特許第6942983号(P6942983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6942983
(24)【登録日】2021年9月13日
(45)【発行日】2021年9月29日
(54)【発明の名称】発振器、電子機器および移動体
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20210916BHJP
   H01L 23/20 20060101ALI20210916BHJP
【FI】
   H03B5/32 H
   H03B5/32 A
   H01L23/20
【請求項の数】12
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-52712(P2017-52712)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-157377(P2018-157377A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2020年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】小幡 直久
【審査官】 ▲高▼橋 徳浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−053663(JP,A)
【文献】 特開2016−187154(JP,A)
【文献】 特開2010−050778(JP,A)
【文献】 特開2017−038125(JP,A)
【文献】 特開2016−174305(JP,A)
【文献】 特開2010−103802(JP,A)
【文献】 特開2013−172258(JP,A)
【文献】 特開2014−107862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/20
H03B5/30−H03B5/42
H03H3/007−H03H3/10
H03H9/00−H03H9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動素子と、
前記振動素子を発振させ、発振信号を出力する発振用回路と、
温度を検出する温度センサーと、
前記振動素子の周波数温度特性を、前記温度センサーの出力信号に基づいて補償する温度補償回路と、
前記振動素子を収容し、内部が第1雰囲気である第1容器と、
前記第1容器、前記発振用回路、前記温度センサー、および前記温度補償回路を収容し、内部が第2雰囲気である第2容器と、
を含み、
前記第1雰囲気の熱伝導率は、前記第2雰囲気の熱伝導率よりも高く、
前記第1雰囲気の圧力は、大気圧よりも高い、発振器。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1雰囲気の圧力は、前記第2雰囲気の圧力よりも高い、発振器。
【請求項3】
振動素子と、
前記振動素子を発振させ、発振信号を出力する発振用回路と、
温度を検出する温度センサーと、
前記振動素子の周波数温度特性を、前記温度センサーの出力信号に基づいて補償する温度補償回路と、
前記振動素子を収容し、内部が第1雰囲気である第1容器と、
前記第1容器、前記発振用回路、前記温度センサー、および前記温度補償回路を収容し、内部が第2雰囲気である第2容器と、
を含み、
前記第1雰囲気の圧力は、前記第2雰囲気の圧力よりも高く、かつ、大気圧よりも高い、発振器。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記第1容器は、第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を含む第1ベースを含み、
前記振動素子は、前記第1面に配置され、
前記温度センサーは、前記第2面に配置されている、発振器。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2面に配置され、前記振動素子と電気的に接続された端子を含み、
前記発振用回路は、前記第2面に配置されている、発振器。
【請求項6】
請求項4または5において、
前記第1容器は、前記振動素子に対して前記第1面とは反対側に配置された第1リッドを含み、
前記第2容器は、第2ベースを含み、
前記第1リッドと前記第2ベースとが接合されている、発振器。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1リッドと前記第2ベースとは、絶縁性接着剤によって接合されている、発振器。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、
前記第1雰囲気は、ヘリウムを含む、発振器。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、
前記第2雰囲気は、真空である、発振器。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、
前記第2雰囲気の圧力は、1×10−3Pa以上10Pa以下である、発振器。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の発振器を備えている、電子機器。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の発振器を備えている、移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器、電子機器および移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
温度補償型水晶発振器(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)は、水晶振動子と当該水晶振動子を発振させるための集積回路(IC:Integrated Circuit)を有し、当該ICが所定の温度範囲で水晶振動子の発振周波数の所望する周波数(公称周波数)からのずれ(周波数偏差)を温度補償することにより、高い周波数精度が得られる。このような温度補償型水晶発振器(TCXO)は、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されたTCXOでは、集積回路が振動素子の周波数温度特性を温度センサーの出力信号に基づいて補償する温度補償回路を含んで構成されている。
【0003】
温度補償型水晶発振器は、周波数安定度が高いため、高性能、高信頼性を所望される通信機器などに利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−187152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような発振器は、実用時には、様々な温度環境下に置かれることが想定され、厳しい温度環境下に置かれた場合でも高い周波数安定性が要求される。
【0006】
例えば、ファンなどの動作により発振器が風を受ける場合、集積回路と水晶振動子との間に温度差が生じやすい。集積回路(温度センサー)と水晶振動子に温度差が生じると、温度補償回路による温度補償に誤差が生じてしまい、所望の性能を発揮できない場合がある。
【0007】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、高い周波数安定性を有することができる発振器を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記発振器を含む電子機器および移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0009】
[適用例1]
本適用例に係る発振器は、振動素子と、前記振動素子を発振させ、発振信号を出力する発振用回路と、温度を検出する温度センサーと、前記振動素子の周波数温度特性を、前記温度センサーの出力信号に基づいて補償する温度補償回路と、前記振動素子を収容し、内部が第1雰囲気である第1容器と、前記第1容器、前記発振用回路、前記温度センサー、および前記温度補償回路を収容し、内部が第2雰囲気である第2容器と、を含み、前記第1雰囲気の熱伝導率は、前記第2雰囲気の熱伝導率よりも高い。
【0010】
振動素子と発振用回路とにより、例えば、ピアース発振回路、インバーター型発振回路、コルピッツ発振回路、ハートレー発振回路などの種々の発振回路が構成されてもよい。
【0011】
本適用例に係る発振器では、第1雰囲気の熱伝導率が第2雰囲気の熱伝導率よりも高いため、温度センサーと振動素子との間では熱が伝わりやすく、第2容器の外と第2容器に収容された温度センサーおよび振動素子との間では熱が伝わりにくい。そのため、温度センサーと振動素子の温度差を小さくできる。したがって、本適用例に係る発振器では、第2雰囲気の熱伝導率が第1雰囲気の熱伝導率以上の場合よりも、温度補償回路による温度補償の誤差が小さくなり、高い周波数安定性を有することができる。
【0012】
[適用例2]
上記適用例に係る発振器において、前記第1雰囲気の圧力は、前記第2雰囲気の圧力よりも高くてもよい。
【0013】
本適用例に係る発振器では、第1雰囲気の圧力が第2雰囲気の圧力よりも高いため、温度センサーと振動素子との間では熱が伝わりやすく、第2容器の外と第2容器に収容された温度センサーおよび振動素子との間では熱が伝わりにくい。そのため、本適用例に係る発振器では、温度センサーと振動素子の温度差をより小さくでき、より高い周波数安定性を有することができる。
【0014】
[適用例3]
本適用例に係る発振器は、振動素子と、前記振動素子を発振させ、発振信号を出力する発振用回路と、温度を検出する温度センサーと、前記振動素子の周波数温度特性を、前記温度センサーの出力信号に基づいて補償する温度補償回路と、前記振動素子を収容し、内部が第1雰囲気である第1容器と、前記第1容器、前記発振用回路、前記温度センサー、および前記温度補償回路を収容し、内部が第2雰囲気である第2容器と、を含み、前記第1雰囲気の圧力は、前記第2雰囲気の圧力よりも高い。
【0015】
本適用例に係る発振器では、第1雰囲気の圧力が第2雰囲気の圧力よりも高いため、温度センサーと振動素子との間では熱が伝わりやすく、第2容器の外と第2容器に収容された温度センサーおよび振動素子との間では熱が伝わりにくい。そのため、温度センサーと振動素子の温度差を小さくできる。したがって、本適用例に係る発振器では、第2雰囲気の圧力が第1雰囲気の圧力以上の場合よりも、温度補償回路による温度補償の誤差が小さくなり、高い周波数安定性を有することができる。
【0016】
[適用例4]
上記適用例に係る発振器において、前記第1容器は、第1面と、前記第1面とは反対側の第2面と、を含む第1ベースを含み、前記振動素子は、前記第1面に配置され、前記温度センサーは、前記第2面に配置されていてもよい。
【0017】
本適用例に係る発振器では、振動素子が第1ベースの第1面に配置され温度センサーが第1ベースの第2面に配置されているため、温度センサーと振動素子の温度差を小さくできる。
【0018】
[適用例5]
上記適用例に係る発振器において、前記第2面に配置され、前記振動素子と電気的に接続された端子を含み、前記発振用回路は、前記第2面に配置されていてもよい。
【0019】
本適用例に係る発振器では、発振用回路と振動素子との間の配線長を短くでき、ノイズの影響を低減できる。
【0020】
[適用例6]
上記適用例に係る発振器において、前記第1容器は、前記振動素子に対して前記第1面とは反対側に配置された第1リッドを含み、前記第2容器は、第2ベースを含み、前記第1リッドと前記第2ベースとが接合されていてもよい。
【0021】
本適用例に係る発振器では、第1リッドと第2ベースとが接合されることにより、温度センサーを第1ベースの第2面に配置できるため、温度センサーと振動素子の温度差を小さくできる。
【0022】
[適用例7]
上記適用例に係る発振器において、前記第1リッドと前記第2ベースとは、絶縁性接着剤によって接合されていてもよい。
【0023】
絶縁性接着剤は、導電性接着剤よりも熱を伝えにくい。そのため、本適用例に係る発振器では、第2容器の外の温度変動が第2容器に収容された温度センサーおよび振動素子に与える影響を低減できる。その結果、温度センサーと振動素子の温度差を小さくできる。
【0024】
[適用例8]
上記適用例に係る発振器において、前記第1雰囲気は、ヘリウムを含んでいてもよい。
【0025】
ヘリウムは、熱伝導率が高い。そのため、本適用例に係る発振器では、温度センサーと振動素子との間で熱が伝わりやすく、温度センサーと振動素子の温度差を小さくできる。さらに、ヘリウムは不活性であるため、発振器を安全に製造できる。
【0026】
[適用例9]
上記適用例に係る発振器において、前記第2雰囲気は、真空であってもよい。
【0027】
本適用例に係る発振器では、第2容器の外と第2容器に収容された温度センサーおよび振動素子との間で熱が伝わりにくいため、温度センサーと振動素子の温度差を小さくできる。
【0028】
[適用例10]
上記適用例に係る発振器において、前記第2雰囲気の圧力は、1×10−3Pa以上10Pa以下であってもよい。
【0029】
本適用例に係る発振器では、第2容器の外と第2容器に収容された温度センサーおよび振動素子との間で熱が伝わりにくいため、温度センサーと振動素子の温度差を小さくできる。
【0030】
[適用例11]
本適用例に係る電子機器は、上記のいずれかの発振器を備えている。
【0031】
本適用例によれば、高い周波数安定性を有する発振器を備えた電子機器を実現できる。
【0032】
[適用例12]
本適用例に係る移動体は、上記のいずれかの発振器を備えている。
【0033】
本適用例によれば、高い周波数安定性を有する発振器を備えた移動体を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】実施形態に係る発振器を模式的に示す斜視図。
図2】実施形態に係る発振器を模式的に示す断面図。
図3】実施形態に係る発振器を模式的に示す上面図。
図4】実施形態に係る発振器を模式的に示す底面図。
図5】実施形態に係る発振器のパッケージのベースを模式的に示す平面図。
図6】実施形態に係る発振器の機能ブロック図。
図7】実施形態に係る発振器の製造方法の手順の一例を示すフローチャート図。
図8】第1変形例に係る発振器の構造の一例を模式的に示す断面図。
図9】第2変形例に係る発振器の構造の一例を模式的に示す断面図。
図10】第3変形例に係る発振器の構造の一例を模式的に示す上面図。
図11】第3変形例に係る発振器のパッケージのベースを模式的に示す平面図。
図12】伝熱解析の結果を示すグラフ。
図13】実施形態に係る電子機器の構成の一例を示す機能ブロック図。
図14】実施形態に係る電子機器の外観の一例を示す図。
図15】実施形態に係る移動体の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0036】
1. 発振器
1.1. 発振器の構成
図1図4は、本実施形態に係る発振器100の構造の一例を模式的に示す図である。図1は、発振器100の斜視図である。図2は、図1のII−II線断面図である。図3は、発振器100の上面図である。図4は、発振器100の底面図である。ただし、図3では、便宜上、リッド8bの図示を省略している。
【0037】
図1図4に示すように、発振器100は、電子部品である集積回路(IC:Integrated Circuit)2、振動素子3、パッケージ(第1容器)4、パッケージ(第2容器)8を含んで構成されている。
【0038】
集積回路2は、パッケージ8に収容されている。集積回路2は、後述するように、発振用回路10、温度補償回路40、および温度センサー50(図6参照)を含んで構成されている。
【0039】
振動素子3としては、例えば、水晶振動素子、SAW(Surface Acoustic Wave)共振素子、その他の圧電振動素子やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)振動素子などを用いることができる。振動素子3の基板材料としては、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電単結晶や、ジルコン酸チタン酸鉛等の圧電セラミックス等の圧電材料、又はシリコン半導体材料等を用いることができる。振動素子3の励振手段としては、圧電効果によるものを用いてもよいし、クーロン力による静電駆動を用いてもよい。
【0040】
振動素子3は、その表面側及び裏面側(表裏の関係にある2つの面)にそれぞれ金属の励振電極3aおよび励振電極3bを有しており、励振電極3aおよび励振電極3bを含む振動素子3の質量に応じた所望の周波数(発振器100に要求される周波数)で発振する。
【0041】
パッケージ4は、ベース(パッケージベース)4a(第1ベース)と、ベース4aを封止しているリッド(蓋)4b(第1リッド)と、を含む。パッケージ4は、振動素子3を
収容している。具体的には、ベース4aには凹部が設けられており、リッド4bで凹部を覆うことによって空間4cが形成され、この空間4cに振動素子3が収容されている。振動素子3は、ベース4aの第1面15aに配置されている。
【0042】
ベース4aの材質は特に限定されないが、酸化アルミニウムなどの各種セラミックスを用いることができる。リッド4bの材質は特に限定されないが、例えば、ニッケル、コバルト、鉄合金(例えばコバール)等の金属である。また、リッド4bは、板状部材を、これらの金属でコーティングしたものであってもよい。
【0043】
ベース4aとリッド4bとの間には、封止用の金属体があってもよい。この金属体は、例えばシーム封止用のコバルト合金からなる所謂シームリングや、ベース4aを構成するセラミックス材上に直接的に金属膜を配置した構成のものであってもよい。
【0044】
図5は、パッケージ4のベース4aを模式的に示す平面図である。
【0045】
図5に示すように、ベース4aの第1面(ベース4aの凹部の底面、ベース4aのパッケージ4の内側に位置する面)15aには、電極パッド11a,11b、電極パッド13a,13b、および引き出し配線14a,14bが設けられている。なお、ベース4aは、電極パッド11a,11bが配置されている板状のベース本体と、第1面15aを囲む枠体と、を備えている。
【0046】
電極パッド11a,11bは、振動素子3の2つの励振電極3a,3bにそれぞれ電気的に接続されている。電極パッド11a,11bと振動素子3(励振電極3a,3b)とは、導電性接着剤等の接続部材12(図2参照)によって接合(接着)されている。
【0047】
電極パッド13a,13bは、パッケージ4の2つの外部端子5a,5b(図3参照)にそれぞれ電気的に接続されている。
【0048】
引き出し配線14aは、電極パッド11aと電極パッド13aとを電気的に接続している。引き出し配線14bは、電極パッド11bと電極パッド13bとを電気的に接続している。
【0049】
図5に示すように、平面視において(ベース4aの第1面15aの垂線方向から見て)、ベース4a(第1面15a)の中心を通り、ベース4aを二等分する仮想直線Lを引いたときに、電極パッド13aおよび電極パッド13bは、仮想直線Lに対して電極パッド11aおよび電極パッド11bが設けられている側に位置している。これにより、引き出し配線14aの長さと引き出し配線14bの長さの差を小さくできる。図示の例では、引き出し配線14aの長さと引き出し配線14bの長さとは等しい。
【0050】
パッケージ4は、図2に示すように、パッケージ8に接合(接着)されている。具体的には、パッケージ4のリッド4bがパッケージ8のベース8aに接合されている。すなわち、リッド4bがベース8aの凹部の底面側に位置し、ベース4aがリッド8b側に位置している。そのため、図2に示す例では、パッケージ8のリッド8bの側を上側、ベース8aの側を下側として、リッド4bが下側に位置し、ベース4aが上側に位置している。リッド4bは、振動素子3に対してベース4aの第1面15aとは反対側に配置されている。
【0051】
リッド4bとベース8aとは、接着部材9aによって接合(接着)されている。接着部材9aは、例えば、絶縁性接着剤である。絶縁性接着剤としては、例えば、金属フィラーなどの導電性物質が混合されていない、エポキシ系、シリコーン系、アクリル系などの樹
脂系の接着剤が挙げられる。
【0052】
なお、リッド4bの接着部材9aと接触する面の少なくとも一部が粗い状態(粗面)であってもよい。この場合、接着部材9aとの接合状態が良好になり、耐衝撃性が向上する。粗面は、例えばレーザー加工による凹凸を有した状態であり、例えばそのような加工がなされていない収容スペース(空間4c)側の面と比較して粗い。また、リッド4bを振動素子3側に凸となるように反らせてもよい。これにより、リッド4bとベース8aとの間の隙間を大きくすることができ、リッド4bとベース8aとの間の熱交換能力を下げることができる。
【0053】
本実施形態では、上記のように、パッケージ4のリッド4bがパッケージ8のベース8aに接合されているため、振動素子3は、図2に示すように、リッド4bとリッド8bとの間に位置している。振動素子3は、平面視において(発振器100を上面からみて、ベース8aの底面の垂線方向からみて)、リッド4bとリッド8bとが重なる領域に位置している。
【0054】
ベース4aの第2面15b(第1面15aとは反対側の面)には、振動素子3に電気的に接続されている外部端子5aおよび外部端子5bが設けられている。外部端子5aおよび外部端子5bは、図3に示すように、第2面15bにおいて集積回路2に対して一方側に位置している。言い換えると、平面視において、集積回路2の一辺と、第2面15bの一辺との間に、外部端子5aおよび外部端子5bが位置している。そのため、例えば、第2面15bにおいて外部端子5aが集積回路2の一方側に位置し、外部端子5bが集積回路2の他方側に位置している場合(例えば図10参照)に比べて、パッケージ4の小型化を図ることができる。
【0055】
パッケージ4の2つの外部端子5a,5bは、集積回路2の2つの端子(後述する図6のXO端子及びXI端子)にそれぞれ電気的に接続されている。図示の例では、2つの外部端子5a,5bと集積回路2の2つの端子は、それぞれボンディングワイヤー7で接続されている。
【0056】
集積回路2は、パッケージ4のベース4aに接合されている。具体的には、集積回路2は、ベース4aの第2面15bに接合されている。集積回路2は後述する温度センサー50および発振用回路10を含んで構成されており、集積回路2がベース4aの第2面15bに配置されている場合、温度センサー50および発振用回路10も第2面15bに配置されているといえる。
【0057】
集積回路2とベース4aとは、接着部材9bによって接合(接着)されている。接着部材9bは、例えば、導電性接着剤である。導電性接着剤としては、例えば、金属フィラーなどの導電性物質が混合された、エポキシ系、シリコーン系、アクリル系などの樹脂系の接着剤が挙げられる。
【0058】
図3に示すように、平面視において、集積回路2とパッケージ4(振動素子3)とは重なっている。また、ベース4aの第1面15aに振動素子3が配置され、ベース4aの第2面15bに集積回路2が配置されている。そのため、集積回路2で発生した熱が振動素子3に短時間で伝導し、集積回路2と振動素子3の温度差を小さくできる。
【0059】
なお、集積回路2は、接着部材9bと接触する面の少なくとも一部が粗い状態(粗面)であってもよい。これにより、接着部材9bとの接合状態が良好になり、耐衝撃性、熱交換性が向上する。なお、粗面としては例えば研削加工により形成した筋状等の凹凸を有した状態である。また、ベース4aの第2面15bが集積回路2に対して凹状態になるよう
に反っていてもよい。このような反りによる凹所が集積回路2と重なる所にあれば、接着部材9bを凹所に溜め易くなる。これにより集積回路2とベース4aとの間に十分な量の接着部材9bを配置することができるので、両者間の接着が良好になり集積回路2とベース4a、すなわち集積回路2と振動素子3との間の熱交換性が良くなる。
【0060】
パッケージ8は、ベース(パッケージベース)8a(第2ベース)と、ベース8aを封止しているリッド(蓋)8b(第2リッド)と、を含む。パッケージ8は、振動素子3が収容されているパッケージ4と、集積回路2と、を同一空間内に収容している。すなわち、パッケージ8は、パッケージ4、発振用回路10、温度補償回路40、および温度センサー50(図6参照)を収容している。具体的には、ベース8aには、凹部が設けられており、リッド8bで凹部を覆うことによって空間8cが形成され、空間8cに集積回路2とパッケージ4とが収容されている。
【0061】
パッケージ8の内面とパッケージ4との間には、空間が設けられている。図示の例では、ベース8aの底面以外の内壁面(内側面)とパッケージ4とは接しておらず、その間には空間(隙間)が設けられている。また、リッド8bとパッケージ4とは接しておらず、その間には空間(隙間)が設けられている。
【0062】
パッケージ8の内面と集積回路2との間には、空間が設けられている。図示の例では、ベース8aの内壁面と集積回路2とは接しておらず、その間には空間(隙間)が設けられている。また、リッド8bと集積回路2とは接しておらず、その間には空間(隙間)が設けられている。
【0063】
ベース8aの材質は特に限定されないが、酸化アルミニウムなどの各種セラミックスを用いることができる。リッド8bの材質は、例えば、金属である。リッド8bの材質は、リッド4bの材質と同じであってもよいし、異なっていてもよい。本実施形態のリッド8bは、板状であり、凹みを有するキャップ形状と比較してリッド8bの表面積が小さい。そのため、パッケージ側面方向からの風を受け流し易いので、外気よる温度変動を抑制することができる。セラミックス製のベース8aとリッド8bとの接合には、例えば、封着体が用いられる。封着体としては、例えばコバルト合金、金などの材質を含む金属封着体や、ガラス、樹脂などの非金属封着体を用いることができる。
【0064】
発振器100では、パッケージ8のリッド8bと集積回路2との間の距離D1(最短距離)は、集積回路2と振動素子3との間の距離D2(最短距離)よりも大きい。図示の例では、距離D1はリッド8bの下面と集積回路2の上面との間の距離であり、距離D2は集積回路2の下面と振動素子3の上面との間の距離である。このように、集積回路2をリッド8bよりも振動素子3に近づけることにより、集積回路2と振動素子3の温度差を小さくできる。
【0065】
ベース8aの内部又は凹部の表面には、各外部端子6と電気的に接続された不図示の配線が設けられており、各配線と集積回路2の各端子とは金等のボンディングワイヤー7でボンディングされている。
【0066】
図4に示すように、ベース8aの裏面には、電源端子である外部端子VDD1、接地端子である外部端子VSS1、周波数制御用の信号が入力される端子である外部端子VC1、および出力端子である外部端子OUT1の4個の外部端子6が設けられている。外部端子VDD1には電源電圧が供給され、外部端子VSS1は接地される。
【0067】
発振器100では、パッケージ4の空間4cの雰囲気(第1雰囲気)の熱伝導率は、パッケージ8の空間8cの雰囲気(第2雰囲気)の熱伝導率よりも高い。
【0068】
パッケージ4の空間4cの雰囲気は、熱伝導率が高い気体が望ましい。パッケージ4の空間4cの雰囲気は、例えば、水素、ヘリウム、これらのガスを主成分とする混合ガスであり、より好ましくはヘリウムである。ヘリウムは、熱伝導率が高く、かつ、不活性であるため、パッケージ4の空間4cに充填されるガスとして好ましい。
【0069】
パッケージ8の空間8cの雰囲気は、熱伝導率が低い気体が望ましい。パッケージ8の空間8cの雰囲気は、例えば、空気(大気)である。パッケージ8の空間8cの雰囲気は、例えば、窒素、アルゴンなどの空間4cのガスよりも熱伝導率が低い希ガス、これらのガスを主成分とする混合ガスであってもよい。
【0070】
パッケージ4の空間4cの雰囲気の熱伝導率をパッケージ8の空間8cの雰囲気の熱伝導率よりも高くすることにより、集積回路2と振動素子3との間では熱が伝わりやすくなり、パッケージ8の外とパッケージ8に収容された集積回路2との間では熱が伝わりにくくなる。そのため、集積回路2で発生した熱を振動素子3に短時間で伝導させることができ、かつ、パッケージ8の外の温度変動が集積回路2および振動素子3に与える影響を低減できる。その結果、集積回路2と振動素子3の温度差、すなわち、温度センサー50と振動素子3の温度差を小さくできる。
【0071】
また、発振器100では、パッケージ4の空間4cの雰囲気の圧力は、パッケージ8の空間8cの雰囲気の圧力よりも高い。
【0072】
パッケージ4の空間4cの雰囲気の圧力は、例えば、大気圧と同じ圧力(常圧)である。パッケージ8の空間8cの雰囲気は、例えば、真空(大気圧より低い圧力)である。より好ましくは、パッケージ8の空間8cの雰囲気の圧力は、1×10−3Pa以上10Pa以下である。
【0073】
パッケージ4の空間4cの雰囲気の圧力をパッケージ8の空間8cの雰囲気の圧力よりも高くすることにより、集積回路2と振動素子3との間では熱が伝わりやすくなり、パッケージ8の外とパッケージ8に収容された集積回路2との間では熱が伝わりにくくなる。そのため、集積回路2と振動素子3の温度差、すなわち、温度センサー50と振動素子3の温度差を小さくできる。
【0074】
このように、発振器100では、パッケージ4の空間4cの雰囲気の熱伝導率がパッケージ8の空間8cの雰囲気の熱伝導率よりも高く、かつ、パッケージ4の空間4cの雰囲気の圧力がパッケージ8の空間8cの雰囲気の圧力よりも高い。例えば、発振器100では、空間4cには常圧のヘリウムが充填されており、空間8cは真空(例えば空気が充填されていた空間8cを減圧して真空にした状態)である。
【0075】
なお、パッケージ4の空間4cの雰囲気の圧力を、大気圧よりも高くしてもよい。これにより、集積回路2と振動素子3との間でより熱が伝わりやすくなり、集積回路2と振動素子3の温度差をより小さくできる。
【0076】
図6は、発振器100の機能ブロック図である。図6に示すように、発振器100は、振動素子3と、振動素子3を発振させるための集積回路(IC)2と、を含む発振器である。
【0077】
集積回路2は、電源端子であるVDD端子、接地端子であるVSS端子、入出力端子であるOUT端子、周波数を制御する信号が入力される端子であるVC端子、振動素子3との接続端子であるXI端子及びXO端子が設けられている。VDD端子、VSS端子、O
UT端子及びVC端子は、集積回路2の表面に露出しており、それぞれ、パッケージ8に設けられた外部端子VDD1,VSS1,OUT1,VC1と接続されている。また、XI端子は振動素子3の一端(一方の端子)と接続され、XO端子は振動素子3の他端(他方の端子)と接続される。
【0078】
本実施形態では、集積回路2は、発振用回路10、出力回路20、周波数調整回路30、AFC(Automatic Frequency Control)回路32、温度補償回路40、温度センサー50、レギュレーター回路60、記憶部70、及びシリアルインターフェース(I/F)回路80を含んで構成されている。なお、集積回路2は、これらの要素の一部を省略又は変更し、あるいは他の要素を追加した構成としてもよい。
【0079】
レギュレーター回路60は、VDD端子から供給される電源電圧VDD(正の電圧)に基づき、発振用回路10、周波数調整回路30、AFC回路32、温度補償回路40、出力回路20の一部又は全部の電源電圧または基準電圧となる一定電圧を生成する。
【0080】
記憶部70は、不揮発性メモリー72とレジスター74とを有しており、外部端子から、シリアルインターフェース回路80を介して、不揮発性メモリー72又はレジスター74に対するリードおよびライト(以下、リード/ライト)が可能に構成されている。本実施形態では、発振器100の外部端子と接続される集積回路2の端子はVDD,VSS,OUT,VCの4つしかないため、シリアルインターフェース回路80は、例えば、VDD端子の電圧が閾値よりも高い時に、VC端子から入力されるクロック信号とOUT端子から入力されるデータ信号を受け付け、不揮発性メモリー72あるいはレジスター74に対してデータのリード/ライトを行う。
【0081】
不揮発性メモリー72は、各種の制御データを記憶するための記憶部であり、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)やフラッシュメモリーなどの書き換え可能な種々の不揮発性メモリーであってもよいし、ワンタイムPROM(One Time Programmable Read Only Memory)のような書き換え不可能な種々の不揮発性メモリーであってもよい。
【0082】
不揮発性メモリー72には、周波数調整回路30を制御するための周波数調整データや、温度補償回路40を制御するための温度補償データ(1次補償データ、・・・、n次補償データ)が記憶される。さらに、不揮発性メモリー72には、出力回路20やAFC回路32をそれぞれ制御するためのデータ(不図示)も記憶される。
【0083】
周波数調整データは、発振器100の周波数を調整するためのデータであり、発振器100の周波数が所望の周波数からずれていた場合に、周波数調整データを書き換えることで、発振器100の周波数が所望の周波数に近づくように微調整することができる。
【0084】
温度補償データ(1次補償データ、・・・、n次補償データ)は、発振器100の温度補償調整工程において算出される、発振器100の周波数温度特性の補正用のデータであり、例えば、振動素子3の周波数温度特性の各次数成分に応じた1次〜n次の係数値であってもよい。ここで、温度補償データの最大次数nとしては、振動素子3の周波数温度特性を打ち消し、さらに、集積回路2の温度特性の影響も補正可能な値が選択される。例えば、nは振動素子3の周波数温度特性の主要な次数よりも大きい整数値であってもよい。例えば、振動素子3がATカット水晶振動素子であれば、周波数温度特性は3次曲線を呈し、その主要な次数は3であるので、nとして3よりも大きい整数値(例えば、5又は6)が選択されてもよい。なお、温度補償データは、1次〜n次のすべての次数の補償データを含んでもよいし、1次〜n次のうちの一部の次数の補償データのみを含んでもよい。
【0085】
不揮発性メモリー72に記憶されている各データは、集積回路2の電源投入時(VDD端子の電圧が0Vから所望の電圧まで立ち上がる時)に不揮発性メモリー72からレジスター74に転送され、レジスター74に保持される。そして、周波数調整回路30にはレジスター74に保持される周波数調整データが入力され、温度補償回路40にはレジスター74に保持される温度補償データ(1次補償データ、・・・、n次補償データ)が入力され、出力回路20やAFC回路32にもレジスター74に保持される各制御用のデータが入力される。
【0086】
不揮発性メモリー72が書き換え不可能である場合には、発振器100の検査時において、外部端子からシリアルインターフェース回路80を介して、不揮発性メモリー72から転送される各データが保持されるレジスター74の各ビットに直接各データが書き込まれて発振器100が所望の特性を満たすように調整され、調整された各データが最終的に不揮発性メモリー72に書き込まれる。また、不揮発性メモリー72が書き換え可能である場合には、発振器100の検査時において、外部端子からシリアルインターフェース回路80を介して、不揮発性メモリー72に各データが書き込まれるようにしてもよい。ただし、不揮発性メモリー72への書き込みは一般に時間がかかるため、発振器100の検査時には、検査時間を短縮するために、外部端子からシリアルインターフェース回路80を介してレジスター74の各ビットに直接各データが書き込まれ、調整された各データが最終的に不揮発性メモリー72に書き込まれるようにしてもよい。
【0087】
発振用回路10は、振動素子3の出力信号を増幅して振動素子3にフィードバックすることで、振動素子3を発振させ、振動素子3の発振に基づく発振信号を出力する。例えば、レジスター74に保持された制御データによって、発振用回路10の発振段電流が制御されてもよい。
【0088】
周波数調整回路30は、レジスター74に保持された周波数調整データに応じた電圧を発生させて、発振用回路10の負荷容量として機能する可変容量素子(不図示)の一端に印加する。これにより、所定の温度(例えば、25℃)かつVC端子の電圧が所定の電圧(例えば、VDD/2)となる条件下での発振用回路10の発振周波数(基準周波数)がほぼ所望の周波数となるように制御(微調整)される。
【0089】
AFC回路32は、VC端子の電圧に応じた電圧を発生させて、発振用回路10の負荷容量として機能する可変容量素子(不図示)の一端に印加する。これにより、発振用回路10の発振周波数(振動素子3の発振周波数)が、VC端子の電圧値に基づき制御される。例えば、レジスター74に保持された制御データによって、AFC回路32のゲインが制御されてもよい。
【0090】
温度センサー50は、温度を検出する。温度センサー50は、その周辺の温度に応じた信号(例えば、温度に応じた電圧)を出力する感温素子である。温度センサー50は、温度が高いほど出力電圧が高い正極性のものであってもよいし、温度が高いほど出力電圧が低い負極性のものであってもよい。なお、温度センサー50としては、発振器100の動作が保証される所望の温度範囲において、温度変化に対して出力電圧ができるだけ線形に変化するものが望ましい。
【0091】
温度補償回路40は、振動素子3の周波数温度特性を、温度センサー50の出力信号に基づいて補償する。温度補償回路40は、温度センサー50からの出力信号が入力され、振動素子3の周波数温度特性を補償するための電圧(温度補償電圧)を発生させて、発振用回路10の負荷容量として機能する可変容量素子(不図示)の一端に印加する。これにより、発振用回路10の発振周波数が、温度によらずほぼ一定になるように制御される。本実施形態では、温度補償回路40は、1次電圧発生回路41−1〜n次電圧発生回路4
1−n及び加算回路42を含んで構成されている。
【0092】
1次電圧発生回路41−1〜n次電圧発生回路41−nは、それぞれ、温度センサー50からの出力信号が入力され、レジスター74に保持された1次補償データ〜n次補償データに応じて、周波数温度特性の1次成分からn次成分を補償するための1次補償電圧〜n次補償電圧を発生させる。
【0093】
加算回路42は、1次電圧発生回路41−1〜n次電圧発生回路41−nがそれぞれ発生させる1次補償電圧〜n次補償電圧を加算して出力する。この加算回路42の出力電圧が温度補償回路40の出力電圧(温度補償電圧)となる。
【0094】
出力回路20は、発振用回路10が出力する発振信号が入力され、外部出力用の発振信号を生成し、OUT端子を介して外部に出力する。例えば、レジスター74に保持された制御データによって、出力回路20における発振信号の分周比や出力レベルが制御されてもよい。発振器100の出力周波数範囲は、例えば、10MHz以上800MHz以下である。
【0095】
このように構成された発振器100は、所望の温度範囲において、温度によらず、外部端子VC1の電圧に応じた一定の周波数の発振信号を出力する電圧制御型の温度補償型発振器(振動素子3が水晶振動素子であればVC−TCXO(Voltage Controlled Temperature Compensated Crystal Oscillator))として機能する。
【0096】
1.2. 発振器の製造方法
図7は、本実施形態に係る発振器100の製造方法の手順の一例を示すフローチャート図である。図7の工程S1および工程S10〜S70の一部を省略又は変更し、あるいは、他の工程を追加してもよい。また、可能な範囲で、各工程の順番を適宜変更してもよい。
【0097】
まず、パッケージ4に振動素子3を収容する(S1)。この工程S1では、まず、振動素子3をベース4aに搭載し、リッド4bによりベース4aを封止する。例えば、パッケージ4の空間4cの雰囲気をヘリウムにする場合、リッド4bによりベース4aを封止する工程を、ヘリウム雰囲気で行う。具体的には、ベース4aおよびリッド4bを真空装置内に置き、真空装置内を排気した後にヘリウムを流入させて真空装置内をヘリウム雰囲気にした状態で、リッド4bをベース4aに接合する。これにより、空間4cの雰囲気が常圧のヘリウムであるパッケージ4に振動素子3を収容することができる。
【0098】
次に、パッケージ8(ベース8a)に、集積回路2および振動素子3を収容したパッケージ4を搭載する(S10)。工程S10により、集積回路2とパッケージ4の外部端子5a,5bとが接続され、集積回路2に電源を供給すると集積回路2と振動素子3とが電気的に接続される状態になる。
【0099】
次に、リッド8bによりベース8aを封止し、熱処理を行ってリッド8bをベース8aに接合する(S20)。例えば、パッケージ8の空間8cの雰囲気を真空にする場合、リッド8bによるベース8aの封止は、真空雰囲気で行われる。具体的には、ベース8aおよびリッド8bを真空装置内に置き(真空装置内は例えば空気)、真空装置内を排気して真空装置内を真空雰囲気とした状態で、リッド8bをベース8aに接合する。これにより、空間8cの雰囲気が真空であるパッケージ8に、集積回路2および振動素子3(パッケージ4)を収容することができる。
【0100】
工程S1、工程S10、および工程S20により、パッケージ4の空間4cの雰囲気の
熱伝導率がパッケージ8の空間8cの雰囲気の熱伝導率よりも高く、かつ、パッケージ4の空間4cの雰囲気の圧力がパッケージ8の空間8cの雰囲気の圧力よりも高い発振器100を組み立てることができる。
【0101】
次に、発振器100の基準周波数(基準温度T0(例えば、25℃)での周波数)を調整する(S30)。この工程S30では、基準温度T0で発振器100を発振させて周波数を測定し、周波数偏差が0に近づくように周波数調整データを決定する。
【0102】
次に、発振器100のVC(Voltage Control)感度を調整する(S40)。VC感度は、制御電圧の変化に対する発振周波数の変化の割合である。この工程S40では、基準温度T0において、外部端子VC1に所定の電圧(例えば、0VやVDD)を印加した状態で発振器100を発振させて周波数を測定し、所望のVC感度が得られるように、AFC回路32の調整データを決定する。
【0103】
次に、発振器100の温度補償調整を行う(S50)。この温度補償調整工程S50では、所望の温度範囲(例えば、−40℃以上105℃以下)において、複数の温度で発振器100の周波数を測定し、測定結果に基づいて、発振器100の周波数温度特性を補正するための温度補償データ(1次補償データ、・・・、n次補償データ)を生成する。具体的には、温度補償データの算出プログラムが、複数の温度での周波数の測定結果を用いて、発振器100の周波数温度特性(振動素子3の周波数温度特性と集積回路2の温度特性を含む)を、温度(温度センサー50の出力電圧)を変数とするn次の式で近似し、近似式に応じた温度補償データ(1次補償データ、・・・、n次補償データ)を生成する。例えば、温度補償データの算出プログラムは、基準温度T0における周波数偏差を0とし、かつ、所望の温度範囲での周波数偏差の幅を小さくするような温度補償データ(1次補償データ、・・・、n次補償データ)を生成する。
【0104】
次に、記憶部70の不揮発性メモリー72に、工程S30、S40及びS50で得られた各データを記憶させる(S60)。
【0105】
最後に、発振器100の周波数温度特性を測定し、良否を判定する(S70)。この工程S70では、温度を徐々に変化させながら発振器100の周波数を測定し、所望の温度範囲(例えば、−40℃以上105℃以下)において周波数偏差が所定範囲内にあるか否かを評価し、周波数偏差が所定範囲内にあれば良品、所定範囲内になければ不良品と判定する。
【0106】
1.3. 特徴
本実施形態に係る発振器100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0107】
発振器100では、パッケージ4の空間4cの雰囲気の熱伝導率は、パッケージ8の空間8cの雰囲気の熱伝導率よりも高い。そのため、発振器100では、上述したように、集積回路2と振動素子3の温度差、すなわち、温度センサー50と振動素子3の温度差を小さくできる。その結果、発振器100では、パッケージ8の空間8cの雰囲気の熱伝導率がパッケージ4の空間4cの雰囲気の熱伝導率以上の場合よりも、温度補償回路40による温度補償の誤差が小さくなり、高い周波数安定性を有することができる。したがって、発振器100では、例えば、発振器100が風を受けるような環境、発振器100の外の温度が変動するような環境など、厳しい温度環境下においても高い周波数安定性を有することができる(後述する「1.5.実験例」参照)。
【0108】
発振器100では、パッケージ4の空間4cの雰囲気は、ヘリウムを含む。ヘリウムは、熱伝導率が高い。そのため、集積回路2と振動素子3との間で熱が伝わりやすく、集積
回路2と振動素子3の温度差を小さくできる。さらに、ヘリウムは不活性であるため、発振器100を安全に製造できる。
【0109】
発振器100では、パッケージ4の空間4cの雰囲気の圧力は、パッケージ8の空間8cの雰囲気の圧力よりも高い。そのため、発振器100では、上述したように、集積回路2と振動素子3の温度差、すなわち、温度センサー50と振動素子3の温度差を小さくできる。したがって、発振器100では、厳しい温度環境下においても高い周波数安定性を有することができる(後述する「1.5.実験例」参照)。
【0110】
発振器100では、パッケージ8の空間8cの雰囲気は、真空である。そのため、発振器100では、パッケージ8の外と、パッケージ8に収容された集積回路2および振動素子3と、の間で熱が伝わりにくくなり、集積回路2と振動素子3の温度差を小さくできる。
【0111】
発振器100では、パッケージ8の空間8cの圧力は、1×10−3Pa以上10Pa以下である。そのため、発振器100では、パッケージ8の外と、パッケージ8に収容された集積回路2および振動素子3と、の間で熱が伝わりにくくなり、集積回路2と振動素子3の温度差を小さくできる。
【0112】
発振器100では、パッケージ4は、第1面15aと、第1面15aとは反対側の第2面15bと、を有し、振動素子3は第1面15aに配置され、温度センサー50を含む集積回路2は第2面15bに配置されている。そのため、集積回路2と振動素子3の温度差を小さくできる。
【0113】
発振器100では、パッケージ4のリッド4bとパッケージ8のベース8aとが接合されている。そのため、発振器100では、集積回路2をベース4aの第2面15bに配置することができ、上記のように、集積回路2と振動素子3の温度差を小さくできる。
【0114】
発振器100では、集積回路2および外部端子5a,5bは、ベース4aの第2面15bに配置されている。そのため、発振器100では、外部端子5a,5bを、パッケージ8のベース8a(凹部の底面)から離すことができ、外部からのノイズの影響を低減できる。さらに、発振器100では、外部端子5a,5bがベース4aの第2面15bに設けられていることにより、振動素子3と集積回路2(発振用回路10)との間の配線長を短くでき、ノイズの影響を低減できる。例えば、集積回路2がパッケージ4のリッド4bに配置された場合(例えば図8参照)、振動素子3と集積回路2とがベース8aの内部又は凹部の表面に設けられた配線を介して電気的に接続されるため、配線長が長くなってしまいノイズの影響を受けやすい。
【0115】
発振器100では、振動素子3は、パッケージ4のリッド4bとパッケージ8のリッド8bとの間に位置している。そのため、発振器100では、例えばリッド4bおよびリッド8bの材質を金属にすることにより、リッド4bとリッド8bとを外部からのノイズ(電磁ノイズ)を遮断するためのシールドとして機能させることができる。したがって、振動素子3に対するノイズの影響を低減できる。
【0116】
発振器100では、パッケージ4のリッド4bとパッケージ8のベース8aとは、絶縁性接着剤である接着部材9aによって接合されている。絶縁性接着剤は、導電性接着剤に比べて、熱を伝えにくい。そのため、発振器100では、パッケージ8の外の温度変動がパッケージ8に収容された集積回路2および振動素子3に与える影響を低減できる。その結果、集積回路2と振動素子3の温度差を小さくできる。
【0117】
発振器100では、パッケージ4のベース4aと集積回路2とは、導電性接着剤である接着部材9bによって接合されている。そのため、発振器100では、集積回路2で発生した熱が振動素子3に短時間で伝導し、集積回路2と振動素子3の温度差を小さくできる。
【0118】
発振器100では、図5に示すように、平面視において、ベース4aの中心を通り、ベース4aを二等分する仮想直線Lを引いたときに、電極パッド13aおよび電極パッド13bは、仮想直線Lに対して電極パッド11aおよび電極パッド11bが設けられている側に位置している。そのため、発振器100では、例えば、電極パッド13aおよび電極パッド13bをベース4aの対角に配置した場合(例えば図11参照)と比べて、引き出し配線14aの長さと引き出し配線14bの長さとの差を小さくできる(または長さを同じにできる)。この結果、パッケージ4の外からの熱が、電極パッド13a、引き出し配線14a、電極パッド11aを介して振動素子3に伝わる経路の経路長と、電極パッド13b、引き出し配線14b、電極パッド11bを介して振動素子3に伝わる経路の経路長と、の差を小さくすることができる。これにより、振動素子3の温度ムラを低減することができ、集積回路2と振動素子3の温度差をより小さくできる。
【0119】
なお、上記では、集積回路2に温度センサー50が組み込まれている例について説明したが、図示はしないが、集積回路2に温度センサー50が組み込まれていなくてもよい。この場合、少なくとも温度センサー50がパッケージ4のベース4aの第2面15bに配置されていればよい。これにより、温度センサー50と振動素子3の温度差を小さくでき、温度補償回路40による温度補償の誤差を小さくできる。
【0120】
1.4. 発振器の変形例
次に、本実施形態に係る発振器の変形例について説明する。
【0121】
(1)第1変形例
図8は、第1変形例に係る発振器200の構造の一例を模式的に示す断面図であり、図2に対応している。以下、発振器200において、上述した発振器100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0122】
上述した発振器100では、図2に示すように、パッケージ4のリッド4bと、パッケージ8のベース8aと、が接合されていた。
【0123】
これに対して、発振器200では、図8に示すように、パッケージ4のベース4aと、パッケージ8のベース8aと、が接合されている。発振器200では、ベース4aの第2面15bがベース8aに接合されている。
【0124】
ベース4aとベース8aとは、接着部材9aによって接着されている。接着部材9aは、導電性接着剤であり、パッケージ4の外部端子(図示せず)とベース8aの表面に設けられた配線とを接続している。
【0125】
ベース8aの内部又は凹部の表面には、集積回路2の2つの端子(図6のXO端子及びXI端子)と振動素子3の2つの端子(励振電極3a及び励振電極3b)とをそれぞれ電気的に接続するための不図示の配線が設けられている。
【0126】
集積回路2は、パッケージ4のリッド4bに接合されている。集積回路2は、接着部材9bによってリッド4bに接着(固定)されている。接着部材9bは、例えば、導電性接着剤である。
【0127】
発振器200では、発振器100と同様に、パッケージ4の空間4cの雰囲気の熱伝導率は、パッケージ8の空間8cの雰囲気の熱伝導率よりも高い。また、パッケージ4の空間4cの雰囲気の圧力は、パッケージ8の空間8cの雰囲気の圧力よりも高い。そのため、発振器200によれば、発振器100と同様に、集積回路2と振動素子3の温度差を小さくでき、厳しい温度環境下においても高い周波数安定性を有することができる。
【0128】
(2)第2変形例
図9は、第2変形例に係る発振器300の構造の一例を模式的に示す断面図であり、図2に対応している。以下、発振器300において、上述した発振器100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0129】
上述した発振器100では、図2および図3に示すように、外部端子5a,5bは、集積回路2の2つの端子(図6のXO端子及びXI端子)にそれぞれボンディングワイヤー7で接続されていた。
【0130】
これに対して、発振器300では、図9に示すように、外部端子5a,5bは、金属バンプや、銀ペーストなどで、集積回路2の2つの端子に接続されている。
【0131】
発振器300では、発振器100と同様の作用効果を奏することができる。
【0132】
(3)第3変形例
図10は、第3変形例に係る発振器400の構造の一例を模式的に示す上面図であり、図3に対応している。図11は、パッケージ4のベース4aを模式的に示す平面図であり、図5に対応している。以下、発振器400において、上述した発振器100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0133】
上述した発振器100では、図3に示すように、外部端子5aおよび外部端子5bは、パッケージ4のベース4aの第2面15bにおいて集積回路2の一方側に位置していた。
【0134】
これに対して、発振器400では、図10に示すように、パッケージ4のベース4aの第2面15bにおいて外部端子5aが集積回路2の一方側に位置し、外部端子5bが集積回路2の他方側に位置している。図示の例では、外部端子5aと外部端子5bとは、ベース4aの第2面15bの対角に位置している。
【0135】
また、発振器400では、図11に示すように、平面視において、ベース4a(第1面15a)の中心を通り、ベース4aを二等分する仮想直線Lを引いたときに、電極パッド13a、電極パッド11a、および電極パッド11bは、二等分されたベース4aの一方側に位置し、電極パッド13bは、二等分されたベース4aの他方側に位置している。図示の例では、電極パッド13aおよび電極パッド13bは、ベース4aの第1面15aの対角に配置されている。
【0136】
発振器400では、発振器100と同様の作用効果を奏することができる。
【0137】
(4)第4変形例
上述した発振器100では、図2に示すパッケージ4の空間4cの雰囲気の熱伝導率は、パッケージ8の空間8cの雰囲気の熱伝導率よりも高く、かつ、パッケージ4の空間4cの雰囲気の圧力は、パッケージ8の空間8cの雰囲気の圧力よりも高かった。
【0138】
これに対して、本変形例では、パッケージ4の空間4cの雰囲気の熱伝導率は、パッケージ8の空間8cの雰囲気の熱伝導率よりも高く、かつ、パッケージ4の空間4cの雰囲
気の圧力は、パッケージ8の空間8cの雰囲気の圧力と同じであってもよい。例えば、空間4cの雰囲気はヘリウムであり、空間8cの雰囲気は窒素であり、かつ、空間4cの雰囲気の圧力と空間8cの雰囲気の圧力とは同じ(例えば大気圧と同じ圧力)であってもよい。このような場合でも、集積回路2と振動素子3の温度差を小さくできる。
【0139】
また、本変形例では、パッケージ4の空間4cの雰囲気の熱伝導率は、パッケージ8の空間8cの雰囲気の熱伝導率と同じであり、かつ、パッケージ4の空間4cの雰囲気の圧力は、パッケージ8の空間8cの雰囲気の圧力よりも高くてもよい。例えば、空間4cの雰囲気および空間8cの雰囲気は窒素であり、空間4cの雰囲気の圧力は大気圧と同じ圧力であり空間8cの雰囲気は真空であってもよい。このような場合でも、集積回路2と振動素子3の温度差を小さくできる。
【0140】
(5)第5変形例
上述した発振器100では、図2に示すパッケージ8のリッド8bの材質は、金属であったが、リッド8bの材質は酸化アルミニウムなどの各種セラミックスであってもよい。セラミックスは、金属と比べて熱伝導率が低い。そのため、リッド8bの材質をセラミックスにすることにより、例えばリッド8bの材質が金属の場合と比べて、パッケージ8の外の温度変動がパッケージ8に収容された集積回路2および振動素子3に与える影響を低減できる。その結果、集積回路2と振動素子3の温度差を小さくできる。
【0141】
なお、リッド8bの材質はセラミックスに限定されず、ベース8aを封止することができ、かつ、熱伝導率の低い材料であればよい。
【0142】
1.5. 実験例
以下に実験例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実験例によって何ら限定されるものではない。
【0143】
(1)発振器
本実験に用いた発振器Eの構成は、上述した「1.1.発振器の構成」(図1図4参照)と同様である。具体的には、発振器Eでは、パッケージ4のリッド4bがパッケージ8のベース8aに接合されている。また、パッケージ4の空間4cの雰囲気はヘリウムであり、パッケージ8の空間8cの雰囲気は空気である。また、パッケージ4の空間4cの雰囲気の圧力は大気圧と同じ圧力であり、パッケージ8の空間8cの雰囲気の圧力は1×10−2Pa程度である。また、振動素子3は、水晶振動素子である。また、ベース4aおよびベース8aの材質はセラミックスであり、リッド4bおよびリッド8bの材質は金属である。
【0144】
比較例として、発振器C1および発振器C2を準備した。
【0145】
発振器C1の構成は、図8に示すように、パッケージ4のベース4aとパッケージ8のベース8aとを接合したものとした。発振器C1では、パッケージ4の空間4cの雰囲気およびパッケージ8の空間8cの雰囲気を窒素とし、パッケージ4の空間4cの雰囲気の圧力およびパッケージ8の空間8cの雰囲気の圧力を大気圧と同じ圧力とした。その他の構成は、発振器Eと同様である。
【0146】
発振器C2は、パッケージ4の空間4cの雰囲気およびパッケージ8の空間8cの雰囲気を窒素とし、パッケージ4の空間4cの雰囲気の圧力およびパッケージ8の空間8cの雰囲気の圧力を大気圧と同じ圧力にした点を除いて、発振器Eと同じとした。
【0147】
(2)温度センサーと振動素子の温度差
発振器E、発振器C1、および発振器C2のモデルを用いて伝熱解析(シミュレーション)を行い、振動素子3と温度センサー50の温度の状況を調べた。具体的には、発振器の集積回路2の一部をヒーター(熱源)として、集積回路2に組み込まれた温度センサー50の温度、および振動素子3の温度を伝熱解析で求め、温度センサー50と振動素子3との温度差を計算した。
【0148】
本解析では、発振器が置かれる環境を、温度25℃で一定の状態で、発振器に流速3m/sの風があたる環境とした。
【0149】
下記表1は、伝熱解析の結果を示す表である。図12は、伝熱解析の結果を示すグラフである。
【0150】
【表1】
【0151】
表1および図12に示すように、発振器C2は、発振器C1に比べて、温度センサー50と振動素子3の温度差が小さくなった。この結果から、リッド4bをベース8aに接合することで、ベース4aとベース8aとを接合した場合に比べて、温度センサー50と振動素子3の温度差を小さくできることがわかった。
【0152】
また、発振器Eは、発振器C2に比べて、温度センサー50と振動素子3の温度差が小さくなった。この結果から、空間4cの雰囲気の熱伝導率を空間8cの雰囲気の熱伝導率よりも高くし、かつ、空間4cの雰囲気の圧力を空間8cの雰囲気の圧力よりも高くすることで、空間4c,8cの雰囲気の熱伝導率および圧力を同じにした場合と比べて、温度センサー50と振動素子3の温度差を小さくできることがわかった。
【0153】
(3)アラン分散(ADEV)の測定
発振器E、発振器C1、および発振器C2について、発振器の周波数の短期安定度を、アラン分散(ADEV)を測定することで評価した。本測定では、発振器Eを、温度25℃で一定の恒温槽に入れ、流速3m/sの風を当てた状態で、アラン分散(ADEV)を測定した。発振器C1および発振器C2についても同様の測定を行った。
【0154】
下記表2は、アラン分散(ADEV:Allan DEViation)の測定結果の結果を示す表である。
【0155】
【表2】
【0156】
表2に示すように、発振器C2は測定時間間隔1秒でのアラン分散が6×10−11であり、発振器C1に比べて、周波数安定性が高いことがわかった。この結果から、パッケ
ージ4のリッド4bをパッケージ8のベース8aに接合することで、ベース4aとベース8aとを接合した場合に比べて、高い周波数安定性が得られることがわかった。
【0157】
また、発振器Eは、測定時間間隔1秒でのアラン分散が4.5×10−11であり極めて高い周波数安定性を有し、発振器C2と比べて周波数安定性が高いことがわかった。この結果から、空間4cの雰囲気の熱伝導率を空間8cの雰囲気の熱伝導率よりも高くし、かつ、空間4cの雰囲気の圧力を空間8cの雰囲気の圧力よりも高くすることで、空間4c,8cの雰囲気の熱伝導率および圧力を同じにした場合と比べて、高い周波数安定性が得られることがわかった。
【0158】
本実験例から、発振器に風があたるような厳しい温度環境下でも、発振器Eは、温度センサー50と振動素子3の温度差を小さくでき、高い周波数安定性を有することがわかった。
【0159】
2. 電子機器
図13は、本実施形態に係る電子機器の構成の一例を示す機能ブロック図である。また、図14は、本実施形態に係る電子機器の一例であるスマートフォンの外観の一例を示す図である。
【0160】
本実施形態に係る電子機器1000は、発振器1010、CPU(Central Processing
Unit)1020、操作部1030、ROM(Read Only Memory)1040、RAM(Random Access Memory)1050、通信部1060、表示部1070を含んで構成されている。なお、本実施形態に係る電子機器は、図13の構成要素(各部)の一部を省略又は変更し、あるいは、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0161】
発振器1010は、集積回路(IC)1012と振動素子1013とを備えている。集積回路(IC)1012は、振動素子1013を発振させて発振信号を発生させる。この発振信号は発振器1010の外部端子からCPU1020に出力される。
【0162】
CPU1020は、ROM1040等に記憶されているプログラムに従い、発振器1010から入力される発振信号をクロック信号として各種の計算処理や制御処理を行う。具体的には、CPU1020は、操作部1030からの操作信号に応じた各種の処理、外部装置とデータ通信を行うために通信部1060を制御する処理、表示部1070に各種の情報を表示させるための表示信号を送信する処理等を行う。
【0163】
操作部1030は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、ユーザーによる操作に応じた操作信号をCPU1020に出力する。
【0164】
ROM1040は、CPU1020が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。
【0165】
RAM1050は、CPU1020の作業領域として用いられ、ROM1040から読み出されたプログラムやデータ、操作部1030から入力されたデータ、CPU1020が各種プログラムに従って実行した演算結果等を一時的に記憶する。
【0166】
通信部1060は、CPU1020と外部装置との間のデータ通信を成立させるための各種制御を行う。
【0167】
表示部1070は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成される表示装置であり、CPU1020から入力される表示信号に基づいて各種の情報を表示する。表示部
1070には操作部1030として機能するタッチパネルが設けられていてもよい。
【0168】
発振器1010として、本発明に係る発振器(例えば発振器100)を適用することにより、厳しい温度環境下においても優れた周波数安定性を有する発振器を備えた電子機器を実現できる。
【0169】
このような電子機器1000としては種々の電子機器が考えられ、例えば、パーソナルコンピューター(例えば、モバイル型パーソナルコンピューター、ラップトップ型パーソナルコンピューター、タブレット型パーソナルコンピューター)、スマートフォンや携帯電話機などの移動体端末、ディジタルカメラ、インクジェット式吐出装置(例えば、インクジェットプリンター)、ルーターやスイッチなどのストレージエリアネットワーク機器、ローカルエリアネットワーク機器、移動体端末基地局用機器、テレビ、ビデオカメラ、ビデオレコーダー、カーナビゲーション装置、リアルタイムクロック装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ゲーム用コントローラー、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS(Point Of Sale)端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター、ヘッドマウントディスプレイ、モーショントレース、モーショントラッキング、モーションコントローラー、PDR(Personal Digital Assistant、歩行者位置方位計測)等が挙げられる。
【0170】
本実施形態に係る電子機器1000の一例として、上述した発振器1010を基準信号源、あるいは電圧可変型発振器(VCO)等として用いて、例えば、端末と有線または無線で通信を行う端末基地局用装置等として機能する伝送装置が挙げられる。発振器1010として、発振器100を適用することにより、例えば通信基地局などに利用可能な、高性能、高信頼性を所望される電子機器を実現することができる。
【0171】
また、本実施形態に係る電子機器1000の他の一例として、通信部1060が外部クロック信号を受信し、CPU1020(処理部)が、当該外部クロック信号と発振器1010の出力信号(内部クロック信号)とに基づいて、発振器1010の周波数を制御する周波数制御部と、を含む、通信装置が挙げられる。この通信装置は、例えば、ストレータム3などの基幹系ネットワーク機器やフェムトセルに使用される通信機器であってもよい。
【0172】
3. 移動体
図15は、本実施形態に係る移動体の一例を示す図(上面図)である。図15に示す移動体1100は、発振器1110、エンジンシステム、ブレーキシステム、キーレスエントリーシステム等の各種の制御を行うコントローラー1120,1130,1140、バッテリー1150、バックアップ用バッテリー1160を含んで構成されている。なお、本実施形態に係る移動体は、図15の構成要素(各部)の一部を省略し、あるいは、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0173】
発振器1110は、不図示の集積回路(IC)と振動素子とを備えており、集積回路(IC)は振動素子を発振させて発振信号を発生させる。この発振信号は発振器1110の外部端子からコントローラー1120,1130,1140に出力され、例えばクロック信号として用いられる。
【0174】
バッテリー1150は、発振器1110及びコントローラー1120,1130,1140に電力を供給する。バックアップ用バッテリー1160は、バッテリー1150の出力電圧が閾値よりも低下した時、発振器1110及びコントローラー1120,1130
,1140に電力を供給する。
【0175】
発振器1110として本発明に係る発振器(例えば発振器100)を適用することにより、厳しい温度環境下においても優れた周波数安定性を有する発振器を備えた移動体を実現できる。
【0176】
このような移動体1100としては種々の移動体が考えられ、例えば、自動車(電気自動車も含む)、ジェット機やヘリコプター等の航空機、船舶、ロケット、人工衛星等が挙げられる。
【0177】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0178】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0179】
2…集積回路、3…振動素子、3a…励振電極、3b…励振電極、4…パッケージ、4a…ベース、4b…リッド、4c…空間、5a…外部端子、5b…外部端子、6…外部端子、7…ボンディングワイヤー、8…パッケージ、8a…ベース、8b…リッド、8c…空間、9a…接着部材、9b…接着部材、10…発振用回路、11a…電極パッド、11b…電極パッド、12…接続部材、13a…電極パッド、13b…電極パッド、14a…引き出し配線、14b…引き出し配線、15a…第1面、15b…第2面、20…出力回路、30…周波数調整回路、32…AFC回路、40…温度補償回路、41−1…1次電圧発生回路、41−n…n次電圧発生回路、42…加算回路、50…温度センサー、60…レギュレーター回路、70…記憶部、72…不揮発性メモリー、74…レジスター、80…シリアルインターフェース回路、100…発振器、200…発振器、300…発振器、400…発振器、1000…電子機器、1010…発振器、1013…振動素子、1020…CPU、1030…操作部、1040…ROM、1050…RAM、1060…通信部、1070…表示部、1100…移動体、1110…発振器、1120…コントローラー、1130…コントローラー、1140…コントローラー、1150…バッテリー、1160…バックアップ用バッテリー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15