【実施例1】
【0016】
図1において、Aは容器、Bは容器Aに装着されるキャップ本体、Cはヒンジ、DはヒンジCを介してキャップ本体Bに開閉可能に取り付けられた蓋体である。
容器Aは、上部に口部1を有し、口部1の外周面には、嵌合突条2が設けられている。
【0017】
キャップ本体Bは、
図1および
図2に示すように、容器Aの口部1に装着される装着部3と、装着部3の内縁上端から内方に延設され、口部1の開口を封鎖する段差の形成された基壁4と、基壁4を貫通する注出口の周囲から立設される注出筒5と、注出筒5の下端部5aに連設される流量調整機構Eとを備えている。
注出筒5の内周は、下部が縮径され、段部5bが設けられ、段部5bの断面形状は、内方に向けて緩やかな下り勾配の傾斜面に形成されている。
また、注出筒5は、内容液を注ぎ易くするために、本実施例では、ヒンジCと反対側(注出側)は、ヒンジC側よりも高く形成され、リップ部5cは、ラッパ状に広がっている。
【0018】
装着部3は、周縁に係止突条6が設けられ蓋体Dと係合する環状の蓋係合部7と、蓋係合部7の内周縁から垂設される内筒8と、蓋係合部7の外周縁から垂設される外周壁部9とから構成されている。
外周壁部9は、内周下部に容器Aの口部1の嵌合突条2と係合する係合突部10が設けられている。
【0019】
外周壁部9のヒンジCの左右いずれかの近傍には、
図2に示すように、外周面に平面視で略V字状の外周切り込み部11が下端部に薄肉底壁12を残して上方から切り込まれている。
係合突部10の外周切り込み部11に対応する位置には、内周切り込み部が縦方向に刻設され、縦方向引き裂きラインが形成される。
【0020】
外周切り込み部11のヒンジC側では、端面11aの内周側の上部の薄肉部を隔てた位置を起点として円周方向に延びるように、スリット溝13が上方から凹設され、本実施例では、端面11aを始点として、約305°にわたって延びている。
また、縦方向引き裂きラインに隣接するスリット溝13の起点を引き裂き開始点として、スリット溝13の底面14の内周側には、外周壁部9と蓋係合部7を連結する薄肉の連結部15が設けられ、周方向引き裂きラインが円弧状に延びるように形成されている。
【0021】
本実施例では、基壁4は、装着部3の内周上端から延びる下壁部4aと、下壁部4aの内側端から内方に向かって上方に傾斜して延びる傾斜部4bと、傾斜部4bの内側端から注出筒5の外周下端に連設した上壁部4cとによって段差が形成されており、傾斜部4bの外縁には垂直に係合面4dが形成され、下壁部4aの上面の内側縁には、内側面が係合面4dに連続する係合凹所16が周設されている。
【0022】
流量調整機構Eは、
図1および
図2に示すように、注出筒5の下端部5aから内方にわずかに傾斜して垂設されるとともに、下端がヒンジCと反対側からヒンジC側に向かって下方へわずかに傾斜するように形成された周壁20と、周壁20の下端部内方に延設され、ヒンジCと反対側からヒンジC側に向かって下方へわずかに傾斜する平板とした底壁21とを備えている。
周壁20には、ヒンジCと反対側の中央部から両側に向かい所定の範囲まで、間隔をおいて、縦方向にスリット状に形成される複数の周壁開孔22が配設され、ヒンジC側には、少なくとも1つ、周壁開孔22と同じ開口面積の空気置換孔23が設けられている。
また、底壁21には、注出側に偏って、少なくとも1つの底壁開孔24が設けられている。
【0023】
注出筒5の段部5bの内側には、注出筒5の内周と所定間隔を隔て同心円状に、シール筒挟持部として、所定間隔で配置された凸状挟持部26が立設され、凸状挟持部26が存在しない箇所は、切欠傾斜部27となっている。
さらに、基壁4のヒンジC側には、係合面4dに沿って平面視で円弧状に形成された案内凸部28が立設されている。
【0024】
蓋体Dは、
図1および
図2に示すように、ヒンジCを介してキャップ本体Bの外周壁部9の外周上端に、回動自在に取着されており、頂壁30と、頂壁30の周縁部から垂設された側周壁31とを備えている。
頂壁30は、内面から、閉蓋時に注出筒5の内周面に挿入されて密封状態とするシール筒32と、シール筒32の外側に位置し、注出筒5より大径の外筒33とが垂設されている。
【0025】
外筒33は、先端部33aが、閉蓋状態でキャップ本体Bの基壁4の係合凹所16に挿入されるとともに、下面が係合凹所16の底面に近接する高さに形成されているが、当接されていても構わない。
【0026】
側周壁31の下端部は、内周側に、キャップ本体Bの蓋係合部7の内周側と係合する係止凸部34が垂設され、中央に、蓋係合部7の係止突条6と係合して閉蓋状態を維持する係合凹部35が周設されている。
側周壁31のヒンジCと反対側の外周には、周方向に円弧状の把手部36が延設され、把手部36の中央部下面には指掛け部37が設けられている。
【0027】
なお、本実施例のヒンジキャップは、抜栓レスキャップであり、使用前の不正開封を防止するために、図示していないが、キャップ本体Bと蓋体Dとの間にシュリンクラベルや封緘部材等が設けられている。
また、本実施例では、抜栓レスキャップの具体例として、ヒンジキャップについて説明したが、本実施例に限らず、キャップ本体と蓋体とを備えるネジキャップであっても構わない。
【0028】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
本実施例のヒンジキャップは、最初に、
図2に示す状態から、蓋体DをヒンジCを介して回動し、キャップ本体Bに被せ、閉蓋する。
【0029】
その際、蓋体Dのシール筒32の外周下部は、キャップ本体Bの注出筒5の内周に密着するとともに、シール筒32の内周下部は、凸状挟持部26の外周に当接し、結果的に、注出筒5と凸状挟持部26は、シール筒32の下部を挟持することになる。
また、閉蓋途中に、蓋体Dの外筒33は、ヒンジC側からキャップ本体Bの基壁4の案内凸部28に向かって下降し、その後、外筒33は、案内凸部28の外周面に案内されながら、外筒33の先端部33aが基壁4の係合凹所16内に挿入されるとともに、先端部33aの内周が係合面4dに当接する。
【0030】
なお、基壁4に立設された案内凸部28は、省略しても構わない。
また、外筒33は、係合凹所16内に挿入される際に、係合面4dと近接していても、当接していても構わない。
【0031】
次に、
図1に示すように、閉蓋したヒンジキャップは、内容液が充填された容器Aの口部1に打栓して装着される。
打栓工程は、装着部3の内筒8と外周壁部9との間に形成された環状溝に容器Aの口部1を当てがい、蓋体Dの上から押圧力が加えられ、外周壁部9の係合突部10が口部1の嵌合突条2を乗り越えて嵌合し、容器Aの口部1が内筒8の外周と外周壁部9の内周、および蓋係合部7とによって挟持されることで装着される。
【0032】
なお、本実施例では、装着部3は、内筒8の外周と外周壁部9の内周、および基壁4とによって容器Aの口部1を狭持するものとしたが、容器Aの口部1の外周に雄ネジを形成するとともに、外周壁部9の内周に雌ネジを形成することによって螺着するものであっても構わない。
【0033】
上述したように、閉蓋状態で、蓋体Dのシール筒32は、キャップ本体Bの注出筒5の内周と、凸状挟持部26の外周とに挟持されることにより、シール筒32は、キャップ本体Bの注出筒5と一体化されており、容器Aの転倒あるいは落下等の衝撃により、蓋体Dに外力が加わり、蓋体Dに上下あるいは左右方向のずれが生じた場合でも、蓋体Dの動きに対する影響が緩和され、容器Aの気密性を保つことができる。
【0034】
本実施例のヒンジキャップは、閉蓋した状態で、落下等の衝撃により、蓋体Dに上側から押圧力が加えられると、蓋体Dがキャップ本体Bに対して押し込まれるが、蓋体Dの側周壁31の下端部に設けられた係止凸部34は、キャップ本体Bの蓋係合部7の内周側と係合していることにより、蓋体Dの側周壁31の下端部が外側に広がって変形することを防止できる。
【0035】
また、落下等の衝撃により、蓋体Dの側方から押圧力が加えられても、外筒33の先端部33aの内側面が基壁4の係合面4dに密着して固定されているので、衝撃で蓋体Dと一緒にシール筒32が動いてしまうことを防止することができる。
このように、本実施例のヒンジキャップは、落下等に受ける衝撃がキャップ本体Bの注出筒5の内側に凸状挟持部26を設けたことで抑えられ、蓋体Dのシール筒32とキャップ本体Bの注出筒5との密着に影響を及ぼさないので、密着が外れたり、シール筒32と注出筒5が互いに傷付けあったりすることを防止することができる。
【0036】
容器A内の内容液を初めて使用するために、ヒンジキャップを最初に開蓋する際には、図示しないが、キャップ本体Bと蓋体Dとの間に設けられたシュリンクラベルや封緘部材を取り外す必要がある。
【0037】
次に、蓋体Dの指掛け部37に手指を掛け、把手部36を持ち上げると、蓋体Dのシール筒32がキャップ本体Bの注出筒5と凸状挟持部26とによる挟持状態から外されることにより、容器Aを傾けただけで、容易に注出筒5から容器A内の内容液を注出することができる。
また、蓋体Dは、側周壁31に設けられた係合凹部35のヒンジCと反対側が薄肉に形成されているので、開蓋時に把手部36を持ち上げると、側周壁31の係合凹部35が変形して、蓋係合部7の係止突条6に対する抵抗が少なくなり、スムースに開蓋することができる。
【0038】
本実施例では、キャップ本体Bの注出筒5の下端部5aに流量調整機構Eが設けられているので、容器A内の内容液は、流量が調整されて注出筒5から注出される。
なお、流量調整機構Eは、必ずしも設ける必要がない。
【0039】
内容液の注出が終わると、注出筒5内の内容液は、段部5bおよび切欠傾斜部27から流量調整機構Eを通して容器A内に戻されるとともに、周壁20内周を伝って底壁21上面に落ち、そしてヒンジC側に向かってわずかに傾斜した底壁21により、傾斜面に沿って流れ、ヒンジC側の空気置換孔23を介して容器A内に戻されるので注出筒5および流量調整機構Eの中に内容液がほとんど残らない。
このように、注出筒5の段部5bに切欠傾斜部27を設けたので、注出筒5と凸状狭持部26との間に内容液が溜まりづらく、蓋体Dの開閉時に液跳ねを防止することができる。
【0040】
蓋体Dをキャップ本体Bに再び閉蓋することで、蓋体Dのシール筒32の外周下部がキャップ本体Bの注出筒5の内周に密着するとともに、シール筒32の内周下部が凸状挟持部26に当接し、キャップ本体B内を密封することができ、ヒンジキャップは、繰り返し蓋体Dを開閉して使用することができる。
【0041】
本実施例のヒンジキャップは、容器A内の内容液を全部使用した後、容器Aの口部1から分別して廃棄することができる。
その際には、ヒンジキャップを開蓋し、蓋体Dを指で把持して外方に引っ張ると、外周壁部9のヒンジCとの連設部位が引っ張られて変形し、縦方向引き裂きラインが破断され、さらに蓋体Dを引っ張ると、周方向引き裂きラインを形成する連結部15が破断を始める。連結部15の破断が進行すると、蓋体Dがキャップ本体Bから離れていく。
スリット溝13の終端部まで連結部15の切断が完了し、さらに蓋体Dを引っ張ると、キャップ本体Bと容器Aの口部1との嵌合が外され、ヒンジキャップと容器Aとを分別廃棄することができる。
【実施例2】
【0042】
次に、上記第1実施例のキャップ本体Bのシール筒挟持部の形状を変更した第2実施例について、図を参照して説明する。
以下、第1実施例と同一の構成部分には同一の符号を付し、栓体の変更部分に新たな符号を付し、相違点を中心に説明する。
【0043】
図3において、Aは容器、Baは容器Aに装着されるキャップ本体、Cはヒンジ、DはヒンジCを介してキャップ本体Baに開閉可能に取り付けられた蓋体である。
【0044】
キャップ本体Baは、容器Aの口部1に装着される装着部3と、装着部3の内縁上端から内方に延設され、口部1の開口を封鎖する段差の形成された基壁4と、基壁4を貫通する注出口の周囲から立設される注出筒5と、注出筒5の下端部5aに連設される流量調整機構Eaとを備えている。
注出筒5の内周は、下部が縮径され、段部5bが設けられ、段部5bの断面形状は、内方に向けて緩やかな下り勾配の傾斜面に形成されている。
【0045】
図3および
図4に示すように、流量調整機構Eaは、第1実施例と同様の構造を有し、注出筒5の下端部5aから垂設された周壁20と、周壁20の下端部内方に延設された底壁21とを備えている。
周壁20には、ヒンジCと反対側の中央部から両側に向かい所定の範囲まで、間隔をおいて、縦方向にスリット状に形成される複数の周壁開孔22が配設され、ヒンジC側には、少なくとも1つ、周壁開孔22と同じ開口面積の空気置換孔23が設けられている。
また、底壁21には、注出側に偏って、少なくとも1つの底壁開孔24が設けられている。
【0046】
注出筒5の段部5bの内側には、注出筒5の内周と所定間隔を隔て、シール筒挟持部として、円周状に配置された環状挟持部29が立設され、環状挟持部29の外側、すなわち注出筒5の段部5bには、液戻し孔25が流量調整機構Eaの周壁開孔22または空気置換孔23に連通して設けられている。
なお、本実施例では、液戻し孔25は、90°間隔で4箇所設けられているが、液戻し孔25は、少なくとも1箇所あれば、いくつ設けても構わない。
【0047】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
本実施例のヒンジキャップは、最初に、
図4に示す状態から蓋体DをヒンジCを介して回動し、キャップ本体Baに被せ、閉蓋する。
【0048】
その際、蓋体Dのシール筒32の外周下部は、キャップ本体Baの注出筒5の内周に密着するとともに、シール筒32の内周下部は、環状挟持部29の外周に当接し、結果的に、注出筒5と環状挟持部29は、シール筒32の下部を挟持することになる。
【0049】
次に、
図3に示すように、閉蓋したヒンジキャップは、内容液が充填された容器Aの口部1に打栓して装着される。
【0050】
上述したように、閉蓋状態で、蓋体Dのシール筒32は、キャップ本体Baの注出筒5の内周と、環状挟持部29の外周とに挟持されることにより、シール筒32は、キャップ本体Baの注出筒5と一体化されており、容器Aの転倒あるいは落下等の衝撃により、蓋体Dに外力が加わり、蓋体Dに上下あるいは左右方向のずれが生じた場合でも、蓋体Dの動きに対する影響が緩和され、容器Aの気密性を保つことができる。
【0051】
本実施例では、キャップ本体Baの注出筒5の下端部5aに流量調整機構Eaが設けられているので、容器A内の内容液は、流量が調整されて注出筒5から注出される。
なお、流量調整機構Eaは、第1実施例と同様に、必ずしも設ける必要はない。
【0052】
内容液の注出が終わると、注出筒5内に残った内容液は、段部5bに形成された液戻し孔25から流量調整機構Eaの周壁開孔22を通して容器A内に戻されるとともに、流量調整機構Ea内に残った内容液は、周壁20内周を伝って底壁21上面に落ち、そしてヒンジC側に向かってわずかに傾斜した底壁21により、傾斜面に沿って流れ、ヒンジC側の空気置換孔23を介して容器A内に戻されるので注出筒5および流量調整機構Eaの中に内容液がほとんど残らない。
このように、注出筒5の段部5bに液戻し孔25を設けたので、注出筒5と環状狭持部29との間に内容液が溜まりづらく、蓋体Dの開閉時に液跳ねを防止することができる。
その他の構成の作用効果については、第1実施例と同様である。