特許第6942405号(P6942405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナチュラルブレスト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6942405-人工乳房及び人工乳首 図000002
  • 特許6942405-人工乳房及び人工乳首 図000003
  • 特許6942405-人工乳房及び人工乳首 図000004
  • 特許6942405-人工乳房及び人工乳首 図000005
  • 特許6942405-人工乳房及び人工乳首 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6942405
(24)【登録日】2021年9月10日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】人工乳房及び人工乳首
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/12 20060101AFI20210916BHJP
【FI】
   A61F2/12
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2021-531609(P2021-531609)
(86)(22)【出願日】2021年2月15日
(86)【国際出願番号】JP2021005476
【審査請求日】2021年6月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514172220
【氏名又は名称】ナチュラルブレスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100175271
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 宣圭
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】本田 幸恵
【審査官】 小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−73562(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0197698(US,A1)
【文献】 米国特許第4125117(US,A)
【文献】 特開2008−289833(JP,A)
【文献】 特開2012−238767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴムと粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成され、内部に空洞が形成された第1の層と、
該第1の層よりも外側に配置されており、同第1の層よりも硬く、シリコーンゴムを含んで構成された第2の層とを備える
人工乳房。
【請求項2】
前記第2の層よりも外側に配置されており、着色料を含んで構成された着色層と、
該着色層よりも外側に配置されており、同着色層の剥離を抑制可能なカバー層とを備える
請求項1に記載の人工乳房。
【請求項3】
前記着色層は、乳首を表示した乳首領域を有し、同乳首領域は同着色層の他の領域と略同一面内に位置する
請求項2に記載の人工乳房。
【請求項4】
前記カバー層よりも外側に配置されており、同カバー層または前記着色層の光の反射を抑制可能な反射抑制層を備える
請求項2に記載の人工乳房。
【請求項5】
前記第2の層よりも外側に配置されており、物質を遮断可能であり、透明である薄膜層を備える
請求項1に記載の人工乳房。
【請求項6】
最も外側に配置された層に着脱可能に配置されており、粘着性材料を含んで構成された粘着層を備える
請求項5に記載の人工乳房。
【請求項7】
前記第1の層及び前記第2の層を貫通していると共に外部と前記空洞とを連通しており、かつ、同空洞内の気体または液体が外部へ漏れ難い大きさの貫通孔が同第1の層及び同第2の層に形成された
請求項1に記載の人工乳房。
【請求項8】
シリコーンゴムを含んで構成され、内部に空洞が形成されたシリコーンゴム層と、
該シリコーンゴム層の、前記空洞とは反対側の一部に設けられており、シリコーンゴムと粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成された乳首部と、
前記シリコーンゴム層よりも外側及び前記乳首部よりも外側に配置されており、着色料を含んで構成された着色層と、
該着色層よりも外側に配置されており、同着色層の剥離を抑制可能なカバー層と、
該カバー層よりも外側に配置されており、同カバー層または前記着色層の光の反射を抑制可能な反射抑制層とを備える
人工乳房。
【請求項9】
シリコーンゴムと粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成された本体層と、
該本体層よりも外側に配置されており、着色料を含んで構成された着色層と、
該着色層よりも外側に配置されており、同着色層の剥離を抑制可能なカバー層と、
該カバー層よりも外側に配置されており、同カバー層または前記着色層の光の反射を抑制可能な反射抑制層とを備える
人工乳首。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人工乳房及び人工乳首に関する。詳しくは、例えば乳房を喪失してしまった女性のための、人工乳房及び人工乳首に係るものである。
【背景技術】
【0002】
女性にとって乳房が変形したり乳房を喪失したりすることは、精神に大きな衝撃を与えることになる。
そして、下着を着用するときに補正パットが必要となるなど、日常生活にも支障が出て生活の質が低下してしまう。
【0003】
そこで、生活の質を向上させるべく、変形した乳房や喪失した乳房を、できる限り通常の状態に戻すための方法として、乳房再建手術が行われている。
しかし、乳房再建手術は、感染症や皮膚の壊死を引き起こすなどのデメリットを有する。
【0004】
一方、このようなデメリットを嫌って、乳房再建手術を行わず、人工物である人工乳房を胸部の皮膚に貼り付ける女性も多数存在しており、様々な人工乳房が提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には、図5に示されるような人工乳房が記載されている。
すなわち、特許文献1に記載の人工乳房101は、表面側となる椀状の外皮部102と、底皮部(底面部)103とにより構成されている。
また、外皮部102と底皮部103との間に内部空間104が形成されており、人工乳房101は全体として中空の袋状体となっている。
【0006】
また、外皮部102と底皮部103は、医療用のシリコーンゴム等の軟質性樹脂から形成されており、外皮部102の表面は、装着者である使用者の胸部の色に合わせて着色される。
【0007】
外皮部102の中央付近には乳頭部105が設けられている。
また、底皮部103の中央付近には、外皮部102側に窪むように凹部106が形成されており、凹部106と外皮部102との間には、内部空間104が形成されている。
また、凹部106の中央部には内部空間104に空気の出し入れを行うことで内部空間104の空気圧を調整できるよう、針挿通弁107が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016−209340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、人工乳房は人体に直に装着されて日常的に使用されるため、人工乳房のシリコーンゴムが劣化して、人間の乳房と比べて不自然な硬さになり易かった。
【0010】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、人間の乳房と比べて不自然になり難い人工乳房、並びに人間の乳首と比べて不自然になり難い人工乳首を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の人工乳房は、シリコーンゴムと粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成され、内部に空洞が形成された第1の層と、該第1の層よりも外側に配置されており、同第1の層よりも硬く、シリコーンゴムを含んで構成された第2の層とを備える。
【0012】
ここで、シリコーンゴムと粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成された第1の層によって、このような増粘剤を含まない人工乳房よりも柔らかい上に、その柔らかさを長期間持続させることができる。
【0013】
また、第1の層よりも外側に配置されており、第1の層よりも硬い第2の層によって、人工乳房の形状を整えることができる。
【0014】
また、シリコーンゴムと粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成された第1の層と、第1の層よりも外側に配置されており、第1の層よりも硬い第2の層とによって、内側から外側へ向けて段階的に硬くなっているので、外部から力を付与されても不自然なシワを生じ難い。
【0015】
また、本発明の人工乳房は、第2の層よりも外側に配置されており、着色料を含んで構成された着色層と、着色層よりも外側に配置されており、着色層の剥離を抑制可能なカバー層とを備える構成とすることができる。
【0016】
この場合、第2の層よりも外側に配置されており、着色料を含んで構成された着色層によって、外部彩色とすることができ、第1の層または第2の層が着色料を含む内部彩色の場合よりも人間の肌の質感に近似させることができる。
【0017】
また、着色層よりも外側に配置されており、着色層の剥離を抑制可能なカバー層によって、近似させた人間の肌の質感を維持できる。
【0018】
さらに、本発明の人工乳房において、着色層は、乳首を表示した乳首領域を有し、乳首領域は着色層の他の領域と略同一面内に位置する構成とすることができる。
【0019】
この場合、服を通して見ても乳首が目立たないようにすることができる。
【0020】
また、本発明の人工乳房は、カバー層よりも外側に配置されており、カバー層または着色層の光の反射を抑制可能な反射抑制層を備える構成とすることができる。
【0021】
この場合、さらに人間の肌の質感に近似させることができる。
【0022】
また、本発明の人工乳房は、第2の層よりも外側に配置されており、物質を遮断可能であり、透明である薄膜層を備える構成とすることができる。
【0023】
この場合、薄膜層が物質を遮断できるので、人工乳房の外部から物質が第1の層や第2の層に入り込まないようにしたり、第1の層または第2の層に含まれている物質が人工乳房の外部へ漏れ出ないようにしたりすることができる。
また、薄膜層は透明であるので、違和感がない。
【0024】
また、本発明の人工乳房は、最も外側に配置された層に着脱可能に配置されており、粘着性材料を含んで構成された粘着層を備える構成とすることができる。
この場合、人体に対する人工乳房の接着力を向上できる。
【0025】
また、本発明の人工乳房において、第1の層及び第2の層を貫通していると共に外部と空洞とを連通しており、かつ、空洞内の気体または液体が外部へ漏れ難い大きさの貫通孔が第1の層及び第2の層に形成された構成とすることができる。
【0026】
この場合、貫通孔を通して、本発明の人工乳房の外部から第1の層の内部に形成された空洞へ気体または液体を導入し、導入された気体または液体を空洞内に、とどめておくことができる。
【0027】
また、上記の目的を達成するために、本発明の人工乳房は、シリコーンゴムを含んで構成され、内部に空洞が形成されたシリコーンゴム層と、該シリコーンゴム層の、前記空洞とは反対側の一部に設けられており、シリコーンゴムと粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成された乳首部と、前記シリコーンゴム層よりも外側及び前記乳首部よりも外側に配置されており、着色料を含んで構成された着色層と、該着色層よりも外側に配置されており、同着色層の剥離を抑制可能なカバー層と、該カバー層よりも外側に配置されており、同カバー層または前記着色層の光の反射を抑制可能な反射抑制層とを備える。
【0028】
ここで、シリコーンゴムと粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成された乳首部によって、このような増粘剤を含まない乳首部よりも柔らかい上に、その柔らかさを長期間持続させることができる。
【0029】
また、シリコーンゴム層よりも外側及び乳首部よりも外側に配置されており、着色料を含んで構成された着色層によって、外部彩色とすることができ、シリコーンゴムが着色料を含む内部彩色の場合よりも人間の肌の質感に近似させることができる。
【0030】
また、着色層よりも外側に配置されており、着色層の剥離を抑制可能なカバー層によって、近似させた人間の肌の質感を維持し易い。
【0031】
また、カバー層よりも外側に配置されており、カバー層または着色層の光の反射を抑制可能な反射抑制層によって、さらに人間の肌の質感に近似させることができる。
【0032】
また、上記の目的を達成するために、本発明の人工乳首は、シリコーンゴムと粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成された本体層と、該本体層よりも外側に配置されており、着色料を含んで構成された着色層と、該着色層よりも外側に配置されており、同着色層の剥離を抑制可能なカバー層と、該カバー層よりも外側に配置されており、同カバー層または前記着色層の光の反射を抑制可能な反射抑制層とを備える。
【0033】
ここで、シリコーンゴムと粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成された本体層によって、このような増粘剤を含まない人工乳首よりも柔らかい上に、その柔らかさを長期間持続させることができる。
【0034】
また、本体層よりも外側に配置されており、着色料を含んで構成された着色層によって、外部彩色とすることができ、シリコーンゴムが着色料を含む内部彩色の場合よりも人間の肌の質感に近似させることができる。
【0035】
また、着色層よりも外側に配置されており、着色層の剥離を抑制可能なカバー層によって、近似させた人間の肌の質感を維持できる。
【0036】
また、カバー層よりも外側に配置されており、カバー層または着色層の光の反射を抑制可能な反射抑制層によって、さらに人間の肌の質感に近似させることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係る人工乳房は、人間の乳房と比べて不自然になり難い。
本発明に係る人工乳首は、人間の乳首と比べて不自然になり難い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明を適用した人工乳房の第1の実施形態を示す概略断面図である。
図2】本発明を適用した人工乳房の第2の実施形態の概略平面図(a)と、図2(a)に示す人工乳房をA−A線に沿って切断したときの乳首領域付近の概略部分断面図(b)である。
図3】本発明を適用した人工乳首の一例を示す概略断面図である。
図4】人体の胸部に装着された、本発明を適用した第1の実施形態の人工乳房の概略断面図である。
図5】従来の人工乳房の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した人工乳房の第1の実施形態を示す概略断面図である。
【0040】
図1に示す本発明の人工乳房1は、第1の層2を備える。
ここで、第1の層2は、シリコーンゴムと、粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成されている。
また、第1の層2の内部には空洞2Aが形成されている。
また、このような構成である第1の層2の柔らかさは、このような増粘剤を含まないシリコーンゴム層の柔らかさよりも柔らかく、また、その柔らかさは少なくとも2年間は持続する。
【0041】
また、第1の層2の、空洞2Aとは反対側の湾曲した部分の一部には、突起した乳首部2Bが一体的に設けられているが、乳首部を別体として第1の層2に取付けることもできる。
【0042】
また、第1の層2に使用されるシリコーンゴムとしては、様々なシリコーンゴムを使用することができるが、具体的には例えば、常温における粘度が1500〜6000mPa・sを有するシリコーンゴムが挙げられる。
【0043】
また、第1の層2に使用される増粘剤としては、粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤であれば、特に制限はない。
また、このような増粘剤としては具体的には例えば、常温における粘度が100〜2500mPa・sを有する増粘剤からなる群から選ばれる、粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤が挙げられる。
【0044】
また、第1の層2が、シリコーンゴムと粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成されていれば、さらにウレタンゴムなど別のゴムを混合できる。
【0045】
また、本発明の人工乳房1は、第2の層3を備える。
ここで、第2の層3は、シリコーンゴムを含んで構成されている。
また、第2の層3は、第1の層2よりも外側に配置されており、第1の層2よりも硬い層である。
すなわち、第2の層3は、第1の層2全体を覆った状態で第1の層2の外側部分に積層されている。
【0046】
また、第2の層3に使用されるシリコーンゴムとしては、第1の層2に使用されるシリコーンゴムよりも硬くなるものであれば、どのようなものでも使用できる。
【0047】
また、本発明の人工乳房1は、外被層4を備える。
ここで、外被層4は、第2の層3よりも外側に配置されている。すなわち、外被層4は、第2の層3の、第1の層2とは反対側であって湾曲した部分に積層されている。
また、第2の層3の湾曲した部分は、本発明の人工乳房1を人体の胸部に装着したときに表面側に位置することになる部分である。
【0048】
また、外被層4は、着色層41と、カバー層42と、反射抑制層43とで構成されている。
【0049】
ここで、着色層41は、着色料、具体的には例えば顔料を含んで構成されている。
また、着色層41は、第2の層3の、第1の層2とは反対側であって湾曲した部分に積層されている。
【0050】
また、カバー層42は、着色層41の剥離を抑制可能である。
また、カバー層42は、着色層41よりも外側に配置されている。すなわち、カバー層42は、着色層41の、第2の層3とは反対側に積層されている。
【0051】
また、反射抑制層43は、カバー層42または着色層41の表面を粗くして、カバー層42または着色層41の光の反射を抑制可能である。
また、反射抑制層43は、カバー層42よりも外側に配置されている。すなわち、反射抑制層43は、カバー層42の、着色層41とは反対側に積層されている。
【0052】
また、カバー層42と反射抑制層43は着色層41が示す色を遮るものではなく、カバー層42と反射抑制層43が着色層41よりも外側に配置されているが、カバー層42と反射抑制層43を通して着色層41が示す色を視認できる。
【0053】
また、本発明の人工乳房1は、図1に示すように、人体の胸部に装着されたときに表面側に位置することになる湾曲した湾曲部分と、人体の胸部に装着されたときに胸部に向けられる裏面側に位置することになる略平坦な平坦部分とを有する。
そして、湾曲部分と平坦部分とが連接した部分を周縁部とする。
【0054】
また、本発明の人工乳房の、人体の胸部に装着されたときに胸部に向けられる裏面側に凹部を形成することもできる。
【0055】
また、本発明の人工乳房1は、薄皮部5を備える。
ここで、薄皮部5は、シリコーンゴムを含んで構成されており、透明と成るほど薄く、そして柔らかい部分である。
また、薄皮部5は、第2の層3よりも外側であって周縁部全体に設けられている。
従って、本発明の人工乳房1を人体の胸部に装着したときに、人間の肌の色を透過させることができる。
【0056】
ここで、薄皮部5は、第2の層3とは別体として第2の層3に取付けられているが、第1の層2及び第2の層3と一体的に、または第2の層3と一体的に設けられていてもよい。
【0057】
また、本発明の人工乳房1は、ポリエチレンシート層6を備える。
ここで、ポリエチレンシート層6は、空気や水分やリン物質などを遮断可能であり、透明である。
また、ポリエチレンシート層6の厚さは具体的には例えば10〜20μmであるが、この厚さに限定されないことは勿論である。
ポリエチレンは薄膜層の材料の一例であり、物質を遮断可能であり透明であれば、薄膜層として他の材料を用いることができる。
【0058】
また、ポリエチレンシート層6は、第2の層3よりも外側に配置されている。すなわち、ポリエチレンシート層6は、第2の層3の、第1の層2とは反対側であって略平坦な部分に積層されている。
また、ポリエチレンシート層6の一部は、薄皮部5にも積層されている。
ポリエチレンシート層6は、薄膜層の一例である。
【0059】
また、ポリエチレンシート層6などの薄膜層を、例えば第1の層2と第2の層3との間に挟んだ状態で配置することもできる。
この場合、ポリエチレンシート層などの薄膜層が第1の層全体を覆って配置された構成となるので、例えば第1の層の内部の空洞に液体を入れておいても、ポリエチレンシート層などの薄膜層によって、本発明の人工乳房の表面から内部の液体が外部へ滲み出ないようにすることができる。
【0060】
また、本発明の人工乳房1は、粘着層7を備える。
ここで、粘着層7は、シリコーンゲルを含んで構成されており、最も外側に配置されたポリエチレンシート層6に着脱可能に配置される。
【0061】
すなわち、粘着層7は、ポリエチレンシート層6にカバー層42を介して着脱可能に積層されるが、カバー層42を省略することもできる。
また、カバー層42を構成する材料とは異なる材料で構成された別のカバー層を介して、粘着層7をポリエチレンシート層6に着脱可能に積層することもできる。
【0062】
シリコーンゲルは粘着性材料の一例であり、粘着性材料としては、例えば、シリコーンゲルとシリコーンゴムの混合物を使用することもできる。
【0063】
また、本発明の人工乳房1が備える第1の層2及び第2の層3には、貫通孔9が形成されている。
ここで、貫通孔9は、第1の層2及び第2の層3を貫通していると共に、本発明の人工乳房1の外部と第1の層2の内部の空洞2Aとを連通している。
【0064】
また、貫通孔9の大きさは、空洞2A内の気体または液体が本発明の人工乳房1の外部へ漏れ難い大きさである。
ここで、貫通孔9の大きさは、具体的には貫通孔9の貫通方向に対して略直交する方向の長さであり、具体的には例えば0.1〜1mmである。なお、図1には、貫通孔9が便宜的に視認できる大きさで示されている。
【0065】
また、貫通孔9はこのような大きさであり、そして、シリコーンゴムを含んで構成された第1の層2と、シリコーンゴムを含んで構成された第2の層3とに形成されているので、ゴムの収縮または伸長によって、貫通孔9は収縮して閉じ易いと共に、針などで簡単に拡げられて開放し易い。
【0066】
また、貫通孔9は、第1の層2と第2の層3が互いに重なった部分の中で比較的厚い部分に形成される。図1に示す例では、本発明の人工乳房1の周縁部に貫通孔9は形成されているが、貫通孔9の形成箇所は周縁部に限定されないことは勿論である。
例えば、乳首部2Bを貫通して貫通孔9を形成したり、第2の層3の、第1の層2と接する側にシリコーンゴムの塊を作って厚い部分と成し、この塊を貫通して貫通孔9を形成したりすることもできる。
【0067】
また、貫通孔9に、例えば注射器の針や、テニスボール用空気入れの針を挿入して、空洞2Aへ気体または液体を導入することができる。
【0068】
本発明の人工乳房は、必ずしも着色層を備えていなくてもよく、例えば、第1の層または第2の層が着色料を含むこともできる。
【0069】
しかし、本発明の人工乳房が着色層を備えていれば、外部彩色とすることができ、第1の層または第2の層が着色料を含む内部彩色の場合よりも人間の肌の質感に近似させることができるので好ましい。
【0070】
また、本発明の人工乳房は、必ずしもカバー層を備えていなくてもよい。
しかし、本発明の人工乳房がカバー層を備えていれば、近似させた人間の肌の質感を維持し易いので好ましい。
【0071】
また、本発明の人工乳房は、必ずしも反射抑制層を備えていなくてもよい。
しかし、本発明の人工乳房が反射抑制層を備えていれば、さらに人間の肌の質感に近似させることができるので好ましい。
【0072】
また、本発明の人工乳房は、必ずしもポリエチレンシート層すなわち薄膜層を備えていなくてもよい。
【0073】
しかし、本発明の人工乳房が薄膜層を備えていれば、薄膜層が物質を遮断できるので、人工乳房の外部から物質が第1の層や第2の層に入り込まないようにしたり、第1の層または第2の層に含まれている物質が人工乳房の外部へ漏れ出ないようにしたりすることができ、好ましい。
特に、第1の層または第2の層に入り込んだ角質やリンなどの物質が粘着層へ移行して入り込んでしまうと、粘着層の粘着力が低下してしまうので、薄膜層によって粘着層の粘着力低下を抑制できる。
【0074】
また、本発明の人工乳房は、本発明の人工乳房を人間の胸部に装着できるのであれば、必ずしも粘着層を備えていなくてもよく、他の接着剤を用いて本発明の人工乳房を人間の胸部に装着することもできる。
しかし、本発明の人工乳房が粘着層を備えていれば、人体に対する本発明の人工乳房の接着力を向上できるので好ましい。
【0075】
また、本発明の人工乳房において、必ずしも貫通孔は形成されていなくてもよいが、貫通孔が形成されていれば、貫通孔を通して、本発明の人工乳房の外部から第1の層の内部に形成された空洞へ気体または液体を導入し、導入された気体または液体を空洞内に、とどめておくことができるので好ましい。
【0076】
図2(a)は、本発明を適用した人工乳房の第2の実施形態の概略平面図であり、図2(b)は、図2(a)に示す人工乳房をA−A線に沿って切断したときの乳首領域付近の概略部分断面図である。
【0077】
図2に示す本発明の第2の実施形態の人工乳房1は、第1の層2に乳首部が設けられておらず、着色層41が、乳首を表示した乳首領域41Aを有し、乳首領域41Aは着色層41の他の領域と略同一面内に位置する点で、図1に示す本発明の第1の実施形態の人工乳房1と異なる。
なお、その他の点では、本発明の第2の実施形態の人工乳房は、本発明の第1の実施形態の人工乳房と同じである。
【0078】
ここで、乳首領域41Aは、乳頭領域41Aaと、乳頭領域41Aaの周囲に示された乳輪領域41Abとで構成されている。
【0079】
図2に示すように、本発明の第2の実施形態の人工乳房1において、乳首領域41Aは着色層41の他の領域と略同一面内に位置しており、突出していないので、本発明の第2の実施形態の人工乳房1を装着することで、服を通して見ても乳首が目立たないようにすることができる。
【0080】
図3は、本発明を適用した人工乳首の一例を示す概略断面図である。
図3に示す本発明の人工乳首11は、本体層12を備える。
ここで、本体層12は、第1の本体構成層12Aと、第2の本体構成層12Bと、第3の本体構成層12Cとで構成されている。
【0081】
また、第1の本体構成層12Aは、シリコーンゴムと、粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成されている。
また、第1の本体構成層12Aの一方側の一部には、突起した乳頭部12Aaが一体的に設けられている。
【0082】
また、このような構成の第1の本体構成層12Aの柔らかさは、このような増粘剤を含まないシリコーンゴム層の柔らかさよりも柔らかく、また、その柔らかさは少なくとも2年間は持続する。
【0083】
また、第1の本体構成層12Aに使用されるシリコーンゴムとしては、様々なシリコーンゴムを使用することができるが、具体的には例えば、本発明の人工乳房1が備える第1の層2に使用されるシリコーンゴムと同じシリコーンゴムを使用できる。
すなわち、第1の本体構成層12Aに使用されるシリコーンゴムとしては、具体的には例えば、常温における粘度が1500〜6000mPa・sを有するシリコーンゴムが挙げられる。
【0084】
また、第1の本体構成層12Aに使用される増粘剤としては、粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤であれば、特に制限はない。
【0085】
具体的には例えば、本発明の人工乳房1が備える第1の層2に使用される増粘剤と同じ増粘剤を使用できる。
すなわち、第1の本体構成層12Aに使用される増粘剤としては、具体的には例えば、常温における粘度が100〜2500mPa・sを有する増粘剤からなる群から選ばれる、粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤が挙げられる。
【0086】
また、第2の本体構成層12Bは、シリコーンゴムを含んで構成されている。
また、第2の本体構成層12Bは、第1の本体構成層12Aよりも外側に配置されており、第1の本体構成層12Aよりも硬い層である。
すなわち、第2の本体構成層12Bは、第1の本体構成層12Aの、乳頭部12Aaが設けられた一方側に積層されている。
【0087】
また、第3の本体構成層12Cは、シリコーンゴムを含んで構成されている。
また、第3の本体構成層12Cは、第1の本体構成層12Aよりも内側に配置されており、第1の本体構成層12Aよりも硬い層である。
【0088】
すなわち、第3の本体構成層12Cは、第1の本体構成層12Aの乳頭部12Aaが設けられた一方側とは反対側に積層されている。
【0089】
また、第2の本体構成層12Bが含むシリコーンゴムと、第3の本体構成層12Cが含むシリコーンゴムは互いに同じであるが、互いに異なっていてもよい。
【0090】
また、本体層12は、シリコーンゴムを含んで構成されたシリコーンゴム層、例えば人工乳房に取付可能である。
【0091】
ここで、シリコーンゴムを含んで構成されたシリコーンゴム層に取付可能な本体層12によって、本発明の人工乳首11を、内部に空洞が形成された中空タイプの人工乳房や、内部に空洞は形成されておらずシリコーンゴムが隙間なく存在する充填タイプの人工乳房に取付けることができる。
【0092】
また、本発明の人工乳首11を、人体に取付けることもできる。
【0093】
また、本発明の人工乳首11は、粘着層15を備える。
ここで、粘着層15は、シリコーンゲルを含んで構成されており、本体層12の最も外側に配置された第3の本体構成層12Cに着脱可能に配置される。
【0094】
また、本発明の人工乳首11を人体に取付ける場合には、本発明の人工乳首11は粘着層15を備えるようにすることができる。
また、本発明の人工乳首11を人工乳房に取付ける場合には、本発明の人工乳首11は粘着層15を備えないようにして、本発明の人工乳首11を半永久的に取付けるために接着剤などを使用するようにすることができる。
【0095】
また、本発明の人工乳首11は、外被層13を備える。
ここで、外被層13は、本体層12よりも外側に配置されている。すなわち、外被層13は、第2の本体構成層12Bの、第1の本体構成層12Aとは反対側に積層されている。
また、第2の本体構成層12Bの、外被層13が積層される部分は、本発明の人工乳首11を人工乳房に取付けたときに表面側に位置することになる部分である。
【0096】
また、外被層13は、着色層131と、カバー層132と、反射抑制層133とで構成されている。
【0097】
ここで、着色層131は、着色料、具体的には例えば顔料を含んで構成されている。
また、着色層131は、第2の本体構成層12Bの、第1の本体構成層12Aとは反対側に積層されている。
【0098】
また、カバー層132は、着色層131の剥離を抑制可能である。
また、カバー層132は、着色層131よりも外側に配置されている。すなわち、カバー層132は、着色層131の、第2の本体構成層12Bとは反対側に積層されている。
【0099】
また、反射抑制層133は、カバー層132よりも外側に配置されている。すなわち、反射抑制層133は、カバー層132の、着色層131とは反対側に積層されている。
【0100】
また、本発明の人工乳首11は、薄皮部14を備える。
ここで、薄皮部14は、第1の本体構成層12Aの縁部と、第2の本体構成層12Bの縁部と、第3の本体構成層12Cの縁部とで構成されており、透明または半透明と成るほど薄い部分である。
【0101】
また、薄皮部14は、本体層12と一体的に設けられているが、本体層12とは別体として本体層12の縁部に取付けることもできる。
【0102】
また、本発明の人工乳首11が備える本体層12は、乳頭部12Aaを除くと図3に示すように略平坦形状を有しているが、本体層12は、例えば乳頭部12Aaが設けられた側へ山状に湾曲した形状を有することもできる。
【0103】
また、本発明の人工乳首は、必ずしも粘着層を備えていなくてもよい。
しかし、本発明の人工乳首が粘着層を備えていれば、人体に対する本発明の人工乳首の接着力を向上できるので好ましい。
【0104】
図4は、人体の胸部に装着された、本発明を適用した第1の実施形態の人工乳房の概略断面図である。
図4に示すように、本発明の第1の実施形態の人工乳房1は、ポリエチレンシート層6と人間の胸部8との間に粘着層7を挟んだ状態で、胸部8に装着される。
【0105】
また、本発明の第1の実施形態の人工乳房1を胸部8から取外すときは、例えば本発明の人工乳房1の薄皮部5を指で摘み、本発明の人工乳房1をやや圧縮して粘着層7と胸部8との間に空気を入れるようにしなから引き離す。
【0106】
[実施例1]
第1のシリコーンゴム(ファクター2社製、商品名:VST−05)と硬化剤(ファクター2社製、商品名:VST−05−C)とを混ぜ合わせ、第1のシリコーンゴム混合物を得た。
【0107】
また、粘度300mPa・sを有し、ポリエーテル化合物を含む第1の増粘剤と、粘度1800mPa・sを有し、シリコーンポリエーテル共重合体を含む第2の増粘剤を、第1のシリコーンゴム混合物に添加した。
【0108】
また、第2のシリコーンゴム(ファクター2社製、商品名:VST−50)と硬化剤(ファクター2社製、商品名:VST−50−C)とを混ぜ合わせ、第2のシリコーンゴム混合物を得た。
【0109】
そして、本発明の人工乳房1の第2の層3を形成するために、乳首部を含む人工乳房の外形に対応した形状の窪み部分と窪み部分の周囲に位置する周縁部分が設けられた第1の人工乳房形成用型に、第2のシリコーンゴム混合物を塗布した。
【0110】
また、本発明の人工乳房1の第2の層3を形成するために、隆起部が設けられた第2の人工乳房形成用型にも、第2のシリコーンゴム混合物を塗布した。
【0111】
次に、本発明の人工乳房1の第1の層2を形成するために、第1の人工乳房形成用型に塗布された第2のシリコーンゴム混合物に、第1の増粘剤と第2の増粘剤が添加された第1のシリコーンゴム混合物を塗布した。
【0112】
また、本発明の人工乳房1の第1の層2を形成するために、第2の人工乳房形成用型に塗布された第2のシリコーンゴム混合物にも、第1の増粘剤と第2の増粘剤が添加された第1のシリコーンゴム混合物を塗布した。
【0113】
次に、第1の人工乳房形成用型と第2の人工乳房形成用型とを、シリコーンゴムが塗布された箇所を向かい合わせて互いに貼り合わせた。
【0114】
このとき、第1の人工乳房形成用型の窪んだ部分と、第2の人工乳房形成用型の隆起した部分との間には隙間が存在しており、この隙間が本発明の人工乳房1の第1の層2の内部の空洞と成る。
【0115】
密着させてから最低12時間経過した後、貼り合わされた状態の第1の人工乳房形成用型と第2の人工乳房形成用型を、室温〜70℃の温度範囲で硬化した。
【0116】
硬化が終わった後、第1の人工乳房形成用型から第2の人工乳房形成用型を引き離して、第1の人工乳房形成用型にシリコーンゴム成形物を残した。
【0117】
ここで、第1の人工乳房形成用型と第2の人工乳房形成用型とを貼り合わせて密着した周縁部分によって、本発明の人工乳房1の周縁部の薄皮部分が形成されるが、薄皮部分を全て切り離した後、本発明の人工乳房1の薄皮部5を形成するために、第2のシリコーンゴム混合物を第1の人工乳房形成用型の周縁部分に薄く塗布した。
【0118】
そして、第1の人工乳房形成用型を、室温〜70℃の温度範囲で硬化した。
【0119】
次に、ポリエチレンシート層6を形成するために、第1の人工乳房形成用型のシリコーン成形物に厚さ15μmのポリエチレンシートを配置した。
【0120】
そして、カバー層42を形成するために、シリコーンゴム(ファクター2社製、商品名:VST−50)と硬化剤(ファクター2社製、商品名:VST−50−C)の混合物をポリエチレンシートに塗布した。
【0121】
一方、第1のシリコーンゲル材料(冨田マテックス社製、商品名:GEL−GUM10(A))と第2のシリコーンゲル材料(冨田マテックス社製、商品名:GEL−GUM10(B))を混ぜ合わせ、シリコーンゲル材料混合物を得た。
そして、得られたシリコーンゲル材料混合物と、シリコーンゴム(ファクター2社製、商品名:VST−05)とを質量比10:1で混合して、シリコーン混合物を得た。
【0122】
次に、粘着層7を形成するために、ポリエチレンシートに塗布された、シリコーンゴムと硬化剤の混合物に、シリコーン混合物を塗布し、第1の人工乳房形成用型を、室温〜70℃の温度範囲で硬化した。
【0123】
そして、第1の人工乳房形成用型を取外した。
この時点の本発明の人工乳房1は、内部に空洞2Aが形成された第1の層2と、第1の層2全体を覆った状態で第1の層2の外側部分に積層された第2の層3とを備えている。
また、第1の層2の、空洞2Aとは反対側の湾曲した部分の一部には、突起した乳首部2Bが一体的に設けられている。
【0124】
また、この時点の本発明の人工乳房1はさらに、第2の層3に取付けられていると共に周縁部全体に設けられた薄皮部5と、第2の層3の、第1の層2とは反対側であって略平坦な部分に積層されたポリエチレンシート層6とを備えている。
【0125】
さらに、この時点の本発明の人工乳房1は、ポリエチレンシート層6に積層されたカバー層42と、カバー層42を介してポリエチレンシート層6に積層された粘着層7とを備えている。
【0126】
また、第1の層2を形成した直後の第1の層2の硬さをゴム硬度計「タイプAデュロメータ」で測定したところ、硬さは「28」であった。
また、第2の層3を形成した直後の第2の層3の硬さをゴム硬度計「タイプAデュロメータ」で測定したところ、硬さは「31」であった。
【0127】
また、第1の層2を形成してから約2年後に、第1の層2の硬さをゴム硬度計「タイプAデュロメータ」で再び測定したところ、硬さは「29」であり、柔らかさが持続していることを確認した。
【0128】
また、得られた本発明の人工乳房1に様々な角度から力を加えて変形させても不自然なシワは生じなかった。
【0129】
次に、筆を用いて着色料を、第2の層3の、第1の層2とは反対側であって湾曲した部分に塗布した。
着色料を塗布された本発明の人工乳房1を、室温〜70℃の温度範囲で硬化して着色層41を形成した。
【0130】
そして、シリコーンゴム(ファクター2社製、商品名:VST−50)と硬化剤(ファクター2社製、商品名:VST−50−C)の混合物を、着色層41の、第2の層3とは反対側に塗布した。
塗布後、本発明の人工乳房1を、室温〜70℃の温度範囲で硬化してカバー層42を形成した。
【0131】
さらに、シクロヘキサンを含むアセトキシ分散剤(ファクター2社製、製品コード:MD−564)とシリコーン接着剤(ファクター2社製、商品名:A−564)の混合物を、カバー層42の、着色層41とは反対側に塗布した。
塗布後、本発明の人工乳房1を、室温〜70℃の温度範囲で硬化して反射抑制層43を形成した。
【0132】
得られた本発明の人工乳房1は、着色層41に基づく外部彩色によって人間の肌の質感に近似したものとなり、また、カバー層42によって、近似させた人間の肌の質感を維持し易くなり、さらに、反射抑制層43によって本発明の人工乳房1の表面の光の反射が抑えられ、より一層、人間の肌の質感に近似したものとなっていた。
【0133】
[実施例2]
第1のシリコーンゴム(ファクター2社製、商品名:VST−05)と硬化剤(ファクター2社製、商品名:VST−05−C)とを混ぜ合わせ、第1のシリコーンゴム混合物を得た。
【0134】
さらに、粘度300mPa・sを有し、ポリエーテル化合物を含む第1の増粘剤と、粘度1800mPa・sを有し、シリコーンポリエーテル共重合体を含む第2の増粘剤を、第1のシリコーンゴム混合物に添加した。
【0135】
また、第2のシリコーンゴム(ファクター2社製、商品名:VST−50)と、硬化剤(ファクター2社製、商品名:VST−50−C)とを混ぜ合わせ、第2のシリコーンゴム混合物を得た。
【0136】
そして、本発明の人工乳首11の本体層12の第2の本体構成層12Bを形成するために、乳頭部を含む人工乳首の外形に対応した形状の窪み部分と窪み部分の周囲に位置する周縁部分が設けられた人工乳首形成用型に、第2のシリコーンゴム混合物を塗布した。
【0137】
次に、本発明の人工乳首11の本体層12の第1の本体構成層12Aを形成するために、人工乳首形成用型に塗布された第2のシリコーンゴム混合物に、第1の増粘剤と第2の増粘剤が添加された第1のシリコーンゴム混合物を塗布した。
【0138】
また、本発明の人工乳首11の本体層12の第3の本体構成層12Cを形成するために、第1の増粘剤と第2の増粘剤が添加された第1のシリコーンゴム混合物に、第2のシリコーンゴム混合物を塗布した。
【0139】
次に、第1の増粘剤と第2の増粘剤が添加された第1のシリコーンゴム混合物と、第2のシリコーンゴム混合物とが塗布された人工乳首形成用型を、シリコーンゴム混合物を室温〜70℃の温度範囲で硬化した。
【0140】
一方、第1のシリコーンゲル材料(冨田マテックス社製、商品名:GEL−GUM10(A))と第2のシリコーンゲル材料(冨田マテックス社製、商品名:GEL−GUM10(B))を混ぜ合わせ、シリコーンゲル材料混合物を得た。
そして、得られたシリコーンゲル材料混合物と、シリコーンゴム(ファクター2社製、商品名:VST−05)とを質量比10:1で混合して、シリコーン混合物を得た。
【0141】
次に、粘着層15を形成するために、本体層12の第3の本体構成層12Cに、シリコーン混合物を塗布し、人工乳首形成用型を、室温〜70℃の温度範囲で硬化した。
【0142】
硬化が終わった後、人工乳首形成用型を取外した。
この時点の本発明の人工乳首11は本体層12を備えており、本体層12は、第1の本体構成層12Aと、第2の本体構成層12Bと、第3の本体構成層12Cとで構成されている。
【0143】
すなわち、第1の本体構成層12Aの一方側の一部には、突起した乳頭部12Aaが一体的に設けられている。
また、第2の本体構成層12Bは、第1の本体構成層12Aの、乳頭部12Aaが設けられた一方側に積層されている。
さらに、第3の本体構成層12Cは、第1の本体構成層12Aの乳頭部12Aaが設けられた一方側とは反対側に積層されている。
【0144】
また、本体層12を形成した直後の本体層12の硬さをゴム硬度計「タイプAデュロメータ」で測定したところ、硬さは「27」であった。
また、本体層12を形成して約2年後に、本体層12の硬さをゴム硬度計「タイプAデュロメータ」で再び測定したところ、硬さは「28」であり、柔らかさが持続していることを確認した。
【0145】
次に、筆を用いて着色料を、第2の本体構成層12Bの、第1の本体構成層12Aとは反対側に塗布した。
着色料を塗布された本発明の人工乳首11を、室温〜70℃の温度範囲で硬化して着色層131を形成した。
【0146】
そして、シリコーンゴム(ファクター2社製、商品名:VST−50)と硬化剤(ファクター2社製、商品名:VST−50−C)の混合物を、着色層131の、第2の本体構成層12Bとは反対側に塗布した。
塗布後、本発明の人工乳首11を、室温〜70℃の温度範囲で硬化してカバー層132を形成した。
【0147】
さらに、シクロヘキサンを含むアセトキシ分散剤(ファクター2社製、製品コード:MD−564)とシリコーン接着剤(ファクター2社製、商品名:A−564)の混合物を、カバー層132の、着色層131とは反対側に塗布した。
塗布後、本発明の人工乳首11を、室温〜70℃の温度範囲で硬化して反射抑制層133を形成した。
【0148】
得られた本発明の人工乳首11は、着色層131に基づく外部彩色によって人間の肌の質感に近似したものとなり、また、カバー層132によって、近似させた人間の肌の質感を維持し易くなり、さらに、反射抑制層133によって本発明の人工乳首11の表面の光の反射が抑えられ、より一層、人間の肌の質感に近似したものとなっていた。
【0149】
以上のように、本発明の人工乳房は、シリコーンゴムと粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成された第1の層を備えているので、このような増粘剤を含まない人工乳房よりも柔らかい上に、その柔らかさを長期間持続させることができる。
【0150】
また、本発明の人工乳房は、シリコーンゴムと粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成された第1の層と、第1の層よりも外側に配置されており、第1の層よりも硬い第2の層とによって、内側から外側へ向けて段階的に硬くなっているので、外部から力を付与されても不自然なシワを生じ難い。
【0151】
従って、本発明の人工乳房は、人間の乳房と比べて不自然になり難い。
【0152】
また、本発明の人工乳房はその柔らかさから、ブラジャーに入れられても柔軟に形を変えることができ、胸元の谷間ができるようになる。
【0153】
また、本発明の人工乳首も、シリコーンゴムと粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成された本体層を備えているので、このような増粘剤を含まない人工乳首よりも柔らかい上に、その柔らかさを長期間持続させることができる。
【0154】
また、本発明の人工乳首は着色層を備えており、この着色層は本体層よりも外側に配置されており、着色料を含んで構成されているので、外部彩色とすることができ、シリコーンゴムが着色料を含む内部彩色の場合よりも人間の肌の質感に近似させることができる。
【0155】
さらに、本発明の人工乳首はカバー層を備えており、このカバー層は着色層よりも外側に配置されており、着色層の剥離を抑制可能であるので、近似させた人間の肌の質感を維持できる。
【0156】
また、本発明の人工乳首は反射抑制層を備えており、この反射抑制層はカバー層よりも外側に配置されており、カバー層または着色層の光の反射を抑制可能であるので、さらに人間の肌の質感に近似させることができる。
【0157】
従って、本発明の人工乳首は、主に外観の点で人間の乳首と比べて不自然になり難い。
【符号の説明】
【0158】
1 人工乳房
2 第1の層
2A 空洞
2B 乳首部
3 第2の層
4 外被層
41 着色層
41A 乳首領域
41Aa 乳頭領域
41Ab 乳輪領域
42 カバー層
43 反射抑制層
5 薄皮部
6 ポリエチレンシート層
7 粘着層
8 胸部
9 貫通孔
11 人工乳首
12 本体層
12A 第1の本体構成層
12Aa 乳頭部
12B 第2の本体構成層
12C 第3の本体構成層
13 外被層
131 着色層
132 カバー層
133 反射抑制層
14 薄皮部
15 粘着層
【要約】
人工乳房1は、第1の層2と、第2の層3と、外被層4とを備える。第1の層2は、シリコーンゴムと、粘度が互いに異なる少なくとも2種類の増粘剤との混合物を含んで構成されている。第1の層2の内部には空洞2Aが形成されている。第2の層3は、第1の層2よりも硬い層であり、第1の層2全体を覆った状態で第1の層2の外側部分に積層されている。外被層4は、第2の層3の、第1の層2とは反対側であって湾曲した部分に積層されている。外被層4は、着色層41と、カバー層42と、反射抑制層43とで構成されている。カバー層42は、着色層41よりも外側に配置され、反射抑制層43は、カバー層42よりも外側に配置されている。
図1
図2
図3
図4
図5