(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の剥離部のうち内側の第一剥離部を囲むように前記粘着部が環状又は枠状に設けられ、外側の第二剥離部を前記粘着部の外縁に沿って環状又は枠状に設け、前記粘着部の前記粘着面を挟んで前記第一剥離部の第一押圧面と前記第二剥離部の第二押圧面が隣合うように配置されることを特徴とする請求項1記載のワーク粘着チャック装置。
前記複数の剥離部のうち最も内側の第一剥離部を囲むように、前記粘着部として内側の第一粘着部が環状又は枠状に設けられ、前記第一剥離部よりも外側の第二剥離部を前記第一粘着部の外縁に沿って環状又は枠状に設け、前記第二剥離部を囲むように、前記粘着部として外側の第二粘着部が環状又は枠状に設けられ、前記第二粘着部の外側に前記第二剥離部よりも外側の第三剥離部を、前記第二粘着部の外縁に沿って環状又は枠状に設け、前記第一粘着部の第一粘着面を挟んで前記第一剥離部の第一押圧面と前記第二剥離部の第二押圧面が隣合うように配置され、前記第二粘着部の第二粘着面を挟んで前記第二押圧面と前記第三剥離部の第三押圧面が隣合うように配置されることを特徴とする請求項1記載のワーク粘着チャック装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るワーク粘着チャック装置Aは、
図1〜
図3に示すように、例えば液晶ディスプレイ(LCD)の基板などからなる薄板状のワークWと、保持板1の対向面11aに設けられた粘着部2との接触により、ワークWを強固に且つ着脱可能に粘着保持して受け取り、ワークWに向けた剥離部3の突出変形により、粘着部2からワークWを押し剥がして受け渡すワーク保持装置である。
このようなワーク粘着チャック装置Aは、
図4に示すように、基板同士などを貼り合わせるワーク貼り合わせ機Bや、基板などを搬送するためのワーク搬送装置などに用いられる。
【0008】
詳しく説明すると、本発明の実施形態に係るワーク粘着チャック装置Aは、ワークWに対して接近又は離隔する方向へ相対的に移動自在に設けられる保持板1の対向面11aと、対向面11aにワークWの表面W1と対向するように設けられる粘着部2と、対向面11aに弾性変形可能に設けられる複数の剥離部3と、を主要な構成要素として備えている。
さらに、保持板1の対向面11a又はワークWのいずれか一方若しくは両方を相対的に接近移動又は離隔移動させる接離用駆動部4と、複数の剥離部3をそれぞれワークWに向けて突出変形させる剥離用駆動部5と、接離用駆動部4及び剥離用駆動部5などをそれぞれ作動制御する制御部6と、を備えることが好ましい。
なお、保持板1の対向面11aとワークWは、通常、上下方向へ対向するように配置され、対向面11a及びワークWの対向方向を以下「Z方向」という。Z方向と交差する対向面11aやワークWに沿った方向を以下「XY方向」という。
【0009】
保持板1は、例えば金属,セラミック,硬質合成樹脂などの硬質材料で成形された定盤などからなる。
保持板1の表裏いずれか一方の平滑面1a側には、チャック本体11が設けられる。
チャック本体11は、例えば金属,セラミック,硬質合成樹脂などの硬質材料で円形又は矩形(長方形及び正方形を含む角が直角の四辺形)の板状に形成され、その表裏いずれか一方に対向面11aを有する。
さらに、チャック本体11は、
図1(a)(b)などに示されるように、相互が着脱自在に連結される複数の支持プレート11bで構成され、複数の支持プレート11bの間に後述する複数の剥離部3を着脱自在に取り付けることが好ましい。
図示例では、保持板1に対するチャック本体11の組み付けと、複数の支持プレート11b同士の連結を、ネジやボルトなどの締結具1cで取り付け固定している。
【0010】
粘着部2は、その全体又は一部が例えばフッ素ゴムやブチルゴムなどのゴム類、エラストマー、感光性樹脂、アクリル系やシリコン系などの粘着性を有する材料からなる粘着シートである。
粘着部2は、チャック本体11の対向面11aに沿って円形や楕円形などの環状又は四角や多角形などの枠状に形成される。
さらに、粘着部2は、ワークWの表面W1とZ方向へ対向する表側に形成される粘着面2aと、その裏側に形成される取付面2bと、を有する。取付面2bは、チャック本体11の対向面11aに対してZ方向及びXY方向へ移動不能に固定される。
粘着部2の粘着面2aは、ワークWの表面W1においてその一部と接触させることにより、接触した部位に粘着して被粘着部位W2を着脱自在に保持するように構成される。
粘着面2aの具体例として
図1(a)〜(c)などに示される場合には、ゴム類の成形時における表面加工で凹凸状に形成している。これにより、ワークWの表面W1に対する粘着面2aの接触面積を減少させて、後述する複数の剥離部3による押し剥がしが容易となるように粘着力をコントロールしている。
また、その他の例として図示しないが、成形時の表面加工に代えてブラスト処理(サンドブラスト)やレーザー加工やエッチング加工などの後加工により、粘着面2aを凹凸状に形成することや、粘着面2aを図示例以外の凹凸形状や構造に変更することも可能である。
【0011】
複数の剥離部3は、その全体又は一部が例えばフッ素ゴムやエチレンプロピレンジエン(EPDM)ゴムなどのゴム類、エラストマー、軟質合成樹脂などの弾性変形可能な弾性材料で、円形又は矩形などの薄板状に形成されたダイヤフラムや弾性板などからなる。
複数の剥離部3は、チャック本体11の対向面11aにおいて粘着部2の内側及び外側にそれぞれ粘着部2をXY方向へ挟むように配置され、ワークWの表面W1とZ方向へ対向する表側に形成される複数の押圧面3aを有する。
複数の剥離部3において全ての押圧面3aは、ワークWの表面W1において粘着面2aで粘着保持される被粘着部位W2を挟んでXY方向へ隣合う複数の不粘着部位W3,W4などに向けてZ方向へ弾性的に突出変形するように構成される。
さらに、複数の剥離部3のうち内側の第一剥離部31は、対向面11aの略中央に設けることが好ましい。内側の第一剥離部31の形状は、チャック本体11が円形の板状である場合には円形に形成し、チャック本体11が矩形の板状である場合には矩形に形成することが好ましい。複数の剥離部3のうち外側の第二剥離部32などは、粘着部2の外縁に沿って円形や楕円形などの環状又は四角や多角形などの枠状に設けることが好ましい。
これに加えて、内側の第一剥離部31を除いた外側に配置される外側の第二剥離部32の押圧面32aなどには、外側の第二剥離部32などよりも内側で粘着部2が配置される空間部S1と、外側の第二剥離部32などよりも更に外側の外方空間Sоとが連通するように真空破壊用の押圧通路3pを形成することが好ましい。これと同様に、粘着部2の粘着面2aなどにも、粘着部2が配置される空間部S1と、粘着部2よりも内側で第一剥離部31が配置される内方空間Siとが連通するように真空破壊用の粘着通路2pを形成することが好ましい。
【0012】
複数の剥離部3と具体例として
図1(a)〜(c)などに示される場合には、例えば圧縮成形(コンプレッション成型)や射出成形(インジェクション成型)などにより一体形成されたダイヤフラムや弾性板で構成している。
ダイヤフラムや弾性板の内側と外側には、複数の押圧面3aがそれぞれ弾性変形可能に形成される。
図示例では、複数の押圧面3aをゴム類の成形時における表面加工で凹凸状に形成している。これにより、ワークWの表面W1に対する押圧面3aの接触面積を減少させて、ワークWの表面W1に密着しないようにコントロールしている。
ダイヤフラムや弾性板の外周には、取付部3bが形成される。取付部3bは、チャック本体11を構成する複数の支持プレート11bの間に挟持して、Z方向及びXY方向へ移動不能で且つ着脱自在に取り付け固定することが好ましい。これにより、複数の押圧面3aがチャック本体11の対向面11aに沿ってZ方向へ弾性変形自在に支持されるとともに、後述する駆動用流体5Fの流路5bの一部が開穿されるチャック本体11の支持プレート11bの複数個所を、それぞれ気密状に封止するように配置される。
さらに図示例では、ダイヤフラムや弾性膜を内側の第一剥離部31と、外側の第二剥離部32などに分割して、それぞれ別個に取り付けている。
また、その他の例として図示しないが、成形時の表面加工に代えてブラスト処理(サンドブラスト)やレーザー加工やエッチング加工などの後加工により、複数の押圧面3aを凹凸状に形成することや、複数の押圧面3aを図示例以外の凹凸形状や構造に変更することや、内側の第一剥離部31と外側の第二剥離部32などを分割せず一体的に取り付けることなどの変更も可能である。
【0013】
接離用駆動部4は、保持板1の対向面11a又はワークWのいずれか一方若しくは両方を相対的に接近移動又は離隔移動させるアクチュエーターなどで構成され、後述する制御部6により作動制御している。
後述する制御部6で接離用駆動部4は、保持板1の対向面11a又はワークWのいずれか一方若しくは両方を相対的に接近移動させることにより、粘着部2の粘着面2aが、ワークWの表面W1の一部(被粘着部位W2)と接触して、被粘着部位W2を着脱自在に粘着保持するように作動制御される。
【0014】
剥離用駆動部5は、複数の剥離部3の押圧面3aをワークWに向けて突出変形させるアクチュエーターなどで構成され、後述する制御部6により作動制御している。
剥離用駆動部5を構成するアクチュエーターの一例として図示例の場合は、供給源(図示しない)から圧縮空気,ガスなどの気体や水などの液体からなる駆動用流体5Fを供給するコンプレッサーなどの駆動源5aと、供給源から駆動源5aを介して複数の剥離部3の一次側に通じる流路5bと、を有している。流路5bの一部は、保持板1やチャック本体11の支持プレート11bの複数個所を、それぞれZ方向へ貫通するように穿設されている。これにより、駆動源5aから駆動用流体5Fは、流路5bを通ってチャック本体11の対向面11aに向けてそれぞれ供給される。
さらに必要に応じて、流路5bの途中には、流量調整弁(図示しない)などを設けてもよい。
後述する制御部6で駆動源5aや流量調整弁などは、複数の剥離部3の一次側に向けて所定量の駆動用流体5Fを供給することにより、複数の剥離部3の一次側と二次側との間に圧力差が生じて、複数の押圧面3aをZ方向へ弾性的に膨張変形させるように作動制御される。
また、その他の例として図示しないが、剥離用駆動部5を構成するアクチュエーターとして、駆動用流体5Fを供給する駆動源5aなどに代え、シリンダーなどにより押圧するなど、他の駆動源で複数の押圧面3aをZ方向へ弾性的に突出変形させることも可能である。
【0015】
制御部6は、接離用駆動部4や剥離用駆動部5だけでなく、その他にも電気的に接続するコントローラーである。
制御部6となるコントローラーは、その制御回路(図示しない)に予め設定されたプログラムに従って、予め設定されたタイミングで順次それぞれ作動制御している。
そして、制御部6の制御回路に設定されたプログラムを、粘着部2の粘着面2aで粘着保持されたワークWの剥離方法として説明する。
図1(a)などに示される初期状態では、複数の剥離部3の押圧面3aが保持板1の対向面11aよりも凹状に収縮変形しており、粘着部2の粘着面2aで粘着保持されたワークWに対し、剥離力を作用させずに待機している。
図1(b)などに示される剥離時には、剥離用駆動部5の作動で複数の剥離部3において全ての押圧面3aが、保持板1の対向面11aよりも突出変形してワークWの表面W1(複数の不粘着部位W3,W4など)に圧接し、更に同方向へ押動して、粘着部2の粘着面2aからワークWを強制的に剥離する(押し剥がす)。
また、粘着面2aからワークWを剥離した後は、複数の押圧面3aがZ方向へワークWの表面W1から離れるように逆向きに没入変形して初期状態に戻る。
【0016】
このような本発明の実施形態に係るワーク粘着チャック装置Aによると、薄板状のワークWと対向面11aとの相対的な接近で、ワークWの表面W1を粘着部2の粘着面2aに接触させることにより、粘着面2aに対しての表面W1の被粘着部位W2が粘着保持される。
この粘着保持状態で剥離用駆動部5の作動により、複数の剥離部3において複数の押圧面3aが、被粘着部位W2を挟んで隣合う両側の不粘着部位W3,W4に向けてそれぞれ弾性的に突出変形する。
このため、不粘着部位W3,W4に複数の押圧面3aが圧接してそれぞれ不粘着部位W3,W4を剥離方向(Z方向)へ押圧する。
これにより、粘着面2aに対して被粘着部位W2は、複数の不粘着部位W3,W4と連続した被粘着部位W2の両端側から中間位置に向け略同時に押し剥がされてそれぞれ拡開する。このため、粘着面2aと被粘着部位W2の間には空間部S1が生じる。
したがって、変形し易い薄板状のワークWであってもその表面W1を粘着部2の粘着面2aから比較的に小さなたわみ変形でスムーズに押し剥がすことができる。
その結果、粘着ゴムと隣合う加熱膨脹部の突出変形により、加熱膨脹部と連続した被粘着部位の一端側から一方向のみへ押し剥がす従来のものに比べ、粘着面2aに対する被粘着部位W2の押し剥がしが、被粘着部位W2を挟んで隣合う不粘着部位W3,W4と連続した両方向からの略同時の押し剥がしである。このため、粘着面2aに対して被粘着部位W2が全体的に傾斜せず略平行に押し剥がされる。
【0017】
次に、本発明の実施形態に係るワーク粘着チャック装置Aの実施例及び変形例(第一実施形態〜第三実施形態)について説明する。
第一実施形態のワーク粘着チャック装置A1を
図1(a)〜(c)に示す。
第二実施形態のワーク粘着チャック装置A2を
図2(a)〜(c)に示す。
第三実施形態のワーク粘着チャック装置A3を
図3(a)〜(c)に示す。
そして、本発明の実施形態に係るワーク粘着チャック装置Aを用いたワーク貼り合わせ機Bの実施例を
図4に示す。
【0018】
[第一実施形態]
第一実施形態のワーク粘着チャック装置A1は、複数の剥離部3のうち内側の第一剥離部31を囲むように粘着部2が環状又は枠状に設けられ、外側の第二剥離部32を粘着部2の外縁に沿って環状又は枠状に設け、粘着部2の粘着面2aを挟んで第一剥離部31の第一押圧面31aと第二剥離部32の第二押圧面32aが隣合うように配置される。
図1(a)〜(c)に示される場合には、一つの粘着部2を挟んで内外に二つの剥離部3(第一剥離部31と第二剥離部32)が二重に配置され、すべての押圧面3a(第一押圧面31aと第二押圧面32a)を突出変形させている。
図示例では、内側の第一剥離部31を対向面11aの略中央に配置している。さらに、チャック本体11の全体形状が円形の板状であり、粘着部2と外側の第二剥離部32をそれぞれ環状に形成している。
つまり、内側の第一剥離部31の第一押圧面31aは、ワークWの表面W1において粘着面2aで粘着保持される被粘着部位W2よりも内側の第一不粘着部位W3に向けZ方向へ突出して圧接する。外側の第二剥離部32の第二押圧面32aは、中央の被粘着部位W2よりも外側の不粘着部位W4に向けZ方向へ突出して圧接する。
また、剥離用駆動部5の駆動源5aから全ての剥離部3の一次側に至る流路5bが一系統であり、流路5bへの駆動用流体5Fの供給に伴って、内側の第一剥離部31の第一押圧面31aと外側の第二剥離部32の第二押圧面32aを同時に突出動作させている。
【0019】
このような第一実施形態のワーク粘着チャック装置A1によると、剥離用駆動部5の作動により、中央の第一剥離部31の押圧面31aと、外側の第二剥離部32の押圧面32aが、被粘着部位W2を挟んで隣合う中央の不粘着部位W3と、外側の不粘着部位W4に向け突出変形して、それぞれ剥離方向(Z方向)へ押圧する。
これにより、粘着面2aに対して、中央の不粘着部位W3と外側の不粘着部位W4に連続した被粘着部位W2の両端側から内外中間位置に向け略同時に押し剥がされてそれぞれ拡開する。
したがって、薄板状のワークWの表面W1を粘着部2の粘着面2aからワークWの僅かな変形で確実に押し剥がすことができる。
その結果、簡単な構造でありながら中央の第一押圧面31a及び外側の第二押圧面32aによるワークWの剥離力が向上してチャック性能に優れる。
【0020】
[第二実施形態]
第二実施形態のワーク粘着チャック装置A2は、剥離用駆動部5の駆動源5aから全ての剥離部3の一次側に至る流路5bが複数系統である構成が、前述した第一実施形態とは異なり、それ以外の構成は第一実施形態と同じものである。
図2(a)〜(c)に示される場合には、駆動源5aから内側の第一剥離部31の一次側に至る第一流路5bと別に、駆動源5aから外側の第二剥離部32の一次側に至る第二流路5cを形成している。これにより、駆動源5aから駆動用流体5Fは、第一流路5bを通って内側の第一剥離部31の一次側に供給されると同時に、第二流路5cを通って外側の第二剥離部32の一次側にも供給される。
このため、第一流路5bと第二流路5cに対する駆動用流体5Fの供給タイミングや供給量などをコントロールすることで、内側の第一剥離部31の第一押圧面31aと外側の第二剥離部32の第二押圧面32aを同時に突出動作させることや、タイミングをずらして突出動作させることが可能になる。
これにより、ワークWの厚みに適した微妙な剥離コントロールを達成できる。
【0021】
[第三実施形態]
第三実施形態のワーク粘着チャック装置A3は、複数の剥離部3のうち最も内側の第一剥離部31を囲むように、粘着部2として内側の第一粘着部21が環状又は枠状に設けられ、第一剥離部31よりも外側の第二剥離部32を第一粘着部21の外縁に沿って環状又は枠状に設け、第二剥離部32を囲むように、粘着部2として外側の第二粘着部22が環状又は枠状に設けられ、第二粘着部22の外側に第二剥離部32よりも外側の第三剥離部33を、第二粘着部22の外縁に沿って環状又は枠状に設け、第一粘着部21の第一粘着面21aを挟んで第一剥離部31の第一押圧面31aと第二剥離部32の第二押圧面32aが隣合うように配置され、第二粘着部22の第二粘着面22aを挟んで第二押圧面32aと第三剥離部33の第三押圧面33aが隣合うように配置される構成が、前述した第一実施形態とは異なり、それ以外の構成は第一実施形態と同じものである。
図3(a)〜(c)に示される場合には、二つの粘着部2(第一粘着部21と第二粘着部22)を挟んで内外に三つの剥離部3(第一剥離部31と第二剥離部32と第三剥離部33)が三重に配置され、すべての押圧面3a(第一押圧面31aと第二押圧面32aと第三押圧面33a)を突出変形させている。
図示例では、最も内側の第一剥離部31を対向面11aの略中央に配置している。さらに、チャック本体11の全体形状が円形の板状であり、第一粘着部21及び第二粘着部22と中間の第二剥離部32及び外側の第三剥離部33をそれぞれ環状に形成している。また、チャック本体11の全体サイズを第一実施形態と同じ大きさに設定している。
つまり、第二剥離部32よりも外側に配置される第三剥離部33の第三押圧面33aは、ワークWの表面W1において外側の第二粘着部22の第二粘着面22aで粘着保持される中間の被粘着部位W5よりも外側の不粘着部位W6に向けZ方向へ突出して圧接する。
【0022】
このような第三実施形態のワーク粘着チャック装置A3によると、剥離用駆動部5の作動により、中央の第一剥離部31の押圧面31aと、外側の第二剥離部32の押圧面32a及び第三剥離部33の第三押圧面33aが、内側の被粘着部位W2を挟んで隣合う中央の不粘着部位W3と、中間の不粘着部位W4及び外側の不粘着部位W6に向け突出変形して、それぞれ剥離方向(Z方向)へ押圧する。
これにより、内側の第一粘着面21aに対して、中央の不粘着部位W3と中間の不粘着部位W4に連続した内側の被粘着部位W2の両端側から内外中間位置に向け略同時に押し剥がされてそれぞれ拡開する。これと同時に外側の第二粘着面22aに対して、中間の不粘着部位W4と外側の不粘着部位W6とに連続した外側の被粘着部位W5の両端側から内外中間位置に向け略同時に押し剥がされてそれぞれ拡開する。
したがって、薄板状のワークWの表面W1を第一粘着部21の第一粘着面21a及び第二粘着部22の第二粘着面22aからワークWの僅かな変形で確実に押し剥がすことができる。
その結果、一つの粘着部2を挟んで内外に二つの剥離部3が二重に配置された全体サイズの第一実施形態に比べ、粘着部2と剥離部3が集約されず分散して配置される。このため、内側の第一粘着面21a及び外側の第二粘着面22aによるワークWの粘着力や、中央の第一押圧面31a,中間の第二押圧面32a及び外側の第三押圧面33aによるワークWの剥離力が向上して、チャック性能に優れる。
【0023】
[ワーク貼り合わせ機の実施例]
ワーク貼り合わせ機Bは、対向する一対の保持板1,1′のいずれか一方か又は両方に、複数のワーク粘着チャック装置Aをそれぞれ所定間隔毎に分散させて取り付け、粘着部2で粘着保持されたワーク(第一ワーク)Wを、複数の剥離部3による粘着部2からの剥離で、もう一つのワーク(第二ワーク)W′に貼り合わせる。
図4に示される例では、第一実施形態のワーク粘着チャック装置A1が一方(上方)の保持板1のみに分散して組み付けられ、粘着部2でワーク(第一ワーク)Wを着脱自在に粘着保持し、他方(下方)の保持板1′には、シール材Cを介して第一ワークWと平行に対向するようにもう一つのワーク(第二ワーク)W′が保持されている。複数の剥離部3でワーク(第一ワーク)Wを粘着部2から剥離することにより、シール材Cを挟んでもう一つのワーク(第二ワーク)W′に重ね合わせて貼り合わせている。
さらに必要に応じて、一対の保持板1,1′のいずれか一方か又は両方には、第一ワークWや第二ワークW′とZ方向に対向して吸引吸着部12が設けられ、複数の吸引吸着部12によって第一ワークW又は第二ワークW′のいずれか一方か又は両方を着脱自在に吸引吸着することも可能である。
図示例では、一方(上方)の保持板1の平滑面1aのみに、複数のワーク粘着チャック装置Aをそれぞれ囲むように複数の吸引吸着部12が配置されている。
また、その他の例として図示しないが、他方(下方)の保持板1′にもワーク粘着チャック装置Aや吸引吸着部を設けることも可能である。
【0024】
特にLCDなどのワーク貼り合わせ機では、大気雰囲気又は真空雰囲気や所定の真空度に到達した雰囲気で、粘着部2により第一ワークWを粘着保持し、この粘着保持された第一ワークWを複数の剥離部3で強制的に剥離した後に、第一ワークWの周囲を大気開放する(大気雰囲気に戻す)ことが好ましい。
この場合には、内側の第一剥離部31の第一押圧面31aと外側の第二剥離部32の第二押圧面32aを、第一ワークWの表面W1(内側の第一不粘着部位W3,外側の不粘着部位W4)に接触させたままで、第一ワークWの周囲が真空雰囲気から大気開放されると、粘着部2が配置される空間部S1は真空状態となる。このため、第一ワークWの表面W1(内側の第一不粘着部位W3,外側の不粘着部位W4)から内側の第一押圧面31aと外側の第二押圧面32aを剥離できなくなる可能性がある。
このような場合であっても、外側の第二押圧面32aが押圧通路3pを有することにより、押圧通路3pを通って第二剥離部32よりも外側の外方空間Sоから粘着部2がある空間部S1へ空気が流入して、空間部S1とワークWとの間が真空破壊される。さらに粘着面2aが粘着通路2pを有することにより、粘着通路2pを通って空間部S1から粘着部2よりも内側の内方空間Siへ空気が流入して、内方空間SiとワークWとの間が真空破壊される。
これにより、真空中で粘着剥離されたワークWを大気雰囲気で複数の剥離部3(内側の第一剥離部31,外側の第二剥離部32)から容易で且つ確実に剥離することができる。
【0025】
このような本発明の実施形態に係るワーク貼り合わせ機Bによると、一方の保持板1の対向面11aにおいて複数のワーク粘着チャック装置Aの粘着部2で粘着保持されたワーク(第一ワーク)Wを、複数の剥離部3(内側の第一剥離部31,外側の第二剥離部32)で、他方の保持板1′に保持されたもう一つのワークW′に向け押し剥がす。
これにより、粘着部2から押し剥がしたワークWが、もう一つのワークW′に貼り合わされる。
したがって、変形し易い薄板状のワーク(第一ワーク)Wであっても粘着部2の粘着面2aから比較的に小さなたわみ変形でスムーズに押し剥して、もう一つのワーク(第二ワーク)W′に貼り合わせることができる。
その結果、粘着ゴムと隣合う加熱膨脹部の突出変形により、加熱膨脹部と連続した被粘着部位の一端側から一方向のみへ押し剥がして、下方に位置した第2の基板と貼り合わせてLCDを作成する従来のものに比べ、ワークWのたわみが比較的に小さくなるため、両ワーク(第一ワーク,第二ワーク)W,W′の間隔に差が生じ難くて液晶の流れも少なくなる。
これにより、真空気泡やムラを発生する可能性が低くなって、製品の歩留まりが向上して高性能な製品の生産が図れる。
【0026】
なお、前示の実施形態(第一実施形態〜第三実施形態)では、チャック本体11の全体形状が円形の板状である場合を説明したが、これに限定されず、チャック本体11の全体形状を矩形の板状に変更してもよい。
第三実施形態において図示例では、二つの粘着部2が挟まれるように内外に三つの剥離部3を三重に配置したが、これに限定されず、三つ以上の粘着部2が挟まれるように内外に四つ以上の剥離部3を四重以上に配置することや、粘着部2及び剥離部3を四角又は多角形などの枠状に設けることや、対向面11aの略中央に粘着部2を配置してもよい。チャック本体11の全体サイズは、剥離部3の二重配置よりも剥離部3の三重配置や四重以上に配置が大型となるようにサイズ変更することも可能である。
これらの場合においても、前述した第一実施形態〜第三実施形態と同様な作用と利点が得られる。
さらに、本発明の実施形態に係るワーク粘着チャック装置Aをワーク貼り合わせ機Bに用いた場合を説明したが、これに限定されず、ワーク貼り合わせ機Bに代えてワーク搬送装置などに用いることも可能である。
この場合においても、前述したワーク貼り合わせ機Bと同様な作用と利点が得られる。
薄板状のワークWに対して接近又は離隔する方向へ相対的に移動自在に設けられる対向面と、対向面にワークの表面と対向するように設けられる粘着部と、対向面において粘着部の内側及び外側にそれぞれ弾性変形可能に設けられる複数の剥離部と、複数の剥離部をそれぞれワークに向けて突出変形させる剥離用駆動部と、剥離用駆動部を作動制御する制御部と、を備え、粘着部は、環状又は枠状に形成されて、ワークの表面との接触により表面を着脱自在に粘着保持する粘着面を有し、複数の剥離部は、ワークの表面において粘着面で粘着保持される被粘着部位を挟んで隣合う複数の不粘着部位に向け突出変形して、複数の不粘着部位を押圧する複数の押圧面を有し、制御部は、複数の押圧面による複数の不粘着部位の押圧で、粘着面と被粘着部位の間に、複数の不粘着部位と連続した被粘着部位の両端側から拡開する空間部S1が形成されるように制御することを特徴とするワーク粘着チャック装置。