び前記第2の復帰部のうちの他方は溝であり、前記第1の壁面及び前記第2の壁面のうちの一方に前記溝が形成され、前記スクロールスプリング部材が前記キャビティ内に位置し、前記スクロールスプリングが前記第1の永久磁石及び前記第2の永久磁石のうちの一方の少なくとも一部に嵌められ、前記溝の開口部の第2の方向におけるサイズが前記溝の底部より大きく、前記溝と、前記第1の永久磁石及び前記第2の永久磁石のうちの他方との間に磁性流体が充填され、前記磁性流体が前記第1の永久磁石及び前記第2の永久磁石のうちの他方に吸着し、前記磁性流体が前記溝と接触し、
選択可能に、前記溝は円錐形または円錐台形である。
【0014】
一部の実施例において、各前記第3の復帰部は第3の弾性部材であり、各前記第3の復帰部が前記キャビティ内に位置し、選択可能に、前記第3の弾性部材は第3のスクロールスプリングであり、前記第3のスクロールスプリングが対応する前記第3の永久磁石の少なくとも一部に嵌められる。
【0015】
本発明の実施例に係る二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパーは、
第2の多孔質媒体部材であって、前記第1の永久磁石が前記第1の多孔質媒体部材と前記第1の壁面との間に位置し、前記第2の多孔質媒体部材が前記第1の永久磁石と前記第1の壁面との間に位置し、前記第2の多孔質媒体部材が前記第1の永久磁石に設けられ、ここで、前記第2の多孔質媒体部材の空隙に第2の磁性流体が充填される第2の多孔質媒体部材と、
第3の多孔質媒体部材であって、前記第2の永久磁石が前記第1の多孔質媒体部材と前記第2の壁面との間に位置し、前記第3の多孔質媒体部材が前記第2の永久磁石と前記第2の壁面との間に位置し、前記第3の多孔質媒体部材が前記第2の永久磁石に設けられ、ここで、前記第3の多孔質媒体部材の空隙に第3の磁性流体が充填される第3の多孔質媒体部材と、をさらに含む。
【0016】
一部の実施例において、前記第1の多孔質媒体部材、前記第2の多孔質媒体部材及び前記第3の多孔質媒体部材は、スポンジ、発泡カーボン、及び発泡銅のうちの少なくとも1つにより作製される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例に係る二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパーの概略構造図である。
図2】本発明の実施例に係る二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパーの概略構造図である。
図3】本発明の実施例に係る二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパーの概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。前記実施例における例は、図面に示されている。以下、図面を参照して説明される実施例は、例示するものであり、本発明を説明することを目的としており、本発明を限定するものと理解してはならない。
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー1000を説明し、図1及び図2に示すように、本発明の実施例に係る二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー1000は、筐体100と、複数の永久磁石と、少なくとも1つの第1の多孔質媒体部材310と、複数の復帰部と、を含む。
【0020】
筐体100はキャビティ110を画定し、筐体100は、カバー101及びケース本体102を含み、筐体100は、周囲壁面111と、第1の方向において対向する第1の壁面112及び第2の壁面113とを有し、周囲壁面111が第1の壁面112と第2の壁面113との間に位置する。少なくとも1つの第1の多孔質媒体部材310と複数の永久磁石が第1の方向に沿ってキャビティ110内に交互に配置され、各第1の多孔質媒体部材310が第1の方向において隣接する2つの永久磁石の間に位置し、各第1の多孔質媒体部材310が対応する隣接する2つの永久磁石のうちの一方に設けられ、ここで、各第1の多孔質媒体部材310の空隙に第1の磁性流体610が充填されている。
【0021】
複数の復帰部が複数の永久磁石に1対1で嵌合されて、永久磁石に第2の方向の復元力を加え、ここで、第1の方向において隣接する2つの永久磁石が受ける復元力が等しくない。
【0022】
本発明の実施例に係る二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー1000は、複数の復帰部を設け、かつ、第1の方向において隣接する2つの永久磁石が第2の方向に受ける復元力が等しくない。振動による機械的エネルギーの影響で複数の永久磁石が移動すると、複数の復帰部が複数の永久磁石に1対1で嵌合されるため、各永久磁石とそれに嵌合されている復帰部とが接触した後、復帰部は、それに嵌合されている永久磁石に第2の方向に復元力を加えることができる。第1の方向において隣接する2つの永久磁石が受ける復元力が等しくないため、第1の方向において隣接する2つの永久磁石は相対的に運動することができる。
【0023】
各第1の多孔質媒体部材310が対応する隣接する2つの永久磁石のうちの一方に設けられるため、各第1の多孔質媒体部材310と対応する他方の永久磁石とが相対的に運動することができる。かつ、第1の多孔質媒体部材310の空隙に第1の磁性流体610が充填されているため、第1の磁性流体610の一部は、他方の永久磁石によって引き付けられ、対応する第1の多孔質媒体部材310と相対的に運動する。
【0024】
例えば、第2の永久磁石が受ける復元力が第1の永久磁石が受ける復元力より小さく、第2の永久磁石の振動変位が第1の永久磁石の振動変位より大きい。第2の永久磁石は、第1の磁性流体610の一部を第2の永久磁石220と共に速く移動するように駆動する。第1の永久磁石は磁性流体の一部が移動しないように固定するため、第1の磁性流体610に速度勾配を有する磁性流体層が存在し、移動速度の異なる第1の磁性流体610が互いに剪断及び摩擦し、機械的エネルギーを熱エネルギーに変換して、第1の磁性流体610が粘性によってエネルギーを消費するようにし、振動吸収効果を向上させる。第1の多孔質媒体部材310内の空隙の存在により、固液接触面積が増加するとともに、第1の磁性流体610内の速度勾配が増大し、摩擦によるエネルギー消費と粘性によるエネルギー消費が増加し、振動吸収効果がさらに向上する。
【0025】
また、第1の多孔質媒体部材310の異なる空隙を通過する第1の磁性流体610の流速が異なり、流速の異なる第1の磁性流体610が出会うと互いに剪断及び摩擦し、機械的エネルギーを熱エネルギーに変換して、第1の磁性流体610内部が粘性によってエネルギーを消費するようにし、振動吸収効果をさらに向上させる。
【0026】
したがって、本発明の実施例に係る二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー1000は、振動吸収効果が良く、振動吸収効果が安定しているという利点がある。
【0027】
本発明の実施例に係る二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー1000は、筐体100と、複数の永久磁石と、少なくとも1つの第1の多孔質媒体部材310と、複数の復帰部と、を含む。
【0028】
筐体100はキャビティ110を画定し、筐体100は、カバー101及びケース本体102を含み、筐体100は、周囲壁面111と、第1の方向において対向する第1の壁面112及び第2の壁面113とを有する。
【0029】
少なくとも1つの第1の多孔質媒体部材310と複数の永久磁石が第1の方向に沿ってキャビティ110内に交互に配置され、各第1の多孔質媒体部材310が第1の方向において隣接する2つの永久磁石の間に位置し、各第1の多孔質媒体部材310が対応する隣接する2つの永久磁石のうちの一方に設けられ、すなわち第1の多孔質媒体部材310と一方の永久磁石とが同期移動可能である。ここで、各第1の多孔質媒体部材310の空隙に第1の磁性流体610が充填されている。
【0030】
複数の復帰部が複数の永久磁石に1対1で嵌合されて、永久磁石に第2の方向の復元力を加え、ここで、第1の方向において隣接する2つの永久磁石が受ける復元力が等しくない。
【0031】
例えば、当該第1の方向は上下方向であってもよく、当該第2の方向は左右方向であってもよい。上下方向は図1の矢印Aで示され、左右方向は図1の矢印Bで示される。
【0032】
一部の実施例において、複数の永久磁石は、第1の永久磁石210及び第2の永久磁石220を含み、複数の復帰部は、第1の復帰部及び第2の復帰部を含む。すなわち、永久磁石の数が2つであり、ここで、一方の永久磁石は第1の永久磁石210であり、他方の永久磁石は第2の永久磁石220である。第1の多孔質媒体部材310の数が1つであり、第1の多孔質媒体部材310が第1の永久磁石210と第2の永久磁石220との間に位置し、第1の多孔質媒体部材310が第1の永久磁石210及び第2の永久磁石220のうちの一方に設けられる。復帰部の数が2つであり、ここで、一方の復帰部は第1の復帰部であり、他方の復帰部は第2の復帰部である。第1の復帰部が第1の永久磁石210に嵌合され、すなわち、第1の復帰部が第1の永久磁石210に第2の方向の第1の復元力を加える。第2の復帰部が第2の永久磁石220に嵌合され、すなわち第2の復帰部が第2の永久磁石220に第2の方向の第2の復元力を加える。
【0033】
一部の実施例において、第1の復帰部は第1の弾性部材であり、第2の復帰部は第2の弾性部材であり、第1の弾性部材と第2の弾性部材がそれぞれキャビティ110内に位置する。具体的には、第1の弾性部材は第1のスクロールスプリング410であり、第1のスクロールスプリング410が第1の永久磁石210の少なくとも一部に嵌められる。第2の弾性部材は第2のスクロールスプリング420であり、第2のスクロールスプリング420が第2の永久磁石220の少なくとも一部に嵌められる。
【0034】
本発明の実施例に係る二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー1000の永久磁石の振幅は、スクロールスプリング圧縮の限界に達することはない。
【0035】
図1に示すように、一部の実施例において、第1の弾性部材と第2の弾性部材とが隣接し、第1の弾性部材の剛性が第2の弾性部材の剛性に等しくない。例えば、第1のスクロールスプリング410の剛性が第2のスクロールスプリング420の剛性に等しくない。これにより、第1の弾性部材によって第1の永久磁石210に加えられた第1の復元力と第2の弾性部材によって第2の永久磁石220に加えられた第2の復元力とが異なる。これにより、第1の永久磁石210と第2の永久磁石220が相対的に運動する。
【0036】
例えば、第2の復元力が第1の復元力より小さく、第2の永久磁石220の振動変位が第1の永久磁石210の振動変位より大きい。第2の永久磁石は、第1の磁性流体610の一部を第2の永久磁石220と共に速く移動するように駆動する。第1の永久磁石は磁性流体の一部が移動しないように固定するため、第1の磁性流体610に速度勾配を有する磁性流体層が存在し、移動速度の異なる第1の磁性流体610が互いに剪断及び摩擦し、機械的エネルギーを熱エネルギーに変換して、第1の磁性流体610が粘性によってエネルギーを消費するようにし、振動吸収効果を向上させる。
【0037】
第1の多孔質媒体部材310内に空隙が存在することにより、固液接触面積が増加するとともに、第1の磁性流体610内の速度勾配が増大し、摩擦によるエネルギー消費と粘性によるエネルギー消費が増加し、振動吸収効果がさらに向上する。
【0038】
図2に示すように、一部の実施例において、第1の復帰部は第1の溝510であり、第2の復帰部は第2の溝520であり、第1の壁面112に第1の溝510が形成され、第2の壁面113に第2の溝520が形成される。第1の溝510の開口部の第2の方向におけるサイズが第1の溝510の底部より大きく、第2の溝520の開口部の第2の方向におけるサイズが第2の溝520の底部より大きく、第1の溝510と第2の溝520とが第1の方向において対向する。
【0039】
選択可能に、第1の溝510は、第2の方向において対向する第1の側壁511及び第2の側壁512を有し、すなわち、第1の側壁511は第1の溝510の左側壁であり、第2の側壁512は第1の溝510の右側壁である。
【0040】
第1の側壁511は、第2の方向において第1の端及び第2の端を有する。第1の端は第1の側壁511の左端であり、第2の端は第1の側壁511の右端である。第2の側壁512は、第2の方向において第3の端及び第4の端を有する。第3の端は第2の側壁512の左端であり、第4の端は第2の側壁512の右端である。
【0041】
第2の端が第1の溝510の底部に近接し、第3の端が第1の溝510の底部に近接し、つまり、第2の端と第3の端は、左右方向において第1の端と第4の端との間に位置する。第1の端が第2の端の内側に位置し、第4の端が第3の端の内側に位置する。第1の溝510の開口部の第1の方向におけるサイズが第1の溝510の底部より大きい。
【0042】
一部の実施例において、第1の溝510は円錐形であり、すなわち第1の溝510の横断面の上半分の縁はV字状である。言い換えれば、第1の側壁511と第2の側壁512とが交差し、すなわち、第1の側壁511の第2の端(右端)と第2の側壁512の第3の端(左端)とは同じ端である。
【0043】
選択可能に、第1の溝510は円錐台形である。
【0044】
選択可能に、第2の溝520は、第2の方向において対向する第3の側壁521及び第4の側壁522を有し、すなわち、第3の側壁521は第2の溝520の左側壁であり、第4の側壁522は第2の溝520の右側壁である。
【0045】
第3の側壁521は、第2の方向において第5の端及び第6の端を有する。第5の端は第3の側壁521の左端であり、第6の端は第3の側壁521の右端である。第4の側壁522は、第2の方向において第7の端及び第8の端を有する。第7の端は第4の側壁522の左端であり、第8の端は第4の側壁522の右端である。
【0046】
第6の端が第2の溝520の底部に近接し、第7の端が第2の溝520の底部に近接し、つまり、第6の端と第7の端は、左右方向において第5の端と第8の端との間に位置する。第5の端が第6の端の内側に位置し、第8の端が第7の端の内側(内側とはキャビティ110の中心に近接する側を指し、外側とは筐体100の周囲壁面111に近接する側を指す)に位置する。第2の溝520の開口部の第1の方向におけるサイズが第2の溝520の底部より大きい。
【0047】
一部の実施例において、第2の溝520は円錐形であり、すなわち、第2の溝520の横断面の下半分の縁は逆V字状である。言い換えれば、第3の側壁521と第4の側壁522とが交差し、すなわち、第3の側壁521の第6の端(右端)と第4の側壁522の第7の端(左端)とは同じ端である。
【0048】
選択可能に、第2の溝520は円錐台形である。
【0049】
第1の溝510と第1の永久磁石210との間に第2の磁性流体620が充填され、第2の磁性流体620が第1の永久磁石210に吸着し、第2の磁性流体620が第1の溝510と接触する。第1の永久磁石210が第2の方向において第1の端と第4の端との間に位置し、これにより、第1の溝510が第1の永久磁石210に対して一定の位置制限の役割を果たすことができ、すなわち、第1の永久磁石210が、第1の溝510の許容範囲内で移動することができる。
【0050】
第2の溝520と第2の永久磁石220との間に第3の磁性流体630が充填され、第3の磁性流体630が第2の永久磁石220に吸着し、第3の磁性流体630が第2の溝520と接触する。第2の永久磁石220が第2の方向において第5の端と第8の端との間に位置し、これにより、第2の溝520が第2の永久磁石220に対して一定の位置制限の役割を果たすことができ、すなわち、第2の永久磁石220が、第2の溝520の許容範囲内で移動することができる。
【0051】
上記実施例において、第1の溝510が第1の永久磁石210に第1の復元力を加える。例えば、第1の永久磁石210が左方向に振動吸収変位が発生する場合、第1の永久磁石210と第1の側壁511との間に位置する第2の磁性流体620が押圧され、第1の永久磁石210の磁力により、第2の磁性流体620が第1の永久磁石210に右向きの第1の作用力を加え、当該第1の作用力により、第1の永久磁石210が当該第1の作用力の作用で右方向に移動し始めるまで、第1の永久磁石210が第1の側壁511に近接する速度を遅くする。当該プロセスにおいて、第1の永久磁石210と第1の側壁511との間に位置する第2の磁性流体620が押圧されるため、第2の磁性流体620内部に粘性剪断を起こしてエネルギーを消費する。
【0052】
同様に、第2の側壁512は第1の永久磁石210に左向きの第2の作用力を加えることができる。このような第1の作用力と第2の作用力は、いずれも第1の永久磁石210をその平衡位置に戻すことができる復元力と見なすことができ、ここでの平衡位置とは、第1の永久磁石210が振動吸収運動をしないときの位置を指し、このときに第1の永久磁石210と筐体100とが相対的に静止している。
【0053】
同様に、第3の側壁521及び第4の側壁522も第2の永久磁石220をその平衡位置に戻すことができ、かつ第1の溝510のテーパが第2の溝520のテーパに等しくないため、第1の永久磁石210に第1の溝510によって生成された第1の復元力が第2の永久磁石220第2の溝520によって生成された第2の復元力に等しくない。これにより、第1の永久磁石210と第2の永久磁石220とが相対的に運動して、第1の磁性流体610の一部と第1の多孔質媒体部材310とが相対的に運動し、振動吸収効果を向上させる。
【0054】
一部の実施例において、第1の復帰部及び第2の復帰部のうちの一方はスクロールスプリングであり、スクロールスプリング部材がキャビティ110内に位置する。スクロールスプリングが第1の永久磁石210及び第2の永久磁石220のうちの一方の少なくとも一部に嵌められる。
【0055】
第1の復帰部及び第2の復帰部のうちの他方は溝であり、第1の壁面112及び第2の壁面113のうちの他方に溝が形成される。溝と、第1の永久磁石210及び第2の永久磁石220のうちの一方との間に磁性流体が充填される。溝は、第1の方向における開口部を有し、溝の開口部の第2の方向におけるサイズが溝の底部より大きく、溝は円錐形または円錐台形である。
【0056】
例えば、第1の復帰部がスクロールスプリングである場合、第2の復帰部は溝である。スクロールスプリングが第1の永久磁石210の少なくとも一部に嵌められて、スクロールスプリングが第1の永久磁石210に第1の復元力を加える。第2の壁面113に溝が形成され、溝が第2の永久磁石220に第2の復元力を加える。
【0057】
第2の復帰部がスクロールスプリングである場合、第1の復帰部は溝である。スクロールスプリングが第2の永久磁石220の少なくとも一部に嵌められて、スクロールスプリングが第2の永久磁石220に第1の復元力を加える。第1の壁面112に溝が形成され、溝が第1の永久磁石210に第2の復元力を加える。
【0058】
図3に示すように、一部の実施例において、第1の永久磁石210と第2の永久磁石220とが隣接する。第1の復帰部は第1のスクロールスプリング410であり、第1のスクロールスプリング410が第1の永久磁石210の少なくとも一部に嵌められる。第1のスクロールスプリング410は第1の永久磁石210に第1の復元力を加える。第2の復帰部は円錐形の第2の溝520である。第2の溝520と第2の永久磁石220との間に第3の磁性流体630が充填され、第2の溝520が第2の永久磁石220に第2の復元力を加える。第1の復元力を第2の復元力に等しくすることにより、第1の永久磁石210及び第2の永久磁石220を相対的に運動させ、すなわち、第1の磁性流体610の一部と第1の多孔質媒体部材310とが相対的に運動し、振動吸収効果を向上させる。
【0059】
一部の実施例において、複数の永久磁石は、さらに、少なくとも1つの第3の永久磁石を含み、少なくとも1つの第3の永久磁石が、第1の方向において第1の永久磁石210と第2の永久磁石220との間に位置する。複数の復帰部は、さらに、少なくとも1つの第3の復帰部を含み、少なくとも1つの第3の復帰部が少なくとも1つの第3の永久磁石に1対1で嵌合され、すなわち、第3の復帰部が、それに対応する第3の永久磁石に第3の復元力を加える。例えば、第3の永久磁石の数が1つである場合、すなわち、永久磁石の数が3つである場合、第1の多孔質媒体部材310の数が2つであり、第3の復帰部が1つであり、第3の復元力が第1の復元力及び第2の復元力に等しくない。
【0060】
各第3の復帰部は第3の弾性部材であり、各第3の復帰部がキャビティ110内に位置する。選択可能に、第3の弾性部材は第3のスクロールスプリングであり、第3のスクロールスプリングが対応する第3の永久磁石の少なくとも一部に嵌められる。第3のスクロールスプリングが、それに対応する第3の永久磁石に第3の復元力を加える。
【0061】
第3の永久磁石の数が複数である場合、ここで、第1の方向において第1の弾性部材と隣接する第3の弾性部材の剛性が第1の弾性部材の剛性に等しくなく、例えば、第1のスクロールスプリング410の剛性がそれと隣接する第3のスクロールスプリングの剛性に等しくないため、第1の弾性部材によって第1の永久磁石210に加えられた第1の復元力と第3の弾性部材によって第3の永久磁石に加えられた第3の復元力とが異なる。これにより、第1の永久磁石210と第3の永久磁石とが相対的に運動する。
【0062】
第1の方向において第2の弾性部材と隣接する第3の弾性部材の剛性が第2の弾性部材の剛性に等しくなく、例えば、第2のスクロールスプリング420の剛性が第3のスクロールスプリング剛性に等しくないため、第2の弾性部材によって第2の永久磁石220に加えられた第2の復元力と第3の弾性部材によって第3の永久磁石に加えられた第3の復元力が等しくない。これにより、第2の永久磁石220と第3の永久磁石とが相対的に運動する。
【0063】
一部の実施例において、第1の方向において隣接する2つの第3の弾性部材の剛性が等しくない。例えば、第1の方向において隣接する2つの第3のバネの剛性が等しくないため、隣接する2つの第3の弾性部材によって対応する第3の永久磁石に加えられた第3の復元力が等しくない。これにより隣接する2つの第3の永久磁石が相対的に運動する。
【0064】
隣接する2つの永久磁石が相対的に運動することにより、隣接する2つの永久磁石の間の第1の磁性流体610の一部と対応する第1の多孔質媒体部材310とが相対的に運動し、振動吸収効果を向上させる。
【0065】
図1および図2に示すように、一部の実施例において、本発明の実施例に係る二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパー1000は、第2の多孔質媒体部材320と第3の多孔質媒体部材330とをさらに含む。
【0066】
第1の永久磁石210が第1の多孔質媒体部材310と第1の壁面112との間に位置し、第2の多孔質媒体部材320が第1の永久磁石210と第1の壁面112との間に位置する。第2の多孔質媒体部材320が第1の永久磁石210に設けられ、すなわち、第2の多孔質媒体部材320が第1の永久磁石210と共に移動する。ここで、第2の多孔質媒体部材320の空隙に第2の磁性流体620が充填されている。
【0067】
第1の永久磁石210が移動する場合、第1の永久磁石210は、第2の磁性流体620の一部を第1の永久磁石210と共に速く移動するように駆動する。第1の壁面112と接触する第2の磁性流体620の一部が移動しないか、またはゆっくり移動する。それによって、第2の磁性流体620には、速度勾配を有する磁性流体層が存在し、移動速度の異なる第2の磁性流体620が互いに剪断及び摩擦し、機械的エネルギーを熱エネルギーに変換して、第2の磁性流体620が粘性によってエネルギーを消費するようにし、振動吸収効果を向上させる。
【0068】
第2の多孔質媒体部材320内の空隙の存在により、固液接触面積が増加するとともに、第2の磁性流体620内の速度勾配が増大し、摩擦によるエネルギー消費と粘性によるエネルギー消費が増加し、振動吸収効果がさらに向上する。
【0069】
また、第2の多孔質媒体部材320の異なる空隙を通過する第2の磁性流体620の流速が異なり、流速の異なる第2の磁性流体620が出会うと互いに剪断及び摩擦し、機械的エネルギーを熱エネルギーに変換して、第2の磁性流体620の内部が粘性によってエネルギーを消費するようにし、振動吸収効果をさらに向上させる。
【0070】
第2の磁性流体620を第2の多孔質媒体部材320の空隙内に収容することにより、第2の磁性流体620の揮発を低減し、磁性流体ダンパーの振動吸収効果をより安定させることができる。
【0071】
第3の多孔質媒体部材330、第2の永久磁石220が第1の多孔質媒体部材310と第2の壁面113との間に位置し、第3の多孔質媒体部材330が第2の永久磁石220と第2の壁面113との間に位置し、第3の多孔質媒体部材330が第2の永久磁石220に設けられ、すなわち、第3の多孔質媒体部材330が第2の永久磁石220と共に移動する。ここで、第3の多孔質媒体部材330の空隙に第3の磁性流体630が充填されている。
【0072】
第2の永久磁石220が移動する場合、第2の永久磁石220は、第3の磁性流体630の一部を第2の永久磁石220と共に速く移動するように駆動する。第2の壁面113と接触する第3の磁性流体630の一部が移動しないか、またはゆっくり移動する。それによって、第3の磁性流体630に速度勾配を有する磁性流体層が存在し、移動速度の異なる第3の磁性流体630が互いに剪断及び摩擦し、機械的エネルギーを熱エネルギーに変換して、第2の磁性流体620が粘性によってエネルギーを消費するようにし、振動吸収効果を向上させる。また、第3の多孔質媒体部材330の異なる空隙を通過する第3の磁性流体630の流速が異なり、流速の異なる第3の磁性流体630が出会うと互いに剪断及び摩擦し、機械的エネルギーを熱エネルギーに変換して、第3の磁性流体630の内部が粘性によってエネルギーを消費するようにし、振動吸収効果をさらに向上させる。
【0073】
第3の磁性流体630を第3の多孔質媒体部材330の空隙内に収容することにより、第3の磁性流体630の揮発を低減し、磁性流体ダンパーの振動吸収効果をより安定的なものにすることができる。
【0074】
一部の実施例において、第1の多孔質媒体部材310、第2の多孔質媒体部材320及び第3の多孔質媒体部材330は、スポンジ、発泡カーボン、及び発泡銅のうちの少なくとも1つからなる。これにより、第1の多孔質媒体部材410、第2の多孔質媒体部材420及び第3の多孔質媒体部材430が弾性を有し、永久磁石と筐体100とが互いに衝突して破損することを防止することができる。
【0075】
本発明の説明において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「水平」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」、「軸方向」、「径方向」、「周方向」などの用語が示す方位又は位置関係は、図面に示された方位又は位置関係に基づくものであり、本発明を便利かつ簡潔に説明するためのものに過ぎず、指定された装置又は部品が必ず特定の方位にあり、特定の方位で構造及び操作されることを指示又は暗示するものではないので、本発明を限定するものと理解してはいけないことを理解されたい。
【0076】
また、「第1」、「第2」という用語は目的を説明するためだけに用いられるものであり、相対的重要性を指示又は暗示するか、或いは示された技術的特徴の数を暗黙的に指示するものとして理解してはいけない。そこで、「第1」、「第2」によって限定されている特徴は1つ又はより多くの当該特徴を明示的または暗示的に含むことができる。本発明の説明において、明確且つ具体的な限定がない限り、「複数」とは、2つまたは3つなど、2つ以上のことを意味する。
【0077】
本発明において、特に明示的な規定および限定がない限り、用語「取り付け」、「つながる」、「接続」、「固定」などの用語は広義で理解すべきであり、例えば、固定接続であってもよいし、着脱可能な接続であってもよいし、一体になっていてもよく、機械的な接続であってもよいし、電気的な接続であってもよいし、互いに通信可能であってもよく、直接接続されていてもよいし、中間媒体を介して間接的に接続されていてもよく、特に明示的に限定されない限り、2つの要素の内部の連通または2つの要素の互いの作用関係であってもよい。当業者にとっては、上記用語の本発明における具体的な意味は具体的な状況に基づいて理解できる。
【0078】
本発明において、特に明示的な規定および限定がない限り、第1の特徴が第2の特徴の「上」または「下」にあることは、第1と第2の特徴が直接接触していてもよいし、第1と第2の特徴が中間媒体を介して間接的に接触していてもよい。また、第1の特徴が第2の特徴の「上」、「上方」および「上面」にあることは、第1の特徴が第2の特徴の真上または斜め上にあることであってもよく、或いは第1の特徴の水平高さが第2の特徴よりも高いことのみを示している。第1の特徴が第2の特徴の「下」、「下方」および「下面」にあることは、第1の特徴が第2の特徴の直下または斜め下にあることであってもよいし、第1の特徴の水平高さが第2の特徴より小さいことのみを示している。
【0079】
本発明において、「一実施例」、「一部の実施例」、「例」、「具体的な例」、或いは「一部の例」などの用語とは、当該実施例或いは例に合わせて説明された具体的な特徴、構造、材料或いは特性が、本発明の少なくとも1つの実施例或いは例に含まれることである。本明細書において、上記用語に対する例的な説明は、必ずしも同じ実施例或いは例を示すものではない。また、説明された具体的な特徴、構造、材料或いは特性は、いずれか1つ或いは複数の実施例又は例において適切に結合することができる。さらに、互いに矛盾しない限り、当業者は本明細書で説明された異なる実施例または例及び異なる実施形態または例の特徴を、結合及び組み合わせることができる。
【0080】
以上に本発明の実施例を示して説明したが、上記実施例は例示するものであり、本発明を限定するものではなく、当業者は、本発明の範囲内で上記実施例に対して変化、修正、置き換え及び変形を行うことができることを理解されたい。
【符号の説明】
【0081】
100 筐体
101 カバー
102 ケース本体
110 キャビティ
111 周囲壁面
112 第1の壁面
113 第2の壁面
210 第1の永久磁石
220 第2の永久磁石
310 第1の多孔質媒体部材
320 第2の多孔質媒体部材
330 第3の多孔質媒体部材
410 第1のスクロールスプリング
420 第2のスクロールスプリング
510 第1の溝
511 第1の側壁
512 第2の側壁
520 第2の溝
521 第3の側壁
522 第4の側壁
610 第1の磁性流体
620 第2の磁性流体
630 第3の磁性流体
【要約】      (修正有)
【課題】永久磁石が破砕されにくく、加工がしやすくかつ振動吸収効果が高い磁性流体ダンパを提供する。
【解決手段】キャビティを画定する筐体100の内部に、複数の永久磁石210、220及び多孔質媒体部材310を有する。多孔質媒体部材310が、第1の方向において隣接する2つの永久磁石210,220の間に位置し、多孔質媒体部材310の空隙に磁性流体610が充填されている。2つの永久磁石が受ける復元力が等しくない複数の復帰部410、420と、を含む二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパーを開示する。本発明の実施例に係る二次浮力の原理に基づく磁性流体ダンパーは、振動吸収効果が良く、振動吸収効果が安定しているという利点がある。
【選択図】図1
図1
図2
図3