特許第6942573号(P6942573)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6942573
(24)【登録日】2021年9月10日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】二次電池、電池パック及び車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/36 20100101AFI20210916BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20210916BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20210916BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20210916BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20210916BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20210916BHJP
【FI】
   H01M10/36 A
   H01M4/58
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M4/485
   H01M4/48
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-172247(P2017-172247)
(22)【出願日】2017年9月7日
(65)【公開番号】特開2018-156926(P2018-156926A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年8月8日
(31)【優先権主張番号】特願2017-53457(P2017-53457)
(32)【優先日】2017年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】堀田 康之
(72)【発明者】
【氏名】松野 真輔
(72)【発明者】
【氏名】関 隼人
(72)【発明者】
【氏名】高見 則雄
【審査官】 川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/114141(WO,A1)
【文献】 特表2014−523072(JP,A)
【文献】 特開2011−044312(JP,A)
【文献】 特開2015−195202(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/129408(WO,A1)
【文献】 特開2002−063934(JP,A)
【文献】 特開2017−183167(JP,A)
【文献】 特開2009−099285(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/094689(WO,A1)
【文献】 特表2016−519842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05−10/0587
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液と、
前記電解液に浸漬された正極及び負極を含み、
前記電解液は、水、電解質塩及び少なくとも1種の比誘電率42以下の有機溶媒を含み、
体積分率で換算したときの比誘電率が78.50以下であって、
前記負極の負極活物質は、N吸着によるBET法での比表面積が、3m/g以上200m/g以下で、
前記電解液の内、前記有機溶媒の比率が50体積%よりも少なく、平均作動電圧が、1.89V以上となる二次電池。
【請求項2】
前記電解液の比誘電率は、77.93以下である請求項1記載の二次電池。
【請求項3】
前記電解質塩は1〜12Mの濃度で溶解される請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記比誘電率42以下の有機溶媒が、アルコール類、非プロトン性極性溶媒からなる群よ
り選択される少なくとも1種である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記電解質塩が、リチウム塩である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記負極は活物質を含み、当該活物質が、チタン酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブチタン酸化物及びナトリウムニオブチタン酸化物の少なくとも1種以上を含む請求項1乃至5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記正極は活物質を含み、当該活物質が、LiFePO、LiMn、LiCoOから少なくとも1種以上から選ばれる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記電解液の中のリチウムイオンの濃度は、6M〜10Mである、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の二次電池を、1個または複数個含む電池パック。
【請求項10】
通電用の外部端子と、保護回路とを更に含む請求項9に記載の電池パック。
【請求項11】
複数個の前記二次電池が、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続
されている請求項9または10に記載の電池パック。
【請求項12】
請求項9乃至11のいずれか1項に記載の電池パックを具備した車両。
【請求項13】
前記電池パックは、前記車両の動力の回生エネルギーを回収するものである請求項12
に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二次電池、電池パック及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
負極活物質として炭素材料又はリチウムチタン酸化物を、正極活物質としてニッケル、
コバルト及びマンガン等を含有する層状酸化物を用いた非水電解質電池、特にリチウム二
次電池が、幅広い分野における電源として既に実用化されている。このような非水電解質
電池の形態は、各種電子機器用などの小型の物から、電気自動車用などの大型の物まで多
岐にわたる。これらリチウム二次電池の電解液には、ニッケル水素電池又は鉛蓄電池と異
なり、エチレンカーボネートやメチルエチルカーボネートなどが混合された非水系の有機
溶媒が用いられている。これらの溶媒を用いた電解液は、水系電解液よりも耐酸化性およ
び耐還元性が高く、溶媒の電気分解が起こりにくい。そのため、非水系の二次電池では、
高い起電力を実現することができる。しかし、有機溶媒の多くは可燃性物質であるため、
有機溶媒を用いた二次電池の安全性を向上させるために種々の対策が必要になる。
【0003】
一方で、水系電解液を用いると有機溶媒を用いた場合に比べて、安全性の高い二次電池
を提供できる。しかし、水系電解液では、電池の充放電を実施する電位範囲を、溶媒とし
て含まれている水の電気分解反応が起こらない電位範囲に留める必要があるため、電池と
して十分なエネルギー密度は得られにくく、充放電効率が低かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−127848号公報
【特許文献2】特許第4691966号
【特許文献3】特開2016−146341号公報
【特許文献4】特開2014−63596号公報
【特許文献5】特許第5861635号
【特許文献6】特許第5055390号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of The Electrochemical Society, 158 (12) A1490-A1497 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、充放電効率を改善し、安全性の高い水系電解液を用いた二次電池
を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの実施形態によると、二次電池が提供される。
【0008】
この二次電池は、電解液と、電解液に浸漬された正極及び負極を含み、電解液は、水と、電解質塩と、少なくとも1種の比誘電率42以下の有機溶媒とを含み、電解液を分留し、体積分率で換算したときの比誘電率が78.50以下であって、前記負極の負極活物質は、N吸着によるBET法での比表面積が、3m/g以上200m/g以下で、前記電解液の内、前記有機溶媒の比率が50体積%よりも少なく、平均作動電圧が、1.89V以上となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る二次電池の一例を概略的に示す断面図。
図2図1に示す二次電池のII−II線に沿った断面図。
図3】第1の実施形態に係る二次電池の他の例を概略的に示す部分切欠斜視図。
図4図3のA部の拡大断面図
図5】第1の実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図。
図6】第2の実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す斜視図。
図7】第2の実施形態に係る電池パックの他の例を概略的に示す分解斜視図。
図8図7に示す電池パックの電気回路を示すブロック図。
図9】第3の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す断面図。
図10】表2と表3の関係図。
図11】実施例12の車両の構成を概略的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。同じ符号が付されているものは、
互いに対応するものを示す。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚
みと幅との関係、部分間の大きさの比などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。
また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比が異なって表される場
合もある。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る二次電池は、正極と、負極と、電解液とを含んでいる。この電解
液は、水と、電解質塩と、比誘電率42以下の有機溶媒とを含み、体積分率で換算した比
誘電率が78.50以下となるものを用いる。このような特定の比誘電率を有する電解液
を使用することで効率が向上し、発火しない安全性の高い二次電池を提供できる。
【0012】
また、この二次電池は、セパレータと、正極、負極及び電解液を収容する容器とを更に
含むことができる。
【0013】
以下、電解液、負極、正極、セパレータ、及び容器を詳述する。
【0014】
1)電解液
電解液は、水と、電解質塩と、少なくとも1種は比誘電率42以下の有機溶媒とを含ん
でおり、かつ混合溶媒の体積分率に対する加成性から見積もられる比誘電率が78.50
以下となる組成となる。水は、水系溶媒と記載することがある。また、水系溶媒を含んだ
電解液を水系電解液と記載することがある。
【0015】
電解液は、例えば、水系溶媒に有機溶媒を混和させ、電解質塩を溶解させることにより
調製する。電解液の電気分解を抑制するために、LiOH又はLiSOなどを添加し
、pHを調整することができる。pHは、1〜14の範囲内にあることが好ましく、2〜
14の範囲内にあることがより好ましい。また、この電解液に高分子材料を加えてもよい
。高分子材料を加えるとゲル化して、液漏れしにくい電解液を調整できる。高分子材料と
しては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)
、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。
【0016】
上記電解液は、溶質となる電解質塩1molに対し、水系溶媒量が1mol以上である
ことが好ましく、さらに好ましくは、3.5mol以上であることが好ましい。
【0017】
電解液中に水系溶媒が含まれるかどうかは、GC−MS(Gas Chromatog
raphyMass Spectrometry:ガスクロマトグラフィー質量分析法)
測定により確認できる。また、電解液中の塩濃度および水系溶媒量の算出は、例えばIC
P(InductivelyCoupled Plasma)発光分析などで測定するこ
とができる。電解液を規定量はかり取り、含まれる塩濃度を算出することで、モル濃度(
mol/L)を算出できる。また電解液の比重を測定することで、溶質と溶媒のモル数を
算出できる。
【0018】
電解質塩は1〜12Mの濃度で溶解させることが望ましい。ただし、Mは、mol/L
を表す。リチウム二次電池に用いる電解質塩は、例えば、リチウム塩である。リチウム塩
は、例えば、LiCl、LiBr、LiOH、LiSO、LiNO、LiTFSA
(リチウムトリフルオロメタンスルホニルアミド)、LiBETA(リチウムビスペンタ
フルオロエタンスルホニルアミド)、LiFSA(リチウムビスフルオロスルホニルアミ
ド)、LiB[(OCO)]などを含む。リチウム塩の中でもLiClを含むことが好ま
しい。使用するリチウム塩の種類は、1種類であってもよく、2種類以上であってもよい
。電解液中のリチウムイオンの濃度は、例えば、3M以上である。電解液中のリチウムイ
オンの濃度を6M以上にすることで、溶質のイオンと水分子とが溶媒和して、フリーな水
分子が減る。これにより、負極における水系溶媒の電気分解反応を抑制し、負極からの水
素発生を低減させることができるため好ましい。より好ましい濃度は6M〜10Mである
【0019】
上記リチウム塩を溶解した電解液中のアニオン種として、塩素イオン(Cl)、水酸
化物イオン(OH)、硫酸イオン(SO2−)及び硝酸イオン(NO)からなる
群より選ばれる少なくとも1種が存在することが好ましい。
【0020】
その後、電解質塩を水系溶媒に溶解することにより調製される電解液に少なくとも1種
は比誘電率42以下の有機溶媒を例えば、5体積%を混合する。そしてその電解液が体積
分率で換算した比誘電率が78.50以下となるよう調製する。ここで、比誘電率42以
下の有機溶媒を用いる理由は、電極界面と水との接触を妨げることで水分解を抑制する作
用があると考えられ、好ましい範囲は、39以下である。また、体積分率で換算した比誘
電率が78.50以下となるよう調製することで水分解を抑制する効果が顕著に現れ、好
ましい範囲は、77.93以下である。
【0021】
前記水系溶媒の比誘電率とは、体積分率として1体積%以上含む溶媒成分から換算され
た値である。
【0022】
電解液の内、有機溶媒の比率が50体積%よりも少ないほうが好ましい。ただし、有機
溶媒が2種類以上の場合、その有機溶媒の体積%の合計が50体積%よりも少ないほうが
好ましい。有機溶媒が50体積%よりも多いと、高温の時、発火する恐れが生じるためで
ある。
【0023】
比誘電率42以下の有機溶媒は、たとえばメタノール、エタノール、ブタノール、イソ
ブタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ターシャリーブタ
ノール、セカンダリーブチルアルコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオー
ル、2-エチル-1-ヘキサノール、ベンジルアルコールなどのアルコール類、アセトン、
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン
、ジアセトンアルコールなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸se
c-ブチル、酢酸メトキシブチ、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピル、
乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、3-エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル
類、イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、
1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルターシャリーブチルエーテルなどのエ
ーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロ
ピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリ
コールモノメチルエーテルアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビト
ールアセテートなどのグリコール類、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチル
カルビトール、メチルトリグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロ
ピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ヘキシ
ルジグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレ
ングリコールメチルエーテルなどのグリコールエーテル類、モノグライム、ジグライム、
エチルグライム、エチルジグライム、トリグライム、ブチルジグライム、テトラグライム
、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのグライム類、ジメチルホルムアミド、
ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル、プロピ
オニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリ
ル、ラウロニトリル、2-メチルブチロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサン
ニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニ
トリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル
-2-ピロリドン、γ-ブチロラクタムなどの非プロトン性極性溶媒、ガンマブチロラクト
ン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イプシロンカプロラクトンなどの環
状カルボン酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-n-プロピ
ルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n-プロピルイソプロピルカーボネート
、エチルメチルカーボネート、メチル-n-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート
化合物、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルア
ミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジイソプ
ロピルエチルアミンなどのアミン系溶媒などであり、水と混和性のある溶媒が用いられる
。これらの比誘電率42以下の有機溶媒を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いるこ
とができる。また、比誘電率42以下の有機溶媒と比誘電率42を超える有機溶媒とを組
み合わせて用いることもできる。また、比誘電率42以下の有機溶媒と比誘電率42を超
える有機溶媒とを組み合わせて用いることもできる。比誘電率42を超える有機溶媒の例
は、たとえばDMSOや環状カーボネート類である。より好ましい比誘電率が42以下の
有機溶媒の例には、アルコール類、非プロトン性極性溶媒があげられる。
【0024】
電解液の比誘電率は、混合する各溶媒の比誘電率の体積分率から算出される値を加算す
ることで求められる。電解液中に混合する有機溶媒は、FT/IR(FourierTr
ansform Infrared Spectroscopy:フーリエ変換赤外分光法
)等の構造解析分析で構造同定を行い、例えば電解液を分留し、体積分率を求められる、
あるいは、既知の溶媒と等量混合してガスクロマトグラフィーにて分析したガスクロマト
グラムのピーク面積の比から体積分率を求められる。
【0025】
2)負極
負極は、負極集電体と、負極集電体の片面又は両面に担持され、活物質、導電剤及び結
着剤を含む負極活物質層とを有する。
【0026】
負極集電体は、アルミニウム箔、又はMg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiか
ら選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。ア
ルミニウム合金箔は、これら元素を1種類のみ含んでいてもよく、2種類以上含んでいて
もよい。負極集電体は、多孔体又はメッシュなどの他の形態であってもよい。
【0027】
負極活物質層は、負極集電体の少なくとも1つの面上に配置されている。例えば、負極
集電体上の1つの面に負極活物質層が配置されていてもよく、負極集電体上の1つの面と
その裏面とに負極活物質層が配置されていてもよい。
【0028】
負極活物質としては、チタン酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブチタン酸化物、ナ
トリウムニオブチタン酸化物などのチタン含有酸化物を使用することができる。チタン含
有酸化物のLi吸蔵電位は、1V(vs.Li/Li)以上3V(vs.Li/Li
)以下であることが好ましい。負極活物質は、これらチタン含有酸化物を1種、又は2種
以上含むことができる。
【0029】
チタン酸化物は、例えば、単斜晶構造のチタン酸化物、ルチル構造のチタン酸化物、ア
ナターゼ構造のチタン酸化物を含む。各結晶構造のチタン酸化物は、充電前の組成をTi
O2、充電後の組成をLiTiO(xは0≦x≦1)で表すことができる。また、単
斜晶構造のチタン酸化物の充電前構造をTiO(B)と表すことができる。
【0030】
リチウムチタン酸化物は、例えば、スピネル構造のリチウムチタン酸化物(例えば一般
式Li4+xTi12(xは−1≦x≦3))、ラムスデライト構造のリチウムチタ
ン酸化物(例えば、Li2+xTi(−1≦x≦3))、Li1+xTi
0≦x≦1)、Li1.1+xTi1.8(0≦x≦1)、Li1.07+xTi
.86(0≦x≦1)、LiTiO(0<x≦1)などを含む。また、リチウム
チタン酸化物は、異種元素が導入されているリチウムチタン複合酸化物であってもよい。
【0031】
ニオブチタン酸化物は、例えば、LiTiMNb2±β7±σ(0≦a≦5、0
≦b≦0.3、0≦β≦0.3、0≦σ≦0.3、MはFe,V,Mo及びTaよりなる
群から選択される少なくとも1種の元素)で表されるものを含む。
【0032】
ナトリウムニオブチタン酸化物は、例えば、一般式Li2+VNa2―WM1Ti
−y−zNbM214+δ(0≦v≦4、0≦w<2、0≦x<2、0≦y<6、
0≦z<3、−0.5≦δ≦0.5、M1はCs,K,Sr,Ba,Caより選択される
少なくとも1つを含み、M2はZr,Sn,V,Ta,Mo,W,Fe,Co,Mn,A
lより選択される少なくとも1つを含む)で表される斜方晶型Na含有ニオブチタン複合
酸化物を含む。
【0033】
負極活物質として好ましい化合物に、アナターゼ構造のチタン酸化物、単斜晶構造のチ
タン酸化物、スピネル構造のリチウムチタン酸化物が含まれる。これら化合物は、Li吸
蔵電位が1.4V(vs.Li/Li)以上2V(vs.Li/Li)以下の範囲内
にあるため、例えば正極活物質としてのリチウムマンガン酸化物と組み合わせることで、
高い起電力を得ることができる。
【0034】
負極活物質は、例えば粒子の形態で負極に含まれている。負極活物質粒子は、単独の一
次粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子、あるいは、単独の一次粒子と二次粒子の混合
物であり得る。粒子の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、楕円形状、
扁平形状、繊維状等にすることができる。
【0035】
負極活物質の二次粒子の平均粒子径(直径)が、3μm以上であることが好ましく、5
μm以上20μm以下であることがより好ましい。この範囲であると、活物質の表面積が
小さいため、水素発生を抑制する効果を高めることができる。
【0036】
二次粒子の平均粒子径が3μm以上の負極活物質は、例えば、次の方法で得られる。先
ず、活物質原料を反応合成して平均粒子径1μm以下の活物質前駆体を作製する。その後
、活物質前駆体に対し焼成処理を行い、ボールミルやジェットミルなどの粉砕機を用いて
粉砕処理を施す。次いで焼成処理において、活物質前駆体を凝集して粒子径の大きい二次
粒子に成長させる。
【0037】
負極活物質の一次粒子の平均粒子径は1μm以下とすることが望ましい。これにより、
活物質内部でのLiイオンの拡散距離が短くなり、比表面積が大きくなる。そのため、優
れた高入力性能(急速充電)が得られる。一方、平均粒子径が小さいと、粒子の凝集が起こ
りやすくなり、電解液の分布が負極に偏って正極での電解塩から電離したイオン種の枯渇
を招く恐れがある。それ故、負極活物質の一次粒子の平均粒子径の下限値は0.001μ
mであることが好ましい。更に好ましい平均粒子径は、0.1μm以上0.8μm以下で
ある。
【0038】
負極活物質は、N2吸着によるBET法での比表面積が、例えば3m/g以上200m/g以下の範囲内にある。これにより、負極と電解液との親和性を更に高くすることができる。負極の比表面積は3m/g以上50m/g以下の範囲内にあることがより好ましい。負極活物質層は、集電体上に担持された負極活物質、導電剤及び結着剤を含む多孔質の層でありうる。比表面積が3m/g未満であると、粒子の凝集が目立ち、負極と電解液との親和性が低くなる。その結果、負極の界面抵抗が増加するため、出力特性と充放電サイクル特性が低下する。一方、比表面積が50m/gを超えると、電解質塩から電離したイオン種の分布が負極に偏り、正極での電解質塩から電離したイオン種不足を招くため、出力特性と充放電サイクル特性の改善を図れない。
【0039】
負極の多孔度(集電体を除く)は、20〜50%の範囲にすることが望ましい。これに
より、負極と電解液との親和性に優れ、かつ高密度な負極を得ることができる。多孔度の
さらに好ましい範囲は、25〜40%である。
【0040】
導電剤は、集電性能を高め、且つ活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために、必要に
応じて配合される。導電剤の例には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛及
びコークスなどの炭素質物が含まれる。導電剤は、1種類であってもよく、2種類以上を
混合して使用してもよい。
【0041】
結着剤は、活物質、導電剤及び集電体を結着させる作用を有する。結着剤としては、例
えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、セル
ロース系部材、例えばカルボキシルメチルセルロースナトリウム(CMC)、フッ素系ゴ
ム、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂又はその共重合体、ポリアクリル酸及びポリ
アクリロニトリルからなる群より選ばれる少なくとも1つを用いることができるが、これ
らに限定されない。結着剤は、1種類であってもよく、2種類以上を混合して使用しても
よい。
【0042】
負極活物質層における負極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質が70重
量%以上95重量%以下、負極導電剤が3重量%以上20重量%以下、結着剤が2重量%
以上10重量%以下の範囲であることが好ましい。導電剤の配合比が3重量%以上である
と負極の導電性を良好にすることができ、20重量%以下であると導電剤表面での電解液
の分解を低減することができる。結着剤の配合比が2重量%以上であると十分な電極強度
が得られ、10重量%以下であると電極の絶縁部を減少させることができる。
【0043】
負極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、負極活物質、導電剤及び
結着剤を適切な溶媒に懸濁してスラリーを調製する。次いで、このスラリーを負極集電体
の片面又は両面に塗布する。ここで、負極集電体としては、上述した方法で予め被覆層を
形成した負極集電体を用いる。負極集電体上の塗膜を乾燥することにより負極活物質層を
形成する。その後、負極集電体及びその上に形成された負極活物質層にプレスを施す。負
極活物質層としては、負極活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成したものを用い
てもよい。
【0044】
3)正極
正極は、正極集電体と、正極集電体の片面又は両面に担持され、活物質、導電剤及び結
着剤を含む正極活物質層とを有する。
【0045】
正極集電体は、例えば、ステンレス、Al及びTiなどの金属からなる。正極集電体は
、例えば、箔、多孔体又はメッシュの形態である。集電体と電解液との反応による集電体
の腐食を防止するため、集電体表面を異種元素で被覆してもよい。正極集電体は、例えば
Ti箔などの耐蝕性及び耐酸化性に優れたものであることが好ましい。なお、上述した電
解液に使用するリチウム塩としてLi2SO4を使用した場合は、腐食が進行しないことか
ら、正極集電体としてAlを使用してもよい。
【0046】
正極活物質には、リチウムを吸蔵放出可能なものが使用され得る。正極は、1種類の正
極活物質を含んでいてもよく、2種類以上の正極活物質を含んでいてもよい。正極活物質
の例には、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバル
トアルミニウム複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、スピネル型
リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、リチウム
鉄酸化物、リチウムフッ素化硫酸鉄、オリビン結晶構造のリン酸化合物(例えば、Li
FePO(0<x≦1)、LiMnPO(0<x≦1))などが含まれる。オリビ
ン結晶構造のリン酸化合物は、熱安定性に優れている。
【0047】
高い正極電位の得られる正極活物質の例を以下に記載する。例えばスピネル構造のLi
xMn(0<x≦1)、LiMnO(0<x≦1)などのリチウムマンガン複
合酸化物、例えばLiNi1−yAl(0<x≦1、0<y<1)などのリチウ
ムニッケルアルミニウム複合酸化物、例えばLiCoO(0<x≦1)などのリチウ
ムコバルト複合酸化物、例えばLiNi1−y―zCoMn(0<x≦1、0
<y<1、0≦z<1)などのリチウムニッケルコバルト複合酸化物、例えばLiMn
Co1−y(0<x≦1、0<y<1)などのリチウムマンガンコバルト複合酸化
物、例えばLiMn1−yNi(0<x≦1、0<y<2)などのスピネル型リ
チウムマンガンニッケル複合酸化物、例えばLiFePO(0<x≦1)、Li
1−yMnPO(0<x≦1、0≦y≦1)、LiCoPO(0<x≦1)な
どのオリビン構造を有するリチウムリン酸化物、フッ素化硫酸鉄(例えばLiFeSO
F(0<x≦1))が挙げられる。
【0048】
正極活物質は、リチウムコバルト複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物及びオリビ
ン構造を有するリチウムリン酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1つであることが
好ましい。これら活物質は、作動電位が0.2V(vs.Li/Li)以上0.8V(
vs.Li/Li)以下であるため作動電位が高く、また、酸素が発生する平衡電位近
傍に作動電位を有することから、安定してサイクルを行うことが可能であるため好ましい
。これら正極活物質を、上述したスピネル型のチタン酸リチウム及びアナターゼ型酸化チ
タンなどの負極活物質と組み合わせて使用することにより、高い電池電圧が得られる。
【0049】
正極活物質は、例えば粒子の形態で正極に含まれている。正極活物質粒子は、単独の一
次粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子、あるいは、単独の一次粒子と二次粒子の混合
物であり得る。粒子の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、楕円形状、
扁平形状、繊維状等にすることができる。
【0050】
正極活物質の粒子は、単独の一次粒子、一次粒子の凝集体である二次粒子、または単独
の一次粒子と二次粒子の双方を含むものであり得る。正極活物質の一次粒子の平均粒子径
(直径)は10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm〜5μmであ
る。正極活物質の二次粒子の平均粒子径(直径)は100μm以下であることが好ましく
、より好ましくは10μm〜50μmである。
【0051】
導電剤は、集電性能を高め、且つ活物質と集電体との接触抵抗を抑えるために、必要に
応じて配合される。導電剤の例には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛及
びコークスなどの炭素質物が含まれる。導電剤は、1種類であってもよく、2種類以上を
混合して使用してもよい。
【0052】
結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニ
リデン(PVdF)、フッ素系ゴム、エチレン−ブタジエンゴム、ポリプロピレン(PP
)、ポリエチレン(PE)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI
)、ポリアクリルイミド(PAI)などが挙げられる。結着剤は、1種類であってもよく
、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0053】
正極活物質層における正極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、正極活物質が70重
量%以上95重量%以下、導電剤が3重量%以上20重量%以下、結着剤が2重量%以上
10重量%以下の範囲であることが好ましい。導電剤の配合比が3重量%以上であると正
極の導電性を良好にすることができ、20重量%以下であると導電剤表面での電解液の分
解を低減することができる。結着剤の配合比が2重量%以上であると十分な電極強度が得
られ、10重量%以下であると電極の絶縁部を減少させることができる。
【0054】
正極は、例えば次の方法により作製することができる。まず、正極活物質、導電剤及び
結着剤を適切な溶媒に懸濁してスラリーを調製する。次いで、このスラリーを正極集電体
の片面又は両面に塗布する。正極集電体上の塗膜を乾燥することにより正極活物質層を形
成する。その後、正極集電体及びその上に形成された正極活物質層にプレスを施す。正極
活物質層としては、正極活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成したものを用いて
もよい。
【0055】
4)セパレータ
正極と負極の間にはセパレータを配置することができる。セパレータの例に、不織布、
フィルム、紙などが含まれる。セパレータの構成材料の例に、ポリエチレンやポリプロピ
レンなどのポリオレフィン、セルロースが含まれる。好ましいセパレータの例に、セルロ
ース繊維を含む不織布、ポリオレフィン繊維を含む多孔質フィルムを挙げることができる
【0056】
セパレータの気孔率は60%以上であることが好ましい。また、繊維径は10μm以下
であることが好ましい。繊維径を10μm以下にすることで、セパレータの電解液に対す
る親和性が向上して電池抵抗を小さくすることができる。繊維径のより好ましい範囲は3
μm以下である。気孔率が60%以上のセルロース繊維含有不織布は、電解液の含浸性が
良く、そのようなセパレータを使用した場合、低温から高温まで高い出力性能を発揮し得
る。また、長期充電保存、フロート充電、過充電においても負極と反応せず、リチウム金
属のデンドライト析出による負極と正極との短絡が発生しない。セパレータの気孔率は、
より好ましくは62%〜80%である。また、セパレータとして、固体電解質を使用する
こともできる。固体電解質としてはNASICON型を有するLATP(Li1+xAl
Ti2−x(PO)、アモルファス状のLIPON(Li2.9PO3.3
.46)、ガーネット型のLLZ(LiLaZr12)などの酸化物が好ましい
【0057】
セパレータは、厚さが20μm以上100μm以下、密度が0.2g/cm以上0.
9g/cm以下であることが好ましい。セパレータの厚さ及び密度がこの範囲内にある
と、機械的強度と電池抵抗の軽減のバランスを取ることができ、高出力で内部短絡が抑制
された二次電池を提供することができる。また、高温環境下でのセパレータの熱収縮が少
なく、良好な高温貯蔵性能を発揮し得る。
【0058】
5)容器
正極、負極及び電解液が収容される容器には、金属製容器、ラミネートフィルム製容器
、ポリエチレン又はポリプロピレンなどからなる樹脂製容器を使用することができる。
【0059】
金属製容器としては、ニッケル、鉄、ステンレスなどからなる金属缶で角形、円筒形の
形状のものが使用できる。
【0060】
樹脂製容器及び金属製容器のそれぞれの板厚は、0.05mm以上1mm以下の範囲内
にあることが好ましい。板厚は、より好ましくは0.5mm以下であり、更に好ましくは
0.3mm以下である。
【0061】
ラミネートフィルムとしては、例えば、金属層を樹脂層で被覆した多層フィルムなどを
挙げることができる。金属層の例に、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金
箔が含まれる。樹脂層には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン
、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子を用いることができる。ラミネー
トフィルムの厚さは、0.01mm以上0.5mm以下の範囲内にあることが好ましい。
ラミネートフィルムの厚さは、より好ましくは0.2mm以下である。
【0062】
本実施形態に係る二次電池は、角形、円筒形、扁平型、薄型、コイン型等の様々な形態
で使用され得る。更に、バイポーラ構造を有する二次電池であってもよい。これにより複
数直列のセルを1個のセルで作製できる利点がある。
【0063】
以下、実施形態に係るリチウム二次電池32の例を、図1図5を参照しながら説明す
る。
【0064】
図1は、実施形態に係る角型二次電池32の一例を概略的に示す断面図である。図2
図1に示す角型二次電池32のII−II線に沿った断面図である。
【0065】
この二次電池32は、電極群1および電解液11を金属製容器2内に収容している。
【0066】
電極群1は、正極3と、負極4と、正極と負極との間に設けられるセパレータ5Aとを
備える。例えば正極3、セパレータ5A、負極4、セパレータ5Aの順で積層させた構造
を有する。電極群1は電解液11に浸されている。また、電極群1は、正極3と負極4と
をその間にセパレータ5Aを介在させて偏平形状となるように渦巻き状に捲回した構造を
有することもできる。電極群1を何れの構造とした場合も、電極と容器2との接触を避け
るために、電極群1の最外層にセパレータ5Bが配置される構造とすることが望ましい。
【0067】
図1に示す二次電池32は、容器2の外部上面には、正極リード8(正極外部端子)お
よび負極リード9(負極外部端子)とを備えている。また、容器2の内部上方には、正極
リード8に一端を接続した正極端子正極タブ6(正極内部端子)、および負極リード9に
一端を接続した負極タブ7(負極内部端子)とを備えている。正極端子正極タブ6(正極
内部端子)と正極リード8(正極外部子)とは正極端子を構成する。負極タブ7(負極内
部端子)と負極リード9(負極外部端子)とは負極端子を構成する。
【0068】
図2に示すように、 正極タブ6の他端は短冊状になっていて、電極群1の上側端面に
位置する正極3の端部の複数個所それぞれに電気的に接続されている。また、図示してな
いが、同様に負極タブ7の他端は短冊状になっていて、電極群1の上側端面に位置する負
極4の端部の複数個所それぞれに電気的に接続されている。
【0069】
図1において、金属製の封口板10は、金属製容器2の開口部に溶接等により固定され
ている。正極リード8及び負極リード9は、それぞれ、封口板10に設けられた取出穴か
ら外部に引き出されている。封口板10の各取出穴の内周面には、正極リード8及び負極
リード9との接触による短絡を回避するために、それぞれ正極ガスケット18及び負極ガ
スケット19が配置されている。正極ガスケット18及び負極ガスケット19を配置する
ことで、角型二次電池32の気密性を維持できる。
【0070】
封口板10には制御弁22(安全弁)が配置されている。水系溶媒の電気分解により発
生したガスに起因して電池セルにおける内圧が高まった場合には、制御弁22から発生ガ
スを外部へと放散できる。制御弁22としては、例えば内圧が設定値よりも高くなった場
合に作動し、内圧が低下すると封止栓として機能する復帰式のものを使用することができ
る。或いは、一度作動すると封止栓としての機能が回復しない非復帰式の制御弁を使用し
てもよい。図1では、制御弁22が封口板10の中央に配置されているが、制御弁22の
位置は封口板10の端部であってもよい。制御弁22は省略してもよい。
【0071】
また、封口板10には注液口23が設けられている。電解液11は、この注液口23を
介して注液され得る。注液口23は、電解液11が注液された後、封止栓24により塞が
れている。注液口23及び封止栓24は省略してもよい。
【0072】
図3は、第1の実施形態に係る二次電池32の他の例を概略的に示す部分切欠斜視図で
ある。図4は、図3のA部の拡大断面図である。図3及び図4は、容器として、ラミネー
トフィルム製外装部材を用いた二次電池32の一例を示している。
【0073】
積層型電極群1は、2枚の樹脂フィルムの間に金属層を介在したラミネートフィルムか
らなる袋状容器2内に電解液11とともに収納されている。積層型電極群1は、図4に示
すように複数の正極3と複数の負極4とをその間に複数のセパレータ5Aを介在させなが
ら交互に積層した構造を有し、セパレータ5Aの気孔内および容器2内を電解液11が満
たしている。正極3は、それぞれが集電体3aと、集電体3aの両面に形成された正極活
物質層3bとを備える。負極4は、それぞれが集電体4aと、集電体4aの両面に形成さ
れた負極活物質層4bとを備える。各負極4の集電体4aは、一辺が正極3から突出して
いる。図面右側方向に突出した集電体4aは、帯状の負極端子12に電気的に接続されて
いる。また、負極端子12は、負極タブ7と電気的に接続されている。帯状の負極端子1
2の先端は、容器2から外部に引き出されている。また、図示しないが、正極3の集電体
3aは、集電体4aの突出辺と反対側に位置する辺が負極4から突出している。図面左側
方向に負極4から突出した集電体3aは、帯状の正極端子13に電気的に接続されている
図4では、簡略化のため正極端子13の図示を省略した)。また、正極端子13は、正
極タブ6と電気的に接続されている。帯状の正極端子13の先端は、負極端子12とは反
対側に位置し、容器2の辺から外部に引き出されている。
【0074】
図3図4に示す二次電池32には、図1と同様に、容器2内に発生した水素ガスを外
部に放出させるための安全弁を容器2に設けてもよい。安全弁は、容器2の内圧が設定値
よりも高くなった場合に作動し、内圧が低下すると封止栓として機能する復帰式、一度作
動すると封止栓としての機能が回復しない非復帰式のいずれでも使用可能である。また、
図1図4に示す二次電池32は、密閉式であるが、水素ガスを水に戻す循環システムを
備える場合には開放系とすることが可能である。
【0075】
実施形態に係る二次電池32は、組電池を構成していてもよい。
【0076】
組電池の例には、直列、並列、又は直列及び並列を組み合わせて電気的に接続された複
数の単位セルを構成単位として含むもの、電気的に直列接続された複数の単位セルからな
るユニット、電気的に並列接続された複数の単位セルからなるユニットを含むもの、又は
、直列及び並列を組み合わせて電気的に接続された複数の単位セルからなるユニット等を
挙げることができる。
【0077】
組電池は、筐体に収容されていても良い。筐体は、アルミニウム合金、鉄、ステンレス
などからなる金属缶、プラスチック容器等が使用できる。また、容器の肉厚は、0.5m
m以上にすることが望ましい。
【0078】
複数個の二次電池32を電気的に直列又は並列接続する形態の例には、それぞれが容器
を備えた複数の二次電池32を電気的に直列又は並列接続するもの、共通の筐体内に収容
された複数の電極群を電気的に直列又は並列接続するものが含まれる。前者の具体例は、
複数個の二次電池32の正極端子と負極端子を金属製のバスバー(例えば、アルミニウム
、ニッケル、銅)で接続するものである。後者の具体例は、1個の筐体内に複数個の電極
群を隔壁により電気化学的に絶縁した状態で収容し、これら電極群を電気的に直列接続す
るものである。5〜7の個数範囲で電池を電気的に直列接続することにより、例えば鉛蓄
電池との電圧互換性が良好である組電池を得ることができる。鉛蓄電池との電圧互換性を
より高くするには、単位セルを5個又は6個直列接続した構成が好ましい。
【0079】
組電池の一例を、図5を参照しながら説明する。
【0080】
図5は、実施形態に係る二次電池を単位セルとして、これを複数個備えた組電池の一例
を概略的に示す斜視図である。組電池31は、角型の二次電池(例えば図1及び図2で説
明した電池)32〜32を複数個備えている。電池32の正極リード8と、その隣
に位置する電池32の負極リード9とが、リード33によって電気的に接続されている
。さらに、この電池32の正極リード8とその隣に位置する電池32の負極リード9
とが、リード33によって電気的に接続されている。このように電池32〜32間が
直列に接続されている。
【0081】
なお、実施形態に係る二次電池を5つ直列に接続した場合には、鉛蓄電池との優れた互
換性が得られる。それ故、5つの二次電池32が直列に接続された組電池を、鉛蓄電池の
代替電源として使用することが可能である。
【0082】
第1の実施形態に係る二次電池32は、電解液に、水と、電解質塩と、比誘電率42以
下の有機溶媒とを含んでいる。すなわち、この電解液は、一定量の有機溶媒が混合した電
解液である。この時、少なくとも1種は比誘電率42以下の有機溶媒を使用し、体積分率
で換算した比誘電率が78.50以下となる電解液を使用する。このような特定の比誘電
率を有する電解液を使用することで充電時における負極表面での水の電気分解が抑制する
作用を示す。これは、電解液への有機溶媒の混合により系内の水分子が減少すること、ま
た水の水素結合の連なりから生じるプロトンの伝導も少なくなるため、水の電気分解が抑
制されると推定され、その結果寿命性能を高めることができる。また、上述した電解液を
用いることで、発火しない安全性の高い二次電池を提供できる。
【0083】
(第2の実施形態)
第2の実施形態によれば、電池パックが提供される。この電池パックは、第1の実施形
態に係る二次電池と、二次電池の充放電を制御するための回路部を具備している。
【0084】
電池パックは、先に説明した第1の実施形態に係る二次電池(単位セル)を1個又は複
数個具備することができる。電池パックに含まれ得る複数の二次電池は、電気的に直列、
並列、又は直列及び並列を組み合わせて接続されることができる。また、複数の二次電池
により組電池を構成する場合、第1の実施形態において説明した組電池を使用することが
できる。
【0085】
電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電
を制御するものである。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機
器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用することができる。
【0086】
また、電池パックは、通電用の外部端子をさらに具備することもできる。通電用の外部
端子は、二次電池からの電流を外部に出力するため、及び/又は、二次電池に電流を入力
するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電
用の外部端子を通して外部に供給され得る。また、電池パックを充電する際、充電電流(
自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供
給され得る。
【0087】
回路部は、電池パックが自動車等の車両又は電子機器に搭載される時点より前に、二次
電池に接続されていてもよい。或いは、自動車等の車両が備える回路部を、電池パックが
備えている二次電池に接続してもよい。実施形態の電池パックは、何れの形態も包含する
【0088】
実施形態に係る電池パックの例を、図6図8を参照して詳細に説明する。図6は、実
施形態に係る電池パックの一例を示す斜視図である。
【0089】
電池パック40は、図3及び図4に示す二次電池からなる組電池を備える。電池パック
40は、筐体41と、筐体41内に収容された組電池42とを含む。組電池42は、複数
(例えば5個)の二次電池43〜43が電気的に直列に接続されたものである。二次
電池43〜43は、厚さ方向に積層されている。筐体41は、上部及び4つの側面そ
れぞれに開口部44を有している。二次電池43〜43の正負極端子12,13が突
出している側面が、筐体41の開口部44に露出している。組電池42の出力用正極端子
45は、帯状をなし、一端が二次電池43〜43の少なくとも1つの正極端子12と
電気的に接続され、かつ他端が筐体41の開口部44から突出して筐体41の上部から突
き出ている。一方、組電池42の出力用負極端子46は、帯状をなし、一端が二次電池4
〜43の少なくとも1つの負極端子13と電気的に接続され、かつ他端が筐体41
の開口部44から突出して筐体41の上部から突き出ている。
【0090】
電池パックの他の例を、図7及び図8を参照して詳細に説明する。図7は、電池パック
の分解斜視図である。図8は、図7の電池パックの電気回路を示すブロック図である。
【0091】
扁平型のリチウム二次電池から構成される複数の単位セル51は、外部に延出した負極
端子52及び正極端子53が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ54で締
結することにより組電池55を構成している。これらの単位セル51は、図8に示すよう
に互いに電気的に直列に接続されている。
【0092】
プリント配線基板56は、負極端子52及び正極端子53が延出する単位セル51の側
面と対向して配置されている。プリント配線基板56には、図8に示すようにサーミスタ
57、保護回路58及び通電用の外部端子59が搭載されている。なお、組電池55と対
向するプリント配線基板56の面には、組電池55の配線とプリント配線基板56との不
要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
【0093】
正極リード60は、組電池55の最下層に位置する正極端子53に接続され、その先端
はプリント配線基板56の正極コネクタ61に挿入されて電気的に接続されている。負極
リード62は、組電池55の最上層に位置する負極端子52に接続され、その先端はプリ
ント配線基板56の負極コネクタ63に挿入されて電気的に接続されている。これらのコ
ネクタ61及び63は、プリント配線基板56に形成された配線64及び65を通して保
護回路58に接続されている。
【0094】
サーミスタ57は、単位セル51の温度を検出し、その検出信号は保護回路58に送信
される。保護回路58は、所定の条件で保護回路58と通電用の外部端子59との間のプ
ラス配線66a及びマイナス配線66bを遮断できる。所定の条件とは、例えばサーミス
タ57の検出温度が所定温度以上になったときである。また、所定の条件とは単位セル5
1の過充電、過放電、過電流等を検出したときである。この過充電等の検出は、個々の単
位セル51又は組電池55について行われる。個々の単位セル51を検出する場合、電池
電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単
位セル51中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図7及び図8の場合、そ
れぞれの単位セル51に、電圧検出のための配線67を接続し、これら配線67を通して
検出信号が保護回路58に送信される。
【0095】
正極端子53及び負極端子52が突出している側面を除く組電池55の三側面には、ゴ
ム又は樹脂からなる保護シート68がそれぞれ配置されている。
【0096】
組電池55は、各保護シート68及びプリント配線基板56と共に収納容器69内に収
納される。すなわち、収納容器69の長辺方向の両方の内側面と短辺方向の内側面の一方
とに保護シート68が配置され、短辺方向の内側面の他方にプリント配線基板56が配置
されている。組電池55は、保護シート68及びプリント配線基板56で囲まれた空間内
に位置する。蓋70は、収納容器69の上面に取り付けられている。
【0097】
組電池55の固定には粘着テープ54に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場
合、組電池55の両側面に保護シートを配置し、2枚の保護シートと共に組電池55に熱
収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池55を結束させることが
できる。
【0098】
図7及び図8では単位セル51を直列接続した形態を示したが、上述したように、電池
容量を増大させるためには並列に接続してもよい。或いは、直列接続と並列接続とを組み
合わせてもよい。組み上がった電池パックを直列、並列に接続することもできる。
【0099】
また、電池パックの態様は用途により適宜変更される。電池パックの用途としては、大
電流での充放電が望まれるものが好ましい。具体的には、デジタルカメラの電源用や、二
輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車等及
び鉄道用車両(例えば電車)等の車両の車載用が挙げられる。特に、車載用が好適である
【0100】
本実施形態に係る電池パックを搭載した自動車等の車両において、電池パックは、例え
ば車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。
【0101】
以上説明した第2の実施形態に係る電池パックは、第1の実施形態の二次電池を具備し
ているため、負極集電体からの水素の発生を抑制することができ、優れたサイクル寿命性
能を達成することができる。また、第2の実施形態によると、車両用スタータ電源として
使用されている鉛電池の代替電源として、あるいはハイブリッド車に搭載する車載用二次
電池として好適な電池パックを提供することが可能になる。
【0102】
(第3の実施形態)
第3の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第2の実施形態に係る電池
パックを具備する。
【0103】
図9に、第2の実施形態に係る電池パックを具備した車両の一例を示す。
【0104】
図9に示す自動車71は、車体前方のエンジンルーム内に、電池パック72を搭載して
いる。自動車における電池パックの搭載位置は、エンジンルームに限られない。例えば、
電池パックは、自動車の車体後方又は座席の下に搭載されていてもよい。
【0105】
[実施例]
以下に実施例を説明するが、実施形態は、以下に記載される実施例に限定されるもので
はない。
【0106】
(実施例1)
<正極の作製>
以下のようにして正極を作製した。
正極活物質として、平均粒子径10μmのスピネル構造のリチウムマンガン酸化物(L
iMn)、導電剤として黒鉛粉末、及び、結着剤としてポリアクリルイミド(PA
I)を用いた。これら正極活物質、導電剤及び結着剤を、それぞれ80重量%、10重量
%及び10重量%の割合で配合し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒に分散して
スラリーを調製した。調製したスラリーを、正極集電体としての厚さ12μmのTi箔の
両面に塗布し、塗膜を乾燥することで正極活物質層を形成した。正極集電体とその上の正
極活物質層とをプレスする工程を経て、電極密度3.0g/cm(集電体を含まず)の
正極を作製した。なお、正極は、LiMnに限られない。例えば、LiMnPO
、LiCoO、LiMn1.5Ni0.5もLiMnと同様に正極として用いるこ
とができる。
【0107】
<負極の作製>
以下にようにして負極を作製した。
負極活物質として、平均二次粒子径(直径)15μmのLiTi12粉末、導電剤
として黒鉛粉末、及び、結着剤としてPAIを用いた。これら負極活物質、導電剤及び結
着剤を、それぞれ80重量%、10重量%及び10重量%の割合で配合し、NMP溶媒に
分散してスラリーを調製した。得られたスラリーを、負極集電体としての厚さ50μmの
Ti箔に塗布し、塗膜を乾燥することで負極層を形成した。ここで、スラリーをTi箔に
塗布する際、作製する負極のうち、電極群の最外周に位置する部分についてはTi箔の片
面にのみスラリーを塗布し、それ以外の部分についてはTi箔の両面にスラリーを塗布し
た。負極集電体とその上の負極層とをプレスする工程を経て、電極密度2.0g/cm
(集電体を含まず)の負極を作製した。なお、負極は、LiTi12に限られない
。例えば、TiO (ルチル型)、NbTiO、La1.8NiTiOもLi
12と同様に負極として用いることができる。
【0108】
<電極群の作製>
上記の通り作製した正極と、厚さ20μmのセルロース繊維からなる不織布セパレータ
と、上記の通り作製した負極と、もう一つの不織布セパレータとを、この順序で積層して
積層体を得た。次に、この積層体を、負極が最外周に位置するように渦巻き状に捲回して
電極群を作製した。これを90℃で加熱プレスすることにより、偏平状電極群を作製した
。得られた電極群を、厚さが0.25mmのステンレスからなる薄型の金属缶に収納した
。なお、金属缶としては、内圧が2気圧以上になるとガスをリークする弁が設置されてい
るものを用いた。
【0109】
<電解液の調製>
水95vol%と有機溶媒としてのメタノール5vol%の比率で混合した電解液1L
に、電解質塩として、3MのLiCl及び0.25MのLiSOを溶解させて、電解
液を得た。
【0110】
<二次電池の作製及び初回充放電>
実施例1において使用した負極活物質の種類、電解液の種類及びそれらの体積分率に対
する加成性から見積もられる比誘電率を、下記表1にまとめる。
【表1】
【0111】
電極群を収容した先の金属缶容器に、上記のとおり調製した電解液を注液し、図1に示
す構造を有する二次電池を作製した。電解液を注液した後、二次電池を25℃環境下で2
4時間放置した。その後、25℃環境下で電池を初回充放電に供した。初回充放電では、
まず、電池を2.8Vまで5Aで定電流充電し、その後1.5Vまで1Aで定電流放電し
た。また、初回充放電の際、二次電池の容量を確認した。
(実施例2〜11、比較例1及び2)
【0112】
負極活物質の種類、正極活物質の種類、電解液の組成、比誘電率を、下記表2に示すよ
うに変更したことを除いて、実施例1において記載したのと同様の方法により、実施例2
〜11及び比較例1及び2に係る二次電池をそれぞれ作製し、初回充放電を行った。
【0113】
実施例7では、負極活物質として、LiTi12とルチル型のTiOとを80
:20の重量比で使用した。なお、電解液で用いられている有機溶媒の比誘電率は、メタ
ノール 33、イソプロパノール 20.18、アセトニトリル 36.64、DMSO
47.24である。なお、これらの値は、「CRC Handbook of CHEMISTRY and PHYSICS
」(CRC Press LLC)より参照した。
【表2】
【0114】
<平均作動電圧の評価及び寿命性能の評価>
実施例1〜11及び比較例1及び2において作製した各二次電池について、初回充放電
に供した際の平均作動電圧を評価した。また、 実施例1〜11及び比較例2において作
製した各二次電池について、次のようにしてサイクル寿命性能を評価するための試験を実
施した。それらの結果を下記表3に示す。
【表3】
【0115】
二次電池を、25℃環境下で3Aの定電流で2.8Vまで充電した後、30分間の休止
時間を設け、次いで1.5Vまでの放電を実施し、再度30分間の休止時間を設けた。充
電から2度目の休止時間終了までのサイクルを、1回の充放電サイクルとした。この充放
電サイクルを50回繰り返した。50回目の充放電サイクルにおける充電容量と放電容量
とから、充放電効率(放電容量/充電容量)(%)を算出した。表2中、「充放電効率」
は、50回目の充放電サイクルにおける充電容量及び放電容量から算出した値を示してい
る。
【0116】
表2が示すとおり、実施例1〜11のリチウム二次電池では、比較例1に比べ充放電サ
イクルを50回繰り返した後でも高い充放電効率を示した。負極活物質としてLiTi
12を用いた実施例のうち、メタノールの混合比率を上げるほど優れた充放電効率を
示した。混合する非水溶剤をアセトニトリルとした実施例3では、実施例1よりも若干の
効率低下が見られたのに対し、イソプロパノールとした実施例2においては、実施例1よ
りも比誘電率の低下と共に優れた充放電効率を示した。
【0117】
また、負極活物質の種類をニオブチタン酸化物又はナトリウムニオブチタン酸化物に変
更した実施例8及び9においては、十分な充放電効率を達成しつつ高い平均作動電圧も達
成できた。
【0118】
表2と表3の関係を図10に示す。
【0119】
図10が示すとおり、図10が示すとおり、電解液中の比誘電率78.50よりも比誘
電率が大きい比較例1は、実施例と比べて充放電効率が著しく低下する。また、比較例2
は、比誘電率が78.50以下であるが、比誘電率42より大きいDMSOしか水と混合
していないために、実施例と比べて充放電効率が著しく低下する。
【0120】
また、正極活物質の種類をリチウムコバルト複合酸化物又はオリビン構造を有するリチ
ウムリン酸化合物に変更した実施例10及び11においても、十分な充放電効率を達成で
きた。
【0121】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、電解液が、少なくとも1種は比誘電率
42以下の非水溶剤が混合し体積分率で換算した比誘電率が78.50以下となる電解液
であるため、集電体からの水素の発生を抑制することができ、優れた寿命性能を達成する
ことができる。
【0122】
(実施例12)
実施例12では、実施例1〜11の二次電池を用いて、図11に概略的に示す構成を有
する実施例12の車両を製造した。
【0123】
以下に、実施例12の車両の構成を、図11を参照しながら説明する。
【0124】
図11は、実施例12の車両の構成を概略的に示した図である。図11に示した車両3
00は、電気自動車である。
【0125】
図11に示す車両300は、車両用電源301と、車両用電源301の上位制御手段で
ある車両ECU(ECU:ElectricControl Unit)380と、外部
端子370と、インバータ340と、駆動モータ345とを備えている。
【0126】
車両300は、車両用電源301を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座
席の下に搭載している。しかしながら、図11では、車両300への二次電池の搭載箇所
は概略的に示している。
【0127】
車両用電源301は、複数(例えば3つ)の電池パック312a、312b及び312
cと、電池管理装置(BMU:BatteryManagement Unit)311
と、通信バス310と、を備えている。
【0128】
3つの電池パック312a、312b及び312cは、電気的に直列に接続されている
。電池パック312aは、組電池314aと組電池監視装置(VTM:VoltageT
emperature Monitoring)313aと、を備えている。電池パック
312bは、組電池314bと組電池監視装置313bと、を備えている。電池パック3
12cは、組電池314cと組電池監視装置313cと、を備えている。電池パック31
2a、312b、及び312cは、それぞれ独立して取り離すことが可能であり、別の電
池パックと交換することができる。
【0129】
組電池314a〜314cのそれぞれは、直列に接続された複数の二次電池を備えてい
る。各二次電池は、実施例1の二次電池の作製手順と同様の作製手順で作製した電池であ
る。組電池314a〜314cは、それぞれ、正極端子316及び負極端子317を通じ
て充放電を行う。
【0130】
電池管理装置311は、車両用電源301の保全に関する情報を集めるために、車両用
電源301に含まれる組電池314a〜314cの二次電池の電圧、温度などの情報を組
電池監視装置313a〜313cとの間で通信を行い収集する。
【0131】
電池管理装置311と組電池監視装置313a〜313cとの間には、通信バス310
が接続されている。通信バス310は、1組の通信線を複数のノード(電池管理装置と1
つ以上の組電池監視装置と)で共有するように構成されている。通信バス310は、例え
ばCAN(ControlArea Network)規格に基づいて構成された通信バ
スである。
【0132】
組電池監視装置313a〜313cは、電池管理装置311からの通信による指令に基
づいて、組電池314a〜314cを構成する個々の二次電池の電圧及び温度を計測する
。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての二次電池
の温度を測定しなくてもよい。
【0133】
車両用電源301は、正極端子と負極端子との接続を入り切りするための電磁接触器(
例えば図Yに示すスイッチ装置333)を有することもできる。スイッチ装置333は、
組電池314a〜314cへの充電が行われるときにオンするプリチャージスイッチ(図
示せず)、電池出力が負荷へ供給されるときにオンするメインスイッチ(図示せず)を含
む。プリチャージスイッチおよびメインスイッチは、スイッチ素子の近傍に配置されたコ
イルに供給される信号によりオンおよびオフされるリレー回路(図示せず)を備える。
【0134】
インバータ340は、入力した直流電圧をモータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧
に変換する。インバータ340は、後述する電池管理装置311あるいは車両全体動作を
制御するための車両ECU380からの制御信号に基づいて、出力電圧が制御される。イ
ンバータ340の3相の出力端子は、駆動モータ345の各3相の入力端子に接続されて
いる。
【0135】
駆動モータ345は、インバータ340から供給される電力により回転し、その回転を
例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達する。
【0136】
また、図示はしていないが、車両300は、車両300を制動した際に駆動モータ34
5を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する回生
ブレーキ機構を備えている。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ
340に入力され、直流電流に変換される。直流電流は、車両用電源301に入力される
【0137】
車両用電源301の負極端子317には、接続ラインL1の一方の端子が接続されてい
る。接続ラインL1は、電池管理装置311内の電流検出部(図示せず)を介してインバ
ータ340の負極入力端子に接続されている。
【0138】
車両用電源301の正極端子316には、接続ラインL2の一方の端子が、スイッチ装
置333を介して接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ340の
正極入力端子に接続されている。
【0139】
外部端子370は、後述する電池管理装置311に接続されている。外部端子370は
、例えば、外部電源に接続することができる。
【0140】
車両ECU380は、運転者などの操作入力に応答して電池管理装置311を他の装置
と協調制御して、車両全体の管理を行なう。電池管理装置311と車両ECU380との
間で、通信線により、車両用電源301の残容量等の車両用電源301の保全に関するデ
ータ転送が行われる。
【0141】
図11の車両に使用することで実施形態の効果を得ることができる。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したも
のであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様
々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、
置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に
含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるもので
ある。
【符号の説明】
【0143】
1…電極群、2…容器、3…正極、4…負極、5…セパレータ、6…正極タブ、7…負
極タブ、8、60…正極リード、9、62…負極リード、10…封口板、11…電解液、
12…負極端子、13…正極端子、18…正極ガスケット、19…負極ガスケット、22
…制御弁、23…注液口、24…封止栓、31…組電池、321〜325及び431〜435
…二次電池、33…リード、40、72…電池パック、41…筐体、42、55…組電池
、44…開口部、45…出力用正極端子、46…出力用負極端子、51…単位セル、56
…プリント配線基板、57…サーミスタ、58…保護回路、59…通電用の外部端子、6
1…正極コネクタ、63…負極コネクタ、64、65、67…配線、66a…プラス配線
、66b…マイナス配線、68…保護シート、69…収納容器、70…蓋、71…自動車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11