(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。例えば、実質的に同一の機能構成または論理的意義を有する複数の構成を、必要に応じて基地局100Aおよび100Bのように区別する。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、複数の構成要素の各々に同一符号のみを付する。例えば、基地局100Aおよび100Bを特に区別する必要が無い場合には、各基地局を単に基地局100と称する。
【0021】
<1.測距システムの概要>
本発明の一実施形態は、測距システムに関する。まず、
図1を参照し、本発明の一実施形態に係る測距システムの概要を説明する。
【0022】
(1−1.測距システムの構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る測距システムの概要を示す図である。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る測距システムは、1台以上の基地局100と、1台以上の移動局200と、を備える。本実施形態に係る3台以上の基地局100が、ある移動局200との距離を算出することで、この移動局200の位置が特定され得る。すなわち、本実施形態に係る測距システムが活用されることで、移動局200の測位が可能となる。
【0023】
本実施形態に係る測距システムは、例えば、工場内の製品管理等に使用される。より具体的に説明すると、工場で製造される製品に移動局200が装着され、基地局100が移動局200の位置を特定することによって、製品の位置が特定され、製品管理、製造ラインの最適化または長期停滞ロットの可視化等が可能になる。その他、本実施形態に係る測距システムは、トンネルや橋梁などの社会インフラ点検時における問題箇所記録の自動化、または、地下施設等での災害発生時における要救助者の発見および人員避難誘導などにも適用可能である。
【0024】
基地局100は、移動局200へ信号を送信し、その信号に対応する折り返し信号を受信する無線通信装置(第1の無線通信装置)である。より具体的に説明すると、基地局100は、移動局200へパルス信号を送信し、そのパルス信号に応答して移動局200から送信されるパルス信号(折り返しパルス信号)を受信する。そして、基地局100は、パルス信号の送信タイミングと折り返しパルス信号のピークタイミングとの時間差に基づいて、基地局100と移動局200との間の距離を算出する。
【0025】
ここで、
図1に示すように、複数の基地局100および複数の移動局200が存在する場合、1台の基地局100が測距システム全体の送受信スケジュールを管理してもよい。例えば、
図1における基地局100Aが、各時間帯において、パルス信号の送受信を行う基地局100と移動局200を其々1台ずつ特定する送受信スケジュールを、予め、各装置へ送信しておいてもよい。これにより、各時間帯において、パルス信号の送受信を行う基地局100と測距される移動局200が特定される。
【0026】
または、基地局100は、パルス信号の送信に先立ち、移動局200を指定する信号を送信してもよい。例えば、基地局100は、パルス信号の送信に先立ち、1の移動局200に対応するパターン信号を送信してもよい。移動局200は、パルス信号に先立って受信されるパターン信号に基づき、自身が指定されたか否かを判定し、自身が指定されている場合に折り返しパルス信号を送信することが可能となる。
【0027】
なお、上記のパルス信号の送受信は、例えば、7.25GHz〜10.25GHzを利用するUWB(Ultra Wide Band)に従って行われてもよい。UWBの広帯域信号はパルス信号のパルス形状を表現するために好適である。一方、上記の送受信スケジュール、または各移動局に対応するパターン信号の各移動局200への通知は、UWBと異なる通信方式(例えば、無線LAN)に従って行われてもよい。
【0028】
移動局200は、基地局100によって送信されたパルスを受信し、折り返しパルスを基地局100へ送信する無線通信装置(第2の無線通信装置)である。
【0029】
(1−2.背景)
ここで、本発明の技術的意義を明らかにするために、本発明の実施形態の詳細な説明に先立ち、本発明の実施形態に関する背景を説明する。
【0030】
パルス信号(電波)の進行速度は、光速と等しい30万Km/秒であるため、パルス信号の時間的な広がり(パルス信号の幅)を考慮することで、距離をより正確に算出することが可能になる。例えば、時間軸上におけるあるパルス信号の幅が10ナノ秒である場合、当該パルス信号のどの位置を当該パルス信号の到達タイミングとして扱うかによって、距離の算出結果には、最大で−1.5m〜+1.5m程度の誤差が発生する。このため、例えばパルス信号の頂点の位置(ピーク位置)を当該パルス信号の到達タイミングとして扱うことが有効である。
【0031】
このピーク位置は、パルス信号の受信信号をAD変換し、各時点における信号強度を得ることにより、特定することが可能である。しかし、AD変換によりピーク位置を特定するためには、パルス信号の幅より十分に短い時間間隔でAD変換を行う必要が生じる。そのような高速なAD変換は相応の処理負荷を伴うことから、ピーク位置を特定するための他の方法も検討されている。他の方法として、例えば、受信信号の信号強度が閾値を上回ったタイミングをピーク位置として扱う方法が考えられる。当該方法について、
図2および
図3を参照して説明する。
【0032】
図2および
図3は、ピーク位置の特定に関する具体例を示す説明図である。
図2に示したように、受信信号の信号強度が小さいほど、当該受信信号のピーク位置と当該受信信号の信号強度が閾値を上回ったタイミングの誤差は小さい。一方で、受信信号の信号強度が大きくいほど、すなわち、受信信号の信号強度と閾値との差分が大きいほど、当該受信信号のピーク位置と当該受信信号の信号強度が閾値を上回ったタイミングの誤差は大きくなってしまう。
【0033】
このため、
図3に示したように、
図2に示した例よりも閾値が高く設定されれば、受信信号のピーク位置と当該受信信号の信号強度が閾値を上回ったタイミングの誤差は小さくなる。しかし、高く設定された閾値に信号強度が達しない受信信号は検出されなくなってしまう。
【0034】
この点に関し、特許文献1には、パルス光のピーク時刻を測定する装置であって、パルス光の強度が閾値を上回るタイミングを検出する回路と、パルス光の強度が閾値を下回るタイミングを検出する回路を備える装置が開示されている。当該装置は、2つの回路の各々で検出されたタイミングの中央の時刻を、パルス光のピーク位置として特定する。また、特許文献2には、インパルス波形の電波を検波する装置であって、強度の低い電波の検波効率を向上するための装置が開示されている。当該装置は、電波の強度が閾値を上回るか否かを出力するコンパレータを備える。
【0035】
しかし、測距対象の装置が電気信号を送信した場合、無線通信装置は、
図4に示すように、当該電気信号の直接波に加え、当該電気信号の反射波(遅延波)も受信し得る。上記特許文献1に記載の装置および特許文献2に記載の装置は、遅延波の存在を考慮した設計がなされていないので、遅延波を直接波として誤検出してしまうことが懸念される。
【0036】
また、特許文献1に記載の装置においては、パルス光の強度が閾値を上回るタイミングを検出する回路と、パルス光の強度が閾値を下回るタイミングを検出する回路の2つの回路が設けられるので、回路構成が複雑になってしまう。また、特許文献2に記載の装置においては、ディスチャージャによる電波の成形に要する処理遅延により、および閾値の設定により、実際のピーク位置からずれた位置が特定されてしまう場合があった。
【0037】
本件発明者は、上記事情を一着眼点にして本発明の実施形態を創作するに至った。本発明の実施形態によれば、遅延波と直接波を区別しつつ、受信信号のピーク位置をより高精度に特定することが可能である。以下、このような本発明の実施形態の構成および動作を順次詳細に説明する。
【0038】
<2.基地局の構成>
図5は、本発明の実施形態による基地局100の構成を示す説明図である。
図5に示したように、本発明の実施形態による基地局100は、信号処理部104と、送信アンプ回路108と、アンテナ112と、バンドパスフィルタ116と、受信アンプ回路120と、信号処理部124と、コンパレータ128と、制御部130と、時計IC140と、メモリIC150と、を備える。
【0039】
信号処理部104は、制御部130から入力されるベースバンドの送信信号を無線周波数帯の送信信号にアップコンバージョンする。送信アンプ回路108は、信号処理部104から入力される無線周波数帯の送信信号を増幅し、増幅後の送信信号をアンテナ112に印加する。アンテナ112は、信号処理部104によって印加される送信信号を送信する。
【0040】
また、アンテナ112は、バンドパスフィルタ116、受信アンプ回路120および信号処理部124との協働により、移動局200から送信された信号を受信する受信部として機能する。具体的には、アンテナ112は、移動局200から送信された信号に基づいて誘起された信号を出力し、バンドパスフィルタ116は、アンテナ112から出力される信号の無線周波数帯の成分を通過させる。受信アンプ回路120は、バンドパスフィルタ116から入力される信号を増幅し、信号処理部124は、受信アンプ回路120から入力される信号をベースバンドの受信信号に変換し、ベースバンドの受信信号を出力する。
【0041】
コンパレータ128は、信号処理部124から出力される受信信号の信号強度(電圧)と閾値とを所定間隔で比較する比較部である。例えば、コンパレータ128は、受信信号の信号強度が閾値を上回る場合には「1」を出力し、受信信号の信号強度が閾値以下である場合には「0」を出力してもよい。
【0042】
時計IC140は、例えば水晶を有し、クロック信号を生成する。メモリIC150は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)のような読み書き可能なメモリである。本実施形態においては、メモリIC150は、後述するカウンタ:n、フラグ、記録表Aおよび保管表Bを格納する。
【0043】
制御部130は、基地局100の動作全般を制御する。例えば、制御部130は、バンドパスフィルタ116、受信アンプ回路120および信号処理部124などによる受信処理を制御したり、信号処理部104および送信アンプ回路108などによる送信処理を制御したりする。このような制御部130は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)またはCPU(Central Processing Unit)などのプログラマブルICであってもよい。
【0044】
また、本実施形態による制御部130は、
図5に示したように、閾値設定部132、時刻管理部134、メモリ管理部136および距離算出部138の機能を有する。
【0045】
(閾値設定部)
閾値設定部132は、コンパレータ128により受信信号の信号強度と比較される閾値を設定する。
【0046】
(時刻管理部)
時刻管理部134は、時計IC140を制御する機能を有し、時計IC140により生成されるクロック信号に基づいて現在時刻を管理する。
【0047】
(メモリ管理部)
メモリ管理部136は、複数の受信信号を直接波または遅延波に区別し、直接波に関する情報(例えば直接波のピークタイミング)を特定する特定部としての機能を有する。当該特定部としての機能の実現のために、メモリ管理部136は、コンパレータ128から入力される比較結果に基づき、メモリIC150に格納されるカウンタ:n、フラグ、記録表Aおよび保管表Bを管理する。
【0048】
カウンタ:nは、受信信号の信号強度が閾値を上回っているとコンパレータ128により連続して判定された回数、すなわち、受信信号の検出回数である。メモリ管理部136は、受信信号の信号強度が閾値を上回っていることを示す比較結果が連続してコンパレータ128から入力される度に、カウンタ:nをカウントアップする。そして、メモリ管理部136は、受信信号の信号強度が閾値以下になると、カウンタ:nを0にリセットする。ここで、
図6を参照し、カウンタ:nのカウントアップについて具体的に説明する。
【0049】
図6は、カウンタ:nのカウントアップの具体例を示す説明図である。
図6においては、受信信号1〜受信信号4が示されており、縦線は、コンパレータ128による比較が行われるタイミングを示している。
【0050】
図6に示したように、受信信号1の信号強度がコンパレータ128による5回の比較において閾値を上回ると、メモリ管理部136は、受信信号1についてのカウンタ:nを「5」までカウントアップする。そして、受信信号1の信号強度が閾値を下回ったことを示す比較結果がコンパレータ128から入力されると、メモリ管理部136は、カウンタ:nをリセットする。同様に、受信信号2の信号強度がコンパレータ128による3回の比較において閾値を上回ると、メモリ管理部136は、受信信号2についてのカウンタ:nを「3」までカウントアップする。一方、受信信号4については、受信信号4の信号強度が閾値に達していないので、カウンタ:nのカウントアップは行われない。
【0051】
なお、パルス信号の受信信号の信号強度が複数回に渡って閾値を上回り得るように、コンパレータ128が受信信号の信号強度と閾値を比較する時間間隔は、パルス信号の時間幅の1/2未満であってもよい。
【0052】
フラグは、メモリ管理部136によりカウンタ:nのカウントアップが行われているか否かを示す。例えば、メモリ管理部136は、カウンタ:nのカウントアップを継続している場合にはフラグを「1」に設定し、カウンタ:nがリセットされる際にフラグを「0」に設定してもよい。
【0053】
記録表Aは、カウンタ:nの各カウント値、および各カウント値へのカウントアップが行われた時刻が関連付けられたデータである。メモリ管理部136は、カウンタ:nのカウントアップの度に、カウントアップ後のカウンタ:nの値を現在の時刻に関連付けて記録表Aに格納する。すなわち、メモリ管理部136は、受信信号の検出番号(カウンタ:nの各カウント値)、および受信信号の検出時刻(カウントアップが行われた時刻)を記録表Aに格納する。記録表Aは、カウンタ:nのリセットと併せて初期化される。
【0054】
記録表Bは、所定の時間枠内においてカウンタ:nが最も大きい値までカウントアップされた受信信号のピークタイミング、および当該受信信号のカウンタ:nの最終値である最終検出回数が関連付けられたデータである。メモリ管理部136は、記録表Bに格納された最終検出回数を新たな受信信号の最終検出回数が上回ると、当該新たな受信信号のピークタイミング、および当該新たな受信信号の最終検出回数で、記録表Bのデータを上書きする。なお、受信信号のピークタイミングは、
図9〜
図11を参照して後述するように、記録表Aに受信信号の検出番号に関連付けて記憶された受信信号の検出時刻に基づいて特定される。
【0055】
ここで、直接波の信号強度は遅延波の信号強度よりも強く、直接波の最終検出回数は遅延波の最終検出回数より多くなることが想定される。従って、所定の時間枠において直接波と遅延波が混在して基地局100に到達した場合、所定の時間枠が経過した時点で記録表Bに格納されているピークタイミングおよび最終検出回数は、直接波のピークタイミングおよび直接波の最終検出回数であることが期待される。このため、メモリ管理部136は、所定の時間枠が経過した時点で記録表Bに格納されているピークタイミングを、直接波のピークタイミングとして特定する。
【0056】
なお、上記の所定の時間枠は、移動局200から折り返しパルス信号が受信されることが予想される時間枠であってもよい。具体的には、所定の時間枠は、基地局100が移動局200にパルス信号を送信した送信タイミングと、当該送信タイミングから所定時間後のタイミングとの間の時間枠であってもよい。このような時間枠においては上記のように直接波と遅延波が混在し得るが、上述したメモリ管理部136の機能により、直接波と遅延波を区別し、直接波のピークタイミングを特定することが可能である。
【0057】
(距離算出部)
距離算出部138は、基地局100がパルス信号を送信した送信タイミングと、メモリ管理部136により特定された折り返しパルス信号の直接波のピークタイミングとの時間差に基づいて、基地局100と移動局200との間の距離を算出する。例えば、距離算出部138は、下記数式に従って基地局100と移動局200との間の距離Dを算出してもよい。
D=c(Tr−Tt−Tw)/2
【0058】
上記数式において、cは光速を示し、Trは折り返しパルス信号の直接波のピークタイミングを示し、Ttはパルス信号の送信タイミングを示し、Twは移動局200における待機時間を示す。待機時間は、移動局200がパルス信号を受信してから折り返しパルス信号を送信するまでの時間である。移動局200における待機時間は、予め所定の値を移動局200と基地局100とが記憶しておくものとする。当該待機時間の経過中に、基地局100が送信したパルス信号の反射波は収まるので、上記待機時間の待機により、基地局100が送信したパルス信号の反射波と、移動局200が送信した折り返しパルス信号の直接波または遅延波が、基地局100に同時に到達することを防止し得る。結果、基地局100における距離算出の精度を向上することが可能である。
【0059】
<3.基地局の動作>
以上、本発明の実施形態による基地局100の構成を説明した。続いて、本発明の実施形態による基地局100の動作を説明する。
【0060】
図7は、基地局100の動作を示すフローチャートである。
図7に示したように、メモリ管理部136は、基地局100からパルス信号が送信されると、メモリIC150の初期化処理を行う(S304)。具体的には、メモリ管理部136は、カウンタ:nを「0」に設定し、フラグを「0」に設定し、記録表Aおよび保管表Bを作成する。
【0061】
そして、閾値設定部132が、コンパレータ128により受信信号の信号強度と比較される閾値を設定する(S308)。その後、所定の時間枠が経過するまで、S316〜S360の処理が繰り返される(S312/no)。
【0062】
具体的には、メモリ管理部136は、コンパレータ128からの出力が「1」である場合、すなわち、受信信号の信号強度が閾値を上回っているとコンパレータ128により判定された場合(S316/yes)、フラグを「1」に設定し(S320)、カウンタ:nをカウントアップする(S324)。
【0063】
そして、時刻管理部134が時計IC140から現在の時刻を読み取り(S328)、メモリ管理部136が、カウンタ:nの値を受信信号の検出番号として、S328で読取られた現在の時刻を受信信号の検出時刻として、記録表Aに格納する(S332)。その後、S312からの処理が繰り返される。ここで、
図8を参照して、記録表Aに格納されるデータの具体例を説明する。
【0064】
図8は、記録表Aに格納されるデータの具体例を示す説明図である。上述したS312〜S332の処理が繰り返される間、記録表Aには、
図8に示したように、受信信号の検出番号と、受信信号の検出時刻が逐次追加される。
【0065】
一方、コンパレータの出力が「0」である場合(S316/no)、メモリ管理部136はフラグが「1」であるか否かを確認する(S336)。フラグが「1」である場合、すなわち、直近まで検出されていた受信信号が検出されなくなった場合(S336/yes)、S340以降に処理が進められる。一方、フラグが「0」である場合、すなわち、受信信号が検出されない期間が継続中である場合(S336/no)、S312からの処理が繰り返される。
【0066】
S340においては、メモリ管理部136は、カウンタ:nが保管表Bに格納された最終検出回数以上であるか否かを判断する(S340)。カウンタ:nが保管表Bに格納された最終検出回数以上である場合(S340/yes)、メモリ管理部136は保管表Bの更新処理を実行した後(S350)、フラグを「0」に設定し、カウンタ:nを「0」にリセットし、記録表Aを初期化する(S360)。カウンタ:nが保管表Bに格納された最終検出回数未満である場合(S340/no)、メモリ管理部136は、保管表Bの更新処理を経ずに、S360の処理を実行する。ここで、保管表Bの更新処理(S350)は、受信信号が検出されていた期間の中央の時刻を受信信号のピークタイミングとして保管表Bに格納する処理である。以下、
図9を参照し、保管表Bの更新処理を具体的に説明する。
【0067】
図9は、保管表Bの更新処理の流れを示すフローチャートである。
図9に示したように、カウンタ:nが奇数である場合(S352/yes)、メモリ管理部136は、記録表Aから、検出番号(n+1)/2に対応する検出時刻T
(n+1)/2を選定する(S354)。そして、メモリ管理部136は、当該検出時刻T
(n+1)/2をピークタイミングTとして、さらにカウンタ:nの値を最終検出回数として、保管表Bに格納(上書き)する(S356)。
【0068】
例えば、
図10に示したように、受信信号が検出時刻T1〜T5に渡って5回検出されると、S352におけるカウンタ:nの値が「5」となる。この場合、メモリ管理部136は、
図8の下段に示したように、検出番号3(=(n+1)/2)に対応する検出時刻T3を、受信信号のピークタイミングTとして保管表Bに格納する。また、メモリ管理部136は、カウンタ:nの値「5」を最終検出回数として保管表Bに格納する。
【0069】
一方、カウンタ:nが偶数である場合(S352/no)、メモリ管理部136は、記録表Aから、検出番号n/2に対応する検出時刻T
n/2、および検出番号(n/2)+1に対応する検出時刻T
(n/2)+1を選定し、(T
n/2+T
(n/2)+1)/2を演算する(S358)。メモリ管理部136は、S358での演算結果をピークタイミングTとして、さらにカウンタ:nの値を最終検出回数として、保管表Bに格納(上書き)する(S356)。
【0070】
例えば、
図11に示したように、受信信号が検出時刻T1〜T4に渡って4回検出されると、S352におけるカウンタ:nの値が「4」となる。この場合、メモリ管理部136は、検出番号2(=n/2)に対応する検出時刻T2、および検出番号3(=(n/2)+1)に対応する検出時刻T3を選定し、(T2+T3)/2を演算する。メモリ管理部136は、当該演算の結果を、受信信号のピークタイミングTとして保管表Bに格納する。また、メモリ管理部136は、カウンタ:nの値「4」を最終検出回数として保管表Bに格納する。
【0071】
ここで、
図7を参照して、基地局100の動作の説明に戻る。上述したS312〜S360の処理を経て、S312において所定の時間枠が経過したと判断されると(S312/yes)、メモリ管理部136は、保管表Bに格納されているピークタイミングTを、折り返しパルス信号の直接波のピークタイミングTとして特定する(S364)。
【0072】
その後、距離算出部138が、基地局100がパルス信号を送信した送信タイミングと、S364で特定した折り返しパルス信号の直接波のピークタイミングTとの時間差に基づいて、基地局100と移動局200との間の距離を算出する(S368)。
【0073】
<4.ハードウェア構成>
以上、本発明の実施形態を説明した。上述したメモリ管理や距離算出などの情報処理は、ソフトウェアと、以下に説明する基地局100のハードウェアとの協働により実現される。
【0074】
図12は、基地局100のハードウェア構成を示したブロック図である。基地局100は、
図12に示したように、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、ホストバス204と、を備える。また、基地局100は、ブリッジ205と、外部バス206と、インタフェース207と、入力装置208と、表示装置209と、音声出力装置210と、ストレージ装置(HDD)211と、ドライブ212と、ネットワークインタフェース215、コンパレータ128とを備える。
【0075】
CPU201は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って基地局100内の動作全般を制御する。また、CPU201は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM202は、CPU201が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM203は、CPU201の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。これらはCPUバスなどから構成されるホストバス204により相互に接続されている。CPU201、ROM202およびRAM203は、ソフトウェアとの協働により、上述した制御部130の機能を実現し得る。
【0076】
ホストバス204は、ブリッジ205を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス206に接続されている。なお、必ずしもホストバス204、ブリッジ205および外部バス206を分離構成する必要はなく、1つのバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0077】
入力装置208は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、センサー、スイッチおよびレバーなどユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU201に出力する入力制御回路などから構成されている。基地局100のユーザは、該入力装置208を操作することにより、基地局100に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0078】
表示装置209は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、プロジェクター装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置およびランプなどの表示装置を含む。また、音声出力装置210は、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置を含む。
【0079】
ストレージ装置211は、本実施形態にかかる基地局100の記憶部の一例として構成されたデータ格納用の装置である。ストレージ装置211は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置などを含んでもよい。ストレージ装置211は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid Strage Drive)で構成される。このストレージ装置211は、ハードディスクを駆動し、CPU201が実行するプログラムや各種データを格納する。
【0080】
ドライブ212は、記憶媒体用リーダライタであり、基地局100に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ212は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体24に記録されている情報を読み出して、RAM203またはストレージ装置211に出力する。また、ドライブ212は、リムーバブル記憶媒体24に情報を書き込むこともできる。
【0081】
ネットワークインタフェース215は、例えば、移動局200と通信するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。ネットワークインタフェース215は、UWB通信デバイスおよび無線LAN通信デバイスを含んでもよい。コンパレータ128は、
図5を参照して説明したように、ネットワークインタフェース215から出力される受信信号の信号強度と閾値とを比較する専用のICである。なお、
図5を参照して説明した信号処理部104、送信アンプ回路108、アンテナ112、バンドパスフィルタ116、受信アンプ回路120および信号処理部124の機能は、ネットワークインタフェース215に包含され得る。
【0082】
なお、移動局200のハードウェア構成には、上述した基地局100のハードウェア構成を適用し得るので、移動局200のハードウェア構成の詳細な説明は省略する。
【0083】
<5.むすび>
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、所定の時間枠で得られた複数の受信信号について、所定間隔での比較において信号強度が閾値を上回った回数(検出回数)をカウントする。直接波の信号強度は遅延波の信号強度よりも強く、直接波の最終検出回数は遅延波の最終検出回数より多くなることが想定される。従って、所定の時間枠で得られた複数の受信信号のうちで、最終検出回数が最も多かった受信信号を、直接波の受信信号として特定することが可能である。
【0084】
なお、移動局200から折り返しパルス信号が送信された場合、折り返しパルス信号の直接波と遅延波のうち、折り返しパルス信号の直接波が最初に基地局100に到達するので、単に最初に受信された信号を直接波として扱う方法も考えられる。しかし、基地局100が送信したパルス信号の反射波が残存している可能性があるので、当該方法では、基地局100が送信したパルス信号の反射波を折り返しパルス信号の直接波として誤検出してしまう恐れがある。これに対し、本発明の実施形態によれば、基地局100が送信したパルス信号の反射波の最終検出回数よりも折り返しパルス信号の直接波の最終検出回数の方が多くなることが想定されるので、折り返しパルス信号の直接波を正しく特定することが可能である。
【0085】
また、受信信号の信号強度をAD変換により測定する方法に関し、信号強度と閾値との比較をある時間間隔で行う処理負荷と、信号強度を当該時間間隔でAD変換する処理負荷とでは、信号強度をAD変換する処理負荷の方が大きい。また、信号強度と閾値との比較結果を示すデータの量と、信号強度のAD変換の結果を示すデータの量とでは、信号強度のAD変換の結果を示すデータの量の方が圧倒的に大きく、消費されるメモリ容量も膨大になる。従って、本発明の実施形態は、受信信号の信号強度をAD変換により測定する方法と比較して、処理負荷および必要なメモリ容量を軽減することが可能である。
【0086】
また、本実施形態によれば、直接波の受信信号が検出されていた期間の中央の値を、直接波のピークタイミングとして特定することが可能である。このように直接波のピークタイミングを適切に特定することにより、基地局100と移動局200との間の距離をより正確に算出することが可能となる。
【0087】
なお、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0088】
例えば、本明細書の基地局100の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、基地局100の処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0089】
また、基地局100に内蔵されるCPU201、ROM202およびRAM203などのハードウェアに、上述した基地局100の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。